特許第6235890号(P6235890)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235890
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】精錬装置用の浸漬管
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20171113BHJP
   C21C 7/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C21C7/10 C
   C21C7/00 Q
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-256188(P2013-256188)
(22)【出願日】2013年12月11日
(65)【公開番号】特開2015-113489(P2015-113489A)
(43)【公開日】2015年6月22日
【審査請求日】2016年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日鐵住金株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】特許業務法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤井 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正治
(72)【発明者】
【氏名】伊東 敏明
(72)【発明者】
【氏名】鷹居 宣光
【審査官】 藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−032523(JP,A)
【文献】 特開2011−111627(JP,A)
【文献】 特開2013−011002(JP,A)
【文献】 特開2010−248557(JP,A)
【文献】 特開2011−074439(JP,A)
【文献】 特開平08−283829(JP,A)
【文献】 特開2008−127677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C 7/00−7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の芯金の内外表面に耐火物を設けた精錬装置用の浸漬管であって、当該浸漬管の少なくとも下端部を定形耐火物とし、当該定形耐火物に設けた溝に前記芯金の下端部を挿入し、当該溝内に不定形耐火物を施工してなり、前記溝は、その内面に縦断面形状が円弧状の窪み部を有し、前記芯金は、その周面から半径方向に突出する支持金物を有し、前記窪み部の最深部を通る縦断面において、当該窪み部の両端を結ぶ直線の長さをLとしたときに、前記窪み部の最深部位置から芯金の周面に対し垂直に結んだ水平線から0.3Lの範囲内に支持金物の先端部中心位置が含まれる精錬装置用の浸漬管。
【請求項2】
前記定形耐火物が、精錬中に局部的に損傷する部位に配置される請求項1に記載の精錬装置用の浸漬管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の精錬装置に用いられる浸漬管に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉等で精錬が行われた溶鋼の二次精錬のため、浸漬管を介して取鍋中の溶鋼の成分調整を行うCAS(Composition Ajustment by Sealed Argon Bubbling)、取鍋に入れられた溶鋼を減圧脱ガス装置側に吸い上げて脱ガスし取鍋側に戻すRH(Ruhrstahl-Heraus)やDH(Dortmunt-Horde)等の脱ガス装置が用いられる。
【0003】
これら溶鋼を処理する二次精錬装置に接続される浸漬管は、基本的には円筒状の芯金の内外表面に耐火物を設けた構造を有し、かつてはその耐火物として不定形耐火物を主体とした構造がとられていたが、溶鋼の精錬中は少なくとも先端が溶鋼及びスラグ中に浸漬されるため、スラグによる溶損が大きく寿命が短かった。そこで不定形耐火物よりも耐用性に優れるマグネシア−クロム質れんがやマグネシア−カーボンれんが等の定形耐火物をスラグや溶鋼に接触する部位に配置し、溶損を抑えるようにした浸漬管を得るようになった。
【0004】
しかしながら、二次精錬装置における精錬処理が完了すると、浸漬管は取鍋の溶鋼やスラグの液面より退避させられ次の精錬処理に移行する。すなわち浸漬管は、精錬処理中は1600℃を超える溶鋼にさらされ、処理と処理の間は外気にさらされるため、急激な加熱と冷却を繰り返される。この繰り返しが継続されることで、定形耐火物や不定形耐火物に亀裂が発生してしまう。
【0005】
一般的に不定形耐火物は芯金に対し複数の金属製のスタッドで固定されているのに対し、定形耐火物はスタッドの設置が容易ではなく、芯金に対してはモルタル等によって接着されている程度であり、その固定力は比較的小さい。そのため、定形耐火物に亀裂が発生してしまうと、定形耐火物は脱落に至る可能性が高く、浸漬管の寿命を悪化させる可能性がある。
【0006】
そこで特許文献1には、筒状の芯金の内外表面に耐火物を設けた脱ガス装置の浸漬管において、浸漬管の下端部の定形耐火物に、芯金が入る溝と芯金の厚み方向に形成された固定穴に連通する係止穴とを設け、芯金を定形耐火物の溝に挿入し、固定穴と係止穴に固定ピンを挿入して芯金と定形耐火物とを固定する構造が提案されている。特許文献2には、芯金の周囲を不定形耐火物とし、その不定形耐火物の下方に定形耐火物を配し、両者をスタッドで結合し、使用段階において定形耐火物が脱落することを防止する構造が提案されている。
【0007】
また、特許文献3には、定形耐火物を浸漬管の内表面の上部から下部にかけて配置し、芯金と定形耐火物との間に不定形耐火物を配置し、不定形耐火物は金属製のスタッドで芯金に結合され、定形耐火物は不定形耐火物との境界面に部分的に凹状または凸状に形成された凹凸によって固定された構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−248557号公報
【特許文献2】特開2011−074439号公報
【特許文献3】特開2008−127677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の浸漬管では、固定ピンによって係止固定された部分に定形耐火物の全重量が掛かるため、当該部位から先行して亀裂が入りやすい点と、精錬中に溶鋼に浸漬される溶鋼浸漬部の定形耐火物に亀裂が生じた場合、亀裂より下部は支持効果が薄れてしまい定形耐火物が脱落しやすいという懸念があった。特許文献2の浸漬管では、スタッドを定形耐火物内部に直接配置する構造であり、スタッドと定形耐火物の接触点を起点とした亀裂が入りやすいという問題があった。
【0010】
また、特許文献3の浸漬管では、定形耐火物・不定形耐火物・スタッドのそれぞれの熱伝導率が大きく異なることに起因して、使用中に凹凸部の周辺やスタッドの周辺に温度差が発生してしまい、その温度差によって発生する熱応力で亀裂が入りやすいという問題があった。
【0011】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、円筒状の芯金の下端部を覆うように定形耐火物を配置した精錬装置用の浸漬管において、定形耐火物の亀裂発生及び脱落を防止できる構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明者は、円筒状の芯金の下端部を覆うように定形耐火物を配置した精錬装置用の浸漬管において、定形耐火物に設けた溝に、支持金物を設けた芯金の下端部を挿入し、当該溝内に不定形耐火物を施工する構造を採用することとし、この構造において溝の形状及び支持金物の位置関係に着目して検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、以下の精錬装置用の浸漬管を提供する。
(1)円筒状の芯金の内外表面に耐火物を設けた精錬装置用の浸漬管であって、当該浸漬管の少なくとも下端部を定形耐火物とし、当該定形耐火物に設けた溝に前記芯金の下端部を挿入し、当該溝内に不定形耐火物を施工してなり、前記溝は、その内面に縦断面形状が円弧状の窪み部を有し、前記芯金は、その周面から半径方向に突出する支持金物を有し、前記窪み部の最深部を通る縦断面において、当該窪み部の両端を結ぶ直線の長さをLとしたときに、前記窪み部の最深部位置から芯金の周面に対し垂直に結んだ水平線から0.3Lの範囲内に支持金物の先端部中心位置が含まれる精錬装置用の浸漬管。
(2)前記定形耐火物が、精錬中に局部的に損傷する部位に配置される(1)に記載の精錬装置用の浸漬管。
【0014】
このように本発明の浸漬管は、下端部の定形耐火物に設けた溝に芯金の下端部を挿入し、当該溝内に不定形耐火物を施工した構造において、溝の内面に縦断面形状が円弧状の窪み部を設け、定形耐火物が不定形耐火物と円弧状の窪み部をもって接するようにしたことで、定形耐火物の脱落を防止できる。
【0015】
また、本発明の浸漬管では、溝内の不定形耐火物を保持することを目的として芯金の周面からスタッドなどの支持金物を半径方向に突出させて設けている。ここで、浸漬管が精錬中に溶融金属に浸漬されると、稼働面側の定形耐火物を介して芯金に向かって伝熱され、特に本発明のように芯金にスタッドなどの支持金物を設けている場合、通常は定形耐火物と近接する支持金物の先端部に向かって優先的に伝熱すると考えられる。このことは、定形耐火物の溝内面から支持金物の先端部までの距離に応じて当該溝内面からの伝熱量が変わり、結果として定形耐火物の溝内面に部位によって温度差が生じることを意味する。この温度差は、定形耐火物の膨張差となり局部的応力を生じさせると考えられる。
【0016】
例えば特許文献3の浸漬管のように窪み(凹凸)やスタッドが任意の配置であると、それぞれの熱伝導率が大きく異なることに起因して、使用中に凹凸部の周辺やスタッドの周辺に温度差が発生してしまい、その温度差によって発生する熱応力で亀裂が入りやすかった。
【0017】
本発明者はこれらのことが定形耐火物の亀裂発生や脱落に直接影響するという点に着目し、上記温度差を小さくするための構成を採用することとした。すなわち、本発明の浸漬管は、「前記窪み部の最深部を通る縦断面において、当該窪み部の長さをLとしたときに、前記窪み部の最深部位置から芯金の周面に対し垂直に結んだ水平線から0.3Lの範囲内に支持金物の先端部中心位置が含まれる」という構成を有する。この構成により、定形耐火物の溝(窪み部)内面から支持金物の先端部までの距離の部位による違いを小さくすることができ、上記温度差を小さくすることができる。この温度差をより小さくする点からは、前記窪み部は、前記支持金物の先端部中心位置を中心とした円に沿う縦断面形状とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
このように本発明の浸漬管は、下端部の定形耐火物に設けた溝に芯金の下端部を挿入し、当該溝内に不定形耐火物を施工した構造において、溝の内面に縦断面形状が円弧状の窪み部を設けること、及びその窪み部と溝内の不定形耐火物を支持する支持金物との位置関係を適正化することにより、定形耐火物の大亀裂発生及び脱落を防止でき、浸漬管の寿命を延長することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1による浸漬管を中心軸で切断した縦断面図である。
図2図1の浸漬管において、定形耐火物を設けた部位を拡大した図である。
図3】本発明の実施例1における、定形耐火物の窪み部と支持金物との位置関係を示す図である。
図4】本発明の実施例4における、定形耐火物の窪み部と支持金物との位置関係を示す図である。
図5】本発明の比較例1における、定形耐火物の窪み部と支持金物との位置関係を示す図である。
図6】本発明の比較例2における、定形耐火物の窪み部と支持金物との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように本発明の浸漬管は、上部にフランジを有する円筒状の芯金10の内外表面に耐火物(定形耐火物20及び不定形耐火物30)を設けた精錬装置用の浸漬管であって、その少なくとも下端部を定形耐火物20とし、定形耐火物20に設けた溝21に芯金10の下端部を挿入し、溝21内と定形耐火物20の上部とに不定形耐火物30を施工してなる。
【0021】
溝21は、その内面に縦断面形状が円弧状の窪み部21aを有し、芯金10は、その周面から半径方向に突出する棒状の支持金物11を有する。そして本発明では、窪み部21aの最深部を通る縦断面(図1)において、窪み部21aの長さをLとしたときに、窪み部21aの最深部位置から芯金10の周面に垂直に結んだ水平線に対し0.3Lの範囲内に支持金物11の先端部中心位置が含まれる。なお、図1及び図2において最下端に位置する支持金物11はY字状であるが、このように先端が分岐した支持金物11において上記の「先端部中心位置」とは、分岐した先端を直線で結んだ線の中間点のことをいう。
【0022】
以上の構成において、定形耐火物20は、不定形耐火物30と円弧状の窪み部21aをもって接するので、その窪み部21aのアンカー効果により不定形耐火物30を介して芯金10に強固に保持される。更に不定形耐火物30は、支持金物11によって芯金10に強固に保持される。したがって、定形耐火物20は不定形耐火物30を介して芯金10に強固に保持されるため、定形耐火物20の脱落を防止できる。
【0023】
また本発明では、窪み部21aの最深部位置と支持金物11の先端部中心位置との位置関係を上記のとおりに規定することで、定形耐火物20の窪み部21a内面から支持金物11の先端部までの距離の部位による違いを小さくしている。これにより、先に説明した定形耐火物20の溝21内面の部位による「温度差」を小さくすることができ、定形耐火物20の大亀裂発生及び脱落を防止できる。すなわち、定形耐火物20の窪み部21a内面から支持金物11の先端部中心位置までの部位による「距離の差」(距離のバラツキ)を小さくすることにより、先に説明した精錬稼働中の伝熱に伴う、定形耐火物の溝21内面に局部的に温度が異なる現象が発生することを防止できる。
【0024】
本発明において窪み部21aの縦断面形状を円弧状とする理由は、上記「距離の差」を小さくすることが容易であることに加え、窪み部21aが熱応力による亀裂の起点となり難いこと、定形耐火物の製造において形状をなすことが容易なことが挙げられる。
【0025】
窪み部21aは、溝21の内面の全周にわたって連続的に、又は周方向に対し断続的にされる。断続的に窪み部が形成される場合には窪み部21aの幅(円周方向の長さ)は、水平方向への温度差を小さくする点から、縦断面における窪み部21aの長さL以上であれば十分である。また、窪み部21aの長さLは20mm以上100mm以下が適している。Lが20mm未満では温度差が大きくなり、100mmを超えると使用時に定形耐火物と不定形耐火物との熱膨張差に起因する亀裂が定形耐火物に発生しやすくなる。支持金物11の長さは、支持金物11を設けた芯金10が溝21に入る程度の長さまでとすることが製造時の作業性の面から好ましい。窪み部21aの深さ、すなわち窪み部の最深部位置は、支持金物11の先端部中心位置からL/2以上であればよい。
【0026】
本発明の浸漬管において、スラグと溶融金属の境界位置、すなわちスラグラインは、精錬中に局部的に損傷する部位(局損部)となるため、その部位に一般的に不定形耐火物よりも耐食性に優れる定形耐火物を配置することが好ましい。スラグラインの位置は、浸漬管の浸漬深さなどの諸条件によって変化するため、局損部はスラグラインの位置の変化に応じた範囲を持つ。具体的に局損部に配置される定形耐火物20の材質としては、高耐食性で耐スポーリング性に優れるマグネシア−カーボン材質やマグネシア−スピネル−カーボン材質が挙げられる。この定形耐火物20は、芯金10の円周方向に複数個でリング状に配置される。
【0027】
一方、不定形耐火物30としては、施工性、膨張性、熱伝導率及び強度のバランスから、アルミナ質又はアルミナ−マグネシア質の流し込み材が好適に使用される。
【実施例】
【0028】
各実施例及び比較例において、定形耐火物の窪み部の温度に対する支持金物の位置が与える影響について、シミュレーション計算で各部の温度と熱膨張を計算し、更に実炉テストを行った結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1では、図3図6に示すように窪み部21aの最深部位置に対する支持金物11の先端部中心位置を変えて、それぞれの場合の定形耐火物の窪み部の温度のシミュレーション計算結果を示した。なお、図中A位置は窪み部21aの最上端位置、B位置はA位置から45°下方の窪み部21aの内面位置、C位置は窪み部21aの最深部位置である。
【0031】
シミュレーション計算は、定形耐火物としてカーボン含有量が15質量%のマグネシア−カーボンれんがを適用して実施した。これは直接溶鋼に浸漬する部位ではカーボン含有量が少ないと熱衝撃による割れが発生し、カーボン含有量が多いと溶鋼中へのカーボン溶出が懸念されることから、カーボン含有量15質量%のマグカーボンれんがが一般的であるためである。また、不定形耐火物としてはハイアルミナ質流し込み材を適用した。これは耐火性を有し、かつ定形耐火物と芯金との間を隙間なく充填するためである。
【0032】
定形耐火物(マグネシア−カーボンれんが)の1000℃における熱伝導率を17W・m-1・K-1、不定形耐火物(ハイアルミナ質流し込み材)の600℃における熱伝導率を2W・m-1・K-1、溶融金属に接する定形耐火物稼働表面の温度を1600℃、芯金の温度を220℃と想定して計算を行った。この計算結果の温度における各材料の熱膨張率は、各材料の熱膨張率を予め測定したデータを使用した。
【0033】
なお、表中温度の計算に使用した熱伝導率は、JIS R 2616に記載の熱流法に準じて測定されたものであり、熱膨張率(%)は、JIS
R 2207の押し棒式法に準じ窒素雰囲気下で測定されたデータを用いた。
【0034】
実炉テストは、実施例1、実施例4、実施例5、比較例1及び比較例2について行った。
【0035】
図1に示す実施例1の浸漬管は、フランジ、芯金10、及び支持金物11を溶接によって一体化し、この一体化物を、定形耐火物20の溝21に装入し、溝21と定形耐火物20の上部に不定形耐火物30を施工することで製造した。定形耐火物20は、円周方向に30個に分割されたものでその高さは500mmとした。定形耐火物20と不定形耐火物30としては、それぞれ前記のシミュレーション計算で使用したマグネシア−カーボンれんがとハイアルミナ質流し込み材を使用した。なお、溝21と窪み21aは定形耐火物に成形後に加工することで設けた。
【0036】
溝21は、深さが350mm、幅が82mmである。窪み部21aは溝21の壁に連続して芯金10と同心円状になるように設けている。窪み部21aは縦断面形状が半径15mmの半円で、長さLは30mmである。芯金10は、厚みが22mmで内径が1184mmである。芯金の側面に位置する支持金物11は円柱で長さが25mm、外径が10mmである。最下端に位置する支持金物11は、外径が5mmのY字状で長さは25mmである。
【0037】
なお、実施例2〜実施例4及び比較例1〜比較例2は支持金物の位置以外の構造は実施例1と同じである。実施例5は、窪み部は縦断面形状が半径10mmの半円で、長さLは20mmとし、これら以外は実施例1と同じである。
【0038】
これら浸漬管を実機のRHにて使用した。当該RHは浸漬管を2本有しており、浸漬管はそれぞれフランジ構造にてボルト止めされる。2本の浸漬管はアルゴンガスを流し、溶鋼を上昇させる側を上昇側、逆側を下降側と呼んでおり、本実施例では、本発明浸漬管も比較用浸漬管もそれぞれ下降側にて使用した。この際、取鍋には平均410トンの溶鋼が入っており、1鍋処理ごとに1chと数え、浸漬管の寿命を交換するまで使用したch数で比較した。なお、1chあたりの平均処理時間、すなわち浸漬管が溶鋼にさらされる時間は17分、処理間の時間は5分〜20分であった。
【0039】
表1において実施例1は、図3に示すように支持金物11の先端部中心位置を窪み部21aの最深部位置から芯金10の周面に垂直に結んだ水平線に合わせた例である。C位置とA位置との温度差は86℃で、そのときの膨張率の差は0.10である。実炉テストでは52chで交換となった。定形耐火物の小さな亀裂は見られたものの脱落は見られず、耐用回数を大幅に向上させることができた。
【0040】
実施例4は、図5に示すように支持金物11の先端部中心位置が、窪み部21aの最深部位置から芯金10の周面に垂直に結んだ水平線から0.3L離れている場合であり、A位置とC位置との温度差は433℃、及び膨張率の差は0.48である。定形耐火物の小さな亀裂は見られたものの脱落は見られず、耐用回数は48回と良好であった。
【0041】
実施例5は、Lが20mmの場合で、支持金物11の先端部中心位置が窪み部21aの最深部位置から芯金10の周面に垂直に結んだ水平線から0.3L離れている場合であり、A位置とC位置との温度差は137℃、及び膨張率の差は0.15である。定形耐火物の小さな亀裂は見られたものの脱落は見られず、耐用回数は50回と良好であった。
【0042】
比較例1は、図5に示すように支持金物11の先端部中心位置が、窪み部21aの最深部位置から芯金10の周面に垂直に結んだ水平線から0.4L離れている場合であり、A位置とC位置との温度差は551℃、及び膨張率の差も0.61と大きい。実炉テストでは定形耐火物に大きな亀裂が発生したため35chで交換となった。
【0043】
比較例2は、図6に示すように支持金物11の先端部中心位置が、窪み部21aの最深部位置から芯金10の周面に垂直に結んだ水平線から0.5L離れている場合であり、A位置とC位置との温度差は653℃、及び膨張率の差も0.72と大きい。実炉テストでは定形耐火物に大きな亀裂が発生し、一部の定形耐火物が脱落したため30chで交換となった。
【0044】
実施例2及び3については、図示は省略するが、実施例2は支持金物11の先端部中心位置が、窪み部21aの最深部位置から芯金10の周面に垂直に結んだ水平線から0.1L離れている場合、実施例3は同様に0.2L離れている場合である。いずれも実施例4に比べ、A位置とC位置との温度差及び膨張率の差は小さい。したがって、実炉においても、実施例4より優れた結果が得られると考えられる。
【0045】
また、定形耐火物の厚みは一定のため内面での上下方向での温度差はほとんどないため、支持金物の先端中心位置と窪み部の最新部位置を結ぶ直線に対して、温度分布はほぼ対称になっていると考えられる。したがって表1より、支持金物の先端部中心位置が、窪み部の最深部位置から芯金の周面に対し垂直に結んだ水平線から0.3Lの範囲であれば、本発明の効果が得られる。
【符号の説明】
【0046】
10 芯金
11 支持金物
20 定形耐火物
21 溝
21a 窪み部
30 不定形耐火物
図1
図2
図3
図4
図5
図6