特許第6235899号(P6235899)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235899
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】送信装置及び歪み補償方法
(51)【国際特許分類】
   H03F 1/32 20060101AFI20171113BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20171113BHJP
   H03F 3/217 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H03F1/32
   H03F3/24
   H03F3/217
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-267168(P2013-267168)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-126245(P2015-126245A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年7月21日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、マルチバンド・マルチモード対応センサー無線通信基盤技術に関する研究開発の委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105050
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲田 公一
(72)【発明者】
【氏名】平井 義人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 好史
【審査官】 石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0269293(US,A1)
【文献】 特開2000−069098(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/001591(WO,A1)
【文献】 特開2005−151119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 1/00− 3/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1入力信号を増幅する第1スイッチトキャパシタ電力増幅器と、
第2入力信号を増幅する第2スイッチトキャパシタ電力増幅器と、
送信信号のIコードの歪み補償を行う複素数のIコード用補正係数からなるIコード用ルックアップテーブルと、前記送信信号のQコードの歪み補償を行う複素数のQコード用補正係数からなるQコード用ルックアップテーブルとを記憶する記憶手段と、
前記Iコード用補正係数を用いて、前記送信信号のIコードの歪み補償を行って前記第1入力信号を生成し、前記Qコード用補正係数を用いて、前記送信信号のQコードの歪み補償を行って前記第2入力信号を生成する歪み補償手段と、
を具備し、
前記Iコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Iコード用補正係数が対応付けられ、
前記Qコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Qコード用補正係数が対応付けられる、
送信装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記Iコード用ルックアップテーブルと前記Qコード用ルックアップテーブルとを共通化して記憶する、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記歪み補償手段は、
前記送信信号のIコードに前記Iコード用補正係数を乗算する第1乗算器と、
前記送信信号のQコードに前記Qコード用補正係数を乗算する第2乗算器と、
前記第1乗算器による乗算結果の実部と、前記第2乗算器による乗算結果の虚部とを加算して前記第1入力信号を得る第1加算器と、
前記第1乗算器による乗算結果の虚部と、前記第2乗算器による乗算結果の実部とを加算して前記第2入力信号を得る第2加算器と、
を具備する請求項1に記載の送信装置。
【請求項4】
複数の前記Iコード用補正係数及び複数の前記Qコード用補正係数を用いて、線形補間して補間値を求める補間値処理手段をさらに具備する、
請求項に記載の送信装置。
【請求項5】
前記第1スイッチトキャパシタ電力増幅器は、前記第1入力信号をAMコードに入力し、前記送信信号のIコードをノンオーバーラップ切替信号に用い、
前記第2スイッチトキャパシタ電力増幅器は、前記第2入力信号をAMコードに入力し、前記送信信号のQコードをノンオーバーラップ切替信号に用いる、
請求項1に記載の送信装置。
【請求項6】
前記送信信号のIコード及びQコードの位相を回転させる位相回転手段と、
前記位相が回転させられた前記Iコード及び前記Qコードを用いて、前記記憶手段に記憶された前記Iコード用補正係数及び前記Qコード用補正係数を更新する更新処理手段と、
をさらに具備する請求項1に記載の送信装置。
【請求項7】
送信信号のIコードの歪み補償を行う複素数のIコード用補正係数からなるIコード用ルックアップテーブルと、前記送信信号のQコードの歪み補償を行う複素数のQコード用補正係数からなるQコード用ルックアップテーブルとを更新するステップと、
前記Iコード用補正係数を用いて、前記送信信号のIコードの歪み補償を行って、第1スイッチトキャパシタ電力増幅器に入力するステップと、
前記Qコード用補正係数を用いて、前記送信信号のQコードの歪み補償を行って、第2スイッチトキャパシタ電力増幅器に入力するステップと、
を具備し、
前記Iコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Iコード用補正係数が対応付けられ、
前記Qコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Qコード用補正係数が対応付けられる、
歪み補償方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の歪みを補償する送信装置及び歪み補償方法に関する。
【背景技術】
【0002】
D級増幅器は、等価的には、電源と出力間のスイッチと、グランドと出力間のスイッチとのいずれかを交互にオンさせて出力する構成であり、理想的な動作状態では、電源からグランドに流れる不要な貫通電流がないため、電力効率が高い。
【0003】
しかしながら、実際の回路では、信号のなまりまたはスイッチのタイミングずれ等によって、それぞれのスイッチが同時にオンし、貫通電流が電源とグランド間に流れて電力効率を下げてしまう。この貫通電流の対策として、ノンオーバーラップクロックスを用いた技術がある。ノンオーバーラップクロックスとは、電源と出力間のスイッチと、グランドと出力間のスイッチとのいずれかを交互にオンさせる際、意図して両方のスイッチがオフになる時間領域(ノンオーバーラップ期間)を設けることで、電力効率を下げてしまう貫通電流の発生を防ぐ技術であり、D級増幅器の高効率化には、非常に有効であり、広く利用されている。
【0004】
CMOS IC(Complementary Metal-Oxide Semiconductor Integrated Circuit)による電力増幅器で高効率を実現するために、D級増幅器の一種であるスイッチトキャパシタ電力増幅器(SCPA:Switched Capacitor Power Amplifier)が用いられる。SCPAは、電源電圧とグランドとの間でスイッチングするアンプの数を変えることで、振幅変調を行うものである。
【0005】
ところで、電力増幅器の性能を評価する指標として、AMAM特性、AMPM特性がある。図1(a)に一般的な電力増幅器のAMAM特性を示し、図1(b)に一般的な電力増幅器のAMPM特性を示す。図1において、実線は理想的な特性を示し、□でプロットした点を繋ぐ線が実際の特性を示す。図1(a)及び図1(b)より、入力の大きさによって信号の歪み方が異なることが分かる。また、電力増幅器の個別ばらつき、温度変動及び経年変化に伴って、歪み特性そのものも変化する。
【0006】
この歪みを補償する技術として適応型デジタルプリディストーション(以下、「適応型DPD」という)が知られている。適応型DPDは、送信データの入力の大きさに応じた電力増幅器の歪みの逆特性を補正係数としてルックアップテーブル(LUT)に保持し、電力増幅器の出力をフィードバック信号としてLUTを適宜更新し、更新したLUTの補正係数を用いて歪み補償を行う。これにより、個別ばらつき、温度変動、経年変化による歪み特性の変化にも対応することができる。
【0007】
SCPAを用いたIQ直交型送信装置において、歪み補償を行う技術が特許文献1に開示されている。特許文献1には、Iの大きさ、Qの大きさ、それぞれに応じて歪み方が異なるため、トレーニングモードでIQそれぞれの大きさに応じて補正係数を求め、2次元マトリクスのLUTを生成し、生成したLUTの補正係数から線形補間して歪み補償を行う方法が開示されている。
【0008】
また、一般に、送信装置では、隣接チャンネルへの漏洩電力を抑圧することに加え、高効率で動作することへの要求が高い。この要求に対して、SCPAでは、コードの大きさに応じてノンオーバーラップ(以下、「NOL」という)調整値を切り替えることにより、高効率に動作させることができる。NOL調整値はデューティー比に相当する。図2(a)は、各種NOL調整値(NOL=0〜7)におけるAMAM特性を示し、図2(b)は、各種NOL調整値(NOL=0〜7)におけるAMPM特性を示す。なお、NOL=0〜7は、それぞれ異なるデューティー比を示している。
【0009】
コードの大きさに応じてNOL調整値を切り替えた場合のAMAM特性を図3(a)に、AMPM特性を図3(b)に示す。ここでは、コード0〜31でNOL=7、コード32〜39でNOL=3、コード40〜47でNOL=2、コード48〜55でNOL=1、コード56〜63でNOL=0に切り替えている。これらの図3(a)及び図3(b)から、ゲインの線形性を保つ一方、位相変動が生じることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0269293号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した特許文献1に開示の歪み補償方法では、SCPAの効率を上げるために、コードの大きさに応じてNOL調整値を切り替えた場合、特性変動に対応できないという問題がある。デジタルプリディスト―ションはSCPAの歪み特性の逆特性をIQ入力信号に予め乗算しておき、SCPAの歪み特性を線形化する技術であるが、この手法の効果を得るためにはできるだけSPCAの逆歪み特性を正確に補正係数で表わす必要がある。図4は、IQ入力信号(I,Qは正とする)を示す。このIQ入力信号に対して、NOL切り替えを行わない場合のIQ出力信号を図5に示し、NOL切り替えを行う場合のIQ出力信号を図6に示す。図6から分かるように、NOLを切り替えた場合、特性変動によりIQデータ間に大きな隙間(図中、枠で囲んだ領域)が空いてしまう。空いた領域のIQデータはどのような入力をもってしても出力値としてはなり得ないため、逆特性となる最適解が存在しないことを意味する。このため、隙間におけるIQデータは、そこに近いIQデータを用いることになり、歪み補償精度が劣化してしまう。
【0012】
本発明の目的は、NOL切り替えによる特性変動が生じた場合においても、歪み補償精度の劣化を回避する送信装置及び歪み補償方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様に係る送信装置は、第1入力信号を増幅する第1スイッチトキャパシタ電力増幅器と、第2入力信号を増幅する第2スイッチトキャパシタ電力増幅器と、送信信号のIコードの歪み補償を行う複素数のIコード用補正係数からなるIコード用ルックアップテーブルと、前記送信信号のQコードの歪み補償を行う複素数のQコード用補正係数からなるQコード用ルックアップテーブルとを記憶する記憶手段と、前記Iコード用補正係数を用いて、前記送信信号のIコードの歪み補償を行って前記第1入力信号を生成し、前記Qコード用補正係数を用いて、前記送信信号のQコードの歪み補償を行って前記第2入力信号を生成する歪み補償手段と、を具備し、前記Iコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Iコード用補正係数が対応付けられ、前記Qコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Qコード用補正係数が対応付けられる構成を採る。
【0014】
また、本発明の一態様に係る歪み補償方法は、送信信号のIコードの歪み補償を行う複素数のIコード用補正係数からなるIコード用ルックアップテーブルと、前記送信信号のQコードの歪み補償を行う複素数のQコード用補正係数からなるQコード用ルックアップテーブルとを更新するステップと、前記Iコード用補正係数を用いて、前記送信信号のIコードの歪み補償を行って、第1スイッチトキャパシタ電力増幅器に入力するステップと、前記Qコード用補正係数を用いて、前記送信信号のQコードの歪み補償を行って、第2スイッチトキャパシタ電力増幅器に入力するステップと、を具備し、前記Iコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Iコード用補正係数が対応付けられ、前記Qコード用ルックアップテーブルは、ノンオーバーラップ調整値毎に前記Qコード用補正係数が対応付けられるようにした。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、NOL切り替えによる特性変動が生じた場合においても、歪み補償精度の劣化を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)一般的な電力増幅器のAMAM特性を示す図、(b)一般的な電力増幅器のAMPM特性を示す図
図2】(a)各種NOL調整値(NOL=0〜7)におけるAMAM特性を示す図、(b)各種NOL調整値(NOL=0〜7)におけるAMPM特性を示す図
図3】(a)コードの大きさに応じてNOL調整値を切り替えた場合のAMAM特性を示す図、(b)コードの大きさに応じてNOL調整値を切り替えた場合のAMPM特性を示す図
図4】IQの入力信号を示す図
図5】NOL切り替えを行わない場合のIQ出力信号を示す図
図6】NOL切り替えを行う場合のIQ出力信号を示す図
図7】本発明の実施の形態1に係る送信装置の一部の構成を示すブロック図
図8】本発明の実施の形態2に係る送信装置の一部の構成を示すブロック図
図9】本発明の実施の形態3に係る送信装置の一部の構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。ただし、実施の形態において、同一機能を有する構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
(実施の形態1)
図7は、本発明の実施の形態1に係る送信装置10の一部の構成を示すブロック図である。以下、図7を用いて送信装置10の構成について説明する。送信装置10は、スイッチ11、デジタルプリディストーション部12、送信用RF変調部13、アンテナ14及びフィードバック復調部15を備えている。
【0019】
スイッチ11は、送信信号またはテスト信号を入力し、それぞれをIコードとQコードに分けて出力する。スイッチ11は、Iコードを歪み補償部120の乗算器121a、アドレス生成部124a、更新処理部126及び誤差算出部127に出力し、Qコードを歪み補償部120の乗算器121b、アドレス生成部124b、更新処理部126及び誤差算出部127に出力する。
【0020】
アドレス生成部124aは、Iコードの大きさに応じたNOL調整値毎(例えば、NOL=0〜7)にグループが対応付けられており、スイッチ11から出力されたIコードの大きさに対応するグループを特定し、特定したグループを示すアドレスを生成して記憶部125aに出力し、また、Iコードの大きさを補間値処理部123に出力する。
【0021】
アドレス生成部124bは、Qコードの大きさに応じたNOL調整値毎(例えば、NOL=0〜7)にグループが対応付けられており、スイッチ11から出力されたQコードの大きさに対応するグループを特定し、特定したグループを示すアドレスを生成して記憶部125bに出力し、また、Qコードの大きさを補間値処理部123に出力する。
【0022】
誤差算出部127は、スイッチ11から出力されたIコード及びQコードと、後述するフィードバック復調部15から出力されたIコード及びQコードとの差分を誤差として算出し、算出した誤差を更新処理部126に出力する。
【0023】
更新処理部126は、スイッチ11から出力されたIコード及びQコード、誤差算出部127から出力された誤差、後述するフィードバック復調部15から出力されたIコード及びQコードを用いて、記憶部125a、125bに記憶された補正係数の更新処理を行う。
【0024】
記憶部125aは、Iコード用に複素数の補正係数をアドレス毎に記憶し、ルックアップテーブル(LUT)を形成し、アドレス生成部124aから出力されたアドレスに対応する補正係数及び同じNOL調整グループの前後の補正係数を補間値処理部123に出力する。また、記憶部125bは、Qコード用に複素数の補正係数をアドレス毎に記憶し、LUTを形成し、アドレス生成部124bから出力されたアドレスに対応する補正係数及び同じNOL調整グループの前後の補正係数を補間値処理部123に出力する。ここで、LUTの解像度をNとすると、2次元マトリクスではN×Nの補正係数が必要であるのに対し、記憶部125a、125bは、全体として2×Nの補正係数でよいので、LUTの面積を削減することができる。
【0025】
補間値処理部123は、アドレス生成部124a、124bから出力されたコードの大きさに対応する補正係数を、記憶部125から出力された複数の補正係数を用いて線形補間を行って求め、求めた補正係数(補間値)を歪み補償部120の乗算器121a、121bに出力する。
【0026】
歪み補償部120は、乗算器121a、121b及び加算器122a、122bを備え、スイッチ11から出力されたIコード及びQコードの歪み補償を行って、送信用RF変調部13に出力する。
【0027】
乗算器121aは、スイッチ11から出力されたIコード(I)に補間値処理部123から出力された補正係数(I’+jQ’)を乗算し、乗算結果(I×(I’+jQ’))の実部(I×I’)を加算器122aに出力し、虚部(I×Q’)を加算器122bに出力する。また、乗算器121bは、スイッチ11から出力されたQコード(Q)に補間値処理部123から出力された補正係数(I”+jQ”)を乗算し、乗算結果(Q×(I”+jQ”))の虚部(Q×Q”))を加算器122aに出力し、実部(Q×I”)を加算器122bに出力する。
【0028】
加算器122aは、乗算器121a、121bから出力された乗算結果を加算し、加算結果(I×I’−Q×Q”)を送信用RF変調部13のIコード用SCPA131aに出力する。また、加算器122bは、乗算器121a、121bから出力された乗算結果を加算し、加算結果(I×Q’+Q×I”)を送信用RF変調部13のQコード用SCPA131bに出力する。
【0029】
送信用RF変調部13は、Iコード用SCPA131aとQコード用SCPA131bとを備え、Iコード用SCPA131aは加算器122aから出力された加算結果を増幅し、Qコード用SCPA131bは加算器122bから出力された加算結果を増幅し、これらの増幅した信号を合成して、アンテナ14から無線送信すると共に、フィードバック復調部15に出力する。
【0030】
フィードバック復調部15は、送信用RF変調部13から出力された信号をIコードとQコードとに復調し、これらの信号をフィードバック信号として誤差算出部127及び更新処理部126に出力する。
【0031】
次に、トレーニングモードで補正係数を算出する手順について説明する。送信装置10は、トレーニングモードに切り替え、テスト信号がスイッチ11に入力される。テスト信号として、まず、コードの大きさが最小から最大までの全ての大きさを含むランダム信号のIコードが入力される。ただし、ランダム信号の信号振幅は、線形増加でもよいし、のこぎり波形でもよい。また、Qコードは0などの固定値とする。
【0032】
送信装置10は、このテスト信号によって得られた補正係数を記憶部125aに記憶し、Iコード用のLUTを生成する。
【0033】
続いて、テスト信号として、コードの大きさが最小から最大までの全ての大きさを含むランダム信号のQコードが入力される。ただし、ランダム信号の信号振幅は、線形増加でもよいし、のこぎり波形でもよい。また、Iコードは0などの固定値とする。
【0034】
送信装置10は、このテスト信号によって得られた補正係数を記憶部125bに記憶し、Qコード用のLUTを生成する。
【0035】
以上の手順により、記憶部125aにIコード用のLUTが生成され、記憶部125bにQコード用のLUTが生成され、生成されたLUTの補正係数を用いて、送信信号の歪み補償を行うことができる。
【0036】
このように、実施の形態1によれば、複素数からなる補正係数を管理するIコード用LUTとQコード用のLUTとを別々に設けることにより、2次元マトリクスのLUTが必要なくなり、LUTの面積を削減することができる。また、これに伴い、トレーニングモードで収束させる補正係数の数を削減することができるので、トレーニングに要する時間を削減することができる。さらに、Iコード用SCPAとQコード用SCPAとに入力する信号を個別に補正し、各SCPAにて増幅した信号を合成することにより、NOL切り替えによる特性変動が生じた場合においても、歪み補償精度の劣化を回避することができる。
【0037】
なお、本実施の形態では、記憶部がIコード用のテーブルとQコード用のLUTとを備える場合について説明したが、Iコード用SCPAとQコード用SCPAは、チップ内で同一構造であれば、相対ばらつきはあるものの、同様の性能となるため、LUTを共通化することができる。
【0038】
(実施の形態2)
図8は、本発明の実施の形態2に係る送信装置の一部の構成を示すブロック図である。図8図7と異なる点は、Iコード用SCPA131aをIコード用SCPA132aに変更し、Qコード用SCPA131bをQコード用SCPA132bに変更した点である。
【0039】
Iコード用SCPA132aは、加算器122aから出力された歪み補償後のIコード(Icode’)をAMコードに入力し、スイッチ11から出力された送信信号Iコード(Icode)をNOL切替信号として用いる。また、Qコード用SCPA132bは、加算器122bから出力された歪み補償後のQコード(Qcode’)をAMコードに入力し、スイッチ11から出力された送信信号Qコード(Qcode)をNOL切替信号として用いる。
【0040】
これにより、歪み補償前の送信信号と歪み補償後の信号とを同期させることができるので、正確なNOL切替タイミングで歪み補償後の信号を増幅することができ、歪み補償精度を向上させることができる。
【0041】
このように、実施の形態2によれば、歪み補償前の送信信号をNOL切替信号として用いることにより、歪み補償前の送信信号と歪み補償後の信号とを同期させることができるので、正確なNOL切替タイミングで歪み補償後の信号を増幅することができ、歪み補償精度を向上させることができる。
【0042】
(実施の形態3)
図9は、本発明の実施の形態3に係る送信装置の一部の構成を示すブロック図である。図9図7と異なる点は、位相回転部128を追加した点である。
【0043】
位相回転部128は、スイッチ11から出力されたIコード及びQコードの位相回転を行って、更新処理部126に出力する。ここでの、位相回転量をSCPAで実際に回転する量にできるだけ合わせることで、各Iコード、Qコード用SCPAの逆特性を個別にLUTに保持することができ、歪み補償精度を向上させることができる。なお、SCPAは入力コードによって位相回転量が変わるため、位相回転部128での回転量は、送信信号Iコード及びQコードのそれぞれにおいて最も送信頻度の高いAMコードに対応する位相ずれ(PM)の値とすることが望ましい。
【0044】
これにより、補正係数が“1+0×j”に近い値に収束するため、Iコード用SCPA131aの単独の歪み補償、Qコード用SCPA131bの単独の歪み補償に近くなり、歪み補償能力を向上させることができる。また、補正係数の初期値を“1+0×j”とすることにより、補正係数の収束時間を短縮することができる。
【0045】
このように、実施の形態3によれば、最も送信頻度の高いAMコードに対応する位相ずれを位相回転量として送信信号の位相回転を行って補正係数を求めることにより、補正係数が“1+0×j”に近い値に収束するため、Iコード用SCPA及びQコード用SCPAについてそれぞれ単独の歪み補償に近くなり、歪み補償能力を向上させることができる。また、補正係数の初期値を“1+0×j”とすることにより、補正係数の収束時間を短縮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明にかかる送信装置及び歪み補償方法は、無線通信装置等に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
11 スイッチ
12 デジタルプリディストーション部
13 送信用RF変調部
14 アンテナ
15 フィードバック復調部
121a、121b 乗算器
122a、122b 加算器
123 補間値処理部
124a、124b アドレス生成部
125a、125b 記憶部
126 更新処理部
127 誤差算出部
128 位相回転部
131a、132a Iコード用SCPA
131b、132b Qコード用SCPA
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9