【実施例】
【0022】
実施例に係る車体構造10について説明する。
図1に示すように、車体構造10は、車体11と、車体11に取り付けられるカバー部材25とを備えている。車体11は、車体11の側部12に設けられるドア開口部13と、ドア開口部13に開閉自在に支持されるスライドドア(ドア)20と、スライドドア20を閉位置に保持するストライカ(被係合部)15とを含む。
スライドドア20が車体前後方向にスライド移動されることによりドア開口部13が開閉される。
【0023】
図2に示すように、ドア開口部13の前下縁13aにストライカ15が設けられ、ストライカ15が前下縁13aから車体後方に向けて突出されている。スライドドア20でドア開口部13が閉じられた状態において、ストライカ15がスライドドア20の内部に挿通され、スライドドア20のラッチ装置(係合部)24に係合される。
【0024】
図3に示すように、スライドドア20は、前部20aに設けられてドア開口部13の前縁13b(
図2参照)に対向する前壁21と、前壁21に設けられる第1開口部22(
図4参照)と、前壁21の裏面側に設けられる支持ブラケット23と、支持ブラケット23に支持されるラッチ装置24と、前壁21の第1開口部22を覆うカバー部材25とを備える。
【0025】
図4に示すように、前壁21に第1開口部22が形成されている。第1開口部22は、前壁21のうちストライカ15(
図2参照)に対向する部位21aに位置し、略矩形状に形成される前壁開口部である。
前壁21に第1開口部22が形成されることにより、スライドドア20でドア開口部13(
図2参照)を閉じた状態において、第1開口部22にストライカ15がスライドドア20の外部から挿通される。
【0026】
前壁21には、第1開口部22の角部近傍に第1貫通孔31、第2貫通孔32および第3貫通孔34が形成されている。また、第1開口部22には内上角部に貫通凹部33が形成されている。
第1貫通孔31に、後述する第1順クリップ56が非接触状態に貫通される。また、第2貫通孔32に、後述する第1逆クリップ57が非接触状態に貫通される。さらに、第3貫通孔34に、後述する下側の第2逆クリップ62が非接触状態に貫通される。
また、貫通凹部33に、後述する上側の第2逆クリップ61が非接触状態に貫通される。
【0027】
スライドドア20の内部27(
図3参照)に支持ブラケット23が設けられている。支持ブラケット23は、スライドドア20の内部27においてインナパネル36に接合され、前壁21の内面21bに対向する前支持部(車体)38を有する。前支持部38は、前壁21に複数のボルト46、ナットで締結され、第2開口部39を有する。
【0028】
第2開口部39は、支持ブラケット23の前支持部38のうち第1開口部22に対向する部位に略矩形状に形成される支持ブラケット開口部である。この第2開口部39は、第1開口部22よりスライドドア20の内側に位置し、第1開口部22より小さな形状に形成される。
よって、スライドドア20でドア開口部13(
図2参照)を閉じた状態において、第1開口部22に挿通されたストライカ15(
図2参照)が第2開口部39に挿通される。
【0029】
前支持部38には、第2開口部39の角部近傍(すなわち、第1貫通孔31、第2貫通孔32および第3貫通孔34に対応する位置)に第1係止孔41、第2係止孔42および第3係止孔44が形成されている。
また、第2開口部39には、貫通凹部33に対向する部位に係止凹部43が形成されている。
【0030】
第1係止孔41は、第1貫通孔31より小径に形成され、第1係止孔41に、後述する第1順クリップ56が係止される。また、第2係止孔42は、第2貫通孔32より小径に形成され、第2係止孔42に、後述する第1逆クリップ57が係止される。さらに、第3係止孔44は、第3貫通孔34より小径に形成され、第3係止孔44に、後述する下側の第2逆クリップ62が係止される。
また、係止凹部43は、貫通凹部33より第1開口部22の内側に位置する。係止凹部43に、後述する上側の第2逆クリップ61が係止される。
【0031】
支持ブラケット23にはラッチ装置24が取り付けられている。すなわち、ラッチ装置24は、支持ブラケット23と一体に支持されている。ラッチ装置24のラッチ(図示せず)が第2開口部39の内側に配置される。
【0032】
よって、スライドドア20で車体11のドア開口部13(
図2参照)を閉じた状態において、第2開口部39に挿通されたストライカ15(
図2参照)がラッチ装置24のラッチに係止される。これにより、スライドドア20がドア開口部13(すなわち、車体11)に係止される。
ラッチ装置24およびストライカ15は、通常の車両に取り付けられるラッチ装置およびストライカと同様に構成されている。
【0033】
第1係止孔41に、後述する第1順クリップ56が係止され、第2係止孔42に、後述する第1逆クリップ57が係止される。また、係止凹部43に、後述する上側の第2逆クリップ61が係止され、第3係止孔44に、後述する下側の第2逆クリップ62が係止される。
これにより、支持ブラケット23の前支持部38にカバー部材25が取り付けられる。この状態において、前壁21の表面21cにカバー部材25が当接された状態に配置される。すなわち、カバー部材25が第1開口部22よりスライドサイドドア20の外方に位置する。
【0034】
図4、
図5に示すように、前壁21にカバー部材25が配置されることにより、カバー部材25で前壁21の第1開口部22と、支持ブラケット23の第2開口部39とが覆われる。カバー部材25は、軟質樹脂で形成される外表部位47と、外表部位47の裏面側に硬質樹脂で形成される係止部位48とを有する。外表部位47および係止部位48が一体に2色成形されることによりカバー部材25が形成される。
【0035】
カバー部材25は、第1開口部22を覆うように外形が略矩形状に形成され、中央に車幅方向へ延びる第3開口部51が略矩形状に形成されている。具体的には、第3開口部51は、カバー部材25の外表部位47のうち、第1開口部22に対応する部位に形成されるカバー開口部である。
この第3開口部51は、カバー部材25で第1開口部22が覆われた状態において、第1開口部22の前方側に配置される。よって、スライドドア20でドア開口部13(
図2参照)を閉じた状態において、ストライカ15(
図2参照)が第3開口部51、第1開口部22および第2開口部39に挿通される。
【0036】
カバー部材25の係止部位48は、外表部位47の裏面側に2色成形されることにより、外形が略矩形状に形成される。よって、前壁21にカバー部材25が配置された状態において、係止部位48が前壁21に接触される。
【0037】
係止部位48は、係止部位48の4隅部に形成される外上角部48a、外下角部48b、内上角部48cおよび内下角部48dと、外上角部48aおよび外下角部48bに形成される第1クリップ53と、内上角部48cおよび内下角部48dに形成される第2クリップ54とを有する。
【0038】
第1クリップ53は、外上角部48aから第1係止孔41に向けて突出される第1順クリップ56と、外下角部48bから第2係止孔42に向けて突出される第1逆クリップ57とを備える。
また、第2クリップ54は、内上角部48cから係止凹部43に向けて突出される上側の第2逆クリップ61と、内下角部48dから第3係止44に向けて突出される下側の第2逆クリップ62とを有する。
【0039】
図4、
図6に示すように、第1順クリップ56は、前壁21の第1貫通孔31および前支持部38の第1係止孔41に貫通可能な第1順突起部64と、第1順突起部64に第1方向(矢印A−B方向)へ弾性変形可能に形成される第1順係止爪65とを有する。第1順係止爪65は、第1方向のうち第1順方向(すなわち、矢印A方向)に突出した状態に保持される。
【0040】
よって、第1順クリップ56が第1係止孔41に挿通されることにより、第1係止孔41に第1順係止爪65が係止し、第1順クリップ56が前支持部38に支持される(
図10も参照)。
この状態において、第1方向のうち第1逆方向(すなわち、矢印B方向)に第1順係止爪65を弾性変形させることにより、第1係止孔41との係止状態が解除される。
【0041】
図4、
図7に示すように、第1逆クリップ57は、前壁21の第2貫通孔32および前支持部38の第2係止孔42に貫通可能な第1逆突起部67と、第1逆突起部67に第1方向(矢印A−B方向)へ弾性変形可能に形成される第1逆係止爪68とを有する。第1逆係止爪68は、第1方向のうち第1逆方向(すなわち、矢印B方向)に突出した状態に保持される。
【0042】
よって、第1逆クリップ57が第2係止孔42に挿通されることにより、第2係止孔42に第1逆係止爪68が係止し、第1逆クリップ57が前支持部38に支持される(
図10参照)。
この状態において、第1方向のうち第1順方向(すなわち、矢印A方向)に第1逆係止爪68を弾性変形させることにより、第2係止孔42との係止状態が解除される。
【0043】
第1順クリップ56および第1逆クリップ57は、係止部位48に1つずつ設けられている。ここで、カバー部材25を前支持部38から取り外す際に、一例として、第1順クリップ56の第1順係止爪65を弾性変形させて第1順係止爪65の係止状態を解除させるものとする。
【0044】
具体的には、第1順クリップ56の第1順係止爪65を弾性変形させて第1順係止爪65の係止状態を1つのみ解除させて、第1逆クリップ57、上側の第2逆クリップ61、および下側の第2逆クリップ62の係止状態を解除する。このように、第1順係止爪65の係止状態を1つのみ解除させるだけの簡単な作業でカバー部材25を前支持部38から取り外すことができるので、カバー部材25を取り外す際の取外し作業性を高めることができる。
【0045】
ところで、上側の第2逆クリップ61が係止凹部43に係止されている。係止凹部43は、車幅方向外側が開口されて半円弧状に形成される。よって、係止凹部43は、円弧状の係止孔に比べて第2逆クリップ61を外しやすく形成されている。
これにより、上側の第2逆クリップ61を係止凹部43に係止させることにより、カバー部材25を取り外す際の取外し作業性を一層高めることができる。
【0046】
ここで、第1順クリップ56の第1順係止爪65と第1逆クリップ57の第1逆係止爪68との突出方向が逆向きとされている。よって、カバー部材25に一方向の荷重が入力した場合でも、他方の係止爪が係止状態に保たれる。これにより、カバー部材25が前支持部38から外れることを防止できる。
これに対して、第1順クリップ56および第1逆クリップ57が同じ方向のみに突出する係止爪を有する場合、カバー部材25に入力した一方向の荷重で、両クリップ56,57の係止爪の係止状態が解除されることが考えられる。このため、カバー部材25が前支持部38から外れてしまう虞がある。
【0047】
また、カバー部材25に第1順クリップ56および第1逆クリップ57を1つずつ設けたが、これに限らないで、第1順クリップ56および第1逆クリップ57の両方を複数設けることも考えられる。しかし、第1順クリップ56および第1逆クリップ57の両方を複数設けた場合、複数の係止爪の全てに対して係止状態の解除作業が必要となる。
よって、例えば、最初の係止爪の係止状態を解除させ、次の係止爪の係止状態を解除している途中に、最初の係止爪が再び係止してしまうことが考えられる。このため、カバー部材25を前支持部38から取り外す作業に手間がかかってしまい、好ましくない。
【0048】
図4、
図8に示すように、係止部位48の内上角部48cから第2逆クリップ61が突出される。この第2逆クリップ61は、第1クリップ53より矢印D方向(すなわち、第2方向のうち第2逆方向)のみに位置する。
具体的には、第2逆クリップ61は、前壁21の貫通凹部33および前支持部38の係止凹部43に貫通可能な第2突起部71と、第2突起部71に第2方向(矢印C−D方向)へ弾性変形可能に形成される第2係止爪72とを有する。第2係止爪72は、第2方向のうち第2逆方向(すなわち、矢印D方向)に突出した状態に保持される。
【0049】
よって、第2逆クリップ61が係止凹部43に挿通されることにより、係止凹部43に第2係止爪72が係止し、第2逆クリップ61が前支持部38に支持される(
図11参照)。
この状態において、第2方向のうち第2順方向(すなわち、矢印C方向)に第2係止爪72を弾性変形させることにより、係止凹部43との係止状態が解除される。
【0050】
図4、
図9に示すように、係止部位48の内下角部48dから第2逆クリップ62が突出される。この第2逆クリップ62は、第1クリップ53より矢印D方向(すなわち、第2逆方向)のみに位置する。
具体的には、第2逆クリップ62は、係止部位48の内上角部48cから突出される第2逆クリップ61と類似形状に形成されている。よって、第2逆クリップ61の各構成部材に第2逆クリップ61と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0051】
内下角部48dの第2逆クリップ62によれば、第2逆クリップ62が第3係止孔44に挿通されることにより、第3係止孔44に第2係止爪72が係止し、第2逆クリップ62が前支持部38に支持される。
この状態において、第2方向のうち第2順方向(すなわち、矢印C方向)に第2係止爪72を弾性変形させることにより、第3係止孔44との係止状態が解除される。
【0052】
第1クリップ53、第2クリップ54のうち、内上角部48cの第2逆クリップ61が第1開口部22に係止される。具体的には、第1開口部22に係止凹部43が形成され、係止凹部43に第2逆クリップ61が係止される。ここで、係止凹部43は、半円弧状に形成されているので、円弧状の係止孔41〜44に比べて第2逆クリップ61を受け入れる許容範囲が広い。
【0053】
よって、第1クリップ53および第2クリップ54の全てのクリップ56,57,61,62をそれぞれ個別の係止孔41〜44などに係止する場合と比べて、第1クリップ53および第2クリップ54の製造精度を抑えることができる。これにより、カバー部材25の製造の容易化が図れ、コストを抑えることができる。
【0054】
図10、
図11に示すように、第1順クリップ56が第1係止孔41に係止され、第1逆クリップ57が第2係止孔42に係止される。また、内上角部48cの第2逆クリップ61が係止凹部43に係止され、内下角部48dの第2逆クリップ62が第3係止孔44(
図4参照)に係止される。よって、カバー部材25が支持ブラケット23の前支持部38に取り付けられる。
【0055】
この状態において、係止部位48の裏面48eが前壁21の表面21cに当接され、かつ、外表部位47の周縁47aが前壁21の表面21cに当接される。これにより、外表部位47および係止部位48(すなわち、カバー部材25)が前壁21の表面21cに接触した状態で支持ブラケット23に取り付けられる。
【0056】
ところで、カバー部材25が取り付けられる支持ブラケット23には、ラッチ装置24が支持されている。
よって、
図4に示すように、第1開口部22に対する支持ブラケット23の取付位置にずれが生じた場合でも、支持ブラケット23に対するラッチ装置24とカバー部材25の相対位置を精度よく保持できる。すなわち、カバー部材25の第3開口部51とラッチ装置24の相対位置を精度よく保持できる。
【0057】
ここで、スライドドア20を閉じた際に、スライドドア20側のラッチ装置24が車体11側のストライカ15(
図2参照)に係止する。よって、ラッチ装置24に対してストライカ15が精度よく位置決めされている。
これにより、第1開口部22に対する支持ブラケット23の取付位置にずれが生じた場合でも、ストライカ15をカバー部材25に干渉させることなく第3開口部51に挿通させることができる。
【0058】
また、第3開口部51とラッチ装置24との相対位置を保つことにより、第3開口部51をストライカ15に対して精度よく取り付けることができる。これにより、第3開口部51を小さく抑えることができ、カバー部材25(すなわち、スライドドア20)の外観性を良好に保つことができる。
【0059】
さらに、
図10、
図11に戻って、カバー部材25に第1クリップ53および第2クリップ54を備え、第1クリップ53の係止状態を第1方向(矢印A−B方向)に移動させて解除するようにした。また、第2クリップ54の係止状態を第1方向と直交する第2方向(矢印C−D方向)に移動させて解除するようにした。
【0060】
すなわち、第1クリップ53の係止状態の解除方向と、第2クリップ54の係止状態の解除方向とを異ならせた。よって、カバー部材25に一方向の荷重が入力した場合に、第1クリップ53および第2クリップ54の両方の係止状態が解除されることを防止できる。
これにより、カバー部材25の取付位置が第2開口部39(
図4も参照)に対してずれ難くなり、さらに、カバー部材25の取付状態を安定させることができる。
【0061】
また、第1クリップ53の係止状態の解除方向と、第2クリップ54の係止状態の解除方向とを異ならせることにより、一方向の荷重でカバー部材25が脱落することを防止できる。特に、カバー部材25の作業中に、一方向の荷重が入力した場合でも、カバー部材25の不意の脱落も防止できる。
【0062】
なお、本発明に係る車体構造は、前述した実施例に限定されるものではなく適宜変更、改良などが可能である。
例えば、前記実施例では、第1順クリップ56および第1逆クリップ57を係止部位48に1つずつ設けた例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、第1順クリップ56のみを1つ設け、第1逆クリップ57を複数設けることも可能である。この場合でも、第1順クリップ56による第1係止孔41の係止状態を解除することによりカバー部材25を前支持部38から手間をかけないで外すことができる。
また、第1順クリップ56を複数設け、第1逆クリップ57のみを1つ設けることも可能である。この場合でも、第1逆クリップ57による第2係止孔42の係止状態を解除することによりカバー部材25を前支持部38から手間をかけないで外すことができる。
【0063】
また、前記実施例では、第1クリップ53、第2クリップ54のうち、内上角部48cの第2逆クリップ61を第1開口部22(具体的には、係止凹部43)に係止させる例について説明したが、これに限定するものではない。
例えば、第1クリップ53、第2クリップ54のうち、複数のクリップ、あるいは全てのクリップを第1開口部22(具体的には、第1開口部22に形成した係止凹部)に係止させることも可能である。
【0064】
さらに、前記実施例では、スライドドア20の前壁21にカバー部材25を取り付ける例について説明したが、これに限らないで、スライドドア20の前壁21の他の部位に本発明の取付手段を適用することも可能である。
【0065】
また、前記実施例で示した車体構造、車体、ストライカ、スライドドア、第1開口部、支持ブラケット、ラッチ装置、カバー部材、前支持部、第2開口部、第3開口部、第1クリップ、第2クリップ、第1順クリップ、第1逆クリップ、第2逆クリップ、第1順係止爪、第1逆係止爪および第2係止爪などの形状や構成は例示したものに限定するものではなく適宜変更が可能である。