(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層は、前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%、および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体および前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)を重合してなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
前記(メタ)アクリル系架橋重合体層は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(前記アクリル酸アルキルエステルおよび前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)を重合してなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
前記重合体(B)は、軟質の内層および硬質の外層を有し、前記内層が前記(メタ)アクリル系架橋重合体層を有し、前記外層が前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
前記重合体(B)は、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層を有し、前記内層が少なくとも一種の硬質重合体層からなり、前記中間層が前記(メタ)アクリル系架橋重合体層からなる軟質重合体層を有し、前記外層が前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
前記式(4)で表される単量体が、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、及び(メタ)アクリル酸フェノキシエチルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性が高く、異物欠陥が少ない成形品を与えうる、非複屈折性の樹脂材料、および同材料からなるフィルムを提供することを目的とする。本発明は、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性が高く、異物欠陥が少ない成形品を与えうる、アクリル系樹脂組成物、およびその組成物からなるフィルムを提供することを目的とする。さらに、本発明は、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性が高く、異物欠陥が少なく、且つ、優れた機械的強度を有した非複屈折性の樹脂材料、および同材料からなるフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、マトリックス成分となる樹脂(A)と、重合体(B)という2種類のポリマー成分を必須成分とし、配合複屈折と光弾性定数の双方が低い値を示すようにすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明の目的である非複屈折性樹脂材料又は樹脂組成物、およびそのフィルムを完成させた。
【0018】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1] 樹脂(A)および重合体(B)を含有し、配向複屈折が−1.7×10
−4から1.7×10
−4、光弾性定数が−4×10
−12から4×10
−12Pa
−1、である、非複屈折性樹脂材料。
[2] 樹脂(A)および重合体(B)を含有し、前記樹脂(A)の光弾性定数と前記重合体(B)の光弾性定数が異符号であり、前記樹脂(A)の光弾性定数が前記重合体(B)の光弾性定数により相殺されている、非複屈折性樹脂材料。
[3] 引張破断点伸度が10%以上であることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の非複屈折性樹脂材料。
[4] 前記樹脂(A)がアクリル系樹脂であることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[5] 前記樹脂(A)の光弾性定数と前記重合体(B)の光弾性定数が異符号であることを特徴とする、[1]、[3]および[4]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[6] 前記重合体(B)が、架橋構造を有することを特徴とする、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[7] 前記重合体(B)が、硬質重合体部を有することを特徴とする、[1]〜[6]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[8] 前記重合体(B)が、非架橋構造を有することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[9] 前記重合体(B)が、多層構造重合体であることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[10] 前記重合体(B)が、架橋重合体層および硬質重合体層を含む多層構造重合体であることを特徴とする、[9]に記載の非複屈折性樹脂材料。
[11] 前記重合体(B)が、(メタ)アクリル系架橋重合体層、および硬質重合体層を有する多層構造重合体であることを特徴とする、[10]に記載の非複屈折性樹脂材料。
[12] 前記硬質重合体層が、非架橋の硬質重合体層を含む、[10]〜[11]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[13] 前記重合体(B)が、(メタ)アクリル系架橋重合体層、および、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有するビニル系単量体を構造単位に含む硬質重合体層を有することを特徴とする、[10]〜[12]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[14] 前記脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有するビニル系単量体が、下記式(4)で表される単量体である、[13]に記載の非複屈折性樹脂材料。
【0019】
【化1】
【0020】
R
9は、水素原子、または、置換もしくは無置換で直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。R
10は、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の芳香族基、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の脂環式基であり、単素環式構造または複素環式構造を有する。lは1〜4の整数を示す。mは0〜1の整数を示す。nは0〜10の整数を示す。
[15] 前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層は、前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%、および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体および前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)を重合してなる、[14]に記載の非複屈折性樹脂材料。
[16] 前記(メタ)アクリル系架橋重合体層は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(前記アクリル酸アルキルエステルおよび前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)を重合してなる、[11]〜[15]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[17] 前記重合体(B)において、前記硬質重合体層が最外層を構成し、前記最外層が前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層である、[14]〜[16]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[18] 前記重合体(B)において、前記最外層の内側に、前記(メタ)アクリル系架橋重合体層を有する軟質層が隣接している、[17]に記載の非複屈折性樹脂材料。
[19] 前記重合体(B)は、軟質の内層および硬質の外層を有し、前記内層が前記(メタ)アクリル系架橋重合体層を有し、前記外層が前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有する、[14]〜[16]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[20] 前記重合体(B)は、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層を有し、前記内層が少なくとも一種の硬質重合体層からなり、前記中間層が前記(メタ)アクリル系架橋重合体層からなる軟質重合体層を有し、前記外層が前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有する、[14]〜[16]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[21] 前記重合体(B)が、軟質の最内層をさらに有する、[20]に記載の非複屈折性樹脂材料。
[22] 前記式(4)で表される単量体が、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、及び(メタ)アクリル酸フェノキシエチルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[14]〜[21]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[23] 前記重合体(B)の前記(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径が20〜450nmである、[11]〜[22]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[24] 前記重合体(B)が含有する前記(メタ)アクリル系架橋重合体層の含有量が、非複屈折性樹脂材料100重量部において1〜60重量部である、[11]〜[23]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[25] 複屈折性を有する無機微粒子をさらに含有することを特徴とする、[1]〜[24]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[26] 複屈折性を有する低分子化合物をさらに含有することを特徴とする、[1]〜[25]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[27] 前記樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを有するグルタルイミドアクリル系樹脂(D)、ラクトン環含有アクリル系重合体、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン系重合体、環状酸無水物繰り返し単位を含有するアクリル系重合体、並びに、水酸基および/またはカルボキシル基を含有するアクリル系重合体、からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]〜[26]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料。
【0021】
【化2】
【0022】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。)
【0023】
【化3】
【0024】
(式中、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。)
[28] 前記グルタルイミドアクリル系樹脂(D)が下記一般式(3)で表される単位を含まない、[27]に記載の非複屈折性樹脂材料。
【0025】
【化4】
【0026】
(式中、R
7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
[29] 光弾性定数が−4×10
−12から4×10
−12Pa
−1である、[2]〜[28]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[30] 配向複屈折が−1.7×10
−4から1.7×10
−4である、[2]〜[29]のいずれか1項に記載の非複屈折性樹脂材料。
[31] [1]〜[30]のいずれか一項に記載の非複屈折性樹脂材料からなるフィルム。
[32] 溶融押出法により得られることを特徴とする、[31]に記載のフィルム。
[33] 配向複屈折が−1.7×10
−4から1.7×10
−4、光弾性定数が−4×10
−12から4×10
−12Pa
−1であることを特徴とする、[31]又は[32]に記載のフィルム。
[34] 引張破断点伸度が10%以上である、[31]〜[33]のいずれか一項に記載のフィルム。
[35] フィルムの厚みが10〜500μmである、[31]〜[34]のいずれか一項に記載のフィルム。
[36] 次の樹脂(A)および重合体(B)を含有するアクリル系樹脂組成物。
(A)アクリル系樹脂。
(B)(メタ)アクリル系架橋重合体層、および、下記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有する、重合体。
【0027】
【化5】
【0028】
R
9は、水素原子、または、置換もしくは無置換で直鎖状もくしは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。R
10は、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の芳香族基、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の脂環式基であり、単素環式構造または複素環式構造を有する。lは1〜4の整数を示す。mは0〜1の整数を示す。nは0〜10の整数を示す。
[37] 前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層が、前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%、および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体および前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して得られる、[36]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[38] 前記(メタ)アクリル系架橋重合体層は、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(前記アクリル酸アルキルエステルおよび前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して得られる、[36]又は[37]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[39] 前記重合体(B)が、
(B−1)アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(前記アクリル酸アルキルエステルおよび前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系架橋重合体層を得、
(B−2)前記(メタ)アクリル系架橋重合体層の存在下に、前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%、および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体および前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を形成し、得られる、
[36]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[40] 前記重合体(B)の前記(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径が20〜450nmである、[36]〜[39]のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂組成物。
[41] 前記重合体(B)が含有する前記(メタ)アクリル系架橋重合体層の含有量が、アクリル系樹脂組成物100重量部において1〜60重量部である、[36]〜[40]のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂組成物。
[42] 次の樹脂(A)および重合体(B)を含有するアクリル系樹脂組成物。
(A)アクリル系樹脂。
(B)多段重合で得られる(メタ)アクリル系ゴム含有グラフト共重合体であって、前記多段重合の少なくとも1段において、(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子の存在下に、式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体を含有する混合物を重合することで形成される、重合体。
【0029】
【化6】
【0030】
R
9は、水素原子、または、置換もしくは無置換で直鎖状もくしは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。R
10は、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の芳香族基、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の脂環式基であり、単素環式構造または複素環式構造を有する。lは1〜4の整数を示す。mは0〜1の整数を示す。nは0〜10の整数を示す。
[43] 前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体の混合物が、前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%、および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体および前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)から構成される、[42]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[44] 前記(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子は、
アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(前記アクリル酸アルキルエステルおよび前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)を重合してなるゴム部を有する、[42]又は[43]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[45] 前記重合体(B)が、
(B−1)アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(前記アクリル酸アルキルエステルおよび前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子を得、
(B−2)前記(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子の存在下に、
前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%、および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体および前記これと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して得られる、
[42]に記載のアクリル系樹脂組成物。
[46] 前記重合体(B)の前記(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子までの体積平均粒子径が20〜450nmである、[42]〜[45]のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂組成物。
[47] 前記重合体(B)が含有する前記(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子の含有量が、アクリル系樹脂組成物100重量部において1〜60重量部である、[42]〜[46]のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂組成物。
[48] 前記式(4)で表される単量体が、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、及び(メタ)アクリル酸フェノキシエチルからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする、[36]〜[47]のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂組成物。
[49] 前記アクリル系樹脂(A)のガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする、[36]〜[48]のいずれか1項に記載のアクリル系樹脂組成物。
[50] 前記アクリル系樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを有するグルタルイミドアクリル系樹脂(D)、ラクトン環含有アクリル系重合体、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン系重合体、環状酸無水物繰り返し単位を含有するアクリル系重合体、並びに、水酸基および/またはカルボキシル基を含有するアクリル系重合体、からなる群より選択される少なくとも1種である、[36]〜[49]のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂組成物。
【0031】
【化7】
【0032】
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。)
【0033】
【化8】
【0034】
(式中、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。)
[51] 前記グルタルイミドアクリル系樹脂(D)が下記一般式(3)で表される単位を含まない、[50]に記載のアクリル系樹脂組成物。
【0035】
【化9】
【0036】
(式中、R
7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
8は、炭素数6〜10のアリール基である。)
[52] [36]〜[51]のいずれか一項に記載のアクリル系樹脂組成物からなるフィルム。
[53] 溶融押出法により得られることを特徴とする、[52]に記載のフィルム。
[54] 配向複屈折が−1.7×10
−4から1.7×10
−4、光弾性定数が−4×10
−12から4×10
−12Pa
−1であることを特徴とする、[52]又は[53]に記載のフィルム。
[55] フィルムの厚みが10〜500μmである、[52]〜[54]のいずれか一項に記載のフィルム。
[56] 配向複屈折が−1.7×10
−4から1.7×10
−4、光弾性定数が−4×10
−12から4×10
−12Pa
−1であり、引張破断点伸度が10%以上であり、厚みが10μm以上、500μm以下である、樹脂フィルム。
[57] ガラス転移温度が100℃以上であることを特徴とする、[56]に記載の樹脂フィルム。
[58] 前記樹脂フィルムがアクリル系樹脂フィルムであることを特徴とする、[56]又は[57]に記載の樹脂フィルム。
[59] 前記樹脂フィルムが未延伸フィルムである、[56]〜[58]のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
[60] [56]〜[59]のいずれか一項に記載の樹脂フィルムからなる、光学フィルム。
[61] [56]〜[59]のいずれか一項に記載の樹脂フィルムを基材に積層してなる積層品。
【発明の効果】
【0037】
本発明の非複屈折性樹脂材料によれば、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性が高く、異物欠陥が少ない成形品、特には光学フィルムを提供できる。本発明のアクリル系樹脂組成物によれば、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性が高く、異物欠陥が少ない成形品が得られ、特にフィルム化に好適である。さらには、本発明は、配向複屈折と光弾性複屈折の両方ともに非常に小さく、透明性が高く、異物欠陥が少なく、且つ、優れた機械的強度を有した非複屈折性の成形品、特には光学フィルムを提供できる。
【0038】
たとえば、本発明の非複屈折性樹脂材料を成形してなる成形品、特に光学フィルムは、延伸された場合でも光学的等方性に優れているため、液晶ディスプレイ等の光学フィルムやレンズ等の光学部材として好適に用いることができる。さらには本発明の光学フィルムは優れた機械的強度を有しているため、フィルム搬送性、実使用時の耐割れ性、製造時のフィルムのトリミング工程における微細なクラックの発生を低減することが可能である。また、高い機械的強度を有するので、フィルム強度を向上させるために必要な延伸工程が不要であるため、延伸フィルムでは生産するのが困難な、たとえば80μm以上の膜厚の厚いフィルムを生産することも可能である。
【0039】
さらに、本発明の光学フィルムは、高い耐熱性を達成できるため、フィルムコーティング工程の硬化温度、および乾燥速度を高めることができ、生産性を向上させることが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明するが、本発明はこれら実施形態に限定されない。
【0042】
本発明の非複屈折性樹脂材料、およびそのフィルムは、必須成分として、マトリックス成分となる樹脂(A)、および、樹脂(A)に対して光弾性定数、さらには配向複屈折が異符号であることが好ましい重合体(B)を含有しているものである。
【0043】
(樹脂(A))
本発明において、樹脂(A)とは、一般に透明性を有している樹脂であれば使用可能である。具体的には、ビスフェノールAポリカーボネートに代表されるポリカーボネート樹脂、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-無水マレイン酸樹脂、スチレン-マレイミド樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸樹脂、スチレン系熱可塑エラストマー等の芳香族ビニル系樹脂及びその水素添加物、非晶性ポリオレフィン、結晶相を微細化した透明なポリオレフィン、エチレン-メタクリル酸メチル樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、スチレン-メタクリル酸メチル樹脂等のアクリル系樹脂、およびそのイミド環化、ラクトン環化、メタクリル酸変性等により改質された耐熱性のアクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレートあるいはシクロヘキサンジメチレン基やイソフタル酸等で部分変性されたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等の非晶ポリエステル樹脂あるいは結晶相を微細化した透明なポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリアミド樹脂、トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂等の透明性を有する熱可塑性樹脂が幅広く例示される。実使用を考えた場合、得られた成形体の全光線透過率が85%以上、好ましくは90%、より好ましくは92%以上になるように樹脂を選定することが好ましい。
【0044】
上記樹脂のなかでも、アクリル系樹脂は、優れた光学特性、耐熱性、成形加工性などの面で特に好ましい。アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むビニル系単量体を重合してなる樹脂であればよいが、メタクリル酸メチル30〜100重量%およびこれと共重合可能なモノマー70〜0重量%を重合して得られるアクリル系樹脂がより好ましい。
【0045】
メタクリル酸メチルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えばアルキル残基の炭素数1〜10である(メタ)アクリル酸エステル(ただしメタクリル酸メチルを除く)が好ましい。メタクリル酸メチルと共重合可能な他のビニル系単量体としては、具体的には、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート、メタクリル酸イソボロニル等のメタクリル酸エステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸エポキシシクロヘキシルメチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸、アクリル酸などのカルボン酸類およびそのエステル類;アクリロニトニル、メタクリロニトリルなどのビニルシアン類;スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のビニルアレーン類;マレイン酸、フマール酸およびそれらのエステル等;塩化ビニル、臭化ビニル、クロロプレンなどのハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソブチレンなどのアルケン類:ハロゲン化アルケン類;アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート、モノエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼンなどの多官能性モノマーが挙げられる。これらのビニル系単量体は単独でまたは2種類以上を併用して使用することができる。
【0046】
メタクリル酸メチル重合体中、メタクリル酸メチルは、30〜100重量%、好ましくは50〜99.9重量%、より好ましくは50〜98重量%含有され、メタクリル酸メチルと共重合可能なモノマーは、70〜0重量%、好ましくは50〜0.1重量%、より好ましくは50〜2重量%含有される。メタクリル酸メチルの含有量が30重量%未満ではアクリル系樹脂特有の光学特性、外観性、耐候性、耐熱性が低下してしまう傾向がある。また、加工性、外観性の観点から、多官能性モノマーは使用しないことが望ましい。
【0047】
本発明に用いられる樹脂(A)のガラス転移温度は使用する条件、用途に応じて設定することができる。好ましくはガラス転移温度が100℃以上、より好ましくは110℃以上、さらに好ましくは115℃以上、最も好ましくは120℃以上である。
【0048】
ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂として、具体的には、グルタルイミド構造、無水グルタル酸構造、(メタ)アクリル酸単位、ラクトン環を分子中に含むアクリル系樹脂が挙げられる。例えば、ポリグルタルイミドアクリル系樹脂、無水グルタル酸アクリル系樹脂、ラクトン環化アクリル系樹脂、水酸基、および/またはカルボキシル基を含有するアクリル系樹脂、メタクリル系樹脂等が挙げられる。ガラス転移温度が120℃以上のその他の樹脂としては、スチレン単量体およびそれと共重合可能な他の単量体を重合して得られるスチレン系重合体の芳香族環を部分水素添加して得られる部分水添スチレン系重合体、環状酸無水物繰り返し単位を含有する重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が使用できる。なかでも、以下に記載するグルタルイミドアクリル系樹脂(D)を用いると、得られるフィルムの耐熱性が向上し、且つ、延伸時の光学特性にも優れるため特に好ましい。
【0049】
(グルタルイミドアクリル系樹脂(D))
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)は、ガラス転移温度が120℃以上であり、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを含むものである。
【0051】
上記一般式(1)中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
3は、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または、芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。上記一般式(1)で表される単位を、以下、「グルタルイミド単位」ともいう。
【0052】
上記一般式(1)において、好ましくは、R
1およびR
2はそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、R
3は、水素、メチル基、ブチル基、シクロヘキシル基であり、より好ましくは、R
1はメチル基であり、R
2は水素であり、R
3はメチル基である。
【0053】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR
1、R
2、およびR
3のいずれか又は全てが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0054】
グルタルイミド単位は、下記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより形成することができる。また、無水マレイン酸等の酸無水物、当該酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル、または、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸)をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成することができる。
【0055】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)において、グルタルイミド単位の含有量は特に限定されず、例えば、R
3の構造等を考慮して適宜決定することができる。しかしながら、グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)全量のうち1.0重量%以上が好ましく、3.0重量%〜90重量%がより好ましく、5.0重量%〜60重量%がさらに好ましい。グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂(D)の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。逆に上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に低くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
【0056】
グルタルイミド単位の含有量は以下の方法により算出される。
【0057】
1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の
1H−NMR測定を行い、樹脂中のグルタルイミド単位またはエステル単位などの各モノマー単位それぞれの含有量(mol%)を求め、当該含有量(mol%)を、各モノマー単位の分子量を使用して含有量(重量%)に換算する。
【0058】
例えば、上記一般式(1)においてR
3がメチル基であるグルタルイミド単位とメチルメタクリレート単位からなる樹脂の場合、3.5から3.8ppm付近に現れるメタクリル酸メチルのO−CH
3プロトン由来のピークの面積aと、3.0から3.3ppm付近に現れるグルタルイミドのN−CH
3プロトン由来のピークの面積bから、以下の計算式によりグルタルイミド単位の含有量(重量%)を求めることができる。
[メチルメタクリレート単位の含有量A(mol%)]=100×a/(a+b)
[グルタルイミド単位の含有量B(mol%)]=100×b/(a+b)
[グルタルイミド単位の含有量(重量%)]=100×(b×(グルタルイミド単位の分子量))/(a×(メチルメタクリレート単位の分子量)+b×(グルタルイミド単位の分子量))
なお、モノマー単位として上記以外の単位を含む場合においても、樹脂中の各モノマー単位の含有量(mol%)と分子量から、同様にグルタルイミド単位の含有量(重量%)を求めることができる。
【0059】
本発明の非複屈折性樹脂材料を例えば偏光子保護フィルムに使用する場合、グルタルイミド単位の含有量は、複屈折を抑制しやすいため20重量%以下が好ましく、15重量%以下がより好ましく、10重量%以下がさらに好ましい。
【0061】
上記一般式(2)中、R
4およびR
5は、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
6は、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または芳香環を含む炭素数5〜15の置換基である。上記一般式(2)で表される単位を、以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう。なお、本願において「(メタ)アクリル」とは、「メタクリルまたはアクリル」を指すものとする。
【0062】
上記一般式(2)において、好ましくは、R
4およびR
5はそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、R
6は水素またはメチル基であり、より好ましくは、R
4は水素であり、R
5はメチル基であり、R
6はメチル基である。
【0063】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR
4、R
5およびR
6のいずれか又は全てが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0064】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)は、必要に応じて、下記一般式(3)で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0066】
上記一般式(3)中、R
7は、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、R
8は、炭素数6〜10のアリール基である。
【0067】
上記一般式(3)で表される芳香族ビニル単位としては特に限定されないが、スチレン単位、α−メチルスチレン単位が挙げられ、スチレン単位が好ましい。
【0068】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)は、芳香族ビニル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、R
7およびR
8のいずれか又は双方が異なる複数の単位を含んでいてもよい。
【0069】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)において、芳香族ビニル単位の含有量は特に限定されないが、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)全量のうち0〜50重量%が好ましく、0〜20重量%がより好ましく、0〜15重量%が特に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲より多いと、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)の十分な耐熱性を得ることができない。
【0070】
しかし本発明では、耐折り曲げ性および透明性の向上、フィッシュアイの低減、さらに耐溶剤性または耐候性の向上といった観点から、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)は芳香族ビニル単位を含まないことが好ましい。
【0071】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに含まれていてもよい。
【0072】
その他の単位としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単位、グルタル無水物単位、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系単位、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単位等が挙げられる。
【0073】
これらのその他の単位は、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)中に、ランダム共重合により含まれていてもよいし、グラフト共重合により含まれていてもよい。
【0074】
これらのその他の単位は、その単位を構成する単量体を、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)、及び/又は、樹脂(D)を製造する際の原料となる樹脂に対し共重合することで導入したものでもよい。また、前記のイミド化反応を行う際に、これらその他の単位が副生して樹脂(D)に含まれることとなったものでもよい。
【0075】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)の重量平均分子量は特に限定されないが、1×10
4〜5×10
5の範囲にあることが好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0076】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)のガラス転移温度は、フィルムが良好な耐熱性を発揮するよう、120℃以上であることが好ましい。より好ましくは125℃以上である。ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、フィルムが十分な耐熱性を発揮することができない。
【0077】
次に、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)の製造方法の一例を説明する。
【0078】
まず、(メタ)アクリル酸エステルを重合することにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造する。グルタルイミドアクリル系樹脂(D)が芳香族ビニル単位を含む場合には、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルとを共重合させ、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を製造する。
【0079】
この工程において、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを用いることが好ましく、メタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。
【0080】
(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。複数種の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、最終的に得られるグルタルイミドアクリル系樹脂(D)に複数種の(メタ)アクリル酸エステル単位を含ませることができる。
【0081】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体または上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体の構造は、続くイミド化反応が可能なものであれば、特に限定されない。具体的には、線状ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、架橋ポリマー等が挙げられる。
【0082】
ブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、一層のコアおよび一層のシェルのみからなるものであってもよいし、コアとシェルのいずれか一方又は双方が多層からなるものであってもよい。
【0083】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体または上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体に、イミド化剤を反応させることで、イミド化反応を行う。これにより、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)を製造することができる。
【0084】
上記イミド化剤は特に限定されず、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できるものであればよい。具体的には、アンモニア又は一級アミンを用いることができる。上記一級アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有一級アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有一級アミン、シクロヘキシルアミン等の脂環式炭化水素基含有一級アミンが挙げられる。
【0085】
上記イミド化剤としては、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素等の、加熱によりアンモニア又は一級アミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
【0086】
上記イミド化剤のうち、コスト、物性の面から、アンモニア、メチルアミン、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
【0087】
このイミド化の工程においては、上記イミド化剤に加えて、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。
【0088】
このイミド化の工程では、上記イミド化剤の添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミドアクリル系樹脂(D)におけるグルタルイミド単位の含有量を調整することができる。
【0089】
上記イミド化反応を実施するための方法は特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、押出機、又は、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いることでイミド化反応を進行させることができる。
【0090】
上記押出機としては特に限定されず、各種押出機を使用できるが、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
【0091】
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、原料ポリマーとイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤および閉環促進剤)との混合を促進することができる。
【0092】
二軸押出機としては、例えば、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等が挙げられる。中でも、噛合い型同方向回転式が好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーとイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤および閉環促進剤)との混合を、より一層促進することができる。
【0093】
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列に連結して用いてもよい。
【0094】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)を製造するにあたっては、上記イミド化工程に加えて、エステル化剤で処理するエステル化工程を含むことができる。このエステル化工程によって、イミド化工程にて副生した、樹脂中に含まれるカルボキシル基を、エステル基に変換することができる。これにより、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)の酸価を所望の範囲内に調整することができる。
【0095】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)の酸価は特に限定されないが、0.50mmol/g以下であることが好ましく、0.45mmol/g以下であることがより好ましい。下限は特に制限されないが、0mmol/g以上が好ましく、0.05mmol/g以上が好ましく、0.10mmol/g以上が特に好ましい。酸価が上記範囲内であれば、耐熱性、機械物性、および成形加工性のバランスに優れたグルタルイミドアクリル系樹脂(D)を得ることができる。一方、酸価が上記範囲より大きいと、フィルム成形のための溶融押出時に樹脂の発泡が起こりやすくなり、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。なお、酸価は、例えば特開2005−23272号公報に記載の滴定法などにより算出することが可能である。
【0096】
上記エステル化剤としては特に限定されず、例えば、ジメチルカーボネート、2,2−ジメトキシプロパン、ジメチルスルホキシド、トリエチルオルトホルメート、トリメチルオルトアセテート、トリメチルオルトホルメート、ジフェニルカーボネート、ジメチルサルフェート、メチルトルエンスルホネート、メチルトリフルオロメチルスルホネート、メチルアセテート、メタノール、エタノール、メチルイソシアネート、p−クロロフェニルイソシアネート、ジメチルカルボジイミド、ジメチル−t−ブチルシリルクロライド、イソプロペニルアセテート、ジメチルウレア、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、ジメチルジエトキシシラン、テトラ−N−ブトキシシラン、ジメチル(トリメチルシラン)フォスファイト、トリメチルフォスファイト、トリメチルフォスフェート、トリクレジルフォスフェート、ジアゾメタン、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ベンジルグリシジルエーテルなどが挙げられる。これらの中でも、コスト、反応性などの観点から、ジメチルカーボネート、およびトリメチルオルトアセテートが好ましく、コストの観点から、ジメチルカーボネートが特に好ましい。
【0097】
上記エステル化剤の使用量は特に限定されないが、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体または上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体100重量部に対して0〜12重量部であることが好ましく、0〜8重量部であることがより好ましい。エステル化剤の使用量が上記範囲内であれば、グルタルイミドアクリル系樹脂(D)の酸価を適切な範囲に調整できる。一方、上記範囲を外れると、未反応のエステル化剤が樹脂中に残存する可能性があり、当該樹脂を使って成形を行った際に、発泡または臭気発生の原因となることがある。
【0098】
上記エステル化剤に加え、触媒を併用することもできる。触媒の種類は特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン等の脂肪族3級アミンが挙げられる。これらの中でもコスト、反応性などの観点からトリエチルアミンが好ましい。
【0099】
エステル化工程は、上記イミド化工程と同様、例えば、押出機、又は、バッチ式反応槽を用いることで進行させることができる。
【0100】
このエステル化工程は、エステル化剤を使用せずに、加熱処理のみによって実施することもできる。当該加熱処理は、押出機内で溶融樹脂を混練および分散することで達成することができる。エステル化工程として加熱処理のみを行なう場合、イミド化工程にて副生した樹脂中のカルボキシル基同士の脱水反応、および/または、樹脂中のカルボキシル基と樹脂中のアルキルエステル基との脱アルコール反応等により、前記カルボキシル基の一部または全部を酸無水物基とすることができる。この時、閉環促進剤(触媒)を使用することも可能である。
【0101】
エステル化剤を用いたエステル化工程においても、並行して、加熱処理による酸無水物基化を進行させることが可能である。
【0102】
イミド化工程およびエステル化工程ともに、使用する押出機には、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが好ましい。このような機械によれば、未反応のイミド化剤、エステル化剤、メタノール等の副生物、または、モノマー類を除去することができる。
【0103】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置や、スーパーブレンドのような竪型二軸撹拌槽などの、高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
【0104】
グルタルイミドアクリル系樹脂(D)をバッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されない。具体的には、原料ポリマーを加熱により溶融させ、撹拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤および閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、撹拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。このようなバッチ式反応槽によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽としては、例えば、住友重機械(株)製の撹拌槽マックスブレンド等が挙げられる。
【0105】
以上により、グルタルイミド単位の含有量が特定の数値に制御されたグルタルイミドアクリル系樹脂(D)を容易に製造することができる。
【0106】
(重合体(B))
本発明に用いられる重合体(B)は、樹脂(A)に添加することで、配向複屈折および光弾性定数をともに小さくでき、光学的等方性の高い非複屈折性樹脂材料とするために必須な成分である。光学的に等方にするためには、配向複屈折と光弾性複屈折をいかに小さくするかというのが重要である。そのため、ここではまず本発明の樹脂(A)、重合体(B)、非複屈折性樹脂材料、フィルムの「配向複屈折」「光弾性複屈折」の考え方について説明する。
【0107】
(配向複屈折に関する考え方)
高吐出条件、フィルム引取条件、低温成形など、フィルム中でポリマーが配向するような成形以外の、通常の溶融押出成形にてフィルムを作成した場合、フィルム中のポリマーの配向はそれほど大きくない。実際にPMMAで代表されるアクリル系樹脂であれば、意図的な延伸工程がない溶融押出フィルム(以下、原反フィルム、原料フィルムとも呼ぶ)の複屈折はそれほど大きくなく、用途にもよるが実用上問題が無い場合もある。もちろん、ポリマーが配向するような成形条件や、原反フィルムを延伸工程させた場合には、フィルム中でポリマーが配向し、その結果複屈折が発生する。この場合の複屈折は、ポリマーが配向することによって発生する複屈折であるため、一般に配向複屈折と呼ばれる。以上、本発明の非複屈折性樹脂材料をどのように成形するか、またフィルムの場合には延伸させるのか、ということによって、本発明の非複屈折性樹脂材料から得られる成形体、特には光学フィルムの配向複屈折を小さくするため、重合体(B)の配向複屈折と樹脂(A)の配向複屈折を設定する必要がある。逆に、フィルム等の成形体中でポリマーがほとんど配向せず、複屈折が十分に小さい場合には、重合体(B)の配向複屈折に関してはそれほど考慮する必要が無く、樹脂設計上、特に制限を受けないことになる。
【0108】
ここで、本発明のいうところの「配向複屈折」の測定条件の定義づけをしておきたい。配向複屈折は、ポリマー鎖が配向することにより発現する複屈折であることは先に述べたとおりであるが、ポリマー鎖の配向度によってポリマーフィルム中の複屈折(配向複屈折)は変化する。よって、本発明では、「配向複屈折」を求める際には以下の条件で測定することと定義する。
【0109】
樹脂(A)、重合体(B)および非複屈折性樹脂材料はなんらかの成形体にして、その配向複屈折を測定する必要があり、本発明では当該成形体をフィルムまたはシートとする。ここでは、溶融押出成形フィルムとプレス成形シートとを挙げて説明する。
【0110】
・フィルムでの「配向複屈折」測定
まず、膜厚125μmのフィルム(原反フィルム)から、25mm×90mmの試験片を切り出し(MD方向に長辺が来るように切り出す)、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸する(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたフィルムを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、複屈折を測定する。
【0111】
・シートでの「配向複屈折」測定
重合体(B)が少なくとも架橋構造を有する場合、その構造によっては単独でフィルム化することは困難となる。よって、重合体(B)は、プレス成形シートを作製して「配向複屈折」を測定する。また、樹脂(A)などが、重合体(B)と同様に、フィルム化が困難である場合にも、プレス成形シートを作製して配向複屈折を測定する。
【0112】
以下に、プレス成形シートを用いた場合の「配向複屈折」の測定条件について説明する。
【0113】
重合体(B)を190℃でプレスし、膜厚500μmのプレス成形シートを作製する。得られたプレス成形シートの中央部から、25mm×90mmの試験片を切り出し、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸する(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたフィルムを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、複屈折を測定し、配向複屈折の符号を得る。
【0114】
上記の「配向複屈折」は、ポリマーの配向度に依存するため、延伸条件を含め、種々のサンプル作成条件により影響を受けるため、上記のように評価条件を明示した。たとえば延伸温度はガラス転移温度に対して−30℃〜+30℃、+0℃〜+30℃がより好ましく、+5℃〜+30℃の温度範囲にするなど、適宜設定すればよい。ただし、各サンプル間での複屈折性の符号、相対的な大小関係を定量的に得るためには、延伸条件等の測定条件がほぼ同じところでの測定値を用いることが重要である。
【0115】
(
光弾性複屈折(光弾性定数)に関する考え方)
先に説明したとおり、光弾性複屈折は成形体に応力が加わった場合に成形体中のポリマーの弾性的な変形(歪)に伴って引き起こされる複屈折である。実際には、そのポリマーに固有の「光弾性定数」を求めることで、その材料の光弾性複屈折の度合いを評価することができる。まずポリマー材料に応力を印加し、弾性的な歪みが生じた際の複屈折を測定する。得られた複屈折と応力との比例定数が光弾性定数である。この光弾性定数を比較することにより、ポリマーの応力印加時の複屈折性を評価することができる。
【0116】
上述の「配向複屈折」と同様に、樹脂(A)、重合体(B)および非複屈折性樹脂材料はなんらかの成形体にして、その光弾性複屈折を測定する必要があり、本発明では当該成形体をフィルムまたはシートとする。ここでは、溶融押出成形フィルムとプレス成形シートとを挙げて説明する。
【0117】
・フィルムでの「光弾性定数」測定
上記「配向複屈折」の項の記載同様、膜厚125μmのフィルム(原反フィルム)から、TD方向に15mm×90mmの短冊状に試験片を切断する(TD方向に長辺がくるように切り出す)。次に、23℃において、試験片フィルムの長辺の一方を固定し、他方は無荷重から4kgfまで0.5kgfずつ荷重をかけた状態で、各々の印加時の複屈折を測定し、得られた結果から、単位応力による複屈折の変化量を算出し、光弾性定数を算出する。
【0118】
・シートでの「光弾性定数」測定
重合体(B)については、上記の「配向複屈折」の項と同様にプレス成形シートを作製し、この複屈折を測定することにより、光弾性定数を求める。また、樹脂(A)などが、重合体(B)と同様に、フィルム化が困難である場合にも、プレス成形シートにより光弾性複屈折を測定する。
【0119】
以下、プレス成形シートを用いた場合の「光弾性定数」の測定について説明する。
【0120】
重合体(B)を190℃でプレスし、膜厚500μmのプレス成形シートを作製し、得られたプレス成形シートの中央部から25mm×90mmの試験片を切り出す。測定条件および算出法は、前述の溶融押出成形フィルムの場合と同じとする。
【0121】
フィルム又はシートでの光弾性複屈折の測定においては、比較するサンプル間の厚み差が大きい場合、サンプル中での応力のかかり方が変わってくる可能性があり、光弾性定数の厳密な比較が難しい場合がある。ただし、本発明で説明している膜厚125μmのフィルム、膜厚500μmのプレス成形シートに関して、この程度の厚み差であれば、両サンプル間での応力のかかり方に大差はなく、光弾性定数の比較をすることが可能である。したがって、前記フィルムでも、プレス成形シートでも光弾性定数(複屈折)を測定するのに好適に使用できるが、フィルムを用いて測定することがより好ましい。本発明では、重合体(B)の光弾性定数の符号を確認する手段として、膜厚500μmのプレス成形シートを使用する。配向複屈折についても同様である。
【0122】
光弾性複屈折は、そのポリマー構造に固有の特性であることから、樹脂(A)の光弾性定数が大きい場合、重合体(B)の光弾性定数は樹脂(A)の光弾性定数に対して異符号である必要がある。また、重合体(B)の配合量に関して言えば、樹脂(A)の光弾性複屈折を打ち消すことができるだけの量の重合体(B)を添加する必要がある。得られるポリマー(共重合体)の光弾性定数と、共重合に用いたモノマー種に対応するそれぞれのホモポリマーの光弾性定数との間には、加成性が成り立つことが知られている。このことから、重合体(B)が樹脂(A)に対して光弾性定数が異符号であり、且つ大きければ、樹脂(A)と重合体(B)からなる非複屈折性樹脂材料、およびそのフィルムの光弾性複屈折を小さくするための重合体(B)の必要量は少なくて済む。
【0123】
配向複屈折に関しては、先述のように、本発明の非複屈折性樹脂材料からなる成形体、特には光学フィルムにおいて、成形体中でポリマーの配向度がそれほど大きくなく、その成形体の配向複屈折が実用上問題が無い場合には、重合体(B)の設計において配向複屈折の考慮をする必要は特にない。ただし、得られた成形体中の配向複屈折が実用上問題となる場合には、重合体(B)の配向複屈折を、樹脂(A)の配向複屈折に対して異符号にする必要がある。
【0124】
以上が、本発明で提供する非複屈折性樹脂材料、およびフィルムにおいて、低複屈折化を実現するための重要な技術思想である。
【0125】
ここで、本発明の重合体(B)は重量平均分子量が5000を超える重合体であればよく、好ましくは10000以上、より好ましくは20000以上であることが好ましい。重量平均分子量が5000以下の場合、成形体の機械的特性、耐熱性、硬度などの物性低下や、高温成形加工時に成形体表面にブリードアウトし、成形体の外観を損なうおそれがある。
【0126】
重合体(B)は、機械的強度を向上させる観点から、その一部に架橋構造部分を有することが好ましく、架橋重合体層を有する多層構造重合体を例示できる。重合体(B)は、耐熱性の観点から、硬質重合体部を有していることが好ましく、複屈折を小さくする観点からは非架橋構造を有することが好ましく、中でも、非架橋構造の硬質重合体部を有することが好ましい。例えば、硬質重合体層を有する多層構造重合体が例示される。重合体(B)は、架橋重合体層および硬質重合体層を含む多層構造重合体であることがより好ましい。一般に多層構造重合体のことをグラフト共重合体、コアシェルポリマーとも表現されるが、本発明の重合体(B)はこれらも含むものである。
【0127】
米国特許第4373065号公報では、2種類のポリマーの構造がかなり異なり、基本的には完全相溶しにくい。実際に、非架橋の2種類のポリマーをブレンドした場合、片方のポリマーが凝集してミクロンオーダーのドメイン、もしくは明らかに目で見えるほど大きな塊、さらには表面ムラとなり、透明性を悪化させたり、フィッシュアイなどの異物の原因となる。このため、2種類のポリマーが完全相溶しやすくするためには、複屈折制御と相溶性制御の2つの要因を考慮してポリマー設計をする必要があるため、ポリマーの設計自由度がかなり低くなる。ここで本発明の重合体(B)の特徴が発揮されることになる。本発明において、重合体(B)は架橋重合体(層)と硬質重合体(層)とを有し、重合体(B)1つあたりの大きさがサブミクロンサイズの微細粒子となるように設計されている場合、樹脂(A)に重合体(B)をブレンドすると、マトリックスである樹脂(A)中に、重合体(B)がサブミクロンサイズに分散する海島構造をとるため、数mm、数cmなど際限なく重合体(B)が凝集して、透明性を悪化させたり、フィッシュアイなどの異物の原因になりにくい。このように重合体(B)があらかじめサブミクロンサイズに設計することでマトリックス中での分散性を制御できることから、完全に相溶性をあわさなくても重合体(B)がマトリックス中に分散できるため、複屈折制御に重きを置いたポリマー設計にするなど、マトリックスである樹脂(A)および重合体(B)ともにポリマーの設計自由度を高めることができる。これが2つ目の重要な技術思想となる。
【0128】
次に本発明の3つ目の重要な技術思想について説明する。本発明の非複屈折樹脂材料からなる成形体、特には光学フィルムにおいて、高い耐熱性、および機械的強度が必要とされるケースがある。特に、液晶ディスプレイ用の光学フィルムとして使用される場合には、実使用時はもちろん、フィルムコーティング工程等の製造工程で高温にさらされたりするため、高い耐熱性が必要となる。また、フィルム製造時はもちろん、フィルムにコーティングしたあとや、他の部材と張り合わせしたあとでの打ち抜き工程など、トリミング性や、耐割れ性などの機械的強度も必要となる。このような場合には、重合体(B)の架橋重合体層を「軟質」にすることで、この重合体(B)をマトリックス成分である樹脂(A)に添加することにより、機械的強度を飛躍的に向上させると同時に、高い耐熱性も同時に実現可能であるというところにある。その効果を発現するために、重合体(B)は、軟質の架橋重合体層、および硬質重合体層を有するグラフト共重合体(コアシェルポリマー)であることが好ましい。通常、機械的強度を向上させるために軟質のポリマーを添加することも方法として挙げられるが、この場合、マトリックス樹脂(ここでは樹脂(A))と軟質ポリマーが均質に混ざってしまい、得られる成形体の耐熱性を下げてしまうという欠点がある。一方、軟質の架橋重合体層と硬質重合体層を有するグラフト共重合体(コアシェルポリマー)の場合、成形体中において、軟質の架橋重合体層が「島」、樹脂(A)と硬質重合体層が「海」となる、不連続な海島構造をとるため、機械的強度を向上させ、かつ耐熱性をほとんど下げないという、優れた効果を出すことが可能である。また、通常、軟質の架橋重合体は、マトリックス(樹脂(A))とは別組成となるため、マトリックスに均一に分散することは困難であり、透明性などの光学特性の低下や、フィッシュアイ等の欠陥となる。しかしながら、軟質の架橋重合体層と硬質の重合体層を併せ持つグラフト共重合体であれば、前述のようにマトリックス中に軟質の架橋重合体を均一に分散させることが可能となる。
【0129】
ここでいう「軟質」とは、重合体のガラス転移温度が20℃未満であることを意味する。軟質層の衝撃吸収能力を高め、耐割れ性などの耐衝撃性改良効果を高める観点から、重合体のガラス転移温度が0℃未満であることが好ましく、−20℃未満であることがより好ましい。
【0130】
また、ここでいう「硬質」とは、重合体のガラス転移温度が20℃以上であることを意味する。重合体のガラス転移温度が20℃未満の場合、重合体(B)を配合した非複屈折性樹脂材料、およびフィルムの耐熱性が低下したり、また重合体(B)を製造する際に重合体(B)の粗大化や塊状化が起こり易くなるなどの問題が発生する。
【0131】
本願において、「軟質」および「硬質」の重合体のガラス転移温度は、ポリマーハンドブック[Polymer Hand Book(J.Brandrup,Interscience 1989)]に記載されている値を使用してFoxの式を用いて算出した値を用いることとする(例えば、ポリメチルメタクリレートは105℃であり、ポリブチルアクリレートは−54℃である)。
【0132】
ここで、本発明の非複屈折性樹脂材料からなる成形体、およびフィルムに対して、高い機械的強度がそれほど必要とされない場合には、前記架橋重合体層は「軟質」でも、「硬質」でもよく、この定義は前記のとおりである。
【0133】
本願では、重合体(B)に関して、架橋重合体層に対して、硬質重合体層がどの程度共有結合しているかを表すために、グラフト率というパラメーターを使う。
【0134】
重合体(B)のグラフト率とは、架橋重合体層の重量を100とした場合の、架橋重合体層に対して、グラフトされた硬質重合体層の重量比率を表す指標である。このグラフト率は10〜250%が好ましく、より好ましくは40〜230%、最も好ましくは60〜220%である。グラフト率が10%未満では、成形体中で重合体(B)が凝集しやすく、透明性が低下したり、異物原因となる恐れがある。また引張破断時の伸びが低下しフィルム切断時にクラックが発生しやすくなったりする傾向がある。250%以上では成形時、たとえばフィルム成形時の溶融粘度が高くなり、フィルムの成形性が低下する傾向がある。算出式は実施例の項にて説明する。
【0135】
なお、硬質重合体層の一部には架橋重合体層と結合していない(グラフトしていない)ポリマー(フリーポリマーとも言う)も存在する場合があるが、このフリーポリマーも重合体(B)に含むものとする。
【0136】
(架橋重合体層の説明)
ここでは、重合体(B)がグラフト共重合体である場合の架橋重合体層について説明する。
【0137】
1.「軟質」の架橋重合体層の説明
まず、「軟質」の架橋重合体層について説明する。先述のとおり、「軟質」とは重合体のガラス転移温度が20℃未満であれば良く、ゴム状重合体が好適に使用される。具体的には、ブタジエン系架橋重合体、(メタ)アクリル系架橋重合体、オルガノシロキサン系架橋重合体などが挙げられる。なかでも、非複屈折性樹脂材料、およびフィルムの耐候性(耐光性)、透明性の面で、(メタ)アクリル系架橋重合体が特に好ましい。
【0138】
ここでは、好適な「軟質」の架橋重合体層である、(メタ)アクリル系架橋重合体層に関して、詳細に説明する。
【0139】
(メタ)アクリル系架橋重合体層における(メタ)アクリル系架橋重合体は、(メタ)アクリル系の架橋重合体であれば特に限定されないが、耐割れ性などの耐衝撃性の観点から、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なビニル系単量体50〜0重量%、ならびに多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体の総量100重量部に対して)を重合してなるものが好ましい。単量体成分を全部混合して1段で重合してなる層であってもよいし、単量体組成を変化させて2段以上で重合してなる層であってもよい。
【0140】
ここで用いられるアクリル酸アルキルエステルとしては、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル等があげられ、これらの単量体は1種または2種以上が併用されてもよい。アクリル酸アルキルエステルは、単官能性単量体全体(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体の総量)に対し50〜100重量%が好ましく、60〜100重量%がより好ましく、70〜100重量%が最も好ましい。50重量%未満ではフィルムの耐割れ性が悪化する場合がある。
【0141】
アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な単量体(以下、「共重合可能な単量体」と称することがある。)としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステルがあげられ、重合性やコストの点よりアルキル基の炭素数1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等があげられる。また、他の共重合可能な単量体としては、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルおよびその誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩等があげられる。これらの単量体は2種以上が併用されてもよい。
【0142】
上述の単官能性単量体は、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体と共重合されるため、得られる重合体が架橋体(ゴム)となる。ここで用いられる多官能性単量体としては、アリルメタクリレ−ト、アリルアクリレ−ト、トリアリルシアヌレ−ト、トリアリルイソシアヌレ−ト、ジアリルフタレ−ト、ジアリルマレ−ト、ジビニルアジペ−ト、ジビニルベンゼン
、エチレングリコ−ルジメタクリレ−ト
、エチレングリコ−ルジアクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、ジエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジメタクリレ−ト、トリエチレングリコ−ルジアクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリアクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラメタクリレ−ト、テトラメチロ−ルメタンテトラアクリレ−ト、ジプロピレングリコ−ルジメタクリレ−トおよびジプロピレングリコ−ルジアクリレ−ト等があげられ、これらは2種以上が併用されてもよい。
【0143】
単官能性単量体に対する多官能性単量体の添加量は、単官能性単量体の総量100重量部に対して、0.05〜10重量部が好ましく、0.1〜5重量部がより好ましい。多官能性単量体の添加量が0.05重量部未満では、架橋体を形成できない傾向があり、10重量部を超えても、フィルムの耐割れ性が低下する傾向がある。
【0144】
2.「硬質」の重合体層の説明
ここでは「硬質」の
重合体層について説明する。先述のとおり、「硬質」とは、重合体のガラス転移温度が20℃以上であるものを示す。
【0145】
ガラス転移温度が20℃以上になるものであれば特に制限はなく、具体的には、前記「軟質」の架橋重合体層の説明で記載したモノマーを適宜使用することが出来る。
【0146】
(硬質重合体層の説明)
先述のとおり、硬質重合体層を形成する「硬質」の重合体に必要な特性として、(1)重合体(B)をマトリックス(樹脂(A))中に均一に分散させること、および、(2)樹脂(A)が有している複屈折を打ち消して、本発明の非複屈折性樹脂材料、およびフィルムの光学的等方性を高める役割がある。
【0147】
(1)に関しては、マトリックス成分と相溶しやすいポリマーになるように、適宜モノマーを選択し、重合することで達成することができる。
【0148】
(2)に関しては、延伸工程を経ないなど、フィルム等の成形体中の配向複屈折があまり大きくなく、課題とならない場合には、成形体の光弾性定数が極めて小さくなるように、硬質の重合体の光弾性定数をマトリックス(樹脂(A))に対して異符号にすることで達成することができる。また、延伸工程を経るなど、フィルム等の成形体中の配向複屈折が比較的大きく、課題となる場合には、成形体の光弾性定数だけでなく、配向複屈折の両方とも極めて小さくなるように、硬質の重合体の光弾性定数、配向複屈折の両方をマトリックス(樹脂(A))に対して異符号にすることで達成することができる。
【0149】
(2)に関してさらに重要なことは、マトリックスである樹脂(A)の複屈折を打ち消すことができる効果は、「硬質」の重合体層のほうが大きく、架橋構造を有する重合体層は効果が小さいという点である。重合体(B)の架橋重合体層、硬質の重合体層のいずれか、もしくは両方など、特に層を限定せずに、樹脂(A)の複屈折を打ち消す機能を持たせてもよいが、「硬質」重合体層が最も好適である。その理由としては、マトリックス(樹脂(A))が成形時にポリマーが配向する、もしくは応力がかかることでポリマーが配向する場合、マトリックスのポリマー鎖が外力により配向する方向に、重合体(B)のポリマー鎖も配向することで、複屈折を打ち消すことができると考えている。この場合、架橋構造を有する重合体層は外力に対して変形しにくいために、ポリマー鎖が配向しにくく、マトリックスの複屈折を打ち消す効果は小さくなる。もちろん、架橋密度が低ければ外力により変形しやすいので、架橋構造を有する重合体層であってもマトリックスの複屈折を打ち消す効果はある程度期待できるため、架橋重合体層含め、グラフト共重合体のいずれの重合体層に、マトリックスの複屈折を打ち消す機能を持たせても良い。好ましくは、架橋重合体層以外の重合体層が挙げられ、外力により配向しうる重合体層が好ましく、具体的には「硬質」の重合体層で挙げられる。より好ましくは架橋構造を有していない「硬質」の重合体層であり、なおさら好ましくは、重合体(B)の外層であり、マトリックスと直接接触しやすい部位にある、架橋構造を有していない「硬質」の重合体層である。
【0150】
樹脂(A)が有している複屈折を打ち消して、本発明の非複屈折性樹脂材料、およびフィルムの光学的等方性を高める効果が高い重合体(B)の外層に位置する「硬質」の重合体層を例として、以下に説明することにする。
【0151】
重合体(B)の硬質重合体層に使用され、樹脂(A)の光弾性複屈折を打ち消すのに適したモノマー種に関しては、樹脂(A)と重合体(B)の各々の光弾性定数が異符号となるように選択すればよい。
【0152】
ポリマーの光弾性定数を設定する上で、参考になる具体的なモノマーの例を以下に記すが、これらに限定されるわけではない。([ ]内は対応するホモポリマーの光弾性定数)
正の光弾性複屈折を示すモノマー:
ベンジルメタクリレート [48.4×10
-12Pa
-1]
ジシクロペンタニルメタクリレート [6.7×10
-12Pa
-1]
スチレン [10.1×10
-12Pa
-1]
パラクロロスチレン [29.0×10
-12Pa
-1]
負の光弾性複屈折を示すモノマー:
メチルメタクリレート [-4.3×10
-12Pa
-1]
2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート [-1.7×10
-12Pa
-1]
2,2,2−トリクロロエチルメタクリレート [-10.2×10
-12Pa
-1]
イソボルニルメタクリレート [-5.8×10
-12Pa
-1]
共重合体ポリマーの光弾性定数は、共重合に用いたモノマー種に対応するそれぞれのホモポリマーの光弾性定数との間に加成性が成り立つことが知られている。例えば、メチルメタクリレート(MMA)とベンジルメタクリレート(BzMA)の2元共重合系については、poly−MMA/BzMA=92/8(wt%)にて光弾性複屈折がほぼゼロになることが報告されている。また、2種以上のポリマー混合(アロイ)についても同様であり、各ポリマーが有する光弾性定数との間に加成性が成り立つ。以上のことから、本発明の非複屈折性樹脂材料、およびフィルムの光弾性複屈折が小さくなるように、樹脂(A)と重合体(B)の光弾性定数を異符号にし、且つその配合量(wt%)を調整することが必要である。
【0153】
また、共重合体ポリマーの配向複屈折は、共重合に用いたモノマー種に対応するそれぞれのホモポリマーの固有複屈折との間に加成性が成り立つことが知られている。また、2種以上のポリマー混合(アロイ)についても同様であり、各ポリマーが有する固有複屈折との間に加成性が成り立つ。重合体(B)の硬質重合体層に使用され、樹脂(A)の配向複屈折を打ち消すのに適したモノマー種に関しては、樹脂(A)と重合体(B)の各々の配向複屈折が異符号となるように選択すればよい。ポリマーの配向複屈折を設定する上で、参考になる具体的なモノマー(そのモノマーからなるホモポリマーの固有複屈折)の例を以下に記すが、これらに限定されるわけではない。なお、固有複屈折とは、ポリマーが完全に一方向に配向した状態のときの複屈折(配向複屈折)である。
【0154】
正の固有複屈折を示すポリマー:
ポリベンジルメタクリレート [+0.002]
ポリフェニレンオキサイド [+0.210]
ビスフェノールAポリカーボネート [+0.106]
ポリビニルクロライド [+0.027]
ポリエチレンテレフタレート [+0.105]
ポリエチレン [+0.044]
負の固有複屈折を示すポリマー:
ポリメチルメタクリレート [−0.0043]
ポリスチレン [−0.100]
以上、一部のポリマーの光弾性定数、配向複屈折のデータを記載したが、ポリマーによっては配向複屈折は「正」、光弾性定数は「負」など、両方の複屈折が同じ符号であるとは限らない。次の表1に一部のホモポリマーの配向複屈折と光弾性複屈折(定数)の符号の例を示す。
【0156】
たとえば、ポリ(MMA/BzMA=82/18(wt%))付近の組成は配向複屈折がほぼゼロとなること、poly(MMA/BzMA=92/8(wt%))付近の組成は光弾性複屈折(定数)がほぼゼロとなることが知られている。このように、樹脂(A)がアクリル系樹脂の場合は、配向複屈折、光弾性定数の両方がともに負になることが多いため、重合体(B)(特には外層の硬質の重合体層)に、配向複屈折も光弾性複屈折の両方の符号が正であるベンジルメタクリレートを使用することで、光弾性複屈折も打ち消しながら、配向複屈折も打ち消すことができ、好適であることがわかる。
【0157】
次に、硬質重合体の詳細なポリマー組成について説明する。
【0158】
マトリックスとなる樹脂(A)の光弾性複屈折、場合によっては配向複屈折を打ち消すという観点、および、機械的強度、耐熱性、フィッシュアイ等の外観欠陥を低減させるために重合体(B)の樹脂(A)中での分散性を向上させる(すなわち、相溶性をあげる)という観点をみたすのであれば、硬質重合体の組成に関しては特に限定はない。そのなかでも特に好適に使用されうるモノマー(単量体)を挙げるとすれば、分子構造中に、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基等の環構造を有するビニル系単量体が好ましく、中でも、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有するビニル系単量体がより好ましい。脂環式構造を有するビニル系単量体においては、その環構造は、多環式構造が好ましく、縮合環式構造がより好ましい。具体的には下記式(4)で表される単量体を構造単位に含むことが好ましい。脂環式構造を有する単量体としては(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、などが挙げられる。また、芳香族基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン等のビニルアレーン類、または(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等を挙げることができる。複素環式構造を有する単量体としては、ペンタメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。なかでも、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルが好ましい。
【0160】
R
9は、水素原子、または、置換もしくは無置換で直鎖状もしくは分岐状の炭素数1〜12のアルキル基を表す。R
10は、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の芳香族基、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の脂環式基であり、単素環式構造または複素環式構造を有する。R
9およびR
10が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、カルボニル基(ケトン構造)、アミノ基、アミド基、エポキシ基、炭素−炭素間の二重結合、エステル基(カルボキシル基の誘導体)、メルカプト基、スルホニル基、スルホン基、及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。なかでも、ハロゲン、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、及びニトロ基からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。lは1〜4の整数を示し、好ましくは1または2である。mは0〜1の整数である。nは0〜10の整数を示し、好ましくは0〜2の整数を示し、より好ましくは0または1である。
【0161】
脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有するビニル系単量体は、脂環式構造、複素環式構造または芳香族基を有する(メタ)アクリル系単量体が好ましく、具体的には、式(4)において、R
9は、置換もしくは無置換で直鎖状または分岐状の炭素数1のアルキル基である、(メタ)アクリレート系単量体であることが好ましい。式(4)において、R
10は、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の芳香族基、または、置換もしくは無置換の炭素数1〜24の脂環式基であり、単素環式構造を有する、(メタ)アクリレート系単量体であることがより好ましい。
【0162】
式(4)において、lは1〜2の整数である、nは0〜2の整数である、(メタ)アクリレート系単量体であることがより好ましい。
【0163】
式(4)で表される(メタ)アクリル系単量体の中でも、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルが好ましい。
【0164】
前記式(4)で表される単量体のなかでも、(メタ)アクリル酸ベンジルが光学的等方性、樹脂(A)との相溶性、成形性の面で最も好ましい。さらには、メタクリル酸ベンジルのほうが、ガラス転移温度が高く、耐熱性の面で好ましい。たとえば、樹脂(A)がアクリル系樹脂の場合、光弾性定数が負であるため、比較的大きな正の光弾性定数を有するメタクリル酸ベンジルを用いることで、メタクリル酸ベンジルの使用量が少なくて済み、また重合体(B)の使用量も少なくて済むなど、非複屈折性樹脂材料の設計自由度が増えるなどのメリットがある。また、成形体の配向複屈折が大きく、実用上問題となるケースにおいても、アクリル系樹脂が配向複屈折/光弾性複屈折ともに負であるのに対して、メタクリル酸ベンジルは配向複屈折/光弾性複屈折ともに正であるため、非複屈折性樹脂材料、およびフィルムの光弾性複屈折を小さくしながら、同時に配向複屈折も小さくすることが可能である。
【0165】
優れた光学的等方性を維持しながら、重合体(B)の分散性を良好にし、フィッシュアイ等の外観欠陥を低減させる観点から、前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体は、前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)を重合してなるものが好ましい。当該硬質重合体層は単量体を全部混合して一段で重合してなるものであってもよく、また単量体組成を変化させて2段以上で重合してなるものであってもよい。
【0166】
本発明においては、前記式(4)で表される単量体として、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチルのいずれでも好適に使用することができ、いずれか1種、もしくは併用して使用することができる。より高い耐熱性を求める用途に対しては、ガラス転移温度の観点からメタクリル酸ベンジルを使用したほうが好ましい。
【0167】
前記式(4)で表される単量体と共重合可能な他の単量体としては、メタクリル酸アルキルエステルが挙げられ、重合性やコストの点よりアルキル基の炭素数1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸オクチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。また、アクリル酸アルキルエステルも好適に用いることができ、重合反応性やコストの点からアルキル基の炭素数が1〜12であるものが好ましく、直鎖状でも分岐状でもよい。その具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸グリシジル等があげられる。また、他の共重合可能な単量体としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ジメチル無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、ブロモ無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸、ジフェニル無水マレイン酸等の無置換及び/又は置換無水マレイン酸類、塩化ビニル、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニルおよびその誘導体、塩化ビニリデン、弗化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸カルシウム等のアクリル酸およびその塩、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸カルシウム等のメタクリル酸およびその塩、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸イソプロピル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ノルマルブチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸ターシャリーブチル等の(ヒドロキシアルキル)アクリル酸エステル等があげられる。これらの単量体は単独、もしくは2種以上が併用されてもよい。なかでも、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステルが好ましく、さらにはアクリル系樹脂(A)との相溶性の点でメタクリル酸メチル、ジッパー解重合を抑制する点でアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、もしくはアクリル酸n−ブチルを用いるのが好ましい。
【0168】
前記式(4)で表される単量体の使用量は、前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体の総量100重量%において1〜100重量%が好ましく、5〜70重量%がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。
【0169】
なお、前記式(4)で表される(メタ)アクリレート単量体を構成単位に有する硬質重合体層には、1分子あたり2個以上の非共役な反応性二重結合を有する多官能性単量体を使用してもよい。ここで、多官能性単量体としては、架橋重合体層に使用され得る多官能性単量体を同様に使用することができる。硬質重合体層における多官能性単量体の使用量(前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能なビニル系単量体の総量100重量部に対して)は、光学的等方性および分散性の観点から、0〜2.0重量部が好ましく、0〜1.0重量部がより好ましく、0〜0.5重量部がさらに好ましく、0〜0.04重量部がなおさら好ましく、0重量部が最も好ましい。
【0170】
重合体(B)は、多層構造中に前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有することが好ましく、硬質の最外層を有する場合に、この最外層に前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有することがより好ましい。硬質の最外層に有することにより、アクリル系樹脂(A)とより相溶しやすくなり、配向複屈折および光弾性定数をより小さくでき、さらに光学的等方性に優れるフィルムを得やすくなる。この硬質の最外層の内側に、(メタ)アクリル系架橋重合体層((メタ)アクリル系ゴム)を有する軟質層が隣接していてもよい。
【0171】
重合体(B)は、(メタ)アクリル系架橋重合体層および前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を各々少なくとも1層有する多層構造重合体であることが好ましい。重合体(B)の好ましい一形態を例示すれば、軟質の内層および硬質の外層を有し、上記内層が(メタ)アクリル系架橋重合体層を有し、上記外層が前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有する形態を挙げることができる。この形態は生産性の観点から好ましい。その他の好ましい一形態を例示すれば、重合体(B)が、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層を有し、上記内層が少なくとも一種の硬質重合体層からなり、上記中間層が(メタ)アクリル系架橋重合体層からなる軟質重合体層を有し、上記外層が前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体層を有する形態を挙げることができ、この形態はさらに軟質の最内層を有していてもよい。本発明においては、これらを適宜1種、または2種以上を組合せて使用することができる。
【0172】
本願における、軟質の内層、軟質の中間層および軟質層(以下、軟質層)は、少なくとも1種の軟質重合体からなる内層、中間層および層のことをいう。
【0173】
一方、本願における、硬質の(最)外層および硬質の内層は、少なくとも1種の硬質重合体からなる(最)外層および内層のことをいう。ここでいう「軟質」および「硬質」とは、上述した「軟質」および「硬質」と同様である。
【0174】
重合体(B)が、例えば、硬質の内層、軟質の中間層および硬質の外層からなる多層構造体のように、最内層に硬質層を有する場合は、最内層の硬質重合体としては、硬度や耐割れ性バランスの観点から、メタクリル酸エステル40〜100重量%、アクリル酸エステル0〜60重量%、芳香族ビニル系単量体0〜60重量%、多官能性単量体0〜10重量%、ならびにメタクリル酸エステル、アクリル酸エステル、および芳香族ビニル系単量体と共重合可能なビニル系単量体0〜20重量%からなる硬質重合体が好適に例示されうる。
【0175】
重合体(B)は、例えば、(メタ)アクリル系架橋重合体層を有する軟質の内層、および、前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する重合体層を有する硬質の外層からなる多層構造体である場合、軟質の内層を外層の硬質重合体が完全に被覆した層構造が一般的であるが、軟質の内層と硬質の外層の重量比等によっては、層構造を形成するための硬質重合体量が不充分な場合もありうる。そのような場合は、完全な層構造である必要はなく、軟質の内層の一部を外部となる硬質重合体が被覆した構造、或いは軟質の内層の一部に外部となる硬質重合体がグラフト重合した構造も好適に用いることができる。なお、その他形態の多層構造体についても同様のことが当てはまる。
【0176】
重合体(B)の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径は、20〜450nmが好ましく、20〜300nmがより好ましく、20〜150nmが更に好ましく、30〜80nmが最も好ましい。20nm未満では耐割れ性が悪化する場合がある。一方、450nmを超えると透明性が低下する場合がある。さらに、耐折り曲げ白化性の観点から、80nm未満にすることが好ましい。また、トリミング性の観点からは、20〜450nmが好ましく、50〜450nmがより好ましく、60〜450nmがより好ましく、100〜450nmが更に好ましい。なお、体積平均粒子径は、動的散乱法により、例えば、MICROTRAC UPA150(日機装株式会社製)を用いることにより測定することができる。ここで、重合体(B)の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径とは、具体的には、重合体(B)粒子の中心から(メタ)アクリル系架橋重合体層までの粒子の体積平均粒子径を指す。重合体(B)が(メタ)アクリル系架橋重合体層を2層以上有する場合は、中心に対して最も外側に位置する(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径をいうものとする。
【0177】
重合体(B)中のアクリル系架橋重合体の含有量は、重合体(B)を100重量%とした場合、10〜90重量%が好ましく、20〜80重量%がより好ましく、30〜60重量%がさらに好ましく、35〜55重量%が最も好ましい。10重量%未満では、得られる非複屈折性樹脂材料の耐割れ性等の機械的強度が低くなる場合がある。一方、90重量%を上回ると、重合体(B)の分散性が損なわれ、成形体の表面の平滑性が得られず、フィッシュアイ等の外観不良が発生する傾向がある。また、硬質重合体の含有量が十分ではなく、配向時の複屈折や光弾性定数が大きくなるなど光学的等方性を保てなくなる傾向がある。
【0178】
重合体(B)の製造方法は特に限定されず、公知の乳化重合法、乳化−懸濁重合法、懸濁重合法、塊状重合法または溶液重合法が適用可能である。重合体(B)の重合については乳化重合法が特に好ましい。
【0179】
重合体(B)は、多段重合により得られるものが好ましく、この多段重合の少なくとも1段の重合として、(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子の存在下において、前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体を含有する混合物を重合することによって得られる、多段重合の(メタ)アクリル系ゴム含有グラフト共重合体を好ましく使用できる。
【0180】
前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体を含有する混合物は、前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体の総量100重量%において、前記式(4)で表される単量体の含有量が1〜100重量%が好ましく、5〜70重量%がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。この混合物には多官能性単量体を含有させてもよく、前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して、単官能性単量体を0〜2.0重量部使用することが好ましく、0〜1.0重量部がより好ましく、0〜0.5重量部がさらに好ましく、0〜0.04重量部がなおさら好ましく、0重量部が最も好ましい。ここでの混合物の重合により、前記式(4)で表される単量体を構成単位に有する硬質重合体が形成される。前記式(4)で表される単量体と共重合可能な他の単量体は、上述の例示と同様であり、同様に好ましく使用できる。前記式(4)で表される単量体と共重合可能な他の単量体の好ましい含有量についても同様である。また、多官能性単量体についても、上述の例示と同様であり、同様に好ましく使用できる。
【0181】
(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子は、少なくとも(メタ)アクリル系ゴムを含有する多段重合体粒子であればよく、アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能な他の単量体50〜0重量%、ならびに多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)を重合してなるゴム((メタ)アクリル系架橋重合体)部を有することが好ましい。ゴム部は、単量体成分を全部混合して1段で重合してもよいし、単量体組成を変化させて2段以上で重合してもよい。
【0182】
(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子は、多段重合における少なくとも1段の重合として(メタ)アクリル系架橋重合体(ゴム部)が形成されるものであれば特に限定されず、(メタ)アクリル系架橋重合体の重合段階の前および/または後に、硬質重合体の重合を行なっても良い。
【0183】
中でも、生産性の点から、重合体(B)が、(b−1)アクリル酸アルキルエステル50〜100重量%、これと共重合可能な単量体50〜0重量%、および多官能性単量体0.05〜10重量部(アクリル酸アルキルエステルおよびこれと共重合可能な単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子を得、
(b−2)上記(メタ)アクリル系ゴム含有重合体粒子の存在下に、前記式(4)で表される単量体1〜100重量%、これと共重合可能な他の単量体99〜0重量%および多官能性単量体0〜2.0重量部(前記式(4)で表される単量体およびこれと共重合可能な他の単量体の総量100重量部に対して)からなる単量体混合物を重合して、(メタ)アクリル系ゴム含有グラフト共重合体として得られるものを使用するのが好ましい。ここで、(b−1)重合段階の単量体混合物、および/または(b−2)重合段階の単量体混合物は、単量体成分を全部混合して1段で重合してもよいし、単量体組成を変化させて2段以上で重合してもよい。また、(b−1)における、アクリル酸アルキルエステル、これと共重合可能な単量体および多官能性単量体、並びにこれらの好ましい使用量は、上述の(メタ)アクリル酸架橋重合体における例示と同様である。(b−2)における、単量体混合物の成分およびこれらの好ましい使用量は、上述の硬質重合体層における例示と同様である。
【0184】
上述の(メタ)アクリル系ゴム含有グラフト共重合体の(メタ)アクリル系ゴム層までの体積平均粒子径は、上述の重合体(B)の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径と同様に測定されるものであり、好ましい範囲も同様である。
【0185】
重合体(B)を乳化重合により製造する場合には、公知の乳化剤を用いて通常の乳化重合により製造することができる。具体的には、例えばアルキルスルフォン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩等の陰イオン性界面活性剤や、アルキルフェノール類、脂肪族アルコール類とプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとの反応生成物等の非イオン性界面活性剤等が示される。これらの界面活性剤は単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。更に要すれば、アルキルアミン塩等の陽イオン性界面活性剤を使用してもよい。このうち、得られたアクリル系ゴム重合体(B)の熱安定性を向上させる観点から、特にはポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのリン酸エステル塩(アルカリ金属、又はアルカリ土類金属)を用いて重合することが好ましい。
【0186】
乳化重合により得られる多層構造重合体ラテックスは、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、あるいは塩化カルシウム、塩化マグネシウム等の塩、または塩酸、硫酸等の酸を凝固剤として添加することで凝固を行ない、適宜加熱処理等により凝固した樹脂分を水相より分離して、洗浄、乾燥を行なう、等の既知の方法により処理することで、粉末状の多層構造重合体が得られる。重合体ラテックスの凝固により多層構造重合体を得る場合には、凝固剤としては、酸や塩などの公知の凝固剤が使用できるが、得られた共重合体の成形時の熱安定性を向上させる観点からマグネシウム塩、特には硫酸マグネシウムを用いることが特に好ましい。
【0187】
重合体(B)は、非複屈折性樹脂材料100重量部において(メタ)アクリル系架橋重合体((メタ)アクリル系ゴム)が1〜60重量部含まれるように配合されることが好ましく、1〜30重量部がより好ましく、1〜25重量部がさらに好ましい。1重量部未満ではフィルムの耐割れ性、真空成形性が悪化したり、また光弾性定数が大きくなり、光学的等方性に劣ったりする場合がある。一方、60重量部を越えるとフィルムの耐熱性、表面硬度、透明性、耐折曲げ白化性が悪化する傾向がある。
【0188】
樹脂(A)と重合体(B)の配合比率については、前記配合条件を満たしていれば特に問題はなく、また、重合体(B)に含まれるアクリル系架橋重合体の量にもよるが、樹脂(A)と重合体(B)の合計を100重量%とした場合、重合体(B)が1〜99重量%が好ましく、1〜80重量%がより好ましく、1〜60重量%がさらに好ましい。1重量%未満ではフィルムの耐割れ性、真空成形性が悪化したり、また光弾性定数が大きくなり、光学的等方性に劣ったりする場合がある。一方、99重量%を越えるとフィルムの耐熱性、表面硬度、透明性、耐折曲げ白化性が悪化する傾向がある。
【0189】
本発明の非複屈折性樹脂材料は、粒状のままで、または押出機によりペレット状としたのち、加熱しながら押出成形や射出成形、圧縮成形、ブロー成形、紡糸成形等により、用途に適した形状の成形品とすることができる。特にフィルムとして有用であり、例えば、通常の溶融押出法であるインフレーション法やTダイ押出法、あるいはカレンダー法、更には溶剤キャスト法等により良好に加工される。中でも、溶剤を使用しない溶融押出法を用いることが好ましい。溶融押出法によれば、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0190】
本発明の非複屈折性樹脂材料は、成形加工時の複屈折が生じず、実用上問題のない成形体を得られる点から、配向複屈折の値が−15×10
-4〜15×10
-4であることが好ましく、−10×10
-4〜10×10
-4であることがより好ましく、−5×10
-4〜5×10
-4であることがさらに好ましい。さらに、安定した光学特性が得られる点から、−1.7×10
-4〜1.7×10
-4であることが好ましく、−1.6×10
-4〜1.6×10
-4であることがより好ましく、−1.5×10
-4〜1.5×10
-4であることがさらに好ましく、−1.0×10
-4〜1.0×10
-4であることがとりわけ好ましく、−0.5×10
-4〜0.5×10
-4であることが特に好ましく、−0.2×10
-4〜0.2×10
-4であることが最も好ましい。
【0191】
本発明の非複屈折性樹脂材料は、高温高湿などの環境下において成形体に応力がかかった際にも生じる複屈折が小さい点から、光弾性定数が−10×10
-12〜10×10
-12であることが好ましく、−4×10
-12〜4×10
-12であることがより好ましく、−2×10
-12〜2×10
-12であることがさらに好ましく、−1.5×10
-12〜1.5×10
-12であることがよりさらに好ましく、−1×10
-12〜1×10
-12であることがとりわけ好ましく、−0.5×10
-12〜0.5×10
-12であることが特に好ましく、−0.3×10
-12〜0.3×10
-12であることが最も好ましい。光弾性定数が−4×10
-12〜4×10
-12であれば、フィルム化して液晶表示装置に用いても、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
【0192】
また、本発明の非複屈折性樹脂材料は機械的強度が高いことが特徴である。機械的強度は、たとえば引張試験における引張破断点伸度で評価することができ、引張破断点伸度が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることがなおさら好ましく、50%以上であることがことさら好ましく、60%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。上記範囲内の引張破断点伸度を示す本発明の非複屈折性樹脂材料は、成形加工時に割れ等の問題が発生しないなど、生産性に極めて優れる。また、実際に製品として使用する際にも割れ等のトラブルがおこらない。この割れ性については特に引張破断点伸度が相関しており、引張破断点伸度が高いほど、耐割れ性に優れる。
【0193】
必要に応じて、フィルムを成形する際、フィルム両面をロールまたは金属ベルトに同時に接触させる(挟み込む)ことにより、特にガラス転移温度付近の温度に加熱したロールまたは金属ベルトに同時に接触させることにより、表面性のより優れたフィルムを得ることも可能である。また、目的に応じて、フィルムの積層成形や、二軸延伸によるフィルムの改質も可能である。
【0194】
本発明の非複屈折性樹脂材料はTダイ製膜を用いるような高温での成形条件下でも、紫外線吸収剤の飛散による成形機の汚染やフィルム欠陥を発生させることなく、フィルムを製造することができる。
【0195】
以下、本発明に係るフィルムの製造方法の一実施形態として、本発明に係る非複屈折性樹脂材料を溶融押出法により成形してフィルムを製造する方法について詳細に説明する。
【0196】
なお、以下の説明では、溶融押出法で成形されたフィルムを、溶液流延法等の他の方法で成形されたフィルムと区別して、「溶融押出フィルム」と称する。
【0197】
本発明に係る非複屈折性樹脂材料を溶融押出法によりフィルムに成形する場合、まず、本発明に係る非複屈折性樹脂材料を、押出機に供給し、該非複屈折性樹脂材料を加熱溶融させる。
【0198】
非複屈折性樹脂材料は、押出機に供給する前に、予備乾燥することが好ましい。このような予備乾燥を行うことにより、押出機から押し出される樹脂の発泡を防ぐことができる。
【0199】
予備乾燥の方法は特に限定されるものではないが、例えば、原料(すなわち、本発明に係る非複屈折性樹脂材料)をペレット等の形態にして、熱風乾燥機等を用いて行うことができる。
【0200】
また、本発明に係る非複屈折性樹脂材料を成形するための押出機は、好ましくは加熱溶融時に発生する揮発分を除去するための脱揮装置を一つ以上有しているものが好ましい。脱気装置を有する事により、樹脂の発泡や分解劣化反応によるフィルム外観の悪化を軽減することができる。
【0201】
更に、本発明に係る非複屈折性樹脂材料を成形するための溶融押出に際しては、押出機のシリンダに、樹脂材料の供給とともに、窒素やヘリウムなどの不活性ガスを供給する事が好ましい。不活性ガスの供給により、系中の酸素の濃度を低下させ、酸化劣化に伴う分解、架橋、黄変等の外観や品質の劣化を軽減することができる。
【0202】
次に、押出機内で加熱溶融された非複屈折性樹脂材料を、ギアポンプやフィルターを通して、Tダイに供給する。このとき、ギアポンプを用いれば、樹脂の押出量の均一性を向上させ、厚みムラを低減させることができる。一方、フィルターを用いれば、非複屈折性樹脂材料中の異物を除去し、欠陥の無い外観に優れたフィルムを得ることができる。
【0203】
フィルターの種類としては、溶融ポリマーからの異物除去が可能なステンレス製のリーフディスクフィルターを使用するのが好ましく、フィルターエレメントとしてはファイバータイプ、パウダータイプ、あるいはそれらの複合タイプを使用するのが好ましい。フィルターはペレット化時、もしくはフィルム化時に使用する押出機等に好適に使用することができる。
【0204】
次に、Tダイに供給された非複屈折性樹脂材料を、シート状の溶融樹脂として、Tダイから押し出す。そして、該シート状の溶融樹脂を2つの冷却ロールで挟み込んで冷却し、フィルムを成膜することが好ましい。
【0205】
上記シート状の溶融樹脂を挟み込む2つの冷却ロールの内、一方は、表面が平滑な剛体性の金属ロールであり、もう一方は、表面が平滑な弾性変形可能な金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールであることが好ましい。
【0206】
このような剛体性の金属ロールと金属製弾性外筒を備えたフレキシブルロールとで、上記シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却して成膜することにより、表面の微小な凹凸やダイライン等が矯正されて、表面が平滑で厚みムラが5μm以下であるフィルムを得ることができる。
【0207】
なお、本明細書において、「冷却ロール」とは、「タッチロール」および「冷却ロール」を包含する意味で用いられる。
【0208】
上記剛体性の金属ロールとフレキシブルロールとを用いる場合であっても、何れの冷却ロールも表面が金属であるため、成膜するフィルムが薄いと、冷却ロールの面同士が接触して、冷却ロールの外面に傷が付いたり、冷却ロールそのものが破損したりすることがある。
【0209】
そのため、上説したような2つの冷却ロールでシート状の溶融樹脂を挟み込んで成膜する場合、まず、該2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却することで、フィルムが得られる。
【0210】
本発明のフィルムは、非常に靭性が高く柔軟性に富むため、強度向上のために延伸をする必要がなく、延伸工程を省略することによる生産性の向上、コスト面でのメリットがある。本発明のフィルムは、透明性が高く、高い強度を有した10μm以上の厚みを有することが可能である。さらに、延伸による配向複屈折がほぼ発生せず、さらに光学的に等方である。また、真空成形等の2次成形時、高温での使用時等の熱による収縮も小さい。
【0211】
本発明のフィルムは未延伸状態のフィルムとしても上記効果を奏するものであるが、さらに延伸することも可能であり、これにより、強度の向上、膜厚精度の向上を図ることができる。また、適切な延伸条件を選択することにより、実質的に複屈折を生じさせることなく、かつ、ヘイズの増大を実質的に伴うことなく、厚みムラの小さなフィルムを容易に製造することができる。
【0212】
本発明に係るフィルムが延伸フィルムである場合、本発明に係る非複屈折性樹脂材料を一旦、未延伸状態のフィルムに成形し、その後、一軸延伸または二軸延伸を行うことにより、延伸フィルム(一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルム)を製造することができる。例えば、上記2つの冷却ロールで、シート状の溶融樹脂を挟み込んで冷却し、一旦、厚み150μmの未延伸状態のフィルムを取得する。その後、該フィルムを縦横二軸延伸により延伸させ、厚み40μmのフィルムを製造すればよい。
【0213】
本明細書では、説明の便宜上、本発明に係る非複屈折性樹脂材料をフィルム状に成形した後、延伸を施す前のフィルム、すなわち未延伸状態のフィルムを「原料フィルム」と称する。
【0214】
原料フィルムを延伸する場合、原料フィルムを成形後、直ちに、該原料フィルムの延伸を連続的に行ってもよいし、原料フィルムを成形後、一旦、保管または移動させて、該原料フィルムの延伸を行ってもよい。
【0215】
なお、原料フィルムに成形後、直ちに該原料フィルムを延伸する場合、フィルムの製造工程において、原料フィルムの状態が非常に短時間(場合によっては、瞬間)にて延伸してもよく、一旦原料フィルムを製造したのち、時間を開けて延伸してもよい。
【0216】
本発明のフィルムを延伸フィルムとする場合は、上記原料フィルムは延伸されるのに充分な程度のフィルム状を維持していればよく、完全なフィルムの状態である必要はない。
【0217】
原料フィルムを延伸する方法は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の延伸方法を用いればよい。具体的には、例えば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、及びこれらを逐次組み合わせた逐次二軸延伸等を用いることができる。
【0218】
また、縦と横とを同時に延伸する同時二軸延伸方法を用いたり、ロール縦延伸を行った後、テンターによる横延伸を行う方法を用いたりすることもできる。
【0219】
原料フィルムを延伸するとき、原料フィルムを一旦、延伸温度より0.5℃〜5℃、好ましくは1℃〜3℃高い温度まで予熱した後、延伸温度まで冷却して延伸することが好ましい。
【0220】
上記範囲内で予熱することにより、原料フィルムの厚みを精度よく保つことができ、また、延伸フィルムの厚み精度が低下したり、厚みムラが生じたりすることがない。また、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりすることがない。
【0221】
一方、原料フィルムの予熱温度が高すぎると、原料フィルムがロールに貼り付いたり、自重で弛んだりするといった弊害が発生する傾向にある。また、原料フィルムの予熱温度と延伸温度との差が小さいと、延伸前の原料フィルムの厚み精度を維持しにくくなったり、厚みムラが大きくなったり、厚み精度が低下したりする傾向がある。
【0222】
なお、本発明に係る非複屈折性樹脂材料は、原料フィルムに成形後、延伸する際、ネッキング現象を利用して、厚み精度を改善することが困難である。したがって、本発明では、上記予熱温度の管理を行うことは、得られるフィルムの厚み精度を維持したり、改善したりするためには重要となる。
【0223】
原料フィルムを延伸するときの延伸温度は、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムに要求される機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、変更すればよい。
【0224】
一般的には、DSC法によって求めた原料フィルムのガラス転移温度をTgとした時に、(Tg−30℃)〜(Tg+30℃)の温度範囲とすることが好ましく、(Tg−20℃)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがより好ましく、(Tg)〜(Tg+20℃)の温度範囲とすることがさらに好ましい。
【0225】
延伸温度が上記温度範囲内であれば、得られる延伸フィルムの厚みムラを低減し、さらに、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を良好なものとすることができる。また、フィルムがロールに粘着するといったトラブルの発生を防止することができる。
【0226】
一方、延伸温度が上記温度範囲よりも高くなると、得られる延伸フィルムの厚みムラが大きくなったり、伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質が十分に改善できなかったりする傾向がある。さらに、フィルムがロールに粘着するといったトラブルが発生しやすくなる傾向がある。
【0227】
また、延伸温度が上記温度範囲よりも低くなると、得られる延伸フィルムのヘイズが大きくなったり、極端な場合には、フィルムが裂けたり、割れたりするといった工程上の問題が発生したりする傾向がある。
【0228】
上記原料フィルムを延伸する場合、その延伸倍率もまた、特に限定されるものではなく、製造する延伸フィルムの機械的強度、表面性、および厚み精度等に応じて、決定すればよい。延伸温度にも依存するが、延伸倍率は、一般的には、1.1倍〜3倍の範囲で選択することが好ましく、1.3倍〜2.5倍の範囲で選択することがより好ましく、1.5倍〜2.3倍の範囲で選択することがさらに好ましい。
【0229】
延伸倍率が上記範囲内であれば、フィルムの伸び率、引裂伝播強度、および耐揉疲労等の力学的性質を大幅に改善することができる。それゆえ、厚みムラが5μm以下であり、複屈折が実質的にゼロであり、さらに、ヘイズが2.0%以下である延伸フィルムを製造することもできる。
【0230】
本発明に係るフィルムは、必要に応じて、粘着剤等により別のフィルムをラミネートしたり、表面にハードコート層等のコーティング層を形成させたりして用いることができる。
【0231】
本発明の非複屈折性樹脂材料には、必要に応じて、ポリグルタルイミドアクリル系樹脂、無水グルタル酸アクリル系樹脂、ラクトン環化アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等を配合することも可能である。ブレンドの方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0232】
本発明の非複屈折性樹脂材料は、配向複屈折を調整する意味合いで、特許第3648201号や特許第4336586号に記載の複屈折性を有する無機微粒子や、特許第3696649号に記載の複屈折性を有する、分子量5000以下、好ましくは1000以下の低分子化合物を適宜配合してもよい。
【0233】
また、本発明の非複屈折性樹脂材料は、樹脂(A)と重合体(B)を各々少なくとも1種類含むものであればよく、本発明の目的を満たす範囲であれば、1種以上の他の樹脂を特に制限なく添加することができる。他の樹脂としては、たとえば、樹脂(A)で挙げられた熱可塑性樹脂、コアシェルポリマー、グラフト共重合体などの多層構造重合体、ブロックポリマーなどの熱可塑性エラストマー、などが挙げられる。
【0234】
本発明の非複屈折性樹脂材料は、必要に応じて、光安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、艶消し剤、光拡散剤、着色剤、染料、顔料、帯電防止剤、熱線反射材、滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、安定剤、フィラー等の公知の添加剤、または、その他の樹脂を含有しても良い。
【0235】
本発明のフィルムは、必要に応じて、公知の方法によりフィルム表面の光沢を低減させることができる。例えば、非複屈折性樹脂材料に無機充填剤または架橋性高分子粒子を混練する方法等で実施することが可能である。また、得られるフィルムをエンボス加工により、フィルム表面の光沢を低減させることも可能である。
【0236】
本発明のフィルムは、金属、プラスチックなどに積層して用いることができる。フィルムの積層方法としては、積層成形や、鋼板などの金属板に接着剤を塗布した後、金属板にフィルムを載せて乾燥させ貼り合わせるウエットラミネートや、ドライラミネート、エキストルージョンラミネート、ホットメルトラミネートなどがあげられる。
【0237】
プラスチック部品にフィルムを積層する方法としては、フィルムを金型内に配置しておき、射出成形にて樹脂を充填するインサート成形またはラミネートインジェクションプレス成形や、フィルムを予備成形した後に金型内に配置し、射出成形にて樹脂を充填するインモールド成形などがあげられる。
【0238】
本発明のフィルムの積層品は、自動車内装材,自動車外装材などの塗装代替用途、窓枠、浴室設備、壁紙、床材などの建材用部材、日用雑貨品、家具や電気機器のハウジング、ファクシミリ、ノートパソコン、コピー機などのOA機器のハウジング、携帯電話、スマートフォン、タブレットなどの端末の液晶画面の前面板や、電気または電子装置の部品などに使用することができる。
【0239】
本発明のフィルムは、その耐熱性、透明性、柔軟性等の性質を利用して、以下の各種用途に使用することができる。具体的には、自動車内外装、パソコン内外装、携帯内外装、太陽電池内外装、太陽電池バックシート;カメラ、VTR、プロジェクター用の撮影レンズ、ファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤー、DVDプレイヤー、MDプレイヤーなどにおける光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CD、DVD、MDなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、拡散板、バックシート、反射シート、偏光子保護フィルム、偏光フィルム透明樹脂シート,位相差フィルム,光拡散フィルム、プリズムシートなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライト、テールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡、コンタクトレンズ、内視鏡用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路標識、浴室設備、床材、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓、カーポート、照明用レンズ、照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)、家電製品のハウジング、玩具、サングラス、文房具などに使用することができる。また、転写箔シートを使用した成形品の代替用途としても使用できる。
【0240】
本発明における非複屈折性樹脂材料のフィルム以外の成形品の使用用途としては、例えば、一般カメラ用レンズ,ビデオカメラ用レンズ,レーザーピックアップ用の対物レンズ,回折格子,ホログラム,及びコリメータレンズ,レーザープリンター用のfθレンズ,シリンドリカルレンズ,液晶プロジェクター用のコンデンサーレンズや投射レンズ,フレネルレンズ,眼鏡用レンズ等のレンズ、コンパクトディスク(CD,CD−ROM等)、ミニディスク(MD)、DVD用のディスク基板、液晶用導光板、液晶用フィルム、LCD用基板,液晶素子結合用接着剤等の液晶素子用部材、プロジェクター用スクリーン、光学フィルター、光ファイバー、光導波路、プリズム、照明用レンズ、自動車ヘッドライト、滅菌処理の必要な医療用品、電子レンジ調理容器、家電製品のハウジング、玩具またはレクリエーション品目などが挙げられる。
【0241】
本発明に係るフィルムは、配向複屈折が−1.7×10
-4〜1.7×10
-4、光弾性定数が−4×10
-12〜4×10
-12で、引張破断点伸度が10%以上を満たしながら、10μm以上500μm以下の厚みを持たせることができる。中でも、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に特に好適に用いることができる。
【0242】
本発明のフィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。すなわち、本発明に係るフィルムは、偏光板の偏光子保護フィルムとして用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
【0243】
本発明のフィルムは、必要に応じて、表面処理が施されたものであってもよい。例えば、本発明のフィルムの表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、本発明のフィルムの表面に別のフィルムをラミネートしたりして用いる場合、本発明のフィルムに表面処理を施すことが好ましい。このような表面処理を施すことにより、本発明のフィルムと、コーティング材またはラミネートされる別のフィルムとの間の密着性を向上させることができる。
【0244】
なお、本発明のフィルムに対する表面処理の目的は上記に限定されない。本発明のフィルムは、その用途に関係なく、表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は特に限定されないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射、アルカリ処理等を挙げることができる。中でも、コロナ処理が好ましい。
【0245】
本発明のフィルムの厚みは特に限定されないが、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがさらに好ましく、200μm以下であることが特に好ましい。また、10μm以上であることが好ましく、30μm以上であることがより好ましく、50μm以上であることがさらに好ましく、100μm以上であることが特に好ましい。フィルムの厚みが上記範囲内であれば、当該フィルムを用いて真空成形を実施する際に変形しにくく、深絞り部での破断が発生しにくいという利点があり、さらに、光学特性が均一で、透明性が良好なフィルムを製造することができる。一方、フィルムの厚みが上記範囲を越えると、成形後のフィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、フィルムの取扱が困難になることがある。
【0246】
本発明のフィルムは、ヘイズ値が2.0%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましく、0.8%以下であることがさらに好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。本発明のフィルムのヘイズ値が上記範囲内であれば、フィルムの透明性を十分に高く、透明性が要求される光学用途、加飾用途、インテリアー用途、または、真空成形用途で好適である。
【0247】
本発明のフィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。全光線透過率が上記範囲内であれば、フィルムの透明性を十分に高く、透明性が要求される光学用途、加飾用途、インテリアー用途、または、真空成形用途で好適に用いることができる。
【0248】
本発明のフィルムは、ガラス転移温度が100℃以上が好ましく、115℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることがさらに好ましく、124℃以上であることがなおさら好ましい。ガラス転移温度が上記範囲内であれば、十分に耐熱性が優れたフィルムを得ることができる。
【0249】
本発明のフィルムは、引張破断点伸度が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることがなおさら好ましく、50%以上であることがとりわけ好ましく、60%以上であることが特に好ましく、90%以上であることが最も好ましい。上記範囲内の引張破断点伸度を示す本発明のフィルムは、当該フィルムをトムソン刃またはカッター刃で切り抜く時にクラックが発生しにくいこと(トリミング性)、および、当該フィルムをロールに巻き取る時、または、当該フィルムの表面に対しコーティング、蒸着、スパッタリング、保護フィルムの貼り合わせ等の後加工をする時に、破断しにくい。またフィルムを折り曲げたときの耐割れ性が高く、後加工工程のみならず、実際に製品として使用する際にも割れ等のトラブルがおこらない。この割れ性については特に引張破断点伸度が相関しており、引張破断点伸度が高いほど、耐割れ性に優れる。
【0250】
本発明のフィルムは上述のとおり光学フィルムとして使用することができる。この場合、特に偏光子保護フィルムとして使用する場合、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差、および、厚み方向位相差の絶対値がともに小さいことが好ましい。より具体的には、面内位相差は10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがより好ましく、3nm以下であることがさらに好ましい。また、厚み方向位相差の絶対値は50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、5nm以下であることが最も好ましい。このような位相差を有するフィルムは、液晶表示装置の偏光板が備える偏光子保護フィルムとして好適に使用することができる。一方、フィルムの面内位相差が10nmを超えたり、厚み方向位相差の絶対値が50nmを超えたりすると、液晶表示装置の偏光板が備える偏光子保護フィルムとして用いる場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0251】
位相差は複屈折をベースに算出される指標値であり、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthがともに0となる。
【0252】
Re=(nx−ny)×d
Rth=((nx+ny)/2−nz)×d
上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内において伸張方向(ポリマー鎖の配向方向)をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さを表し、nx−nyは配向複屈折を表す。なお、溶融押出フィルムの場合は、MD方向がX軸、さらに延伸フィルムの場合は延伸方向がX軸となる。
【0253】
本発明の非複屈折性樹脂材料からなる成形体は、配向複屈折の値が、−15×10
-4〜15×10
-4であることが好ましく、−10×10
-4〜10×10
-4であることがより好ましく、−5×10
-4〜5×10
-4であることがさらに好ましく、−1.6×10
-4〜1。6×10
-4であることがなおさら好ましく−1×10
-4〜1×10
-4であることがとりわけ好ましく、−0.5×10
-4〜0.5×10
-4であることが特に好ましく、−0.2×10
-4〜0.2×10
-4であることが最も好ましい。配向複屈折が上記範囲内であれば、成形加工時の複屈折が生じることなく、実用上問題ない成形体を得ることができる。
【0254】
また、本発明の非複屈折性樹脂材料からなるフィルムは、配向複屈折の値が、−1.7×10
-4〜1.7×10
-4であることが好ましく、−1.6×10
-4〜1.6×10
-4であることがより好ましく、−1.5×10
-4〜1.5×10
-4であることがさらに好ましく、−1.0×10
-4〜1.0×10
-4であることがなおさら好ましく、−0.5×10
-4〜0.5×10
-4であることが特に好ましく、−0.2×10
-4〜0.2×10
-4であることが最も好ましい。配向複屈折が上記範囲内であれば、成形加工時の複屈折が生じることなく、安定した光学特性を得ることができる。また液晶ディスプレイ等に使用される光学フィルムとしても非常に適している。
【0255】
本発明の非複屈折性樹脂材料からなる成形体は、光弾性定数が、−10×10
-12〜10×10
-12であることが好ましく、−4×10
-12〜4×10
-12であることがより好ましく、−2×10
-12〜2×10
-12であることがさらに好ましく、−1×10
-12〜1×10
-12であることがよりさらに好ましく、−0.5×10
-12〜0.5×10
-12であることがさらに好ましく、−0.3×10
-12〜0.3×10
-12であることが最も好ましい。光弾性定数が上記範囲内であれば、高温高湿などの環境下において成形体に応力がかかった際にも生じる複屈折が小さく、実用上問題ない成形体を得ることができる。
【0256】
また、本発明の非複屈折性樹脂材料からなるフィルムは、光弾性定数が、−4×10
−12Pa
−1〜4×10
−12Pa
−1が好ましく、−1.5×10
−12Pa
−1〜1.5×10
−12Pa
−1であることがより好ましく、−1.0×10
−12Pa
−1〜1.0×10
−12Pa
−1であることがさらに好ましく、−0.5×10
−12Pa
−1〜0.5×10
−12Pa
−1であることがなおさら好ましく、−0.3×10
−12Pa
−1〜0.3×10
−12Pa
−1以下であることが最も好ましい。光弾性定数が上記範囲内であれば、本発明に係るフィルムを液晶表示装置に用いても、高温高湿などの環境下において成形体に応力がかかった際にも生じる複屈折が小さく、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
【実施例】
【0257】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下で「部」および「%」は、特記ない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。
【0258】
(グラフト共重合体の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径)
グラフト共重合体の(メタ)アクリル系架橋重合体層までの体積平均粒子径(アクリル系ゴム粒子の体積平均粒子径)は、アクリル系ゴム粒子ラテックスの状態で測定した。測定装置として、日機装株式会社製のMICROTRAC UPA150を用いて体積平均粒子径(μm)を測定した。
【0259】
(重合転化率)
まず、得られたスラリーの一部を採取・精秤し、それを熱風乾燥器中で120℃、1時間乾燥し、その乾燥後の重量を固形分量として精秤した。次に、乾燥前後の精秤結果の比率をスラリー中の固形成分比率として求めた。最後に、この固形成分比率を用いて、以下の計算式により重合転化率を算出した。なお、この計算式において、連鎖移動剤は仕込み単量体として取り扱った。
【0260】
重合転化率(%)
=〔(仕込み原料総重量×固形成分比率−水・単量体以外の原料総重量)/仕込み単量体重量〕×100
(グラフト率)
得られた重合体(B)2gをメチルエチルケトン50mlに溶解させ、遠心分離機(日立工機(株)製、CP60E)を用い、回転数30000rpmにて1時間遠心分離を行い、不溶分と可溶分とを分離した(遠心分離作業を合計3セット)。得られた不溶分を用いて、次式によりグラフト率を算出した。
【0261】
グラフト率(%)={(メチルエチルケトン不溶分の重量−架橋重合体層の重量)/架橋重合体層の重量}×100
なお、架橋重合体層の重量は、架橋重合体層を構成する単官能性単量体の仕込み重量である。
【0262】
(イミド化率)
イミド化率の算出は、IRを用いて下記の通り行った。生成物のペレットを塩化メチレンに溶解し、その溶液について、SensIR Tecnologies社製TravelIRを用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。得られたIRスペクトルより、1720cm
−1のエステルカルボニル基に帰属する吸収強度(Absester)と、1660cm
−1のイミドカルボニル基に帰属する吸収強度(Absimide)との比からイミド化率(Im%(IR))を求めた。ここで、「イミド化率」とは、全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0263】
(グルタルイミド単位の含有量)
1H−NMR BRUKER AvanceIII(400MHz)を用いて、樹脂の
1H−NMR測定を行い、樹脂中のグルタルイミド単位またはエステル単位などの各モノマー単位それぞれの含有量(mol%)を求め、当該含有量(mol%)を、各モノマー単位の分子量を使用して含有量(重量%)に換算した。
【0264】
(酸価)
得られたグルタルイミドアクリル系樹脂0.3gを37.5mlの塩化メチレンおよび37.5mlのメタノールの混合溶媒の中で溶解した。フェノールフタレインエタノール溶液を2滴加えた後に、0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を5ml加えた。過剰の塩基を0.1N塩酸で滴定し、酸価を、添加した塩基と中和に達するまでに使用した塩酸との間のミリ当量で示す差で算出した。
【0265】
(屈折率)
各組成物の屈折率は、それぞれの組成物をシート状に加工し、JIS K7142に準じて、アタゴ社製アッベ屈折計2Tを用いて、ナトリウムD線波長における屈折率(nD)を測定した。
【0266】
(ガラス転移温度)
セイコーインスツルメンツ製の示差走査熱量分析装置(DSC)SSC−5200を用い、試料を一旦200℃まで25℃/分の速度で昇温した後10分間ホールドし、25℃/分の速度で50℃まで温度を下げる予備調整を経て、10℃/分の昇温速度で200℃まで昇温する間の測定を行い、得られたDSC曲線から積分値を求め(DDSC)、その極大点からガラス転移温度を求めた。
【0267】
(全光線透過率・ヘイズ値)
フィルムの全光線透過率、ヘイズ値は、(株)日本電色工業 NDH−300Aを用い、JIS K7105に記載の方法にて測定した。
【0268】
(膜厚)
フィルムの膜厚は、デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した。
【0269】
(一軸延伸フィルムの作成、および配向複屈折の測定)
未延伸の膜厚125μmの原反フィルムから、25mm×90mmの試験片を切り出し(MD方向に長辺が来るように切り出す)、両短辺を保持してガラス転移温度+30℃にて2分保ち、2倍(100%に延伸とも言う)に長さ方向へ200mm/分の速度で一軸に延伸した(この際、両長辺は固定なし)。その後、得られたフィルムを23℃に冷却し、サンプル中央部分をサンプリングし、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて複屈折(配向複屈折)を測定した。同時に、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth(入射角40°)も測定した。(面内位相差Re、厚み方向位相差Rthに関しては、その詳細を後述する)
なお、重合体(B)単体の一軸延伸フィルム、および配向複屈折の測定に関しては、重合体(B)単品を、190℃でプレスし、膜厚500μmのプレス板を作成した。得られたプレス板中央部から、25mm×90mmの試験片を切り出し、上記記載と同様に測定した。
【0270】
樹脂(A)は、実施例1と同様にして未延伸の膜厚125μmの原反フィルムを製造し、上記記載と同様に測定した。
【0271】
(原反フィルムの配向複屈折)
未延伸の原反フィルム(膜厚125μm)から40mm×40mmの試験片を切り出し、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定した。同時に、面内位相差Re、厚み方向位相差Rth(入射角40°)も測定した。(面内位相差Re、厚み方向位相差Rthに関しては、その詳細を後述する)
(面内位相差Reおよび厚み方向位相差Rth)
膜厚125μmのフィルムから、40mm×40mmの試験片を切り出した。この試験片の面内位相差Reを、自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0゜で測定した。
【0272】
デジマティックインジケーター(株式会社ミツトヨ製)を用いて測定した試験片の厚みd、アッベ屈折計(株式会社アタゴ製 3T)で測定した屈折率n、自動複屈折計で測定した波長590nmでの面内位相差Reおよび40°傾斜方向の位相差値から3次元屈折率nx、ny、nzを求め、厚み方向位相差 Rth=((nx+ny)/2−nz)×d を計算した。なお、測定値に、100(μm)/フィルム厚さ(μm)を掛けて、100μm厚換算値とし、表3に記載した。
【0273】
(光弾性定数)
膜厚125μmのフィルムからTD方向に15mm×90mmの短冊状に試験片を切断した(TD方向に長辺がくるように切り出す)。自動複屈折計(王子計測株式会社製 KOBRA−WR)を用いて、温度23±2℃、湿度50±5%において、波長590nm、入射角0°にて測定した。測定は、フィルムの長辺の一方を固定し、他方は無荷重から4kgfまで0.5kgfずつ荷重をかけた状態で複屈折を測定し、得られた結果から、単位応力による複屈折の変化量を算出した。
【0274】
なお、重合体(B)単体の光弾性定数の測定に関しては、重合体(B)単品を、190℃でプレスし、膜厚500μmのプレス板を作成する。得られたプレス板中央部から、15mm×90mmの試験片を切り出し、上記記載と同様に測定した。
【0275】
樹脂(A)は、実施例1と同様にして未延伸の膜厚125μmの原反フィルムを製造し、上記記載と同様に測定した。
【0276】
(異物評価)
得られたフィルムから1m
2分を切り出し、20μm以上の異物数をマイクロスコープ観察などでカウントし、合計して異物数とした。
○:100個/m
2未満
×:100個/m
2以上
(機械的強度の評価)
機械的強度は、トリミング性評価と、耐割れ性の指標である引張破断点伸度(引張伸び:%)で評価した。
【0277】
トリミング性評価:膜厚125μmのフィルムを、カッターナイフを用いて切断し、次の評価をした。
○:切断面にクラック発生が認められない。
△:切断面にクラック発生が認められる。
×:切断面にクラック発生が著しく認められる。
【0278】
引張破断点伸度:膜厚125μmのフィルムを用いた。引張試験はISO527−3(JIS K 7127)に準拠し、試験片は試験片タイプ5、試験速度はMD方向にて200mm/min、温度23±2℃、湿度50±5%で測定した。
【0279】
(熱安定性)
得られた樹脂組成物を、JIS K7199に準拠した条件下(ダイス温度260℃、剪断速度24sec
−1、キャピラリーダイ径1mm、滞留時間1時間)にて溶融粘度を測定し、滞留時間10分時における溶融粘度に対する滞留時間1時間時における溶融粘度の下記計算式に表される溶融粘度低下率を算出し、熱安定性の指標とした。また、試験後のストランド中に、樹脂の熱分解に由来する発泡の有無も観察した。
溶融粘度低下率=
(滞留時間10分時における溶融粘度−滞留時間1時間時における溶融粘度)/(滞留時間10分時における溶融粘度) × 100 (%)
熱安定性および溶融粘度を以下の基準で評価した。
熱安定性:
○:溶融粘度低下率が20%未満で、ストランド中に発泡なし
×:溶融粘度低下率が20%以上で、ストランド中に発泡あり
溶融粘度:
○:溶融粘度が低く、問題なく押出可能である。
×:溶融粘度が高く、フィルターが破損し、ろ過精度がでない。
【0280】
(製造例1)
<グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)の製造>
原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)を製造した。
【0281】
この製造においては、押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いた。
【0282】
タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機、第2押出機共に直径が75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の噛合い型同方向二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機の原料供給口に原料樹脂を供給した。
【0283】
第1押出機、第2押出機における各ベントの減圧度は−0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。
【0284】
第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極めるために、第1押出機の吐出口、第1押出機と第2押出機間の接続部品の中央部、および、第2押出機の吐出口に樹脂圧力計を設けた。
【0285】
第1押出機において、原料樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機の最高温部の温度は280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とした。定流圧力弁は第2押出機の原料供給口直前に設置し、第1押出機のモノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。
【0286】
第2押出機において、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルを添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機の各バレル温度は260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部とした。更に、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することで、グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)を得た。
【0287】
得られたグルタルイミドアクリル系樹脂(A1)は、一般式(1)で表されるグルタミルイミド単位と、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位が共重合したアクリル系樹脂(A)である。
【0288】
グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)について、上記の方法に従って、イミド化率、グルタルイミド単位の含有量、酸価、ガラス転移温度、および、屈折率を測定した。その結果、イミド化率は13%、グルタルイミド単位の含有量は7重量%、酸価は0.4mmol/g、ガラス転移温度は130℃、屈折率は1.50であった。グルタルイミドアクリル系樹脂(A1)の光弾性定数の符号は−(マイナス)であった。
【0289】
(製造例2)
<グラフト共重合体(B1)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.45部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(B−1)の原料混合物46.391部を225分かけて連続的に添加した。(B−1)追加開始から50分後にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.2部を重合機に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((B−1)の重合物)を得た。重合転化率は99.7%であった。
【0290】
その後、内温を60℃にし、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物55.554部を210分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(B1)を得た。
【0291】
グラフト共重合体(B1)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は73nmであった。グラフト共重合体(B1)のグラフト率は85%であった。
【0292】
(製造例3)
<グラフト共重合体(B2)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.05部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(B−1)の原料混合物45.491部を225分かけて連続的に添加した。(B−1)追加開始から20分後、40分後、60分後にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.2部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((B−1)の重合物)を得た。重合転化率は98.6%であった。
【0293】
その後、内温を60℃にし、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物55.554部を210分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(B2)を得た。
【0294】
グラフト共重合体(B2)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は121nmであった。グラフト共重合体(B2)のグラフト率は56%であった。
【0295】
(製造例4)
<グラフト共重合体(B3)の製造>
表2に示したアクリル系ゴム粒子(B−1)、硬質重合体層(B−2)の組成により製造例2と同様に重合を行い、凝固、水洗、乾燥をして白色粉末状のグラフト共重合体(B3)を得た。
【0296】
グラフト共重合体(B3)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は72nmであった。グラフト共重合体(B3)のグラフト率は87%であった。
【0297】
(製造例5)
<グラフト共重合体(B4)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム 0.58部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(B−1)の原料混合物46.391部を225分かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((B−1)の重合物)を得た。重合転化率は99.7%であった。
【0298】
その後、内温を60℃にし、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム0.2部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物55.554部を210分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを塩化カルシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(B4)を得た。
【0299】
グラフト共重合体(B4)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は72nmであった。グラフト共重合体(B4)のグラフト率は87%であった。
【0300】
(製造例6)
<グラフト共重合体(B5)の製造>
撹拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.05部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(B−1)の原料混合物45.266部を135分かけて連続的に添加した。(B−1)追加開始から12分後、24分後、36分後にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)0.2部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに0.5時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((B−1)の重合物)を得た。重合転化率は99.4%であった。
【0301】
その後、内温を60℃にし、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物55.254部を165分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は100.0%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(B5)を得た。
【0302】
グラフト共重合体(B5)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は133nmであった。グラフト共重合体(B5)のグラフト率は77%であった。
【0303】
(製造例7)
<グラフト共重合体(B6)の製造>
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.05部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(B−1)の原料混合物45.266部を135分かけて連続的に添加した。(B−1)追加開始から12分後、37分後、62分後、87分後にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)を、各0.21部、0.21部、0.21部、0.11部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに1時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((B−1)の重合物)を得た。重合転化率は97.8%であった。
【0304】
その後、内温を60℃にし、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.11部、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物55.254部を165分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は97.2%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(B6)を得た。
【0305】
グラフト共重合体(B6)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は117nmであった。グラフト共重合体(B6)のグラフト率は69%であった。
【0306】
(製造例8)
<グラフト共重合体(B7)の製造>
攪拌機付き8L重合装置に、以下の物質を仕込んだ。
脱イオン水 200部
ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム 0.05部
ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト 0.11部
エチレンジアミン四酢酸−2−ナトリウム 0.004部
硫酸第一鉄 0.001部
重合機内を窒素ガスで充分に置換し実質的に酸素のない状態とした後、内温を40℃にし、表2に示したアクリル系ゴム粒子(B−1)の原料混合物45.266部を135分かけて連続的に添加した。(B−1)追加開始から12分後、37分後、62分後、87分後にポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム(ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸(東邦化学工業株式会社製、商品名:フォスファノールRD−510Yのナトリウム塩)を、各0.21部、0.21部、0.21部、0.11部ずつ重合機に添加した。添加終了後、さらに1時間重合を継続し、アクリル系ゴム粒子((B−1)の重合物)を得た。重合転化率は99.0%であった。
【0307】
その後、内温を60℃にし、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウム0.11部、ソディウムホルムアルデヒドスルフォキシレ−ト0.2部を仕込んだ後、表2に示した硬質重合体層(B−2)の原料混合物55.254部を165分間かけて連続的に添加し、さらに1時間重合を継続し、グラフト共重合体ラテックスを得た。重合転化率は99.4%であった。得られたラテックスを硫酸マグネシウムで塩析、凝固し、水洗、乾燥を行い、白色粉末状のグラフト共重合体(B7)を得た。
【0308】
グラフト共重合体(B7)のゴム粒子(B−1の重合物)の平均粒子径は118nmであった。グラフト共重合体(B7)のグラフト率は85%であった。
【0309】
【表2】
【0310】
(各種樹脂(A)の説明)
A2: メタクリル酸メチル−メタクリル酸共重合体 Altuglas HT−121 (Arkema Inc.)、光弾性定数の符号は−(マイナス)
A3: 無水マレイン酸−スチレン−メタクリル酸メチル共重合体 PLEXIGLAS hw55 (EVONIK INDUSTRIES)、光弾性定数の符号は−(マイナス)
(実施例1〜8、比較例1〜3)
直径40mmのフルフライトスクリューを用いた単軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を255℃、スクリュー回転数を52rpmとし、表3に示すアクリル系樹脂(A)、および重合体(B)の混合物を、10kg/hrの割合で供給した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した。
【0311】
得られたペレットを、目開き5μmのリーフディスクフィルターを備えた、出口にTダイを接続した単軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を260℃、スクリュー回転数を20rpmとし、ペレットを10kg/hrの割合で供給し、溶融押出することにより、表3に示す膜厚のフィルムを得た。これらフィルムについて各種物性を評価した。
【0312】
【表3】
【0313】
表3で示すように、実施例1、7は、耐熱性が高く、透明性も高く、トリミング性などの機械的強度にも優れる。またフィルムの配向複屈折も低く、延伸しても配向複屈折はほとんど発生しない。その上、光弾性定数も極めて小さい値であり、フィルムに応力がかかった際にも複屈折がほぼ発生しないなど、光学異方性が極めて小さいことがわかる。また、熱安定性も高く、溶融粘度が低いために、成形時に5μmなどの目開きの小さいフィルターでのろ過が可能であり、フィッシュアイなどの異物がないフィルムを得ることが可能である。実施例2〜6、8は、実施例1、7で得られた優れた効果に加え、さらに機械的強度が優れていることがわかる。
【0314】
(成形体の作製と物性評価)
比較例4では、A7を100重量部使用した。
A7:PMMA樹脂 スミペックスEX (住友化学株式会社)
比較例5では、比較例3と同様、A1を100重量部使用した。
【0315】
実施例3、および比較例4、5の組成物を、ベント付単軸押出機(HW−40−28:40m/m、L/D=28、田端機械(株)製)を用い、設定温度C1〜C3=200℃、C4=210℃、C5=220℃、D=230℃で押出混練しペレット化した。得られたペレットを90℃で3時間以上乾燥したあと、射出成形機(160MSP−10型、三菱樹脂(株)製)を使用してシリンダー温度T3=235℃、T2=245℃、T1=255℃、ノズル温度N=260℃、射出速度=19.7%、金型=60℃で射出成形して厚み2mmの平板サンプルを得た。得られた平板サンプルについて、透明性の指標として全光線透過率、ヘイズを測定した。
【0316】
また同じ射出成形温度にて、1/4インチのテストピースを作成し、耐衝撃性を評価した。結果を表4に示した。
【0317】
(耐衝撃性)
ASTM D−256に準じて、アイゾット試験(温度23℃、湿度50%)により評価した。
【0318】
【表4】
【0319】
実施例3は、光弾性定数も小さく、且つ耐衝撃性にも優れることがわかる。
【0320】
さらに、得られた平板サンプル内の位相差(Re)の比較をするため、平板サンプルを、2枚の直交する偏光板の間に置き、透過光(光漏れの有無)が観測されるかを確認するクロスニコル試験を実施した。
【0321】
図1〜
図3は、それぞれ実施例3、比較例4および比較例5のクロスニコル試験の結果を示す写真である。一般に射出成形の場合、特にゲート近傍部分において樹脂が配向しやすく、その結果、配向複屈折に起因した光漏れが生じ易い(比較例4、
図2)。
【0322】
一方、
図1に示すように、本発明に係るアクリル系樹脂組成物(実施例3)からなる平板サンプルにおいては、そのような光漏れがほとんど観測されないことが確認された。比較例5に関しても配向複屈折に起因した光漏れが生じていないが、表4に示されるとおり、実施例3は比較例5に比べ、光弾性複屈折(定数)がかなり小さく、さらには耐衝撃性が大幅に優れることがわかる。すなわち、本発明に係るアクリル系樹脂組成物は、極めて高い光学等方性が要求されるレンズ、ピックアップレンズ、レンズアレイなどの射出成形体にも好適な材料である。