【文献】
HUANG, Heji, et al.,Laminar/Turbulent Plasma Jets Generated at Reduced Pressure,IEEE Trans Plasma Sci,2008年,Vol.36, No.4,PP.1052-1053,ISSN 0093-3813, DOI:10.1109/TPS.2004.924577
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
非水電解液二次電池の負極は、一般的に、充電によってリチウムイオンを挿入可能な材料からなる活物質の粒子を、バインダー、導電材及び溶剤と混合し、得られた合剤を集電体の表面に塗布して乾燥させて塗膜とし、更にプレス加工を施して製造されている。
【0003】
近年、電気自動車やスマートフォンといったアプリケーションの発達に伴い、電池の高容量化や高寿命化がさらに望まれている。現在、市販されている電池の負極は、そのほとんどがグラファイトを負極活物質として使っているが、容量の面ではすでに理論限界に至っており、新たな負極活物質の開発が必要とされている。その有力候補の一つとして挙げられるのが、シリコンを含有した粉末(「シリコン含有粉末」とも称する)である。
【0004】
シリコン含有粉末は、リチウム二次電池の負極活物質として、質量当たりの容量がグラファイトの5〜10倍というポテンシャルを有している。しかしその反面、グラファイトと比べて電子伝導性が高くないという課題を有している。そこで従来、シリコン含有粉末の電子伝導性を高めるために、例えば集電体と活物質との間の電子伝導性を付与する目的で導電助剤を添加することなどが提案されている。
【0005】
このようなシリコン含有粉末の製造方法として、従来、シリカと、金属シリコンと、必要に応じて炭素とを含む混合原料を、少なくとも8×10
4Pa以上の非窒化性雰囲気下で高温処理してSiO含有ガスを生成させ、それを1000℃/秒以下の冷却速度で冷却する方法(特許文献1)のほか、SiO
2 粉末を不完全燃焼炎中で加熱してSi蒸気を発生させ、それを亜酸化する方法(特許文献2)などが知られていた。
【0006】
特許文献3には、減圧下において、a)SiO気体を発生させる工程、およびb)該SiO気体をSiO粉末として析出させる工程を含むSiO粉末の製造方法であって、前記b)工程は、SiO気体を複数の流路を介してSiO粉末を析出させる析出部へ輸送し、当該析出部で前記流路を合流してSiO気体同士を衝突させつつ固化させる工程であり、かつ前記析出部におけるSiO気体の過飽和度は10以上であることを特徴とするSiO粉末の製造方法が開示されている。
【0007】
ところで、熱プラズマを利用して球状金属粉末を得る技術が知られている。熱プラズマ中に金属粉末を投入し通過させることによって、金属粉末が飛行している短時間のうちに溶融、球状化、凝集が生じて、球状金属粉末を得ることができる。シリコン含有粉末の製造においても、このような熱プラズマを利用した方法が開示されている。
【0008】
例えば特許文献4には、プラズマ中でSiF
4又はSiH
4をAr雰囲気中で分解して、シリコンの微粉末表面にトラップしてシリコン粒子を得る方法が開示されている。
【0009】
また、特許文献5には、原料シリコン粉末を熱プラズマ中に投入して溶融させ、溶融した液滴を熱プラズマ外で凝固させる熱プラズマ処理により球状粉末を得るシリコン球状粉末の製造方法であって、Ar、ヘリウム、N
2から選ばれる1種以上のプラズマ動作ガスに水素ガスを添加しかつ、凝固は液滴に水素を含む冷却ガスを接触させて行なうことを特徴とするシリコン球状粉末の製造方法が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明を実施するための形態の例について説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
<本製造方法>
本実施形態に係るシリコン含有粉末の製造方法(「本製造方法」と称する)は、直流熱プラズマ(「DCプラズマ」とも称する)を利用してシリコン含有粉末を製造する方法である。すなわち、本製造方法は、シリコン(Si)を含む原料粉を、直流熱プラズマを利用して加熱噴射するDCプラズマ工程を備えたシリコン含有粉末の製造方法である。
なお、本製造方法がDCプラズマ工程以外の工程を備えることは任意である。
【0017】
本製造方法で製造するシリコン含有粉末(以下、「本シリコン含有粉末」と称する)は、シリコン(Si)を含有する金属、合金、固溶体又は化合物からなる粒子の粉末を意味する。
本シリコン含有粉末は、Siを主成分とする粉末である。当該「主成分」とは、30原子%以上、中でも50原子%以上、その中でも80原子%以上、その中でも90原子%以上(100原子%を含む)を占める成分を意味する。
よって、本シリコン含有粉末は、例えば、純シリコン(Si)からなる粒子粉末、Siとホウ素(B)との合金からなる粒子粉末、Siとチタン(Ti)との合金からなる粒子粉末、そのほか、Siと「Si以外の金属」との合金からなる粒子粉末なども包含する。
この際、前記「Si以外の元素」としては、例えばP、Ni、Fe、Al、Ca、Co、Cr、Mg、Mn、Mo、W、Ta、In、Zr、Nb、Ge、Sn、Zn、Bi等のうちの少なくとも一種以上の元素成分を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0018】
<原料粉>
原料粉は、シリコン(Si)を含有する粉末であればよい。
Siを含有する粉末としては、Siを主成分とする粉末、Siと「Si以外の元素」との合金、固溶体又は化合物を主成分とする粉末のいずれでもよい。この際「主成分」とは、30原子%以上、中でも50原子%以上、その中でも80原子%以上、その中でも90原子%以上(100原子%を含む)を占める成分を意味する。
好ましい原料粉としては、Siを30原子%以上、中でも50原子%以上、その中でも80原子%以上、その中でも90原子%以上(100原子%を含む)含有するものを挙げることができる。
この際、前記「Si以外の元素」としては、例えばB、Ti、P、Ni、Fe、Al、Ca、Co、Cr、Mg、Mn、Mo、W、Ta、In、Zr、Nb、Ge、Sn、Zn、Bi等のうちの少なくとも一種以上の元素成分を挙げることができる。但し、これらに限定するものではない。
【0019】
この際、原料粉の粒度が大き過ぎると、原料粉の供給性すなわちプラズマへの原料粉の噴射性の観点から好ましくない一方、粒度が小さ過ぎる場合は、原料粉の作製コストの観点から好ましくない。よって、かかる観点から、原料粉の粒度(D50)は0.1μm〜30μmであるのが好ましく、中でも0.2μm以上或いは10μm以下であるのがさらに好ましい。
原料粉の粒子形状は、樹枝状、棒状、フレーク状、キュービック状、もしくは、球状乃至略球状などであればよく、特に制限されるものではない。但し、プラズマトーチへの供給効率を安定化する観点からは、球状乃至略球状であるのが好ましい。
【0020】
<DCプラズマ工程>
DCプラズマ工程では、直流電源を用いたDCプラズマ装置を使用して発生させた熱プラズマ中に原料粉を通過させればよい。
DCプラズマ装置では、プラズマガンから極めて早い速度でプラズマが吹き出しており、その中心部が最も高温で10000℃以上に達する。ガス流速が極めて速いため、粉末表面における熱伝達係数が大きく、かつ、極めて高温な領域を通過するために、原料粉は過熱され、その一部が蒸発し、低温な領域で処理後の粉末表面に再凝集し、ナノサイズの超微粉が発生することになる。
【0021】
数十nmスケールに微粒化したシリコン含有粉末の表面酸化を防ぐために、比表面積を小さくする目的をもって、プラズマ法で数十nmよりも大きなサブミクロンオーダーの粒子を作る試みが行われているが、高周波プラズマを使った製造方法では、生成されるプラズマフレーム長に限界があり、100nm以上の大きな粒子を作製させることは至極困難であった。
また、湿式還元法では、サブミクロンオーダーの粒子を作成することは可能であるが、水溶液中で酸化還元反応を経て製造されるため、表面吸着水等の影響で粒子表面酸化を低減する程度に限界があり、酸素濃度を5wt%以下までに下げることは困難であった。
このような観点から、DCプラズマ装置を使用して、本シリコン含有粉末を作製するのが好ましい。
【0022】
(DCプラズマ装置)
DCプラズマ装置としては、例えば
図1に示すように、粉末供給装置2、チャンバー3、DCプラズマトーチ4、回収ポット5、粉末供給ノズル6、ガス供給装置7及び圧力調整装置8を備えたプラズマ装置1を挙げることができる。
【0023】
この装置においては、原料粉末は、粉末供給装置2から粉末供給ノズル6を通してDCプラズマトーチ4内部を通ることになる。プラズマトーチ4には、ガス供給装置7よりプラズマガスが供給され、プラズマフレームが発生することになる。
また、DCプラズマトーチ4で発生させたプラズマフレーム内で、原料粉末はガス化され、チャンバー3に放出された後、冷却され微粉末となって回収ポット5内に蓄積回収される。
チャンバー3の内部は、圧力調整装置8によって粉末供給ノズル6よりも相対的に陰圧が保持されるように制御され、プラズマフレームを安定して発生する構造をとっている。
但し、これはDCプラズマ装置の一例であって、このような装置に限定するものではない。
【0024】
(プラズマガス)
熱プラズマを発生させる動作ガスとしてのプラズマガスとして、アルゴン(Ar)ガスと、二原子分子ガス又は多原子分子ガスとの混合ガスを使用するのが好ましい。
アルゴン(Ar)ガスと、二原子分子ガス又は多原子分子ガスとの混合ガスをプラズマガスとして使用すると、二原子分子ガス又は多原子分子ガスによって、アルゴン(Ar)ガスのみを使用した場合に比べて、より大きな振動エネルギー(熱エネルギー)を原料シリコン含有粉末に与えることができ、その結果、凝集状態を均一にすることができるため、球形状で、且つ微粒の本シリコン含有粉末を得ることができる。
【0025】
ここで、上記の二原子分子ガスとしては、N
2、O
2、H
2、などを挙げることができ、上記の多原子分子ガス、すなわち三原子以上の分子からなるガスとしては、NH
3、CH
4、C
2H
2、CO
2などを挙げることができる。
【0026】
但し、二原子分子または多原子分子の含有量が多すぎると、プラズマフレームが減退してしまい、粒度分布のシャープな粉末を得ることが難しくなる。かかる観点から、プラズマガスにおける、アルゴン(Ar)ガスと、二原子分子ガス又は多原子分子ガスとの混合割合は、流量比で99:1〜10:90であるのが好ましく、中でも95:5〜60:40、その中でも95:5〜80:20であるのがさらに好ましい。
また、より球形状に近づける観点からは、アルゴン(Ar)ガスと、二原子分子ガス又は多原子分子ガスとの混合割合は、流量比で99:1〜50:50、中でも95:5〜50:50のように、二原子分子ガス又は多原子分子ガスよりもArガスの流量の方が多い比率内で調整するのが好ましい。
【0027】
(プラズマフレームの調整)
プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整するのが好ましい。
プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整すれば、投入した原料、すなわち原料シリコン含有粉末は、プラズマ炎中で瞬時に蒸発気化し、プラズマフレーム内で十分なエネルギーを供給することができるため、プラズマ尾炎部に向って核形成、凝集及び凝縮が生じて微粒子、その中でもサブミクロンオーダーの微粒子を形成することができる。
【0028】
プラズマフレームが層流状態であるか否かは、プラズマフレームを、フレーム幅が最も太く観察される側面から観察した際に、フレーム幅に対するフレーム長さの縦横比(以下、フレームアスペクト比)が3以上であるか否かによって判断することができ、フレームアスペクト比が3以上であれば層流状態、3未満であれば乱流状態と判断することができる。
【0029】
プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整するためには、プラズマ出力とガス流量を調整することが好ましい。
かかる観点から、直流熱プラズマ装置のプラズマ出力は2kW〜30kWであるのが好ましく、中でも4kW以上或いは15kW以下であるのがさらに好ましい。また、プラズマガスのガス流量は、上述の観点から、0.1L/min〜20L/minであるのが好ましく、中でも0.5L/min以上或いは18L/min以下であるのがさらに好ましい。
【0030】
さらには、プラズマフレームを層流状態に安定的に保つには、上述のプラズマ出力、ガス流量の範囲を保つと共に、プラズマ出力(A)に対する、アルゴン(Ar)ガス流量(B)と、二原子分子ガス又は多原子分子ガス流量(C)の和の比、すなわち計算式(B+C)/Aで算出して得られる比値(単位:L/(min・kW))が、0.50〜2.00となるように調整するのがより好ましい。
原料粉末のガス化に必要な流速を得るためには、(B+C)/A比値(単位:L/(min・kW)が0.50以上であるのが好ましく、プラズマフレームを層流で安定した状態を保持するには2.00以下であるのが好ましい。
かかる観点から、(B+C)/A比値(単位:L/(min・kW)は、より好ましくは0.70以上或いは1.70以下であり、その中でも0.75以上或いは1.50以下となるように調整するのがさらに好ましい。
【0031】
<分級工程>
上記DCプラズマ工程で得られたシリコン含有粉末は、そのまま用いることもできる。また、粗大凝集粒子の除去を行うために分級することが好ましい。
この際の分級は、適切な分級装置を用いて、目的とする粒度範囲の占める割合が50%以上となるように、粗粉や微粉を分離するようにすればよい。
【0032】
<形状加工工程>
また、上記DCプラズマ工程で得られたシリコン含有粉末は、そのまま利用することも可能であるが、形状加工処理した上で、利用することもできる。
【0033】
この際、粒子同士の凝集や結合を防止しながら各粒子を独立した状態で加工するために、例えばステアリン酸などの脂肪酸や、界面活性剤などの助剤を添加するのが好ましい。そして、このような形状加工処理した粉末として利用することもできるし、また、形状加工しない元粉とこれとを混合して利用することもできる。
【0034】
<本シリコン含有粉末>
本製造方法によれば、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D50が0.1μm〜5μmであり、且つ、当該D50に対する結晶子径の比率(結晶子径/D50)が0.045〜0.60(μm/μm)である本シリコン含有粉末を得ることができる。
【0035】
(D50)
本製造方法によれば、本シリコン含有粉末のD50、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定法により測定して得られる体積基準粒度分布によるD50を、上述のように0.1μm〜5μmとすることができる。
本シリコン含有粉末のD50が5μm以下であれば、充放電サイクル時に生じる電極の膨張応力を低減することが可能であり、0.1μm以上であれば、活物質への腐食を抑制することが可能である。
よって、かかる観点から、本シリコン含有粉末のD50は0.1μm〜5μmであるのが好ましく、中でも0.2μm以上或いは3μm以下、その中でも1μm以下、その中でも0.5μm以下であるのがより一層好ましい。
【0036】
(D90)
本製造方法によれば、本シリコン含有粉末のD90、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D90を0.3μm〜20μmとすることができる。
本シリコン含有粉末のD90が0.3μm以上であれば、溶媒中への分散がしやすく、20μm以下であれば、電極の平滑性を向上させることができる。
よって、かかる観点から、本シリコン含有粉末のD90は0.3μm〜20μmであるのが好ましく、中でも0.4μm以上或いは17μm以下、その中でも0.5μm以上或いは15μm以下であるのがより一層好ましい。
【0037】
(D10)
本製造方法によれば、本シリコン含有粉末のD10、すなわちレーザー回折散乱式粒度分布測定装置によって測定される体積累積粒径D10を0.01μm〜0.30μmとすることができる。
本シリコン含有粉末のD10が0.01μm以上であれば、充放電反応時の活物質の酸化を抑制することができ、0.30μm以下であれば、電極密度を向上させることができる。
よって、かかる観点から、本シリコン含有粉末のD10は0.01μm〜0.30μmであるのが好ましく、中でも0.02μm以上、その中でも0.03μm以上であるのがより一層好ましい。
【0038】
(結晶子径/D50)
本製造方法によれば、本シリコン含有粉末の結晶子径に関して、前記D50に対する結晶子径の比率(結晶子径/D50)を0.045〜0.60(μm/μm)とすることができる。
本シリコン含有粉末の結晶子径/D50が0.045(μm/μm)以上であれば、酸素濃度の増加を抑制することができ、0.60(μm/μm)以下であれば、粒子形状として球形を保つことができる。
よって、かかる観点から、本シリコン含有粉末の結晶子径/D50は0.045〜0.60(μm/μm)であるのが好ましく、中でも0.050(μm/μm)以上或いは0.50(μm/μm)以下、その中でも0.055(μm/μm)以上或いは0.40(μm/μm)以下であるのがより一層好ましい。
なお、「結晶子径」とは、粉末X線回折によって得られる回折パターンを解析し、Scherrerの式によって算出される、結晶面の回折角のピークの半価幅から求められる結晶子径の平均値のことをいう。
【0039】
(結晶子径/Dsem)
また、本製造方法によれば、本シリコン含有粉末に関して、一次粒子の平均粒径(Dsem)に対する結晶子径の比率(結晶子径/Dsem)を0.043〜0.70(μm/μm)とすることができる。
本シリコン含有粉末の結晶子径/Dsemが0.043(μm/μm)以上であれば、酸素濃度の増加を抑制することができ、0.70(μm/μm)以下であれば、粒子形状として球状を保つことができる。
よって、かかる観点から、本シリコン含有粉末の結晶子径/Dsemは0.043〜0.70(μm/μm)であるのが好ましく、中でも0.045(μm/μm)以上或いは0.60(μm/μm)以下、その中でも0.047(μm/μm)以上或いは0.50(μm/μm)以下であるのがより一層好ましい。
なお、「一次粒子の平均粒径」とは、走査型電子顕微鏡(倍率50,000倍)でシリコン粉を撮影し、各粒子の一次粒子径を球換算して計測し、得られた球換算一次粒子径の平均値の意味である。
【0040】
本シリコン含有粉末の粒度及び結晶子径を上記のように調製するには、後述するように、直流熱プラズマ(「DCプラズマ」と称する)装置を使用してシリコン粉を加熱噴射する際、プラズマガスとして、Arと二原子分子または多原子分子の混合ガスを使用すると共に、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整する方法を採用すればよい。但し、このような製法に限定するものではない。
通常、シリコン粉を微粒化すると結晶子径は小さくなるが、上記のようにDCプラズマ法において、上記のように調製すれば結晶子径を大きくすることができる。
【0041】
(酸素量)
本製造方法によれば、本シリコン含有粉末に関して、比表面積(SSA)に対する酸素量(O量)の割合を0.09〜0.50(wt%・g/m
2)とすることができる。
比表面積に対する酸素量(O量)の割合が0.09(wt%・g/m
2)以上であれば、粒子形状を球形に保つことができ、他方、0.50(wt%・g/m
2)以下であれば、粒子表面の酸素濃度を低くできるため、充放電サイクル中のシリコン粉自体への酸化反応の抑制をすることが可能である。
よって、かかる観点から、本シリコン含有粉末の比表面積に対する酸素量(O量)の割合が0.09〜0.50(wt%・g/m
2)であるのが好ましく、中でも0.45(wt%・g/m
2)以下、その中でも0.40(wt%・g/m
2)以下であるのがより一層好ましい。
【0042】
本シリコン含有粉末に関して、比表面積に対する酸素量(O量)の割合を上記範囲に調整するには、上述のように、DCプラズマ装置を使用してシリコン粉を加熱噴射する際、プラズマガスとして、Arと二原子分子または多原子分子の混合ガスを使用すると共に、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整するようにすればよい。但し、このような製法に限定するものではない。
【0043】
(粒子形状)
本製造方法によれば、本シリコン含有粉末の粒子形状を、球形状とすることができる。本発明において「球形」とは、真球状及び略真球状を包含する意である。例えば、本シリコン含有粉末を電子顕微鏡(50000倍)で観察した際に、多くのシリコン含有粉粒子が真球状又は略真球状を呈しているのが好ましい。より具体的には、シリコン含有粉末を構成するシリコン含有粉粒子の50個数%以上、中でも80個数%以上、その中でも90個数%以上、さらにその中でも95個数%以上(100個数%含む)が真球状又は略真球状であるのが好ましい。
【0044】
このように、真球状又は略真球状のシリコン含有粉粒子を含有するシリコン含有粉であれば、特に優れた電池特性を得ることができる。
この際、「真球状又は略真球状のシリコン含有粉粒子を含有する」とは、本シリコン含有粉末を構成するシリコン含有粒子のうちの少なくとも60個数%以上、中でも80個数%以上、その中でも90個数%以上(100個数%を含む)が、真球状又は略真球状のシリコン含有粉粒子が占めるという意味である。
また、「略真球状」とは、完全な真球状ではないが、球状として認識可能な形状を意味するものである。
【0045】
本シリコン含有粉末の粒子形状を上記のように調整するには、上述のように、DCプラズマ装置を使用してシリコン含有粉を加熱噴射する際、プラズマガスとして、Arと二原子分子または多原子分子の混合ガスを使用すると共に、プラズマフレームが層流状態で太く長くなるように調整する方法を採用すればよい。但し、このような製法に限定するものではない。
【0046】
<語句の説明>
本明細書において「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例】
【0047】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
【0048】
<実施例1>
本実施例では、DCプラズマ微粉製造装置を用いて下記に従い、シリコン含有粉末を製造した。
原料粉末供給口から、原料粉としてシリコン含有粉末(D50:8μm、Si量:99.5原子%、形状:球形)を導入して、10g/分の原料供給量で、Ar流量13.0L/分及びN
2流量0.7L/分をプラズマガスとしてプラズマフレーム(プラズマ炎)の内部に供給した。この際、Ar流量(B)とN
2流量(C)との比は95:5であった。また、プラズマ出力は10.0kWであり、プラズマ出力(A)、Ar流量(B)及びN
2流量を調製して、(B+C)/A=1.37(L/(min・kW))とした。
このようにして得られたシリコン含有粉末(サンプル)は、回収ポットに回収され、を緩やかに大気開放した後、シリコン含有粉末(サンプル)を回収し、篩目開き20μmで分級を行い、篩網を通過したシリコン含有粉末(サンプル)を得た。
【0049】
<実施例2>
本実施例では、DCプラズマ微粉製造装置を用いて下記に従い、シリコン含有粉末を製造した。
原料粉末供給口から、原料粉としてホウ素(B)を添加したシリコン含有粉(D50:8μm、Si量:98原子%、B量:2原子%、形状:球形)を導入して、10g/分の原料供給量で、Ar流量13.0L/分及びN
2流量0.7L/分をプラズマガスとしてプラズマフレーム(プラズマ炎)の内部に供給した。この際、Ar流量(B)とN
2流量(C)との比は95:5であった。また、プラズマ出力は10.0kWであり、プラズマ出力(A)、Ar流量(B)及びN
2流量を調製して、(B+C)/A=1.37(L/(min・kW))とした。
このようにして得られたシリコン含有粉末(サンプル)は、回収ポットに回収され、緩やかに大気開放した後、ホウ素(B)を添加したシリコン含有粉末(サンプル)を回収し、篩目開き20μmで分級を行い、篩網を通過したシリコン含有粉末(サンプル)を得た。ホウ素の固溶量は、ケイ素100原子%に対して2原子%であった。
【0050】
上記実施例1及び実施例2の製造方法において、生成されたプラズマフレーム(言い換えればプラズマ炎)に関し、フレーム幅が最も太く観察される側面から該プラズマフレームを写真撮影し、二値化して、フレーム幅に対するフレーム長さの縦横比(フレームアスペクト比)を測定した(後述する実施例・比較例も同様)。その結果、生成されたプラズマフレームのフレームアスペクト比が3以上、具体的には4であり、層流であることが確認された。
【0051】
<比較例1>
シリコンのインゴットをサイクロミル(株式会社吉田製作所製「型式1033−200」により粗粉砕して得られたSi粉末(D50:16μm、Si量:99.5原子%、形状:非球形)100gに対してエタノールを400g混合し、湿式粉砕機(アシザワファインテック社製「LMZ015」)を用いて粒度調整を行った。この際、湿式粉砕に用いたメディア径は0.3mmφ、メディアの充填量は80%、周速を14m/sとし、送液量500g/min.とし、150分間粉砕した後、乾燥してシリコン含有粉末(サンプル)を回収した。
【0052】
<シリコン含有粉末(サンプル)の評価>
実施例および比較例で得られたシリコン粉に関して、以下に示す方法で諸特性を評価した。
【0053】
(1)粒子形状の観察
実施例・比較例で得たシリコン含有粉末(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(50,000倍)にて、任意の10視野において、それぞれ50個の粒子の形状を観察し、80個数%を占める形状が観察された場合、その形状を表1に示した。
【0054】
(2)一次粒子の平均粒径Dsem
実施例・比較例で得たシリコン含有粉末(サンプル)を、走査型電子顕微鏡(倍率50,000倍)を撮影し、視野中の任意の20個の粒子の一次粒子径を、画像解析ソフトにより球換算して計測し、得られた球換算一次粒子径の該20個の平均値を「一次粒子の平均粒径Dsem(μm)」とした。
【0055】
(3)粒度分布
実施例・比較例で得たシリコン含有粉末(サンプル)0.2gを純水100ml中に入れて超音波を照射して(3分間)分散させた後、粒度分布測定装置(日機装株式会社製「マイクロトラック(商品名)HRA(型番)」)により、体積累積粒径D10、D50及びD90を測定した。
【0056】
(4)結晶子径
実施例、比較例で得たシリコン含有粉末(サンプル)を、(株)リガク製のUltima−IVを用いて、粉末X線回折測定を行った。得られたX線プロファイルのうちSi(111)面の回折ピークを解析し、シェラー(Scherrer)法によって結晶子径(μm)を算出した。
【0057】
(5)BET比表面積(SSA)
ユアサアイオニクス(株)製のモノソーブ(商品名)を用いて、JIS R 1626-1996(ファインセラミックス粉末の気体吸着BET法による比表面積の測定方法)の「6.2流動法の(3.5)一点法」に準拠して、BET比表面積(SSA)の測定を行った。その際、キャリアガスであるヘリウムと、吸着質ガスであるN
2の混合ガスを使用した。
【0058】
(6)酸素量
酸素・N
2分析装置(株式会社堀場製作所製「EMGA−620W(型番)」)を用いて、実施例・比較例で得たシリコン含有粉末(サンプル)の酸素量を分析した。
【0059】
(7)電池特性の評価
実施例及び比較例で得られたシリコン含有粉末を用いてリチウム二次電池を作製し、充放電を繰り返したときのサイクル特性を測定した。
【0060】
(負極合剤の調製)
上記で得られたシリコン含有粉末100質量部と、導電材(アセチレンブラック)7質量部と、ポリイミドの前駆体化合物(ポリアミック酸)15質量部と、N−メチル−2−ピロリドン100質量部とを混合して負極合剤を得た。
【0061】
(負極の作製)
上記の如く調製した負極合剤を、電解銅箔上に塗膜厚12μmとなるように片面塗布した。次いで、減圧アルゴン雰囲気下において塗膜を加熱して前駆体化合物の重合を行って負極を作製した。
なお、加熱は4段階で行った。1段階目の加熱は120℃で4時間、2段階目の加熱は150℃で1時間、3段階目の加熱は200℃で1時間、4段階目の加熱は300℃で1時間行った。加熱の間、塗膜が形成された集電体を、2枚のガラス板に挟持しておいた。
【0062】
(電池の作製)
電解液として、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1体積比混合溶媒に1mol/lのLiPF6を溶解した溶液を用いた。
セパレータとして、ポリプロピレン製多孔質フィルムを用いた。上記で得られた負極を、直径14mmの円形に打ち抜き、160℃で6時間真空乾燥を施した。そして、アルゴン雰囲気下のグローブボックス内で、2032コインセルを組み立てた。
対極としては金属リチウムを用いた。電解液としては、エチレンカーポネートとジエチルカーポネートの1:1体積比混合溶媒に1mol/LのLiPF6を溶解した溶液を用いた。セバレータとしては、ポリプロピレン製多孔質フィルムを用いた。
【0063】
(充放電条件)
充電は、定電流・定電圧充電方式で電池電圧が0.001Vまで定電流で、その後は定電圧充電制御により低下する電流値が1/5となったところで充電完了とした。
放電は定電流で電池電圧が1.0Vまで行った。
充電及び放電のサイクルにおけるレートは、0.1Cとした。
充放電サイクル特性の評価においては、2サイクル目放電容量を、それぞれ100%とした場合の各サイクルの放電容量を容量維持率(Capacity Retention)として比較した。表1には、30サイクル後の容量維持率(%)を示した。
【0064】
【表1】
【0065】
(考察)
直流熱プラズマを利用して加熱噴射するDCプラズマ工程では、プラズマガスとして、アルゴン(Ar)ガスと、窒素(N
2)ガスとの混合ガスを使用することで、二原子分子または多原子分子の分子振動によって、より大きな振動エネルギー(熱エネルギー)が得られるため、プラズマガスの熱伝導性が良くなる結果、フレームが太く長くなり、球状で、かつ微粒のシリコン粉末が得られる共に、該シリコン粉末の酸化を抑制できることも分かった。またこのシリコン粉末を活物質として使用すると、電池性能が改善されることが分かった。
【0066】
なお、上記実施例では、プラズマガスとして、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N
2)ガスとの混合ガスを使用しているが、「二原子分子ガス又は多原子分子ガス」であれば、二原子分子間又は多原子分子間に存在する分子振動のエネルギーを熱エネルギーとして吸収できるためプラズマ状態の延長化ができる点で、窒素(N
2)と同様であるから、窒素(N
2)の代わりに、他の「二原子分子ガス又は多原子分子ガス」を使用しても、窒素(N
2)を使用した場合と同様に、より大きな振動エネルギー(熱エネルギー)を原料シリコン含有粉末に与えることができるものと考えることができる。