(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記サイドシルインナパネルは、角稜部を備える鋼板製のサイドシルインナアッパと、前記サイドシルインナアッパよりも強度が高いサイドシルインナロアと、を有しており、
前記高強度部材であるサイドシル補強パネルは、前記角稜部に沿って配置されるように折曲されており、
前記サイドシルインナアッパと前記サイドシルインナロアは、相互に接合される接合フランジをそれぞれ有しており、
前記接合フランジは、フロアパネルの車幅方向外側の端部に重ね合わされて相互に接合されていることを特徴とする請求項2に記載の車体構造。
前記サイドシルインナパネルの前記接合フランジの近傍部位には、タイダウンフックを係合させるタイダウンブラケットが設置されていることを特徴とする請求項7に記載の車体構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来例では、ダッシュクロスメンバとアウトリガとをサイドシルの前端に結合するため、サイドシルの前端の強度が大きくなっている。したがって、車両同士のオーバーラップ量が少ないスモールオーバーラップ衝突やフロントピラーへの斜め衝突等の際に、サイドシルの前端が潰れにくくなり、衝突エネルギーを良好に吸収することができない。そのため、大きな減速の加速度が乗員に加わってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、乗員に加わる減速の加速度を低減することができる車体構造を提供することを課題とする
。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明に係る車体構造は、動力源装置室と車室とを区画するダッシュロアパネルと、前記ダッシュロアパネルの動力源装置室側に設けられ、車幅方向に延在するアウトリガと、前記ダッシュロアパネルの車室側に設けられ、車幅方向に延在して左右のフロントピラーを繋ぐダッシュクロスメンバと、車体の車幅方向外側の端部に設けられ、前後方向に延在するサイドシルと、を備えている。前記サイドシルの内部には、前方からの荷重に対して前記サイドシルよりも圧縮強度が低いジャッキアップスチフナが設置されている。前記アウトリガは、前記ジャッキアップスチフナの前端部に結合されている。前記ダッシュクロスメンバは、前記サイドシルの前端部に結合されている。
【0008】
本発明によれば、アウトリガは、前方からの荷重に対してサイドシルよりも圧縮強度が低いジャッキアップスチフナの前端部に結合されるので、スモールオーバーラップ衝突やフロントピラーへの斜め衝突の際に、ジャッキアップスチフナが潰れることで衝突エネルギーを吸収することができる。そのため、乗員に加わる減速の加速度を低減することができる。
【0009】
また、前記サイドシルは、車内側のサイドシルインナパネルと、車外側のサイドシルアウタパネルと、を有しており、前記サイドシルインナパネルには、当該サイドシルインナパネルよりも強度が高い高強度部材が設けられていることが好ましい。この場合、前記アウトリガと前記高強度部材の前端部との間には、潰し空間が設けられるとよい。また、前記ダッシュクロスメンバの車幅方向外側の端部は、前記高強度部材の前方において前記サイドシルインナパネルに結合されるとよい。
【0010】
このようにすると、衝突の際にアウトリガが後退した場合には、潰し空間が潰れることで衝突エネルギーを吸収することができる。また、アウトリガが後退しても、ダッシュクロスメンバは高強度部材によって後方から支持されるので後退しにくくなり、車室の変形が抑制される。そのため、衝突エネルギーの吸収促進と車室の変形抑制を両立することができる。
【0011】
また、前記ジャッキアップスチフナには、貫通孔が形成されていることが好ましい。
【0012】
このようにすると、衝突の際にジャッキアップスチフナが潰れやすくなるとともに、ジャッキアップスチフナの軽量化を図ることができる。
【0013】
また、前記ジャッキアップスチフナは、ジャッキによって支持されるジャッキアップ部を有しており、前記ジャッキアップ部の上方に位置する前記貫通孔の周縁には、段部が形成されていることが好ましい。
【0014】
このようにすると、ジャッキアップスチフナが前方からの荷重に対して弱くなって潰れやすくなる一方、上下方向の荷重に対しては強くなる。
【0015】
また、前記ダッシュロアパネルの動力源装置室側に設けられ、前後方向に延在するフロントサイドフレームと、前記フロントサイドフレームと前記サイドシルとの間に設けられる前記アウトリガと、前記フロントサイドフレームを間に挟んで前記アウトリガと反対側に設けられる第1横メンバと、を備えることが好ましい。この場合、前記ダッシュクロスメンバと前記ダッシュロアパネルとによって、第1閉断面が形成されるとよい。前記アウトリガと前記ダッシュロアパネルとによって、第2閉断面が形成されるとよい。前記第1横メンバと前記ダッシュロアパネルとによって、第3閉断面が形成されるとよい。前記第1閉断面と前記第2閉断面は、前後方向で重なる位置にあり、前記第1閉断面と前記第3閉断面は、上下方向でずらした位置にあるとよい。
【0016】
このようにすると、前面衝突でフロントサイドフレームに衝突荷重が加わった場合には、フロントサイドフレームの後端からダッシュクロスメンバに衝突荷重が伝わる。そして、ダッシュクロスメンバは、第1閉断面と第2閉断面との断面重なり領域よりも、断面強度の低い第1閉断面と第3閉断面との断面ずれ領域の方が後退する量(変形量)が大きくなる。これにより、衝突エネルギーを吸収して、乗員に加わる減速の加速度を低減することができる。
【0017】
また、前記ダッシュクロスメンバと前記アウトリガは、高強度部材から成ることが好ましい。この場合、前記ダッシュクロスメンバは、前記ダッシュロアパネルに接合されるクロスメンバ上フランジ及びクロスメンバ下フランジを有するとよい。前記アウトリガは、前記ダッシュロアパネルに接合されるアウトリガ上フランジ部及びアウトリガ下フランジ部を有するとよい。前記クロスメンバ上フランジと前記アウトリガ上フランジ部は、前記ダッシュロアパネルを間に挟んで接合されるとよい。前記アウトリガ下フランジ部は、前記クロスメンバ下フランジよりも後方に配置されるとよい。
【0018】
このようにすると、スモールオーバーラップ衝突等の際に、アウトリガの変形を許容して衝突エネルギーを吸収することができるとともに、ダッシュクロスメンバの変形を抑制して乗員の脚部へのダメージを軽減することができる。
【0019】
また、前記サイドシルインナパネルは、角稜部を備える鋼板製のサイドシルインナアッパと、前記サイドシルインナアッパよりも強度が高いサイドシルインナロアと、を有していることが好ましい。この場合、前記高強度部材であるサイドシル補強パネルは、前記角稜部に沿って配置されるように折曲されるとよい。また、前記サイドシルインナアッパと前記サイドシルインナロアは、相互に接合される接合フランジをそれぞれ有しており、前記接合フランジは、フロアパネルの車幅方向外側の端部に重ね合わされて相互に接合されるとよい。
【0020】
このようにすると、サイドシルインナパネルの軽量化を図りながら、衝突荷重を支持できる強度を確保することができる。
【0021】
また、前記サイドシルインナパネルの前記接合フランジの近傍部位には、タイダウンフックを係合させるタイダウンブラケットが設置されていることが好ましい。
【0022】
このようにすると、サイドシルインナパネルの接合フランジの近傍部位の強度を高めることができる。
【0023】
また、前記サイドシルの前端開口を前方から閉塞する蓋部材をさらに備えることが好ましい。この場合、前記ジャッキアップスチフナの前端部には、車幅方向内側に折曲された前フランジが形成されるとよい。前記アウトリガの車幅方向内側の端部は、前記フロントサイドフレームの外側面及び前記ダッシュロアパネルに溶接で接合されるとよい。前記アウトリガの車幅方向外側の端部は、前記ジャッキアップスチフナの前記前フランジと前記蓋部材とに前後に重ね合わされてボルトで固定されるとよい。
【0024】
このようにすると、溶接やボルトを駆使して部材同士を組み付けるので、支障なく組付作業を行うことができるとともに、部材間の組付強度を向上させることができる。
【0025】
また、前記ダッシュロアパネルは、ホイールアーチの一部を構成するホイールアーチ形状部を有し、前記ホイールアーチ形状部を車室側から覆う補強パネルをさらに備えることが好ましい。この場合、前記ダッシュクロスメンバは、前記補強パネルと一体に形成されるとよい。
【0026】
このようにすると、ダッシュクロスメンバが補強パネルと一体に形成されているので、衝突荷重に対するダッシュクロスメンバの支持機能が高められる。
【0027】
また、フロアパネルの下面かつ前記フロントサイドフレームの車幅方向内側に配置され、前後方向に延在する第1フロアフレームをさらに備えることが好ましい。この場合、前記
第1横メンバは、前記第1フロアフレームの前端部に結合し、前記ダッシュクロスメンバの下方に近接配置されるとよい。
【0028】
このようにすると、前面衝突でフロントサイドフレームに衝突荷重が加わった場合には、フロントサイドフレームの後端からダッシュクロスメンバに衝突荷重が伝わる。ダッシュクロスメンバに近接する
第1横メンバにも衝突荷重が伝わるものの、
第1横メンバは第1フロアフレームに支持されているので、
第1横メンバの車室側への変形を抑制できる。
【0029】
また、フロアパネルの上面に設置され、前後方向に延在する第2フロアフレームをさらに備えることが好ましい。この場合、前記ダッシュロアパネルは、後方に下り傾斜する傾斜部を有するとよい。前記フロントサイドフレームは、前記ダッシュロアパネルの前記傾斜部に沿って下向きに屈曲する屈曲部を有するとよい。前記屈曲部の後端部は、前記第2フロアフレームに結合されるとよい。
【0030】
このようにすると、前面衝突でフロントサイドフレームに加わった衝突荷重を、第2フロアフレームに伝達可能となる。
【0031】
また、フロアパネルの上面かつ前記サイドシルの車幅方向内側に設置され、前後方向に延在する第2フロアフレームと、前記サイドシルと前記第2フロアフレームとを連結し、車幅方向内側に向かう程後方に位置するように傾斜して配置された斜めブレースと、をさらに備えることが好ましい。この場合、前記斜めブレースは、前記潰し空間の後方に配置されるとよい。
【0032】
このようにすると、サイドシルの車幅方向内側が斜めブレースにより支持されているため、サイドシルと斜めブレースとの連結部位の強度は、それよりも前方にある潰し空間の強度よりも強くなる。そのため、スモールオーバーラップ衝突等の際に、サイドシルは、斜めブレースとの連結部位よりも前方の潰し空間が局部的に潰れることで衝突エネルギーを吸収することができ、斜めブレースとの連結部位よりも後方部位の変形を好適に抑制することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る車体構造によれば、乗員に加わる減速の加速度を低減することができる
。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。方向を説明する際は、運転者からみた前後左右上下に基づいて説明する。また、「車幅方向」は「左右方向」と同義である。
【0038】
図1、
図2、
図3に示すように、第1実施形態に係る車体構造1を備える自動車Vは、主に、車室2の前端部を形成するダッシュロアパネル10と、ダッシュロアパネル10の一部を車室2側から覆う補強パネル20と、ダッシュロアパネル10の車幅方向端部に前端部が接続され前後方向に延設されたサイドシル50と、ダッシュロアパネル10の車幅方向中央部に接続されたトンネル部材30と、ダッシュロアパネル10に設けられ車幅方向に延在する閉断面を構成するダッシュクロスメンバ80と、を備えている。車体構造1は、ほぼ左右対称に形成されているため、以下の説明では左側(運転席側)の構造を中心に説明する。
【0039】
ダッシュロアパネル10は、前側の動力源装置室3と後側の車室2とを区画する板状部材であり、例えばプレス成型によって高張力鋼板を所定形状に折り曲げて形成されている。ダッシュロアパネル10は、上下方向及び車幅方向に延在する前板部11と、前板部11の下端から後方に下り傾斜して延出する傾斜部12と、傾斜部12の下端から後方に略水平に延出する床板部13と、車幅方向両端部に形成された一対のホイールアーチ形状部14と、を主に有している。なお、以下の説明において、ダッシュロアパネル10のホイールアーチ形状部14以外の部位を「一般部15」と称する場合がある。
【0040】
ホイールアーチ形状部14は、自動車Vの前輪の上半部を覆うホイールアーチ(図示省略)の一部を構成する部位である。ホイールアーチ形状部14は、車室2側に膨出する球面形状に形成されており、前板部11と傾斜部12とに跨るように設けられている。ホイールアーチ形状部14と一般部15(主に前板部11)との境界となる稜線部16は、ダッシュロアパネル10を折り曲げて形成した折れ線(稜線)からなり、後面視で円弧状に延設されている(
図2参照)。
【0041】
また、ダッシュロアパネル10は、車幅方向の中央部に下向きに開口する凹状の切欠部17を有している。切欠部17は、前板部11、傾斜部12及び床板部13に亘って形成されている。切欠部17には、後記するトンネル部材30が接合される。
さらに、ダッシュロアパネル10は、車幅方向の両端部から後方に向かって延出するダッシュフランジ部18を有している。ダッシュフランジ部18は、前板部11、ホイールアーチ形状部14、傾斜部12及び床板部13に亘って形成されている。ダッシュフランジ部18には、サイドシル50及びフロントピラーロア4(
図8参照)が接合される。また、床板部13の後端部にはフロアパネル5が接合される。
【0042】
図1、
図2及び
図4乃至
図7に示すように、補強パネル20は、各ホイールアーチ形状部14を車室2側から覆って補強する左右一対の板状部材である。補強パネル20は、例えばホットスタンプ成型によって高張力鋼板に湾曲形状や凹凸形状を施すことで所定の複雑形状に形成されている。補強パネル20の車内側の端部は、ホイールアーチ形状部14を越えて前板部11及び傾斜部12の一部を車室2側から覆っている。補強パネル20は、車幅方向に延びる横閉断面部21と、上下方向に延びる縦閉断面部24と、を有している。
【0043】
横閉断面部21は、ホイールアーチ形状部14と協働して車幅方向に延びる閉断面を形成する部位である。横閉断面部21は、補強パネル20の一部を車室2側に膨出させて形成されている。本実施形態では、横閉断面部21は、下側の第1横閉断面部22と、第1横閉断面部22から上側に離間して設けられた第2横閉断面部23と、から構成されている。なお、横閉断面部21の数は特に限定されない。
【0044】
図4、
図5、
図6に示すように、第1横閉断面部22は、鉛直断面視で略逆L字形状に形成されており、上下方向に延在する縦壁部22aと、縦壁部22aの上端から前方に延出する上壁部22bと、を有している。第1横閉断面部22は、ホイールアーチ形状部14と傾斜部12との境界となる下側の稜線部16に沿って延設されている。補強パネル20は、第1横閉断面部22の上側と下側でダッシュロアパネル10に例えばスポット溶接で接合されている。これにより、第1横閉断面部22とホイールアーチ形状部14とに囲まれた第1横閉断面C1が形成され、ホイールアーチ形状部14の下部が補強される。また、縦壁部22aの車外側端部付近には、溶接用の凹部22cが設けられている。第1横閉断面部22の車幅方向外側の端部には、後方に屈曲形成された横フランジ部22dが設けられている。横フランジ部22dは、ダッシュフランジ部18に車室2側から接合されている。
【0045】
図4、
図5に示すように、第2横閉断面部23は、鉛直断面視で前方に開口する溝形状に形成されており、上下方向に延在する縦壁部23aと、縦壁部23aの上端から前方に延出する上壁部23bと、縦壁部23aの下端から前方に延出する下壁部23cと、を有している。第2横閉断面部23は、ホイールアーチ形状部14の上下方向の略中間位置に沿って車幅方向に延設されている。補強パネル20は、第2横閉断面部23の上側と下側でダッシュロアパネル10に例えばスポット溶接で接合されている(
図5の*印参照)。これにより、第2横閉断面部23とホイールアーチ形状部14とに囲まれた第2横閉断面C2が形成され、ホイールアーチ形状部14の中間部が補強される。
【0046】
図4、
図7に示すように、縦閉断面部24は、ホイールアーチ形状部14と協働して上下方向に延びる縦閉断面C3を形成する部位である。縦閉断面部24は、補強パネル20の一部を車室2側に膨出させて形成されている。本実施形態では、縦閉断面部24は、車幅方向に互いに離間した複数の縦閉断面部24から構成されている。縦閉断面部24の数は特に限定されない。各縦閉断面部24は、水平断面視で前方に開口する溝形状に形成されている。縦閉断面部24は、横閉断面部21よりも膨出量(溝深さ)が小さい。
なお、以下の説明において、複数の縦閉断面部24のうち最も車幅方向内側にある縦閉断面部24を「最内側縦閉断面部25」と称する場合がある。
【0047】
各縦閉断面部24は、横閉断面部21と交差(本実施形態では直交)している。具体的には、各縦閉断面部24は、第1横閉断面部22の上壁部22bから第2横閉断面部23の下壁部23cまで延在している。さらに、最内側縦閉断面部25以外の縦閉断面部24は、第2横閉断面部23の上壁部23bから補強パネル20の上縁部26まで延在している。最内側縦閉断面部25は、他の縦閉断面部24よりも幅寸法が大きい。
【0048】
図7に示すように、補強パネル20は、各縦閉断面部24の左右両側でダッシュロアパネル10に例えばスポット溶接で接合されている(
図7の*印参照)。これにより、それぞれの縦閉断面部24とホイールアーチ形状部14とに囲まれた複数の縦閉断面C3が形成され、ホイールアーチ形状部14が上下方向に亘って補強される。さらに、
図4、
図5に示すように、補強パネル20の上縁部26は、前板部11とホイールアーチ形状部14との境界となる稜線部16よりも上側(ホイールアーチ形状部14の外側)で前板部11に接合されている。これにより、稜線部16が補強パネル20によって補強される。
図4、
図5に示すように、補強パネル20の下縁部27は、ホイールアーチ形状部14と傾斜部12との境界となる稜線部16よりも下側(ホイールアーチ形状部14の外側)で傾斜部12に接合されている。これにより、稜線部16が補強パネル20によって補強される。
【0049】
図1、
図2、
図3に示すように、ダッシュロアパネル10の車幅方向中央部(切欠部17)には、トンネル部材30が接続されている。トンネル部材30は、下向きに開口して上向きに凸となる溝形状(トンネル形状、逆U字形状)に屈曲形成された部材であり、前後方向に延設されている。トンネル部材30の内部(下方)には、図示しないプロペラシャフトや排気管等が収容される。トンネル部材30は、前側に配置された前側トンネル部材31と、前側トンネル部材31の後端に連結された後側トンネル部材32と、前側トンネル部材31の車室2と反対側の面(以下、「裏面」という場合がある。)に接合されたトンネル閉断面形成部材33と、の3部材で構成されている。トンネル部材30については、後に詳しく説明する。
【0050】
図1、
図4、
図6(主に
図4)に示すように、補強パネル20とトンネル部材30との間には、補強パネル20と別体に形成された第2横メンバ40が設置されている。
第2横メンバ40は、最も下側の横閉断面部21である第1横閉断面部22と共にいわゆるダッシュクロスメンバ80を構成する部材である。第2横メンバ40は、例えばホットスタンプ成型によって高張力鋼板を所定形状に折り曲げて形成されている。第2横メンバ40は、鉛直断面視で略逆L字形状に形成されており、上下方向に延在する横メンバ縦壁部41と、横メンバ縦壁部41の上端から前方に延出する横メンバ上壁部42と、横メンバ縦壁部41の下端から下方かつ後方に延出する横メンバ下フランジ部43と、横メンバ上壁部42の前端から上方且つ前方に延出する横メンバ上フランジ部44と、第2横メンバ40の車幅方向内側(トンネル部材30側)の端部からトンネル部材30の側壁に沿うように車室2側に延出する横メンバ端部フランジ部45と、を備えている。
【0051】
横メンバ下フランジ部43は、ダッシュロアパネル10の傾斜部12に接合されている。横メンバ上フランジ部44は、ダッシュロアパネル10の前板部11に接合されている。横メンバ端部フランジ部45は、前側トンネル部材31の側壁に接合されている。また、第2横メンバ40の車幅方向外側の端部は、第1横閉断面部22の車幅方向内側の端部に接合されている。また、第1横閉断面部22の車幅方向外側の端部には後記するサイドシル50の前端部が接合されている。第2横メンバ40によって形成される閉断面C7は、第1横閉断面部22によって形成される閉断面C1と連続している。ダッシュクロスメンバ80は、サイドシル50の前端部とトンネル部材30の前端部とを繋いでいる。換言すれば、ダッシュクロスメンバ80の車外側端部は、サイドシル50の前端部に支持され、ダッシュクロスメンバ80の中央部は、トンネル部材30の前端部に支持されている。ダッシュクロスメンバ80については、後に詳しく説明する。
【0052】
図4、
図6、
図8に示すように、ダッシュロアパネル10の車幅方向端部(左右端部)には、サイドシル50の前端部が接合されている。サイドシル50は、前後方向に延設された中空形状の部材であり、車室2側のサイドシルインナパネル51と、車外側のサイドシルアウタパネル52と、から構成されている。また、サイドシル50の前端部には、サイドシルインナパネル51とサイドシルアウタパネル52との間で前後方向に延びるジャッキアップスチフナ53が設置されている。
なお、
図8に示すように、ダッシュロアパネル10の車幅方向端部に設けたダッシュフランジ部18には、フロントピラーロア4も接合されている。サイドシル50は、フロントピラーロア4の下端部と図示しないセンタピラーの下端部とを連結している。
【0053】
図8に示すように、サイドシルインナパネル51は、基本的に、断面視で車外側に開口する溝形状(ハット形状)に形成されている。サイドシルインナパネル51の前端部51aは、第1横閉断面部22の横フランジ部22dに車室2側から重ね合わされている。そして、サイドシルインナパネル51の前端部51aと横フランジ部22dとダッシュフランジ部18とが、スポット溶接で互いに接合(3枚接合)されている。このとき、サイドシルインナパネル51の前端部51aは、第1横閉断面部22の縦壁部22aの後方に対向して配置された状態となる(
図4、
図6参照)。そのため、仮に、前突時にサイドシルインナパネル51と横フランジ部22dとの接合が外れても、サイドシルインナパネル51の前端部51aに第1横閉断面部22の縦壁部22aが当接することになる。
【0054】
ジャッキアップスチフナ53は、サイドシル50を補強してジャッキアップ時の荷重を支持する部材である。ジャッキアップスチフナ53の上端部53i及び下端部53jは、サイドシルインナパネル51とサイドシルアウタパネル52とにそれぞれ挟持されている。ジャッキアップスチフナ53の前端部には、車幅方向内側に向けて折曲形成されたスチフナフランジ部53aが設けられている。
【0055】
図3、
図5に示すように、ダッシュロアパネル10の動力源装置室3側には、車幅方向に延在するアウトリガ60が接合されている。
アウトリガ60は、例えば高張力鋼板をホットスタンプ成型で所定形状に折り曲げて形成されている。アウトリガ60は、ダッシュロアパネル10を挟んで第1横閉断面部22の反対側で車幅方向に延設されている。すなわち、アウトリガ60は、ホイールアーチ形状部14の下側の稜線部16を動力源装置室3側から覆っている。アウトリガ60は、ダッシュロアパネル10と協働して車幅方向に延びる閉断面を形成している。アウトリガ60の車幅方向外側の端部60a(
図6参照)は、ダッシュロアパネル10の車幅方向外側の端部(ダッシュフランジ部18)を越えて延出しており、ジャッキアップスチフナ53のスチフナフランジ部53aに接合されている。アウトリガ60の車幅方向内側の端部は、後記するフロントサイドフレーム70の屈曲部71の外側面に接合されている。
【0056】
図5に示すように、アウトリガ60は、鉛直断面視で略L字形状に形成されており、上下方向に延在するアウトリガ縦壁部61と、アウトリガ縦壁部61の下端から後方に延出するアウトリガ底壁部62と、を有している。アウトリガ縦壁部61の上端部には、断面視で略L字形状のアウトリガ上フランジ部61aが形成されている。アウトリガ上フランジ部61aは、第1横閉断面部22と第2横閉断面部23との間に配置されており、ホイールアーチ形状部14を介して補強パネル20に接合(3枚接合)されている(
図5の*印参照)。また、アウトリガ縦壁部61の上下方向の中間部61bは、第1横閉断面部22よりも下側(ホイールアーチ形状部14の下側の稜線部16付近)で、ホイールアーチ形状部14を介して第1横閉断面部22の凹部22cに接合(3枚接合)されている。アウトリガ縦壁部61のアウトリガ上フランジ部61aと中間部61bの間の部位は、ホイールアーチ形状部14の前面から離間している。これにより、第1横閉断面部22の前方(ダッシュロアパネル10を挟んで反対側)に、ホイールアーチ形状部14とアウトリガ縦壁部61とによって車幅方向に延びるアウトリガ第1閉断面C4が形成される。つまり、第1横閉断面C1とアウトリガ第1閉断面C4とによって断面積の大きな一つの閉断面が形成されたような状態となる。
【0057】
アウトリガ縦壁部61の下端部は、ホイールアーチ形状部14の下側の稜線部16よりも下方に配置されている。また、アウトリガ底壁部62は、傾斜部12よりも下方に配置されている。アウトリガ底壁部62の後端部には、断面視で略逆L字形状のアウトリガ下フランジ部62aが形成されている。アウトリガ下フランジ部62aは、傾斜部12と床板部13との境界部付近に接合されている。これにより、ダッシュロアパネル10とアウトリガ底壁部62とによってアウトリガ第2閉断面C5が形成される。これにより、アウトリガ第1閉断面C4及びアウトリガ第2閉断面C5を形成する中空構造によって、後記するフロントサイドフレーム70とサイドシル50とが連結された状態となる。
なお、
図20に示すように、凹部22cが無い箇所では、アウトリガ縦壁部61の上下方向の中間部61bは、ホイールアーチ形状部14及び第1横閉断面部22に接合されていない。アウトリガ縦壁部61のアウトリガ上フランジ部61a以外の部位は、ホイールアーチ形状部14の前面から離間している。これにより、アウトリガ第1閉断面C4とアウトリガ第2閉断面C5が連続している。
【0058】
図3、
図9に示すように、ダッシュロアパネル10の動力源装置室3側には、前後方向に延在する一対のフロントサイドフレーム70が接合されている。
一対のフロントサイドフレーム70は、略四角筒状に形成された中空の骨格部材であり、フロントサイドフレーム70の間に配置されたエンジンなどの動力源装置Pを支持している。各フロントサイドフレーム70の前端部は、図示しないバンパビームの左右両端部にそれぞれ接合されている。各フロントサイドフレーム70の後端部は、ダッシュロアパネル10の前板部11及び傾斜部12に動力源装置室3側から接合されている。より詳しくは、フロントサイドフレーム70の後端部には、前板部11及び傾斜部12に沿って下向きに屈曲する屈曲部71が設けられている。屈曲部71は、断面視で後向き(あるいは上向き)に開口する溝形状(ハット形状)に形成されている。屈曲部71は、ダッシュロアパネル10に接合されることで、前板部11及び傾斜部12と協働して前後方向に延在するフロント閉断面C6を形成している。ダッシュロアパネル10を挟んで屈曲部71(より詳しくは屈曲部71の上半部)の反対側には、補強パネル20の最内側縦閉断面部25が配置されている。屈曲部71の後端部は、フロアパネル5を間に挟んで第2フロアフレーム100に下方から重ね合わされてスポット溶接で互いに接合(3枚接合)されている。
【0059】
屈曲部71の下面には、動力源装置Pのマウント部(図示省略)を取り付けるための取付部72が接合されている。また、屈曲部71の内部であって取付部72の前後には、一対のスチフナ73,74が設置されている。スチフナ73,74は、補強用の板状部材であり、フロント閉断面C6を前後に区画している。スチフナ73,74の上端部及び下端部は、ダッシュロアパネル10及び屈曲部71にそれぞれ接合されている。
【0060】
図4、
図6に示すように、第1横閉断面部22の上壁部22bは、一般部15である傾斜部12とホイールアーチ形状部14との境界となる稜線部16に対応する部位において前後方向の幅寸法Wが最大となっている。より詳しくは、上壁部22bの後端部(つまり縦壁部22a)は、車幅方向外側に向かう程後方に位置するように略直線的に延設されている。一方、上壁部22bの前端部は、傾斜部12及びホイールアーチ形状部14の後面形状に沿って形成されている。上壁部22bの前端部に対向する傾斜部12は、前後方向に略直交する方向(左右方向と平行)に延在している。また、上壁部22bの前端部に対向するホイールアーチ形状部14は、車幅方向外側に向かう程後方に位置するように車室2側に円弧状に張り出している。そのため、ホイールアーチ形状部14と傾斜部12との境界となる稜線部16において、ダッシュクロスメンバ80と縦壁部22aとの距離が最も大きくなり、ひいては上壁部22bの前後方向の寸法が大きくなる。
【0061】
次に、トンネル部材30及びダッシュクロスメンバ80の構造について、主に
図10乃至
図15を参照して詳細に説明する。
【0062】
図10乃至
図14に示すように、前側トンネル部材31は、例えば高張力鋼板よりも強度の低い一般鋼板をプレス成型で下向きに開口する溝形状に折り曲げて形成した部材である。前側トンネル部材31は、上壁を構成する前側トンネル上壁部31aと、前側トンネル上壁部31aの左右端部から下方にそれぞれ延出して側壁を構成する前側トンネル左壁部31b及び前側トンネル右壁部31cと、これら上壁及び側壁の前端部及び下端部に屈曲形成された前側トンネルフランジ部31dと、を備えている。前側トンネル上壁部31aは、前方に向かう程上方に位置するように傾斜している。前側トンネル上壁部31aは、前後方向の中央部で車幅方向に延びるビード形状部31eを有する。ビード形状部31eは、車室2側の面が凸状となるとともに車室2と反対側の面が凹状となっている(
図14参照)。本実施形態では、前側トンネル左壁部31b及び前側トンネル右壁部31cは平坦に形成されている。前側トンネルフランジ部31dは、切欠部17の縁部に接合されている。
【0063】
後側トンネル部材32は、トンネル部材30の本体を構成する部材である。後側トンネル部材32は、例えば高張力鋼板をホットスタンプ成型で下向きに開口する溝形状に折り曲げて形成した部材であり、略水平に延在している。後側トンネル部材32の左右の下端部には、フロアパネルの車幅方向内側端部が接合される。
ここで、ホットスタンプ成形とは、熱間プレス成形ともいわれ、鋼板を加熱して軟化させた状態でプレス加工を行い、同時に金型との接触による冷却効果で焼き入れを行う成型方法である。加熱軟化によって鋼板のスプリングバックが抑制され寸法精度が向上すると共に、焼き入れによって部材の高強度化が図られるという特徴がある。
【0064】
図12乃至
図14に示すように、トンネル閉断面形成部材33は、前側トンネル部材31よりも前後方向の幅が小さい帯状の部材である。トンネル閉断面形成部材33は、例えば細長い帯状の高張力鋼板をプレス成型で逆U字形状に折り曲げて形成されている。トンネル閉断面形成部材33は、前側トンネル上壁部31aの裏面に接合される上帯部33aと、前側トンネル左壁部31bの裏面に接合される左帯部33bと、前側トンネル右壁部31cの裏面に接合される右帯部33cと、前側トンネル部材31側の面が凹状となりその反対側の面が凸状となるビード形状部33dと、を有している。トンネル閉断面形成部材33は、前側トンネル部材31の前後方向の中央部に接合されている。
【0065】
ビード形状部33dは、トンネル閉断面形成部材33の短手方向の中央部に長手方向の全長に亘って連続して形成されている。ビード形状部33dは、トンネル閉断面形成部材33を前側トンネル部材31に接合したときに、前側トンネル部材31の裏面から離間して閉断面C8を形成する。これにより、前側トンネル部材31の前後方向の中央部に、前側トンネル左壁部31bから前側トンネル上壁部31aを通り前側トンネル右壁部31cまで車幅方向に連続するトンネル閉断面部35が形成される。トンネル閉断面部35は、後記するダッシュクロスメンバ80の中央部の一部を構成する。
【0066】
また、前側トンネル部材31のうち、トンネル閉断面形成部材33が接合された部位(すなわちトンネル閉断面部35)よりも前側及び後側の領域には、前側脆弱部36及び後側脆弱部37が形成される。前側脆弱部36及び後側脆弱部37は、例えば一枚の一般鋼板で構成されているので、高張力鋼板で形成されたトンネル本体部としての後側トンネル部材32よりも、前方からの荷重に対する圧縮強度が小さい。また、前側脆弱部36及び後側脆弱部37は、トンネル閉断面形成部材33によって補強されていないので、トンネル閉断面部35よりも圧縮強度が小さい。
【0067】
図13に示すように、左帯部33bの下端部は、ビード形状部33dの前後両側で、前側トンネル左壁部31bを介して左側の横メンバ端部フランジ部45に接合(3枚接合)されている。図示は省略するが、同様に、右帯部33cの下端部も、ビード形状部33dの前後両側で、前側トンネル右壁部31cを介して右側の横メンバ端部フランジ部45に接合(3枚接合)されている。換言すれば、前側トンネル部材31の左右両側に設けられた第2横メンバ40が、トンネル閉断面形成部材33によって連結されている。
【0068】
また、
図14に示すように、上帯部33aは、前側トンネル上壁部31aのビード形状部31eに沿って接合されている。これにより、上帯部33aのビード形状部33dが、前側トンネル上壁部31aのビード形状部31eに対向して配置された状態になる。そのため、トンネル閉断面部35のうち、前側トンネル上壁部31aに対応する部分の断面積が大きくなり、剛性・強度が向上する。
【0069】
図14に示すように、トンネル閉断面形成部材33は、前側トンネル部材31の裏面に接合されている。一方、後記するパネル閉断面形成部材83の一部としての第2横メンバ40は、ダッシュロアパネル10の車室2側の面に接合されている。そのため、トンネル閉断面形成部材33を前側トンネル部材31の車室2側の面に接合する場合に比較して、閉断面C7と閉断面C8の上下方向のオフセット量Hが小さくなる。
【0070】
図10に示すように、ダッシュクロスメンバ80は、ダッシュロアパネル10の車室2側に設けられ、車幅方向に延在する閉断面を構成する骨格部材である。ダッシュクロスメンバ80は、左右両側のフロントピラーロア4を繋いでいる。ダッシュクロスメンバ80は、平面視で車幅方向の両端部よりも中央部が前方に位置する凸形状を呈している。ダッシュクロスメンバ80は、ダッシュロアパネル10と協働して閉断面を形成するパネル閉断面形成部材83と、前側トンネル部材31と協働して閉断面を形成するトンネル閉断面形成部材33と、を備えている。
【0071】
パネル閉断面形成部材83は、トンネル部材30の両側でダッシュロアパネル10の車室2側の面に接合される部材である。パネル閉断面形成部材83は、トンネル部材30の車幅方向両側に車幅方向と平行に設置される一対の車幅方向部材81としての第2横メンバ40と、車幅方向部材81の外側端部にそれぞれ接続され、車幅方向外側に向かう程後方に位置する一対の後方傾斜部材82としての第1横閉断面部22と、から構成されている。車幅方向部材81としての第2横メンバ40は、前側トンネル部材31を介してトンネル閉断面形成部材33に連結されている。後方傾斜部材82としての第1横閉断面部22は、補強パネル20と一体に形成されている。
【0072】
図15に示すように、車幅方向部材81としての第2横メンバ40とダッシュロアパネル10とによって形成される閉断面C7は、後方傾斜部材82としての第1横閉断面部22とダッシュロアパネル10とによって形成される閉断面C1よりも断面積が小さい(
図5、
図6参照)。また、後方傾斜部材82としての第1横閉断面部22は、車幅方向部材81としての第2横メンバ40に対して筋交いのように斜めに配置されている。そのため、車幅方向部材81は、前方からの荷重に対して後方傾斜部材82よりも曲げ強度が低い。
【0073】
図15に示すように、ダッシュロアパネル10の左側の傾斜部12には、自動車Vのアクセルペダル等(図示省略)を支持するためのペダルブラケット90が設置されている。ペダルブラケット90は、車幅方向部材81としての第2横メンバ40を上下に跨いで設置されている。具体的には、ペダルブラケット90は、第2横メンバ40に対して後方にクリアランスSを有して配置されたブラケット本体91と、ブラケット本体91の上端から前方に延出し、第2横メンバ40の上方かつ前方で傾斜部12に接合された上脚部92と、ブラケット本体91の下端から下方に延出し、第2横メンバ40の下方かつ後方で傾斜部12に接合された下脚部93と、を有している。ブラケット本体91には、アクセルペダル等を取り付けるための貫通孔91aが形成されている。
【0074】
次に、アウトリガ60、ダッシュクロスメンバ80、サイドシル50、第2フロアフレーム100、斜めブレース110、トンネル側フロアフレーム120、及び、第1横メンバ130について、主に
図3、
図16乃至
図21を参照して詳細に説明する。
【0075】
図16、
図17に示すように、アウトリガ60は、フロントサイドフレーム70とサイドシル50との間に設けられている。アウトリガ60の車幅方向内側の端部60bは、フロントサイドフレーム70の屈曲部71の外側面71a及びダッシュロアパネル10に溶接で接合されている。アウトリガ60の車幅方向外側の端部60aには、複数の(本実施形態では3つの)ボルト孔60cが上下に並んで形成されている。
【0076】
下側2つのボルト孔60cは、後記するジャッキアップスチフナ53と蓋部材140との締結用に使用される。残りのボルト孔60cは、後記するフロントピラーロアスチフナ4aと蓋部材140との締結用に使用される。ボルト孔60cの裏側(アウトリガ60の後面)には、ナットNが溶接で接合されている。
【0077】
図16に示すように、ダッシュクロスメンバ80の補強パネル20や第2横メンバ40は、例えば、ホットスタンプ成型によって高張力鋼板を所定形状に折り曲げて形成されている。第1横閉断面部22の車幅方向外側の端部には、横フランジ部22dが後方に折り曲げて形成されている。横フランジ部22dは、サイドシル補強パネル54の前方において、サイドシルインナパネル51の前端部51aの側面に車外側から重ね合わされている。そして、横フランジ部22dは、サイドシルインナパネル51の前端部51aとダッシュフランジ部18との間に左右に挟み込まれて、スポット溶接で互いに接合(3枚接合)されている。
【0078】
サイドシル50は、車体の車幅方向外側の両端部に設けられている。サイドシル50の前端部50aの開口(詳しくはサイドシルアウタパネル52とジャッキアップスチフナ53との間の開口)は、板状の蓋部材140により前方から閉塞されている。
【0079】
図17に示すように、サイドシル50は、車室2側のサイドシルインナパネル51と、車外側のサイドシルアウタパネル52と、から構成されている。サイドシル50の前端部50aの内部には、サイドシルインナパネル51とサイドシルアウタパネル52との間で前後方向に延びるジャッキアップスチフナ53が設置されている。ジャッキアップスチフナ53の上端部53i及び下端部53jは、サイドシルインナパネル51とサイドシルアウタパネル52とにそれぞれ挟持されている。サイドシルインナパネル51の車外側の面には、前後方向に延びる高強度部材たるサイドシル補強パネル54が設置されている。サイドシル50の前端部50aには、フロントピラーロア4が立設されている。
【0080】
サイドシルインナパネル51は、上側のサイドシルインナアッパ51bと、下側のサイドシルインナロア51cと、に二分割されて構成されている。サイドシルインナアッパ51bは、プレス成型によって一般鋼板を所定形状に折り曲げて形成されている。サイドシルインナアッパ51bは、前後方向に延在する2つの角稜部51dを備えている。サイドシルインナロア51cは、例えばホットスタンプ成型によって高張力鋼板を所定形状に折り曲げて形成されている。サイドシルインナロア51cは、高張力鋼板で形成されているので、一般鋼板で形成されたサイドシルインナアッパ51bよりも強度が高い。
【0081】
サイドシルインナアッパ51bの下端部には、車室2側に延出するアッパ接合フランジ51eが設けられている。サイドシルインナロア51cの車幅方向内側の端部には、車室2側に延出するロア接合フランジ51fが設けられている。アッパ接合フランジ51eとロア接合フランジ51fとフロアパネル5の車幅方向外側の端部5aは、上下に重ね合わされてスポット溶接で互いに接合(3枚接合)されている。アッパ接合フランジ51eとロア接合フランジ51fの近傍部位には、図示せぬタイダウンフックを係合させるタイダウンブラケット150が設置されている。なお、アッパ接合フランジ51eとロア接合フランジ51fとは、フロアパネル5の車幅方向外側の端部5aを間に挟んで上下に重ね合わされてスポット溶接で互いに接合(3枚接合)されてもよい。
【0082】
サイドシルアウタパネル52は、基本的に、断面視で車室2側に開口する溝形状(ハット形状)に形成されている。サイドシルアウタパネル52は、高張力鋼板をプレス成型で所定形状に折り曲げて形成されている。サイドシルアウタパネル52は、高張力鋼板で形成されているので、一般鋼板で形成されたサイドシルインナアッパ51bよりも強度が高い。
【0083】
高強度部材たるサイドシル補強パネル54は、例えばホットスタンプ成型によって高張力鋼板を所定形状に折り曲げて形成されている。サイドシル補強パネル54は、高張力鋼板で形成されているので、一般鋼板で形成されたサイドシルインナアッパ51bよりも強度が高い。サイドシル補強パネル54は、サイドシルインナアッパ51bの角稜部51dに沿って配置されている。
【0084】
図19に示すように、サイドシル50の前端部50a付近には、潰し空間CS(
図19の二点鎖線で囲われた箇所参照)が設けられている。潰し空間CSは、例えば、対向車等の衝突物が自動車Vに衝突したとき、衝突荷重を受けて潰れることで衝突エネルギーを吸収するように形成された空間(領域)である。潰し空間CSは、高強度のサイドシル補強パネル54及びサイドシルインナロア51cをアウトリガ60に対して後方に離間し、サイドシル補強パネル54の前端部54a及びサイドシルインナロア51cの前端部51c1よりも前方の強度を相対的に小さくすることで形成されている。なお、サイドシルインナアッパ51bの前端部51b1は、サイドシルインナロア51cの前端部51c1及びサイドシル補強パネル54の前端部54aよりも前方に位置している。
【0085】
潰し空間CSは、アウトリガ60と、サイドシルインナロア51cの前端部51c1及びサイドシル補強パネル54の前端部54aとの間に設けられている。すなわち、潰し空間CSの前後方向の範囲は、アウトリガ60からサイドシルインナロア51cの前端部51c1及びサイドシル補強パネル54の前端部54aまでの範囲となる。潰し空間CSの上下方向の範囲は、サイドシル50の上端から下端までの範囲となる。
【0086】
図18、
図19に示すように、ジャッキアップスチフナ53は、フロントピラーロア4の下方に設置されている。ジャッキアップスチフナ53の前端部には、車幅方向内側に向けて折曲形成されたスチフナフランジ部53aが設けられている。前フランジたるスチフナフランジ部53aには、2つのボルト孔53cがアウトリガ60の下側2つのボルト孔60cに対応する位置に設けられている。また、蓋部材140には、3つのボルト孔140aがアウトリガ60のボルト孔60cに対応する位置に設けられている。フロントピラーロアスチフナ4aには、ボルト孔4cがアウトリガ60の上側1つのボルト孔60cに対応する位置に設けられている。アウトリガ60の車幅方向外側の端部60aは、ジャッキアップスチフナ53の前端部53bとなるスチフナフランジ部53aと蓋部材140とに前後に重ね合わされてボルトBで一体的に固定されている。また、アウトリガ60の車幅方向外側の端部60aは、蓋部材140とフロントピラーロアスチフナ4aとに前後に重ね合わされてボルトBで一体的に固定されている。
【0087】
ジャッキアップスチフナ53の下端部の前側には、図示せぬジャッキによって支持されるジャッキアップ部53dが設けられている。ジャッキアップ部53dは、他の部位よりも下方へ突出している。ジャッキアップスチフナ53には、側面視で円形状又は縦長楕円状の貫通孔53eが複数形成されている。貫通孔53eは、ジャッキアップスチフナ53のほぼ全域に亘って形成されているが、潰し空間CSに位置する前部側程多く配置されている。ジャッキアップ部53dの上方に位置する貫通孔53eを含む複数の貫通孔53eの周縁には、車室2側に膨出する段部53fが形成されている。
【0088】
ジャッキアップスチフナ53は、貫通孔53eを具備する一枚の一般鋼板で形成されているので、一部又は全部が高張力鋼板で形成されかつ貫通孔を具備しないサイドシルインナパネル51及びサイドシルアウタパネル52よりも、前方からの荷重に対する圧縮強度が低い。これにより、スモールオフセット衝突等の際に、ジャッキアップスチフナ53が潰れやすくなる。ジャッキアップスチフナ53の上端部53iは、フロントピラーロアインナ4bの下端部に溶接で接合されている。ジャッキアップスチフナ53は、サイドシルインナパネル51とフロントピラーロア4との交差部Iよりも後方に延出する延長部53gを有している。
【0089】
ここで、フロントピラーロア(フロントピラー)4が前方から衝突荷重を受けて後方へ倒れる際の基点となる折れ部について説明する。
図18の符号Y2は、延長部53gがない場合の折れ部の位置を示している。すなわち、ジャッキアップスチフナ53の後端部53hが前後方向においてサイドシルインナパネル51とフロントピラーロア4との交差部Iと一致する場合には、折れ部Y2が交差部Iと一致する。これに対し、本実施形態では、ジャッキアップスチフナ53は、サイドシルインナパネル51とフロントピラーロア4との交差部Iよりも後方に延出する延長部53gを有するため、フロントピラーロア4の折れ部Y1が交差部Iよりも後方に位置する。このため、本実施形態では、延長部53gがない場合に比べ、フロントピラーロア4が後方へ倒れにくくなる。
【0090】
図16に示すように、フロアパネル5の上面には、前後方向に延在する第2フロアフレーム100が設置されている。第2フロアフレーム100は、サイドシル50に対して車幅方向内側に離間して設置されている。第2フロアフレーム100は、トンネル部材30(
図10参照)に対して車幅方向外側に離間して設置されている。すなわち、第2フロアフレーム100は、サイドシル50とトンネル部材30との間に設置されている。第2フロアフレーム100は、フロアパネル5の上面に溶接で接合されている。
【0091】
フロアパネル5の上面には、斜めブレース110が設置されている。斜めブレース110は、潰し空間CSよりも後方に配置されていて、サイドシル50と第2フロアフレーム100とを連結する部材である。斜めブレース110は、サイドシル50を車室2側から支持し、サイドシル50の車室2側への折れ曲がりを抑制する役割を果たす。このため、サイドシル50と斜めブレース110との連結部位の強度は、それよりも前方にある潰し空間CSの強度よりも強く設定されている。斜めブレース110は、例えば、プレス成型によって鋼板を略ハット状に折り曲げて形成されている。斜めブレース110の一端部は、サイドシルインナパネル51に溶接で接合されている。斜めブレース110の他端部は、第2フロアフレーム100に溶接で接合されている。斜めブレース110は、サイドシル50から第2フロアフレーム100へ向けて車幅方向内側に向かう程後方に位置するように傾斜して配置されている。
【0092】
図3に示すように、フロアパネル5の下面には、前後方向に延在するトンネル側フロアフレーム120が設置されている。第1フロアフレームたるトンネル側フロアフレーム120は、フロントサイドフレーム70に対して車幅方向内側に離間して配置されている。トンネル側フロアフレーム120は、フロアパネル5の下面に溶接で接合されている。第1横メンバ130の車幅方向外側の端部は、フロントサイドフレーム70の側壁に溶接で接合されている。第1横メンバ130の車幅方向内側の端部は、トンネル部材30の側壁に溶接で接合されている。
【0093】
ダッシュロアパネル10の動力源装置室3側には、車幅方向に延在する第1横メンバ130が接合されている。第1横メンバ130は、フロントサイドフレーム70を間に挟んでアウトリガ60と反対側に設けられている。第1横メンバ130は、トンネル側フロアフレーム120の前端部に溶接で接合されている。第1横メンバ130は、例えば、ホットスタンプ成型によって高張力鋼板を所定形状に折り曲げて形成されている。
【0094】
図21に示すように、第1横メンバ130は、鉛直断面視で略ハット形状に形成されている。第1横メンバ130は、上下方向に延在し前方に凸状に屈曲された第1横メンバ縦壁部131と、第1横メンバ縦壁部131の下端から後方に延出する第1横メンバ下壁部132と、第1横メンバ下壁部132の下端から下方かつ後方に延出する第1横メンバ下フランジ部133と、第1横メンバ縦壁部131の上端から上方かつ前方に延出する第1横メンバ上フランジ部134と、を備えている。
【0095】
第1横メンバ下フランジ部133および第1横メンバ上フランジ部134は、ダッシュロアパネル10の傾斜部12に溶接で接合されている。これにより、傾斜部12と、第1横メンバ縦壁部131及び第1横メンバ下壁部132とによって車幅方向に延びる第1横メンバ閉断面C9が形成される。第1横メンバ上フランジ部134と傾斜部12と横メンバ下フランジ部43は、スポット溶接で互いに接合(3枚接合)されている。第1横メンバ130は、ダッシュクロスメンバ80の第2横メンバ40の下方に近接配置されている。
【0096】
図20に示すように、アウトリガ底壁部62は、補強パネル20の下縁部27よりも下方に配置されるとともに、補強パネル20の下縁部27よりも後方に延出している。これにより、アウトリガ下フランジ部62aは、補強パネル20の下縁部27よりも下方かつ後方に配置されている。補強パネル20において、下壁部23cと上壁部22bとの間には、ダッシュロアパネル10に接合される略鉛直状のクロスメンバフランジ28が形成されている。クロスメンバフランジ28とアウトリガ上フランジ部61aは、ダッシュロアパネル10を間に挟んでスポット溶接で互いに接合(3枚接合)されている。クロスメンバフランジ28は、特許請求の範囲のクロスメンバ上フランジに相当する。下縁部27は、特許請求の範囲のクロスメンバ下フランジに相当する。
【0097】
ここで、ダッシュロアパネル10との間で、ダッシュクロスメンバ80、アウトリガ60、及び、第1横メンバ130が形成する閉断面C1,C4,C7,C9について詳細に説明する。
図20に示すように、ダッシュロアパネル10とダッシュクロスメンバ80の一部を成す第1横閉断面部22とによって、車幅方向に延びる第1横閉断面C1が形成されている。ダッシュロアパネル10とアウトリガ60のアウトリガ縦壁部61とによって車幅方向に延びるアウトリガ第1閉断面C4が形成されている。第1横閉断面C1とアウトリガ第1閉断面C4は、前後方向で重なる位置にあり、断面積の大きな断面重なり領域T1を構成している。第1横閉断面C1は、特許請求の範囲における第1閉断面の一部に相当する。アウトリガ第1閉断面C4は、特許請求の範囲における第2閉断面に相当する。
【0098】
図21に示すように、ダッシュロアパネル10とダッシュクロスメンバ80の一部を成す第2横メンバ40とによって、車幅方向に延びる閉断面C7が形成されている。ダッシュロアパネル10と第1横メンバ縦壁部131及び第1横メンバ下壁部132とによって車幅方向に延びる第1横メンバ閉断面C9が形成されている。第1横メンバ閉断面C9は、閉断面C7の下方かつ後方に位置していて、両者は、前後方向で重ならない位置にある。すなわち、閉断面C7と第1横メンバ閉断面C9は、上下方向でずれた位置にあり、断面重なり領域T1よりも断面強度が低い断面ずれ領域T2を構成している。閉断面C7は、特許請求の範囲における第1閉断面の一部に相当する。第1横メンバ閉断面C9は、特許請求の範囲における第3閉断面に相当する。
【0099】
本実施形態に係る車体構造1は、基本的に以上のように構成されるものであり、次に、車体構造1の作用効果について説明する。
【0100】
本実施形態に係る車体構造1によれば、アウトリガ60は、前方からの荷重に対してサイドシル50よりも圧縮強度が低いジャッキアップスチフナ53の前端部53bに結合されるので、スモールオーバーラップ衝突やフロントピラーへの斜め衝突の際に、ジャッキアップスチフナ53が潰れることで衝突エネルギーを吸収することができる。そのため、乗員に加わる減速の加速度を低減することができる。
【0101】
また、アウトリガ60とサイドシル補強パネル54の前端部54aとの間には潰し空間CSが設けられるので、衝突の際にアウトリガ60が後退した場合には、潰し空間CSが潰れることで衝突エネルギーを吸収することができる。また、ダッシュクロスメンバ80の車幅方向外側の端部は、サイドシル補強パネル54の前方においてサイドシルインナパネル51に結合されるので、アウトリガ60が後退しても、ダッシュクロスメンバ80はサイドシル補強パネル54によって後方から支持されて後退しにくくなり、車室2の変形が抑制される。そのため、衝突エネルギーの吸収促進と車室2の変形抑制を両立することができる。
【0102】
また、ジャッキアップスチフナ53には、複数の貫通孔53eが形成されているので、衝突の際にジャッキアップスチフナ53が潰れやすくなるとともに、ジャッキアップスチフナ53の軽量化を図ることができる。
【0103】
また、ジャッキアップ部53dの上方に位置する貫通孔53eの周縁には、段部53fが形成されているので、ジャッキアップスチフナ53が前方からの荷重に対して弱くなって潰れやすくなる一方、上下方向の荷重に対しては強くなる。
【0104】
前面衝突でフロントサイドフレーム70に衝突荷重が加わった場合には、フロントサイドフレーム70の後端からダッシュクロスメンバ80に衝突荷重が伝わる。そして、ダッシュクロスメンバ80は、第1横閉断面C1とアウトリガ第1閉断面C4との断面重なり領域T1よりも、断面強度の低い閉断面C7と第1横メンバ閉断面C9との断面ずれ領域T2の方が後退する量(変形量)が大きくなる。これにより、衝突エネルギーを吸収して、乗員に加わる減速の加速度を低減することができる。また、車幅方向の中央部側に位置する断面ずれ領域T2の後退量が大きくても、ダッシュクロスメンバ80が平面視で車幅方向の両端部よりも中央部が前方に位置する凸形状を呈するため、衝突エネルギーを吸収しながら車室2側の空間を広く確保することができる。
【0105】
また、クロスメンバフランジ28とアウトリガ上フランジ部61aは、ダッシュロアパネル10を間に挟んで接合されるとともに、アウトリガ下フランジ部62aは、クロスメンバ下フランジとしての下縁部27よりも後方に配置されるので、スモールオーバーラップ衝突等の際に、アウトリガ60の変形を許容して衝突エネルギーを吸収することができるとともに、ダッシュクロスメンバ80の変形を抑制して乗員の脚部へのダメージを軽減することができる。
【0106】
また、サイドシルインナアッパ51bのアッパ接合フランジ51eと、サイドシルインナアッパ51bよりも強度が高いサイドシルインナロア51cのロア接合フランジ51fと、フロアパネル5の車幅方向外側の端部5aとは、上下に重ね合わされてスポット溶接で互いに接合され、サイドシル補強パネル54は、サイドシルインナアッパ51bの角稜部51dに沿って配置される。このため、サイドシルインナパネル51の軽量化を図りながら、衝突荷重を支持できる強度を確保することができる。
【0107】
また、アッパ接合フランジ51e及びロア接合フランジ51fの近傍部位には、タイダウンフックを係合させるタイダウンブラケット150が設置されているので、サイドシルインナパネル51において、アッパ接合フランジ51e及びロア接合フランジ51fの近傍部位の強度を高めることができる。
【0108】
また、アウトリガ60の車幅方向内側の端部60bは、フロントサイドフレーム70の外側面及びダッシュロアパネル10に溶接で接合され、アウトリガ60の車幅方向外側の端部60aは、ジャッキアップスチフナ53のスチフナフランジ部53aと蓋部材140とに前後に重ね合わされてボルトBで固定される。このため、溶接やボルトBを駆使して部材同士を組み付けるので、支障なく組付作業を行うことができるとともに、部材間の組付強度を向上させることができる。
【0109】
また、第1横閉断面部22が補強パネル20と一体に形成されているので、衝突荷重に対するダッシュクロスメンバ80の支持機能が高められる。
【0110】
また、前面衝突でフロントサイドフレーム70に衝突荷重が加わった場合には、フロントサイドフレーム70の後端からダッシュクロスメンバ80に衝突荷重が伝わる。ダッシュクロスメンバ80に近接する第1横メンバ130にも衝突荷重が伝わるものの、第1横メンバ130はトンネル側フロアフレーム120に支持されているので、第1横メンバ130の車室2側への変形を抑制できる。
【0111】
また、フロントサイドフレーム70の屈曲部71の後端部は、第2フロアフレーム100に結合されるので、前面衝突でフロントサイドフレーム70に加わった衝突荷重を、第2フロアフレーム100に伝達可能となる。
【0112】
また、サイドシル50の車幅方向内側が斜めブレース110により支持されているため、サイドシル50と斜めブレース110との連結部位の強度は、それよりも前方にある潰し空間CSの強度よりも強くなる。そのため、スモールオーバーラップ衝突等の際に、サイドシル50は、斜めブレース110との連結部位よりも前方の潰し空間CSが局部的に潰れることで衝突エネルギーを吸収することができ、斜めブレース110との連結部位よりも後方部位の変形を好適に抑制することができる。
【0113】
また、ジャッキアップスチフナ53の後部がサイドシルインナパネル51とフロントピラーロア4との交差部Iよりも後方に延出してサイドシルインナパネル51に固定されるので、スモールオーバーラップ衝突等の際に、衝突荷重を受けて折れ曲がるフロントピラーロア4の折れ部Y1を交差部Iよりも後方に設定できる。これにより、フロントピラーロア4が後方へ倒れにくくなるため、ドア開口部の形状が維持されて、図示せぬフロントサイドドアが開き難くなることを抑制できる。
【0114】
以上、本実施形態に係る車体構造1について、図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0115】
例えば、第1横閉断面部22は、補強パネル20と別体に構成してもよい。また、第1横閉断面部22と第2横メンバ40を一体に形成してもよい。