(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有する化合物が、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレンから選択された少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂と、フルオレン骨格(9,9−ビスアリールフルオレン骨格)を有する化合物(以下、フルオレン化合物ということがある)とを含む。
【0028】
(環状オレフィン樹脂)
環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂である。環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。また、環状オレフィンは、置換基、例えば、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、メチル基などのC
1−10アルキル基、好ましくはC
1−5アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、シクロヘキシル基などのC
5−10シクロアルキル基)、アリール基(例えば、フェニル基などのC
6−10アリール基)、アルケニル基(例えば、プロペニル基などのC
2−10アルケニル基など)、シクロアルケニル基(例えば、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などのC
5−10シクロアルケニル基など)、アルキリデン基(例えば、エチリデン基などのC
2−10アルキリデン基、好ましくはC
2−5アルキリデン基など)など]、極性基[例えば、アルコキシ基(例えば、メトキシ基などのC
1−10アルコキシ基、好ましくはC
1−6アルコキシ基)、アシル基(例えば、アセチル基などのC
2−5アルカノイル基など)、アシルオキシ基[例えば、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基などのC
1−10アルコキシ−カルボニル基)、シクロアルコキシカルボニル基(例えば、シクロヘキシルオキシカルボニル基などのC
5−10シクロアルキル−カルボニル基)など]、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ニトロ基、シアノ基、オキソ基(=O)、複素環基(ピリジル基などの窒素原子含有複素環基など)など}を有していてもよい。環状オレフィンは、単独で又は2種以上組みあわせて置換基を有していてもよい。
【0029】
具体的な環状オレフィンとしては、単環式オレフィン類[例えば、シクロアルケン(例えば、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどのシクロC
3−10アルケンなど)など、シクロアルカジエン(例えば、シクロペンタジエンなどのシクロC
3−10アルカジエン)など]、二環式オレフィン類{例えば、ノルボルネン類[例えば、ノルボルネン(例えば、2−ノルボルネン)、アルキルノルボルネン(例えば、5−メチル−2−ノルボルネン、5,5又は5,6−ジメチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン)、アリールノルボルネン(例えば、5−フェニル−2−ノルボルネン)、極性基を有するノルボルネン(例えば、5−シアノ−2−ノルボルネンなどのシアノノルボルネン;5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5,6−ジメトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−シクロヘキシルオキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアシルオキシノルボルネン(アルコキシカルボニルノルボルネン、シクロアルコキシカルボニルノルボルネンなど);5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2−ノルボルネンなどのハロアルキルノルボルネン;7−オキソ−2−ノルボルネンなどのオキソノルボルネン)など]、ノルボルナジエン類[例えば、ノルボルナジエン(例えば、2,5−ノルボルナジエン)、アルキルノルボルナジエン(例えば、5−メチル−2,5−ノルボルナジエン、5,6−ジメチル−2,5−ノルボルナジエンなど)、アリールノルボルナジエン(5−フェニル−2,5−ノルボルナジエンなど)、極性基を有するノルボルナジエン(例えば、5−シアノ−2,5−ノルボルナジエンなどのシアノノルボルナジエン;5−メトキシカルボニル−2,5−ノルボルナジエンなどのアシルオキシノルボルナジエン(アルコキシカルボニルノルボルナジエンなど);5,6−ジ(トリフルオロメチル)−2,5−ノルボルナジエンなどのハロアルキルノルボルナジエン;7−オキソ−2−ノルボルナジエンなどのオキソノルボルナジエン)など]、三環式オレフィン{例えば、トリシクロアルケン[例えば、ジヒドロジシクロペンタジエン類(ジヒドロジシクロペンタジエンなど)などのC
6−25トリシクロアルケンなど]、トリシクロアルカジエン[例えば、ジシクロペンタジエン類(ジシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエンなど)、トリシクロ[4.4.0.1
2,5 ]ウンデカ−3,7−ジエン、トリシクロ[4.4.0.1
2,5]ウンデカ−3,8−ジエンなどのC
6−25トリシクロアルカジエンなど]など}、四環以上の多環式オレフィン{例えば、四環式オレフィン[例えば、テトラシクロアルケン(例えば、テトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセン、8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.1
2,5.1
7,10]−3−ドデセンなどのC
8−30テトラシクロアルケンなど)など]、五環式オレフィン[例えば、ペンタシクロアルカジエン(例えば、トリシクロペンタジエンなどのC
10−35ペンタシクロアルカジエン)など]、六環式オレフィン[例えば、ヘキサシクロアルケン(例えば、ヘキサシクロ[6.6.1.1
3,6.0
2,7.0
9,14]−4−ヘプタデセンなどのC
12−40ヘキサシクロアルケン)など]など}などの多環式オレフィン類などが挙げられる。
【0030】
環状オレフィン樹脂は、環状オレフィンの単独又は共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体、複数の多環式オレフィンの共重合体など)であってもよく、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体であってもよい。
【0031】
共重合性単量体としては、例えば、鎖状オレフィン[アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどのC
2−20アルケン)、アルカジエン(例えば、1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエンなどの非共役C
5−20アルカジエン)など]、重合性ニトリル化合物(例えば、(メタ)アクリロニトリルなど)、(メタ)アクリル系単量体(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸など)、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体(無水マレイン酸など)などが挙げられる。共重合性単量体は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。
【0032】
なお、環状オレフィンと共重合性単量体との共重合体において、環状オレフィンの割合は、環状オレフィンおよび共重合性単量体の総量に対して、例えば、10モル%以上(例えば、20モル%以上)、好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上であってもよい。
【0033】
好ましい環状オレフィン樹脂には、環状オレフィン共重合体[例えば、環状オレフィン(例えば、ノルボルネン類を少なくとも含む環状オレフィン)と共重合性単量体(例えば、鎖状オレフィン(例えば、エチレンなどのC
2−6アルケン))を少なくとも含む共重合性単量体との共重合体]が含まれる。
【0034】
特に、環状オレフィン共重合体の中でも、極性基を有する環状オレフィン共重合体、例えば、極性基を有する環状オレフィン{例えば、極性基を有するノルボルネン[例えば、アシルオキシノルボルネン(例えば、5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネンなどのアルコキシカルボニル基(例えば、C
1−10アルコキシカルボニル基、好ましくはC
1−4アルコキシカルボニル基)が置換したノルボルネンなど)など]など}を少なくとも含む環状オレフィンと、共重合性単量体[例えば、鎖状オレフィン(例えば、エチレンなどのC
2−6アルケン)を少なくとも含む共重合性単量体]との共重合体などが好ましい。
【0035】
なお、極性基を有する環状オレフィン共重合体において、環状オレフィン全体に対する極性基を有する環状オレフィンの割合は、例えば、10モル%以上、好ましくは20モル%以上、さらに好ましくは30モル%以上であってもよい。
【0036】
環状オレフィン樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0037】
なお、環状オレフィン樹脂の分子量は、樹脂の種類に応じて選択できるが、例えば、数平均分子量で2000以上(例えば、3000以上)の範囲から選択でき、5000以上(例えば、8000〜1000000)、好ましくは10000以上(例えば、12000〜800000)、さらに好ましくは15000以上(例えば、20000〜500000)であってもよい。分子量は、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)などの慣用の方法を利用して測定でき、ポリスチレン換算の分子量として評価してもよい。
【0038】
(フルオレン化合物)
フルオレン化合物は、9,9−ビスアリールフルオレン骨格を有していればよく、反応性基を有しない化合物[例えば、9,9−ビスアリールフルオレン(例えば、9,9−ビスフェニルフルオレン)などの後述の式(1)においてpが0である化合物など]であってもよいが、通常、反応性基を有している。
【0039】
反応性基としては、例えば、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、アミノ基、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基(例えば、グリシジルオキシ基)などが挙げられる。フルオレン化合物は、これらの反応性基を、単独で又は2種以上組み合わせて有していてもよい。
【0040】
反応性基は、9,9−ビスアリールフルオレンに直接的に結合していてもよく、適当な連結基(例えば、(ポリ)オキシアルキレン基など)を介して結合していてもよい。
【0041】
具体的なフルオレン化合物としては、例えば、下記式(1)で表される化合物などが挙げられる。
【0043】
[式中、環Zは芳香族炭化水素環、R
1およびR
2は置換基、Xは、基−[(OR
3)n−Y](式中、Yは、ヒドロキシル基、メルカプト基、グリシジルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ基、R
3はアルキレン基、nは0以上の整数を示す。)又はアミノ基、kは0〜4の整数、mは0以上の整数、pは1以上の整数を示す。]
【0044】
上記式(1)において、環Zで表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、縮合多環式芳香族炭化水素環[例えば、縮合二環式炭化水素(例えば、インデン、ナフタレンなどのC
8−20縮合二環式炭化水素、好ましくはC
10−16縮合二環式炭化水素)、縮合三環式炭化水素(例えば、アントラセン、フェナントレンなど)などの縮合二乃至四環式炭化水素など]、環集合炭化水素環(ビフェニル環、テルフェニル環、ビナフチル環などのビ又はテルC
6−10アレーン環)が挙げられる。なお、2つの環Zは同一の又は異なる環であってもよく、通常、同一の環であってもよい。好ましい環Zには、ベンゼン環、ナフタレン環、ビフェニル環が含まれ、特に、ベンゼン環であってもよい。
【0045】
前記式(1)において、基R
1としては、例えば、シアノ基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子など)、炭化水素基[例えば、アルキル基、アリール基(フェニル基などのC
6−10アリール基)など]、アシル基(例えば、メチルカルボニル、エチルカルボニル、ペンチルカルボニルなどのアルキルカルボニル基)などの非反応性置換基が挙げられ、特に、アルキル基などである場合が多い。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基などのC
1−12アルキル基(例えば、C
1−8アルキル基、特にメチル基などのC
1−4アルキル基)などが例示できる。なお、kが複数(2〜4)である場合、複数の基R
1の種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、異なるベンゼン環に置換した基R
1の種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、基R
1の結合位置(置換位置)は、特に限定されず、例えば、フルオレン環の2位、7位、2および7位などが挙げられる。好ましい置換数kは、0〜1、特に0である。なお、2つの置換数kは、同一又は異なっていてもよい。
【0046】
環Zに置換する置換基R
2としては、通常、非反応性置換基、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基などのC
1−12アルキル基、好ましくはC
1−8アルキル基など)、シクロアルキル基(シクロへキシル基などのC
5−8シクロアルキル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基などのC
6−10アリール基など)、アラルキル基(ベンジル基、フェネチル基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキル基など)などの炭化水素基;アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基などのC
1−8アルコキシ基など)、シクロアルコキシ基(シクロへキシルオキシ基などのC
5−10シクロアルキルオキシ基など)、アリールオキシ基(フェノキシ基などのC
6−10アリールオキシ基)、アラルキルオキシ基(ベンジルオキシ基などのC
6−10アリール−C
1−4アルキルオキシ基)などの基−OR[式中、Rは炭化水素基(前記例示の炭化水素基など)を示す。];アルキルチオ基(メチルチオ基などのC
1−8アルキルチオ基など)などの基−SR(式中、Rは前記と同じ。);アシル基(アセチル基などのC
1−6アシル基など);アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基などのC
1−4アルコキシ−カルボニル基など);ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子など);ニトロ基;シアノ基;置換アミノ基(例えば、ジメチルアミノ基などのジアルキルアミノ基など)などが挙げられる。
【0047】
好ましい基R
2としては、炭化水素基[例えば、アルキル基(例えば、C
1−6アルキル基)、シクロアルキル基(例えば、C
5−8シクロアルキル基)、アリール基(例えば、C
6−10アリール基)、アラルキル基(例えば、C
6−8アリール−C
1−2アルキル基)など]、アルコキシ基(C
1−4アルコキシ基など)などが挙げられる。さらに好ましい基R
2には、アルキル基[C
1−4アルキル基(特にメチル基)など]、アリール基[例えば、C
6−10アリール基(特にフェニル基)など]などが含まれる。なお、基R
2がアリール基であるとき、基R
2は、環Zとともに、前記環集合炭化水素環を形成してもよい。
【0048】
なお、同一の環Zにおいて、mが複数(2以上)である場合、基R
2の種類は互いに同一又は異なっていてもよよい。また、2つの環Zにおいて、基R
2の種類は互いに同一又は異なっていてもよい。また、置換数mは、環Zの種類に応じて選択でき、例えば、0〜8、好ましくは0〜4(例えば、0〜3)、さらに好ましくは0〜2であってもよい。なお、異なる環Zにおいて、置換数mは、互いに同一又は異なっていてもよく、通常同一であってもよい。
【0049】
前記式(1)の基Xにおいて、基R
3で表されるアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、1,2−ブタンジイル基、テトラメチレン基などのC
2−6アルキレン基、好ましくはC
2−4アルキレン基、さらに好ましくはC
2−3アルキレン基が挙げられる。なお、nが2以上であるとき、アルキレン基の種類は異なるアルキレン基で構成されていてもよく、通常、同一のアルキレン基で構成されていてもよい。また、2つの芳香族炭化水素環Zにおいて、基R
3の種類は同一又は異なっていてもよい。
【0050】
オキシアルキレン基(OR
3)の数(付加モル数)nは、0以上(例えば、0〜20)であればよく、例えば、0〜15(例えば、1〜12)、好ましくは0〜10(例えば、1〜6)、さらに好ましくは0〜4(例えば、1〜4)、特に0〜2(例えば、0〜1)であってもよい。また、樹脂の種類によっては、nが0である場合又はnが1以上である場合において、顕著な改善効果が得られる場合などがある。そのため、樹脂の種類などによって、nが0である化合物、nが1以上である化合物のいずれかを選択してもよい。なお、置換数nは、異なる環Zに対して、同一又は異なっていてもよい。
【0051】
好ましいXは、基−[(OR
3)n−Y]であり、特に、Yはヒドロキシル基であるのが好ましい。なお、式(1)において、Yがヒドロキシル基である化合物は、下記式(1A)で表される。
【0053】
(式中、Z、R
1、R
2、k、m、R
3、n、pは前記式(1)と同じ。)
基Xの置換数pは、1以上(例えば、1〜6)であればよく、例えば、1〜4、好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2、特に1であってもよい。なお、置換数pは、それぞれの環Zにおいて、同一又は異なっていてもよく、通常、同一である場合が多い。
【0054】
また、前記式(1)[又は(1A)]において、基Xの置換位置は、特に限定されず、環Zの適当な置換位置に置換していればよい。例えば、基Xは、環Zがベンゼン環である場合、フェニル基の2〜6位に置換していればよく、好ましくは4位に置換していてもよい。また、基Xは、環Zが縮合多環式炭化水素環である場合、縮合多環式炭化水素環において、フルオレンの9位に結合した炭化水素環とは別の炭化水素環(例えば、ナフタレン環の5位、6位など)に少なくとも置換している場合が多い。
【0055】
具体的なフルオレン化合物(又は前記式(1)又は(1A)で表される化合物)には、9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類]、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン類[又は9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシアリール)フルオレン骨格を有する化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類]などの前記式(1)においてXが基−[(OR
3)n−OH]である化合物;これらの化合物において、ヒドロキシル基が、メルカプト基、グリシジルオキシ基又は(メタ)アクリロイルオキシ基に置換した化合物などが含まれる。
【0056】
9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ポリヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)フルオレンなどの9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン]などが挙げられる。
【0057】
また、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(6−ヒドロキシ−2−ナフチル)フルオレン、9,9−ビス(5−ヒドロキシ−1−ナフチル)フルオレン]などが含まれる。
【0058】
9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類には、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
1−4アルキル−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシプロポキシ)−3−フェニルフェニル]フルオレンなどの9,9−ビス(モノ又はジC
6−10アリール−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において、nが1である化合物);9,9−ビス(ヒドロキシジアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス{4−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ]フェニル}フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシジC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシポリアルコキシフェニル)フルオレン類(前記式(1)において、nが2以上である化合物)などが含まれる。
【0059】
また、9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシナフチル)フルオレン類としては、前記9,9−ビス(ヒドロキシ(ポリ)アルコキシフェニル)フルオレン類に対応し、フェニル基がナフチル基に置換した化合物、例えば、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−ナフチル]フルオレン、9,9−ビス[6−(2−ヒドロキシプロポキシ)−2−ナフチル]フルオレンなどの9,9−ビス(ヒドロキシC
2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン類などが含まれる。
【0060】
これらのフルオレン化合物のうち、特に、9,9−ビス(ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(モノ又はジC
1−4アルキル−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン[例えば、9,9−ビス(モノ又はジC
6−10アリール−ヒドロキシフェニル)フルオレン]、9,9−ビス(ジ又はトリヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(ヒドロキシナフチル)フルオレンなどの前記式(1A)においてnが0である化合物;9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アルキル−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(モノ又はジC
1−4アルキル−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(アリール−ヒドロキシアルコキシフェニル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(モノ又はジC
6−10アリール−ヒドロキシC
2−4アルコキシフェニル)フルオレン}、9,9−ビス(ヒドロキシアルコキシナフチル)フルオレン{例えば、9,9−ビス(ヒドロキシC
2−4アルコキシナフチル)フルオレン}などの前記式(1A)においてnが1以上(例えば、1〜4、好ましくは1〜2、さらに好ましくは1)である化合物が好ましい。
【0061】
前記フルオレン化合物は、環状オレフィン樹脂の機械的特性(引張強度、曲げ強度、貯蔵弾性率E’)を向上するだけでなく、光学特性も向上させる。例えば、前記フルオレン化合物は、環状オレフィン樹脂の複屈折を低減し、アッベ数も低減する。そのため、前記フルオレン化合物は、機械的特性の向上剤、光学特性向上剤(例えば、複屈折低減剤、アッベ数調整剤(又はアッベ数低減剤))ということもできる。
【0062】
フルオレン化合物は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。なお、フルオレン化合物は、市販品を用いてもよく、慣用の方法により合成してもよい。
【0063】
フルオレン化合物の割合は、例えば、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、0.01重量部以上、例えば、0.1重量部以上(例えば、0.2〜200重量部)程度の範囲から選択でき、0.3〜100重量部、好ましくは0.5〜80重量部、さらに好ましくは1〜50重量部程度であってもよく、通常0.5〜50重量部(例えば、0.5〜40重量部、好ましくは0.7〜30重量部、さらに好ましくは1〜20重量部)程度であってもよい。
【0064】
本発明では、少量でも効率よく各種特性を向上又は改善できるため、例えば、フルオレン化合物の割合を、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、20重量部以下(例えば、0.1〜18重量部)、好ましくは15重量部以下(例えば、0.2〜12重量部)、さらに好ましくは10重量部以下(例えば、0.3〜7重量部)、特に5重量部以下(例えば、0.5〜5重量部)とすることもできる。
【0065】
また、フルオレン化合物は、環状オレフィン樹脂に対する親和性に優れ、比較的多い割合で添加しても樹脂特性を高いレベルで維持又は向上できる場合が多い。そのため、フルオレン化合物の割合を、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、20重量部以上(例えば、20〜100重量部)、好ましくは25重量部以上(例えば、25〜80重量部)、さらに好ましくは30重量部以上(例えば、30〜70重量部)とすることもできる。
【0066】
樹脂組成物は、本発明の効果を害しない範囲であれば、他の樹脂(環状オレフィン樹脂ではない樹脂)を含んでいてもよい。このような他の樹脂としては、例えば、鎖状オレフィン樹脂[エチレン系樹脂(例えば、ポリエチレン)、プロピレン系樹脂(例えば、ポリプロピレン)、ポリメチルペンテンなど]、ハロゲン含有ビニル系樹脂(ポリ塩化ビニル、フッ化樹脂など)、アクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂(例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂など)、ポリチオカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂[例えば、脂肪族ポリエステル樹脂(ポリ乳酸など)、芳香族ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート樹脂)など]、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂(例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド612、ポリアミド6/66などの脂肪族ポリアミド樹脂;ポリアミドMXDなどの芳香族ポリアミド樹脂)、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。樹脂は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0067】
なお、他の樹脂の割合は、環状オレフィン樹脂100重量部に対して、例えば、1〜1000重量部、好ましくは3〜500重量部(例えば、4〜300重量部)、さらに好ましくは5〜100重量部程度であってもよく、通常1〜100重量部(例えば、2〜80重量部、好ましくは3〜50重量部)程度であってもよい。
【0068】
また、樹脂組成物は、必要に応じて、各種添加剤[例えば、充填剤又は補強剤、着色剤(染顔料)、導電剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、離型剤、帯電防止剤、分散剤、流動調整剤、レベリング剤、消泡剤、表面改質剤、低応力化剤、炭素材など]を含んでいてもよい。これらの添加剤は単独で又は2種以上組み合わせてもよい。
【0069】
なお、樹脂組成物は、環状オレフィン樹脂とフルオレン化合物と[さらに、必要に応じて他の成分(添加剤など)と]を混合することで得ることができる。混合方法は、特に限定されず、例えば、溶融混練により混合してもよく、溶媒に各成分を溶解させて混合してもよい。
【0070】
[成形体]
本発明には、前記樹脂組成物で形成された成形体も含まれる。成形体の形状は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択でき、例えば、二次元的構造(フィルム状、シート状、板状など)、三次元的構造(管状、棒状、チューブ状、中空状など)などが挙げられる。
【0071】
特に、本発明の樹脂組成物は、種々の光学的特性に優れている場合が多く、透明性が高く、高屈折率、低複屈折及び/又は低アッベ数の光学材料又は光学用成形体(特に、光学フィルム、光学レンズなど)を好適に形成してもよい。
【0072】
成形体は、例えば、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、トランスファー成形法、ブロー成形法、加圧成形法、キャスティング成形法などを利用して製造することができる。
【0073】
特に、本発明の樹脂組成物は、光学的特性に優れている場合が多く、フィルム(特に光学フィルム)を形成するのに有用である。そのため、本発明には、前記樹脂組成物で形成されたフィルム(光学フィルムなど)も含まれる。フィルム(光学フィルムなど)は、前記樹脂組成物を、慣用の成膜方法、キャスティング法(溶剤キャスト法)、溶融押出法、カレンダー法などを用いて成膜(又は成形)することにより製造できる。
【0074】
フィルムの厚みは、1〜1000μm程度の範囲から用途に応じて選択でき、例えば、1〜200μm、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜120μm程度であってもよい。
【0075】
フィルムは、延伸フィルム(一軸延伸フィルム又は二軸延伸フィルム)であってもよい。延伸倍率は、一軸延伸又は二軸延伸において各方向にそれぞれ1.05〜10倍(例えば、1.1〜5倍)程度であってもよく、通常1.1〜3倍(例えば、1.2〜2.5倍)程度であってもよい。なお、二軸延伸の場合、等延伸であっても偏延伸であってもよい。また、一軸延伸の場合、縦延伸であっても横延伸であってもよい。延伸方法は、特に制限がなく、一軸延伸の場合、湿式延伸法又は乾式延伸法などであってもよく、二軸延伸の場合、テンター法(フラット法ともいわれる)、チューブ法などであってもよい。
【0076】
延伸フィルムの厚みは、例えば、1〜150μm、好ましくは3〜120μm、さらに好ましくは5〜100μm程度であってもよい。
【実施例】
【0077】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例において、各種特性は、以下のようにして測定した。
【0078】
(引張強度)
延伸フィルムから、サンプル(厚さ0.2mm、幅5mm、長さ50mm)を作成し、このサンプルにて、引張試験機(Tensilon RTC−1250(A&D))を用い、チャック間距離を20mmとして、引張速度2mm/分でサンプルが切断するまでの強度を測定した。
【0079】
(動的粘弾性)
延伸フィルムから、サンプル(厚さ0.2mm、幅1−2mm、長さ50mm)を作成し、このサンプルにて、動的粘弾性試験機(Rheogel E4000(ユービーエム))を用い、一軸引張モード(100Hz)で、室温(25℃)における貯蔵弾性率(E’)を測定した。
【0080】
(複屈折)
延伸フィルムについて、偏光顕微鏡(NIKON製、OPTIPHOT−POL)を用いて、偏光をコンペンセーターで相殺する方法で、延伸時の単位倍率あたりに増大する複屈折(Δn/λ)を波長546nmで測定した。
【0081】
(屈折率及びアッベ数)
未延伸フィルム(厚み2mm)について、アッベ式屈折率計(アタゴ(株)製)により、波長589nmで屈折率を測定した。また、C線(656nm)、D線(589nm)及びF線(486nm)で測定した屈折率に基づいて、アッベ数を算出した。
【0082】
(実施例1)
ラボプラストミルにて環状オレフィン共重合体(JSR(株)製、Arton4531F)を溶融後、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(ビスクレゾールフルオレン、大阪ガスケミカル(株)製、以下、BCFという。)を表1に示す割合となるように、250℃(0重量%、1重量%)又は240℃(5重量%、10重量%)で混合し、樹脂組成物を得た。なお、樹脂組成物は、いずれの割合においても透明であり、均一に混合されていた。
【0083】
得られた樹脂組成物を120℃で乾燥させたのち、220℃(0重量、1重量部)又は230℃(5重量%、10重量%)でホットプレスし、シートを作成した。さらに、得られたシートを、150℃で加熱処理した後、シリコーンオイル浴中、延伸温度180℃、延伸倍率1.2倍で熱延伸し、延伸フィルムを得た。
【0084】
得られた延伸フィルムを用いて、各種特性を測定した。
【0085】
結果を表1に示す。なお、表1では、比較のため、BCFの割合が0重量%の結果も記載した。
【0086】
【表1】
【0087】
表1の結果から明らかなように、環状オレフィン共重合体にBCFを添加することで、機械的強度が向上することがわかった、また、環状オレフィン樹脂にBCFを添加することで、複屈折が低下した。
【0088】
(実施例2)
実施例1において、BCFにかえて9,9−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製、以下、BPEFという)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして測定した。なお、混合温度は250℃とし、ホットプレス温度は220℃(0重量、1重量部)又は230℃(5重量%、10重量%、30重量%)とした。
【0089】
結果を表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2の結果から明らかなように、環状オレフィン共重合体にBPEFを添加しても、機械的強度が向上し、複屈折も低下した。
【0092】
(実施例3)
樹脂を環状オレフィンコポリマー(三井化学(株)製、アペルAPL5014DP)とし、表3に示した配合比でBCFを混練し、屈折率を測定した。なお、混合温度は250℃とし、ホットプレス温度は250℃とした。結果を表3に示す。
【0093】
【表3】
【0094】
表3から明らかなように、フルオレン化合物の添加により、アッベ数を低減できる。