【実施例】
【0020】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0021】
第1実施例(図1):
図1は第1実施例の回転霧化式静電塗装機の前端部分を断面して示す図である。
図1を参照して、実施例の静電塗装機100は回転霧化頭(ベル)2を有する回転霧化式の塗装機である。ベル2はエアモータによって駆動される。エアモータの具体的な構造は、前述した特許文献2(JP実開昭60−151555号公報(実公平1−13571号公報))に詳しく説明されていることから、この特許文献2を本明細書に援用することにより、その説明を省略する。
【0022】
本願明細書において、静電塗装機100をワークに差し向ける方向を「前方」と呼び、その反対の方向を「後方」と呼ぶ。
【0023】
ベル2は、従来と同様に、円盤状のベルハブ4を有している。ベルハブ4は、その外周縁に複数の小孔6を有している。複数の小孔6は円周方向に等間隔に形成されている。この小孔6を通じて塗料が前方に移行する。
【0024】
ベルハブ4は、その後面の中心部分に中心突起8を有している。中心突起8は後方に向けて突出した円錐状の形状を有している。この中心突起8は「センターコーン」と呼ばれている。塗料はセンターコーン8に向けて供給される。
【0025】
ベル2は、ベルハブ4の後方に隔壁10を有する。隔壁10は、その前方に位置するベルハブ4とで塗料空間12を形成する。
【0026】
図中、参照符号14はフィードチューブを示す。フィードチューブ14はベル2の回転軸線Axと同軸に配設されている。フィードチューブ14は、その先端部が隔壁10の円形の中心開口つまりベル後方開口10aを貫通して前方に延びている。
【0027】
フィードチューブ14は、その先端がベルハブ4の近傍に位置決めされている。より詳しく説明すると、フィードチューブ14の先端は、側面視したときに、ベルハブ4のセンターコーン8とオーバーラップしている。すなわち、センターコーン8は、フィードチューブ14の先端吐出口の中に入り込んでおり、センターコーン8の頂点8aはベル2のフィードチューブ14の軸線つまりベル2の回転軸線Ax上に位置している。図中、参照符号16は洗浄孔であり、洗浄孔16は従来と同様にベルハブ4の中心部分に形成されている。
【0028】
従来と同様に、フィードチューブ14を通じてベル2に塗料が供給される。フィードチューブ14から吐出される塗料は、フィードチューブ14の先端吐出口に入り込んだベルハブ4のセンターコーン8によって受け止められる。センターコーン8で受け止められた塗料は、遠心力によりベルハブ4の後面の上で薄膜となって広がる。次いで、ベルハブ4の外周縁に位置する小孔6を通じてベル2の内周面つまりベルリムに進む。塗料の薄膜はベル2のベルリムに沿って径方向外方に広がる。そして、塗料はベル2の外周縁から液糸となって放出される。液糸はベル2から若干離れた位置で微粒子となる。ベル2には従来と同様に高電圧が印加されている。ベル2から放出される塗料の微粒子は電荷を有し、この帯電した微粒子がワークの表面に静電的に吸着される。
【0029】
前述した隔壁10は、ベルハブ4と対面する面つまり塗料空間12に接する面に、ラウンドした凹所10bを有する。このラウンドした凹所10bは、フィードチューブ14から吐出された塗料を塗料空間12の中で循環させる機能を有する。
図1に示す矢印は、凹所10bによって塗料がセンターコーン8に戻される状態を示している。
【0030】
隔壁10の後面にはリング状の液溜め20が形成されている。
図1の参照符号22は、ベル2が螺着される回転円筒を示す。この回転円筒22は図外のエアモータに連結されている。また、
図1の参照符号24は、フィードチューブ14の支持円筒を示す。
【0031】
本発明において必須ではないが、支持円筒24と回転円筒22との間の隙間でパージエア通路26を構成するのが好ましい。パージエア通路26は液溜め20に開放している。パージエアは矢印28の方向つまり液溜め20に向けて流れる。
【0032】
支持円筒24は、その先端に、径方向外方に突出したリング状の突起部30を有している。突起部30は支持円筒24の全周に亘って連続したリング状の形状を有している。すなわち、隔壁10の中心開口(ベル後方開口)10aの後方にはリング状突起部30によってダムが形成されている。リング状突起部30は、上記ダムの機能に加えて、回転円筒22の先端部との間でパージエア通路26の出口部分26aを狭めると共に方向性を与えている。
【0033】
すなわち、パージエア通路26の幅狭の出口部分26aは、リング状突起部30によって、液溜め20の深部つまり液溜め20の径方向外方部分に差し向けられている。
図1の実施例では、パージエア通路26の出口部分26aは略半径方向に延びており且つ液溜め20の深部に臨んでいる。支持円筒24の上記の構成を備えた先端部を合成樹脂の成型品で構成してもよいし金属で構成してもよい。
【0034】
ベル2は、液溜め20と塗料空間12とに連通した複数の液戻し通路40を有している。各液戻し通路40は、その後端が液溜め20の深部つまり径方向外方部分に開放している。各液戻し通路40は、液溜め20から前方つまり塗料空間12に向かうに従って徐々に半径方向外方に位置するよう傾斜した通路で構成されている。つまり、各液戻し通路40は、液溜め20から前広がりに傾斜して延びている。各液戻し通路40は、その前端が塗料空間12に開放している。
【0035】
複数の液戻し通路40はその各々が真っ直ぐに延びる小孔で構成されている。この小孔はドリルを使って形成される。複数の液戻し通路40は円周方向に等間隔に配置されるのが好ましい。
【0036】
塗料空間12の塗料が隔壁10の円形の中心開口(ベル後方開口)10aを通じて液溜め20に入り込んだ場合、支持円筒24の先端部のリング状突起部30が「ダム」として機能する。液溜め20に入った塗料は「ダム」によって受け止められる。このことに加えて、ベル2の回転により遠心力が塗料に作用して、塗料は液溜め20の深部つまり径方向外方部分に向けて進む。
【0037】
パージエア通路26から液溜め20に吐出されるパージエアは、液溜め20の深部に差し向けられていることから、パージエアによって液溜め20に入った塗料は液溜め20の深部に誘導される。そして、塗料は、液溜め20の深部から液戻し通路40に入る。液戻し通路40に入った塗料は、液戻し通路40の傾斜及びベル2の回転に伴う遠心力によって液戻し通路40の中を前方に進み、そして塗料空間12に戻る。パージエア通路26から吐出されるパージエアは、液溜め20の塗料が液戻し通路40に入るのを助勢し、また、液戻し通路40を通じて塗料が塗料空間12に戻るのを助勢する。
【0038】
上記の構造のベル2を組み込んだ塗装機100は、従来の回転霧化式静電塗装機と同様に、自動車のボディの塗装に適用可能である。この適用例に加えて、塗装機100を上向きにして塗装するワーク、例えば商用ワンボックスカーの内部の天井面の塗装に適用可能である。塗装機100を上に向けた状態で塗装を実施しても、隔壁10の中心開口10aを通じて液溜め20に入り込んだ塗料が液戻し通路40を通じて塗料空間12に戻される。したがって塗料がエアモータ側に侵入するのを防止できる。
【0039】
また、塗装機100の色替えのための洗浄工程において、フィードチューブ14に供給する洗浄エアに高圧エアを使ったときに発生する問題、つまり高圧の洗浄エアをフィードチューブ14に供給したときにフィードチューブ14から飛び出す洗浄液(シンナー)がベルハブ4に衝突し、そして跳ね返った洗浄液が中心開口(ベル後方開口)10aを通ってエアモータ側に入ったとしても、この洗浄液を液溜め20に留め、そして液戻し通路40を通じて塗料空間12に戻すことができる。
【0040】
第2実施例(図2):
第2実施例の静電塗装機200の先端部分を
図2に示す。この
図2に図示の第2実施例は上記第1実施例(
図1)の塗装機100の変形例でもある。
【0041】
図1を参照して説明した第1実施例に含まれるリング状突起部30は、支持円筒24の一部を構成する部材と一体成形されている。
図2を参照して、第2実施例の塗装機200は、弾性部材の成型品である第1リング部材32を有している。この第2実施例では、支持円筒24の先端部の円周凹所に嵌合した第1リング部材32によって液溜め20及び上述したダム並びにパージエア通路26の出口部分26aが形成されている。
【0042】
第3実施例(図3):
第3実施例の静電塗装機300の先端部分を
図3に示す。この
図3に図示の第3実施例は前述の第1実施例(
図1)の塗装機100の変形例でもある。
【0043】
図3を参照して、第3実施例では、支持円筒24の先端部の凹所に嵌合したOリング34によって液溜め20及び上述したダム並びにパージエア通路26の出口部分26aが形成されている。
【0044】
第4実施例(図4):
第4実施例の静電塗装機400の先端部分を
図4に示す。この
図4に図示の第4実施例は上記の第3実施例(
図3)の塗装機300の変形例でもある。
【0045】
図4を参照して、第4実施例の塗装機400は、弾性部材の成型品である第2リング部材36を有している。この第4実施例では、支持円筒24の先端部の円周凹所に嵌合した第2リング部材36によって液溜め20及び上述したダム並びにパージエア通路26の出口部分26aが形成されている。
【0046】
第5実施例(図5):
第5実施例の静電塗装機500の先端部分を
図5に示す。この第5実施例は、先述した第3実施例(
図3)の変形例として図示してあるが、第1、第2、第4実施例(
図1、
図2、
図4)の変形例でもあると理解されたい。
【0047】
図5を参照して、第5実施例(
図5)の静電塗装機500では、ベルハブ4のセンターコーン8とフィードチューブ14の先端開口とが離れている。それ以外の構成は上記の第1乃至第4実施例と同じである。
図5の塗装機500にあっても、
図1乃至
図4を参照して説明した第1乃至第4実施例と同様に、隔壁10の中心開口(ベル後方開口)10aを通じて液溜め20に入り込んだ塗料や洗浄液を液戻し通路40を通じて塗料空間12に戻すことができる。