【実施例1】
【0013】
本発明の実施例として、冷却された飲料水(以下「冷水」という)を供給するように構成された飲料水供給装置1について説明する。
図1(a)は飲料水供給装置1の上面図、(b)は飲料水供給装置1の正面図、(c)は飲料水供給装置1の側面図である。
図2(a)、(b)はバッグインボックス型の飲料水貯蔵容器3(以下「BiB」という)の構造を説明する図、
図3(a)、(b)は飲料水供給装置1の内部構造を説明する図である。
【0014】
飲料水供給装置1は、外形が略直方体で箱状の筐体11を備えている。筐体11の上部は着脱可能なカバー12となっていて、使用者は、このカバー12をはずして
図2(a)、(b)に示すBiB3の交換を行う。
【0015】
BiB3は、段ボール等で構成され外形が略直方体のボックス4の中にビニール等の可撓性材料で構成され飲料水を収容するバッグ5(水タンクの一例)が、周囲にやや余裕を持って封入された構造となっている。余裕を持たせているのは、冷却手段21による体積増加分を吸収できるようにするためである。
【0016】
バッグ5の下面5aの筐体11前面側の一端には飲料水供給装置1の給水口14と接続される筒状の排出口5bが設けられている。この排出口5bにはサーバのコック部に接続するための不図示のスパウトが設けれていて、バッグ5から水が不用意に流出しないようになっている。また、排出口5bは、バッグ5内の飲料水が流出しても空気が入らない構造となっているため、バッグ5は流出した飲料水の分の体積が減少するように変形する。
【0017】
ボックス4の下面4aには、冷却手段21とバッグ5の下面5aが接触できるようにするための開口部4bと、排出口5bを通すための開口部4cが設けられている。
【0018】
筐体11の前面には給水口14が設けられている。この実施例では、ポンプ等は設けず、使用者がレバー15を操作することにより給水口14が開閉し、給水口14が開くとバッグ5内の飲料水が自然流下するように構成されている。
【0019】
筐体11の前面下部には給水口14から流下した飲料水を受ける容器2を置くためのホルダー13が設けられている。ホルダー13は略長方形の板状部材である。
【0020】
筐体11の前面には、例えばLEDにより構成されるインジケーター16が設けられている。インジケーター16は、後述する水量検知手段40によりバッグ5内の飲料水が残り少ないことが検知された際に点灯し、使用者にBiB3の交換を促す。
【0021】
筐体11の上部には、BiB3を置くための載置台32と、載置台32を支持するための支持部材31が設けられている。載置台32は、それぞれ一端が載置台32に他端が支持部材31に結合された4個のバネ33a、33b、33c、33d(以下、これらのバネの総称として「バネ33」という)により、支持部材31の上に支持されている。バネ33は移動手段の一例であり、また、弾性部材の一例でもある。
【0022】
支持部材31は、筐体11の天板11aとほぼ同じ大きさの板状部材で、天板11aに上下方向に動かないように固定されている。支持部材31は、板状とするほか、フレーム状部材などバネ33を介して載置台32を支持できる構造であれば任意の構造で良い。また、天板11aが支持部材31を兼ねる構造とすることもできる。
【0023】
載置台32は、奥行き方向(
図3(a)の左右方向)の寸法が支持部材31よりもやや大きい板状の部材であり、筐体11の前面側(
図3(a)では左側)に突出するように、支持部材31の上に配置される。載置台32の前面側の端部には、ボックス4を当接させて位置決めするための壁部32aが設けられている。
【0024】
載置台32には、
図3(b)に示すように冷却手段21を貫通させるための開口部32bと、バッグ5の口部5bを貫通させるための開口部32cが設けられている。載置台32も、冷却手段21をバッグ5の底部5aに接触させることができ、口部5bを配置することができる構造であれば、フレーム状等の板状以外の部材としてもよい。
【0025】
バネ33a、33b、33c、33dはバネ定数が同一のコイルバネで、各バネに作用する荷重がほぼ等しくなるような位置に配置されている。そのため、バッグ5内の飲料水が少なくなり荷重が減少すると載置台32とその上に載置されたBiB3は、水平な状態を保ったまま上方に移動する。バネ33としては板バネ等コイルバネ以外の形式のバネを用いることができ、また、バッグ5内の飲料水の量に応じて載置台32を冷却手段21に対して上下方向に移動させることができれば、配置位置と個数も任意である。また、弾性部材としてバネ33の代わりに、エアーダンパー等、作用する荷重の増減によって上下方向の寸法が変化する部材を用いることもできる。
【0026】
支持部材31の上面には、外形がドーム状でバッグ5内の飲料水を冷却するための冷却手段21が固定されている。冷却手段21は液体の気化熱を利用し熱交換を行うもので、筐体11内に設けられた圧縮機22と液体を循環させる配管23で接続されている。冷却手段21は、載置台32の開口部32bとボックス4の開口部4bを貫通して上方に突出し、バッグ5の下面5a(外壁の一例)に接触する。バッグ5は可撓性の材料で構成されているので、下面5aの冷却手段21と接触する部分5cは
図3(a)のように冷却手段21の外形に沿って変形し上方にたわむ。冷却手段21の外形は、載置台32とボックス4を貫通して上方に突出する形状であればドーム以外の形状としても良いが、バッグ5を傷つけないように角のないなめらかな形状とするのが好ましい。
【0027】
載置台31の背面側端部に設けられた磁石41と、筐体11の背面内側に設けられた磁気センサー42、43を含んで、載置台32の上下方向の位置を検知することにより間接的にバッグ5内の飲料水の量を検知する水量検知手段40が構成されている。磁気センサー42、43は、例えばホールICにより構成される。
【0028】
電源部24は、外部から入力された交流電流を変圧・整流して圧縮機22に必要な電気を供給する。
【0029】
制御部25は、マイクロコンピュータとメモリその他の電子回路素子によって構成され、冷却手段21の内部に設けた温度センサー(図示せず)により測定した温度から相対的に求めた水バッグ5内の飲料水の温度に応じて冷却手段21を制御しバッグ5内部の飲料水の温度を所定の範囲に保つ。この実施例では、冷却手段21を簡単な構成とするために冷却手段21の冷却能力は変動させずに、飲料水の温度が上限値以上になったら冷却手段21を作動させ、下限値以下となったら冷却手段21を停止させるという単純な制御を行うものとする。そのため、従来の構造だとバッグ5内の飲料水が少なくなった際に冷却手段21が作動すると、単位重量あたりの飲料水から奪われる熱量が大きくなりすぎ、冷却が過剰となり極端な場合飲料水が凍ってしまうことがある。本発明では、載置台32をバネ33の作用により上下に移動させることにより過冷却を回避している。
【0030】
制御部25は、水量検知手段40の検知結果に基づいて、バッグ5内の飲料水が残り少ないことを検知した際には、インジケーター16を点灯させる。
【0031】
図4は、載置台32の動作を説明する図である。
図4の左側は、バッグ5が飲料水で満杯な状態である。バネ33にはボックス4とバッグ5とバッグ5内の飲料水と載置台32との合計重量に相当する圧縮力が作用して自然な長さよりも短くなり、支持部材31と載置台32との距離はd1となっている。
【0032】
この状態から徐々にバッグ5内の飲料水が減少し、残りが僅かとなった状態を
図4の右側に示す。飲料水が減少した分バネ33に作用する荷重は減少してバネ33は
図4の左側の状態よりも伸び、支持部材31と載置台32との距離はd1よりも大きいd2となる。冷却手段21と支持部材31は、上下方向の移動が拘束されているので、載置台32とその上に載置されているBiB3は、
図4の右側の状態では
図4の左側の状態に比べてd2とd1の差(
図4のh)だけ上方に移動する。その結果、バッグ5のうち冷却手段21と接触する部分5cの面積は、
図4の右側の状態では
図4の左側の状態に比べて減少する。
【0033】
このように、冷却手段21は、バッグ5との接触面積が載置台32との上下方向の位置関係により変動するようにバッグ5の下面5aに接触しており、また、バネ33によって構成される移動手段は、バッグ5内の飲料水の量に応じて載置台32を冷却手段21に対して上下方向に、すなわちバッグ5内の飲料水が少なくなるほど上へ移動させる。その結果、バッグ5のうち冷却手段21と接触する部分5cの面積は、バッグ5内の飲料水が少なくなるほど減少する。そのため、冷却手段21自体の冷却能力を一定とし、バッグ5内の飲料水が少なくなったときに作動させても、接触面積が減少した分だけ飲料水から奪われる熱量が減少し、凍結を防ぐことができる。
【0034】
水量検知手段40は、載置台31の上下方向の位置を検知して間接的にバッグ5内に残っている飲料水の量を検知する。磁気センサー42は、バッグ5が満杯な状態での磁石41の位置とほぼ同じ高さ、磁気センサー43は磁気センサー42の約h上方に設けられている。
【0035】
図4の左側の状態では、磁気センサー42は磁石41により生じた磁界を検知するが、磁気センサー43は磁界を検知しない。そのため、制御部25は載置台32の高さが磁気センサー42の高さとほぼ等しい状態、すなわち、水バッグ5が満杯状態であると判定し、インジケーター16は点灯させない。
【0036】
図4の右側の状態では、磁気センサー43は磁石41により生じた磁界を検知するが、磁気センサー42は磁界を検知しない。そのため、制御部25は載置台32の高さが磁気センサー43の高さとほぼ等しい状態、すなわち、水バッグ5内の飲料水が残り少ないと判定し、インジケーター16を点灯させ、使用者にBiB3の交換を促す。ここでは、磁気センサー42と磁気センサー43との距離を約hとしたが、この距離は、残りの水量がどの程度となったらインジケーター16を点灯させるか、磁気センサー42、43の感度等によって適宜定めれば良い。
【0037】
また、水量検知手段40を、バネ33と支持部材31との結合部に設けられ、バネ33に作用する荷重を検知する重量センサーによって構成しても良い。
【0038】
飲料水供給装置1は、このような水量検知手段40を備えているので、BiB3の交換時期を適時に使用者に通知することができる。このことは、本実施例のように、筐体に対して着脱可能で使用者が交換を行うBiB等から直接給水口に飲料水を流出させる構造となっているために水量を直接検知するセンサー等を設けることが困難な場合に特に有用である。
【0039】
載置台32を冷却手段21に対して上下させる移動手段の別の例を
図5(a)、(b)に示す。
図5(a)は載置台32を吊り部材51で上方から吊り下げる例である。吊り部材51の中間にバネ50を設け荷重の変動により伸縮し、載置台32が上下に動く構造である。吊り部材51の上端は、例えば筐体11の天板11aに立設した固定部材に結合する。また、この場合は、バネ50は設けずに、吊り部材51自体をゴム等の伸縮性のある部材としても、十分な移動量を確保することができる。
【0040】
図5(b)は、滑車52と、おもり53と、一端を載置台32に接続し他端をおもり53に接続したワイヤー54を用いて載置台32を上下させるように構成した例である。
【0041】
なお、
図4、
図5(a)、(b)に示した例はすべて載置台32が水平な状態で上下するようにしてあるが、傾いた状態で上下したり、上下動に伴って傾きが変化するようにしても良い。
【実施例2】
【0042】
実施例2では、載置台32とその上に置かれたBiB3を傾けることにより、バッグ5と冷却手段21との接触面積を増減させるように構成した飲料水供給装置6について説明する。なお、飲料水供給装置1と同一の構成要素には図面に同じ符号を付して説明を省略する。
【0043】
図6(a)、(b)は、飲料水供給装置6の内部構造を説明する図である。飲料水供給装置6の基本的な構造は飲料水供給装置1と同じであるが、移動手段がバネ33e、33fとヒンジ36(結合手段の一例)を含んで構成されている点が異なる。載置台32は、筐体11の前面付近で、筐体11の幅方向(図の紙面直角方向)に水平に配置されたヒンジ36により、支持部材31に対し上下方向の移動が拘束されかつ回転可能に結合されている。載置台32の背面側の端部は、それぞれ一端が載置台32に他端が支持部材31に結合された二つのバネ33e、33f(弾性部材の一例)を介して上下方向に移動可能なように支持されている。
【0044】
図7の左側は、バッグ5が飲料水で満杯なときの載置台32の状態である。バネ33e、33fにはボックス4とバッグ5とその中の飲料水と載置台32との合計重量に相当する圧縮力が作用して支持部材31と載置台32との距離はd3となっている。このとき、載置台が水平になるようにバネ33e、33fのバネ定数、自然な長さ、取り付け位置等を調整する。
【0045】
この状態から徐々にバッグ5内の飲料水が減少し、残りが僅かとなった状態を
図7の右側に示す。飲料水が減少した分バネ33e、33fに作用する荷重は減少してバネ33e、33fが伸びる。その結果、載置台32の背面側の端部は押し上げられ、端部での支持部材31との距離はd3よりも大きいd4となる。載置板32のヒンジ36で支持部材31と結合された部分は上下動できないため、載置台32はヒンジ36の回転軸を中心に反時計回りに回転し、前面側が下、背面側が上(
図7では右上がり)となるように傾斜する。
【0046】
載置台32の貫通穴32bの位置もヒンジ36から十分離れているので、このような回転に伴って、冷却手段21に対して相対的に上方に(左方にも僅かに)移動し、バッグ5の冷却手段21と接触する部分5cの面積は
図7の左側の場合に比べて減少する。そのため、飲料水供給装置1と同様に、バッグ5内の飲料水の凍結を防止することができる。
【0047】
また、バネ33e、33fとヒンジ36を含んで構成される移動手段は、バッグ5内の飲料水が少なくなったとき、排出口5bが位置するバッグ5の下面5aの前面側の端部(一端)が背面側の端部(他端)よりも低くなるように載置台32を傾斜させる。そのため、バッグ5内に残っている飲料水が排出口5bに集まり、全量を使い切りやすくなる。
【0048】
図8(a)、(b)、(c)は、載置台32を傾斜させる場合の移動手段の他の構成例である。
【0049】
図8(a)は、載置台32の前面側をヒンジ36で支持部材31と回転可能に結合し、背面側を
図5(a)と同様にバネ55を設けた吊り部材56で吊り下げた例である。
【0050】
図8(b)は、載置台32の前面側をトーションバネ57で支持部材31と回転可能に結合し、背面側はフリーとした例である。
【0051】
図8(c)は、
図4と同様の構造であるが、前面側のバネ58のバネ定数を背面側のバネ59のバネ定数よりも大きくした例である。同じ荷重の減少があった場合にバネ59の伸び量の方がバネ58の伸び量よりも大きくなり、その結果、載置台32は、バッグ5内の飲料水が少なくなったとき、傾きながら上方へ移動する。