特許第6235964号(P6235964)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6235964
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】スクロール型圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/02 20060101AFI20171113BHJP
   F04C 23/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   F04C18/02 311Q
   F04C18/02 311V
   F04C23/00 F
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-99632(P2014-99632)
(22)【出願日】2014年5月13日
(65)【公開番号】特開2015-214954(P2015-214954A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2016年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 雄一
(72)【発明者】
【氏名】内田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】松本 貴郁
(72)【発明者】
【氏名】東山 匡志
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−140492(JP,A)
【文献】 特開平01−257783(JP,A)
【文献】 特開平07−097988(JP,A)
【文献】 特開2012−189079(JP,A)
【文献】 特開2014−013005(JP,A)
【文献】 米国特許第05938417(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/02
F04C 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転駆動源(10)から駆動力を得て回転する回転軸(25)と、
前記回転軸(25)から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の可動側基板部(11a)、および前記可動側基板部(11a)から前記回転軸(25)の軸方向へ突出する渦巻き状の可動側歯部(11c)を有する可動スクロール(11)と、
平板状の固定側基板部(13a)、および前記固定側基板部(13a)から前記回転軸(25)の軸方向へ突出して前記可動側歯部(11c)と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(13b)を有する固定スクロール(13)と、を備え、
前記回転軸(25)は、前記可動側基板部(11a)を貫通しており、
前記可動側歯部(11c)と前記固定側歯部(13b)との間に形成される空間は、前記可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して圧縮対象流体を昇圧させる圧縮室(VH)を形成しており、
前記回転軸(25)の軸方向垂直断面にて、前記可動側歯部(11c)の外周壁面が描くインボリュート曲線を外周側インボリュート曲線(Io)とし、前記可動側歯部(11c)の内周壁面が描くインボリュート曲線を内周側インボリュート曲線(Ii)とし、前記外周側インボリュート曲線(Io)の回転軸側端部と前記内周側インボリュート曲線(Ii)の回転軸側端部とを接続する曲線を先端部曲線(Ic)としたときに、
前記先端部曲線(Ic)は、径の異なる2つの円弧を組み合わせた形状になっており、
前記外周側インボリュート曲線(Io)に接続される外周側円弧(MCo)の径は、前記内周側インボリュート曲線(Ii)に接続される内周側円弧(Ci)の径よりも小さくなっており、
前記可動スクロール(11)が最小容積の前記圧縮室(VH)を形成する位置に変位した際に、前記先端部曲線(Ic)のうち前記固定側歯部(13b)に接する部位の曲率が、前記可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)の最大値(Ti)を直径とする円弧の曲率よりも小さく形成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項2】
回転駆動源(10)から駆動力を得て回転する回転軸(25)と、
前記回転軸(25)から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の可動側基板部(11a)、および前記可動側基板部(11a)から前記回転軸(25)の軸方向へ突出する渦巻き状の可動側歯部(11c)を有する可動スクロール(11)と、
平板状の固定側基板部(13a)、および前記固定側基板部(13a)から前記回転軸(25)の軸方向へ突出して前記可動側歯部(11c)と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(13b)を有する固定スクロール(13)と、を備え、
前記回転軸(25)は、前記可動側基板部(11a)を貫通しており、
前記可動側歯部(11c)と前記固定側歯部(13b)との間に形成される空間は、前記可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して圧縮対象流体を昇圧させる圧縮室(VH)を形成しており、
前記回転軸(25)の軸方向垂直断面にて、前記可動側歯部(11c)の外周壁面が描くインボリュート曲線を外周側インボリュート曲線(Io)とし、前記可動側歯部(11c)の内周壁面が描くインボリュート曲線を内周側インボリュート曲線(Ii)とし、前記外周側インボリュート曲線(Io)の回転軸側端部と前記内周側インボリュート曲線(Ii)の回転軸側端部とを接続する曲線を先端部曲線(Ic)としたときに、
前記先端部曲線(Ic)は、前記可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(Ti)を短軸とする半楕円形状に形成されており、
前記可動スクロール(11)が最小容積の前記圧縮室(VH)を形成する位置に変位した際に、前記先端部曲線(Ic)のうち前記固定側歯部(13b)に接する部位の曲率が、前記可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)の最大値(Ti)を直径とする円弧の曲率よりも小さく形成されていることを特徴とするスクロール型圧縮機。
【請求項3】
前記可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)は、外周側から回転軸(25)の中心側へ向かって徐々に大きくなっていることを特徴とする請求項1または2に記載のスクロール型圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸が可動スクロールを貫通して配置されるスクロール型圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可動スクロールに設けられた渦巻き状の可動側歯部と固定スクロールに設けられた渦巻き状の固定側歯部とを噛み合わせた状態で、可動スクロールを固定スクロールに対して公転運動させるスクロール型圧縮機が知られている。この種のスクロール型圧縮機では、可動側歯部と固定側歯部との間に形成される圧縮室を外周側から内周側へ変位させながら、圧縮室の容積を縮小させて圧縮対象流体を圧縮している。
【0003】
さらに、スクロール型圧縮機には、特許文献1に開示されているように、可動スクロールへ回転駆動力を伝達する回転軸が、可動スクロールの中心部を貫通して配置される、いわゆる軸貫通型のものがある。
【0004】
この種の軸貫通型のスクロール型圧縮機では、回転軸が可動スクロールの中心部を貫通しているので、圧縮室を可動スクロールの中心部まで変位させることができない。そのため、軸貫通型のスクロール型圧縮機では、同程度の体格の回転軸が可動スクロールを貫通していない通常のスクロール型圧縮機よりも、理論的な圧縮比が小さくなり、圧縮性能が低下してしまいやすい。
【0005】
これに対して、特許文献1のスクロール型圧縮機では、可動側歯部の回転軸側の先端部(巻き始め部)に、バネ荷重あるいは圧縮対象流体の圧力によって固定スクロールに押しつけられるシール部材を配置している。これにより、可動スクロールの最内周側に形成されて圧縮対象流体の圧力が最も高くなる圧縮室の気密性を向上させて、圧縮性能の低下を抑制している。
【0006】
なお、圧縮性能とは、例えば、回転軸を一回転させた際に、所望の圧力となるまで昇圧されて圧縮機の外部へ吐出される圧縮対象流体の量等を用いて定義することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3216454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のスクロール型圧縮機のように、可動側歯部の巻き始め部に、バネ荷重あるいは圧縮対象流体の圧力によって固定スクロールに押しつけられるシール部材を配置する構成では、可動スクロールの構成の複雑化を招いてしまう。
【0009】
本発明は、上記点に鑑み、回転軸が可動スクロールを貫通して配置されるスクロール型圧縮機において、簡素な構成で、圧縮室の気密性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために案出されたもので、請求項1に記載の発明では、回転駆動源(10)から駆動力を得て回転する回転軸(25)と、回転軸(25)から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の可動側基板部(11a)、および可動側基板部(11a)から回転軸(25)の軸方向へ突出する渦巻き状の可動側歯部(11c)を有する可動スクロール(11)と、平板状の固定側基板部(13a)、および固定側基板部(13a)から回転軸(25)の軸方向へ突出して可動側歯部(11c)と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(13b)を有する固定スクロール(13)と、を備え、
回転軸(25)は、可動側基板部(11a)を貫通しており、可動側歯部(11c)と固定側歯部(13b)との間に形成される空間は、可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して圧縮対象流体を昇圧させる圧縮室(VH)を形成しており、
回転軸(25)の軸方向垂直断面にて、可動側歯部(11c)の外周壁面が描くインボリュート曲線を外周側インボリュート曲線(Io)とし、可動側歯部(11c)の内周壁面が描くインボリュート曲線を内周側インボリュート曲線(Ii)とし、外周側インボリュート曲線(Io)の回転軸側端部と内周側インボリュート曲線(Ii)の回転軸側端部とを接続する曲線を先端部曲線(Ic)としたときに、
先端部曲線(Ic)は、径の異なる2つの円弧を組み合わせた形状になっており、外周側インボリュート曲線(Io)に接続される外周側円弧(MCo)の径は、内周側インボリュート曲線(Ii)に接続される内周側円弧(Ci)の径よりも小さくなっており、
可動スクロール(11)が最小容積の圧縮室(VH)を形成する位置に変位した際に、先端部曲線(Ic)のうち固定側歯部(13b)に接する部位の曲率が、可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)の最大値(Ti)を直径とする円弧の曲率よりも小さく形成されているスクロール型圧縮機を特徴としている。
【0011】
これによれば、可動スクロール(11)が最小容積の圧縮室(VH)を形成する位置に変位した際に、先端部曲線(Ic)のうち固定側歯部(13b)に接する部位の曲率が、可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)の最大値(Ti)を直径とする円弧の曲率よりも小さく形成されている。
【0012】
従って、後述する実施形態に詳述するように、先端部曲線(Ic)が可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)の最大値(Ti)を直径とする円弧になっている場合よりも、可動側歯部(11c)と固定側歯部(13b)との隙間におけるシール長さ(L)を拡大することができ、圧縮室(VH)の気密性を向上させることができる。
【0013】
さらに、可動スクロール(11)が最小容積の圧縮室(VH)を形成する位置に変位した際には、圧縮室(VH)内の圧力が理論的に最も高くなる。従って、内部の圧力が理論的に最も高くなる圧縮室(VH)の気密性を効果的に向上させることができる。
【0014】
つまり、本請求項に記載の発明によれば、回転軸(25)が可動スクロール(11)を貫通して配置されるスクロール型圧縮機において、先端部曲線(Ic)の曲率を小さくするという極めて簡素な構成で、圧縮室(VH)の気密性を向上させることができる。延いては、軸貫通型のスクロール型圧縮機における圧縮性能の低下を抑制することができる。
また、請求項2に記載の発明では、回転駆動源(10)から駆動力を得て回転する回転軸(25)と、回転軸(25)から伝達される回転駆動力によって公転運動するとともに、平板状の可動側基板部(11a)、および可動側基板部(11a)から回転軸(25)の軸方向へ突出する渦巻き状の可動側歯部(11c)を有する可動スクロール(11)と、平板状の固定側基板部(13a)、および固定側基板部(13a)から回転軸(25)の軸方向へ突出して可動側歯部(11c)と噛み合う渦巻き状の固定側歯部(13b)を有する固定スクロール(13)と、を備え、
回転軸(25)は、可動側基板部(11a)を貫通しており、可動側歯部(11c)と固定側歯部(13b)との間に形成される空間は、可動スクロール(11)が公転運動することによって容積変化して圧縮対象流体を昇圧させる圧縮室(VH)を形成しており、
回転軸(25)の軸方向垂直断面にて、可動側歯部(11c)の外周壁面が描くインボリュート曲線を外周側インボリュート曲線(Io)とし、可動側歯部(11c)の内周壁面が描くインボリュート曲線を内周側インボリュート曲線(Ii)とし、外周側インボリュート曲線(Io)の回転軸側端部と内周側インボリュート曲線(Ii)の回転軸側端部とを接続する曲線を先端部曲線(Ic)としたときに、
先端部曲線(Ic)は、可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(Ti)を短軸とする半楕円形状に形成されており、
可動スクロール(11)が最小容積の圧縮室(VH)を形成する位置に変位した際に、先端部曲線(Ic)のうち固定側歯部(13b)に接する部位の曲率が、可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)の最大値(Ti)を直径とする円弧の曲率よりも小さく形成されているスクロール型圧縮機を特徴とする。
これによれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0015】
ここで、シール長さ(L)とは、回転軸(25)の軸方向垂直断面において、可動側歯部(11c)と固定側歯部(13b)との間で面シール部として機能する部位の長さを意味している。
【0016】
また、本請求項における「外周側インボリュート曲線」および「内周側インボリュート曲線」は、完全なインボリュート曲線になっている曲線のみに限定されるものではなく、圧縮対象流体を圧縮可能な範囲で、完全なインボリュート曲線から僅かにずれた曲線も含む。従って、可動側歯部(11c)の径方向厚み寸法(T)についても、全周に亘って一定の寸法になるものに限定されない。
【0017】
また、本請求項における「最小容積の圧縮室(VH)を形成する位置」は、圧縮室(VH)の容積が最も小さくなる位置のみに限定されるものではなく、圧縮性能の低下の抑制が可能な範囲で、圧縮室(VH)の容積が最も小さくなる寸前の位置も含む。
【0018】
また、本請求項における「先端部曲線(Ic)のうち固定側歯部(13b)に接する部位の曲率」とは、先端部曲線(Ic)のうち固定側歯部(13b)に接する部位の曲がり度合を半径rの円弧で近似したときに、1/rで定義される。
【0019】
なお、この欄および特許請求の範囲に記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態の冷凍サイクルの全体構成図である。
図2】第1実施形態の圧縮機の軸方向断面図である。
図3図2のIII−III断面図である。
図4図2のIV−IV断面図である。
図5】第1実施形態の可動スクロールの高段側可動側歯部の形状を説明するための説明図である。
図6】高段側可動側歯部の形状を説明するための図5のX部拡大図である。
図7】シール長さを説明するための図5のX部拡大図である。
図8】比較用圧縮機における回転角の変化に対する高段側圧縮室内の圧力変化を示すグラフである。
図9】第1実施形態の圧縮機における回転角の変化に対する高段側圧縮室内の圧力変化を示すグラフである。
図10】回転角に対応する高段側可動側歯部および高段側固定側歯部の位置関係を説明するための説明図である。
図11】第2実施形態の高段側可動側歯部の形状を説明するための説明図である。
図12】第3実施形態の高段側可動側歯部の形状を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、図1図10を用いて、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態のスクロール型圧縮機1(以下、単に圧縮機1と記載する。)は、圧縮対象流体を多段階(本実施形態では2段階)に圧縮して昇圧させる多段昇圧式の圧縮機として構成され、図1に示す蒸気圧縮式の冷凍サイクル100に適用されている。従って、本実施形態の圧縮対象流体は、冷凍サイクル100の冷媒である。
【0022】
冷凍サイクル100は、空調装置において、空調対象空間へ送風される送風空気を加熱する機能を果たす。より具体的には、本実施形態の冷凍サイクル100は、圧縮機1に加えて、放熱器2、高段側膨張弁3、気液分離器4、低段側膨張弁5、および蒸発器6を備えて構成されている。
【0023】
放熱器2は、圧縮機1から吐出された高圧冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を加熱する放熱用の熱交換器である。高段側膨張弁3は、放熱器2から流出した冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側減圧手段である。気液分離器4は、高段側膨張弁3にて減圧された中間圧冷媒の気液を分離する気液分離手段である。低段側膨張弁5は、気液分離器4にて分離された液相冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側減圧手段である。蒸発器6は、低段側膨張弁5にて減圧された低圧冷媒と外気とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる吸熱用の熱交換器である。
【0024】
さらに、本実施形態の冷凍サイクル100では、気液分離器4にて分離された気相冷媒を圧縮機1の中間圧吸入ポート32aへ吸入させ、蒸発器6から流出した低圧冷媒を圧縮機1の低圧吸入ポート12cへ吸入させている。
【0025】
つまり、本実施形態の冷凍サイクル100は、サイクル内で生成された(具体的には、高段側膨張弁3にて減圧された)中間圧冷媒を圧縮機1にて圧縮過程の中間圧冷媒に合流させるガスインジェクションサイクルとして構成されている。
【0026】
また、この冷凍サイクル100では、冷媒としてHFC系冷媒(具体的には、R134a)を採用しており、高圧側冷媒圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成している。もちろん、冷媒としてHFO系冷媒(例えば、R1234yf)等を採用してもよい。さらに、冷媒には圧縮機1内の摺動部位を潤滑するための冷凍機油(オイル)が混入されており、冷凍機油の一部は冷媒とともにサイクルを循環している。
【0027】
次に、図2図6を用いて、本実施形態の圧縮機1の詳細構成について説明する。なお、図2の軸方向断面図に示す、上下の各矢印は、圧縮機1を冷凍サイクル100に搭載した状態における上下の各方向を示している。
【0028】
圧縮機1は、冷媒を吸入し、圧縮して吐出する圧縮機構部10、回転駆動力を出力する回転駆動源である電動機部20、電動機部20から出力された回転駆動力を圧縮機構部10へ伝達する回転軸であるシャフト25等を有し、これらを圧縮機1の外殻を形成するハウジング30を介して一体化することによって構成された電動圧縮機である。
【0029】
また、この圧縮機1は、図2に示すように、冷凍サイクル100に搭載した状態で、シャフト25が略水平方向に延びて、圧縮機構部10および電動機部20が水平方向に配置される、いわゆる横置きタイプとして構成されている。
【0030】
ハウジング30は、水平方向に延びる筒状部材31、および筒状部材31の軸方向一端側(図2では、圧縮機構部10の反対側)の開口部を閉塞するモータ側蓋部材32を有している。筒状部材31の軸方向他端側(図2では、圧縮機構部10側)の開口部は、後述する圧縮機構部10の低段側固定スクロール12によって閉塞されている。
【0031】
筒状部材31とモータ側蓋部材32との当接部、および筒状部材31と低段側固定スクロール12との当接部等には、Oリングからなるシール部材が配置されており、これらの当接部から冷媒が漏れることはない。これにより、筒状部材31の内周側には、電動機部20を収容する収容室VAが形成される。
【0032】
さらに、モータ側蓋部材32には、気液分離器4にて分離された気相冷媒を、収容室VAの内部へ流入させる中間圧吸入ポート32aが形成されている。
【0033】
電動機部20は、固定子をなすステータ21および回転子をなすロータ22を有している。ステータ21は、磁性材からなるステータコア21aおよびステータコア21aに巻き付けられたステータコイル21bによって構成されている。そして、ステータコイル21bに電力を供給することによって、ロータ22を回転させる回転磁界を発生させる。
【0034】
ロータ22は、永久磁石を有して構成されており、ステータ21の内周側に配置されている。このロータ22は回転軸方向に延びる円筒状に形成されている。さらに、ロータ22の軸中心穴には、ロータ22と同軸上に延びるシャフト25が固定されている。従って、ステータコイル21bに電力が供給されて回転磁界が発生すると、ロータ22およびシャフト25が一体となって回転する。
【0035】
なお、本実施形態では、シャフト25およびロータ22に形成されたキー溝にキー24を嵌め込むことによって、シャフト25とロータ22とを固定しているが、もちろん圧入等の手段によってシャフト25とロータ22とを固定してもよい。
【0036】
シャフト25は、ロータ22よりも軸方向長さが長く形成されており、シャフト25の軸方向一端側の端部は、モータ側蓋部材32の中心部に配置された電動機部側軸受部25aによって回転可能に支持されている。一方、シャフト25の軸方向他端側は、圧縮機構部10の高段側固定スクロール13の中心部に配置された圧縮機構部側軸受部25bによって回転可能に支持されている。
【0037】
また、シャフト25の内部には、冷凍機油を摺動部位へ導くための給油通路25cが形成されている。そして、この給油通路25cを介して、シャフト25と電動機部側軸受部25aとの摺動部位、およびシャフト25と圧縮機構部側軸受部25bとの摺動部位に冷凍機油が供給される。なお、電動機部側軸受部25aおよび圧縮機構部側軸受部25bとしては、転がり軸受け、すべり軸受けのいずれを採用してもよい。
【0038】
圧縮機構部10は、シャフト25から伝達される回転駆動力によって公転運動する可動スクロール11、可動スクロール11の低段側可動側歯部11bと噛み合う低段側固定側歯部12bが形成された低段側固定スクロール12、および可動スクロール11の高段側可動側歯部11cと噛み合う高段側固定側歯部13bが形成された高段側固定スクロール13を有して構成されている。
【0039】
より具体的には、可動スクロール11は、シャフト25の軸方向に垂直に広がる略円形平板状の可動側基板部11aを有している。可動側基板部11aには、軸方向一端側(図2では、電動機部20側)へ向かって突出する渦巻き状の低段側可動側歯部11b、および可動側基板部11aから軸方向他端側(図2では、電動機部20の反対側)へ向かって突出する渦巻き状の高段側可動側歯部11cが形成されている。
【0040】
さらに、可動スクロール11の中心部には、可動側基板部11aの表裏を貫通する貫通穴が形成されており、この貫通穴には、シャフト25に形成されて中心軸に対して偏心した偏心部25dが摺動可能に挿入されている。
【0041】
低段側固定スクロール12は、可動スクロール11よりも軸方向一端側に配置され、シャフト25の軸方向に垂直に広がる略円形平板状の低段側固定側基板部12aを有している。低段側固定側基板部12aには、軸方向他端側へ突出して低段側可動側歯部11bに噛み合う渦巻き状の低段側固定側歯部12bが形成されている。より詳細には、低段側固定側歯部12bは、低段側可動側歯部11bが嵌め込まれる渦巻き状の溝部の側面によって形成されている。
【0042】
さらに、低段側固定スクロール12の中心部には、低段側固定側基板部12aの表裏を貫通する貫通穴が形成されており、この貫通穴には、シャフト25のうち偏心部25dよりも軸方向一端側の部位が挿入されている。
【0043】
高段側固定スクロール13は、可動スクロール11よりも軸方向他端側に配置され、シャフト25の軸方向に垂直に広がる略円形平板状の高段側固定側基板部13aを有している。高段側固定側基板部13aには、軸方向一端側へ突出して高段側可動側歯部11cに噛み合う渦巻き状の高段側固定側歯部13bが形成されている。より詳細には、高段側固定側歯部13bは、高段側可動側歯部11cが嵌め込まれる渦巻き状の溝部の側面によって形成されている。
【0044】
さらに、高段側固定スクロール13の中心部には、前述した圧縮機構部側軸受部25bが配置されており、シャフト25のうち偏心部25dよりも軸方向他端側の端部が回転可能に支持されている。
【0045】
つまり、本実施形態の圧縮機構部10では、シャフト25の一端側から他端側へ向かって(図2では、電動機部20側から圧縮機構部10側へ向かって)、低段側固定スクロール12、可動スクロール11、高段側固定スクロール13が、この順で配置されている。さらに、シャフト25は、低段側固定スクロール12および可動スクロール11の中心部を貫通して配置されている。
【0046】
また、本実施形態では、可動スクロール11と低段側固定スクロール12との間に、可動スクロール11が偏心部25d周りに自転することを防止する図示しない自転防止機構が設けられている。このため、シャフト25が回転すると、可動スクロール11は偏心部25d周りに自転することなく、シャフト25の回転中心を公転中心として旋回しながら公転運動する。
【0047】
これにより、本実施形態の圧縮機構部10には、2つのスクロール圧縮機構が構成される。すなわち、可動スクロール11および低段側固定スクロール12によって、低段側のスクロール圧縮機構(以下、低段側圧縮機構と記載する。)が構成され、可動スクロール11と高段側固定スクロール13によって、高段側のスクロール圧縮機構(以下、高段側圧縮機構と記載する。)が構成される。
【0048】
低段側圧縮機構では、可動スクロール11の低段側可動側歯部11bと低段側固定スクロール12の低段側固定側歯部12bが噛み合って、複数箇所で接触することにより、図3に示すように、回転軸方向から見たときに三日月形状の低段側圧縮空間が形成される。この低段側圧縮空間は、可動スクロール11が公転運動することによって容積変化して、低圧冷媒を中間圧冷媒となるまで圧縮する低段側圧縮室VLを形成している。
【0049】
さらに、本実施形態では、図3に示すように、低段側可動側歯部11bの巻き数を1としている。ここで、「巻き数」とは、回転軸方向から見たときに、歯部のうち圧縮空間(圧縮室)を形成して昇圧に寄与する部分の範囲を示しており、一周(360°)で巻き数1となる。
【0050】
つまり、図3では、一周(360°)よりも僅かに大きな範囲を占めるように巻かれた低段側可動側歯部11bが図示されているものの、低段側可動側歯部11bでは、実際に圧縮空間(圧縮室)を形成して昇圧に寄与する部分が形成される範囲の巻き数が1になっている。なお、「巻き数」は、「ラップ数」と呼ばれることもある。
【0051】
また、低段側固定スクロール12の外周部には、図2に示すように、蒸発器6から流出した低圧冷媒を吸入する低圧吸入ポート12cが形成されている。この低圧吸入ポート12cは、最大容積となった低段側圧縮空間と連通するように配置されている。
【0052】
さらに、低段側固定スクロール12を軸方向から見たときに、低段側固定スクロール12のうち、シャフト25よりも外周側であって、低段側可動側歯部11bの最内周部(巻き始め部)よりも内周側の部位には、図2図3に示すように、低段側圧縮室VLにて圧縮された中間圧冷媒をハウジング30の筒状部材31の内周側に形成された収容室VAへ吐出させる中間圧吐出穴12dが形成されている。
【0053】
従って、収容室VAは、前述した電動機部20を収容する空間としての機能を果たすとともに、中間圧吐出穴12dから吐出された中間圧冷媒の圧力脈動を吸収するバッファ空間としての機能を果たす。中間圧吐出穴12dの出口部には、収容室VA側から低段側圧縮室VL側への冷媒の逆流を防止する図示しない逆止弁(吐出弁)としてのリード弁が配置されている。
【0054】
一方、高段側圧縮機構では、可動スクロール11の高段側可動側歯部11cと高段側固定スクロール13の高段側固定側歯部13bが噛み合って、複数箇所で接触することにより、図4に示すように、回転軸方向から見たときに三日月形状の高段側圧縮空間が形成される。この高段側圧縮空間は、可動スクロール11が公転運動することによって容積変化して、中間圧冷媒を高圧冷媒となるまで圧縮する高段側圧縮室VHを形成している。
【0055】
さらに、本実施形態では、図4に示すように、高段側可動側歯部11cの巻き数を、低段側可動側歯部11bと同様に1としている。従って、シャフト25の軸方向垂直断面(以下、軸方向垂直断面と記載する。)における高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの断面形状(図4参照)は、軸方向垂直断面における低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12bの断面形状(図3参照)と略同等の形状になっている。
【0056】
なお、低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12b、並びに、高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの詳細構成については後述する。
【0057】
また、高段側固定スクロール13の外周部には、図2図4に示すように、収容室VA内の中間圧冷媒を吸入する中間圧吸入ポート13cが形成されている。この中間圧吸入ポート13cは、最大容積となった高段側圧縮空間と連通するように配置されており、低段側固定スクロール12の低段側固定側基板部12aの表裏を貫通するように形成された中間圧冷媒通路12fを介して、中間圧冷媒を吸入する。
【0058】
さらに、高段側固定スクロール13を軸方向から見たときに、高段側固定スクロール13のうち、シャフト25よりも外周側であって、高段側可動側歯部11cの最内周部(巻き始め部)よりも内周側の部位には、図2図4に示すように、高段側圧縮室VHにて圧縮された高圧冷媒を吐出室VBへ吐出させる高圧吐出穴13dが形成されている。
【0059】
吐出室VBは、高段側固定スクロール13の軸方向他端側(図2では、可動スクロール11の反対側)と、高段側固定スクロール13の軸方向他端側に配置された圧縮機構側蓋部材33との隙間に形成されている。圧縮機構側蓋部材33は、ハウジング30を構成する構成部材の1つであって、圧縮機構側蓋部材33には、高圧冷媒を圧縮機1から放熱器2側へ吐出する高圧吐出ポート33aが形成されている。
【0060】
従って、吐出室VBは、高圧吐出穴13dから吐出された高圧冷媒の圧力脈動を吸収するバッファ空間としての機能を果たす。さらに、この吐出室VBは、高圧吐出穴13dから吐出された高圧冷媒から冷凍機油を分離して、分離された冷凍機油を下方側に貯留する冷凍機油分離手段としての機能を兼ね備えている。
【0061】
高圧吐出穴13dの出口部には、吐出室VBから高段側圧縮室VH側への冷媒の逆流を防止する図示しない逆止弁(吐出弁)としてのリード弁が配置されている。従って、吐出室VBにて分離された気相冷媒は、高圧吐出ポート33aから放熱器2側へ吐出され、吐出室VBの下方側に貯留された冷凍機油は、シャフト25の内部に形成された給油通路25c等を介して、圧縮機1の各摺動部位へ供給される。
【0062】
次に、低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12b、並びに、高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの詳細構成について説明する。
【0063】
まず、低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12b、並びに、高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの配置について説明する。
【0064】
本実施形態の低段側可動側歯部11bおよび高段側可動側歯部11cは、シャフト25の軸方向から見たときに、互いに同位相となるように配置された場合よりも(すなわち、軸方向から見たときに、それぞれの歯部11b、11cの内周側の巻き始め部と外周側の巻き終わり部が互いに重合するように配置された場合よりも)、合計トルク変動の変動幅が縮小するように配置されている。
【0065】
合計トルク変動とは、低段側圧縮室VL内の冷媒の圧力変動によってシャフト25に生じるトルク変動と高段側圧縮室VH内の冷媒の圧力変動によってシャフト25に生じるトルク変動とを合算した値である。
【0066】
換言すると、低段側可動側歯部11bおよび高段側可動側歯部11cは、合計トルク変動の変動幅が最小値に近づくように、回転軸の軸方向から見たときに、中心軸に対して周方向にずれて、異なる位相で配置されている。具体的には、図3図4の断面図に示すように、低段側可動側歯部11bおよび高段側可動側歯部11cは、互いに中心軸に対して周方向に180°ずれて配置されている。
【0067】
このため、低段側固定側歯部12bおよび高段側固定側歯部13bについても、それぞれ低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12bに噛み合うように、互いに中心軸に対して周方向に180°ずれて配置されている。
【0068】
次に、図5図6を用いて、高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの軸方向垂直断面における断面形状について説明する。なお、図5図6では、可動スクロール11の高段側可動側歯部11cが、高段側固定側歯部13bに対して、最小容積の高段側圧縮室VHを形成する位置に変位した状態を示している。
【0069】
ここで、一般的なスクロール圧縮機構では、回転軸の軸方向垂直断面における歯部の形状が、インボリュート曲線状に形成される。さらに、渦巻き状に形成される歯部は径方向の厚みを有しているので、一般的なスクロール圧縮機構の歯部では、軸方向垂直断面における回転軸側の先端部(巻き始め部)の断面形状が図6の破線で示すような円弧状に形成される。
【0070】
これに対して、本実施形態では、図5図6に示すように、軸方向垂直断面にて、高段側可動側歯部11cの外周壁面が描くインボリュート曲線を外周側インボリュート曲線Ioとし、高段側可動側歯部11cの内周壁面が描くインボリュート曲線を内周側インボリュート曲線Iiとし、外周側インボリュート曲線Ioの回転軸側端部であるシャフト25側端部(巻き始め部側端部)と内周側インボリュート曲線Iiの巻き始め部側端部とを接続する曲線を先端部曲線Icと定義する。
【0071】
この外周側インボリュート曲線Ioおよび内周側インボリュート曲線Iiは、完全なインボリュート曲線になっている曲線に限定されず、高段側圧縮機構が冷媒を圧縮可能な範囲で、完全なインボリュート曲線から僅かにずれた曲線になっていてもよい。
【0072】
このとき、本実施形態では、先端部曲線Icが、径の異なる2つの円弧を組み合わせた形状(径の異なる2つの円弧を滑らかに接続した形状)になっており、外周側インボリュート曲線Ioに接続される外周側円弧Coの径が、内周側インボリュート曲線Iiに接続される内周側円弧Ciの径よりも小さく形成されている。
【0073】
従って、本実施形態の先端部曲線Icでは、可動スクロール11が最小容積の高段側圧縮室VHを形成する位置に変位した際に、先端部曲線Icのうち高段側固定側歯部13bに接する部位の曲率が、高段側可動側歯部11cの軸中心側の径方向厚み寸法Tの最大値Tiを直径とする図6の破線で示す円弧の曲率よりも小さくなっている。
【0074】
ここで、先端部曲線Icのうち高段側固定側歯部13bに接する部位の曲率とは、先端部曲線Icのうち高段側固定側歯部13bに接する部位の曲がり度合を半径rの円弧で近似した時に1/rで定義される。また、図6の破線で示す円弧は、一般的なスクロール型圧縮機にて採用されている可動側歯部が描く先端部曲線と表現することもできる。
【0075】
さらに、高段側固定側歯部13b(すなわち、高段側固定スクロール13に形成された溝部)の巻き始め部は、可動スクロール11が公転運動した際に、高段側可動側歯部11cの巻き始め部が当接して高段側圧縮室VHにて冷媒を圧縮可能な形状に形成されている。具体的には、本実施形態の軸方向垂直断面における高段側固定側歯部13bの巻き始め部の断面形状は、概略的に径の異なる2つの円弧を組み合わせた形状になっている。
【0076】
なお、図6の黒丸点は、外周側インボリュート曲線Ioと外周側円弧Coとの接続部、外周側円弧Coと内周側円弧Ciとの接続部、および内周側円弧Ciと内周側インボリュート曲線Iiとの接続部を説明するために図示したもので、実際の断面には、このような黒丸点は存在しない。
【0077】
さらに、前述の如く、軸方向垂直断面における低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12bの断面形状は、高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの断面形状と略同等になっている。従って、軸方向垂直断面における低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12bの巻き始め部の断面形状も、それぞれ高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの巻き始め部の断面形状と同等である。
【0078】
また、本実施形態では、図2に示すように、高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの軸方向寸法(各基板部からの突出量)が、低段側可動側歯部11bおよび低段側固定側歯部12bの軸方向寸法(各基板部からの突出量)よりも短く形成されている。これにより、冷凍サイクル100の成績係数(COP)が極大値に近づくように、高段側圧縮室VHの最大容積と低段側圧縮室VLの最大容積との容積比が調整されている。
【0079】
次に、以上の如く構成された本実施形態の圧縮機1および冷凍サイクル100の作動を説明する。圧縮機1の電動機部20に電力が供給されてロータ22およびシャフト25が回転すると、可動スクロール11が低段側固定スクロール12および高段側固定スクロール13に対して公転運動(旋回)する。
【0080】
これにより、低段側圧縮機構の低段側圧縮室VLおよび高段側圧縮機構の高段側圧縮室VHが、外周側から中心側へ容積を縮小させながら回転移動する。低段側圧縮機構では、蒸発器6から流入した低圧冷媒が、低段側固定スクロール12に形成された低圧吸入ポート12cから低段側圧縮室VLへ吸入される。低段側圧縮室VLへ吸入された低圧冷媒は中間圧冷媒となるまで圧縮されて、中間圧吐出穴12dから収容室VA内へ吐出される。
【0081】
中間圧吐出穴12dから吐出された中間圧冷媒は、モータ側蓋部材32に形成された中間圧吸入ポート32aを介して収容室VA内へ流入した中間圧冷媒(気液分離器4から流出した気相冷媒)と合流する。この際、中間圧冷媒が、ステータ21とロータ22との隙間(すなわち電動機部20の内部)を貫流することによって、電動機部20が冷却される。
【0082】
中間圧吐出穴12dから吐出された中間圧冷媒と中間圧吸入ポート32aから吸入された中間圧冷媒との合流冷媒は、中間圧冷媒通路12fを介して、高段側固定スクロール13に形成された中間圧吸入ポート13cから高段側圧縮室VHへ吸入される。高段側圧縮室VHへ吸入された中間圧冷媒は高圧冷媒となるまで圧縮されて、高圧吐出穴13dから吐出室VB内へ吐出される。
【0083】
吐出室VBへ吐出された高圧冷媒は、吐出室VB内で冷凍機油が分離されて、圧縮機構側蓋部材33に形成された高圧吐出ポート33aから放熱器2の冷媒入口側へ吐出される。一方、吐出室VBにて分離された冷凍機油は、シャフト25の給油通路25cを介して、各摺動部へ供給される。
【0084】
また、冷凍サイクル100では、圧縮機1の高圧吐出ポート33aから吐出された高圧冷媒が、放熱器2へ流入し、空調対象空間へ送風される送風空気と熱交換して放熱する。これにより、送風空気が加熱される。放熱器2から流出した冷媒は、高段側膨張弁3にて中間圧冷媒となるまで減圧されて、気液分離器4へ流入する。
【0085】
気液分離器4にて分離された中間圧液相冷媒は、低段側膨張弁5にて低圧冷媒となるまで減圧されて、蒸発器6へ流入する。蒸発器6へ流入した冷媒は、外気から吸熱して蒸発する。蒸発器6から流出した冷媒は、圧縮機1の低圧冷媒吸入口11dから吸入されて再び圧縮される。一方、気液分離器4にて分離された中間圧気相冷媒は、圧縮機1の中間圧吸入ポート32aから吸入されて再び圧縮される。
【0086】
本実施形態の圧縮機1は、以上の如く作動して、冷凍サイクル100にておいて、冷媒を圧縮して吐出することができる。また、冷凍サイクル100では、空調装置において、室内送風空気を加熱することができる。
【0087】
さらに、本実施形態の圧縮機1によれば、可動スクロール11の可動側基板部11aの表裏に低段側圧縮機構および高段側圧縮機構を近接配置しているので、圧縮機全体としての体格の小型化を図ることができる。
【0088】
これに加えて、本実施形態の圧縮機1では、シャフト25が低段側固定スクロール12の中心部および可動スクロール11の中心部を貫通して配置されて、シャフト25の両端部を電動機部側軸受部25aおよび圧縮機構部側軸受部25bによって回転可能に支持している。
【0089】
このようにシャフト25の両端部を回転可能に支持する構成(両持ち支持)では、シャフト25の一端側のみを回転可能に支持する構成(片持ち支持)よりも、シャフト25を安定して回転させることが可能な最高回転数を増加させることができる。従って、本実施形態の圧縮機1では、所望の流量の流体を吐出させるために必要な各圧縮機構の圧縮室VL、VHの最大容積を縮小させて、より一層の体格の小型化を図ることができる。
【0090】
ここで、本実施形態の圧縮機1のように、シャフト25が可動スクロール11の中心部を貫通して配置される軸貫通型のスクロール型圧縮機では、圧縮室を可動スクロールの中心部まで変位させることができない。そのため、軸貫通型のスクロール型圧縮機では、同程度の体格で回転軸が可動スクロールを貫通していない通常のスクロール型圧縮機よりも、理論的な圧縮比が小さくなり、圧縮性能が低下してしまいやすい。
【0091】
これに対して、本実施形態の圧縮機1では、高段側可動側歯部11cおよび低段側可動側歯部11bとして、上述した断面形状のものを採用しているので、以下に説明するように、冷媒圧力が最も高くなる際の高圧側圧縮室の気密性を向上させて、圧縮性能の低下を抑制することができる。
【0092】
なお、本実施形態では、高段側可動側歯部11cの巻き始め部の軸方向垂直断面における断面形状、および低段側可動側歯部11bの巻き始め部の軸方向垂直断面における断面形状が同等に形成されている。従って、本実施形態の圧縮機1では、双方の圧縮機構において、同様の圧縮性能の低下抑制効果を得ることができる。そこで、以下の説明では、高段側圧縮機構を例に説明する。
【0093】
まず、高段側圧縮機構において、可動スクロール11が最小容積の高段側圧縮室VHを形成する位置に変位した際に、高段側可動側歯部11cと高段側固定側歯部13bとの隙間を介して、最小容積となる高圧側の高段側圧縮室VHから高段側可動側歯部11cの外周側に形成される外周側の高段側圧縮室VHへ漏れる冷媒の漏れ量Qについて説明する。
【0094】
この漏れ量Qは、以下数式F1に示す、二つの平面間の隙間漏れのモデル式にて定義することができる。
Q=(bh3/12μL)×ΔP …(F1)
数式F1において、bは、高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの軸方向寸法(各基板部からの突出量)である。hは、高段側可動側歯部11cと高段側固定側歯部13bとの隙間寸法である。μは、冷媒(圧縮対象流体)の粘度である。ΔPは、高圧側の高段側圧縮室VH内の冷媒圧力P1から外周側の高段側圧縮室VH内の冷媒圧力P2を減算した差圧である。
【0095】
さらに、Lは、高段側可動側歯部11cと高段側固定側歯部13bとの隙間のシール長さである。シール長さLは、軸方向垂直断面において、高段側可動側歯部11cと高段側可動側歯部13bとの間で面シール部として機能する部位の長さである。従って、シール長さLを増加させることによって、漏れ量Qを減少させることができる。
【0096】
ここで、前述の如く、スクロール型圧縮機では、回転軸の軸方向垂直断面における各歯部の形状が、インボリュート曲線状に形成されている。このため、スクロール型圧縮機では、隙間寸法hが一定の値にならない。そこで、本実施形態では、軸方向垂直断面において、隙間寸法hが予め定めた基準寸法(具体的には、30μm)以下となる範囲を、シール長さLとしている。
【0097】
さらに、本実施形態では、可動スクロール11が最小容積の高段側圧縮室VHを形成する位置に変位した際に、高段側可動側歯部11cが描く先端部曲線Icのうち高段側固定側歯部13bに接する部位の曲率を、高段側可動側歯部11cの径方向厚み寸法Tの最大値Tiを直径とする図6図7の破線で示す円弧の曲率よりも小さく形成している。
【0098】
従って、図7に示すように、本実施形態の圧縮機1のシール長さL(隙間寸法hが30μmとなっている範囲)は、先端部曲線Icが図7の破線で示す円弧になっている場合のシール長さL0よりも長くなる。その結果、高圧側の高段側圧縮室VHから外周側の高段側圧縮室VHへの漏れ量Qを減少させて、高圧側の高段側圧縮室VHの気密性を向上させることができる。
【0099】
さらに、可動スクロール11が最小容積の高段側圧縮室VHを形成する位置に変位した際には、最小容積となっている高段側圧縮室VH内の圧力が理論的に最も高くなる。従って、内部の圧力が理論的に最も高くなる高段側圧縮室VHの気密性を効果的に向上させることができる。
【0100】
つまり、本実施形態の圧縮機1によれば、シャフト25が可動スクロール11を貫通して配置される軸貫通側のスクロール型圧縮機において、先端部曲線Icの曲率を小さくするという極めて簡素な構成で、高段側圧縮室VHの気密性を向上させることができる。延いては、軸貫通型のスクロール型圧縮機1における圧縮性能の低下を抑制することができる。
【0101】
しかも、本実施形態では、先端部曲線Icを、径の異なる2つの円弧を組み合わせた形状に形成することによって、外周側円弧Coの径を、内周側円弧Ciの径よりも小さく形成している。従って、極めて容易に、先端部曲線Icのうち高段側固定側歯部13bに接する部位の曲率を高段側可動側歯部11cの径方向厚み寸法Tの最大値Tiを直径とする円弧の曲率よりも小さくすることができる。
【0102】
さらに、本発明者らは、以下に説明する試験検討により、一般的な軸貫通型のスクロール型圧縮機に対する本実施形態の圧縮機1の具体的な効果を確認している。本発明者らが実施した試験検討では、一般的な軸貫通型のスクロール型圧縮機として、高段側可動側歯部11cの先端部曲線Icが図7の破線で示す円弧となるように形成された比較用のスクロール型圧縮機(以下、比較用圧縮機と記載する。)を用いている。
【0103】
この比較用圧縮機では、高段側固定側歯部13bの巻き始め部についても、可動スクロール11が公転運動した際に、高段側可動側歯部11cの巻き始め部が当接して高段側圧縮室VHにて冷媒を圧縮できるように、軸方向垂直断面における断面形状が、図7の一点鎖線で示すように円弧となるように形成されたものを採用している。
【0104】
さらに、比較用圧縮機における先端部曲線の半径をR0としたときに、本実施形態の圧縮機1の先端部曲線Icの内周側円弧Ciは、R0の1.5倍としている。
【0105】
つまり、R0およびCiは、以下数式F2、F3に示す寸法関係になっている。
R0=0.5×Ti …(F2)
Ci=1.5×R0=0.75×Ti …(F3)
ここで、Tiは、高段側可動側歯部11cの径方向厚み寸法Tの最大値である。このような寸法関係とすることにより、本実施形態の圧縮機1では、シール長さLを、比較用圧縮機のシール長さL0に対して約15%増加させることができる。
【0106】
次に、図8図9を用いて、本実施形態の圧縮機1および比較用圧縮機における冷媒圧力の変化について説明する。
【0107】
なお、図8図9のグラフでは、高段側可動側歯部11cの回転角θに対する高圧側の高段側圧縮室VHの理想的な圧力を太破線で示し、高圧側の高段側圧縮室VH内の圧力(具体的には、図7のP1に示す箇所の圧力)の実測値を太実線で示し、外周側の高段側圧縮室VHの圧力(具体的には、図7のP2に示す箇所の圧力)の実測値を太一点鎖線で示している。
【0108】
また、図10には、図8図9のグラフの横軸の回転角θに対応する高段側可動側歯部11cおよび高段側固定側歯部13bの位置関係を示している。さらに、図7のP1に示す箇所の圧力は、図10に点ハッチングで示す領域の圧力に等しい。
【0109】
まず、比較用圧縮機では、図8に示すように、回転角θが0°から増加するに伴って、中間圧吸入ポート13cから高段側圧縮室VHへ吸入された冷媒の圧力が上昇する。そして、回転角θが160°程度に到達すると、高圧側の高段側圧縮室VH内の冷媒圧力が吐出圧に到達して高圧吐出穴13dから吐出され始める。
【0110】
ところが、回転角θが330°程度に到達すると、冷媒圧力P1が低下してしまい、高圧冷媒が吐出されなくなってしまう。
【0111】
このような冷媒圧力P1の低下は、高圧側の高段側圧縮室VH内の冷媒が高段側可動側歯部11cと高段側固定側歯部13bとの隙間から外周側の高段側圧縮室VHへ漏れてしまうことによって生じる。このことは、回転角θが330°程度に到達すると、外周側の高段側圧縮室VH内の冷媒圧力P2が上昇を開始していることからも明らかである。
【0112】
つまり、比較用圧縮機では、回転角θが概ね160°〜330°の範囲では、所望の圧力(吐出圧)となるまで昇圧された冷媒を吐出することができるものの、回転角θが330°〜360°の範囲では、高圧側の高段側圧縮室VH内の冷媒が外周側の高段側圧縮室VHへ漏れてしまい、高圧側の高段側圧縮室VH内の冷媒を吐出することができない。
【0113】
これに対して、本実施形態の圧縮機1では、上述の如く高段側圧縮室VHの気密性を向上させることができるので、比較用圧縮機に対して漏れ量Qを7%程度低減できる。その結果、図9に示すように、回転角θが概ね160°〜350°の範囲で、所望の圧力となるまで昇圧された冷媒を吐出することができる。
【0114】
(第2実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、低段側可動側歯部11bおよび高段側可動側歯部11cの先端部曲線Icの形状を変更した例を説明する。なお、本実施形態においても、低段側圧縮機構および高段側圧縮機構の双方の圧縮機構にて同様の効果が得られるので、以下の説明では、高段側圧縮機構を例に説明する。
【0115】
具体的には、本実施形態の先端部曲線Icは、図11に示すように、高段側可動側歯部11cの径方向厚み寸法Tiを短軸とする半楕円形状に形成されている。さらに、高段側固定側歯部13bの巻き始め部についても、可動スクロール11が公転運動した際に、高段側可動側歯部11cの巻き始め部が当接して高段側圧縮室VHにて冷媒を圧縮可能な略楕円形状に形成されている。なお、図11は、第1実施形態の図7に対応する図面である。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0116】
従って、本実施形態の圧縮機1においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、先端部曲線Icを、半楕円形状に形成しているので、極めて容易に、先端部曲線Icのうち高段側固定側歯部13bに接する部位の曲率を高段側可動側歯部11cの径方向厚み寸法Tの最大値Tiを直径とする円弧の曲率よりも小さくすることができる。
【0117】
(第3実施形態)
本実施形態では、第1実施形態に対して、低段側可動側歯部11bおよび高段側可動側歯部11cの径方向厚み寸法Tを変更した例を説明する。なお、本実施形態においても、低段側圧縮機構および高段側圧縮機構の双方の圧縮機構にて同様の効果が得られるので、以下の説明では、高段側圧縮機構を例に説明する。
【0118】
具体的には、本実施形態の高段側可動側歯部11cは、径方向厚み寸法Tが外周側からシャフト25の中心側へ向かって徐々に大きくなっている。つまり、図12に示すように、シャフト25の中心側の径方向厚み寸法Tiが外周側の径方向厚み寸法Toよりも大きく形成されている。
【0119】
なお、図12は、第1実施形態の図5に対応する図面である。また、径方向厚み寸法Tは、外周側インボリュート曲線Ioと内周側インボリュート曲線Iiとの間の径方向の距離である。その他の構成および作動は、第1実施形態と同様である。
【0120】
従って、本実施形態の圧縮機1においても、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本実施形態では、高段側可動側歯部1cのうち、外周側よりも高圧となる高段側圧縮室VHを形成する中心側の径方向厚み寸法Tiを、外周側の径方向厚み寸法Toよりも大きく形成している。従って、高段側可動側歯部1cの径方向の変形を抑制することができ、より一層、効果的に高段側圧縮室VHの気密性を向上させることができる。
【0121】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0122】
(1)上述の各実施形態では、本発明に係るスクロール型圧縮機1を多段昇圧式の圧縮機として構成した例を説明したが、もちろん単段昇圧式の圧縮機として構成してもよい。さらに、多段昇圧式の圧縮機として構成する場合は、上述の各実施形態で説明した可動側歯部を、全ての圧縮機構に適用してもよいし、少なくとも1つに適用してもよい。
【0123】
また、上述の各実施形態で説明した多段昇圧式のスクロール型圧縮機1を、
冷媒を圧縮して吐出する圧縮機と、圧縮機から吐出された高圧冷媒と送風空気(あるいは外気)とを熱交換させる放熱器と、放熱器から流出した高圧冷媒の流れを分岐する分岐部と、分岐部にて分岐された一方の高圧冷媒を中間圧冷媒となるまで減圧させる高段側膨張弁と、分岐部にて分岐された他方の高圧冷媒と高段側膨張弁にて減圧された中間圧冷媒とを熱交換させる内部熱交換器と、内部熱交換器から流出した高圧冷媒を低圧冷媒となるまで減圧させる低段側膨張弁と、低段側膨張弁から流出した低圧冷媒と外気(あるいは送風空気)とを熱交換させて低圧冷媒を蒸発させる蒸発器とを備え、
内部熱交換器から流出した中間圧冷媒を圧縮機1の中間圧吸入ポート32aへ吸入させ、蒸発器から流出した低圧冷媒を圧縮機1の低圧吸入ポート12cへ吸入させることによって構成されるガスインジェクションサイクルに適用してもよい。
【0124】
(2)上述の各実施形態では、本発明に係るスクロール型圧縮機1を、冷凍サイクル100に適用した例を説明したが、スクロール型圧縮機1の適用はこれに限定されない。つまり、本発明に係るスクロール型圧縮機1は、種々の流体を圧縮する圧縮機として幅広い用途に適用可能である。
【0125】
(3)上述の実施形態の冷凍サイクル100では、圧縮機1吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超えない亜臨界冷凍サイクルを構成した例を説明したが、例えば、冷媒として二酸化炭素等を採用して、圧縮機1吐出冷媒の圧力が冷媒の臨界圧力を超える超臨界冷凍サイクルを構成してもよい。
【0126】
(4)上述の第1実施形態では、先端部曲線Icが径の異なる2つの円弧を組み合わせた形状になっている例を説明したが、先端部曲線Icは厳密に2つの円弧を組み合わせた形状になっているものに限定されない。例えば、接続部に面取り加工を施すこと等によって、先端部曲線Icが径の異なる2つの円弧を組み合わせた形状から僅かにずれた形状になっていてもよい。第2実施形態の半楕円形状についても同様である。
【0127】
(5)上述の各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。例えば、第2実施形態で説明した可動スクロール11において、第3実施形態のように低段側可動側歯部11bおよび高段側可動側歯部11cの径方向厚み寸法Tを変更してもよい。
【符号の説明】
【0128】
11 可動スクロール
11b、11c 低段側可動歯部、高段側可動歯部
12、13 低段側固定スクロール、高段側固定スクロール
12b、13b 低段側固定歯部、高段側固定歯部
Io 外周側インボリュート曲線
Ii 内周側インボリュート曲線
Ic 先端部曲線
T 径方向厚み寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12