特許第6235959号(P6235959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235959
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】環状オレフィン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 65/00 20060101AFI20171113BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20171113BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20171113BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20171113BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C08L65/00
   C08L45/00
   C08K5/13
   B29C55/02
   G02B1/04
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-81080(P2014-81080)
(22)【出願日】2014年4月10日
(65)【公開番号】特開2014-218660(P2014-218660A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2016年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-82372(P2013-82372)
(32)【優先日】2013年4月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090686
【弁理士】
【氏名又は名称】鍬田 充生
(74)【代理人】
【識別番号】100142594
【弁理士】
【氏名又は名称】阪中 浩
(72)【発明者】
【氏名】山田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】宮内 信輔
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩規
(72)【発明者】
【氏名】川崎 真一
(72)【発明者】
【氏名】荘所 大策
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−008017(JP,A)
【文献】 特開2011−028251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 45/00
C08L 65/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性基を有する環状オレフィン共重合体と、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物とを含む樹脂組成物であって、前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の割合が、前記環状オレフィン共重合体100重量部に対して0.1〜20重量部である樹脂組成物
【請求項2】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、下記式(1)で表される化合物である請求項1記載の樹脂組成物。
【化1】
[式中、環Zは芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Xは、基−[(OR)n−Y](式中、Yは、ヒドロキシル基、メルカプト基、グリシジルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ基、Rはアルキレン基、nは0以上の整数を示す。)又はアミノ基、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、pは1以上の整数を示す。]
【請求項3】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、下記式(1A)で表される化合物である請求項1又は2記載の樹脂組成物。
【化2】
(式中、Z、R、R、k、m、R、n、pは前記式(1)と同じ。)
【請求項4】
環Zがベンゼン環又はナフタレン環、Rがアルキル基、kが0〜1、Rがアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルコキシ基、mが0〜2、RがC2−4アルキレン基、nが0〜2、pが1〜3である請求項2又は3記載の樹脂組成物。
【請求項5】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレンから選択された少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物で形成された成形体。
【請求項7】
光学用成形体である請求項記載の成形体。
【請求項8】
光学フィルムである請求項又は記載の成形体。
【請求項9】
延伸フィルムである請求項のいずれかに記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン樹脂(特に環状オレフィン共重合体)を含む樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオレン骨格(9,9−ビスフェニルフルオレン骨格など)を有する化合物は、高屈折率、高耐熱性などの優れた機能を有することが知られている。このようなフルオレン骨格の優れた機能を樹脂に発現させ、成形可能とする方法としては、反応性基(ヒドロキシル基、アミノ基など)を有するフルオレン化合物、例えば、ビスフェノールフルオレン(BPF)、ビスクレゾールフルオレン(BCF)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(BPEF)などを樹脂の構成成分として利用し、樹脂の骨格構造の一部にフルオレン骨格を導入する方法が一般的である。
【0003】
例えば、特開2002−284864号公報(特許文献1)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有するポリエステル系樹脂で構成された成形材料が開示されている。また、特開2002−284834号公報(特許文献2)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有し、架橋剤で架橋されたポリウレタン系樹脂が開示されている。これらの文献では、樹脂を構成するジオール成分の一部として、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンや、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(ビスフェノキシエタノールフルオレン)などを使用することにより、樹脂中にフルオレン骨格を導入している。
【0004】
しかし、このような方法では、樹脂の骨格をフルオレン骨格で置換するため、煩雑な重合反応を必要とし、また、幅広い樹脂に適用できない。
【0005】
一方、フルオレン化合物を、ポリマー化することなく、直接的に樹脂に添加する試みもなされつつある。
【0006】
例えば、特開2005−162785号公報(特許文献3)には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物と、熱可塑性樹脂とで構成された樹脂組成物が開示されている。そして、この文献には、9,9−ビスフェニルフルオレン骨格を有する化合物を、熱可塑性樹脂に添加することで、高屈折率などを熱可塑性樹脂に付与できると記載されており、具体的な実施例では、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、特定の化合物(ビスフェノールフルオレンジグリシジルエーテル、ビスフェノキシエタノールフルオレン又はビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート)を30〜40重量部混合した樹脂組成物を作成し、透明なフィルムを得たことや屈折率が上昇したことなどが記載されている。
【0007】
また、特開2011−21083号公報(特許文献4)には、フェノール化合物が、ポリ乳酸などの結晶性樹脂にβ晶構造を形成するための核剤(β晶核剤)として機能することが記載されている。そして、この文献の実施例では、α晶(融点168℃)のポリL乳酸に対して、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンを1〜5重量%添加して溶融混練し、β晶(融点163℃)が形成されたポリL−乳酸を得たこと、また、結晶構造が変わったことに伴い、Tgが56.5℃から、60.9〜62.1℃に変化したことが記載されている。
【0008】
さらに、特開2011−8017号公報(特許文献5)には、透明樹脂と、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有するフルオレン化合物とで構成された光学用樹脂組成物が開示されている。そして、この文献には、透明樹脂の機械特性及び耐熱性を損なうことなく、複屈折を低下できると記載されており、具体的な実施例では、ポリカーボネート樹脂に対して、フルオレン含有ポリエステル系樹脂と、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)フルオレン、又は9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンとを含む樹脂組成物から延伸フィルムを作成し、複屈折が低下したことが記載されている。なお、この文献には、透明樹脂の一例として、環状オレフィン系樹脂が記載されているが、ポリカーボネート系樹脂などが好ましいとされ、その詳細については何ら記載されておらず、実施例でも何ら使用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−284864号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2002−284834号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献3】特開2005−162785号公報(特許請求の範囲、実施例)実施例)
【特許文献4】特開2011−21083号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献5】特開2011−8017号公報(特許請求の範囲、段落[0017]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、環状オレフィン樹脂を含む新規な樹脂組成物およびこの樹脂組成物で形成された成形体を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、機械的特性が改善された環状オレフィン樹脂組成物およびこの樹脂組成物で形成された成形体を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、アッベ数が低減された環状オレフィン樹脂組成物およびこの樹脂組成物で形成された成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
環状オレフィン樹脂は、耐溶剤性などに優れた材料であるが、このような環状オレフィン樹脂においてさらなる特性の改善が望まれている。しかし、環状オレフィン樹脂は、一般的に添加剤に対する親和性に乏しい場合が多く、環状オレフィン樹脂の改質は容易でないのが現状であった。
【0014】
このような中、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、環状オレフィン樹脂(特に環状オレフィン共重合体)に対して、高い親和性(又は相溶性)で添加又は混合できること、また、得られる樹脂組成物が、意外にも、環状オレフィン樹脂の各種特性、例えば、機械的強度[例えば、引張強度、曲げ強度および貯蔵弾性率E’(例えば、室温又は常温(15〜30℃程度)における貯蔵弾性率E’)から選択された少なくとも1種]のみならず、光学特性(例えば、透明性、低複屈折、低アッベ数など)などが改善された樹脂組成物を形成していることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
すなわち、前記9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、前記機械的特性の向上剤(引張強度、曲げ強度、貯蔵弾性率E’などの機械的強度の向上剤)、光学特性の向上剤(複屈折低減剤、アッベ数調整剤(又はアッベ数低減剤)など)として機能する。
【0016】
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂[特に環状オレフィン共重合体(例えば、極性基を有する環状オレフィン共重合体)]と、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物とを含む。9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物であってもよい。
【0017】
【化1】
【0018】
[式中、環Zは芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Xは、基−[(OR)n−Y](式中、Yは、ヒドロキシル基、メルカプト基、グリシジルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ基、Rはアルキレン基、nは0以上の整数を示す。)又はアミノ基、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、pは1以上の整数を示す。]
【0019】
特に、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、下記式(1A)で表される化合物であってもよい。
【0020】
【化2】
【0021】
(式中、Z、R、R、k、m、R、n、pは前記式(1)と同じ。)
上記式(1)又は(1A)において、環Zは、ベンゼン環又はナフタレン環であってもよく、Rはアルキル基であってもよく、kは0〜1であってもよく、Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルコキシ基であってもよく、mは0〜2であってもよく、RはC2−4アルキレン基であってもよく、nが0〜2であってもよく、pは1〜3であってもよい。
【0022】
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物は、代表的には、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレンから選択された少なくとも1種であってもよい。
【0023】
本発明の樹脂組成物において、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物の割合は、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、例えば、0.5〜50重量部であってもよい。
【0024】
また、本発明には、前記樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。このような成形体は、機械的特性及び光学的特性に優れており、高い透明性、高い屈折率、低い複屈折、低いアッベ数を有している。そのため、本発明の成形体は光学用成形体(光学フィルム、レンズなど)であってもよい。また、本発明の成形体は、フィルム(フィルム状成形体)であってもよく、このような成形体は、延伸フィルムであってもよい。
【0025】
なお、本明細書において、「9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類」および「9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類」とは、「9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン骨格」や「9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格」を有する限り、アリール基やフルオレン骨格(詳細にはフルオレンの2〜7位)に置換基を有する化合物を含む意味に用いる。さらに、本明細書において、「9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン」とは、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシアリール)フルオレンおよび9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシアリール)フルオレンを含む意味に用いる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂を含む新規な樹脂組成物である。このような樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂由来の優れた特性を有する他、各種特性において向上又は改善(例えば、機械的特性の向上、屈折率の向上、複屈折及びアッベ数の低減など)されており、非常に有用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂と、フルオレン骨格(9,9−ビスアリールフルオレン骨格)を有する化合物(以下、フルオレン化合物ということがある)とを含む。
【0028】
(環状オレフィン樹脂)
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂である。環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。また、環状オレフィンは、置換基、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基などのC1−10アルキル基、好ましくはC1−5アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC5−10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC6−10アリール基)、アルケニル基(例えば、プロペニル基などのC2−10アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC5−10シクロアルケニル基など)、アルキリデン基(例えば、エチリデン基などのC2−10アルキリデン基、好ましくはC2−5アルキリデン基など)など]、極性基[例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC1−10アルコキシ基、好ましくはC1−6アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC2−5アルカノイル基など)、アシルオキシ基[例えば、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などのC1−10アルコキシ−カルボニル基)、シクロアルコキシカルボニル基(例えば、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのC5−10シクロアルキル−カルボニル基)など]、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)など}を有していてもよい。環状オレフィンは、単独で又は2種以上組みあわせて置換基を有していてもよい。
【0029】
具体的な環状オレフィンとしては、単環式オレフィン類[例えば、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC3−10アルケンなど)など、シクロアルカジエン(例えば、シクロペンタジエンなどのシクロC3−10アルカジエン)など]、二環式オレフィン類{例えば、ノルボルネン類[例えば、ノルボルネン(例えば、2−ノルボルネン)、アルキルノルボルネン(例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン)、アリールノルボルネン(例えば、5−フェニル−2−ノルボルネン)、極性基を有するノルボルネン(例えば、5−シアノ−2−ノルボルネンなどのシアノノルボルネン;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−シクロヘキシルオキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアシルオキシノルボルネン(アルコキシカルボニルノルボルネン、シクロアルコキシカルボニルノルボルネンなど);5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネンなどのハロアルキルノルボルネン;7−オキソ−2−ノルボルネンなどのオキソノルボルネン)など]、ノルボルナジエン類[例えば、ノルボルナジエン(例えば、2,5−ノルボルナジエン)、アルキルノルボルナジエン(例えば、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジメチル−2,5−ノルボルナジエンなど)、アリールノルボルナジエン(5−フェニル−2,5−ノルボルナジエンなど)、極性基を有するノルボルナジエン(例えば、5−シアノ−2,5−ノルボルナジエンなどのシアノノルボルナジエン;5−メトキシカルボニル−2,5−ノルボルナジエンなどのアシルオキシノルボルナジエン(アルコキシカルボニルノルボルナジエンなど);5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2,5−ノルボルナジエンなどのハロアルキルノルボルナジエン;7−オキソ−2−ノルボルナジエンなどのオキソノルボルナジエン)など]、三環式オレフィン{例えば、トリシクロアルケン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)などのC6−25トリシクロアルケンなど]、トリシクロアルカジエン[例えば、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.12,5 ]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.12,5]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC6−25トリシクロアルカジエンなど]など}、四環以上の多環式オレフィン{例えば、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロアルケン(例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンなどのC8−30テトラシクロアルケンなど)など]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC10−35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンなどのC12−40ヘキサシクロアルケン)など]など}などの多環式オレフィン類などが挙げられる。
【0030】
環状オレフィン樹脂は、環状オレフィンの単独又は共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体、複数の多環式オレフィンの共重合体など)であってもよく、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。
【0031】
共重合性単量体としては、例えば、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのC2−20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役C5−20アルカジエン)など]、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などが挙げられる。共重合性単量体は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0032】
なお、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体において、環状オレフィンの割合は、環状オレフィンおよび共重合性単量体の総量に対して、例えば、10モル%以上(例えば、20モル%以上)、好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であってもよい。
【0033】
好ましい環状オレフィン樹脂には、環状オレフィン共重合体[例えば、環状オレフィン(例えば、ノルボルネン類を少なくとも含む環状オレフィン)と共重合性単量体(例えば、鎖状オレフィン(例えば、エチレンなどのC2−6アルケン))を少なくとも含む共重合性単量体との共重合体]が含まれる。
【0034】
特に、環状オレフィン共重合体の中でも、極性基を有する環状オレフィン共重合体、例えば、極性基を有する環状オレフィン{例えば、極性基を有するノルボルネン[例えば、アシルオキシノルボルネン(例えば、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基(例えば、C1−10アルコキシカルボニル基、好ましくはC1−4アルコキシカルボニル基)が置換したノルボルネンなど)など]など}を少なくとも含む環状オレフィンと、共重合性単量体[例えば、鎖状オレフィン(例えば、エチレンなどのC2−6アルケン)を少なくとも含む共重合性単量体]との共重合体などが好ましい。
【0035】
なお、極性基を有する環状オレフィン共重合体において、環状オレフィン全体に対する極性基を有する環状オレフィンの割合は、例えば、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上であってもよい。
【0036】
環状オレフィン樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0037】
なお、環状オレフィン樹脂の分子量は、樹脂の種類に応じて選択できるが、例えば、数平均分子量で2000以上(例えば、3000以上)の範囲から選択でき、5000以上(例えば、8000〜1000000)、好ましくは10000以上(例えば、12000〜800000)、さらに好ましくは15000以上(例えば、20000〜500000)であってもよい。分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)などの慣用の方法を利用して測定でき、ポリスチレン換算の分子量として評価してもよい。
【0038】
(フルオレン化合物)
フルオレン化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有していればよく、反応性基を有しない化合物[例えば、9,9−ビスアリールフルオレン(例えば、9,9−ビスフェニルフルオレン)などの後述の式(1)においてpが0である化合物など]であってもよいが、通常、反応性基を有している。
【0039】
反応性基としては、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基(例えば、グリシジルオキシ基)などが挙げられる。フルオレン化合物は、これらの反応性基を、単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0040】
反応性基は、9,9−ビスアリールフルオレンに直接的に結合していてもよく、適当な連結基(例えば、(ポリ)オキシアルキレン基など)を介して結合していてもよい。
【0041】
具体的なフルオレン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物などが挙げられる。
【0042】
【化3】
【0043】
[式中、環Zは芳香族炭化水素環、RおよびRは置換基、Xは、基−[(OR)n−Y](式中、Yは、ヒドロキシル基、メルカプト基、グリシジルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ基、Rはアルキレン基、nは0以上の整数を示す。)又はアミノ基、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、pは1以上の整数を示す。]
【0044】
上記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素など]、環集合炭化水素環(ビフェニル環、テルフェニル環、ビナフチル環などのビ又はテルC6−10アレーン環)が挙げられる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。好ましい環Zには、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が含まれ、特に、ベンゼン環であってもよい。
【0045】
前記式(1)において、基Rとしては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC6−10アリール基)など]、アシル基(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ペンチルカルボニルなどのアルキルカルボニル基)などの非反応性置換基が挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC1−12アルキル基(例えば、C1−8アルキル基、特にメチル基などのC1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2〜4)である場合、複数の基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、基Rの結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2および7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの置換数kは、同一又は異なっていてもよい。
【0046】
環Zに置換する置換基Rとしては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC1−12アルキル基、好ましくはC1−8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC6−10アリール−C1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC1−8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC6−10アリール−C1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC1−8アルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0047】
好ましい基Rとしては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C6−8アリール−C1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。さらに好ましい基Rには、アルキル基[C1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C6−10アリール基(特にフェニル基)など]などが含まれる。なお、基Rがアリール基であるとき、基Rは、環Zとともに、前記環集合炭化水素環を形成してもよい。
【0048】
なお、同一の環Zにおいて、mが複数(2以上)である場合、基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよよい。また、2つの環Zにおいて、基Rの種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換数mは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0049】
前記式(1)の基Xにおいて、基Rで表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC2−6アルキレン基、好ましくはC2−4アルキレン基、さらに好ましくはC2−3アルキレン基が挙げられる。なお、nが2以上であるとき、アルキレン基の種類は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの芳香族炭化水素環Zにおいて、基Rの種類は同一又は異なっていてもよい。
【0050】
オキシアルキレン基(OR)の数(付加モル数)nは、0以上(例えば、0〜20)であればよく、例えば、0〜15(例えば、1〜12)、好ましくは0〜10(例えば、1〜6)、さらに好ましくは0〜4(例えば、1〜4)、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。また、樹脂の種類によっては、nが0である場合又はnが1以上である場合において、顕著な改善効果が得られる場合などがある。そのため、樹脂の種類などによって、nが0である化合物、nが1以上である化合物のいずれかを選択してもよい。なお、置換数nは、異なる環Zに対して、同一又は異なっていてもよい。
【0051】
好ましいXは、基−[(OR)n−Y]であり、特に、Yはヒドロキシル基であるのが好ましい。なお、式(1)において、Yがヒドロキシル基である化合物は、下記式(1A)で表される。
【0052】
【化4】
【0053】
(式中、Z、R、R、k、m、R、n、pは前記式(1)と同じ。)
基Xの置換数pは、1以上(例えば、1〜6)であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数pは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。
【0054】
また、前記式(1)[又は(1A)]において、基Xの置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、基Xは、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位に置換していればよく、好ましくは4位に置換していてもよい。また、基Xは、環Zが縮合多環式炭化水素環である場合、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
【0055】
具体的なフルオレン化合物(又は前記式(1)又は(1A)で表される化合物)には、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類]、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類]などの前記式(1)においてXが基−[(OR)n−OH]である化合物;これらの化合物において、ヒドロキシル基が、メルカプト基、グリシジルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ基に置換した化合物などが含まれる。
【0056】
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン]などが挙げられる。
【0057】
また、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレン]などが含まれる。
【0058】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において、nが1である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において、nが2以上である化合物)などが含まれる。
【0059】
また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0060】
これらのフルオレン化合物のうち、特に、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどの前記式(1A)においてnが0である化合物;9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(モノ又はジC1−4アルキル−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(モノ又はジC6−10アリール−ヒドロキシC2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシC2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの前記式(1A)においてnが1以上(例えば、1〜4、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1)である化合物が好ましい。
【0061】
前記フルオレン化合物は、環状オレフィン樹脂の機械的特性(引張強度、曲げ強度、貯蔵弾性率E’)を向上するだけでなく、光学特性も向上させる。例えば、前記フルオレン化合物は、環状オレフィン樹脂の複屈折を低減し、アッベ数も低減する。そのため、前記フルオレン化合物は、機械的特性の向上剤、光学特性向上剤(例えば、複屈折低減剤、アッベ数調整剤(又はアッベ数低減剤))ということもできる。
【0062】
フルオレン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、フルオレン化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法により合成してもよい。
【0063】
フルオレン化合物の割合は、例えば、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、例えば、0.1重量部以上(例えば、0.2〜200重量部)程度の範囲から選択でき、0.3〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部、さらに好ましくは1〜50重量部程度であってもよく、通常0.5〜50重量部(例えば、0.5〜40重量部、好ましくは0.7〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部)程度であってもよい。
【0064】
本発明では、少量でも効率よく各種特性を向上又は改善できるため、例えば、フルオレン化合物の割合を、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、20重量部以下(例えば、0.1〜18重量部)、好ましくは15重量部以下(例えば、0.2〜12重量部)、さらに好ましくは10重量部以下(例えば、0.3〜7重量部)、特に5重量部以下(例えば、0.5〜5重量部)とすることもできる。
【0065】
また、フルオレン化合物は、環状オレフィン樹脂に対する親和性に優れ、比較的多い割合で添加しても樹脂特性を高いレベルで維持又は向上できる場合が多い。そのため、フルオレン化合物の割合を、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、20重量部以上(例えば、20〜100重量部)、好ましくは25重量部以上(例えば、25〜80重量部)、さらに好ましくは30重量部以上(例えば、30〜70重量部)とすることもできる。
【0066】
樹脂組成物は、本発明の効果を害しない範囲であれば、他の樹脂(環状オレフィン樹脂ではない樹脂)を含んでいてもよい。このような他の樹脂としては、例えば、鎖状オレフィン樹脂[エチレン系樹脂(例えば、ポリエチレン)、プロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン)、ポリメチルペンテンなど]、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、フッ化樹脂など)、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂(例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂など)、ポリチオカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂[例えば、脂肪族ポリエステル樹脂(ポリ乳酸など)、芳香族ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート樹脂)など]、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66などの脂肪族ポリアミド樹脂;ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0067】
なお、他の樹脂の割合は、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部(例えば、4〜300重量部)、さらに好ましくは5〜100重量部程度であってもよく、通常1〜100重量部(例えば、2〜80重量部、好ましくは3〜50重量部)程度であってもよい。
【0068】
また、樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0069】
なお、樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂とフルオレン化合物と[さらに、必要に応じて他の成分(添加剤など)と]を混合することで得ることができる。混合方法は、特に限定されず、例えば、溶融混練により混合してもよく、溶媒に各成分を溶解させて混合してもよい。
【0070】
[成形体]
本発明には、前記樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択でき、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
【0071】
特に、本発明の樹脂組成物は、種々の光学的特性に優れている場合が多く、透明性が高く、高屈折率、低複屈折及び/又は低アッベ数の光学材料又は光学用成形体(特に、光学フィルム、光学レンズなど)を好適に形成してもよい。
【0072】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0073】
特に、本発明の樹脂組成物は、光学的特性に優れている場合が多く、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記樹脂組成物で形成されたフィルム(光学フィルムなど)も含まれる。フィルム(光学フィルムなど)は、前記樹脂組成物を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
【0074】
フィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。
【0075】
フィルムは、延伸フィルム(一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルム)であってもよい。延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.05〜10倍(例えば、1.1〜5倍)程度であってもよく、通常1.1〜3倍(例えば、1.2〜2.5倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸であっても偏延伸であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸であっても横延伸であってもよい。延伸方法は、特に制限がなく、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法などであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)、チューブ法などであってもよい。
【0076】
延伸フィルムの厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例において、各種特性は、以下のようにして測定した。
【0078】
(引張強度)
延伸フィルムから、サンプル(厚さ0.2mm、幅5mm、長さ50mm)を作成し、このサンプルにて、引張試験機(Tensilon RTC−1250(A&D))を用い、チャック間距離を20mmとして、引張速度2mm/分でサンプルが切断するまでの強度を測定した。
【0079】
(動的粘弾性)
延伸フィルムから、サンプル(厚さ0.2mm、幅1−2mm、長さ50mm)を作成し、このサンプルにて、動的粘弾性試験機(Rheogel E4000(ユービーエム))を用い、一軸引張モード(100Hz)で、室温(25℃)における貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0080】
(複屈折)
延伸フィルムについて、偏光顕微鏡(NIKON製、OPTIPHOT−POL)を用いて、偏光をコンペンセーターで相殺する方法で、延伸時の単位倍率あたりに増大する複屈折(Δn/λ)を波長546nmで測定した。
【0081】
(屈折率及びアッベ数)
未延伸フィルム(厚み2mm)について、アッベ式屈折率計(アタゴ(株)製)により、波長589nmで屈折率を測定した。また、C線(656nm)、D線(589nm)及びF線(486nm)で測定した屈折率に基づいて、アッベ数を算出した。
【0082】
(実施例1)
ラボプラストミルにて環状オレフィン共重合体(JSR(株)製、Arton4531F)を溶融後、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレン、大阪ガスケミカル(株)製、以下、BCFという。)を表1に示す割合となるように、250℃(0重量%、1重量%)又は240℃(5重量%、10重量%)で混合し、樹脂組成物を得た。なお、樹脂組成物は、いずれの割合においても透明であり、均一に混合されていた。
【0083】
得られた樹脂組成物を120℃で乾燥させたのち、220℃(0重量、1重量部)又は230℃(5重量%、10重量%)でホットプレスし、シートを作成した。さらに、得られたシートを、150℃で加熱処理した後、シリコーンオイル浴中、延伸温度180℃、延伸倍率1.2倍で熱延伸し、延伸フィルムを得た。
【0084】
得られた延伸フィルムを用いて、各種特性を測定した。
【0085】
結果を表1に示す。なお、表1では、比較のため、BCFの割合が0重量%の結果も記載した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1の結果から明らかなように、環状オレフィン共重合体にBCFを添加することで、機械的強度が向上することがわかった、また、環状オレフィン樹脂にBCFを添加することで、複屈折が低下した。
【0088】
(実施例2)
実施例1において、BCFにかえて9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして測定した。なお、混合温度は250℃とし、ホットプレス温度は220℃(0重量、1重量部)又は230℃(5重量%、10重量%、30重量%)とした。
【0089】
結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2の結果から明らかなように、環状オレフィン共重合体にBPEFを添加しても、機械的強度が向上し、複屈折も低下した。
【0092】
(実施例3)
樹脂を環状オレフィンコポリマー(三井化学(株)製、アペルAPL5014DP)とし、表3に示した配合比でBCFを混練し、屈折率を測定した。なお、混合温度は250℃とし、ホットプレス温度は250℃とした。結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3から明らかなように、フルオレン化合物の添加により、アッベ数を低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂で構成されており、環状オレフィン樹脂自体が有する特性の他、例えば、高屈折率、高強度、低複屈折、低アッベ数、高透明性などの優れた特性を有している。このような樹脂組成物は、特に、光学レンズ、光学フィルム、光学シート、ピックアップレンズ、ホログラム、液晶用フィルム、有機EL用フィルムなどに好適に利用できる。また、本発明の樹脂組成物は、塗料、帯電防止剤、インキ、接着剤、粘着剤、樹脂充填材、帯電トレイ、導電シート、保護膜(電子機器、液晶部材などの保護膜など)、電気・電子材料(キャリア輸送剤、発光体、有機感光体、感熱記録材料、ホログラム記録材料)、電気・電子部品又は機器(光ディスク、インクジェットプリンタ、デジタルペーパ、有機半導体レーザ、色素増感型太陽電池、EMIシールドフィルム、フォトクロミック材料、有機EL素子、カラーフィルタなど)用樹脂、機械部品又は機器(自動車、航空・宇宙材料、センサ、摺動部材など)用の樹脂などに好適に利用できる。
【0096】
特に、本発明の樹脂組成物は、光学的特性に優れているため、光学用途の成形体(光学用成形体)を構成(又は形成)するのに有用である。このような前記樹脂組成物で形成(構成)された光学用成形体としては、例えば、光学フィルム、光学レンズなどが挙げられる。なお、前記樹脂組成物では低アッベ数の成形体(例えば、レンズ)を形成でき、低アッベ数の成形体は、高アッベ数の成形体(例えば、レンズ)と組み合わせることにより、光の分散及び歪みが小さく、収差が極めて小さく、解像度を向上でき、色にじみのない光学部品を形成できる。
【0097】
光学フィルムとしては、偏光フィルム(及びそれを構成する偏光素子と偏光板保護フィルム)、位相差フィルム、配向膜(配向フィルム)、視野角拡大(補償)フィルム、拡散板(フィルム)、プリズムシート、導光板、輝度向上フィルム、近赤外吸収フィルム、反射フィルム、反射防止(AR)フィルム、反射低減(LR)フィルム、アンチグレア(AG)フィルム、透明導電(ITO)フィルム、異方導電性フィルム(ACF)、電磁波遮蔽(EMI)フィルム、電極基板用フィルム、カラーフィルタ基板用フィルム、バリアフィルム、カラーフィルタ層、ブラックマトリクス層、光学フィルム同士の接着層もしくは離型層などが挙げられる。とりわけ、本発明のフィルムは、機器のディスプレイに用いる光学フィルムとして有用である。このような本発明の光学フィルムを備えたディスプレイ用部材(又はディスプレイ)としては、具体的には、パーソナル・コンピュータのモニタ、テレビジョン、携帯電話、カー・ナビゲーションシステム、タッチパネルなどのFPD装置(例えば、LCD、PDPなど)などが挙げられる。