特許第6235874号(P6235874)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235874
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】原料組成物
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20171113BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20171113BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C04B28/26
   C04B18/08 Z
   C04B22/06 Z
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-234323(P2013-234323)
(22)【出願日】2013年11月12日
(65)【公開番号】特開2015-93809(P2015-93809A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110860
【氏名又は名称】ニチハ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 裕司
(72)【発明者】
【氏名】椙山 直樹
【審査官】 末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−211557(JP,A)
【文献】 特開2010−280532(JP,A)
【文献】 特開平08−169749(JP,A)
【文献】 特開2008−297148(JP,A)
【文献】 特開平10−158007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 7/00−28/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミノケイ酸塩硬化体の原料組成物であって、
原料組成物は、石炭飛灰と、アルカリ金属塩とを含有し、
前記石炭飛灰は、非晶質のSiOが43.7〜53.3%、非晶質のAlOが16.9〜24.9%、非晶質のSiOとAlOの合計が60質量%以上非晶質のSiO/AlOが3.0以下であるとともに、未燃分が3質量%以下であり、
前記アルカリ金属塩は、アルカリ金属水酸化物とケイ酸アルカリとからなり、
前記アルカリ金属塩を、固形分の質量比で前記石炭飛灰100に対し5〜40含有する
ことを特徴とする原料組成物。
【請求項2】
前記石炭飛灰は、非晶質のSiOとAlOの合計が70質量%以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の原料組成物。
【請求項3】
前記石炭飛灰は、非晶質のSiO/AlOが2.5以下である
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の原料組成物。
【請求項4】
質量比で水を前記石炭飛灰100に対し8〜50含有する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の原料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミノケイ酸塩硬化体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への意識が高まっており、企業においては、地球温暖化問題への対策として、二酸化炭素の排出を抑制する取り組みや、産業廃棄物を有効利用する取り組みが行われている。それらの取り組みの一つとして、アルミノケイ酸塩硬化体の開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、溶融された石炭飛灰が気体中に噴霧されて得られた、比表面積5〜100m/gである無機質粉体100重量部と、水溶液濃度が1%以上のアルカリ金属水酸化物水溶液もしくはアルカリ金属珪酸塩水溶液10〜300重量部からなることを特徴とする硬化性無機質組成物が記載されている。特許文献1の組成物及びその製造方法によれば、セメントを使用しないので、二酸化炭素の排出を低減できるとともに、産業廃棄物の有効利用にも繋がる。しかし、特許文献1の組成物では、溶融した石炭飛灰を用いるので、石炭飛灰を溶融することにより二酸化炭素排出の抑制効果が薄れてしまう。また、工程が増え、作業性が悪い。石炭飛灰を溶融せず使用すると、特許文献1にも記載があるように、熱的処理を施さない石炭飛灰は結晶性が高く、アルカリ金属珪酸塩水溶液との反応性に乏しいので、加熱硬化させる時に長時間を要する、又、得られる硬化体の強度が低いという問題がある。石炭飛灰を粉砕して用いたとしても流動性は向上するが、得られる硬化体の物性は大幅には変わらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−199517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、石炭飛灰を溶融・粉砕することなく、物性に優れた硬化体を得ることができる原料組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アルミノケイ酸塩硬化体の製造において用いる原料組成物を提供する。原料組成物は、石炭飛灰と、アルカリ金属塩とを含有する。石炭飛灰は、非晶質のSiOとAlOの合計が60質量%以上であるとともに、非晶質のSiO/AlOが3.0以下である。本発明の原料組成物は、特定の石炭飛灰を含有するので、石炭飛灰とアルカリ金属塩の反応が進み、得られる硬化体は強度、寸法安定性、耐水性に優れる。なお、石炭飛灰は、非晶質のSiOとAlOの合計が70質量%以上である、非晶質のSiO/AlOが2.5以下であると、よりアルミノケイ酸塩の反応が進み、得られる硬化体の物性が向上するので好ましい。
また、石炭飛灰の未燃分が3質量%以下であると、得られる硬化体は顔料などによる着色性に優れるとともに強度等の物性にも優れるので好ましい。
更に、アルカリ金属塩を、固形分の質量比で石炭飛灰100に対し5〜40含有すると、石炭飛灰とアルカリ金属塩の反応が進み、得られる硬化体は強度、寸法安定性、耐水性に優れるので好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、石炭飛灰を溶融・粉砕することなく、物性に優れた硬化体を得られる原料組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
【0009】
本発明の原料組成物は、石炭飛灰と、アルカリ金属塩とを含有する。
【0010】
石炭飛灰とは、石炭を燃焼させ、発生した飛灰を集塵して得られた灰であり、SiOとAlOを主成分とする無機粉体である。石炭飛灰は急冷されているため多くの非晶質成分を含むが、コントロールされて冷却している訳ではないので、結晶質成分も含む。結晶質成分はアルカリ金属塩との反応が悪いので、本発明では、非晶質成分の含有量と、SiO/AlO比に着目している。すなわち、本発明の石炭飛灰は、非晶質のSiOとAlOの合計が60質量%以上であるとともに、非晶質のSiO/AlOが3.0以下である。なお、非晶質のSiOとAlOの測定は、例えば、蛍光X線分析による成分分析結果(結晶質成分と非晶質成分を含む)とXRD(X線回折)内部標準法による結晶質成分の分析結果との差から求めることができるが、これに限定されない。
アルカリ金属塩としては、アルカリ金属水酸化物、ケイ酸アルカリ、炭酸アルカリ、炭酸水素アルカリがある。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどあり、ケイ酸アルカリとしては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどがあり、炭酸アルカリとしては炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどがあり、炭酸水素アルカリとしては炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどがある。これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。なお、アルカリ金属塩は、固形分の質量比で石炭飛灰100に対し5〜40含有すると、石炭飛灰とアルカリ金属塩の反応が進み、得られる硬化体は強度、寸法安定性、耐水性に優れるので好ましい。
【0011】
本発明の原料組成物は、更に、粘土、補強材を含有することができる。
粘土としては、ベントナイト、カオリン等があり、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。
補強材としては、無機補強材、有機補強材がある。無機補強材としては、珪砂、ケイ石粉、シリカ粉、珪藻土、シリカフューム、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト、マイカ、ガラス繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、ロックウール、セピオライト、ワラストナイト、石綿等がある。有機補強材としては、木片、竹片、木粉、故紙、針葉樹未晒しクラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒しクラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未晒しクラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒しクラフトパルプ(LBKP)等の木質補強材や、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、アセテート繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維、発泡性熱可塑性プラスチックビーズ、プラスチック発泡体等がある。本発明では、これらの物質のうち、いずれか1種のみを含有しても良いし、2種類以上を含有してもよい。なお、補強材は、固形分の質量比で石炭飛灰100に対し30〜300含有すると、得られる硬化体は強度、寸法安定性に優れるので好ましい。より好ましくは、100〜300である。
また、必要に応じて、スラグ、メタカオリン、真珠岩、アロフェン、パイロフィライト等を1種以上含有してもよい。
【0012】
また、本発明の原料組成物は、質量比で、水を石炭飛灰100に対し8〜50含有すると、流動性に優れ、製造工程において、成形性に優れるので好ましい。
【0013】
そして、本発明の原料組成物は、原料混合物を製造する工程と、得られた原料混合物を成形する工程と、得られた成形物を養生する工程とを有する製造方法に用いられる。
【0014】
原料混合物を製造する工程は、石炭飛灰と、アルカリ金属塩とを混合することにより行う。用いる原料、配合については上述の通りである。
【0015】
原料混合物を成形する工程としては、原料混合物を枠に流し込み、硬化後に脱型する方法、原料混合物を押出成形機により成形する方法、原料混合物を散布して形成したマットを型押しにより成形する方法などがある。
【0016】
成形物を養生する工程としては、自然養生、蒸気養生、オートクレーブ養生、水中養生などがある。通常、自然養生では、外気で1〜28日間養生し、蒸気養生は湿度50%以上、温度50〜85℃で7時間〜28日間養生し、オートクレーブ養生では、110〜185 ℃で7〜24時間養生し、水中養生では水中で1〜28日間養生する。
【0017】
次に、本発明の実施例をあげる。
【0018】
各原料を、表1に示す組成で混合し、原料混合物を製造した。そして、該原料混合物を型枠に入れ、80℃、湿度80%で3日間蒸気養生して、試料1〜14の硬化体を製造した。なお、表1において、配合の値は、石炭飛灰の固形分質量を100とした場合の各原料の質量を表している。また、各試料において、硬化体の板厚は20mmとした。
【0019】
そして、得られた試料1〜14の各硬化体について、比重、曲げ強度、吸水8日後寸法変化率、強度変化率を測定したので、その結果も表1に示す。
なお、石炭飛灰における非晶質のSiOとAlOは、蛍光X線分析により石炭飛灰全体(結晶質成分と非晶質成分を含む)の成分組成を求め、次に、XRD内部標準法により石炭飛灰の結晶質(クォーツとムライト)におけるSiOとAlOを求め、蛍光X線分析により得られた石炭飛灰全体(結晶質成分と非晶質成分を含む)のSiOとAlOからXRD内部標準法により得られた石炭飛灰の結晶質のSiOとAlOを差し引いて算出した。XRD内部標準法について詳しく説明すると、まず最初に、炭酸カルシウムにムライト又はクォーツを所定量添加(ムライト、クォーツの添加率は0%〜30%とした)し、さらに内部標準物質であるコランダムを10%添加した試料を作製し、作製した試料を用いて添加率毎のXRDのピークパターンを測定し、得られたピークパターンからムライト、クォーツのピーク面積とコランダムの面積との比をとって、ムライト、クォーツそれぞれの検量線を作成した。次に、コランダムを石炭飛灰に10%内添した試料を準備し、XRDのピークパターンを測定し、得られたピークパターンからムライト、クォーツのピーク面積とコランダムの面積との比をとり、作成しておいた検量線からムライトとクォーツの含有率を算出した。そして、得られたムライトとクォーツの含有率からAlOとSiOの結晶質成分量を計算した。
曲げ強度は、4×16cmとした試験片を用いること以外はJIS A 1408に準じて測定した。吸水8日後寸法変化率は、硬化体を60℃で3日間調湿後、常温まで冷やした状態での寸法を初期値として、8日間常温の水に浸漬し、浸漬後の寸法との差を初期値で除した値である。
強度変化率は、吸水8日後寸法変化率を測定後の硬化体を60℃で3日間調湿後、常温まで冷やした状態で曲げ強度を測定し、得られた曲げ強度と、吸水処理を行っていない硬化体の曲げ強度との差を、吸水処理を行っていない硬化体の曲げ強度で除した値である。
【0020】
【表1】
【0021】
得られた試料1〜11は、曲げ強度に優れ、高い寸法安定性を有し、強度変化も小さく、耐水性も高かった。これは、試料1〜11の原料混合物で用いた石炭飛灰は非晶質成分の含有量が多く、非晶質成分がアルミノシリケート反応したためである。特に、石炭飛灰の非晶質成分含有量が多い試料1〜4、8〜11は、曲げ強度が高いとともに強度変化率が小さく、耐水性が高かった。なお、同じ石炭飛灰を用いた試料2、8〜11を比較した場合、補強材の固形分含有量が石炭飛灰100に対して100以上である試料2、9、10は特に物性に優れた。
一方、試料12〜14は、曲げ強度としては実施例と比較して大きく劣るわけではないが、寸法変化率が大きく、強度低下による強度変化率が大きかった。これは、アルカリ金属塩により非晶質成分の少ない石炭飛灰でもアルミノシリケート反応は進むが、反応量が小さく、アルカリ金属塩が残留するため、耐水性が下がり、強固な硬化体が得られず、寸法変化率が大きく、耐水性が悪化したと推定される。
【0022】
以上に本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載の発明の範囲において種々の変形態を取り得る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、石炭飛灰を溶融・粉砕することなく、物性に優れた硬化体を得ることができる原料組成物を提供することができる。