【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、好ましい実施態様(項目1)において、二価カチオン結合タンパク質の精製方法であって、
(a)二価カチオンが存在しないか、または低濃度で存在するローディングバッファー中の二価カチオン結合タンパク質を第一アニオン交換樹脂材料にロードし、つづいて任意で1ないし3回の洗浄工程を行い;
(b)二価カチオン結合タンパク質を、二価カチオンおよび対アニオンを含む溶離液で溶出し、二価カチオン結合タンパク質を含有する溶出液を形成し;
(c)得られた溶出液のプールを希釈し、((1)導電性を適宜下げてもよく、)二価カチオンの濃度を上げ;
(d)第二アニオン交換樹脂材料に、工程(c)を行って得られた溶出液をロードし;および
(e)二価カチオン結合タンパク質を含有するフロースルーを採集する
工程を含む、方法に関する。
【0009】
ついては、上記されるような工程(a)は、遊離二価カチオンを含むことなく実施されることが好ましい。この文脈において「遊離」二価カチオンとは錯形成されていない二価カチオンを意味する。すなわち、例えば約1mMのCa
++がEDTAと錯形成して存在するならば、(遊離)二価カチオンは含まれていないものと考えられる。
【0010】
最後の任意の洗浄工程において導電性がまだ下がっていない場合には、導電性を下げる任意の工程C(1)が必要となるだけであり;以下に詳細に記載されるように、導電性を下げるのは洗浄工程3にて実施されるのが好ましい。
【0011】
項目2 ローディング工程の後で、1回または複数回の洗浄工程(1)、(2)および/または(3)を、洗浄バッファー(1)、(2)および/または(3)を用い、二価カチオンは不在であるが、対アニオンの存在下で行う、項目1に記載の方法。
【0012】
好ましい対アニオンは:クロリド(最も好ましい)、アセテート、ホスフェート、サルフェート、カルボネートであるが、これらに限定されるものではない。
【0013】
項目3 ローディングバッファーおよび/または洗浄バッファーの少なくとも1つが工程(b)の溶離液のpHよりもpH単位で少なくとも0.5低いpHを有し、好ましくはローディングバッファーおよび/または洗浄工程(2)のバッファーのいずれかが工程(b)の溶離液のpHよりもpH単位で少なくとも0.5低いpHを有する、項目1または2記載の方法。
【0014】
項目4 工程(b)の溶離液が、工程(a)のローディングバッファーおよび任意の洗浄バッファーの導電性よりも高い導電性を有し、工程(c)にて補充される溶出液が工程(b)の溶離液の導電性よりも低い導電性を有する、項目1〜3のいずれかまたは複数の項目に記載の方法。
【0015】
好ましい実施態様において、溶出バッファーの導電性は16〜25mS/cm(RT)で、好ましくは19〜20mS/cm(TR)である。任意の洗浄工程2が行われる場合(「酸性洗浄」)、導電性は好ましくは14〜19mS/cm(RT)であり、より好ましくは16〜18mS/cm(RT)であり、あらゆる場合で上記した項目4の要件は満たされていなければならない。
【0016】
項目5 工程(b)の少なくとも一つの二価カチオンがCa
2+、Be
2+、Ba
2+、Mg
2+、Mn
2+、Sr
2+、Zn
2+、Co
2+、Ni
2+、およびCu
2+からなる群より、またはその組み合わせより選択される、項目1〜4のいずれかに記載の方法。
【0017】
項目6 第一および第二アニオン交換樹脂材料が、各々、ジエチルアミノエタン(DEAE)、ジメチルアミノエタン(DMAE)、トリメチルアミノエチル(TMAE)、ポリエチレンイミン(PEI)、四級アミノアルキル、四級アミノエタン(QAE)、および四級アンモニウム(Q)からなる群より独立して選択される正に帯電した基を有する、項目1〜5のいずれか一つに記載の方法。
【0018】
項目7 第一および第二アニオン交換樹脂材料が、各々、アミノヘキシル、ベンズアミジン、リシンおよびアルギニンからなる群より独立して選択される、第一級アミンを配位子として担持する、項目1〜6のいずれか一つに記載の方法。
【0019】
項目8 二価カチオン結合タンパク質がカルシウム結合タンパク質である、項目1〜7のいずれか一つに記載の方法。
【0020】
項目9 二価カチオン結合タンパク質がビタミンK−依存性タンパク質である、項目1〜8のいずれか一つに記載の方法。
【0021】
項目10 二価カチオン結合タンパク質が、第II因子、第VII因子、第IX因子、第X因子、プロテインC、プロテインS、アネキシンおよびカルモジュリンからなる群より、特に好ましくは第IX因子(FIX)、第VII因子(FVIIa)およびアネキシンVからなる群より選択される、項目1〜9のいずれか一つに記載の方法。
【0022】
上記のタンパク質のいずれか一つは、天然源、例えば血漿から、あるいは組換え技法によるかのいずれかで誘導され得る。
【0023】
項目11 工程(a)のpHが、任意の洗浄工程が行われる場合で、6.8〜7.5、好ましくは7.0〜7.4であり、任意の洗浄工程が行われない場合では、pHが5.5〜6.5、好ましくは5.9〜6.1である、項目1〜10のいずれか一つに記載の方法。
【0024】
項目12 任意の洗浄工程(3)におけるpHが7.0〜8.2、好ましくは7.3〜8.0、さらにより好ましくは7.3〜7.5である、項目1〜11のいずれか一つに記載の方法。
【0025】
項目13 任意の洗浄工程(1)におけるpHが7.3〜7.5であり、任意の洗浄工程(2)のpHが好ましくは5.5〜6.5、より好ましくは5.9〜6.1である、項目2〜12のいずれか一つに記載の方法。
【0026】
項目14 工程(b)における溶出バッファー(すなわち、溶離液)がカルシウムを含有し、7.5〜8.5(好ましくは7.8〜8.2)のpHを有する、項目1〜13のいずれか一つに記載の方法。
【0027】
項目15 ローディング工程(d)におけるローディングバッファーのpHが、ローディング工程(a)におけるローディングバッファーのpH、またはローディング(a)の後になされる洗浄におけるpHのいずれかよりも高い、上記の項目1〜14のいずれかに、特に項目3に記載の方法。
【0028】
上記の、およびまた下記の文脈において「ローディング(a)の後になされる洗浄」は、本明細書にて「酸性洗浄」または洗浄2をいう。
【0029】
項目16 ローディング工程(d)における導電性が、ローディング(a)の後になされる洗浄における導電性以下である、上記の項目1〜15のいずれかに、特に項目3に記載の方法。
【0030】
項目17 工程(d)におけるローディングバッファーでの二価カチオンの濃度が、工程(b)における溶出バッファーでの二価カチオンの濃度よりも高い、上記の項目1〜16のいずれかに、特に上記の項目3に記載の方法。
【0031】
項目18 得られた溶出液のプールに低導電性を提供する工程が、適切な希釈バッファーで希釈することにより、別法としてバッファー組成を変更することにより、あるいはまた透析、透析濾過またはゲル濾過により行われる、項目1〜17のいずれかに記載の方法。
【0032】
項目19 上記の項目1〜18のいずれか一つに記載の方法により得られる二価カチオン結合タンパク質。
【0033】
項目20 上記の項目1〜18のいずれか一つに記載の方法により得られる(r)FIX。
【0034】
項目21 少なくとも270I.U./mg FIX Agの比活性、好ましくは270〜350I.U./mg FIX Agの比活性、より好ましくは270〜320I.U./mg FIX Agの比活性、特に好ましくは280〜300I.U./mg FIX Agの比活性を有する、項目20に記載の(r)FIX。
【0035】
項目22 約2.5−3の対数減少のCHO HCP減少比率を有する、項目20または21に記載の(r)FIXを含む、医薬組成物。
【0036】
2.5−3の対数減少は、下記の表4からも誘導されるように、CHO HCPの減少全体の対数であり、その表4には、229(工程1から工程2へ)および1.75(工程2から工程3へ)のCHO HCPの減少、すなわち1.75x229=約440(その対数は2.6となる)の減少が示される。
【0037】
項目23 50μg/mg未満のFIX Ag、好ましくは20μg/mg未満のFIX Ag、さらにより好ましくは10μg/mg未満のFIX AgのCHO HCP不純物を含む、項目20または21に記載の(r)FIXを含む医薬組成物、および/または項目22に記載の医薬組成物。
【0038】
項目24 10pg/ml未満のCHO DNA、好ましくは5pg/ml未満のCHO DNA、さらにより好ましくは1pg/ml未満のCHO DNAを含む、項目20または21に記載の(r)FIXを含む医薬組成物、および/または項目22または23に記載の医薬組成物。
【0039】
項目25 (r)FIX組成物が、1mU未満のFIXa(活性化FIX)活性/単位のFIX凝固活性、好ましくは0.75mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性、より好ましくは0.5mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性、さらにより好ましくは0.3mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性を含む、項目20または21に記載の(r)FIXを含む医薬組成物、および/または項目22−24のいずれか一つに記載の医薬組成物。
【0040】
1mUのFIXa活性/単位のFIX凝固活性は、IU/mlのFIX凝固活性当たりの0.1%の発色活性に等しい(後記されるアッセイ方法を参照のこと)。
【0041】
項目26 項目1−18のいずれか一つに記載の方法を行うための手段を含むキット。
【0042】
項目27 1mU未満のFIXa(活性化FIX)活性/単位のFIX凝固活性、好ましくは0.75mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性、より好ましくは0.5mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性、さらにより好ましくは0.3mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性を含む、項目1−18のいずれか一つに記載の方法により得ることのできる(r)FIX組成物。
【0043】
項目28 項目20−24のいずれか一つに記載の1または複数の特性によりさらに特徴付けられる、項目27に記載の(r)FIX組成物。
【0044】
項目29 1mU未満のFIXa(活性化FIX)活性/単位のFIX凝固活性、好ましくは0.75mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性、より好ましくは0.5mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性、さらにより好ましくは0.3mU未満のFIX活性/単位のFIX凝固活性を含む、(r)FIX組成物。
【0045】
項目30 項目20−24のいずれか一つに記載の1または複数の特性によりさらに特徴付けられる、項目29に記載の(r)FIX組成物。
【0046】
特に好ましい実施態様において、本発明は次の方法に関する:
【0047】
好ましくは、溶出(b)は、1.8−2.2mMのカルシウムを含有する溶出バッファー(pH=7.8−8.2)を用いて行われる。
【0048】
好ましくは、工程(c)は、カルシウム含有のバッファーを用いてカルシウム濃度を5−7mMに調整し、導電性を15−18mS/cm(RT)に下げ、その結果としてpHを7.4−7.8として行われる。
【0049】
かくして、本発明はまた、上記した方法により得られる精製された二価カチオン結合タンパク質に、上記した方法を行うための手段を含むキットに関する。したがって、本発明はまた、本発明の方法により得ることができる、あるいは本発明の方法によって得られたFIXに、好ましくは組換えFIXに関する。本発明はまた、FIXまたはFIX組成物に、好ましくは組換えFIXまたはFIX組成物(FIXaの含量が低い)に関する。かかるFIXまたはFIX組成物は本発明の方法により得ることができ、あるいは本発明の方法により得られた。