特許第6235916号(P6235916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6235916-タイヤ加硫用金型 図000003
  • 特許6235916-タイヤ加硫用金型 図000004
  • 特許6235916-タイヤ加硫用金型 図000005
  • 特許6235916-タイヤ加硫用金型 図000006
  • 特許6235916-タイヤ加硫用金型 図000007
  • 特許6235916-タイヤ加硫用金型 図000008
  • 特許6235916-タイヤ加硫用金型 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235916
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】タイヤ加硫用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/02 20060101AFI20171113BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20171113BHJP
   B29K 21/00 20060101ALN20171113BHJP
   B29K 105/24 20060101ALN20171113BHJP
   B29L 30/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   B29C33/02
   B29C35/02
   B29K21:00
   B29K105:24
   B29L30:00
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-8828(P2014-8828)
(22)【出願日】2014年1月21日
(65)【公開番号】特開2015-136835(P2015-136835A)
(43)【公開日】2015年7月30日
【審査請求日】2016年12月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 尚
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−500079(JP,A)
【文献】 特開昭56−144946(JP,A)
【文献】 特開昭49−108182(JP,A)
【文献】 特公昭53−006679(JP,B1)
【文献】 特開平07−068560(JP,A)
【文献】 特開平09−239735(JP,A)
【文献】 特開平05−192928(JP,A)
【文献】 特開昭55−139246(JP,A)
【文献】 特開昭62−218112(JP,A)
【文献】 特開2012−135939(JP,A)
【文献】 特開2015−136834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ軸方向両側に配されるサイドウォール形成用の一対のサイドモールドと、環状に配置される複数のセグメントからなるトレッド形成用のトレッドモールドとを具え、
各前記サイドモールドの半径方向外端の第1の突き合わせ部と、各前記セグメントのタイヤ軸方向両側かつ半径方向内端の第2の突き合わせ部とを互いに突き合わせた金型閉状態にてタイヤの加硫成形を行うタイヤ加硫用金型であって、
前記第1、第2の突き合わせ部は、タイヤ軸方向内側に向かって半径方向内側に傾斜する互いに同傾斜の円錐面からなる第1、第2の突き合わせ面を具え
前記第1の突き合わせ部は、前記第1の突き合わせ面と、そのタイヤ軸方向外縁に連なる第1の円筒面とを具え、かつ前記第2の突き合わせ部は、前記第2の突き合わせ面と、そのタイヤ軸方向外縁に連なる第2の円筒面とを具えるとともに、
前記第2の円筒面の半径R2は、第1の円筒面の半径R1より大であることを特徴とするタイヤ加硫用金型。
【請求項2】
タイヤ軸心を通る子午断面において、前記第1、第2の突き合わせ面は、タイヤ軸方向線に対する角度θが20〜60°であることを特徴とする請求項1記載のタイヤ加硫用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの耐久性を向上させたタイヤ加硫用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
図5(A)、(B)に示すように、タイヤ加硫用金型aは、タイヤ軸方向両側に配されるサイドウォール形成用の一対のサイドモールドbと、環状に配置される複数のセグメントc1からなるトレッド形成用のトレッドモールドcとを具える。そして、各前記サイドモールドbの半径方向外端の第1の突き合わせ面sbと、前記セグメントc1のタイヤ軸方向両側かつ半径方向内端の第2の突き合わせ面scとを互いに突き合わせた金型閉状態Yにてタイヤの加硫成形が行われる(特許文献1参照。)。
【0003】
そして従来においては、図6に示すように、前記第1、第2の突き合わせ面sb、scは、互いに同径の円筒面から形成されている。
【0004】
他方、タイヤ加硫用金型aにおいて、サイドモールドbは、マーキング等のデザイン加工が施されるため、ショットブラスト等の金型クリーニングによってもデザインが摩滅しないように、例えばSS400等の硬質の鋼材で形成される。これに対してセグメントc1は、鋳造・切削等の金型製作工程での加工性を考慮して軟質のアルミ合金で製作されている。
【0005】
しかしタイヤ加硫用金型aは、加硫時、例えば170〜180℃の高温度に加熱される。そのため、鋼材とアルミ合金との熱膨張率の違いにより、第1、第2の突き合わせ面sb、scのラジアスrb、rcは常温で同じであっても、加硫時には、図7(A)に誇張して示すように、第2の突き合わせ面scのラジアスrc1は、第1の突き合わせ面sbのラジアスrb1よりも大となる。
【0006】
その結果、図7(B)に誇張して示すように、加硫時の金型閉状態Yにおいて、第1、第2の突き合わせ面sb、sc間の接触圧が不均一となり、接触圧の高い部位Qを起点としてセグメントc1が変形するなど、セグメントc1の耐久性が低下するという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013−144414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで発明は、第1、第2の突き合わせ面を、タイヤ軸方向内側に向かって半径方向内側に傾斜する互いに同傾斜の円錐面とすることを基本として、突き合わせ面間の接触圧を均一化でき、セグメントの耐久性を向上しうるタイヤ加硫用金型を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、タイヤ軸方向両側に配されるサイドウォール形成用の一対のサイドモールドと、環状に配置される複数のセグメントからなるトレッド形成用のトレッドモールドとを具え、
各前記サイドモールドの半径方向外端の第1の突き合わせ部と、各前記セグメントのタイヤ軸方向両側かつ半径方向内端の第2の突き合わせ部とを互いに突き合わせた金型閉状態にてタイヤの加硫成形を行うタイヤ加硫用金型であって、
前記第1、第2の突き合わせ部は、タイヤ軸方向内側に向かって半径方向内側に傾斜する互いに同傾斜の円錐面からなる第1、第2の突き合わせ面を具え
前記第1の突き合わせ部は、前記第1の突き合わせ面と、そのタイヤ軸方向外縁に連なる第1の円筒面とを具え、かつ前記第2の突き合わせ部は、前記第2の突き合わせ面と、そのタイヤ軸方向外縁に連なる第2の円筒面とを具えるとともに、
前記第2の円筒面の半径R2は、第1の円筒面の半径R1より大であることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る前記タイヤ加硫用金型では、タイヤ軸心を通る子午断面において、前記第1、第2の突き合わせ面は、タイヤ軸方向線に対する角度θが20〜60°であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る前記タイヤ加硫用金型では、前記第1の突き合わせ部は、前記第1の突き合わせ面と、そのタイヤ軸方向外縁に連なる第1の円筒面とを具え、かつ前記第2の突き合わせ部は、前記第2の突き合わせ面と、そのタイヤ軸方向外縁に連なる第2の円筒面とを具えるとともに、
前記第2の円筒面の半径R2は、第1の円筒面の半径R1より大であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明は叙上の如く、第1、第2の突き合わせ面を、タイヤ軸方向内側に向かって半径方向内側に傾斜する互いに同傾斜の円錐面で形成している。
【0013】
従って、加硫中の熱により、セグメントとサイドモールドとの間にラジアス差が発生するものの、第1、第2の突き合わせ面が円錐面をなすため、互いに同一ラジアスの位置で第1、第2の突き合わせ面が突き合わされる。従って、接触圧を均一化でき、セグメントの耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)、(B)は本発明のタイヤ加硫用金型の作動状態を示す断面図である。
図2】その一部を示す斜視図である。
図3】サイドモールド及びセグメントの一部を示す斜視図である。
図4】(A)〜(C)は本発明の作用を示す部分断面図である。
図5】(A)、(B)は従来のタイヤ加硫用金型を示す断面図である。
図6】従来の突き合わせ面を示す断面図である。
図7】(A)、(B)は従来の突き合わせ面による問題点を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
図1に示すように、本実施形態のタイヤ加硫用金型1は、タイヤ軸方向両側に配されるサイドウォール形成用の一対のサイドモールド2と、環状に配置される複数のセグメント3からなるトレッド形成用のトレッドモールド4とを具える。
【0016】
そして各前記サイドモールド2の半径方向外端の第1の突き合わせ部5と、各前記セグメント3のタイヤ軸方向両側かつ半径方向内端の第2の突き合わせ部6とを互いに突き合わせた金型閉状態YにてタイヤTの加硫成形が行われる。
【0017】
前記サイドモールド2は、タイヤTのサイドウォールを成形するサイドウォール成形面2Sを具え、トレッドモールド4は、タイヤTのトレッドを成形するトレッド成形面4Sを具える。このサイドモールド2及びトレッドモールド4は、前記第1、第2の突き合わせ部5、6以外は、従来と同様の構造が採用しうる。
【0018】
図中において、符号10Uは、上のサイドモールド2を取付ける昇降可能な上部プレートであって、例えばヒータ内蔵の上のプラテン板11U、又はこの上のプラテン板11Uを固定するプレス機の昇降台12等に、例えばシリンダなどの周知の昇降手段(図示しない)を介して昇降自在に支持される。
【0019】
又符号10Lは、下のサイドモールド2を支持する下部プレートであって、例えばプレス台(図示しない)に固定の下のプラテン板11Lに取付けられる。又符号13は、各1個のセグメント3が交換自在に取付くトレッドセクターである。このトレッドセクター13は、環状のアクチェータ14の下降に伴い、セグメント3とともに半径方向内方に移動し、前記第1、第2の突き合わせ部5、6が互いに突き合わされることにより金型閉状態Yとなる。
【0020】
図3は、サイドモールド2の一部、及びセグメント3の一部が示される斜視図であり、第1、第2の突き合わせ部5、6が明瞭に示されるように、サイドモールド2とセグメント3とは視点の位置を違えて図示される。同図に示されるように、前記第1の突き合わせ部5は、タイヤ軸方向内側に向かって半径方向内側に傾斜する円錐面からなる第1の突き合わせ面20を具える。本例では、第1の突き合わせ部5が、前記第1の突き合わせ面20と、そのタイヤ軸方向外縁20aに連なる第1の円筒面21とを具える場合が示される。なお第1の突き合わせ面20は、そのタイヤ軸方向内縁20bにて、前記サイドウォール成形面2Sと接続する。
【0021】
又前記第2の突き合わせ部6は、前記第1の突き合わせ面20と同傾斜の円錐面からなる第2の突き合わせ面22を具える。本例では、第2の突き合わせ部6が、前記第2の突き合わせ面22と、そのタイヤ軸方向外縁22aに連なる第2の円筒面23とを具える場合が示される。なお第2の突き合わせ面22は、そのタイヤ軸方向内縁22bにて、前記トレッド成形面4Sと接続する。
【0022】
前記第2の円筒面23の半径R2は、第1の円筒面21の半径R1よりも大である。従って、常温での金型閉状態Yにおいては、図4(A)に示すように、第1、第2の突き合わせ面20、22同士は密に接触する。なお第1、第2の円筒面21、23間には若干の隙間Gが形成される。
【0023】
図4(B)に示すように、タイヤ加硫用金型1が加熱されたとき、セグメント3とサイドモールド2とは熱膨張するが、熱膨張率の差により、セグメント3とサイドモールド2との間にはラジアス差ΔRが発生する。
【0024】
しかしながら、第1、第2の突き合わせ面20、22が円錐面をなす。そのため図4(C)に示すように、第1、第2の突き合わせ面20、22を、互いに同一ラジアスの位置で突き合わすことができる。即ち、接触圧を不均化でき、セグメント3の耐久性を向上させることができる。なお同一ラジアスの位置での突き合わせは、前記サイドモールド2をタイヤ軸方向内側に平行移動させることで達成される。このとき、トレッド成形面4Sとサイドウォール成形面2Sとの間に段差Dが形成される。
【0025】
ここで、図4(A)に示すように、タイヤ軸心を通る子午断面において、前記第1、第2の突き合わせ面20、22は、タイヤ軸方向線に対する角度θが20〜60°であることが好ましい。前記角度θが20°を下回ると、前記段差Dが大きくなって外観性に悪影響を与える傾向となる。逆に前記角度θが60°を越えると、セグメント3において、トレッド成形面4Sと第2の突き合わせ面22との間のコーナ部Jの先端角度αが鋭角になり過ぎ、エンジ欠けを招くなど強度低下を起こす傾向となる。
【0026】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例】
【0027】
図1に示す構造のタイヤ加硫用金型を表1の仕様に基づいて試作し、セグメントにおける耐久性についてテストした。金型は、タイヤサイズ195/65R15の乗用車用タイヤの金型であり、トレッドモールドは、9個のセグメントに分割されている。又、セグメントはAC4(鋳造用アルミ合金)により形成され、かつサイドモールドは、SS400(鋼材)により形成される。各金型とも、突き合わせ面のみ相違し、それ以外は実質的に同仕様である。
【0028】
耐久性は、各金型において、タイヤを1000本加硫するごとに、セグメントの突き合わせ面の形状を測定し、CAD3次元モデルと比較した。そして、9つのセグメントについて、それぞれ突き合わせ面の変形(変位量)が最も大きかった箇所を測定し、その変形の平均値によって評価した。数値が小さい方が変形が少なく、セグメントの耐久性に優れている。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の如く、実施例の金型は、セグメントの変形が少なく、セグメントの耐久性を向上しうるのが確認できる。なお実施例1では、角度θが10°と小さいため、トレッド成形面とサイドウォール成形面との間の段差Dが大きくなって、外観不良が発生している。実施例5では、角度θが70°と大きすぎるため、トレッド成形面と第2の突き合わせ面との間のコーナ部Jが強度不足となってエッジ欠けが、2000本加硫時に発生している。
【符号の説明】
【0031】
1 タイヤ加硫用金型
2 サイドモールド
3 セグメント
4 トレッドモールド
5 第1の突き合わせ部
6 第2の突き合わせ部
20 第1の突き合わせ面
21 第1の円筒面
22 第2の突き合わせ面
23 第2の円筒面
T タイヤ
Y 金型閉状態
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7