【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の態様において、本発明は、硬化剤が、安定な環状配置に調節できる安定な鎖状配置を有する調節可能な構造単位を含み、環状配置は、化学的吸引相互作用を示す少なくとも2個の末端構成要素を有する鎖状配置の構成要素を含み、2個の末端構成要素を分離することによって環状配置から鎖状配置に調節して戻すことできる、硬化剤を含む硬化性樹脂に関する。
【0008】
良好な靭性及び高いガラス転移温度を有する、このような調節可能な構造単位を含む硬化樹脂を作成することができる。
【0009】
これは、鎖状及び環状である各々の形態が安定であり、そのため高いガラス転移温度をもたらすという理由から、堅くて固体状の硬化環境を提供する調節可能な単位によって達成されると考えられている。しかし、硬化樹脂に、張力、せん断、衝撃、又は屈曲の様式などによって十分に応力が加えられる場合、調節可能な単位はそれ自体、ある形態又は別の形態から調節することが可能であり(例えば、局所環境が加圧の下にあるか、若しくは張力の下にあるかに応じて)、硬化樹脂は破壊されずに応答することができるようになり、そのため硬化樹脂はより優れた靭性を示し、おそらく硬化樹脂の挙動がもたらされる。
【0010】
典型的に、調節可能な構造単位は、硬化剤のバックボーンの不可欠な構成要素を形成する。バックボーンは局所的な加圧又は張力の応力に耐える可能性がより高いので、バックボーンは、上記の利点をもたらすために、調節可能な単位が局所的な応力条件下でそれ自体を調節できるようにする。
【0011】
化学的吸引相互作用は共有結合よりも弱く、そのため硬化性樹脂又は硬化剤に応力が加えられた場合に化学的相互作用が最初に破壊することは重要である。化学的吸引相互作用は様々な形態を取ることができ、水素結合に限定されないが、内部塩、ベタイン、電荷移動相互作用、静電相互作用、又は環状配置に安定性を付与することができる他の非共有結合性の相互作用であってよい。
【0012】
好ましくは、化学的吸引相互作用は水素結合である。このような結合は、窒素、酸素、又はフッ素などの電気陰性の原子に結合している水素原子を伴い、水素は、次いで、近くの窒素、酸素、又はフッ素原子と水素結合を形成する。
【0013】
調節可能な単位がその環状配置において水素結合を形成するためには、調節可能な構造単位が、窒素、酸素、又はフッ素に結合している利用可能な水素、利用可能な窒素、酸素、又はフッ素構成要素を含み、利用可能な水素及び利用可能な窒素、酸素、又はフッ素は3個から10個までの原子構成要素によって分離されているのが好ましい。このように、5個から12個の原子構成要素を有する環状配置は、利用可能な水素と利用可能な窒素、酸素、又はフッ素との間に水素結合を形成することによって形成され得る。
【0014】
好ましい一実施形態において、利用可能な窒素、酸素、又はフッ素は酸素である。利用可能な酸素が1個又は2個の炭素原子単位に結合しているのが典型的であるが、1個の炭素原子単位に二重結合しているのが好ましい。炭素に二重結合している場合、酸素はバックボーンの構成要素ではない。
【0015】
好ましい一実施形態において、利用可能な水素は窒素原子単位に結合している。水素がバックボーンの構成要素でないのは明らかである。
【0016】
調節可能な構造単位の構成要素であることができる構造基の適切な例には、−CO−NH−、−CO−O−、−CHOH−、−CH
2NH−、−CHSH−が含まれる。とりわけ有用な基は−CO−であり、より詳しくは−CO−NH−及び−CO−O−である。
【0017】
特に好ましい一実施形態は、−CO−単位及び−NH−単位を含む調節可能な構造単位に関し、C及びNは1個から8個の原子構成要素の鎖によって分離されている。
【0018】
上記に鑑みて、化学的吸引相互作用の強度は環状配置に対して安定性をもたらすのに十分であるが、応力が加えられた場合に破壊しない程度に強力ではないものでなければならない。したがって、化学的吸引相互作用は、1kJmol
−1から200kJmol
−1まで、より好ましくは2kJmol
−1から50kJmol
−1まで、最も好ましくは5kJmol
−1から30kJmol
−1までの強度を有する。
【0019】
環状配置は十分に規定され得、2個の明確に特定できる相互作用性の種の間に化学的吸引相互作用を有し得る。しかし、環状構造は、1つを超える特定できる相互作用によって安定化されていてよく、この場合、このような相互作用の各々が上記の強度を有することができる。
【0020】
硬化樹脂の環境において、硬化性樹脂及び硬化剤の分子は互いに非常に接近しており、したがって、調節可能な単位のある配置から別の配置への動きを妨害することがある。したがって、硬化剤が、各々が対応する鎖状配置から1個を超える環状配置を形成することができる場合に有利であることが見出されている。例えば、2個の異なる鎖状配置から2個の環状配置を形成することができる実施形態が好ましい。
【0021】
硬化剤のいくつかの構成要素が1個を超える鎖状構造に属していてよく、したがって、1個を超える環状構造に属することができる。この状況において、硬化剤は、典型的に、どの時点においてもこのような環状配置を形成することしかできない。換言すると、2個の調節可能な単位が存在することができるが、どの時点においても1個しか環状配置であることができない。しかし、これは依然として有利である、というのは、2個のうち1個の利用可能な環状配置を形成する能力があるということは、分子が、近接する分子によって妨害されない1個の環状配置の統計的により高い確率を有することを意味するからである。
【0022】
硬化剤は、その鎖状構造からその環状構造まで調節するので、分子は長さにおける大幅な短縮を受ける。例えば、官能性反応基が窒素を含む場合、硬化剤又は硬化性樹脂がその環状配置からその鎖状配置まで動くので、2個の窒素間の距離は5%から150%まで、好ましくは20%から120%まで増大することができる。
【0023】
本発明は、広範囲の樹脂及び硬化剤に等しく適用される。適切な硬化性樹脂には、エポキシ、ベンゾオキサジン、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ビスマレイミド、シアネートエステル、ポリイミド、アゾメチン、ビニルエステル、及びポリカーボネートが含まれる。
【0024】
硬化剤は、適切な硬化性樹脂の官能基と反応するための広範囲の官能性反応基を有していてよい。適切な硬化剤の官能基の例には、アミン、イソシアネート、シアネート、エポキシド、ハロゲン化アシル、カルボン酸、ヒドロキシル、チオール、アルデヒド、ニトリル、クロロスルホニル、ケトンが含まれる。
【0025】
エポキシ樹脂硬化系が好ましく、したがって、硬化剤がアミン官能基を有するのが好ましい。
【0026】
硬化剤は、典型的に、
X1−B−X2
によって表すことができ、式中、X1及びX2の各々は、上記で論じた通り少なくとも1つの官能性反応基を含み、官能性反応基は、例えば芳香族脂環式基又は複素環式基など、堅くて非官能性の環状単位に付着していてよい。例として、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、シクロヘキサン、ピリジン、フラン、チオフェン、好ましくはベンゼンがある。環状単位は、今度は、アルキル、ハロゲン、エステル、及びエーテルなど、さらなる非反応性官能性を有することができる。B配置(sequence)は、X1及びX2の各々において環状単位に結合している。
【0027】
X1及びX2基上の官能性反応基は、B配置に対して、オルト、メタ、又はパラであってよい。メタ及びパラの位置がより好ましく、メタが最も好ましい。
【0028】
好ましい一実施形態において、硬化剤はX1−B−X2の形態であり、式中、X1及びX2の各々はベンゼン環であり、−NH
2官能性反応基は、B配置に対してメタ又はパラである。
【0029】
B配置は調節可能な構造単位を含み、広範囲の形態を取ることができる。B配置はバックボーンを含み、バックボーンは、X1をX2に連結する原子構成要素の鎖である。調節可能な単位のいくつか又は全てがバックボーン中に存在する。バックボーンの長さはある程度変化してよく、バックボーンが4個から12個までの原子構成要素の鎖、好ましくは5個から10個の原子構成要素の鎖を含むのが適切である。
【0030】
典型的に、B配置の原子構成要素は、炭素、酸素、イオウ、窒素、リン、及びフッ素からなる原子構成要素から選択される。好ましい一実施形態において、B配置は少なくとも2個の−CO−基を含む。
【0031】
1個から8個までの原子構成要素によって分離されている2個の−CO−NH−基を含むB配置が好ましく、2個から5個までの原子構成要素によって分離されている2個の−CO−NH−基を含むB配置が最も好ましい。
【0032】
1個から8個までの原子構成要素によって分離されている2個の−CO−O−基を含むB配置も好ましく、2個から5個までの原子構成要素によって分離されている2個の−CO−O−基を含むB配置も最も好ましい。
【0033】
B配置が脂環式基、特にシクロヘキサンを含むのが高度に有利であることも見出されている。このような基は、脂環式基の立体配置状態の制限された性質のため、環状配置を安定化することができる。そのようなものとして、これは化学的吸引相互作用を示す2個の末端構成要素の間に位置するのが典型的である。
【0034】
バックボーンが脂環式基において2個の隣接する炭素を含む場合が特に有利である。換言すると、B配置及びバックボーンの残りが、脂環式基上の2個の隣接する炭素に結合している。この配置において、B配置及びバックボーンの残りがエクアトリアル位における両方の炭素、又はアキシアル位における両方の炭素で脂環式基に結合しているのが好ましい。
【0035】
硬化剤は構造上の用途にとりわけ有用である。このような用途において、材料が中程度に高い融点を有するのが有利である。したがって、好ましい一実施形態において、硬化剤は130℃から260℃まで、より好ましくは150℃から240℃の融点を有する。
【0036】
材料は構造上の用途において有用であるので、プリプレグ材の構成要素として特に適する。プリプレグ材は、他の材料の中でも硬化性樹脂及び硬化剤で予め含浸されている繊維構造を含む。典型的に、このようなプリプレグ材の数々のパイルは、所望により「重ね合わせ」(“laid−up”)されており、結果として生じる積層板は硬化されて硬化の複合積層板を作り出している。
【0037】
このように、本発明は、構造化繊維及び本明細書に記載する硬化剤を含む硬化性樹脂を含むプリプレグ材にも関する。
【0038】
硬化は、当技術分野において知られているあらゆる適切な方法において、典型的に、高温、場合により高圧に曝露することによって、行うことができる。
【0039】
しかし、硬化剤は室温又は室温付近で液体であることがあり、これは樹脂トランスファー成形の用途に特に有用である。
【0040】
結果として生じる硬化樹脂は、100℃を超え、好ましくは120℃を超え、より好ましくは140℃を超えるガラス転移温度を有するのが好ましい。
【0041】
本発明を、次に、以下の実施例を参照し、以下の図面を参照して説明する。