【実施例】
【0055】
[めっき鋼板の準備]
電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.5mm、めっき付着量:片面20g/m
2)を用意し、その表面の算術平均粗さRaを調質圧延により0.16μmに調整した。表面粗さを調整した当該めっき鋼板の表面を湯洗し、当該表面にクロムフリー化成処理液をバーコーターで塗布した。
【0056】
クロムフリー化成処理液には、チタンフッ化水素酸(H
2TiF
6):0.1mol/Lおよびジルコンフッ化水素酸(H
2ZrF
6):0.1mol/Lの混合溶液を用いた。上記めっき鋼板への当該処理液の塗布量は、TiおよびZrの総金属元素換算付着量で3.5mg/m
2であった。
【0057】
上記めっき鋼板を、鋼板の到達板温を100℃で10秒間維持するように加熱して、上記めっき鋼板の表面に化成処理皮膜を形成した。こうして、Raが0.16μmであり、化成処理されためっき鋼板を得た。
【0058】
[赤色下塗り塗料の調製]
100質量部のポリエステル樹脂(バイロン560、東洋紡株式会社製)および10質量部のメラミン樹脂(サイメル303;日本サイテック インダストリーズ株式会社製)の混合物に溶剤を加え、樹脂固形分が40質量%となる樹脂溶液を調製した。当該樹脂溶液に酸性触媒(キャタリスト600、日本サイテック インダストリーズ株式会社製)を0.5質量%加え、クリア塗料を調製した。当該クリア塗料に、上記樹脂固形分100質量部に対して5質量部のピグメントレッド254(PR254)を加え、赤色下塗り塗料1−0を得た。
【0059】
なお、「バイロン」は、東洋紡株式会社の登録商標である。「サイメル」は、サイテック テクノロジー コーポレーションの登録商標である。
【0060】
赤色下塗り塗料1−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(「CS」とも称す。D90:5.2μm、屈折率(n
1):1.49)をさらに加え、赤色下塗り塗料1−1を得た。
【0061】
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(「MP」とも称す。D90:2.7μm、屈折率(n
1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−2を得た。
【0062】
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:3.9μm、屈折率(n
1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−3を得た。
【0063】
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n
1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−4を得た。
【0064】
カルシウムシリケートに代えて酸化亜鉛(「ZO」とも称す。D90:1.5μm、屈折率(n
1):2.00)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−5を得た。
【0065】
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:8.4μm、屈折率(n
1):1.60)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−1と同様にして、赤色下塗り塗料1−C1を得た。
【0066】
[黄色下塗り塗料の調製]
ピグメントレッド254に代えてピグメントイエロー139(PY139)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−0と同様にして、黄色下塗り塗料2−0を得た。
【0067】
黄色下塗り塗料2−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(D90:5.2μm、屈折率(n
1):1.49)をさらに加え、黄色下塗り塗料2−1を得た。
【0068】
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n
1):1.60)を用いた以外は、黄色下塗り塗料2−1と同様にして、黄色下塗り塗料2−2を得た。
【0069】
カルシウムシリケートに代えて酸化亜鉛(D90:1.5μm、屈折率(n
1):2.00)を用いた以外は、黄色下塗り塗料2−1と同様にして、黄色下塗り塗料2−C1を得た。
【0070】
[青色下塗り塗料の調製]
ピグメントレッド254に代えてピグメントブルー15:4(PB15:4)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−0と同様にして、青色下塗り塗料3−0を得た。
【0071】
青色下塗り塗料3−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(D90:5.2μm、屈折率(n
1):1.49)をさらに加え、青色下塗り塗料3−1を得た。
【0072】
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n
1):1.60)を用いた以外は、青色下塗り塗料3−1と同様にして、青色下塗り塗料3−2を得た。
【0073】
上記樹脂固形分100質量部に対するリン酸マグネシウムの添加量を20質量部から60質量部に変えた以外は、青色下塗り塗料3−2と同様にして、青色下塗り塗料3−C1を得た。
【0074】
[緑色下塗り塗料の調製]
ピグメントレッド254に代えてピグメントグリーン36(PG36)を用いた以外は、赤色下塗り塗料1−0と同様にして、緑色下塗り塗料4−0を得た。
【0075】
緑色下塗り塗料4−0に、上記樹脂固形分100質量部に対して20質量部のカルシウムシリケート(D90:5.2μm、屈折率(n
1):1.49)をさらに加え、緑色下塗り塗料4−1を得た。
【0076】
カルシウムシリケートに代えてリン酸マグネシウム(D90:5.6μm、屈折率(n
1):1.60)を用いた以外は、緑色下塗り塗料4−1と同様にして、緑色下塗り塗料4−2を得た。
【0077】
上記樹脂固形分100質量部に対するリン酸マグネシウムの添加量を20質量部から2質量部に変えた以外は、緑色下塗り塗料4−2同様にして、緑色下塗り塗料4−C1を得た。
【0078】
なお、防錆顔料の屈折率は、JIS K7142中のB法に準じて以下の方法で行った。まず、屈折率を測定する防錆顔料の粒子をスライドガラス上に載せ、防錆顔料の粒子にカーギル標準屈折液を滴下して防錆顔料の粒子と屈折液をよく混合した。その後、スライドガラスの下からナトリウムランプの光を照射して、スライドガラスの上から防錆顔料の粒子の輪郭を観察し、当該粒子の輪郭が見えなくなるときの屈折液の屈折率を防錆顔料の屈折率とした。
【0079】
また、防錆顔料の上記D90は、レーザー回折・散乱法によって測定された粒度分布から求めた。
【0080】
[クリア上塗り塗料1〜3の準備]
クリア上塗り塗料1として、アクリル系クリア塗料(C951、日本ファインコーティングス株式会社製)を用意した。クリア上塗り塗料1の塗膜(上塗りクリア塗膜1)の屈折率(n
2)は、1.50であり、ヘイズ値は1.2%であった。
【0081】
クリア上塗り塗料2として、フッ素系クリア塗料(ディックフローEFクリア、日本ファインコーティングス株式会社製)を用意した。「ディックフロー」は、DIC株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料2の塗膜(クリア上塗り塗膜2)の屈折率(n
2)は、1.42であり、ヘイズ値は6.8%であった。
【0082】
クリア上塗り塗料3として、フッ素系クリア塗料(Vフロン#5000、大日本塗料株式会社製)を用意した。「Vフロン」は、大日本塗料株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料3の塗膜(クリア上塗り塗膜3)の屈折率(n
2)は、1.45であり、ヘイズ値は7.9%であった。
【0083】
クリア上塗り塗料4として、アクリル系クリア塗料(Vハード#501、大日本塗料株式会社製)を用意した。「Vハード」は、大日本塗料株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料4の塗膜(クリア上塗り塗膜4)の屈折率(n
2)は、1.50であり、ヘイズ値は2.1%であった。
【0084】
クリア上塗り塗料5として、ポリエステル系クリア塗料(Vニット#520、大日本塗料株式会社製)を用意した。「Vニット」は、大日本塗料株式会社の登録商標である。クリア上塗り塗料5の塗膜(クリア上塗り塗膜5)の屈折率(n
2)は、1.63であり、ヘイズ値は4.8%であった。
【0085】
上記のクリア上塗り塗膜1〜5は、クリア上塗り塗料の塗膜を後述するクリア上塗り塗膜の作製を同じ条件で作製した。上記屈折率は、20℃の雰囲気中で、ナトリウムD光源の光でクリア上塗り塗膜1〜5のそれぞれの表面を照らし、当該表面で反射した光をアッベ屈折計で測定することによって求めた。また、上記ヘイズ値は、JIS K7136の規定に準拠される方法によって測定した。
【0086】
以下、塗装鋼板について説明するが、以下の説明において、防錆顔料を含有する塗装鋼板を実施例または比較例とし、防錆顔料を含有しない塗装鋼板の例を対照例とする。
【0087】
[対照例1]
赤色下塗り塗料1−0を上記めっき鋼板の表面に塗布し、215℃で50秒間加熱してめっき鋼板に焼き付けて、膜厚6μmの赤色下塗り塗膜1−0を上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−0を得た。
【0088】
赤色下塗り塗膜1−0のハンターのLab法でのL値、a値およびb値のそれぞれを、赤色下塗り塗膜1−0の色の分光光度計による測定結果からハンター色差式により算出して求めた。赤色下塗り塗膜1−0のL値は21.8であり、a値は25.2であり、b値は7.8であった。
【0089】
次いで、クリア上塗り塗料1を赤色下塗り塗膜1−0の表面に塗布し、230℃で50秒間加熱して赤色下塗り塗膜1−0に焼き付けて、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−0および膜厚15μmのクリア上塗り塗膜1をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−0を得た。
【0090】
赤色塗装鋼板1−0の、ハンターのLab法でのL値、a値およびb値のそれぞれを、赤色塗装鋼板1の表面の分光測色計(CM3700d、コニカミノルタオプティクス株式会社製)による測定結果からハンター色差式により算出して求めた。また、上記a値およびb値より、彩度(C)を下記式より求めた。さらに、光沢度計(VG−2000、日本電色工業株式会社製)を用いて、赤色塗装鋼板1の表面の光沢度を測定した。赤色塗装鋼板1−0のL値は18.8であり、a値は27.5であり、b値は7.3であり、彩度は28.4であり、光沢度は110%であった。
【0091】
【数1】
【0092】
[実施例1〜4]
赤色下塗り塗料1−0を赤色下塗り塗料1−1〜1−4のそれぞれに代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、赤色下塗り塗膜1−1〜1−4のそれぞれを上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−1〜1−4をそれぞれ作製した。
【0093】
赤色下塗り塗膜1−1のL値は34.5であり、a値は19.4であり、b値は9.1であった。赤色下塗り塗膜1−2のL値は29.7であり、a値は20.5であり、b値は8.8であった。赤色下塗り塗膜1−3のL値は32.7であり、a値は19.3であり、b値は9.0であった。赤色下塗り塗膜1−4のL値は34.8であり、a値は19.0であり、b値は7.2であった。
【0094】
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて赤色下塗り鋼板1−1〜1−4のそれぞれを用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−1〜1−4のそれぞれ、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−1〜1−4をそれぞれ得た。
【0095】
赤色塗装鋼板1−1のL値は20.5であり、a値は29.8であり、b値は7.5であり、彩度は30.7であり、光沢度は92%であった。赤色塗装鋼板1−2のL値は20.0であり、a値は30.3あり、b値は8.1であり、彩度は31.4であり、光沢度は98%であった。赤色塗装鋼板1−3のL値は20.2であり、a値は29.8であり、b値は8.8であり、彩度は31.0であり、光沢度は92%であった。赤色塗装鋼板1−4のL値は21.4であり、a値は28.2であり、b値は7.8であり、彩度は29.3であり、光沢度は85%であった。
【0096】
また、赤色塗装鋼板1−1における、クリア上塗り塗膜1の屈折率(n
2)と、赤色下塗り塗膜1−1に添加された防錆顔料(カルシウムシリケート)の屈折率(n
1)との差の絶対値(以下「Δn
12」とも言う)は、0.01であった。赤色塗装鋼板1−2〜1−4におけるΔn
12は、いずれも0.10であった。
【0097】
[実施例5]
クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料4を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−3と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−3およびクリア上塗り塗膜4、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−5を得た。
【0098】
赤色塗装鋼板1−5のL値は19.8であり、a値は29.8であり、b値は8.2であり、彩度は30.9であり、光沢度は96%であり、Δn
12は0.10であった。
【0099】
[実施例6]
クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料5を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−3と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−3およびクリア上塗り塗膜5、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−6を得た。
【0100】
赤色塗装鋼板1−6のL値は19.0であり、a値は27.8であり、b値は8.8であり、彩度は29.2であり、光沢度は94%であり、Δn
12は0.03であった。
【0101】
[実施例7]
赤色下塗り塗料1−0を赤色下塗り塗料1−5に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、赤色下塗り塗膜1−5を上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−5を作製した。赤色下塗り塗膜1−5のL値は38.5であり、a値は18.7であり、b値は7.6であった。
【0102】
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて赤色下塗り鋼板1−5を用い、クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料5を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−5およびクリア上塗り塗膜5、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−7を得た。
【0103】
赤色塗装鋼板1−7のL値は23.5であり、a値は28.2であり、b値は8.1であり、彩度は29.3であり、光沢度は88%であり、Δn
12は0.37であった。
【0104】
[比較例1]
赤色下塗り塗料1−0を赤色下塗り塗料1−C1に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、赤色下塗り塗膜1−C1を上記めっき鋼板の表面に有する赤色下塗り鋼板1−C1を作製した。赤色下塗り塗膜1−C1のL値は35.2であり、a値は19.2であり、b値は7.2であった。
【0105】
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて赤色下塗り鋼板1−C1を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−C1およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−C1を得た。
【0106】
赤色塗装鋼板1−C1のL値は23.5であり、a値は26.2であり、b値は7.3であり、彩度は27.2であり、光沢度は87%であり、Δn
12は0.10であった。
【0107】
[比較例2]
クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料2を用いた以外は、赤色塗装鋼板1−4と同様にして、めっき鋼板、赤色下塗り塗膜1−4およびクリア上塗り塗膜2、をこの順に重ねてなる赤色塗装鋼板1−C2を得た。
【0108】
赤色塗装鋼板1−C2のL値は21.2であり、a値は29.6であり、b値は7.6であり、彩度は30.6であり、光沢度は78%であり、Δn
12は0.18であった。
【0109】
[対照例2]
赤色下塗り塗料1−0を黄色下塗り塗料2−0に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、黄色下塗り塗膜2−0を上記めっき鋼板の表面に有する黄色下塗り鋼板2−0を作製した。
【0110】
黄色下塗り塗膜2−0のL値は37.4であり、a値は−11.1であり、b値は22.4であった。
【0111】
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて黄色下塗り鋼板2−0を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、黄色下塗り塗膜2−0およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる黄色塗装鋼板2−0を得た。
【0112】
黄色塗装鋼板2−0のL値は32.8であり、a値は−13.3であり、b値は20.0であり、彩度は24.0であり、光沢度は117%であった。
【0113】
[実施例8、9]
黄色下塗り塗料2−0を黄色下塗り塗料2−1または2−2に代えた以外は、黄色下塗り鋼板2−0と同様にして、黄色下塗り塗膜2−1または2−2を上記めっき鋼板の表面に有する黄色下塗り鋼板2−1、2−2をそれぞれ作製した。
【0114】
黄色下塗り塗膜2−1のL値は52.2であり、a値は0.98であり、b値は30.8であった。また、黄色下塗り塗膜2−2のL値は54.6であり、a値は0.74であり、b値は28.9であった。
【0115】
次いで、黄色下塗り鋼板2−0に代えて黄色下塗り鋼板2−1または2−2を用いる以外は、黄色塗装鋼板2−0と同様にして、めっき鋼板、黄色下塗り塗膜2−1または2−2、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる黄色塗装鋼板2−1、2−2をそれぞれ得た。
【0116】
黄色塗装鋼板2−1のL値は38.8であり、a値は−9.8であり、b値は22.5であり、彩度は、24.5であり、光沢度は98%であり、Δn
12は0.01であった。黄色塗装鋼板2−2のL値は39.2であり、a値は−8.8であり、b値は25.5であり、彩度は27.0であり、光沢度は100%であり、Δn
12は0.10であった。
【0117】
[比較例3]
黄色下塗り塗料2−0を黄色下塗り塗料2−C1に代えた以外は、黄色下塗り鋼板2−0と同様にして、黄色下塗り塗膜2−C1を上記めっき鋼板の表面に有する黄色下塗り鋼板2−C1を作製した。
【0118】
黄色下塗り塗膜2−C1のL値は62.8であり、a値は0.62であり、b値は25.5であった。
【0119】
次いで、黄色下塗り鋼板2−0に代えて黄色下塗り鋼板2−C1を用い、クリア上塗り塗料1に代えてクリア上塗り塗料3を用いる以外は、黄色塗装鋼板1と同様にして、めっき鋼板、黄色下塗り塗膜2−C1、および、クリア上塗り塗膜3、をこの順に重ねてなる黄色塗装鋼板2−C1を得た。
【0120】
黄色塗装鋼板2−C1のL値は55.8であり、a値は−1.2であり、b値は22.5であり、彩度は22.5であり、光沢度は76%であり、Δn
12は0.55であった。
【0121】
[対照例3]
赤色下塗り塗料1−0を青色下塗り塗料3−0に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、青色下塗り塗膜3−0を上記めっき鋼板の表面に有する青色下塗り鋼板3−0を作製した。
【0122】
青色下塗り塗膜3−0のL値は26.2であり、a値は−4.2であり、b値は−22.8であった。
【0123】
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて青色下塗り鋼板3−0を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、青色下塗り塗膜3−0およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる青色塗装鋼板3−0を得た。
【0124】
青色塗装鋼板3−0のL値は23.2であり、a値は−8.9であり、b値は−15.0であり、彩度は17.4であり、光沢度は99%であった。
【0125】
[実施例10、11]
青色下塗り塗料3−0を青色下塗り塗料3−1または3−2に代えた以外は、青色下塗り鋼板3−0と同様にして、青色下塗り塗膜3−1または3−2を上記めっき鋼板の表面に有する青色下塗り鋼板3−1、3−2をそれぞれ作製した。
【0126】
青色下塗り塗膜3−1のL値は30.2であり、a値は0.48であり、b値は−31.2であった。また、青色下塗り塗膜3−2のL値は32.9であり、a値は0.50であり、b値は−30.5であった。
【0127】
次いで、青色下塗り鋼板3−0に代えて青色下塗り鋼板3−1または3−2を用いる以外は、青色塗装鋼板3−0と同様にして、めっき鋼板、青色下塗り塗膜3−1または3−2、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる青色塗装鋼板3−1、3−2をそれぞれ得た。
【0128】
青色塗装鋼板3−1のL値は24.5であり、a値は−5.8であり、b値は−20.8であり、彩度は21.6であり、光沢度は89%であり、Δn
12は0.01であった。青色塗装鋼板3−2のL値は25.1であり、a値は−4.6であり、b値は−26.4であり、彩度は26.8であり、光沢度は91%であり、Δn
12は0.10であった。
【0129】
[比較例4]
青色下塗り塗料3−0を青色下塗り塗料3−C1に代えた以外は、青色下塗り鋼板3−0と同様にして、青色下塗り塗膜3−C1を上記めっき鋼板の表面に有する青色下塗り鋼板3−C1を作製した。
【0130】
青色下塗り塗膜3−C1のL値は41.2であり、a値は0.22であり、b値は−26.8であった。
【0131】
次いで、青色下塗り鋼板3−0に代えて青色下塗り鋼板3−C1を用いる以外は、青色塗装鋼板3−0と同様にして、めっき鋼板、青色下塗り塗膜3−C1、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる青色塗装鋼板3−C1を得た。
【0132】
青色塗装鋼板3−C1のL値は33.3であり、a値は−1.2であり、b値は−17.2であり、彩度は17.2であり、光沢度は82%であり、Δn
12は0.10であった。
【0133】
[対照例4]
赤色下塗り塗料1−0を緑色下塗り塗料4−0に代えた以外は、赤色下塗り鋼板1−0と同様にして、緑色下塗り塗膜4−0を上記めっき鋼板の表面に有する緑色下塗り鋼板4−0を作製した。
【0134】
緑色下塗り塗膜4−0のL値は30.1であり、a値は−23.0であり、b値は−0.38であった。
【0135】
次いで、赤色下塗り鋼板1−0に代えて緑色下塗り鋼板4−0を用いる以外は、赤色塗装鋼板1−0と同様にして、めっき鋼板、緑色下塗り塗膜4−0およびクリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる緑色塗装鋼板4−0を得た。
【0136】
緑色塗装鋼板4−0のL値は25.2であり、a値は−25.1であり、b値は1.3であり、彩度は25.1であり、光沢度は99%であった。
【0137】
[実施例12、13]
緑色下塗り塗料4−0を緑色下塗り塗料4−1または4−2に代えた以外は、緑色下塗り鋼板4−0と同様にして、緑色下塗り塗膜4−1または4−2を上記めっき鋼板の表面に有する緑色下塗り鋼板4−1、4−2をそれぞれ作製した。
【0138】
緑色下塗り塗膜4−1のL値は36.7であり、a値は−25.5であり、b値は2.8であった。また、緑色下塗り塗膜4−2のL値は35.6であり、a値は−27.4であり、b値は3.2であった。
【0139】
次いで、緑色下塗り鋼板4−0に代えて緑色下塗り鋼板4−1または4−2を用いる以外は、緑色塗装鋼板4−0と同様にして、めっき鋼板、緑色下塗り塗膜4−1または4−2、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる緑色塗装鋼板4−1、4−2をそれぞれ得た。
【0140】
緑色塗装鋼板4−1のL値は26.6であり、a値は−28.2であり、b値は3.8であり、彩度は28.5であり、光沢度は93%であり、Δn
12は0.01であった。緑色塗装鋼板4−2のL値は28.4であり、a値は−31.9であり、b値は4.7であり、彩度は32.2であり、光沢度は89%であり、Δn
12は0.10であった。
【0141】
[比較例5]
緑色下塗り塗料4−0を緑色下塗り塗料4−C1に代えた以外は、緑色下塗り鋼板4−0と同様にして、緑色下塗り塗膜4−C1を上記めっき鋼板の表面に有する緑色下塗り鋼板4−C1を作製した。
【0142】
緑色下塗り塗膜4−C1のL値は33.2であり、a値は−24.3であり、b値は0.25であった。
【0143】
次いで、緑色下塗り鋼板4−0に代えて緑色下塗り鋼板4−C1を用いる以外は、緑色塗装鋼板4−0と同様にして、めっき鋼板、緑色下塗り塗膜4−C1、および、クリア上塗り塗膜1、をこの順に重ねてなる緑色塗装鋼板4−C1を得た。
【0144】
緑色塗装鋼板4−C1のL値は25.8であり、a値は−26.4であり、b値は1.9であり、彩度は26.5であり、光沢度は97%であり、Δn
12は0.10であった。
【0145】
[評価]
(1)光沢
赤色塗装鋼板1−0〜1−7、1−C1および1−C2、黄色塗装鋼板2−0〜2−2および2−C1、青色塗装鋼板3−0〜3−2および3−C1、ならびに、緑色塗装鋼板4−0〜4−2および4−C1、のそれぞれの塗膜の60°光沢度(%)を以下の基準により評価した。
◎:60°光沢度が100%以上
○:60°光沢度が80%以上100%未満
×:60°光沢度が80%未満
【0146】
(2)色調
各色の実施例または比較例の塗装鋼板のL値から、各色の対照例の塗装鋼板のL値を引いた値(ΔL)を求めた。また、各色の実施例または比較例の塗装鋼板の彩度から、各色の対照例の塗装鋼板の彩度を引いた値(ΔC)を求めた。そして、ΔLおよびΔCを、以下の基準により評価した。
(ΔL)
◎:ΔLが2以下
○:ΔLが2超5以下
△:ΔLが5超7以下
×:ΔLが7超
(ΔC)
○:ΔCが0以上(対照例に対して彩度が向上)
×:ΔCが負(対照例に対して彩度が低下)
【0147】
さらに、三名の被験者が、各色の対照例の塗装鋼板を基準に、各色の実施例または比較例の塗装鋼板の塗膜の色調を目視にて観察、以下の基準により評価した。なお、「防錆顔料の影響」とは、より白っぽく色調が変化した、と感じられたことを言う。
(目視)
◎:対照例に対して色調の変化がない
○:対照例に対して色調はわずかに異なるが、防錆顔料の影響は見られない
×:対照例に対して色調が異なり、防錆顔料の影響が見られる
【0148】
(3)耐食性
各色の塗装鋼板に対し、めっき鋼板のめっき層に達するようにナイフでX型のクロスカット傷を入れ、JIS Z2371に準じて35℃の5%塩化ナトリウム水溶液を、塗膜のクロスカット部に240時間噴霧する塩水噴霧試験を行った。当該試験後のクロスカット部の最大膨れ幅を測定し、以下の基準により評価した。なお、上記最大膨れ幅とは、(クロスカット部からのふくれの侵入深さが最大になっている幅)を言う。
◎:最大膨れ幅が2mm以下
○:最大膨れ幅が2mm超4mm以下
△:最大膨れ幅が4mm超5mm以下
×:最大膨れ幅が5mm超
【0149】
上記各色の対照例、実施例および比較例の塗装鋼板の構成を表1に、当該塗装鋼板の色の測定結果および評価結果を表2に、それぞれ示す。
【0150】
【表1】
【0151】
【表2】
【0152】
表1および表2より明らかなように、実施例1〜13の各色の塗装鋼板は、いずれも、2コート2ベークで製造され、高い光沢を呈し、明度の増加が抑えられた鮮やかな色合いを呈し、かつ十分な耐食性を有している。これは、前述した防錆顔料による下塗り塗膜の表面積拡大効果、および、上塗り塗膜による防錆顔料での光の反射率減少効果、がいずれも十分に奏されているため、と考えられる。
【0153】
一方で、比較例1の赤色塗装鋼板1−C1は、彩度が低下し、色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、防錆顔料の粒径D90が下塗り塗膜の膜厚に対して大きすぎ、防錆顔料の外観や色調などが赤色塗装鋼板の色調に影響するほどに現れたため、と考えられる。
【0154】
また、比較例2の赤色塗装鋼板1−C2は、光沢が不十分であり、色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、上塗り塗膜の屈折率が低すぎたため、上塗り塗膜の表面での正反射光が減衰し、光沢が不十分となり、当該塗膜の色調の変化が防錆顔料によるもののように感じられたため、と考えられる。
【0155】
また、比較例3の黄色塗装鋼板2−C1は、光沢が低下し、明度が高まるとともに彩度が低下し、さらに色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、防錆顔料と上塗り塗膜との屈折率差が大きすぎたために上塗り塗膜による防錆顔料での光の反射率減少効果が不十分となり、また上塗り塗膜のヘイズ値が高すぎたために光沢が不十分となり、よって、外観からも防錆顔料による塗膜の色調の影響が感じ取られたため、と考えられる。
【0156】
また、比較例4の青色塗装鋼板3−C1は、光沢が低下し、明度が高まるとともに彩度が低下し、さらに色調に防錆顔料の影響が感じられた。これは、下塗り塗膜における防錆顔料の含有量が多すぎ、防錆顔料の色調への影響が十分に発現されたため、と考えられる。
【0157】
また、比較例5の緑色塗装鋼板4−C1は、耐食性が不十分であった。これは、下塗り塗膜における防錆顔料の含有量が少なすぎたため、と考えられる。
【0158】
また、対照例1〜4における塗装鋼板は、色調が十分であったが、防錆顔料を含有しないため、耐食性が不十分であった。
【0159】
以上の説明から明らかなように、鋼板、下塗り塗膜および上塗り塗膜を有する塗装鋼板であって、下塗り塗膜が樹脂、着色顔料および防錆顔料を含有し、防錆顔料のD90が下塗り塗膜の膜厚以下であり、下塗り塗膜中の防錆顔料の含有量が上記樹脂100質量部に対して5〜50質量部であり、上塗り塗膜の屈折率が1.45以上であり、上記防錆顔料の屈折率と上記上塗り塗膜の屈折率との差が0.5以下であり、上塗り塗膜のヘイズ値が7%以下である塗装鋼板は、2コート2ベークで製造可能であり、耐食性を有し、かつ、下塗り塗膜に防錆顔料が配合されているにも関わらず十分な鮮やかさと高い光沢とを呈する。