特許第6235867号(P6235867)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235867
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】包装用機能性板紙
(51)【国際特許分類】
   D21H 27/10 20060101AFI20171113BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20171113BHJP
   D21H 21/16 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 29/00 20060101ALI20171113BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20171113BHJP
   D21H 27/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   D21H27/10
   D21H27/30 A
   D21H21/16
   B32B29/00
   B65D65/40 D
   D21H27/00 E
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-226017(P2013-226017)
(22)【出願日】2013年10月30日
(65)【公開番号】特開2015-86484(P2015-86484A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083183
【弁理士】
【氏名又は名称】西 良久
(72)【発明者】
【氏名】冨森 亮一
(72)【発明者】
【氏名】三井 慎一
(72)【発明者】
【氏名】光石 拓己
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−141576(JP,A)
【文献】 米国特許第06207242(US,B1)
【文献】 特開2006−062160(JP,A)
【文献】 特開2003−081355(JP,A)
【文献】 特開2002−255158(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D65/00−65/46
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのパルプ層の間に着色層を有する包装用機能性板紙において、
パルプ層と着色層の間に、使用時に水分が付着しうるパルプ層から浸透する水分を撥水させる撥水層を設けてなり、
前記着色層は、無機顔料を含んだパルプからなり、
前記撥水層は、撥水剤を含有したパルプ層、または合成樹脂層からなっていることを特徴とする包装用機能性板紙。
【請求項2】
撥水剤が、ロジン、AKDまたはASKからなっていることを特徴とする請求項1に記載の包装用機能性板紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間に機能性を有する着色層を設けた板紙の表層のパルプ層にラミネートしたフィルムを剥がすことで、露出したパルプ層に水分が浸透する等して着色層が透けて見えないように、撥水層を設けた包装用機能性板紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、カップ、パウチ、ラッピング用紙、贈答用紙器箱等の各種紙製容器包装の資材である紙に、美粧性もしくは、各種光線(可視光、紫外線、赤外線)のカット機能を付与し、なおかつ白色度が高いなどの外観の良好な紙を提供するため、3層以上に積層された紙の中間層に着色層12を設け、その表裏層に漂白パルプ層11、13を設けた紙が製造されている(図3参照)。
着色層12としては、未漂白パルプを用いる方法や、漂白パルプにウルトラマリン青、プロシア青、鉛丹、酸化鉄、黄鉛、アルミニウム粉、カーボンブラック等の各種無機顔料を添加する方法が用いられている。
通常、紙が多量の水分、もしくは少量であっても長時間水分と接し続けた場合、表裏面及び端面から水分が浸透し、乾燥した状態に比べ透明性が向上する現象が発生する。
従来の中間層に着色層12を設けた原紙においてそのような現象が発生した場合、表面又は裏面の漂白パルプ層11、13が半透明になることで、着色層12が透けて見え、紙の外観に影響を与え、特に、食品の容器などの包装に用いる場合に、使用者は衛生面での印象を悪くする惧れがある。
特に、これらの現象が顕著に表れる例として、カップ貼り合せ部の原紙端面から液体内容物や内容物中の水分が浸透した場合、カップのトップシールを剥離した後の、表面のラミネート樹脂層及び漂白パルプ層の一部がなくなった部分から水分が浸透して半透明化して着色層が透けて見えるケースが挙げられる。
一方、本出願人は、特開2012−229046号公報において、2枚の原紙間に遮光性印刷層を備えた積層遮光紙を用いて成形される遮光性紙カップで、積層遮光紙の紙カップの内側となる原紙の外側に、樹脂層を介して遮光印刷層を積層し、積層遮光紙の2枚の原紙の坪量の和が150〜350g/mであり、かつ一方の原紙の坪量が他方の原紙の坪量に対して1.3倍以上とすることで、坪量の大きい方の剛性により坪量の小さい方のそりやねじれを防止し、しかもいずれの原紙でも遮光性印刷層を隠蔽し、容易に紙カップを成形することができ、また、蓋をはがす場合、原紙の層中で剥離を生じさせ遮光印刷層の露出を防止している。
しかし、上記構成では、遮光印刷層の色彩をマスクして外から見える原紙層の色合いの変化を最小に抑えることは十分ではなかった。
また、特開平6−143877号公報では、紙の表面の黒ずみを消す方法として遮蔽層の外側に着色層として白色などを塗布する構成が開示されているが、水分が表層に浸透することで半透明化し遮蔽層の色味が透けることまでは解決できなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−229046号公報
【特許文献2】特開平6−143877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明の解決しようとする問題点は、着色層を中間に設けた機能性板紙の表面のパルプ層に水分が浸透した際に、パルプ層が透けても着色層をマスクし、外観が損なわれないように撥水層を介設した包装用機能性板紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1の発明では、
2つのパルプ層の間に着色層を有する包装用機能性板紙において、
パルプ層と着色層の間に、使用時に水分が付着しうるパルプ層から浸透する水分を撥水させる撥水層を設けてなり、
前記着色層は、無機顔料を含んだパルプからなり、
前記撥水層は、撥水剤を含有したパルプ層、または合成樹脂層からなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、パルプ層と着色層の間に、パルプ層から浸透する水分を撥水させる撥水層を設けることで、水分の浸透を撥水層で遮って着色層の色彩が透けて見えないようにしたので、パルプ層を介して着色層が透けて見えることがない。
これにより、包装用機能性板紙の一方のパルプ層にラミネート加工されたフィルムを剥がして使用に供する場合や、パルプ層が露出している場合に、ラミネートフィルムの剥離で露出したパルプ層に水分が浸透して透けて見える場合に、着色層の色彩が現れることがないので、外観の美粧性を保持し、使用者に外観上で悪い印象を与えることがない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の包装用機能性板紙の説明図である。
図2参考例の包装用機能性板紙の説明図である。
図3】従来例の包装用機能性板紙の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
この発明では、パルプ層と着色層の間に、ラミネートフィルムを剥離したパルプ層から浸透する水分の浸透を撥水層で撥水させ着色層をマスクすることで、パルプ層を介して着色層が透けて見えないようにした。
以下に、この発明の好適実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0009】
図1に示す実施例1の包装用機能性板紙10は、表層のパルプ層1と、中間層の機能性を有する無機顔料を含む着色層2と、裏層のパルプ層3とを有し、表層のパルプ層1と着色層2、およびまたは、裏層のパルプ層3と着色層2との間に撥水層4を設けている。
図示例では、撥水層4は着色層2を挟むように一対に設けられているがいずれか一方でもよい。
また、本実施例では、前記漂白パルプ層1、3の表面側に、透明フィルムFがラミネートされている。
【0010】
本実施例では、パルプ層1、3は、漂白したパルプ層を用いたが、この発明では漂白剤または染料、顔料、蛍光増白剤などの着色剤を添加して漂白や着色したものでも、漂白や着色しないもの(未晒しのもの)でもよい。
着色層2は、従来の着色層と同様に、遮光性を有する黒色や紫外線吸収を有する赤色等であればよい。
また、着色層2はパルプに顔料を混ぜたものでも良い。
撥水層4は、合成樹脂層またはパルプ層に抄紙時に撥水剤としてロジン、AKD、ASKなどの一般的に板紙抄紙時に混抄される化合物を添加したものであり、後者の場合、漂白パルプに比して1.3倍以上の撥水剤を抄紙時に添加することが好ましい。
【0011】
これにより、使用時にラミネートフィルムFの少なくとも一部が剥離されると前記パルプ層1は、その表面側がラミネートフィルムFと一体に剥がされるが、残りのパルプ部分は厚みの中途位置で破断されて板紙10側に残るように、パルプ層の内部結合強さを設定することが好ましい。
そして、パルプ層1の一部が露出したり剥がれると、水滴などの水分がパルプ層1から板紙内部へ浸透する。
その際に、前記浸入した水分は撥水層4により遮られるので、それ以上の浸入が阻止され、外観の低下を防ぐことができる。
また、パルプ層1、3は従来成分のパルプ層である為、各種コート剤の定着性や、押出ラミネート樹脂との接着性に影響を与えない。
【0012】
本実施例では、表裏を同じくするために、着色層2を中心にしてパルプ層と撥水層が対称に配置されているので、板材10は表裏いずれ側からも同様に用いることができるが、この発明では、前述のように水分が浸入する側だけに撥水層4を設けてもよい。
【0013】
また、本実施例では、ラミネートフィルムFをパルプ層1(3)にラミネート加工した場合を例示したが、ラミネート加工せずに、直接にパルプ層1(3)が露出している場合でもよい。
【0014】
[参考例]
図2に示す包装用機能性板紙10は、実施例に含まれない参考例として、表層のパルプ層1と、中間層の着色層2と、裏層のパルプ層3とを有し、表層のパルプ層1と着色層2、およびまたは、裏層のパルプ層3と着色層2との間に隠蔽層5として着色層2の色彩をマスクする非水溶性の白色系着色層を設けている。
図示例では、隠蔽層5は着色層2を挟むように一対設けられているがいずれか一方でもよい。
また、本実施例でも、前記パルプ層1、3の表面側に、透明のラミネートフィルムFが積層されている。
ここでパルプ層1、3、着色層2、およびラミネートフィルムFは前記実施例と同様であるので説明を省略する。
【0015】
隠蔽層5は、パルプ層に、抄紙時に、酸化チタン、亜鉛華、リトポン、鉛白等の白色顔料を混抄した白色系着色層からなっている。
顔料は粉体で非水溶性の着色剤であるため、水分の浸入によっても透けることがない。
【0016】
これにより、ラミネートフィルムFが剥がされるなどして、前述のように水分の浸透により、漂白パルプ層1(3)の表面側が剥がれて、残りの部分が透けた場合も、隠蔽層5の色にマスクされて着色層2の色味が透けて見えることがなく、板紙10の外観が損なわれるのを防止することができる。
この場合も、隠蔽層5は、少なくとも水分が浸透する側の漂白パルプ層1(3)と着色層2との間に形成されればよい。
【0017】
上記実施例1の包装用機能性板紙1は、抄紙の段階で各層が形成されるように製紙用化合物を混抄して形成するものであってもよい。
その他この発明は、上記実施例に限定されるものではなく、要するにこの発明の要旨を変更しない範囲で種々設計変更しうること勿論である。
【符号の説明】
【0018】
1 パルプ層(表層、表層側)
2 着色層
3 パルプ層(裏層、裏層側)
4 撥水層
5 遮蔽層
6 合成樹脂層
10 包装用機能性板紙
図1
図2
図3