特許第6235939号(P6235939)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6235939-透明遮熱断熱部材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235939
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】透明遮熱断熱部材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20171113BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171113BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B32B27/32 101
   B32B9/00 A
   B32B27/20 Z
   B32B7/02 103
   G02B5/26
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-50172(P2014-50172)
(22)【出願日】2014年3月13日
(65)【公開番号】特開2015-174236(P2015-174236A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセルホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】大谷 紀昭
(72)【発明者】
【氏名】光本 欣正
【審査官】 飛彈 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/151136(WO,A1)
【文献】 特開2008−265092(JP,A)
【文献】 特開2013−6713(JP,A)
【文献】 特開平10−100310(JP,A)
【文献】 特開2011−104887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
G02B 5/20−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、前記透明基材の上に形成された赤外線反射層と、前記赤外線反射層の上に形成された保護層とを含む透明遮熱断熱部材であって、
前記保護層は、無機フィラーと変性ポリオレフィン系樹脂とを含み、
前記無機フィラーの含有量は、前記保護層の全体に対して30質量%以上90質量%以下であり、
前記保護層の厚さは、1μm以上15μm以下であることを特徴とする透明遮熱断熱部材。
【請求項2】
前記無機フィラーが、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム及びセレン化亜鉛からなる群から選ばれるいずれかである請求項1に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項3】
前記赤外線反射層は、導電性積層膜からなる請求項1又は2に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項4】
前記導電性積層膜は、金属酸化物層と、金属層と、金属酸化物層とをこの順に含む請求項3に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項5】
前記赤外線反射層の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率が、80%以上である請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項6】
前記保護層の波長5.5〜25.2μmの光の平均透過率が、70%以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項7】
前記透明基材の前記赤外線反射層側とは反対側にコレステリック液晶ポリマー層を更に形成した請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項8】
前記コレステリック液晶ポリマー層は、重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤と、多官能アクリレート化合物とを含む材料を光重合させて形成されたものであり、前記キラル剤の含有量は、前記液晶化合物と前記キラル剤との合計100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下である請求項7に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項9】
前記透明基材側をガラス基板に貼り合わせた場合において、前記ガラス基板とは反対側から光を照射して測定した際の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率が、70%以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
【請求項10】
ヘイズ値が、2%以下である請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明遮熱断熱部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明遮熱断熱部材に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止及び省エネルギーの観点から、ビルディングの窓、ショーウインドウ、自動車の窓面等から太陽光の熱線(赤外線)をカットし、温度を低減させることが広く行われている。また、最近では、省エネルギーの観点から、夏場の温度上昇の原因となる熱線をカットする遮熱性のみならず、冬場の室内からの暖房熱の流出を抑え暖房負荷を低減させる断熱機能をも付与した遮熱断熱部材が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−135888号公報
【特許文献2】特許第5389616号公報(特開2011−104887号公報)
【特許文献3】国際公開WO2014/010562号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、酸化ケイ素又はアクリル樹脂を含む材料で形成された保護層と、金属酸化物薄膜と金属薄膜とが交互に積層されて形成された透明積層部とを備えた透明積層フィルムが開示されている。しかし、この透明積層フィルムは、窓ガラス等に貼り合わせて使用した場合に室内側となる保護層が、酸化ケイ素又はアクリル樹脂を含む材料から形成されているため耐擦傷性に優れるものの、酸化ケイ素又はアクリル樹脂は赤外線領域(波長域5μm以上)に吸収があるため、保護層の下層側に設置された透明積層部の赤外反射特性を十分に発揮できず、熱貫流率が増加して断熱機能に劣るという問題がある。
【0005】
また、特許文献2には、赤外線反射層と、ポリノルボルネン層からなる保護層とを備える赤外線反射基板が開示されている。しかし、この赤外線反射基板は、窓ガラス等に貼り合わせて使用した場合に室内側となる保護層が、赤外線の吸収が少ないポリノルボルネン層から形成されているため、断熱性に優れているものの、保護層の耐擦傷性に劣るという問題がある。
【0006】
また、特許文献3には、無機ナノ微粒子とアクリル系樹脂とからなる硬化樹脂層と、赤外線反射層とを備えた赤外遮蔽フィルムが開示されている。しかし、この赤外遮蔽フィルムは、その硬化樹脂層が赤外線を吸収するアクリル系樹脂からなるため、赤外線反射層の赤外反射特性を十分に発揮できず、熱貫流率が増加して断熱機能に劣るという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題を解決したもので、遮熱機能、断熱機能及び耐擦傷性に優れる透明遮熱断熱部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の透明遮熱断熱部材は、透明基材と、前記透明基材の上に形成された赤外線反射層と、前記赤外線反射層の上に形成された保護層とを含む透明遮熱断熱部材であって、前記保護層は、無機フィラーと変性ポリオレフィン系樹脂とを含み、前記無機フィラーの含有量は、前記保護層の全体に対して30質量%以上90質量%以下であり、前記保護層の厚さは、1μm以上15μm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遮熱機能、断熱機能及び耐擦傷性に優れる透明遮熱断熱部材を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の透明遮熱断熱部材の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の透明遮熱断熱部材の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の透明遮熱断熱部材は、透明基材と、上記透明基材の上に形成された赤外線反射層と、上記赤外線反射層の上に形成された保護層とを備えている。また、上記保護層は、無機フィラーと変性ポリオレフィン系樹脂とを含み、上記無機フィラーの含有量は、上記保護層の全体に対して30質量%以上90質量%以下であり、上記保護層の厚さは、1μm以上15μm以下であることを特徴とする。
【0012】
上記構成とすることにより、本発明の透明遮熱断熱部材は遮熱機能、断熱機能及び耐擦傷性に優れる。
【0013】
以下、本発明の透明遮熱断熱部材を図面に基づき説明する。
【0014】
図1は、本発明の透明遮熱断熱部材の一例を示す概略断面図である。図1において、本発明の透明遮熱断熱部材10は、透明基材11と、赤外線反射層12と、保護層13と、粘着剤層14とを備えている。また、図2は、本発明の透明遮熱断熱部材の他の例を示す概略断面図である。図2では、図1に示す透明基材11と粘着剤層14との間にコレステリック液晶ポリマー層15を更に備えるものである。
【0015】
<保護層>
上記保護層は、無機フィラーと変性ポリオレフィン系樹脂とを含む材料から形成されている。上記保護層は、無機フィラー及び変性ポリオレフィン系樹脂とを含む材料から形成されているため、本発明の透明遮熱断熱部材の耐擦傷性が向上する。また、上記変性ポリオレフィン系樹脂は、赤外線の吸収が少ないので、本発明の透明遮熱断熱部材の断熱機能を有効に維持できる。また、上記変性ポリオレフィン樹脂は、官能基を有しているため、保護層と赤外線反射層との密着性が向上する。
【0016】
上記保護層の厚さは、1μm以上15μm以下に設定され、3μm以下10μm以下がより好ましい。上記保護層の厚さが大きすぎると光学特性が低下し、上記厚さが小さすぎると耐擦傷性が低下する。また、上記保護層の波長5.5〜25.2μmの光の平均透過率は、70%以上であることが好ましい。
【0017】
[無機フィラー]
上記無機フィラーとしては、波長域5.5〜25.2μmの赤外線の吸収が少なければ特に限定されないが、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、セレン化亜鉛等の材料を使用することが可能で、化学的安定性が高い酸化物である酸化マグネシウムが特に好ましい。また、酸化マグネシウムは、上記赤外線の吸収が少なく、且つ、紫外線の吸収も少ないため、本発明の透明遮熱断熱部材の全光線透過率を向上できる。また、上記無機フィラーとして、上記赤外線の吸収が少ない酸化亜鉛も使用できるが、酸化亜鉛は、紫外線の吸収が大きく、且つ、光触媒機能があるため、本発明の透明遮熱断熱部材の全光線透過率が低下し、上記光触媒機能のため、保護層が劣化しやすい。
【0018】
上記酸化マグネシウムとしては、上記赤外線の吸収が少ないものであれば市販品を用いることができ、例えば、イオリテック社製の酸化マグネシウム(サプライヤーコードNo.NO−0012−HP)、イオンセラミック社製のナノサイズ酸化マグネシウム等を使用できる。
【0019】
上記無機フィラーの含有量は、保護層の全体に対して30質量%以上90質量%以下に設定され、50質量%以上70質量%以下がより好ましい。上記無機フィラーの含有量が少なすぎると保護層の耐擦傷性が低下し、また上記無機フィラーの含有量が多すぎると赤外線反射層との密着性が低下する。
【0020】
上記無機フィラーの平均一次粒子径は、10〜200nmの範囲にあることが好ましい。上記平均一次粒子径が10nmより大きい場合には、分散処理が容易になり粒子同士の凝集を抑制でき、曇りを抑制でき、光学特性が向上する傾向がある。また、上記平均一次粒子径が200nm以下の場合には、粒子による可視光線の散乱が抑制され、曇りが小さくなる傾向がある。ここで、上記平均一次粒子径は、例えば、作製した保護層の表面又は断面において、個々の粒子の粒子径を電子顕微鏡により観察・測定した後、少なくとも100個の粒子の粒子径を平均した平均粒子径をいう。
【0021】
[変性ポリオレフィン系樹脂]
上記変性ポリオレフィン系樹脂としては、波長域5.5〜25.2μmの赤外線の吸収が少なく、官能基を有していれば特に限定されず、例えば、カルボキシル基、水酸基、オキサゾリン基等を有するポリオレフィン系樹脂を用いることができる。上記変性ポリオレフィン系樹脂としては、上記特性を有していれば市販品を用いることができ、例えば、住友精化製の「ザイクセンAC−HW−10」、「ザイクセンA」(商品名)等、ユニチカ社製の「アローベースSB1200」(商品名)等を使用できる。
【0022】
[他の成分]
上記保護層は、波長域5.5〜25.2μmの光透過率が損なわれない範囲で、上記変性ポリオレフィン系樹脂と架橋可能な添加剤を含有することができる。これにより、保護層の耐擦傷性をより向上できる。上記添加剤による架橋方式としては、放射線硬化によるものと、熱硬化によるものとを挙げることができる。
【0023】
上記放射線硬化による添加剤としては、波長域5.5〜25.2μmの赤外線の吸収が少ないものであれば特に限定されず、例えば、多官能アクリル系樹脂モノマー等が挙げられる。具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサントリメタクリレート等のアクリレート;ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー等のポリウレタンポリアクリレート;ポリエステルポリアクリレート等の多価アルコールと(メタ)アクリル酸とから生成されるエステル類;1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン等のビニルベンゼン及びその誘導体等が挙げられる。これらの多官能アクリレート化合物は、単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
また、上記熱硬化による添加剤としては、波長域5.5〜25.2μmの赤外線の吸収が少ないものであれば特に限定されず、例えば、オキサゾリン基含有架橋剤である日本触媒社製の「エポクロスK―2030E」、「エポクロスWS―500」、「エポクロスWS―700」(商品名)等、カルボジイミド基含有架橋剤である日清紡ケミカル社製の「カルボジライトSV―02」、「カルボジライトV―02」、「カルボジライトV―04」(商品名)等、アジリジン基含有架橋剤である日本触媒社製の「ケミタイトPZ―33」、「ケミタイトDZ―22E」(商品名)等が挙げられる。
【0025】
上記保護層は、上記無機フィラーを上記変性ポリオレフィン系樹脂、上記架橋剤及び溶剤とともに分散処理して分散溶液とし、その分散溶液を赤外線反射層の上に塗布し、乾燥して作製することができる。
【0026】
上記分散処理は、従来の分散方法により行なうことができる。従来の分散方法としては、例えば、サンドグラインドミル等のビーズミル、超音波分散機、3本ロールミル等を用いた分散方法が挙げられるが、生産性の観点からビーズミルを用いる方法が好適である。
【0027】
上記分散溶液に用いる溶剤には、従来公知の炭化水素類、芳香族類、ケトン類、アルコール類、グリコール類、グリコールエーテル類、エーテル類等の溶剤が使用できる。具体的には、例えば、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、キシレン、シクロヘキサノン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等を用いることができる。
【0028】
上記分散溶液における上記溶剤の配合量は特に限定されず、分散溶液の塗布液としての粘度を維持できるように溶剤の配合量を調整すればよい。更に、上記分散溶液には、他の成分を含んでいてもよい。
【0029】
<赤外線反射層>
上記赤外線反射層は、導電性積層膜から構成されていることが好ましく、更に上記導電性積層膜は、可視光領域の透過率を向上させる目的で、少なくとも上記透明基材側から金属酸化物層と、銀、銅、金、白金、アルミニウム等の金属により形成される金属層と、上記金属酸化物層とをこの順に備えていることが好ましい。上記導電性積層膜を上記三層構造にすることにより、上記透明遮熱断熱部材の断熱機能をより向上できる。
【0030】
上記金属酸化物層は、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化アルミニウム等による金属酸化物材料が適宜使用可能であり、これらの材料をスパッタリング法、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが可能で、上記金属酸化物層の一層当たりの厚さは、0.005μm〜0.02μmとすればよい。
【0031】
また、上記金属層としては、銀、銅、金、白金、アルミニウム等の金属材料が適宜使用可能であり、これらの材料をスパッタリング法、蒸着法等のドライコーティング法により形成することが可能で、上記金属酸化物層の一層当たりの厚さは、0.005μm〜0.02μmとすればよい。
【0032】
また、上記赤外線反射層の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率は、80%以上に設定することが好ましい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材の断熱機能を付与できる。
【0033】
<透明基材>
本発明の透明遮熱断熱部材を構成する透明基材としては、透光性を有する材料で形成されていれば特に限定されない。上記透明基材としては、例えば、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリル酸エステル系樹脂(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、脂環式ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース系樹脂(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等)、ノルボルネン系樹脂等の樹脂を、フィルム状又はシート状に加工したものを用いることができる。上記樹脂をフィルム状又はシート状に加工する方法としては、押し出し成形法、カレンダー成形法、圧縮成形法、射出成形法、上記樹脂を溶剤に溶解させてキャスティングする方法等が挙げられる。上記樹脂には、酸化防止剤、難燃剤、耐熱防止剤、紫外線吸収剤、易滑剤、帯電防止剤等の添加剤を添加してもよい。上記透明基材の厚みは、例えば、10〜500μmである。
【0034】
<コレステリック液晶ポリマー層>
本発明の透明遮熱断熱部材は、その透明性を損なわなければ、上記透明基材の上記赤外線反射層側とは反対側にコレステリック液晶ポリマー層を更に形成してもよい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材の遮熱機能をより向上させることができる。
【0035】
上記コレステリック液晶ポリマー層は、重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤と、多官能アクリレート化合物とを含む材料を光重合させて形成されたものである。
【0036】
コレステリック液晶ポリマーは、棒状分子であるネマチック液晶化合物に少量の光学活性化合物(キラル剤)を添加することにより得ることができる。このコレステリック液晶ポリマーは、ネマチック液晶化合物が幾重にも重なる層状の構造を有している。この層内では、それぞれのネマチック液晶化合物が一定方向に配列しており、互いの層は液晶化合物の配列方向が螺旋状になるように集積している。そのため、コレステリック液晶ポリマーは、この螺旋のピッチに応じて、特定の波長の光のみを選択的に反射することができる。
【0037】
通常のコレステリック液晶ポリマーは、温度により螺旋のピッチが変わり、反射する光の波長が変わるという特徴がある。重合性官能基を有する液晶化合物と、重合性官能基を有するキラル剤とを含有する混合物を、液晶状態で均一にさせた後、液晶状態を保持したまま紫外線等の活性エネルギー線を照射すると、液晶化合物の配向状態を半永久的に固定化したコレステリック液晶ポリマーを含有する層を作製することが可能となる。
【0038】
このようにして得られたコレステリック液晶ポリマー層は、温度によって反射する光の波長が変わることがなく半永久的に反射波長を固定化することが可能となる。また、このコレステリック液晶ポリマー層は、コレステリック液晶旋光性を有することから、円偏光の回転方向と波長が、液晶分子の回転方向と螺旋ピッチと等しい場合、その光を透過せずに反射する。通常、太陽光は、右螺旋と左螺旋の円偏光から合成されている。そのため、旋光性の向きが右螺旋のキラル剤を用いて特定の螺旋ピッチとしたコレステリック液晶ポリマー層と、旋光性の向きが左螺旋のキラル剤を用いて特定の螺旋ピッチとしたコレステリック液晶ポリマー層とを積層させることにより、選択反射波長での反射率をより高くすることができる。
【0039】
上記コレステリック液晶ポリマー層の厚みは、入射光を最大反射させる波長(最大反射率波長)の1.5倍以上4.0倍以下が好ましく、最大反射率波長の1.7倍以上3.0倍以下がより好ましい。コレステリック液晶ポリマー層の厚みが最大反射率波長の1.5倍を下回ると、コレステリック液晶ポリマー層の配向性を維持することが困難になり、光反射率が低下することがある。また、コレステリック液晶ポリマー層の厚みが最大反射率波長の4.0倍を超えると、コレステリック液晶ポリマー層の配向性と光反射率は良好に維持できるが、厚みが厚くなり過ぎることがある。コレステリック液晶ポリマー層の厚みは、例えば、0.5μm以上20μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下である。
【0040】
また、上記コレステリック液晶ポリマー層は、単層構造に限らず、複数層構造であってもよい。複数層構造の場合、それぞれの層が、異なる選択反射波長を有すれば、光を反射する波長領域を広げることができ、好ましい。
【0041】
以下、上記コレステリック液晶ポリマー層の形成材料について詳細に説明する。
【0042】
[重合性官能基を有する液晶化合物]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成には、重合性官能基を有する液晶化合物を用いる。上記液晶化合物としては、例えば、「液晶の基礎と応用」(松本正一、角田市良 共著;工業調査会)第8章に記載されているような公知の化合物を用いることができる。
【0043】
上記液晶化合物の具体例としては、例えば、特開2012−6997号公報、特開2012−168514号公報、特開2008−217001号公報、WO95/22586号パンフレット、特開2000−281629号公報、特開2001−233837号公報、特表2001−519317号公報、特表2002−533742号公報、特開2002−308832号公報、特開2002−265421号公報、特開2005−309255号公報、特開2005−263789号公報、特開2008−291218号公報、特開2008−242349号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0044】
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる液晶化合物は、一種類を単独で用いてもよいし、単独で用いた場合に、コレステリック液晶層の配向が乱れやすいのであれば、高融点液晶化合物と低融点液晶化合物とを併用してもいい。この場合、高融点液晶化合物の融点と低融点液晶化合物の融点との差が、15℃以上30℃以下であることが好ましく、20℃以上30℃以下がより好ましい。
【0045】
上記液晶化合物について、高融点液晶化合物と低融点液晶化合物とを併用する場合、高融点液晶化合物の融点は、透明基材のガラス転移温度以上であることが好ましい。上記液晶化合物の融点が低い場合、キラル剤や溶剤との相溶性や溶解性に優れるが、融点が低すぎると作製した透明遮熱断熱部材の耐熱性に劣る。そのため、少なくとも高融点液晶化合物の融点を透明基材のガラス転移温度以上とするのがよい。
【0046】
上記高融点液晶化合物と上記低融点液晶化合物との組合せとしては、市販品を用いることができ、例えば、ADEKA社製の商品名「PLC7700」(融点90℃)と「PLC8100」(融点65℃)との組合せ、上記「PLC7700」(融点90℃)と「PLC7500」(融点65℃)との組合せ、DIC社製の商品名「UCL−017A」(融点96℃)と「UCL−017」(融点70℃)との組合せ等が挙げられる。
【0047】
上記重合性官能基を有する液晶化合物を三種類以上用いる場合は、それらの中で、最大の融点を有するものを高融点液晶化合物とし、最小の融点を有するものを低融点液晶化合物とする。
【0048】
上記重合性官能基を有する液晶化合物を二種以上併用する場合は、上記高融点液晶化合物を全体の質量割合で90質量%以下の範囲で含むことが好ましい。上記高融点液晶化合物の割合が90質量%を超えると、上記液晶化合物の相溶性が低下する傾向があり、その結果、コレステリック液晶ポリマー層の配向性が一部乱れることにより、ヘイズの上昇が生じる場合がある。
【0049】
[重合性官能基を有するキラル剤]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる重合性官能基を有するキラル剤としては、上記液晶化合物との相溶性が良好で、かつ、溶剤に溶解可能なものであれば、特に構造についての制限はなく、従来の重合性官能基を有するキラル剤を用いることができる。
【0050】
上記キラル剤の具体例としては、例えば、WO98/00428号パンフレット、特表平9−506088号公報、特表平10−509726号公報、特開2000−44451号公報、特表2000−506873号公報、特開2003−66214号公報、特開2003−313187号公報、米国特許第6468444号明細書等に記載の化合物を挙げることができる。また、このようなキラル剤としては、市販品を用いることができ、例えば、メルク社製の商品名「S101」、「R811」、「CB15」;BASF社製の商品名「PALIOCOLOR LC756」;ADEKA社製の商品名「CNL715」、「CNL716」等が挙げられる。
【0051】
上記コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長は、螺旋ピッチを調整することにより制御することができる。この螺旋ピッチは、上記液晶化合物及び上記キラル剤の配合量を調整することにより、調整することができる。例えば、上記キラル剤の濃度が高い場合、螺旋の捻じり力が増加するため、螺旋のピッチは小さくなり、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長λは短波長側へシフトする。また、上記キラル剤の濃度が低い場合、螺旋の捻じり力が低下するため、螺旋のピッチは大きくなり、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長λは長波長側へシフトする。よって、上記キラル剤の配合量としては、上記液晶化合物と上記キラル剤との合計100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましく、0.2質量部以上7.0質量部以下がより好ましい。上記キラル剤の配合量が0.1質量部以上10質量部以下であれば、得られるコレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長を近赤外線領域に制御することができる。
【0052】
上記のようにキラル剤の配合量を調整することにより、コレステリック液晶ポリマー層の選択反射波長を制御することができる。この選択反射波長を近赤外線領域に制御すれば、可視光領域に実質的に吸収がなく、即ち、可視光領域で透明で、かつ近赤外線領域の光を選択的に反射可能な透明遮熱断熱部材を得ることができる。例えば、上記透明遮熱断熱部材の最大反射率波長を800nm以上とすることができる。
【0053】
[多官能アクリレート化合物]
上記コレステリック液晶ポリマー層の形成に用いられる上記多官能アクリレート化合物としては、上記液晶化合物及び上記キラル剤との相溶性が良好で、コレステリック液晶ポリマー層の配向性を乱さないものであれば、適宜使用可能である。例えば、前述の保護層の他の成分として説明した多官能アクリル系樹脂モノマー(多官能アクリレート化合物)と同じものが使用できる。
【0054】
上記多官能アクリレート化合物は、上記重合性官能基を有する液晶化合物と重合性官能基を有するキラル剤との硬化性を向上させるために用いられるが、コレステリック液晶ポリマー層の配向性が乱れない量で添加される。具体的には、多官能アクリレート化合物の含有量は、上記液晶化合物と上記キラル剤との合計100質量部に対して、0.5質量部以上5質量部以下であればよいが、好ましくは1質量部以上3質量部以下である。
【0055】
<粘着剤層>
本発明の透明遮熱断熱部材は、上記保護層の反対側に粘着剤層を配置することが好ましい。これにより、本発明の透明遮熱断熱部材をガラス基板等(図示せず。)に容易に貼り付けることができる。上記粘着剤層の材料としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ウレタン系、ゴム系、シリコーン系等の樹脂を使用できる。また、上記粘着剤の厚さは、10〜100μmとすればよい。
【0056】
<透明遮熱断熱部材>
本発明の透明遮熱断熱部材は、上記透明基材側に配置した粘着剤層をガラス基板に貼り合わせた場合において、上記ガラス基板とは反対側から光を照射して測定した際の波長5.5〜25.2μmの光の平均反射率を70%以上とできる。また、本発明の透明遮熱断熱部材は、ヘイズ値を2%以下とすることができる。
【0057】
本発明の透明遮熱断熱部材は、上記赤外線反射層により断熱機能及び遮熱機能を発揮でき、また、上記保護層により耐擦傷性を向上できる。更に、本発明の透明遮熱断熱部材は、上記コレステリック液晶ポリマー層を配置することで、遮熱機能より向上できる。
【0058】
本発明の透明遮熱断熱部材は、フィルム状又はシート状の形態でガラス基板等に貼り合わせて用いることができるが、他の形態で用いてもよい。
【0059】
次に、本発明の透明遮熱断熱部材の製造方法の一例を図1を参照しながら説明する。
【0060】
先ず、透明基材11の一方の面に赤外線反射層12を形成する。赤外線反射層12は、例えば、導電性材料をスパッタリング等の方法で形成できるが、他の方法によって形成してもよい。赤外線反射層12は、高屈折率導電層と、低屈折率導電層と、高屈折率導電層との三層構造とするのが、断熱機能の点で好ましい。
【0061】
次に、上記赤外線反射層12の外面に保護層13を形成する。これにより、赤外線反射層12を室内側に配置しても、窓拭き等により赤外線反射層12が損傷することが防止できる。
【0062】
最後に、上記透明基材11の他方の面に粘着剤層14を形成する。上記粘着剤層14を形成する方法も特に制限されず、上記透明基材11の外面に、粘着剤を直接塗布してもよいし、別途用意した粘着剤シートを貼り合わせてもよい。
【0063】
以上の工程により、本発明の透明遮熱断熱部材の一例が得られ、その後に必要に応じてガラス基板等に貼り合わせて用いられる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、特に指摘がない場合、下記において、「部」は「質量部」を意味する。
【0065】
(実施例1)
<透明遮熱断熱部材の作製>
先ず、透明基材として、片面をアクリル樹脂にて易接着処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製、商品名「QT92」、厚み:50μm、ガラス転移温度:75℃)を用意した。次に、上記PETフィルムの易接着処理した側に、厚さ11nmのITO層、厚さ9nmの銀層、厚さ11nmのITO層からなる三層構造の導電性積層膜(赤外線反射層)をスパッタリングにより形成した。
【0066】
次に、水酸化マグネシウム粒子(神島化学工業社製、商品名「#200」)を乾式にてボールミルを用いて、平均一次粒子径が0.03μmになるまで粉砕した。上記粉砕した水酸化マグネシウムを600℃で熱処理することにより、ナノサイズの酸化マグネシウム粉末を得た。
【0067】
続いて、下記材料をボールミルにて分散処理し、保護層形成用塗布液を調製した。
(1)上記酸化マグネシウム粉末:75部
(2)カルボキシル基含有ポリオレフィン変性樹脂(ユニチカ社製、商品名「アローベースSB−1200」25%水溶液):80部
(3)オキサゾリン基含有樹脂(日本触媒社製、商品名「エポクロスK−2030E」40%水溶液):12.5部
(4)水:82.5部
【0068】
上記保護層形成用塗布液を、マイクログラビアコータを用いて上記PETフィルムの上記導電性積層膜の上に塗布し、100℃で乾燥させて5μmの塗膜を形成し、この塗膜を60℃にて24時間熱処理することにより硬化させ、保護層を形成した。
【0069】
以上のようにして保護層付き透明遮熱断熱フィルム(透明遮熱断熱部材)を作製した。
【0070】
<粘着テープの作製>
先ず、片面がシリコーン処理されたPETフィルム(中本パックス社製、商品名「NS50MB」、厚さ:38μm)(以下、第1剥離PETフィルムという。)を用意した。また、アクリル系粘着剤(綜研化学社製、商品名「SKダイン2094」、固形分:25%)100部に対して、紫外線吸収剤(和光純薬社製、ベンゾフェノン)1.25部及び架橋剤(綜研化学社製、商品名「E−5XM」、固形分:5%)0.27質量部を添加し、十分に混合・分散させて粘着剤層形成用塗布液を調製した。
【0071】
次に、上記第1剥離PETフィルムのシリコーン処理された側の面上に、乾燥後の厚さが25μmとなるように上記粘着剤層形成用塗布液を塗布し、粘着剤層を形成した。更に、この粘着剤層の上面に、片面がシリコーン処理された上記PETフィルム(中本パックス社製、商品名「NS50A」)(以下、第2剥離PETフィルムという。)のシリコーン処理された側を貼り合せて粘着テープを作製した。
【0072】
<ガラス基板との貼り合わせ>
先ず、ガラス基板として、厚さ3mmのフロートガラス(日本板硝子社製)を用意した。次に、上記粘着テープから第2剥離PETフィルムを剥離して粘着剤層の表面を露出させ、この粘着剤層の露出面を上記フロートガラスの片面に当接させ、25℃においてニップ圧0.5MPaで貼り合せた。続いて、上記粘着テープから第1剥離PETフィルムを剥離して粘着剤層の表面を露出させ、この粘着剤層の露出面を上記保護層付き透明遮熱断熱フィルムの透明基材面に当接させ、25℃においてニップ圧0.5MPaで貼り合せた。
【0073】
(実施例2)
実施例1の保護層形成用塗布液の組成及び製造法を以下に変更した以外は、実施例1と同様にして保護層付き透明遮熱断熱フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(1)実施例1で作製した酸化マグネシウム粉末:75部
(2)カルボキシル基含有ポリオレフィン変性樹脂(ユニチカ社製、商品名「アローベースSB−1200」25%水溶液):92部
(3)水性ウレタンアクリルUV硬化樹脂(荒川化学社製、商品名「ビームセットEM−90」40%水溶液):5部
(4)光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」):0.1部
(5)水:78部
【0074】
上記保護層形成用塗布液を、マイクログラビアコータを用いて、実施例1で作製したPETフィルムの導電性積層膜の上に塗布し、100℃で乾燥させて塗膜を形成し、この塗膜に紫外線(波長:最大波長365nm、光源:高圧水銀ランプ、光量:500mJ/cm2)を30秒間照射して硬化させ、保護層(厚さ:5μm)を形成した。
【0075】
(実施例3)
実施例1の保護層の厚みを2.5μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き透明遮熱断熱フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
【0076】
(実施例4)
実施例1の保護層の厚みを10.0μmにした以外は、実施例1と同様にして保護層付き透明遮熱断熱フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
【0077】
(実施例5)
実施例1の保護層形成後に透明基材の保護層とは反対面側に下記のとおりコレステリック液晶ポリマー層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして保護層付き透明遮熱断熱フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
【0078】
<コレステリック液晶ポリマー層の形成>
下記材料を攪拌して混合し、コレステリック液晶ポリマー層形成用塗布液を調製した。
(1)重合性官能基を有する液晶化合物I(ADEKA社製、高融点液晶化合物、商品名「PLC−7700」、融点:90℃):86.4部
(2)重合性官能基を有する液晶化合物II(ADEKA社製、低融点液晶化合物、商品名「PLC−8100」、融点:65℃):9.6部
(3)キラル剤(ADEKA社製、右旋光性キラル剤、商品名「CNL−715」):4.0部
(4)多官能アクリレート化合物(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPE−3A」):1.5部
(5)光重合開始剤(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア907」):3.0部
(6)溶剤(シクロヘキサノン):464部
【0079】
上記コレステリック液晶ポリマー層形成用塗布液を、マイクログラビアコータを用いて、実施例1で作製したPETフィルムの導電性積層膜が形成されていない面上に塗布し、100℃で乾燥させて塗膜を形成した。その塗膜に紫外線(波長:最大波長365nm、光源:高圧水銀ランプ、光量:500mJ/cm2)を30秒間照射して塗膜を硬化させ、右旋向性コレステリック液晶ポリマー層(厚さ:2.1μm)を形成した。
【0080】
(比較例1)
保護層形成用塗布液の成分を下記のように変更した以外は、実施例1と同様にして保護層付き透明遮熱断熱フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(1)カルボキシル基含有ポリオレフィン変性樹脂(ユニチカ社製、商品名「アローベースSB−1200」25%水溶液):100部
(2)オキサゾリン基含有樹脂(日本触媒社製、商品名「エポクロスK−2030E」40%水溶液):12.5部
(3)水:82.5部
【0081】
(比較例2)
保護層形成用塗布液の成分を下記のように変更した以外は、実施例2と同様にして保護層付き透明遮熱断熱フィルムを作製してガラス基板に貼り合わせた。
(1)水性ウレタンアクリルUV硬化樹脂(荒川化学社製、商品名「ビームセットEM−90」):100部
(2)光重合開始剤(BASF社製、商品名「イルガキュア754」):0.1部
【0082】
<透明遮熱断熱部材の評価>
上記実施例1〜5及び上記比較例1〜2に関して、ガラス基板に貼り付けた状態での透明遮熱断熱部材の遮蔽係数、日射透過率、熱貫流率、ヘイズ、赤外領域平均反射率を下記のとおり測定し、更に、保護膜の密着性を評価し、保護膜の耐擦傷性試験を行った。
【0083】
[遮蔽係数]
日本工業規格(JIS)A5759に準拠し、分光光度計(島津製作所製、「UV3100」)を用い、波長300〜2500nmの透過スペクトル、反射スペクトルを測定することにより日射透過率、日射反射率を計算し、日射透過率、日射反射率、修正放射率から遮蔽係数を計算により求めた。修正放射率は、JIS R3106に準拠して透明遮熱断熱部材全体の垂直放射率を求め、JIS A5759に記載されている係数で補正して算出した。
【0084】
[日射透過率]
ガラス基板側を入射光側として、300〜2500nmの範囲で紫外可視近赤外分光光度計「Ubest V−570型」(日本分光社製)を用いて光透過率を測定し、JIS A5759に基づき、ガラス基板に貼り付けた状態での透明遮熱断熱部材の日射透過率を計算した。
【0085】
[熱貫流率]
赤外分光用積分球を付属したフーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製、「IR Prestige21」)にて、ガラス基板に貼り付けた状態での透明遮熱断熱部材の赤外線反射層側の反射率の測定を3〜30μmの範囲にて行い、その測定値からJIS R3106(1985年制定)に準じて熱線の平均反射率を算出した。また、該熱線反射率からJIS R3107(1998年制定)に準じて、熱貫流率を算出した。
【0086】
[ヘイズ]
JIS K7105に基づき、ガラス基板側を入射光側として、380nm〜780nmの範囲で紫外可視近赤外分光光度計「Ubest V−570型」(日本分光社製)を用いて、ガラス基板に貼り付けた状態での透明遮熱断熱部材のヘイズを測定した。
【0087】
[赤外領域平均反射率]
ガラス基板とは反対側から光を照射した際の波長5.5〜25.2μmの光の反射率をフーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所製、「IR Prestige21」)を用いて、測定し赤外線領域平均反射率を計算した。
【0088】
[保護膜の密着性]
保護層側をJIS D0202−1988に準拠して碁盤目テープ剥離試験を行った。ニチバン社製のセロハンテープ「CT24」を用い、指の腹でフィルムに密着させた後に剥離した。判定は100個のマスの内、剥離しないマス目の数で表し、保護層が剥離しない場合を100/100、完全に剥離する場合を0/100として表した。
【0089】
[耐擦傷性]
保護層上にスチールウール(#0000)を配置し、1.96N/cm2の荷重をかけた状態で、スチールウールを10往復させた後、保護層の表面の状態を観察して、以下の3段階で評価した。
A:傷が全くつかなかった場合、B:傷が数本(5本以下)確認された場合、C:傷が多数確認された場合
【0090】
以上の結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、実施例1〜5の透明遮熱断熱部材は、日射透過率が70%以上で、ヘイズが2.0%以下で、遮蔽係数と熱貫流率とが低いので夏場の遮熱性、冬場の断熱性が共に優れ、保護層の密着性及び耐擦傷性にも優れていることが分かる。
【0093】
一方、実施例1〜5と保護層の材料が異なる比較例1では、保護層の密着性に優れるものの耐擦傷性に劣り、また、実施例1〜5と保護層の材料が異なる比較例2では、保護層の耐擦傷性に優れるものの密着性に劣り、更に熱貫流率が高いので冬場の断熱性に劣ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明は、遮熱機能、断熱機能及び耐擦傷性に優れる透明遮熱断熱部材を提供できる。このため、本発明の透明遮熱断熱部材を窓ガラス等に適用した場合に、夏場での遮熱性及び冬場での断熱性に優れ、耐擦傷性や密着性も高いので、実用耐久性に優れる。
【符号の説明】
【0095】
10 透明遮熱断熱部材
11 透明基材
12 赤外線反射層
13 保護層
14 粘着剤層
15 コレステリック液晶ポリマー層
図1
図2