(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235943
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】血圧測定システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0215 20060101AFI20171113BHJP
A61B 5/022 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
A61B5/02 610A
A61B5/02 634M
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-54918(P2014-54918)
(22)【出願日】2014年3月18日
(65)【公開番号】特開2015-173952(P2015-173952A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2016年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 博
【審査官】
湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】
特表2008−509750(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3140916(JP,U)
【文献】
特開2011−239972(JP,A)
【文献】
特開2010−178908(JP,A)
【文献】
特開平10−216094(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/136231(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/0215
A61B 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の血圧値を観血的に測定する血圧計と、
前記血圧値の測定基準値を較正する較正部と、
前記被検者の画像を取得する撮像部と、
前記画像から前記被検者の心臓の高さ位置を特定する心臓位置特定部と、
特定された前記心臓の高さ位置に基づいて、前記測定基準値の較正が必要かを判定する判定部と、
を備えている、血圧測定システム。
【請求項2】
前記較正が必要と前記判定部が判定した場合、前記較正部は、前記測定基準値を自動的に較正する、請求項1に記載の血圧測定システム。
【請求項3】
前記較正が必要と前記判定部が判定した場合にアラームを出力する報知部を備えている、請求項1または2に記載の血圧測定システム。
【請求項4】
前記撮像部によって撮像されるべく前記被検者に装着される基準部材を備えている、請求項1から3のいずれか一項に記載の血圧測定システム。
【請求項5】
前記撮像部は、複数の方向から前記被検者を撮像する複数のカメラを備えている、請求項1から4のいずれか一項に記載の血圧測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者の血圧値を観血的に測定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検者の血管内にカテーテルなどを挿入し、時々刻々と変化する血圧を連続的に測定する観血式血圧測定法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。血管内で発生している圧力は、モニタリングラインを介してカテーテルに接続されたトランスデューサによって電気信号に変換される。血圧計は、当該電気信号に対応する血圧値や血圧波形を、医療従事者などに表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−269938号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
観血式の血圧測定においては、測定の基準値を定めるためのゼロ点較正と呼ばれる処理が必須である。ゼロ点較正は、トランスデューサを基準点に配置し、トランスデューサに加わる圧力をゼロにしたとき(カテーテルを大気開放したとき)の血圧値に対する電気信号が測定基準値になるように行なわれる。
【0005】
ゼロ点較正は、被検者が変わるごとに行なわれる。しかしながら、同一の被検者に対する測定中においても、様々な要因で上記の測定基準値は変動(ドリフト)する。最も大きな変動要因は、被検者の体位変換などにより、血圧測定位置とトランスデューサの位置関係(相対高度)が変化することである。測定基準値が変動すると正確な血圧測定を遂行できないため、再度ゼロ点較正を行なう必要がある。ゼロ点較正に際しては、トランスデューサが接続された三方活栓を大気開放状態にする必要がある。被検者の体位が変わる度にゼロ点較正を行なうことは、被検者と医療従事者の双方にとって負担になっている。
【0006】
よって本発明は、観血式の血圧測定時における被検者と医療従事者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために本発明がとりうる一態様は、血圧測定システムであって、
被検者の血圧値を観血的に測定する血圧計と、
前記血圧値の測定基準値を較正する較正部と、
前記被検者の画像を取得する撮像部と、
前記画像から前記被検者の心臓の高さ位置を特定する心臓位置特定部と、
特定された前記心臓の高さ位置に基づいて、前記測定基準値の較正が必要かを判定する判定部と、
を備えている。
【0008】
このような構成によれば、撮像部を通じて取得された画像に基づいて、被検者の体位変換に起因する測定基準値の変動のみを把握でき、的確な対応が可能となる。また、血圧測定に支障がない程度の体位変換であれば、較正の必要がないと判定するようにできる。したがって、三方活栓の大気開放を伴うゼロ点較正の機会を減らすことができ、観血式の血圧測定時における被検者と医療従事者の負担を軽減できる。
【0009】
前記較正が必要と前記判定部が判定した場合、前記較正部は、前記測定基準値を自動的に較正する構成としてもよい。
【0010】
このような構成によれば、測定基準値の較正が自動化され、三方活栓の大気開放を伴うゼロ点較正を行なう必要性をより抑制できる。したがって、観血式の血圧測定時における被検者と医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【0011】
前記較正が必要と前記判定部が判定した場合にアラームを出力する報知部を備えている構成としてもよい。
【0012】
このような構成によれば、測定基準値の較正を手動で行う場合において、その必要性をより確実に医療従事者に報知できる。また測定基準値の較正が較正部により自動的に行なわれる場合においては、医療従事者は較正処理が行なわれている状況を(すなわち定常の測定状態ではないことを)容易に把握できる。したがって、観血式の血圧測定時における医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【0013】
前記撮像部によって撮像されるべく前記被検者に装着される基準部材を備えている構成としてもよい。
【0014】
このような構成によれば、被検者の体位変換に追随して基準部材が移動するため、画像認識を通じた被検者の心臓の位置をより確実に特定できる。これにより、判定部による測定基準値の較正要否の判断精度が向上する。したがって、観血式の血圧測定時における医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【0015】
前記撮像部は、複数の方向から前記被検者を撮像する複数のカメラを備えている構成としてもよい。
【0016】
単一のカメラによる撮像の場合、被検者の姿勢によっては、画像認識処理が困難であったり、基準部材が隠れてしまう場合がありうる。複数の方向から被検者を撮像することによって、より確実に被検者の心臓の位置を特定できる。これにより、判定部による測定基準値の較正要否の判断精度が向上する。したがって、観血式の血圧測定時における医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る血圧測定システムを模式的に示す図である。
【
図2】上記血圧測定システムによる血圧測定基準値の較正処理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る実施形態の例を添付の図面を参照しつつ以下詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る血圧測定システム1の構成を模式的に示す図である。なお同図においては、各部材を認識可能な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0019】
血圧測定システム1は、血圧計10を備えている。血圧計10は、被検者2の血圧値を観血的に測定する。
【0020】
図示の例は、動脈血圧の測定を行なう場合であり、被検者2の橈骨動脈にカテーテル(動脈針)21が挿入されている。静脈血圧の測定を行なう場合は、スワンガンツカテーテルを用いてもよい。トランスデューサ22は、被検者2の心臓の高さ(胸厚の半分に対応する位置の高さ)に固定される。カテーテル21とトランスデューサ22は、モニタリングライン23によって接続されている。
【0021】
モニタリングライン23は、第1チューブ23a、第2チューブ23b、第3チューブ23c、三方活栓23d、および輸液ボトル23eを含んでいる。第1チューブ23aは、カテーテル21と三方活栓23dを接続している。第2チューブ23bは、トランスデューサ22と三方活栓23dを接続している。第3チューブ23cは、輸液ボトル23eと三方活栓23dを接続している。輸液ボトル23eには、ヘパリン入り生理食塩水が収容されている。三方活栓23dを全て開放することにより、第1チューブ23a、第2チューブ23b、および第3チューブ23cは、ヘパリン入り生理食塩水で満たされる。
【0022】
トランスデューサ22は、ヘパリン入り生理食塩水を通じて伝達される被検者2の血管内の圧力に対応する電気信号を出力する。血圧計10は、当該電気信号に対応する血圧値や血圧波形を、医療従事者などのユーザに表示する。
【0023】
血圧測定システム1は、較正部11を備えている。較正部11は、血圧計10が測定する血圧値の測定基準値を較正するように構成されている。血圧の測定開始にあたって、血圧計10の初期ゼロ点較正が行なわれる。具体的には、カテーテル21を待機開放状態にしてトランスデューサ22にかかる圧力をゼロにする。較正部11は、この状態において血圧計10に入力される電気信号が基準値となるように較正を行なう。
【0024】
血圧測定システム1は、カメラ31(撮像部の一例)を備えている。カメラ31は、被検者2の画像を取得するように構成されている。
【0025】
血圧測定システム1は、心臓位置特定部12を備えている。心臓位置特定部12は、カメラ31が取得した画像に基づいて被検者2の心臓の高さ位置を特定するように構成されている。
【0026】
具体的には、所定の基準高さと被検者2の心臓の高さの差分ΔHが特定される。所定の基準高さとしては、例えば、トランスデューサ22が配置されている高さや、被検者2が横たわっているベッド3に設けた指標3aの高さなどが挙げられる。指標3aがトランスデューサ22の高さを表すように設定されてもよい。
【0027】
心臓位置特定部12は、画像認識技術を用いて、画像中における被検者2の心臓の位置を特定する。例えば、被検者2の頭部や肩部を検出し、それらの位置から心臓の位置を特定するように構成されうる。一方、心臓位置特定部12は、画像認識技術を用いて、トランスデューサ22や指標3aの位置を特定する。心臓位置特定部12は、被検者2とカメラ31の位置関係(距離、撮像角度など)に係る情報を予め記憶している。心臓位置特定部12は、上記のように特定された基準高さと被検者2の心臓の高さとに基づいて、両者の差分ΔHを特定する。
【0028】
血圧測定システム1は、判定部13を備えている。判定部13は、心臓位置特定部12が取得した差分ΔHに基づいて、血圧計10の測定基準値の較正が必要かを判定するように構成されている。例えば、測定開始時における差分ΔHの値が所定値以上変動した場合、較正が必要と判定される。当該所定値は、正確な血圧値の測定遂行に支障を生じる程度の値に定められる。換言すると、被検者2の体位が変化しても差分値の変化が所定値未満であれば、判定部13は、較正が必要と判定しない。
【0029】
図1に示す被検者2は、リクライニング式のベッド3に横たわっている。ベッド3の背もたれ部分3bの角度は可変とされており、被検者2の上半身を所望の角度まで起き上がらせることができる。このような場合においても、差分ΔHの変動量は、所定値を超えうる。したがって、判定部13は、血圧計10の測定基準値の較正が必要と判断する。
【0030】
上記の構成によれば、カメラ31を通じて取得された画像に基づいて被検者2の体位変換に起因する測定基準値の変動のみを把握でき、的確な対応が可能となる。また、血圧測定に支障がない程度の体位変換であれば、較正の必要がないと判定するようにできる。したがって、三方活栓23dの大気開放を伴うゼロ点較正の機会を減らすことができ、観血式の血圧測定時における被検者と医療従事者の負担を軽減できる。
【0031】
較正部11は、ユーザが手動で操作可能なダイヤルやスイッチを通じて測定基準値の較正が遂行されるように構成されている。
図2の(a)は、当該被検者2より取得された中心静脈圧(CVP)の波形を示している。横軸は時間を表し、縦軸は信号強度を表している。時点t1における血圧測定値の低下は、被検者2の体位変換に起因している。
図2の(b)は、較正部11により測定基準値の較正が遂行された中心静脈圧(CVP)の波形を示している。時点t1において被検者2の体位変換に起因する一時的な血圧測定値の低下が確認できるものの、較正によって測定値が時点t1以前の水準に戻っていることが判る。
【0032】
なお、較正の対象となる波形は、中心静脈圧(CVP)に限られるものではない。観血血圧測定により得られる血圧を示す各種波形を較正の対象とすることができる。
【0033】
図1に破線で示すように、較正部11と判定部13を通信可能に接続してもよい。この場合、判定部13は、測定基準値の較正要否を示す信号を、較正部11へ出力するように構成される。較正部11は、較正が必要と判定部13が判定した場合、測定基準値を自動的に構成するように構成される。例えば、心臓位置特定部12が特定した差分ΔHの値と測定基準値の補正量の関係を、予めテーブルや関数として較正部11に格納しておく。較正が必要と判定部13が判定した場合、較正部11は、心臓位置特定部12が特定した差分ΔHの値を参照し、当該テーブルや関数に基づいて測定基準値の補正量を決定する。
【0034】
このような構成によれば、測定基準値の較正が自動化され、三方活栓23dの大気開放を伴うゼロ点較正を行なう必要性をより抑制できる。したがって、観血式の血圧測定時における被検者と医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【0035】
図1に破線で示すように、血圧測定システム1は、報知部14を備えてもよい。この場合、報知部14は、較正が必要と判定部13が判定した場合にアラームを出力するように構成される。
【0036】
このような構成によれば、測定基準値の較正を手動で行う場合において、その必要性をより確実に医療従事者に報知できる。また測定基準値の較正が較正部11により自動的に行なわれる場合においては、医療従事者は較正処理が行なわれている状況を(すなわち定常の測定状態ではないことを)容易に把握できる。したがって、観血式の血圧測定時における医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【0037】
図1に破線で示すように、カメラ31によって撮像される基準部材40が被検者2に装着されてもよい。基準部材40の形状や色は、心臓位置特定部12による画像認識を助けるように定められる。基準部材40の装着位置は適宜に定められうるが、被検者2の心臓に対応する位置に定められることが好ましい。
【0038】
このような構成によれば、被検者2の体位変換に追随して基準部材40が移動するため、画像認識を通じた被検者2の心臓の位置をより確実に特定できる。これにより、判定部13による測定基準値の較正要否の判断精度が向上する。したがって、観血式の血圧測定時における医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【0039】
図1に破線で示すように、血圧測定システム1は、カメラ32をさらに備えてもよい。カメラ32は、カメラ31とは異なる方向から被検者2を撮像するように構成されている。すなわち、複数のカメラ(撮像部の一例)が複数の方向から被検者2を撮像する。カメラ32により取得された画像データは、心臓位置特定部12に入力され、カメラ31により取得された画像データと同様に処理される。
【0040】
単一のカメラによる撮像の場合、被検者2の姿勢によっては、画像認識処理が困難であったり、基準部材40が隠れてしまう場合がありうる。複数の方向から被検者2を撮像することによって、より確実に被検者2の心臓の位置を特定できる。これにより、判定部13による測定基準値の較正要否の判断精度が向上する。したがって、観血式の血圧測定時における医療従事者の負担をさらに軽減できる。
【0041】
上記の実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであって、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは明らかである。
【0042】
図1に示した例においては、較正部11、心臓位置特定部12、判定部13、および報知部14は、血圧計10の内部に設けられている。しかしながら、これらの少なくとも1つは、血圧計10とは別体の装置の内部に設けられてもよい。
【0043】
血圧計10は、必ずしも独立した装置であることを要しない。心電図などの生体情報を取得・表示する生体情報モニタ装置において実現される一機能として提供されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:血圧測定システム、2:被検者、10:血圧計、11:較正部、12:心臓位置特定部、13:判定部、14:報知部、31:カメラ、32:カメラ、40:基準部材