(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
発明の詳細な説明
定義
「組織因子」、「TF」、「CD142」、「組織因子抗原」、「TF抗原」、および「CD142抗原」という用語は本明細書において同義に用いられ、特に定めのない限り、細胞によって天然に発現されたヒト組織因子、または組織因子遺伝子でトランスフェクトされた細胞上に発現されたヒト組織因子の任意の変異体、アイソフォーム、および種ホモログを含む。
【0020】
「免疫グロブリン」という用語は、一対が低分子量の軽鎖(L)、一対が重鎖(H)の二対のポリペプチド鎖からなり、4本全てがジスルフィド結合で相互接続されている場合がある、構造的に関連する糖タンパク質のクラスをいう。免疫グロブリンの構造ははっきり特徴づけられている。例えば、Fundamental Immunology Ch. 7 (Paul, W., ed., 2nd ed. Raven Press, N. Y.(1989))を参照されたい。簡単に述べると、それぞれの重鎖は、典型的には、重鎖可変領域(本明細書では、VHまたはVHと省略する)および重鎖定常領域からなる。重鎖定常領域は、典型的には、3つのドメイン、CH1、CH2、およびCH3からなる。それぞれの軽鎖は、典型的には、軽鎖可変領域(本明細書ではVLまたはVLと省略する)および軽鎖定常領域からなる。軽鎖定常領域は、典型的には、1つのドメインCLからなる。VHおよびVL領域は、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる超可変性領域(または配列が著しく変化し得る、および/もしくは構造が規定されたループの形をとり得る超可変領域)にさらに細分することができ、超可変性領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域と共に散在している。それぞれのVHおよびVLは、典型的には、3つのCDRおよび4つのFRからなり、アミノ末端からカルボキシ末端に向かって、以下の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で並べられている(Chothia and Lesk J. Mol. Biol.
196, 901-917 (1987)も参照されたい)。典型的には、この領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、IMGT., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD.(1991)に従う(本明細書における、Kabatと同様の、またはKabatによる可変ドメイン残基ナンバリングなどの句は、重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインについての、このナンバリングシステムをいう)。このナンバリングシステムを用いると、可変ドメインのFRもしくはCDRの短縮または可変ドメインのFRもしくはCDRへの挿入に対応して、ペプチドの実際の直鎖アミノ酸配列中のアミノ酸を減らすことができる、またはさらなるアミノ酸を含むことができる。例えば、重鎖可変ドメインは、VH CDR2の残基52の後ろに1個のアミノ酸インサート(Kabatに従って、残基52a)、ならびに重鎖FR残基82の後ろに挿入残基(例えば、Kabatに従って、残基82a、82b、および82cなど)を含むことができる。Kabat残基ナンバリングは、ある特定の抗体について、Kabatによってナンバリングされた「標準」配列と抗体配列との相同性領域でのアラインメントによって決定することができる。
【0021】
本発明の文脈において「抗体」(Ab)という用語は、免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の断片、またはそのいずれかの誘導体を指し、これらは、代表的な生理学的条件下で、かなり長い半減期、例えば、少なくとも約30分、少なくとも約45分、少なくとも約1時間、少なくとも約2時間、少なくとも約4時間、少なくとも約8時間、少なくとも約12時間、約24時間以上、約48時間以上、約3日、4日、5日、6日、7日以上など、あるいは他の任意の関連する、機能によって規定された期間(例えば、抗体と抗原との結合に関連する生理学的応答を誘導する、促進する、増強する、および/もしくは調節するのに十分な時間、ならびに/または抗体がエフェクター活性を高めるのに十分な時間)で抗原に特異的に結合する能力を有する。免疫グロブリン分子の重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体(Ab)の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)および補体系成分、例えば、補体活性化の古典経路の第1の成分であるC1qを含む、宿主組織または宿主因子との結合を媒介することができる。抗TF抗体はまた、二重特異性抗体、ダイアボディ(diabody)、または類似の分子でもよい(例えば、ダイアボディの説明については、PNAS USA
90 (14), 6444-8(1993)を参照されたい)。実際には、本発明によって提供される二重特異性抗体、ダイアボディなどは、組織因子または組織因子FVIIa複合体の一部に加えて、任意の適切な標的に結合することができる。前記のように、本明細書において抗体という用語は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片を含む。抗体の抗原結合機能は完全長抗体の断片によって果たし得ることも示されている。「抗体」という用語の中に含まれる結合断片の例には、(i)Fab'またはFab断片、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片、またはWO2007059782(Genmab)に記載の一価抗体;(ii)F(ab') 2断片、2つのFab断片がヒンジ領域でのジスルフィド架橋によって連結された二価断片;(iii)VHおよびCH1ドメインから本質的になるFd断片;(iv)VLおよびVHドメインから本質的になるFv断片、(v)VHドメインから本質的になり、ドメイン抗体(Holt et al; Trends Biotechnol. 2003 Nov;
21 (11):484-90)とも呼ばれる、dAb断片(Ward et al., Nature
341, 544-546(1989));(vi)キャメリド(camelid)またはナノボディ(nanobody)(Revets et al; Expert Opin Biol Ther. 2005 Jan;
5 (1):111-24)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)が含まれる。さらに、Fv断片の2つのドメインであるVLおよびVHは別々の遺伝子によってコードされるが、VLおよびVH領域が対形成して一価分子(単鎖抗体または単鎖Fv(scFv)と知られる。例えば、Bird et al., Science
242, 423-426(1988)およびHuston et al., PNAS USA
85, 5879-5883(1988)を参照されたい)を形成する1本のタンパク質鎖として作られるのを可能にする合成リンカーによって、組換え法を用いて接続されてもよい。このような単鎖抗体は、特に定めのない限り、または文脈によって明らかに示されない限り、抗体という用語の中に含まれる。このような断片は、一般的に、抗体の意味の中に含まれるが、ひとまとめにして、およびそれぞれ独立して、本発明の独特の特徴であり、異なる生物学的な特性よび有用性を示す。本発明の文脈における、これらの抗体断片および他の有用な抗体断片は本明細書においてさらに議論される。抗体という用語は、特に定めのない限り、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、抗体様ポリペプチド、例えば、キメラ抗体およびヒト化抗体、ならびに任意の公知の技法、例えば、酵素切断、ペプチド合成、および組換え技法によって提供される抗原に特異的に結合する能力を保持している抗体断片(抗原結合断片)も含むことも理解すべきである。作製される抗体は任意のアイソタイプを有してよい。
【0022】
「抗TF抗体」とは、抗原組織因子に特異的に結合する前記の抗体である。
【0023】
本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでのランダム変異誘発もしくは部位特異的変異誘発によって、またはインビボで遺伝子再編成中に、もしくは体細胞変異によって導入された変異)を含んでもよい。しかしながら、本明細書で使用する「ヒト抗体」という用語は、マウスなどの別の哺乳動物種の生殖系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことは意図されない。
【0024】
好ましい態様において、本発明の抗体は単離されている。本明細書で使用する「単離された抗体」は、抗原特異性の異なる他の抗体を実質的に含まない抗体をいうことが意図される(例えば、組織因子に特異的に結合する単離された抗体は、組織因子以外の抗原に特異的に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒト組織因子のエピトープ、アイソフォーム、または変異体に特異的に結合する単離された抗体は、他の関連抗原、例えば、他の種に由来する抗原(例えば、組織因子の種ホモログ)との交差反応性を有することがある。さらに、単離された抗体は、他の細胞の材料および/または化学物質を実質的に含まないことがある。本発明の1つの態様では、詳細に明らかにされた組成物において、抗原結合特異性の異なる、2種類以上の「単離された」モノクローナル抗体が組み合わされる。
【0025】
2種類以上の抗体の文脈に関して本明細書において用いられる場合、「と競合する」または「と交差競合する」という用語は、2種類以上の抗体が、TFとの結合において競合する、例えば、本明細書の実施例6記載のアッセイにおいてTFとの結合において競合することを示す。数対の抗体についての実施例6のアッセイにおける競合は、一方の抗体がプレート上にコーティングされ、他方の抗体が競合に用いられた時のみに観察され、逆は同じではない。「と競合する」という用語はまた、本明細書において用いられる場合、このような組み合わせ抗体をカバーすることが意図される。
【0026】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、分子組成が1種類しかない抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、ある特定のエピトープに対して結合特異性および親和性を1つしか示さない。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域および定常領域を有する、結合特異性を1つしか示さない抗体をいう。ヒトモノクローナル抗体は、トランスジェニック非ヒト動物またはトランスクロモソーム非ヒト動物、例えば、ヒト重鎖トランスジーンおよび軽鎖トランスジーンを含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞が不死化細胞と融合したハイブリドーマによって作製することができる。
【0027】
抗体と所定の抗原との結合に関して本明細書で使用する「結合」という用語は、典型的には、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって、BIAcore 3000機器において、リガンドとして抗原、分析物として抗体を用いて確かめられた時に、約10-7M以下、例えば、約10-8M以下、例えば、約10-9M以下、約10-10M以下、または約10-11Mまたはさらにそれ未満のKDに対応する親和性での結合であり、所定の抗原または密接に関連する抗原以外の非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)との結合の親和性の1/10以下、例えば、1/100以下、例えば、1/1,000以下、例えば、1/10,000以下、例えば、1/100,000以下のKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性がより低い量は抗体のKDに依存し、その結果、抗体のKDが非常に低い(すなわち、抗体が高特異性である)場合、抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い量は1/10,000以下であり得る。
【0028】
本明細書で使用する「kd」(sec
-1)という用語は、特定の抗体間相互作用の解離速度定数をいう。この値は、koff値とも呼ばれる。
【0029】
本明細書で使用する「ka」(M
-1xsec
-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数をいう。
【0030】
本明細書で使用する「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数をいう。
【0031】
本明細書で使用する「KA」(M
-1)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数をいい、kaをkdで割ることによって得られる。
【0032】
本発明はまた、実施例の抗体のVL領域、VH領域、または1つもしくは複数のCDRの機能的変異体を含む抗体を提供する。抗TF抗体に関して用いられるVL、VH、またはCDRの機能的変異体は依然として、親抗体の親和性/アビディティおよび/または特異性/選択性の少なくともかなりの部分(少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%以上)を抗体が保持することを可能にする。場合によっては、このような抗TF抗体は、親抗体より高い親和性、選択性、および/または特異性に関連することがある。
【0033】
このような機能的変異体は、典型的には、親抗体と大きな配列同一性を保持している。2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適アラインメントのために導入される必要のある、ギャップの数およびそれぞれのギャップの長さを考慮に入れた、これらの配列が共有する同一の位置の数の関数(すなわち、%相同性=同一の位置の数/位置の総数x100)である。2つの配列間の配列の比較およびパーセント同一性の決定は、以下の非限定的な例に記載のように数学アルゴリズムを用いて達成することができる。
【0034】
2つのヌクレオチド配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージの中にあるGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)を用いて、NWSgapdna.CMPマトリックスならびに40、50、60、70、または80のギャップウエイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウエイトを用いて決定することができる。2つのヌクレオチド配列間またはアミノ酸配列間のパーセント同一性はまた、ALIGNプログラム(バージョン2.0)の中に組み込まれている、E. Meyers and W. Miller, Comput. Appl. Biosci
4, 11-17(1988))のアルゴリズムを使用し、PAM120ウエイト残基表、12のギャップレングスペナルティ、および4のギャップペナルティを用いて決定することもできる。さらに、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、GCGソフトウェアパッケージの中にあるGAPプログラム(http://www.gcg.comで入手可能)に組み込まれている、Needleman and Wunsch, J. Mol. Biol.
48, 444-453(1970))アルゴリズムを使用し、Blossum 62マトリックスまたはPAM250マトリックス、ならびに16、14、12、10、8、6、または4のギャップウエイトおよび1、2、3、4、5、または6のレングスウエイトを用いて決定することができる。
【0035】
CDR変異体の配列は、主に保存的置換によって親抗体配列のCDRの配列と異なってもよい。例えば、変異体における置換の少なくとも約35%、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上(例えば、約65〜99%、例えば、約96%、97%、または98%)は保存的アミノ酸残基置換である。
【0036】
CDR変異体の配列は、主に保存的置換によって親抗体配列のCDRの配列と異なってもよい。例えば、変異体における置換の少なくとも10個、例えば、少なくとも9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個は保存的アミノ酸残基置換である。
【0037】
本発明の文脈において、保存的置換は、以下の3つの表の1つまたは複数に反映されるアミノ酸クラスの中の置換によって定義することができる。
【0038】
保存的置換のためのアミノ酸残基クラス
【0039】
代わりとなる保存的アミノ酸残基置換クラス
【0040】
アミノ酸残基の代わりとなる物理的分類および機能的分類
【0041】
さらに保存的な置換のグループには、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、およびアスパラギン-グルタミンが含まれる。
【0042】
さらなるアミノ酸グループも、例えば、Creighton (1984) Proteins:Structure and Molecular Properties (2d Ed. 1993), W. H. Freeman and Companyに記載の原理を用いて表すことができる。
【0043】
本発明の1つの態様において、ヒドロパシー/親水性および残基の重量/サイズの点から見た保存もまた、実施例の抗体のCDRと比較して変異体CDRにおいて実質的に保持されている(例えば、配列の重量クラス、ヒドロパシースコア、またはその両方が、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%以上(例えば、約65〜99%)保持されている)。加えて、または代わりに、例えば、保存的な残基置換は、当技術分野において公知の強いまたは弱い重量ベースの保存グループに基づくものでもよい。
【0044】
加えて、または代わりに、類似の残基の保持は、BLASTプログラム(例えば、NCBIを介して利用可能なBLAST 2.2.8。標準設定BLOSUM62、オープンギャップ=11、およびエクステンディッドギャップ=1を用いる)を用いて求められる類似性スコアによって測定されてもよい。適切な変異体は、典型的には、親ペプチドと、少なくとも約45%、例えば、少なくとも約55%、少なくとも約65%、少なくとも約75%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%以上(例えば、約70〜99%)の類似性を示す。
【0045】
本明細書で使用する「アイソタイプ」は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる免疫グロブリンクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM)をいう。
【0046】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的結合することができるタンパク質決定基を意味する。エピトープは、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の表面グループからなり、通常、特異的な三次元構造特性ならびに特異的な電荷特性を有する。コンホメーションエピトープおよび非コンホメーションエピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合が失われないという点で区別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基(エピトープ免疫優性成分とも呼ばれる)、および結合に直接関与しない他のアミノ酸残基、例えば、特定の抗原結合ペプチドによって効果的にブロックされるアミノ酸残基(言い換えると、このアミノ酸残基は、特定の抗原結合ペプチドのフットプリント(footprint)の中にある)を含むことがある。
【0047】
本明細書中で使用するヒト抗体は、その抗体がヒト免疫グロブリン配列を用いた系から、例えば、ヒト免疫グロブリン遺伝子を保有するトランスジェニックマウスを免疫することによって、またはヒト免疫グロブリン遺伝子ライブラリーをスクリーニングすることによって獲得される場合、特定の生殖系列配列に「由来」し、ここで、選択されたヒト抗体Vドメイン配列は、アミノ酸Vドメイン配列において、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ酸配列と少なくとも90%、例えば、少なくとも95%、例えば、少なくとも96%、例えば、少なくとも97%、例えば、少なくとも98%、または例えば、少なくとも99%同一である。典型的には、特定のヒト生殖系列配列由来のヒト抗体は、重鎖CDR3外では、生殖系列免疫グロブリン遺伝子によりコードされるアミノ酸配列と、20個以下のアミノ酸の違い、10個以下のアミノ酸の違い、例えば、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、または5個以下、例えば、4個以下、3個以下、2個以下、または1個以下のアミノ酸の違いを示す。
【0048】
本明細書で使用する「増殖を阻害する」(例えば、腫瘍細胞などの細胞について言及している場合)という用語は、細胞と抗TF抗体が接触した時に、抗TF抗体と接触していない同じ細胞の増殖と比較して任意の測定可能な細胞増殖減少、例えば、細胞培養増殖の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、99%、または100%の阻害を含むことが意図される。このような細胞増殖減少は、様々な機構、例えば、エフェクター細胞食作用、ADCC、CDC、および/またはアポトーシスによって起こり得る。
【0049】
「二重特異性分子」という用語は、2種類の結合特異性を有する任意の薬剤、例えば、タンパク質、ペプチド、またはタンパク質もしくはペプチド複合体を含むことが意図される。例えば、この分子は、(a)細胞表面抗原および(b)エフェクター細胞表面上のFc受容体に結合する、またはこれらと相互作用することができる。「二重特異性抗体」という用語は、二重特異性分子である任意の抗TF抗体を含むことが意図される。「二重特異性抗体」という用語はまたダイアボディも含む。ダイアボディは、リンカーを用いて1本のポリペプチド鎖上にVHドメインおよびVLドメインが発現しているが、リンカーが短すぎるので同じ鎖上にある2つのドメインは対形成することができず、それによって、これらのドメインは強制的に別の鎖の相補ドメインと対形成し、2つの抗原結合部位が作り出されている二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger, P. et al., PNAS USA
90, 6444-6448(1993)、Poljak, RJ. et al., Structure
2, 1121-1123(1994)を参照されたい)。
【0050】
「エフェクター機能が欠損している抗体」または「エフェクター機能欠損性抗体」は、1つまたは複数のエフェクター機構、例えば、補体活性化もしくはFc受容体結合を活性化する能力が大幅に低下ている、または補体活性化もしくはFc受容体結合を活性化する能力が無い抗体をいう。従って、エフェクター機能欠損性抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する能力が大幅に低下しているか、または抗体依存性細胞傷害(ADCC)および/もしくは補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する能力が無い。このような抗体の一例はIgG4である。
【0051】
「一価抗体」という用語は、本発明の文脈では、抗体分子が1種類の抗原分子にしか結合できない、従って、抗原架橋できないことを意味する。
【0052】
「安定化されたIgG4抗体」という用語は、半分子交換(half-molecule exchange)を弱めるように改変されているIgG4抗体をいう(van der Neut Kolfschoten M et al . (2007) Science 14;317(5844)およびその中の参考文献を参照されたい。Labrijn et al. (2009) Nature Biotechnology, 27, 767-771も参照されたい)。
【0053】
本明細書で使用する「エフェクター細胞」という用語は、免疫応答の認識期および活性化期と相対するものである、免疫応答のエフェクター期に関与する免疫細胞をいう。例示的な免疫細胞には、骨髄由来またはリンパ系由来の細胞、例えば、リンパ球(例えば、B細胞および細胞傷害性T細胞(CTL)を含むT細胞)、キラー細胞、ナチュラルキラー細胞、マクロファージ、単球、好酸球、多核細胞、例えば、好中球、顆粒球、マスト細胞、および好塩基球が含まれる。エフェクター細胞の中には特異的なFc受容体を発現し、特異的な免疫機能を果たすものもある。ある態様において、エフェクター細胞は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)を誘導することができる細胞であり、例えば、ADCCを誘導することができるナチュラルキラー細胞である。例えば、FcRを発現する、単球、マクロファージは、標的細胞の特異的な死滅および免疫系の他の成分への抗原の提示、または抗原を提示する細胞への結合に関与する。ある態様において、エフェクター細胞は標的抗原または標的細胞を貪食することがある。エフェクター細胞上での、ある特定のFcRの発現は、サイトカインなどの体液性因子によって調節され得る。例えば、FcγRIの発現は、インターフェロンγ(IFN-γ)および/またはG-CSFによってアップレギュレートされることが見出されている。このように発現が上昇すると、標的に対する、FcγRIを有する細胞の細胞傷害活性が増大する。エフェクター細胞は標的抗原または標的細胞を貪食または溶解することができる。
【0054】
本明細書で使用する「ベクター」という用語は、ベクターに連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子をいうことが意図される。ベクターの一種が「プラスミド」であり、「プラスミド」は、さらなるDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループをいう。別の種類のベクターがウイルスベクターであり、さらなるDNAセグメントをウイルスゲノムに連結することができる。ある特定のベクターは、導入された宿主細胞内で自律増殖することができる(例えば、細菌複製起点を有する細菌ベクターおよびエピソーム哺乳動物ベクター)。他のベクター(例えば、非エピソーム哺乳動物ベクター)が宿主細胞に導入されると宿主細胞ゲノムに組み込むことができ、それによって、宿主ゲノムと共に複製される。さらに、ある特定のベクターは、ベクターに機能的に連結された遺伝子の発現を誘導することができる。このようなベクターは「組換え発現ベクター」(または本明細書において単に「発現ベクター」)と呼ばれる。一般的に、組換えDNA技法において有用な発現ベクターはプラスミドの形をとっていることが多い。プラスミドが最も一般的に用いられる形のベクターであるので、本明細書では「プラスミド」および「ベクター」は同義に用いられることがある。しかしながら、本発明は、同等の機能を果たす、このような他の形の発現ベクター、例えば、ウイルスベクター(例えば、複製欠損のあるレトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルス)を含むことが意図される。
【0055】
本明細書で使用する「組換え宿主細胞」(または単に「宿主細胞」)という用語は、発現ベクターが導入されている細胞をいうことが意図される。このような用語は、特定の対象細胞だけでなく、このような細胞の子孫も指すと意図されると理解すべきである。変異または環境からの影響により後の世代においては一定の変化が生じ得るため、実際のところ、このような子孫は、その親細胞と同一でない場合もあるが、そうであっても本明細書中で使用する「宿主細胞」という用語の範囲に含まれる。組換え宿主細胞には、例えば、トランスフェクトーマ(transfectoma)、例えば、CHO細胞、HEK293細胞、NS/0細胞、およびリンパ球細胞が含まれる。
【0056】
本明細書で使用する「トランスフェクトーマ」という用語は、酵母細胞を含む、抗体を発現する組換え真核宿主細胞、例えば、CHO細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、植物細胞、または菌類を含む。
【0057】
「トランスジェニック非ヒト動物」という用語は、1つまたは複数のヒト重鎖および/または軽鎖トランスジーンもしくはトランスクロモソーム(transchromosome)を含む(動物の天然ゲノムDNAに組み込まれた、または組み込まれていない)ゲノムを有し、完全なヒト抗体を発現することができる非ヒト動物をいう。例えば、トランスジェニックマウスは、TF抗原および/またはTF発現細胞で免疫した時にヒト抗TF抗体を産生するように、ヒト軽鎖トランスジーンおよびヒト重鎖トランスジーンまたはヒト重鎖トランスクロモソームを有することができる。ヒト重鎖トランスジーンは、トランスジェニックマウス、例えば、HuMAbマウス、例えば、HCo7もしくはHCol2マウスのようにマウスの染色体DNAに組み込まれてもよい。または、ヒト重鎖トランスジーンは、WO02/43478に記載のトランスクロモソームKMマウスのように染色体外に維持されてもよい。このようなトランスジェニックマウスおよびトランスクロモソームマウス(総称して本明細書において「トランスジェニックマウス」と呼ばれる)は、V-D-J組換えおよびアイソタイプスイッチを受けることによって、ある特定の抗原に対して、複数のアイソタイプのヒトモノクローナル抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgD、および/またはIgE)を産生することができる。トランスジェニック非ヒト動物はまた、このような特異的抗体をコードする遺伝子を導入することによって、例えば、これらの遺伝子と、動物の乳の中に発現される遺伝子とを機能的に連結することによって、ある特定の抗原に対する抗体を産生するのに使用することもできる。
【0058】
「治療」とは、症状または疾患状態を緩和する、寛解させる、抑止する、または根絶する(治癒する)目的で、治療活性のある有効量の本発明の化合物を投与するこという。
【0059】
「有効量」とは、望ましい治療結果を得るために必要な投与および時間で効果を示す量をいう。抗TF抗体の治療的有効量は、個体の疾患状態、年齢、性別、および体重、ならびに個体において抗TF抗体が望ましい応答を誘発する能力などの要因に応じて変わることがある。治療的有効量はまた、抗体または抗体部分の治療に有益な作用が毒性作用または有害作用を上回る量でもある。
【0060】
「抗イディオタイプ」(Id)抗体は、概して抗体の抗原結合部位に結合する独特の決定基を認識する抗体である。
【0061】
本発明のさらなる局面および態様
前記のように、第1の局面において、本発明は、ヒト組織因子に結合するヒト抗体に関する。
【0062】
1つの態様において、前記抗体は、実施例13のアッセイに記載されているように確かめられた時に、3nM以下、例えば、0.50nM以下、例えば、0.35nM以下、例えば、0.20nM以下、例えば、0.1nM以下の見かけの親和性(EC50)で、組織因子の細胞外ドメインに結合する。
【0063】
別の態様において、前記抗体は、実施例14のアッセイに記載されているように確かめられた時に、好ましくは、10nM以下、例えば、8nM以下、例えば、5nM以下、例えば、2nM以下、例えば、1nM以下、例えば、0.5nM以下、例えば、0.3nM以下の見かけの親和性(EC50)で、組織因子を発現する哺乳動物細胞、例えば、組織因子をコードする構築物でトランスフェクトされたA431細胞に結合する。
【0064】
別の態様において、前記抗体は、実施例20のアッセイに記載されているように確かめられた時に、好ましくは、2nM以下、例えば、1nM以下、例えば、0.7nM以下、または0.3nM以下、例えば、0.2nM以下、または0.1nM以下、または0.05nM以下のEC50値で、A431細胞において抗体依存性細胞傷害を誘導することができる。
【0065】
別の態様において、前記抗体は、実施例24に記載の方法によって確かめられた時に、確立したMDA-MB-231腫瘍の成長の阻害において有効である、および/または実施例26に記載の方法によって確かめられた時に、確立したBxPC3腫瘍の成長の阻害において有効である。
【0066】
別の態様において、前記抗体は、実施例19のアッセイに記載されているように確かめられた時に、組織因子によって誘導される血液凝固を、好ましくは、10nM未満、例えば、5nM未満、例えば、2nM未満、例えば、1nM未満の半抑制濃度で阻害する。
【0067】
別の態様において、前記抗体は凝固を阻害しない。1つの態様において、凝固は、ネイティブなレベルと比較して、最大30%、例えば、25%、例えば、20%、例えば、15%、例えば、10%、または例えば、5%、阻害される。
【0068】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例15のアッセイに記載されているように確かめられた時に、FVIIaと組織因子との結合を、好ましくは、80%超、例えば、90%超の阻害の最大阻害値で阻害する。
【0069】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例17のアッセイに記載されているように確かめられた時に、MDA-MB-231細胞によるFVIIa誘導性IL-8放出を、好ましくは、40%超、例えば、50%超、例えば、60%超の阻害の最大阻害値で阻害する。
【0070】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例18のアッセイに記載されているように確かめられた時に、TF/FVIIa複合体によるFXからFXaへの変換を、好ましくは、50%未満、例えば、40%未満、例えば、1〜30%の範囲で阻害する。
【0071】
さらなる態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:65の配列を含むVL領域を含む抗体と組織因子結合において競合する。
【0072】
さらなる態様において、本発明の抗体と組織因子との結合が、以下の残基:組織因子の位置45にあるW、位置46にあるK、位置94にあるYの3つ全てに関与しない。なおさらなる態様において、前記結合は、以下の残基:位置45にあるW、位置46にあるK、または位置94にあるYのいずれかに関与しない(これらの数字は成熟TFを基準とし、GenBankエントリーNP_001984における対応する位置は77、78および126である)。
【0073】
本発明の抗体の別の態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:37の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域を含む抗体と組織因子結合において競合する。
【0074】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例16のアッセイに記載されているように確かめられた時に、FVIIa誘導性ERKリン酸化を、好ましくは、10nM未満、例えば、5nM未満、例えば、2nM未満の半抑制濃度で阻害する。
【0075】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例16のアッセイに記載されているように確かめられた時に、ERKリン酸化を、好ましくは、10nM未満、例えば、5nM未満、例えば、2nM未満の半抑制濃度で阻害し、実施例17のアッセイに記載されているようにFVII誘導性IL-8放出を最大10%を超えて阻害しない。
【0076】
さらなる態様において、前記抗体は、C3cおよびC4cの沈着を誘導することができ、好ましくは、実施例21において求められるようにC3cおよびC4cの沈着を誘導することができる。
【0077】
さらなる態様において、抗体のFab断片は、実施例28に記載されているようにELISAによって測定された時に、0.1μg/mLより低い、例えば、0.05μg/mLより低い、例えば、0.04μg/mLより低いEC50値で組織因子の細胞外ドメインに結合する。
【0078】
さらなる態様において、抗体のFab断片は、実施例28に記載されているようにELISAによって測定された時に、1.0μg/mLを上回るEC50で、組織因子の細胞外ドメインに結合する。
【0079】
さらなる態様において、抗体のFab断片は、実施例28に記載されているように、10μg/mLより低い、例えば、1μg/mLより低い、例えば、0.5μg/mLより低い、または0.2μg/mLより低いEC50値で組織因子の細胞外ドメインに結合する。
【0080】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例27に記載されているように、ヒト組織因子に結合し、マウス組織因子に結合せず、ヒトTFとの結合を、アミノ酸42-84以外はヒトTF配列を含有し、アミノ酸42-84がマウス配列で置換されているシャッフル構築物42-84mmとの結合と比較した時に弱い結合を示す。
【0081】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例27に記載されているように、ヒト組織因子に結合し、マウス組織因子に結合せず、ヒトTFとの結合を、アミノ酸85-122以外はヒトTF配列を含有し、アミノ酸85-122がマウス配列で置換されているシャッフル構築物85-122との結合と比較した時に弱い結合を示す。
【0082】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例27に記載されているように、ヒト組織因子に結合し、マウス組織因子に結合せず、ヒトTFとの結合を、アミノ酸123-137以外はヒトTF配列を含有し、アミノ酸123-137がマウス配列で置換されているシャッフル構築物123-137mmとの結合と比較した時に弱い結合を示す。
【0083】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例27に記載されているように、ヒト組織因子に結合し、マウス組織因子に結合せず、ヒトTFとの結合を、アミノ酸185-225以外はヒトTF配列を含有し、アミノ酸185-225がマウス配列で置換されているシャッフル構築物185-225mmとの結合と比較した時に弱い結合を示す。
【0084】
さらなる態様において、前記抗体は、実施例27に記載されているように、ヒト組織因子に結合し、マウス組織因子に結合せず、ヒトTFとの結合を、アミノ酸226-250以外はヒトTF配列を含有し、アミノ酸226-250がマウス配列で置換されているシャッフル構築物226-250mmとの結合と比較した時に弱い結合を示す。
【0085】
さらなる態様において、前記抗体は、ヒトTFとの結合と複数のシャッフル構築物との結合を比較した時に弱い結合を示す。1つの態様において、抗体は、構築物42-84mmならびに85-122mmと弱い結合を示す。1つの態様において、抗体は、123-137mmならびに構築物185-225mmと弱い結合を示す。1つの態様において、抗体は、構築物123-137mmならびに構築物185-225mmと弱い結合を示し、さらに構築物226-250mmと弱い結合を示す。
【0086】
さらなる態様において、前記抗体は、C3cおよびC4cの沈着を誘導することができ、好ましくは、実施例21において求められるようにC3cおよびC4cの沈着を誘導することができる。
【0087】
本発明の抗体の1つの態様において、前記抗体は、
-SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:65の配列を含むVL領域を含む抗体と組織因子結合において競合する、ならびに
-SEQ ID NO:37の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域を含む抗体と、組織因子結合において競合しない。
【0088】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)
-SEQ ID NO:12、
-SEQ ID NO:16、
-SEQ ID NO:20、
-SEQ ID NO:24、
-SEQ ID NO:28
に示した配列、または
b)前記配列のいずれかの変異体、例えば、最大で1個、2個、3個、4個、または5個のアミノ酸修飾、好ましくは、置換、例えば、保存的置換を有する変異体
を有するVH CDR3領域を含む。
【0089】
さらなる態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:12に示した配列またはその変異体を有するVH CDR3領域を含む。前記変異体は、位置2、3、6、9、および11の1つまたは複数にある修飾を含み、好ましくは、修飾は置換であり、より好ましくは、置換は、
a.Rが位置2にある時の、RからKへの置換、
b.Sが位置3にある時の、SからAまたはTへの置換、
c.Gが位置6にある時の、GからTへの置換、
d.Lが位置9にある時の、LからFへの置換、および
e.Sが位置11にある時の、SからYへの置換
からなる群より選択される。
【0090】
別の態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:10、11および12のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:66、67および68のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:14、15および16のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:70、71および72のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:18、19、20のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:74、75および76のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
d)SEQ ID NO:22、23および24のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:78、79および80のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
e)SEQ ID NO:26、27および28のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:82、83および84のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、または
f)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0091】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:9、13、17、21および25からなる群より選択されるVH領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO:9、13、17、21、21および25からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVHを含む。
【0092】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:65、69、73、77、および81からなる群より選択されるVL領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO:65、69、73、77、および81からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVLを含む。
【0093】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:65の配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:13の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:69の配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:73の配列を含むVL領域、
d)SEQ ID NO:21の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:77の配列を含むVL領域、
e)SEQ ID NO:25の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:81の配列を含むVL領域、または
f)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0094】
さらなる態様において、前記抗体は、
-SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:65の配列を含むVL領域を含む抗体と組織因子結合において競合する、および
-SEQ ID NO:37の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域を含む抗体と組織因子結合において競合する。
【0095】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)
-SEQ ID NO:8、
-SEQ ID NO:52
に示した配列、または
b)前記配列のいずれかの変異体、例えば、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、好ましくは、置換、例えば、保存的置換を有する変異体
を有するVH CDR3領域を含む。
【0096】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:6、7および8のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:62、63および64のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:50、51および52のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:106、107および108のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、または
c)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0097】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:5および49からなる群より選択されるVH領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO:5および49からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVHを含む。
【0098】
さらなる態様において、前記抗体は、
c)SEQ ID NO:61および105からなる群より選択されるVL領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
d)SEQ ID NO:61および105からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVLを含む。
【0099】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:5の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:61の配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:105の配列を含むVL領域、または
c)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0100】
さらなる態様において、前記抗体は、
-SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:65の配列を含むVL領域を含む抗体と、組織因子結合において競合しない、および
-SEQ ID NO:37の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域を含む抗体と組織因子結合において競合する。
【0101】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)
-SEQ ID NO:32、
-SEQ ID NO:36、
-SEQ ID NO:40、
-SEQ ID NO:56
に示した配列、または
b)前記配列のいずれかの変異体、例えば、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、好ましくは、置換、例えば、保存的置換を有する変異体
を有するVH CDR3領域を含む。
【0102】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:30、31および32のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:86、87および88のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:34、35および36のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:90、91および92のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:38、39および40のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:94、95および96のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
d)SEQ ID NO:54、55および56のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:110、111および112のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、または
e)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0103】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:29、33、37および53からなる群より選択されるVH領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO:29、33、37および53からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVHを含む。
【0104】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:85、89、93、および109からなる群より選択されるVL領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO:85、89、93、および109からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVLを含む。
【0105】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:29の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:85の配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:89の配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:37の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域、
d)SEQ ID NO:53の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:109の配列を含むVL領域、または
e)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0106】
さらなる態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:41の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:97の配列を含むVL領域を含む抗体と組織因子結合において競合する抗体を含む。
【0107】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)
-SEQ ID NO:4、
-SEQ ID NO:44、
-SEQ ID NO:48
に示した配列、または
b)前記配列のいずれかの変異体、例えば、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、好ましくは、置換、例えば、保存的置換を有する変異体
を有するVH CDR3領域を含む。
【0108】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:2、3および4のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:58、59および60のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:42、43および44のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:98、99および100のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:46、47および48のCDR1、2、および3配列を含むVH領域、ならびにSEQ ID NO:102、103および104のCDR1、2、および3配列を含むVL領域、または
d)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0109】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:1、41および45からなる群より選択されるVH領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
b)SEQ ID NO:1、41および45からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVHを含む。
【0110】
さらなる態様において、前記抗体は、
c)SEQ ID NO:57、97、および101からなる群より選択されるVL領域配列と、少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、もしくは少なくとも98%、もしくは100%の同一性、または
d)SEQ ID NO:57、97および101からなる群より選択されるVH領域配列と比較して、最大で20個、例えば、15個、または10個、または5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換
を有するVLを含む。
【0111】
さらなる態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:57の配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:41の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:97の配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:45の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域、または
d)前記配列内に、好ましくは、最大で1個、2個、もしくは3個のアミノ酸修飾、より好ましくは、アミノ酸置換、例えば、保存的アミノ酸置換を有する、前記抗体のいずれかの変異体
を含む。
【0112】
なおさらなる態様において、本発明の抗体は、本明細書の実施例22に記載の方法によって確かめられた時に、5nM未満、例えば、3.5nM未満、例えば、2nM未満の、組織因子に対する親和性を有する。
【0113】
本発明の抗体の特に興味深いグループは、正常なアビディティまたは高いアビディティおよび高いオフレート(off-rate)(kd)によって特徴付けられる組織因子との結合を示す。本明細書において証明されたように、このような抗体は、癌組織に結合するが、健康組織に結合しない、または癌組織より弱く健康組織に結合する点で腫瘍特異的結合を示し得る。特定の理論に拘束されるものではないが、抗体が二価の場合にしか結合が効率的に起こらないので、このグループの抗体は高レベルのTFを発現する細胞にしかよく結合しないと仮説が立てられている。これらの抗体の例には、本明細書に記載の抗体044、098、および111が含まれる。
【0114】
従って、1つの態様において、本発明の抗体は、本明細書の実施例22に記載の親和性方法によって確かめられた時に10
-3sec
-1を超えるkdを有し、本明細書の実施例22に記載のアビディティ方法によって確かめられた時に、5nM未満、例えば、1nM未満、例えば、0.2nM未満のアビディティを有する。
【0115】
別の態様において、本発明の抗体は、本明細書の実施例22に記載の親和性方法によって確かめられた時に10
-3sec
-1を超えるkdを有する、および/または本明細書の実施例22に記載の親和性方法によって確かめられた時に5x10
4,Mol
-1sec
-1を超えるkaを有する。
【0116】
さらなる態様において、前記抗体は、例えば、実施例23に記載のアッセイにおいて確かめられた時に健康組織への結合を示さず、特に、ヒト糸球体への結合を示さないが、例えば、本明細書の実施例23に記載のアッセイにおいて確かめられた時に膵臓腫瘍への結合を示す。
【0117】
なおさらなる態様において、前記抗体は、本明細書の実施例26に記載の方法によって確かめられた時に、確立したBX-PC3腫瘍の成長の阻害において有効である。
【0118】
別の態様において、本発明の抗体は、以下の特性:増殖の阻害、腫瘍血管形成の阻害、腫瘍細胞アポトーシスの誘導、オルタナティブスプライシングされた組織因子との結合の1つまたは複数を有する。
【0119】
さらなる態様において、本発明の抗体は、
a)SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:65の配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:57の配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:5の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:61の配列を含むVL領域、
d)SEQ ID NO:13の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:69の配列を含むVL領域、
e)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:73の配列を含むVL領域、
f)SEQ ID NO:21の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:77の配列を含むVL領域、
g)SEQ ID NO:25の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:81の配列を含むVL領域、
h)SEQ ID NO:29の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:85の配列を含むVL領域、
i)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:89の配列を含むVL領域、
j)SEQ ID NO:37の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域、
k)SEQ ID NO:41の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:97の配列を含むVL領域、
l)SEQ ID NO:45の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域、
m)SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:105の配列を含むVL領域、または
n)SEQ ID NO:53の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:109の配列を含むVL領域
を含む抗体と組織因子結合において競合する。
【0120】
さらなる態様において、本発明の抗体は、
a)SEQ ID NO:9の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:65の配列を含むVL領域、
b)SEQ ID NO:1の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:57の配列を含むVL領域、
c)SEQ ID NO:5の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:61の配列を含むVL領域、
d)SEQ ID NO:13の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:69の配列を含むVL領域、
e)SEQ ID NO:17の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:73の配列を含むVL領域、
f)SEQ ID NO:21の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:77の配列を含むVL領域、
g)SEQ ID NO:25の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:81の配列を含むVL領域、
h)SEQ ID NO:29の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:85の配列を含むVL領域、
i)SEQ ID NO:33の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:89の配列を含むVL領域、
j)SEQ ID NO:37の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:93の配列を含むVL領域、
k)SEQ ID NO:41の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:97の配列を含むVL領域、
l)SEQ ID NO:45の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:101の配列を含むVL領域、
m)SEQ ID NO:49の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:105の配列を含むVL領域、または
n)SEQ ID NO:53の配列を含むVH領域およびSEQ ID NO:109の配列を含むVL領域
を有する抗体と同じ、組織因子上のエピトープに結合する。
【0121】
さらなる態様において、本発明の抗体は、
-IGHV1-18
*01、IGHV3-23
*01、IGHV3-30
*01、IGHV3-33
*01、IGHV3-33
*03、IGHV1-69
*02、IGHV1-69
*04、およびIGHV5-51
*01からなる群より選択されるヒト生殖系列VH配列に由来する重鎖可変領域、ならびに/または
-IGKV3-20
*01、IGKV1-13
*02、IGKV3-11
*01、およびIGKV1D-16
*01からなる群より選択されるヒト生殖系列Vκ配列に由来する軽鎖可変領域
を含む。
【0122】
さらなる局面において、本発明は、配列番号9、1、5、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、もしくは53に示した配列を有するVH領域、または前記配列のいずれかの変異体、例えば、最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失または挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換を有する変異体を含むモノクローナル抗TF抗体に関する。
【0123】
配列番号9、1、5、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、または53に示した配列の変異体は、前記配列のいずれかと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性または90%の同一性または95%の同一性、例えば、96%の同一性または97%の同一性または98%の同一性または99%の同一性を有してもよい。
【0124】
本発明の1つの局面において、単離されたモノクローナル抗TF抗体は、SEQ ID NO:65、57、61、69、73、77、81、85、89、93、97、101、もしくは105に示したVL配列、または前記配列のいずれかの変異体、例えば、最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失または挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換を有する変異体を含む。
【0125】
配列番号65、57、61、69、73、77、81、85、89、93、97、101、または105に示した配列の変異体は、前記配列のいずれかと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性または90%の同一性または95%の同一性、例えば、96%の同一性または97%の同一性または98%の同一性または99%の同一性を有してもよい。
【0126】
別の態様において、前記抗体は、
a)SEQ ID NO:65、57、61、69、73、77、81、85、89、93、97、101、または105からなる群より選択される配列を有するVL領域、およびSEQ ID NO:9、1、5、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、もしくは53からなる群より選択される配列を有するVH領域、
b)前記のいずれかの変異体、好ましくは、前記配列において保存的置換しか有さない変異体
を含む。
【0127】
好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:65に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:9に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:9またはSEQ ID NO:65それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0128】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:57に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:1に示した配列を有するVH 領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:1またはSEQ ID NO:57それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0129】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:61に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:5に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:5またはSEQ ID NO:61それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0130】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:69に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:13に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:13またはSEQ ID NO:69それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0131】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:73に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:17に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:17またはSEQ ID NO:73それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0132】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:77に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:21に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:21またはSEQ ID NO:77それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0133】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:81に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:25に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:25またはSEQ ID NO:81それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0134】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:85に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:29に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:29またはSEQ ID NO:85それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0135】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:89に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:33に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:33またはSEQ ID NO:89それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0136】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:93に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:37に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:37またはSEQ ID NO:93それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0137】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:97に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:41に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:41またはSEQ ID NO:97それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0138】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:101に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:45に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:45またはSEQ ID NO:101それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0139】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:105に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:49に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:49またはSEQ ID NO:105それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0140】
別の好ましい態様において、前記抗体は、SEQ ID NO:109に示した配列を有するVL領域およびSEQ ID NO:53に示した配列を有するVH領域、または2つの配列のいずれかの変異体であって、
a)最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、もしくは11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、もしくは1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失もしくは挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、または
b)SEQ ID NO:53またはSEQ ID NO:109それぞれと少なくとも80%の同一性、例えば、少なくとも85%の同一性もしくは90%の同一性もしくは95%の同一性、例えば、96%の同一性もしくは97%の同一性もしくは98%の同一性もしくは99%の同一性
のいずれかを有する、変異体
を含む。
【0141】
本発明のモノクローナル抗体は、例えば、Kohler et al., Nature
256, 495(1975)によって初めて述べられたハイブリドーマ法によって産生されてもよく、組換えDNA方法によって産生されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えば、Clackson et al., Nature
352, 624-628(1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol.
222, 581-597(1991)に記載の技法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。モノクローナル抗体は任意の適切な供給源から得ることができる。従って、例えば、モノクローナル抗体は、関心対象の抗原、例えば、表面上に抗原を発現する細胞、または関心対象の抗原をコードする核酸の形をした抗原で免疫したマウスから得られたマウス脾臓B細胞から調製されたハイブリドーマから得られてもよい。モノクローナル抗体はまた、免疫したヒトまたは非ヒト哺乳動物、例えば、ラット、ウサギ、イヌ、霊長類などの抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得られてもよい。
【0142】
1つの態様において、本発明の抗体はヒト抗体である。組織因子に対するヒトモノクローナル抗体は、マウス系ではなくヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックマウスまたはトランスクロモソームマウスを用いて作製することができる。このようなトランスジェニックマウスおよびトランスクロモソームマウスは、本明細書において、それぞれ、HuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書において総称して「トランスジェニックマウス」と呼ばれる。
【0143】
HuMAbマウスは、再編成されていないヒト重鎖可変領域および定常領域(μおよびγ)ならびに軽鎖可変領域および定常領域(κ)免疫グロブリン配列と、内因性μ鎖およびκ鎖遺伝子座を不活化する標的変異をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座を含有する(Lonberg, N. et al., Nature
368, 856-859(1994))。従って、このマウスは、マウスIgMまたはκの低発現を示し、免疫に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖トランスジーンはクラススイッチおよび体細胞変異を受けて、高親和性ヒトIgG,κモノクローナル抗体を産生する(Lonberg, N. et al.(1994), 前出;Lonberg, N. Handbook of Experimental Pharmacology
113, 49-101(1994)、Lonberg, N. and Huszar, D., Intern. Rev. Immunol. Vol.
13 65-93(1995)、およびHarding, F. and Lonberg, N. Ann. N. Y. Acad. Sci
764 536-546(1995)に概説)。HuMAbマウスの調製は、Taylor, L. et al., Nucleic Acids Research
20, 6287-6295(1992)、Chen, J. et al., International Immunology
5, 647-656(1993)、Tuaillon et al., J. Immunol.
152, 2912-2920(1994)、Taylor, L. et al., International Immunology
6, 579-591(1994)、Fishwild, D. et al., Nature Biotechnology
14, 845-851(1996)に詳述されている。US5,545,806、US5,569,825、US5,625,126、US5,633,425、US5,789,650、US5,877,397、US5,661,016、US5,814,318、US5,874,299、US5,770,429、US5,545,807、WO98/24884、WO94/25585、WO93/1227、WO92/22645、WO92/03918、およびWO01/09187も参照されたい。
【0144】
HCo7マウスは、内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J.
12, 821-830 (1993)に記載)、内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO01/14424の実施例1に記載)、KCo5ヒトκ軽鎖トランスジーン(Fishwild et al., Nature Biotechnology
14、845-851(1996)に記載)、およびHCo7ヒト重鎖トランスジーン(US5,770,429に記載)を有する。
【0145】
HCo12マウスは、内因性軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J.
12, 821-830 (1993)に記載)、内因性重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO01/14424の実施例1に記載)、KCo5ヒトκ軽鎖トランスジーン(Fishwild et al., Nature Biotechnology
14、845-851(1996)に記載)、およびHCo12ヒト重鎖トランスジーン(WO01/14424の実施例2に記載)を有する。
【0146】
KMマウス系統では、内因性マウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al., EMBO J.
12, 811-820(1993)に記載されているようにホモで破壊されており、内因性マウス重鎖遺伝子は、WO01/09187の実施例1に記載されているようにホモで破壊されている。このマウス系統は、Fishwild et al., Nature Biotechnology
14, 845-851(1996)に記載されているように、ヒトκ軽鎖トランスジーンであるKCo5を有する。このマウス系統はまた、WO02/43478に記載されているように、第14番染色体断片hCF(SC20)からなるヒト重鎖トランスクロモソームも有する。
【0147】
これらのトランスジェニックマウスに由来する脾細胞を用いると、周知の技法に従って、ヒトモノクローナル抗体を分泌するハイブリドーマを作製することができる。本発明のヒトモノクローナル抗体もしくはヒトポリクローナル抗体または他の種に由来する本発明の抗体はまた、遺伝子導入によって、関心対象の免疫グロブリン重鎖配列および軽鎖配列についてトランスジェニックである別の非ヒト哺乳動物または植物を作製し、それから回収可能な形で抗体を産生することにより作製することもできる。哺乳動物におけるトランスジェニック作製に関連して、抗体はヤギ、ウシ、または他の哺乳動物において産生され、ヤギ、ウシ、または他の哺乳動物の乳から回収することができる。例えば、US5,827,690、US5,756,687、US5,750,172、およびUS5,741,957を参照されたい。
【0148】
さらに、本発明のヒト抗体または他の種に由来する本発明の抗体は、当技術分野において周知の技法を用いた、ファージディスプレイ、レトロウイルスディスプレイ、リボソームディスプレイ、および他の技法を含むが、それに限定されるわけではないディスプレイ型技術によって作製することができ、得られた分子は、このような技法が当技術分野において周知のように親和性成熟などのさらなる成熟に供することができる(例えば、Hoogenboom et al., J. Mol. Biol.
227, 381(1991)(ファージディスプレイ)、Vaughan et al., Nature Biotech
14, 309(1996)(ファージディスプレイ)、Hanes and Plucthau, PNAS USA
94, 4937-4942(1997)(リボソームディスプレイ)、Parmley and Smith, Gene
73, 305-318(1988)(ファージディスプレイ)、Scott TIBS
17, 241-245(1992)、Cwirla et al., PNAS USA
87, 6378-6382(1990)、Russel et al., Nucl. Acids Research
21, 1081-1085(1993)、Hogenboom et al., Immunol. Reviews
130, 43-68(1992)、Chiswell and McCafferty TIBTECH
10, 80-84(1992)、およびUS5,733,743を参照されたい)。非ヒト抗体を作製するためにディスプレイ技術が用いられるのであれば、このような抗体をヒト化することができる。
【0149】
本発明の抗体はどのアイソタイプでもよい。アイソタイプの選択は、典型的には、ADCC誘導などの望ましいエフェクター機能によって導かれる。例示的なアイソタイプは、IgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4である。ヒト軽鎖定常領域であるκまたはλのどちから一方を使用することができる。所望であれば、本発明の抗TF抗体のクラスは、公知の方法によってスイッチすることができる。例えば、最初にIgMであった本発明の抗体は、本発明のIgG抗体にクラススイッチすることができる。さらに、クラススイッチ法を用いて、あるIgGサブクラスを別のIgGサブクラスに、例えば、IgG1からIgG2に変換することができる。従って、本発明の抗体のエフェクター機能は、様々な治療用途に合わせて、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgD、IgA、IgE、またはIgM抗体へのアイソタイプスイッチによって変えることができる。1つの態様において、本発明の抗体は、IgG1抗体、例えば、IgG1,κである。
【0150】
1つの態様において、本発明の抗体は、完全長抗体、好ましくは、IgG1抗体、特に、IgG1,κ抗体である。別の態様において、本発明の抗体は抗体断片または単鎖抗体である。
【0151】
抗体断片は、例えば、従来の技法を用いた断片化によって行うことができ、この断片は、抗体全体について本明細書で説明されたものと同じやり方で有用性についてスクリーニングすることができる。例えば、F(ab') 2断片は、抗体をペプシンで処理することによって作製することができる。ジスルフィド架橋が少なくするように得られたF(ab') 2断片を処理して、Fab'断片を作製することができる。Fab断片は、IgG抗体をパパインで処理することによって得ることができる。Fab'断片は、IgG抗体のペプシン消化によって得ることができる。F(ab')断片はまた、チオエーテル結合またはジスルフィド結合を介して、下記のFab'を結合することによって作製することもできる。Fab'断片は、F(ab') 2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体断片である。Fab'断片は、F(ab') 2断片をジチオスレイトールなどの還元剤で処理することによって得ることができる。抗体断片はまた、組換え細胞において、このような断片をコードする核酸を発現させることによって作製することもできる(例えば、Evans et al., J. Immunol. Meth.
184, 123-38(1995)を参照されたい)。例えば、このような切断型抗体断片分子を生じるために、F(ab') 2断片の一部をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメインおよびヒンジ領域をコードするDNA配列に続いて、翻訳停止コドンを含むことができる。
【0152】
1つの態様において、抗TF抗体は、一価抗体、好ましくは、(参照により本明細書に組み入れられる)WO2007059782(Genmab)に記載の、ヒンジ領域が欠失している一価抗体である。従って、1つの態様において、前記抗体は、以下の工程:
i)一価抗体の軽鎖をコードする核酸構築物を準備する工程であって、前記構築物は、選択された抗原特異的TF抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列、およびIgの定常CL領域をコードするヌクレオチド配列を含み、前記選択された抗原特異的抗体のVL領域をコードするヌクレオチド配列および前記IgのCL領域をコードするヌクレオチド配列は一緒に機能的に連結され、IgG1サブタイプの場合、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、または動物もしくはヒトに投与された時に、CL領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとジスルフィド結合または共有結合を形成することができるアミノ酸をCL領域が含有しないように、CL領域をコードするヌクレオチド配列は改変されている、工程;
ii)前記一価抗体の重鎖をコードする核酸構築物を準備する工程であって、前記構築物は、選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列およびヒトIgの定常CH領域をコードするヌクレオチド配列を含み、ヒンジ領域に対応する領域、およびIgサブタイプにより必要とされる場合には、CH領域の他の領域、例えば、CH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、または動物もしくはヒトに投与された時に、ヒトIgのCH領域の同一のアミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合、または共有結合もしくは安定した非共有結合による重鎖間結合の形成に関与するアミノ酸残基を含まないように、CH領域をコードするヌクレオチド配列は修飾されており、前記選択された抗原特異的抗体のVH領域をコードするヌクレオチド配列および前記IgのCH領域をコードするヌクレオチド配列は一緒に機能的に連結されている、工程;
iii)前記一価抗体を産生するための細胞発現系を準備する工程;
iv)(iii)の細胞発現系の細胞において、(i)および(ii)の核酸構築物を同時発現させることによって、前記一価抗体を産生する工程
を含む方法によって抗TF抗体が構築される、一価抗体である。
【0153】
同様に、1つの態様において、抗TF抗体は、
(i)本明細書に記載の本発明の抗体の可変領域または前記領域の抗原結合部分、ならびに
(ii)ヒンジ領域に対応する領域および、免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合は、CH領域の他の領域、例えば、CH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とジスルフィド結合を形成することができるアミノ酸残基、または同一のCH領域と他の共有結合もしくは安定した非共有結合による重鎖間結合をすることができるアミノ酸残基を含まないように改変されている、免疫グロブリンのCH領域、またはCH2領域およびCH3領域を含むその断片
を含む、一価抗体である。
【0154】
さらなる態様において、一価抗TF抗体の重鎖は、ヒンジ全体が欠失されるように改変されている。
【0155】
さらなる態様において、一価抗体は、IgG4サブタイプであるが(SEQ ID NO:113のヒンジの無い変異体であるSEQ ID NO:114を参照されたい)、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の1つまたは複数がなされているように改変されている。すなわち、位置234にあるThr(T)がAla(A)によって置換され、位置236にあるLeu(L)がAla(A)によって置換され、位置236にあるLeu(L)がVal(V)によって置換され、位置273にあるPhe(F)がAla(A)によって置換され、位置273にあるPhe(F)がLeu(L)によって置換され、位置275にあるTyr(Y)がAla(A)によって置換されている。
【0156】
別のさらなる態様において、前記一価抗体の配列は、N結合型グリコシル化のための全てのアクセプター部位を含まないように改変されている。
【0157】
本発明の抗TF抗体はまた単鎖抗体を含む。単鎖抗体は、重鎖および軽鎖Fv領域が接続されているペプチドである。1つの態様において、本発明は、1本のペプチド鎖において、本発明の抗TF抗体のFvの重鎖および軽鎖が可動性ペプチドリンカー(典型的には、約10個、12個、15個以上のアミノ酸残基からなる)とつながっている単鎖Fv(scFv)を提供する。このような抗体を作製する方法は、例えば、US4,946,778、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, vol. 113, Rosenburg and Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315(1994)、Bird et al., Science
242, 423-426(1988)、Huston et al., PNAS USA
85, 5879-5883(1988)、およびMcCafferty et al., Nature
348, 552-554(1990)に記載されている。単鎖抗体は、1種類のVHおよびVLしか用いられないのであれば一価であり得、2種類のVHおよびVLが用いられるのであれば二価であり得、3種類以上のVHおよびVLが用いられるのであれば多価であり得る。
【0158】
1つの態様において、本発明の抗TF抗体は、エフェクター機能欠損性抗体である。このような抗体は、TFの阻害作用の遮断を介して免疫系を刺激するのに用いられる時に特に有用である。このような用途の場合、ADCCなどのエフェクター機能が望ましくない細胞傷害性につながる可能性があるので、前記抗体にエフェクター機能が無いことが有利な場合がある。
【0159】
1つの態様において、エフェクター機能欠損性の抗TF抗体は、安定化されたIgG4抗体である。適切な安定化されたIgG4抗体の例は、Kabat et al.,のようにEUインデックスで示された、ヒトIgG4の重鎖定常領域の位置409にあるアルギニンが、リジン、スレオニン、メチオニン、もしくはロイシン、好ましくは、リジンで置換されている(WO2006033386(Kirin)に記載)、および/またはヒンジ領域がCys-Pro-Pro-Cys配列を含む、抗体である。
【0160】
さらなる態様において、安定化されたIgG4抗TF抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であり、重鎖は、409に対応する位置に、Lys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基、ならびに/または405に対応する位置に、Ala、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、前記抗体は、任意で、1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含むが、ヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含まない。好ましくは、前記抗体は、409に対応する位置にLysまたはAla残基を含むか、抗体のCH3領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域で置換されている。
【0161】
なおさらなる態様において、安定化されたIgG4抗TF抗体は、重鎖および軽鎖を含むIgG4抗体であり、重鎖は、409に対応する位置に、Lys、Ala、Thr、Met、およびLeuからなる群より選択される残基、ならびに/または405に対応する位置に、Ala、Val、Gly、Ile、およびLeuからなる群より選択される残基を有するヒトIgG4定常領域を含み、前記抗体は、任意で、1つまたは複数のさらなる置換、欠失、および/または挿入を含み、ヒンジ領域にCys-Pro-Pro-Cys配列を含む。好ましくは、前記抗体は、409に対応する位置にLysまたはAla残基を含むか、抗体のCH3領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、またはヒトIgG3のCH3領域で置換されている。
【0162】
さらなる態様において、エフェクター機能欠損性の抗TF抗体は、ADCCなどのエフェクター機能を媒介する能力が低下するように、さらにはエフェクター機能が無くなるように変異されている、非IgG4型、例えば、IgG1、IgG2、またはIgG3の抗体である。このような変異は、例えば、Dall'Acqua WF et al., J Immunol.
177 (2): 1129-1138 (2006)およびHezareh M, J Virol.;
75 (24): 12161-12168(2001)に記載されている。
【0163】
さらなる態様において、本発明の抗体は、別の部分、例えば、細胞傷害性部分、放射性同位体、または薬物と結合体化されている。このような抗体は、他の部分と、抗TF抗体またはその断片(例えば、抗TF抗体H鎖、L鎖、または抗TF特異的/選択的なその断片)のN末端側またはC末端側とを化学的に結合体化することによって作製することができる(例えば、Antibody Engineering Handbook, Osamu Kanemitsu編, Chijin Shokan(1994)により出版を参照されたい)。このような結合体化された抗体誘導体はまた、適宜、内部の残基または糖において結合体化を行うことによっても作製することができる。
【0164】
一般的に、本明細書に記載の抗TF抗体は、任意の適切な数のこのような修飾アミノ酸を含めることによって、および/またはこのような結合体化置換基と結合させることによって改変することができる。この状況における適性は、一般的に、誘導体化されていない親抗TF抗体に関連するTF選択性および/または特異性を少なくとも実質的に保持する能力によって決まる。例えば、ポリペプチド血清半減期の延長、ポリペプチド抗原性の低下、またはポリペプチド保管安定性の増大では、1つまたは複数の修飾アミノ酸を含めることが有利な場合がある。アミノ酸は、例えば、組換え産生の間に翻訳と同時にまたは翻訳後に修飾されるか(例えば、哺乳動物細胞における発現間のN-X-S/TモチーフでのN結合型グリコシル化)、合成手段によって修飾される。修飾アミノ酸の非限定的な例には、グリコシル化アミノ酸、硫酸化アミノ酸、プレニル化(例えば、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化)アミノ酸、アセチル化アミノ酸、アシル化アミノ酸、ペグ化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、カルボキシル化アミノ酸、リン酸化アミノ酸などが含まれる。当業者のアミノ酸修飾の手引きとなるのに十分な参考文献は文献全体にわたって豊富にある。例となるプロトコールは、Walker (1998) Protein Protocols On Cd-Rom, Humana Press, Towata, NJに見られる。修飾アミノ酸は、例えば、グリコシル化アミノ酸、ペグ化アミノ酸、ファルネシル化アミノ酸、アセチル化アミノ酸、ビオチン化アミノ酸、脂質部分と結合体化したアミノ酸、または有機誘導体化剤と結合体化したアミノ酸より選択されてもよい。
【0165】
抗TF抗体はまた、例えば、循環半減期を延ばすために、ポリマーと共有結合させることによって化学修飾されてもよい。例示的なポリマー、およびポリマーをペプチドに取り付ける方法は、例えば、US4,766,106、US4,179,337、US4,495,285、およびUS4,609,546に例示されている。さらなる例示的なポリマーには、ポリオキシエチル化ポリオールおよびポリエチレングリコール(PEG)(例えば、約1,000〜約40,000、例えば、約2,000〜約20,000、例えば、約3,000〜12,000g/molの分子量を有するPEG)が含まれる。
【0166】
1つの態様において、本発明は、放射性核種、酵素、酵素基質、補因子、蛍光マーカー、化学発光マーカー、ペプチドタグ、または磁気粒子より選択される第2の分子と結合体化された抗TF抗体を提供する。1つの態様において、抗TF抗体は、1つまたは複数の抗体断片、核酸(オリゴヌクレオチド)、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、色素などと結合体化されてもよい。これらのおよび他の適切な薬剤は、本発明の抗TF抗体と直接または間接的に共役されてもよい。第2の薬剤の間接的な共役の一例は、スペーサー部分による共役である。次に、これらのスペーサーは不溶性または可溶性でもよく(例えば、Diener et al., Science
231, 148 (1986)を参照されたい)、標的部位で、および/またはある特定の条件下での抗TF抗体からの薬物放出を可能にするように選択されてもよい。抗TF抗体に共役することができる薬剤のさらなる例には、レクチンおよび蛍光ペプチドが含まれる。
【0167】
1つの態様において、1つまたは複数の放射標識アミノ酸を含む抗TF抗体が提供される。放射標識された抗TF抗体は診断目的および治療目的で使用することができる(放射標識分子との結合体化は別の可能性のある特徴である)。ポリペプチドの標識の非限定的な例には、3H、14C、15N、35S、90Y、99Tc、および125I、131I、ならびに186Re が含まれるが、これに限定されない。放射標識アミノ酸および関連ペプチド誘導体を調製するための方法は当技術分野において公知である(例えば、Junghans et al., in Cancer Chemotherapy and Biotherapy 655-686 (2d edition, Chafner and Longo, eds., Lippincott Raven (1996))、ならびにUS4,681,581、US4,735,210、US5,101,827、US5,102,990(USRE35,500)、US5,648,471、およびUS5,697,902を参照されたい)。例えば、放射性同位体はクロラミンT法によって結合体化することができる。
【0168】
1つの態様において、本発明の抗TF抗体には核酸または核酸結合分子が結合体化される。本発明の1つのこのような側面において、結合体化される核酸は細胞傷害性リボヌクレアーゼである、1つの態様において、結合体化される核酸は、アンチセンス核酸(例えば、S100A10標的化アンチセンス分子。これは、本発明の組み合わせ組成物または併用投与方法における独立した成分でもあり得る。例えば、Zhang et al., J Biol Chem.
279 (3), 2053-62 (2004)を参照されたい)である。1つの態様において、結合体化される核酸は抑制性RNA分子(例えば、siRNA分子)である。1つの態様において、結合体化される核酸は免疫賦活性核酸(例えば、免疫賦活性CpGモチーフを含有するDNA分子)である。1つの態様において、結合体化される核酸は、腫瘍抑制遺伝子、抗癌ワクチン、抗癌サイトカイン、またはアポトーシス剤の発現をコードする発現カセットである。このような誘導体はまた、1種類または複数の種類の細胞傷害性タンパク質、例えば、植物毒素および細菌毒素の発現をコードする核酸の結合体化を含んでもよい。
【0169】
1つの態様において、抗TF抗体は、機能性核酸分子と結合体化される。機能的核酸には、アンチセンス分子、干渉核酸分子(例えば、siRNA分子)、アプタマー、リボザイム、三重鎖形成分子、および外部ガイド配列が含まれる。機能性核酸分子は、標的分子が有する特定の活性のエフェクター、インヒビター、モジュレーター、およびスティミュレーターとして働いてもよく、他のどの分子とも無関係の新規の(de novo)活性を有してもよい。
【0170】
別の態様において、本発明の抗TF抗体はアプタマーと結合体化される。
【0171】
別の態様において、本発明は、リボザイムと結合体化された抗TF抗体を提供する。
【0172】
抗TF抗体と、結合体化分子、例えば、前記の結合体化分子を結合体化するための当技術分野において公知の任意の方法を、Hunter et al., Nature
144, 945 (1962), David et al., Biochemistry
13, 1014(1974)、Pain et al., J. Immunol. Meth.
40, 219 (1981)、およびNygren, J. Histochem. and Cytochem.
30, 407(1982)に記載の方法を含めて使用することができる。細胞傷害性化合物上の反応基を用いることによって、または架橋剤を用いることによって、非常に多くの種類の細胞傷害性化合物をタンパク質につなぐことができる。インビボでアミンと安定した共有結合を形成する一般的な反応基は、イソチオシアネートである(Means et al., Chemical modifications of proteins (Holden-Day, San Francisco 1971) pp. 105-110)。この基は、優先的にリジンのε-アミン基と反応する。マレイミドは、システイン上のスルフヒドリル基と安定したインビボ共有結合を形成するために一般的に用いられる反応基である(Ji., Methods Enzymol
91, 580-609(1983))。モノクローナル抗体は、典型的には、ラジオメタル(radiometal)イオンと共有結合を形成することができないが、抗体に共有結合により連結されたキレート剤を用いることによって、ラジオメタルを抗体に間接的に取り付けることができる。キレート剤は、アミノ酸残基のアミン(Meares et al., Anal. Biochem.
142, 68-78 (1984))およびスルフハイドラル(sulfhydral)基(Koyama, Chem. Abstr.
120, 217262t(1994))を介して取り付けられてもよく、炭水化物基(Rodwell et al., PNAS USA
83, 2632-2636(1986)、Quadri et al., Nucl. Med. Biol.
20, 559-570(1993))を介しても取り付けられてもよい。これらのキレート剤は、一方が金属イオンに結合し、他方がキレートと抗体をつなぐ2種類の官能基を含有するので、一般に二官能性キレート剤と呼ばれる(Sundberg et al., Nature
250, 587-588(1974))。
【0173】
1つの態様において、本発明は、治療部分、例えば、細胞毒、化学療法薬、免疫抑制剤、または放射性同位体と結合体化された、抗TF抗体、例えば、ヒト抗TF抗体を提供する。このような結合体は本明細書において「免疫結合体」と呼ばれる。1種類または複数の種類の細胞毒を含む免疫結合体は「免疫毒素」と呼ばれる。
【0174】
細胞毒または細胞傷害剤には、細胞に有害な(例えば、細胞を死滅させる)任意の薬剤が含まれる。当技術分野において周知の、これらのクラスの薬物およびこれらの作用機構の説明については、Goodman et al., Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed., Macmillan Publishing Co., 1990を参照されたい。抗体免疫毒素の調製に関連した、さらなる技法は、例えば、Vitetta, Immunol. Today
14, 252 (1993)およびUS 5,194,594に示されている。
【0175】
本発明の免疫結合体を形成するための適切な治療剤には、タキソール、サイトカラシンB、グラミシジンD、臭化エチジウム、エメチン、マイトマイシン、エトポシド、テノポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ジヒドロキシアントラシンジオン、ミトキサントロン、ミトラマイシン、アクチノマイシンD、1-デヒドロ-テストステロン、グルココルチコイド、プロカイン、テトラカイン、リドカイン、プロプラノロール、およびピューロマイシン、代謝拮抗物質(例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビン)、アルキル化剤(例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えば、カルボプラチン)、抗生物質(例えば、ダクチノマイシン(以前はアクチノマイシン)、ブレオマイシン、ダウノルビシン(以前はダウノマイシン)、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、マイトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC))、ジフテリア毒素および関連分子(例えば、ジフテリアA鎖およびその活性断片、ならびにハイブリッド分子)、リシン毒素(例えば、リシンAまたは脱グリコシルリシンA鎖毒素)、コレラ毒素、志賀毒素様毒素(SLT-I、SLT-II、SLT-IIV)、LT毒素、C3毒素、志賀毒素、百日咳毒素、破傷風毒素、ダイズBowman-Birkプロテアーゼ阻害剤、シュードモナス属(Pseudomonas)エキソトキシン、アロリン(alorin)、サポリン、モデシン(modeccin)、ゲラニン(gelanin)、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-サルシン(sarcin)、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、アメリカヤマゴボウ(Phytolacca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP-S)、ニガウリ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン(phenomycin)、およびエノマイシン(enomycin)毒素が含まれる。他の適切な結合体化分子には、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌エンテロトキシン-A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ジフテリン毒素、およびシュードモナス属エンドトキシンが含まれる。例えば、Pastan et al., Cell
47, 641(1986)およびGoldenberg, Calif. A Cancer Journal for Clinicians
44, 43(1994)を参照されたい。本明細書の他の場所で説明されるように本発明の抗TF抗体と組み合わせて投与され得る治療剤はまた、本発明の抗TF抗体と結合体化するのに有用な治療部分の候補でもよい。
【0176】
1つの態様において、本発明の抗TF抗体は、キレート剤リンカー、例えば、チウキセタンに取り付けられる。キレート剤リンカーがあると、抗体と放射性同位体との結合体化が可能になる。
【0177】
さらなる局面において、本発明は、本明細書で前述した本発明の抗TF抗体、および第2の結合特異性、例えば、ヒトエフェクター細胞、ヒトFc受容体、もしくはT細胞受容体に対する結合特異性、またはTFの別のエピトープに対する結合特異性を含む、二重特異性分子に関する。
【0178】
本発明の二重特異性分子は、抗TF結合特異性、およびヒトエフェクター細胞、ヒトFc受容体、またはT細胞受容体に対する結合特異性に加えて、第3の結合特異性をさらに含んでもよい。
【0179】
本発明の例示的な二重特異性抗体分子は、(i)2つの抗体であって、一方の抗体がTFに対する特異性を有し、別の抗体が第2の標的に対する特異性を有し、これらが一緒に結合体化されている、2つの抗体、(ii)TFに特有の1本の鎖および第2の分子に特有の第2の鎖を有する、1つの抗体、ならびに(iii)TFおよび第2の分子に対する特異性を有する単鎖抗体を含む。典型的には、第2の標的/第2の分子は、TF以外の分子である。1つの態様において、第2の分子は、癌抗原/腫瘍関連抗原、例えば、癌胎児抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、RAGE(腎臓抗原)、α-フェトプロテイン、CAMEL(黒色腫においてCTLによって認識される抗原)、CT抗原(例えば、MAGE-B5、-B6、-C2、-C3、およびD;Mage-12;CT10;NY-ESO-1、SSX-2、GAGE、BAGE、MAGE、およびSAGE)、ムチン抗原(例えば、MUC1、ムチン-CA125など)、ガングリオシド抗原、チロシナーゼ、gp75、C-myc、Mart1、MelanA、MUM-1、MUM-2、MUM-3、HLA-B7、およびEp-CAMである。1つの態様において、第2の分子は、癌関連インテグリン、例えば、α5β3インテグリンである。1つの態様において、第2の分子は、血管新生因子または他の癌関連増殖因子、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞成長因子(EGF)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、アンジオゲニンおよびその受容体、特に、癌進行に関連する受容体(例えば、HER1〜HER4受容体の1つ、c-met、またはRON)である。本明細書において議論される他の癌進行関連タンパク質も適切な第2の分子であり得る。
【0180】
1つの態様において、本発明の二重特異性抗体はダイアボディである。二重特異性抗体はまた、架橋した抗体または「ヘテロコンジュゲート(heteroconjugate)」抗体を含む。例えば、ヘテロコンジュゲートの中にある抗体の一方はアビジンと共役してもよく、他方はビオチンと共役してもよい。このような抗体は、例えば、免疫系細胞を、不必要な細胞に標的化すると提唱されている(例えば、US4,676,980を参照されたい)。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の便利な架橋法を用いて作ることができる。
【0181】
さらなる局面において、本発明は、本発明の抗体をコードする発現ベクターに関する。
【0182】
1つの態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:1-112からなる群より選択されるアミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0183】
別の特定の態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:9、1、5、13、17、21、25、29、33、37、41、45、49、および53からなる群より選択されるVHアミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0184】
特定の態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:4、8、12、16、20、24、28、32、36、40、44、48、52、および56からなる群より選択されるVH CDR3アミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0185】
別の特定の態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:65、57、61、69、73、77、81、85、89、93、97、101、および105からなる群より選択されるVLアミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0186】
別の態様において、本発明の発現ベクターは、SEQ ID NO:60、64、68、72、76、80、84、88、92、96、100、104、および108からなる群より選択されるVL CDR3アミノ酸配列の1つまたは複数をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0187】
特定の態様において、本発明の発現ベクターは、前記のアミノ酸配列の1つまたは複数の変異体をコードするヌクレオチド配列変異体を含み、前記変異体は、最大で25個のアミノ酸修飾、例えば、20個、例えば、最大で15個、14個、13個、12個、または11個のアミノ酸修飾、例えば、10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、2個、または1個のアミノ酸修飾、例えば、欠失または挿入、好ましくは、置換、例えば、保存的置換、あるいは前記の配列のいずれかと少なくとも80%の同一性、例えば、前述のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも85%の同一性または90%の同一性または95%の同一性、例えば、96%の同一性または97%の同一性または98%の同一性または99%の同一性を有する。
【0188】
さらなる態様において、発現ベクターは、抗体、例えば、ヒト抗体の軽鎖、重鎖、または軽鎖および重鎖の両方の定常領域をコードするヌクレオチド配列をさらに含む。
【0189】
このような発現ベクターは、本発明の抗体の組換え産生に使用することができる。
【0190】
本発明の文脈において発現ベクターは、染色体核酸ベクター、非染色体核酸ベクター、および合成核酸ベクター(適切な一組の発現制御エレメントを含む核酸配列)を含む任意の適切なベクターでよい。このようなベクターの例には、SV40、細菌プラスミド、ファージDNA、バキュロウイルス、酵母プラスミド、プラスミドおよびファージDNAの組み合わせに由来するベクター、ならびにウイルス核酸(RNAまたはDNA)ベクターの誘導体が含まれる。1つの態様において、抗TF抗体をコードする核酸は、例えば、直鎖発現エレメントを含む、裸のDNAベクターもしくはRNAベクター(例えば、Sykes and Johnston, Nat Biotech
12, 355-59(1997)に記載)、圧縮された核酸ベクター(例えば、US6,077,835および/もしくはWO00/70087に記載)、プラスミドベクター、例えば、pBR322、pUC19/18、もしくはpUC118/119、「midge」最小サイズ核酸ベクター(例えば、Schakowski et al., Mol Ther
3, 793-800(2001)に記載)、または沈殿された核酸ベクター構築物、例えば、CaPO4によって沈殿された構築物(例えば、WO00/46147、Benvenisty and Reshef, PNAS USA
83, 9551-55(1986)、Wigler et al., Cell
14, 725(1978)、およびCoraro and Pearson, Somatic Cell Genetics
2, 603(1981)に記載)の中に含まれる。このような核酸ベクターおよびその利用は当技術分野において周知である(例えば、US5,589,466およびUS5,973,972を参照されたい)。
【0191】
1つの態様において、ベクターは、細菌細胞における抗TF抗体の発現に適している。このようなベクターの例には、発現ベクター、例えば、BlueScript(Stratagene)、pINベクター(Van Heeke & Schuster, J Biol Chem
264, 5503-5509(1989)、pETベクター(Novagen, Madison WI)など)が含まれる。
【0192】
加えて、または代わりに、発現ベクターは、酵母系における発現に適したベクターでもよい。酵母系における発現に適した任意のベクターを使用することができる。適切なベクターには、例えば、構成的プロモーターまたは誘導性プロモーター、例えば、α因子、アルコールオキシダーゼ、およびPGHを含むベクターが含まれる(F. Ausubel et al., ed. Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley InterScience New York (1987)、およびGrant et al., Methods in Enzymol
153, 516-544(1987)に概説)。
【0193】
核酸および/またはベクターはまた、分泌配列/局在化配列をコードする核酸配列を含んでもよい。分泌配列/局在化配列は、ポリペプチド、例えば、新生ポリペプチド鎖を細胞周辺腔にまたは細胞培地中に標的化することができる。このような配列は当技術分野において公知であり、分泌リーダーまたはシグナルペプチド、細胞小器官標的化配列(例えば、核局在化配列、ER保留シグナル、ミトコンドリア移行配列、葉緑体移行配列)、膜局在化/アンカー配列(例えば、膜透過停止配列、GPIアンカー配列)などを含む。
【0194】
本発明の発現ベクターでは、抗TF抗体をコードする核酸は、任意の適切なプロモーター、エンハンサー、および他の発現促進エレメントを含んでもよく、これと結合してもよい。このようなエレメントの例には、強発現プロモーター(例えば、ヒトCMV IEプロモーター/エンハンサーならびにRSV、SV40、SL3-3、MMTV、およびHIV LTRプロモーター)、有効なポリ(A)終結配列、大腸菌におけるプラスミド産物用の複製起点、選択マーカーとしての抗生物質耐性遺伝子、ならびに/または便利なクローニングサイト(例えば、ポリリンカー)が含まれる。核酸はまた、構成的プロモーターと相対する誘導性プロモーター、例えば、CMV IEを含んでもよい(当業者であれば、このような用語が、実際に、ある特定の条件下での遺伝子発現の程度を説明するものであることを認識しているだろう)。
【0195】
1つの態様において、抗TF抗体をコードする発現ベクターは、ウイルスベクターを介して、宿主細胞もしくは宿主動物の中に配置されてもよく、および/または宿主細胞もしくは宿主動物に送達されてもよい。
【0196】
なおさらなる局面において、本発明は、本明細書において定義される本発明の抗体または本明細書において定義される本発明の二重特異性分子を産生する、組換え真核宿主細胞または原核宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマに関する。宿主細胞の例には、酵母細胞、細菌細胞、および哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞またはHEK細胞が含まれる。例えば、1つの態様において、本発明は、本発明の抗TF抗体の発現をコードする配列を含む核酸が細胞ゲノムに安定に組み込まれている細胞を提供する。別の態様において、本発明は、本発明の抗TF抗体の発現をコードする配列を含む、非組み込み型核酸、例えば、プラスミド、コスミド、ファージミド、または直鎖発現エレメントを含む細胞を提供する。
【0197】
さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義される本発明の抗体を産生するハイブリドーマに関する。なおさらなる局面において、本発明は、ヒト重鎖およびヒト軽鎖をコードする核酸を含むトランスジェニック非ヒト動物に関し、ここで、このような動物または植物は本発明の抗体を産生する。このようなハイブリドーマおよびトランスジェニック動物の作製は前述されている。
【0198】
さらなる局面において、本発明は、本発明の抗TF抗体を産生するための方法であって、
a)本明細書において前述された本発明のハイブリドーマまたは宿主細胞を培養する工程、および
b)培地から本発明の抗体を精製する工程を含む方法に関する。
【0199】
さらなる主な局面において、本発明は、医用薬剤として使用するための、本明細書において定義される抗TF抗体または本明細書において定義される二重特異性分子に関する。
【0200】
なおさらなる局面において、本発明は、
-本明細書において定義される抗TF抗体または本明細書において定義される二重特異性分子、および
-薬学的に許容される担体
を含む、薬学的組成物に関する。
【0201】
薬学的組成物は、薬学的に許容される担体または希釈剤、ならびに従来の技法に従う他の任意の公知のアジュバントおよび賦形剤、例えば、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示されるものを用いて処方することができる。
【0202】
薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに他の任意の公知のアジュバントおよび賦形剤は、選択された本発明の化合物および選択された投与方法に適していなければならない。薬学的組成物の担体および他の成分が適しているかどうかは、本発明の選択された化合物または薬学的組成物の望ましい生物学的特性に大きな悪影響が無いこと(例えば、抗原結合への実質的な影響より少ない(10%以下の相対阻害、5%以下の相対阻害など))に基づいて確かめられる。
【0203】
本発明の薬学的組成物はまた、希釈剤、増量剤、塩、緩衝液、界面活性剤(例えば、非イオン性界面活性剤、例えば、Tween-20もしくはTween-80)、安定剤(例えば、糖またはタンパク質を含まないアミノ酸)、防腐剤、組織固定液、可溶化剤、および/または薬学的組成物に含めるのに適した他の材料を含んでもよい。
【0204】
癌細胞、例えば、ヒト結腸直腸癌細胞では、TFの発現は、MEK/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)およびホスファチジルイノシトール3'-キナーゼ(PI3K)に依存して、疾患進行を動かす2種類の主要なトランスフォーミング事象(K-ras癌遺伝子の活性化およびp53腫瘍抑制遺伝子の不活性化)の制御下にあると報告されている(Yu et al.(2005) Blood 105: 1734)。
【0205】
TFを過剰発現する癌細胞は、細胞1個あたりの結合し得る抗体の数が多くなるので、本発明の抗TF抗体の特に優れた標的である可能性がある。従って、1つの態様において、本発明の抗TF抗体を用いて治療される癌患者は、腫瘍細胞においてK-Rasに1つもしくは複数の変異および/またはp53に1つもしくは複数の変異を有すると診断された患者、例えば、膵臓癌、肺癌、または結腸直腸癌の患者である。
【0206】
代わりの態様において、本発明の抗TF抗体を用いて治療される患者は、K-Rasに変異を有さない患者、例えば、膵臓癌、肺癌、または結腸直腸癌の患者である。特定の理論に拘束されるものではないが、細胞内シグナル伝達機構に対する抗TF抗体の作用が、K-Rasが活性化されている細胞ではあまり有効でない場合があるので、K-Rasが活性化されている腫瘍細胞の中には抗TF抗体治療に対する感受性が低いものもある可能性がある。
【0207】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の投与量レベルは、患者への毒性無く、特定の患者、組成物、および投与方法について望ましい治療応答を実現するのに有効な活性成分量を得るように変えることができる。選択される投与量レベルは、使用される本発明の特定の組成物またはそのアミドの活性、投与経路、投与時間、使用されている特定の化合物の排出速度、治療期間、使用される特定の組成物と併用される他の薬物、化合物、および/または材料、治療されている患者の年齢、性別、体重、状態、身体全体の健康、および前病歴、ならびに医学分野において周知の同様の要因を含む様々な薬物動態要因に依存する。
【0208】
薬学的組成物は、任意の適切な経路および方法によって投与することができる。本発明の化合物をインビボおよびインビトロで投与する適切な経路は当技術分野において周知であり、当業者によって選択することができる。
【0209】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物は非経口投与される。
【0210】
本明細書で使用する「非経口投与」および「非経口投与される」という句は、経腸投与および局所投与以外の投与方法、通常、注射による投与方法を意味し、表皮、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外、および胸骨内への注射および注入を含む。
【0211】
1つの態様において、薬学的組成物は、静脈内または皮下への注射または注入によって投与される。
【0212】
薬学的に許容される担体には、本発明の化合物と生理学的に適合する、任意のおよび全ての適切な溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、酸化防止剤および吸収遅延剤などが含まれる。
【0213】
本発明の薬学的組成物において使用することができる適切な水性担体および非水性担体の例には、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、デキストロース、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、およびその適切な混合物、植物油、例えば、オリーブ油、トウモロコシ油、ピーナッツ油、綿実油、およびゴマ油、カルボキシメチルセルロースコロイド溶液、トラガカントゴムおよび注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチル、ならびに/または様々な緩衝液が含まれる。他の担体は薬学的分野において周知である。
【0214】
薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。薬学的に活性な物質のための、このような媒体および薬剤の使用は当技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除き、本発明の薬学的組成物におけるその使用が意図される。
【0215】
適切な流動性は、例えば、コーティング材料、例えば、レシチンを使用することによって、分散液の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。
【0216】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的に許容される酸化防止剤、例えば、(1)水溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性の酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸パルミテート、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などを含んでもよい。
【0217】
本発明の薬学的組成物はまた、組成物中に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、または塩化ナトリウムを含んでもよい。
【0218】
本発明の薬学的組成物はまた、薬学的組成物の貯蔵寿命または有効性を増強することができる、選択された投与経路に適した1種類または複数の種類の佐剤、例えば、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、防腐剤、または緩衝液を含んでもよい。本発明の化合物は、急速に放出されないように化合物を保護する担体、例えば、移植片、経皮パッチ、およびマイクロカプセルに閉じ込めた送達系を含む徐放製剤を用いて調製されてもよい。このような担体は、ゼラチン、モノステアリン酸グリセリン、ジステアリン酸グリセリン、生分解性生体適合性ポリマー、例えば、エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸のみもしくはポリ乳酸とろう、または当技術分野において周知の他の材料を含んでもよい。このような製剤を調製するための方法は一般的に当業者に公知である。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J. R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978を参照されたい。
【0219】
1つの態様において、本発明の化合物はインビボで適切に分散するように処方することができる。非経口投与のための薬学的に許容される担体には、滅菌した水溶液または分散液、および滅菌した注射液または分散液を即時調製するための滅菌した散剤が含まれる。薬学的に活性な物質のための、このような媒体および薬剤の使用は当技術分野において公知である。従来の媒体または薬剤が活性化合物と適合しない場合を除き、本発明の薬学的組成物におけるその使用が意図される。補助的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0220】
注射用の薬学的組成物は、典型的には、製造および保管の条件下で無菌かつ安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適した他の規則正しい構造として処方されてもよい。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)および適切なその混合物、植物油、例えば、オリーブ油、ならびに注射用有機エステル、例えば、オレイン酸エチルを含有する、水性および非水性の溶媒または分散媒でもよい。適切な流動性は、例えば、コーティング、例えば、レシチンを使用することによって、分散液の場合、必要な粒径を維持することによって、および界面活性剤を使用することによって維持することができる。多くの場合、組成物に、等張剤、例えば、糖、多価アルコール、例えば、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、組成物に、吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸塩およびゼラチンを含めることによって引き起こすことができる。滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、成分の1つまたは組み合わせ、例えば、前記で列挙されたものと共に、適切な溶媒中に組み込んだ後に、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒および必要とされる他の成分、例えば、前記で列挙されたものを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、予め濾過滅菌したその溶液から、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤を生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0221】
滅菌注射液は、必要とされる量の活性化合物を、必要に応じて、前記で列挙された成分の1つまたは組み合わせと共に適切な溶媒中に組み込んだ後に、滅菌精密濾過を行うことによって調製することができる。一般的に、分散液は、活性化合物を、基本分散媒、および必要とされる他の成分、例えば、前記で列挙されたものを含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。滅菌注射液を調製するための滅菌散剤の場合、調製方法の例は、予め濾過滅菌したその溶液から、活性成分+任意のさらなる望ましい成分の散剤を生じさせる真空乾燥およびフリーズドライ(凍結乾燥)である。
【0222】
本発明の薬学的組成物は本発明の1種類の化合物を含んでもよく、本発明の化合物の組み合わせを含んでもよい。
【0223】
前記のように、別の局面において、本発明は、医用薬剤として使用するための、本明細書において定義される本発明の抗体または本明細書において定義される本発明の二重特異性分子に関する。
【0224】
本発明の抗TF抗体は多くの目的に使用することができる。特に、本発明の抗体は、様々な形の癌を治療するために使用することができる。1つの局面において、本発明の抗TFモノクローナル抗体は、様々な固形癌タイプ、例えば、中枢神経系の腫瘍、頭頚部癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、食道癌、胃癌、肝臓癌および胆道癌、膵臓癌、結腸直腸癌、膀胱癌、腎臓癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、悪性黒色腫、肉腫(軟部組織、例えば、骨および筋肉)、原発起源不明の(すなわち、原発不明の)腫瘍、白血病、骨髄癌(例えば、多発性骨髄腫)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病および非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、神経膠腫、脳、子宮、および直腸の癌を治療するために用いられる。
【0225】
筋障害または多発性硬化症(multiple sclerose)などのさらなる自己免疫炎症を、本発明の抗TFモノクローナル抗体の標的とすることができる。
【0226】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた止血(haemostatis)を治療するために有用であり得る。
【0227】
癌に関連する止血障害もまた本介入の標的となり得る。
【0228】
炎症を伴うさらなる疾患、例えば、筋障害、慢性関節リウマチ、変形性関節症、強直性脊椎炎、痛風、脊椎関節症、強直性脊椎炎、ライター症候群、乾癬性関節症、腸疾患性脊椎炎(enterapathric spondylitis)、若年性関節症、反応性関節症、感染性関節炎または感染後関節炎、結核性関節炎、ウイルス関節炎、真菌関節炎、梅毒性関節炎、腎炎、末期腎臓病、全身性エリテマトーデス、mb.クローン(mb. Crohn)、潰瘍性大腸炎、炎症性腸疾患、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息(astma)、アレルギー性喘息、気管支炎、急性細気管支炎、慢性細気管支炎、特発性肺線維症、または多発性硬化症も本発明の抗TFモノクローナル抗体の標的となり得る。
【0229】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた止血を治療するのに有用であり得る。
【0230】
癌に関連する止血障害もまた本介入の標的となり得る。
【0231】
血管再狭窄、心筋血管疾患、脳血管疾患、網膜症、および滲出型AMDを含むが、これに限定されない黄斑変性などの血管疾患も抗TFモノクローナル抗体によって治療することができる。
【0232】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、急性心筋梗塞、脳卒中を含むが、これに限定されない、心血管リスク、例えば、アテローム性動脈硬化症、高血圧、糖尿病、脂質異常症、および急性冠状動脈症候群のある患者を治療するのに有用であり得る。
【0233】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、血栓症、例えば、DVT、腎臓塞栓症、肺塞栓症、動脈血栓症を阻害するのに、または動脈手術、末梢血管バイパス移植もしくは冠状動脈バイパス移植、動静脈シャント、ステントもしくはカテーテルなどの器具の取り出しの後に起こる血栓症を治療するのに有用であり得る。
【0234】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた腎虚血性再灌流傷害の阻害に有用であり得る。
【0235】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた高リポタンパク血症、副甲状腺機能亢進の治療に有用であり得る。
【0236】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた脈管炎、ANCA陽性脈管炎、ベーチェット病の治療に有用であり得る。
【0237】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、外傷により誘導された呼吸不全、例えば、急性呼吸促迫症候群(Acute Respitory Distress Syndrome)、急性肺損傷を阻止するのに有用であり得る。
【0238】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、感染により誘導された臓器機能不全、例えば、腎不全、急性呼吸窮迫症候群、急性肺損傷を阻止するのに有用であり得る。
【0239】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、血管形成術、心筋梗塞、不安定狭心症、および冠状動脈狭窄に起因する血栓塞栓性障害などの様々な血栓塞栓性障害の治療に有用であり得る。
【0240】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、敗血症または肺炎などの全身感染症に対するTFを介した合併症を治療するための予防の場において有用であり得る。
【0241】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、血栓症のリスクのある、アテローム動脈硬化血管を有する患者の予防処置として有用であり得る。
【0242】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた移植片対宿主病の治療に有用であり得る。
【0243】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、島移植におけるβ細胞生着の増大、心臓同種移植血管症(CAV)の阻止、急性移植片拒絶反応の阻止に有用であり得る。
【0244】
本発明の抗TFモノクローナル抗体はまた、血管血栓症、II型糖尿病、AMI、肺動脈高血圧などがあるが、これに限定されない、組織因子を曝露する循環微小粒子が存在する疾患の治療に有用であり得る。
【0245】
同様に、本発明は、TFを発現する腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害するための方法であって、組織因子を発現する腫瘍細胞の成長および/または増殖の阻害を必要とする個体に、本発明の抗体または二重特異性分子を投与する工程を含む方法に関する。1つの態様において、前記腫瘍細胞は、癌、例えば、前立腺癌、肺癌(例えば、非小細胞肺癌)、乳癌、結腸直腸癌(例えば、転移性結腸直腸癌)、膵臓癌、子宮内膜癌、卵巣癌、皮膚黒色腫、白血病骨髄癌(例えば、多発性骨髄腫)、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ芽球性白血病および非ホジキンリンパ腫、皮膚癌、前立腺癌、神経膠腫、脳癌、腎臓癌、子宮癌、膀胱癌、および直腸癌に関与する。
【0246】
また、本発明は、癌、例えば、前述の特定の癌表示の1つを治療するための医用薬剤を調製するための、ヒトTFに結合するモノクローナル抗体の使用に関する。
【0247】
1つの態様において、抗TF抗体を用いて治療しようとする患者の選択は、尿中および/または血中の組織因子(TF)のレベルに基づく。特定の態様において、治療しようとする患者の尿中および/または血中のTFレベルは比較的高い。例えば、治療しようとする患者の尿中のTFレベルは、20ng/ml超、例えば、40ng/ml超、例えば、100ng/ml超、例えば、200ng/ml超であり得る。代わりに、またはさらに、患者の血清中のTFレベルは、100pg/ml超、例えば、200pg/ml超であり得る。これは、例えば、ELISAを用いて求めることができる。
【0248】
本発明の治療方法のさらなる態様において、治療の効力は、療法間に、例えば、所定の時点でモニタリングされる。1つの態様において、効力は、例えば、ELISAによって、尿中および/または血中のTFレベルを測定することによってモニタリングされてもよい。別の態様において、効力は、疾患領域を視覚化することによって、例えば、標識された抗TF抗体、例えば、本発明の標識された抗TF抗体を用いて、1回または複数回のPET-CTスキャンを行うことによって確かめられてもよい。さらに、標識された抗TF抗体、例えば、本発明の標識された抗TF抗体は、例えば、PET-CTスキャンを用いて、TF産生腫瘍を検出するのに使用することができる。
【0249】
前記の治療方法および使用における投与計画は、最適な望ましい応答(例えば、治療応答)をもたらすように調節される。例えば、単一ボーラスを投与してもよく、いくつかの分割量を、ある期間にわたって投与してもよく、その用量は、治療状況の難局により示されるように比例して減少または増加してもよい。投与の容易さおよび投薬の均一性のために単位剤形で非経口組成物が処方されてもよい。本明細書中で使用する単位剤形とは、治療しようとする被験体に対する単位剤形として適した物理的に分離した単位をいう。各単位は所定量の活性化合物を含み、所定量は、必要とされる薬学的担体と関係して望ましい治療効果をもたらすように算出される。本発明の単位剤形の仕様は、(a)活性化合物の特有の特徴および達成しようとする特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性を治療するための、このような活性化合物を配合する分野に固有の制限によって決まり、それらに直接左右される。
【0250】
抗TF抗体の効率的な投与量および投与計画は、治療しようとする疾患または状態に左右され、当業者によって決定することができる。本発明の化合物の治療的有効量の例示的で非限定的な範囲は、約0.1〜100mg/kg、例えば、約0.1〜50mg/kg、例えば、約0.1〜20mg/kg、例えば、約0.1〜10mg/kg、例えば、約0.5、例えば、約0.3mg/kg、約1mg/kg、または約3mg/kgである。
【0251】
当技術分野において通常の知識を有する医師または獣医師は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医師は、薬学的組成物において用いられる抗TF抗体の用量を、望ましい治療効果を達成するのに必要とされる用量より低いレベルで開始し、望ましい効果が達成されるまで投与量を段々と増やすことができる。一般的に、本発明の組成物の適切な一日量は、治療効果を生じるのに有効な最小用量である化合物量である。このような有効用量は、一般的に、前記の要因に左右されるだろう。投与は、例えば、静脈内投与、筋肉内投与、腹腔内投与、または皮下投与でもよく、例えば、標的部位の近くに投与されてもよい。所望であれば、薬学的組成物の有効な一日量は、1日にわたって適切な間隔で別個に投与される、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ以上の分割用量(sub-dose)として投与されてもよく、任意で、単位剤形で投与されてもよい。本発明の化合物は単独で投与することができるが、前記のように薬学的組成物として化合物を投与することが好ましい。
【0252】
1つの態様において、抗TF抗体は、10〜500mg/m
2、例えば、200〜400mg/m
2の毎週投与量で注入されることによって投与されてもよい。このような投与は、例えば、1〜8回、例えば、3〜5回繰り返されてもよい。投与は、2〜24時間、例えば、2〜12時間の期間にわたる連続注入によって行われてもよい。
【0253】
1つの態様において、毒性副作用を弱めるために、抗TF抗体は、長期間にわたる、例えば、24時間を超える、ゆっくりとした連続注入によって投与されてもよい。
【0254】
1つの態様において、抗TF抗体は、250mg〜2000mg、例えば、300mg、500mg、700mg、1000mg、1500mg、または2000mgの毎週投与量で、8回まで、例えば、4〜6回、投与されてもよい。投与は、2〜24時間、例えば、2〜12時間の期間にわたる連続注入によって行われてもよい。このようなレジメンは、例えば、6ヶ月後または12ヶ月後に、必要に応じて1回または複数回、繰り返されてもよい。投与量は、投与の際の本発明の化合物の血中量を測定することによって、例えば、生物学的試料を採取し、本発明の抗TF抗体の抗原結合領域を標的とする抗イディオタイプ抗体を使用することによって決定または調節されてもよい。
【0255】
1つの態様において、抗TF抗体は、維持療法によって、例えば、6ヶ月以上の期間にわたって1週間に1回投与されてもよい。
【0256】
1つの態様において、抗TF抗体は、本発明の抗TF抗体を1回注入した後に、放射性同位体と結合体化した本発明の抗TF抗体を注入することを含むレジメンによって投与されてもよい。このレジメンは、例えば、7〜9日後に繰り返されてもよい。
【0257】
非限定的な例として、本発明による治療は、本発明の化合物の1日投与量として、1日あたり約0.1〜100mg/kg、例えば、0.5mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.1mg/kg、1.5mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、7mg/kg、8mg/kg、9mg/kg、10mg/kg、11mg/kg、12mg/kg、13mg/kg、14mg/kg、15mg/kg、16mg/kg、17mg/kg、18mg/kg、19mg/kg、20mg/kg、21mg/kg、22mg/kg、23mg/kg、24mg/kg、25mg/kg、26mg/kg、27mg/kg、28mg/kg、29mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、45mg/kg、50mg/kg、60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kg、または100mg/kgの量で、治療開始後、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、8日目、9日目、10日目、11日目、12日目、13日目、14日目、15日目、16日目、17日目、18日目、19日目、20日目、21日目、22日目、23日目、24日目、25日目、26日目、27日目、28日目、29日目、30日目、31日目、32日目、33日目、34日目、35日目、36日目、37日目、38日目、39日目、もしくは40日目の少なくとも1つに、もしくは1週目、2週目、3週目、4週目、5週目、6週目、7週目、8週目、9週目、10週目、11週目、12週目、13週目、14週目、15週目、16週目、17週目、18週目、19週目、もしくは20週目の少なくとも1つに、または、その任意の組み合わせで、単一用量、または24時間毎、12時間毎、8時間毎、6時間毎、4時間毎、もしくは2時間毎の分割量、またはその任意の組み合わせを用いて提供されてもよい。
【0258】
腫瘍療法の「有効量」は、疾患の進行を安定させる能力によって測定されてもよい。化合物が癌を阻害する能力は、ヒト腫瘍における効力を示す動物モデル系において評価することができる。または、組成物のこの効力は、当業者に公知のインビトロアッセイによって、化合物が細胞増殖を阻害する能力またはアポトーシスを誘導する能力を調べることによって評価することができる。治療的有効量の治療用化合物は腫瘍サイズを縮小してもよく、被験体における症状を他の方法で寛解してもよい。当業者であれば、被験体の大きさ、被験体の症状の重篤度、および選択された特定の組成物または投与経路などの要因に基づいて、このような量を決定することができるだろう。
【0259】
抗TF抗体はまた、癌を発症するリスクを下げるために、癌進行における事象の発生の開始を遅延するために、および/または癌が軽快している時の再発のリスクを下げるために予防的に投与することもできる。これは、存在することが知られている腫瘍の位置を突き止めることが、他の生物学的要因のために難しい患者において特に有用であるかもしれない。
【0260】
抗TF抗体はまた併用療法で投与することができる、すなわち、治療しようとする疾患または状態に関連する他の治療剤と組み合わせて投与することができる。従って、1つの態様において、抗体を含有する医用薬剤は、1種類または複数の種類のさらなる治療剤、例えば、細胞傷害剤、化学療法剤、または抗血管新生剤と併用するためのものである。
【0261】
このような併用投与は同時に行われてもよく、別々に行われてもよく、連続して行われてもよい。同時投与の場合、薬剤は、適宜、1つの組成物として投与されてもよく、または別々の組成物として投与されてもよい。従って、本発明はまた、前記のTFを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、下記の1種類または複数の種類のさらなる治療剤と組み合わせて本発明の抗TF抗体を投与する工程を含む方法を提供する。
【0262】
1つの態様において、本発明は、被験体において、TFを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、治療的有効量の本発明の抗TF抗体および少なくとも1種類の化学療法剤を、障害の治療を必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0263】
1つの態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法であって、治療的有効量の本発明の抗TF抗体および少なくとも1種類の化学療法剤を、癌の治療または予防を必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0264】
1つの態様において、本発明は、癌を治療するための少なくとも1種類の化学療法剤と共に投与される薬学的組成物を調製するための、本発明の抗TF抗体の使用を提供する。
【0265】
1つの態様において、このような化学療法剤は、代謝拮抗剤、例えば、メトトレキセート、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5-フルオロウラシル、デカルバジン(decarbazine)、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビン、クラドリビン、ならびに類似の薬剤により選択されてもよい。
【0266】
1つの態様において、このような化学療法剤は、アルキル化剤、例えば、メクロレタミン、チオエパ(thioepa)、クロランブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、マイトマイシンC、シスプラチンおよび他の白金誘導体、例えば、カルボプラチン、ならびに類似の薬剤により選択されてもよい。
【0267】
1つの態様において、このような化学療法剤は、有糸分裂阻害剤、例えば、タキサン、例えば、ドセタキセルおよびパクリタキセル、ならびにビンカアルカロイド、例えば、ビンデシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、およびビノレルビンにより選択されてもよい。
【0268】
1つの態様において、このような化学療法剤は、トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、トポテカンまたはイリノテカンにより選択されてもよい。
【0269】
1つの態様において、このような化学療法剤は、細胞分裂停止薬、例えば、エトポシドおよびテニポシドにより選択されてもよい。
【0270】
1つの態様において、このような化学療法剤は、増殖因子阻害剤、例えば、ErbB1(EGFR)阻害剤(例えば、イレッサ、エルビタックス(セツキシマブ)、タルセバおよび類似の薬剤)、ErbB2(Her2/neu)阻害剤(例えば、ハーセプチンおよび類似の薬剤)、ならびに類似の薬剤により選択されてもよい。
【0271】
1つの態様において、このような化学療法剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、イマチニブ(Glivec、Gleevec STI571)、ラパチニブ、PTK787/ZK222584、および類似の薬剤により選択されてもよい。
【0272】
1つの態様において、本発明は、被験体において、TFを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、治療的有効量の本発明の抗TF抗体、ならびに少なくとも1種類の、血管形成、新血管新生、および/または他の血管新生の阻害剤を、障害の治療を必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0273】
このような血管形成阻害剤の例は、ウロキナーゼ阻害剤、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤(例えば、マリマスタット、ネオバスタット(neovastat)、BAY12-9566、AG3340、BMS-275291、および類似の薬剤)、内皮細胞の遊走および増殖の阻害剤(例えば、TNP-470、スクアラミン、2-メトキシエストラジオール、コンブレタスタチン、エンドスタチン、アンギオスタチン、ペニシラミン、SCH66336(Schering-Plough Corp, Madison, NJ)、R115777 (Janssen Pharmaceutica, Inc, Titusville, NJ)、および類似の薬剤)、血管新生増殖因子のアンタゴニスト(例えば、ZD6474、SU6668、血管新生剤および/またはその受容体(例えば、VEGF、bFGF、およびアンジオポエチン-1)に対する抗体、サリドマイド、サリドマイド類似体(例えば、CC-5013)、Sugen5416、SU5402、抗血管新生リボザイム(例えば、アンギオザイム(angiozyme))、インターフェロンα(例えば、インターフェロンα2a)、スラミン、および類似の薬剤)、VEGF-Rキナーゼ阻害剤および他の抗血管新生性のチロシンキナーゼ阻害剤(例えば、SUO11248)、内皮特異的インテグリン/生存シグナル伝達の阻害剤(例えば、ビタキシン(vitaxin)および類似の薬剤)、銅アンタゴニスト/キレート剤(例えば、テトラチオモリブデート(tetrathiomolybdate)、カプトプリル、および類似の薬剤)、カルボキシアミド-トリアゾール(CAI)、ABT-627、CM101、インターロイキン-12(IL-12)、IM862、PNU145156E、ならびに血管形成を阻害するヌクレオチド分子(例えば、アンチセンス-VEGF-cDNA、アンギオスタチンをコードするcDNA、p53をコードするcDNA、および欠損VEGF受容体-2をコードするcDNA)、ならびに類似の薬剤である。
【0274】
血管形成、新血管新生、および/または他の血管新生のこのような阻害剤の他の例は、抗血管新生性のヘパリン誘導体および関連分子(例えば、ヘペリナーゼ(heperinase)III)、テモゾロミド、NK4、マクロファージ遊走阻害因子(MIF)、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、低酸素誘導性因子1の阻害剤、抗血管新生性のダイズイソフラボン、オルチプラズ、フマギリンおよびその類似体、ソマトスタチン類似体、多流酸ペントサン、テコガランナトリウム、ダルテパリン、タムスタチン、トロンボスポンジン、NM-3、コンブレスタチン(combrestatin)、カンスタチン(canstatin)、アバスタチン(avastatin)、他の関連標的に対する抗体(例えば、抗α-v/β-3インテグリンおよび抗キニノスタチン(kininostatin)mAb)、ならびに類似の薬剤である。
【0275】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、抗癌免疫原、例えば、癌抗原/腫瘍関連抗原(例えば、上皮細胞接着分子(EpCAM/TACSTD1)、ムチン1(MUC1)、癌胎児抗原(CEA)、腫瘍関連糖タンパク質72(タグ-72)、gp100、Melan-A、MART-1、KDR、RCAS1、MDA7、癌関連ウイルスワクチン(例えば、ヒトパピローマウイルスワクチン)、腫瘍由来熱ショックタンパク質、および類似の薬剤でもよい。加えて、または代わりに、本明細書の他の場所で説明される、他の多くの適切な癌抗原/腫瘍関連抗原および当技術分野において公知の類似の分子が、このような態様において用いられてもよい。抗癌免疫原性ペプチドはまた、抗イディオタイプ「ワクチン」、例えば、BEC2抗イディオタイプ抗体、Mitumomab、CeaVac、および関連する抗イディオタイプ抗体、MG7抗体に対する抗イディオタイプ抗体、および他の抗癌性抗イディオタイプ抗体も含む(例えば、Birebent et al., Vaccine.
21 (15), 1601-12 (2003)、Li et al., Chin Med J (Engl).
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264 (1-2), 121-33 (2002)を参照されたい)。このような抗イディオタイプAbは任意で担体と結合体化されてもよい。担体は、合成(典型的には、不活性)分子担体、タンパク質(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(例えば、Ochi et al., Eur J Immunol.
17 (11), 1645-8 (1987)を参照されたい))、または細胞(例えば、赤血球、例えば、Wi et al., J Immunol Methods.
122 (2), 227-34(1989)を参照されたい)でもよい。
【0276】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、抗癌性サイトカイン、ケモカイン、またはその組み合わせでもよい。適切なサイトカインおよび増殖因子の例には、IFNγ、IL-2、IL-4、IL-6、IL-7、IL-10、IL-12、IL-13、IL-15、IL-18、IL-23、IL-24、IL-27、IL-28a、IL-28b、IL-29、KGF、IFNα(例えば、INFα2b)、IFNβ、GM-CSF、CD40L、Flt3リガンド、幹細胞因子、アンセスチム、およびTNFαが含まれる。適切なケモカインは、Glu-Leu-Arg(ELR)ネガティブケモカイン、例えば、ヒトCXCおよびC-CケモカインファミリーからのIP-10、MCP-3、MIG、およびSDF-1αを含んでもよい。適切なサイトカインには、サイトカイン誘導体、サイトカイン変異体、サイトカイン断片、およびサイトカイン融合タンパク質が含まれる。代わりに、またはさらに、本明細書の天然ペプチドをコードする核酸が関与するこれらのおよび他の方法または使用は、例えば、US5,968,502、US6,063,630、およびUS6,187,305、ならびにEP0505500に記載されているように、「遺伝子活性化」および相同組換え遺伝子アップレギュレーション法によって行われてもよい。
【0277】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、細胞周期制御/アポトーシス制御因子(または「制御剤」)でもよい。細胞周期制御/アポトーシス制御因子は、細胞周期制御/アポトーシス制御因子を標的とし、調節する分子、例えば、(i)cdc-25(例えば、NSC663284)、(ii)細胞周期を過度に刺激するサイクリン依存性キナーゼ(例えば、フラボピリドール(L868275、HMR1275)、7-ヒドロキシスタウロスポリン(UCN-01、KW-2401)、およびロスコビチン(R-ロスコビチン、CYC202))、ならびに(iii)テロメラーゼモジュレーター(例えば、BIBR1532、SOT-095、GRN163、ならびに例えば、US6,440,735およびUS6,713,055に記載の組成物)を含んでもよい。アポトーシス経路に干渉する分子の非限定的な例には、TNF関連アポトーシス誘発リガンド(TRAIL)/アポトーシス-2リガンド(Apo-2L)、TRAIL受容体を活性化する抗体、IFN、およびアンチセンスBcl-2が含まれる。
【0278】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、ホルモン制御剤、例えば、抗アンドロゲン療法および抗エストロゲン療法に有用な薬剤でもよい。このようなホルモン制御剤の例は、タモキシフェン、イドキシフェン、フルベストラント、ドロロキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオール/エスチニル(estinyl)、抗アンドロゲン(例えば、フルタミンド(flutaminde)/エルレキシン(eulexin))、プロゲスチン(例えば、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシ-プロゲステロン/プロベラ、酢酸メゲストロール/メゲース)、副腎皮質ステロイド(例えば、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン(およびその類似体、ならびに他のLHRHアゴニスト、例えば、ブセレリンおよびゴセレリン)、アロマターゼ阻害剤(例えば、アナストラゾール(anastrazole)/アリミデックス、アミノグルテチミド/シトラデン(cytraden)、エキセメスタン)、ホルモン阻害剤(例えば、オクトレオチド/サンドスタチン)、ならびに類似の薬剤である。
【0279】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、抗アネルギー剤(例えば、腫瘍および癌抗原に対する寛容を壊す、低分子化合物、タンパク質、糖タンパク質、または抗体)でもよい。このような化合物の例は、CTLA-4の活性をブロックする分子、例えば、MDX-010(イピリムマブ)(Phan et al., PNAS USA
100, 8372 (2003))である。
【0280】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、腫瘍抑制遺伝子を含有する核酸またはベクター、例えば、ヒト組換え野生型p53/SCH58500などをコードする複製欠損アデノウイルス;癌遺伝子、変異遺伝子、もしくはダウンレギュレートされた遺伝子に標的化されたアンチセンス核酸;または変異遺伝子もしくはダウンレギュレートされた遺伝子に標的化されたsiRNAでもよい。腫瘍抑制標的の例には、例えば、BRCA1、RB1、BRCA2、DPC4(Smad4)、MSH2、MLH1、およびDCCが含まれる。
【0281】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、抗癌核酸、例えば、ゲナセンス(アウグメロゼン(augmerosen)/G3139)、LY900003(ISIS 3521)、ISIS 2503、OGX-011(ISIS 112989)、LE-AON/LEraf-AON(リポソームで包まれたc-rafアンチセンスオリゴヌクレオチド/ISIS-5132)、MG98、およびPKCα、クラステリン、IGFBPs、プロテインキナーゼA、サイクリンD1、またはBcl-2hを標的とする他のアンチセンス核酸でもよい。
【0282】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、抗癌性抑制性RNA分子でもよい(例えば、Lin et al., Curr Cancer Drug Targets.
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22 (36), 5694-701(2003)、およびZhang et al., Biochem Biophys Res Commun.
303 (4), 1169-78(2003)を参照されたい)。
【0283】
本発明の組成物および併用投与方法はまた、核酸ワクチン、例えば、このような癌抗原/腫瘍関連抗原をコードする裸のDNAワクチンの投与も含む(例えば、US5,589,466、US5,593,972、US5,703,057、US5,879,687、US6,235,523、およびUS6,387,888を参照されたい)。1つの態様において、併用投与方法および/または組み合わせ組成物は自己由来のワクチン組成物を含む。1つの態様において、組み合わせ組成物および/または併用投与方法は、全細胞ワクチンまたはサイトカイン発現細胞(例えば、組換えIL-2を発現する線維芽細胞、組換えサイトカインを発現する樹状細胞など)を含む(例えば、Kowalczyk et al., Acta Biochim Pol.
50 (3), 613-24(2003)、Reilly et al., Methods Mol Med.
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2 (1), 79-89(2002)を参照されたい)。本発明の組み合わせ方法において有用であり得る、このような自己由来細胞アプローチの別の例は、MyVax(登録商標)Personalized Immunotherapy法(以前はGTOP-99と呼ばれていた)(Genitope Corporation - Redwood City, CA, USA)である。
【0284】
1つの態様において、本発明は、抗TF抗体がウイルス、ウイルスタンパク質などと組み合わされる、または同時投与される、組み合わせ組成物および併用投与方法を提供する。複製欠損ウイルスは一般的にインビボで1回複製することができるか、または数回しか複製することができず、腫瘍細胞に標的化されており、例えば、このような組成物および方法の有用な成分であり得る。このようなウイルス剤は、免疫賦活薬、例えば、GM-CSFおよび/またはIL-2をコードする核酸を含んでもよく、これらに結合してもよい。天然で腫瘍退縮性のウイルスおよびこのような組換え腫瘍退縮性ウイルス(例えば、HSV-1ウイルス、レオウイルス、複製欠損性および複製感受性アデノウイルスなど)は両方とも、このような方法および組成物の有用な成分であり得る。従って、1つの態様において、本発明は、抗TF抗体が腫瘍退縮性ウイルスと組み合わされた、または同時投与された、組み合わせ組成物および併用投与方法を提供する。このようなウイルスの例には、腫瘍退縮性のアデノウイルスおよびヘルペスウイルスが含まれ、これらは改変ウイルスでもよく、改変ウイルスでなくてもよい(例えば、Shah et al., J Neurooncol.
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28 (4), 336-43(2001)を参照されたい)。
【0285】
本発明の組み合わせ組成物および併用投与方法はまた「全細胞」および「養子」免疫療法を伴ってもよい。例えば、このような方法は、免疫系細胞(例えば、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)、例えば、CD4+および/またはCD8+T細胞(例えば、腫瘍特異的抗原および/または遺伝的強化法によって増殖されたT細胞))、抗体発現B細胞または他の抗体産生細胞/抗体提示細胞、樹状細胞(例えば、抗サイトカインを発現する組換え樹状細胞、GM-CSFおよび/もしくはFlt3-LなどのDC増殖剤と共に培養された樹状細胞、ならびに/または腫瘍関連抗原が充填された樹状細胞)、抗腫瘍NK細胞、いわゆるハイブリッド細胞、あるいはその組み合わせの注入または再注入を含んでもよい。このような方法および組成物において、細胞溶解産物も有用であり得る。このような局面において有用であり得る、臨床試験における細胞「ワクチン」には、Canvaxin(商標)、APC-8015(Dendreon)、HSPPC-96(Antigenics)、およびMelacine(登録商標)細胞溶解産物が含まれる。癌細胞から脱落した抗原およびその混合物(例えば、Bystryn et al., Clinical Cancer Research Vol. 7, 1882-1887, July 2001を参照されたい)もまた、任意で、ミョウバンなどのアジュバントと混合され、このような方法および組み合わせ組成物における成分であり得る。
【0286】
1つの態様において、抗TF抗体は、内部ワクチン接種法の適用と組み合わせて患者に送達されてもよい。内部ワクチン接種は、患者における、誘導された腫瘍細胞死または癌細胞死、例えば、薬物誘導性または放射線誘導性の腫瘍細胞細胞死を指し、この細胞死は、典型的には、(a)分泌型のタンパク質、糖タンパク質、または他の産物、(b)膜結合型のタンパク質もしくは糖タンパク質、または膜に結合している他の成分もしくは膜に挿入されている他の成分、および/あるいは(c)細胞内タンパク質または他の細胞内成分を含む、(i)腫瘍細胞全体または(ii)腫瘍細胞の一部に対する免疫応答を誘発する。内部ワクチン接種によって誘導される免疫応答は体液性(すなわち、抗体-補体媒介性)でもよく、細胞性(例えば、内部で死滅された腫瘍細胞またはその一部を認識する内因性細胞傷害性Tリンパ球の発生および/または増加)でもよい。放射線療法に加えて、この腫瘍細胞死および内部ワクチン接種を誘導するのに使用することができる薬物および薬剤の非限定的な例は、従来の化学療法剤、細胞周期阻害剤、抗血管形成薬物、モノクローナル抗体、アポトーシス誘導剤、およびシグナル伝達阻害剤である。
【0287】
前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、分化誘導剤、レチノイン酸類似体(例えば、オールトランスレチノイン酸、13-cisレチノイン酸、および類似の薬剤)、ビタミンD類似体(例えば、セオカルシトール(seocalcitol)および類似の薬剤)、ErbB3、ErbB4、IGF-IR、インシュリン受容体、PDGFRa、PDGFRβ、Flk2、Flt4、FGFR1、FGFR2、FGFR3、FGFR4、TRKA、TRKC、c-met、Ron、Sea、Tie、Tie2、Eph、Ret、Ros、Alk、LTK、PTK7の阻害剤、および類似の薬剤である。
【0288】
前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、カテプシンB、カテプシンDデヒドロゲナーゼ活性のモジュレーター、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(例えば、グルタシルシステイン(glutacylcysteine)合成酵素および乳酸デヒドロゲナーゼ)、ならびに類似の薬剤である。
【0289】
前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、エストラムスチンおよびエピルビシンである。
【0290】
前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、HSP90阻害剤、例えば、17-アリルアミノゲルダナマイシン、腫瘍抗原、例えば、PSA、CA125、KSAなどに対する抗体、インテグリン、例えば、インテグリンβ1、VCAM阻害剤、および類似の薬剤である。
【0291】
前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤として関連し得る他の抗癌剤の例は、カルシニューリン阻害剤(例えば、バルスポダール(valspodar)、PSC833および他のMDR-1またはp-糖タンパク質阻害剤)、TOR-阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス、およびラパミン(rapamcyin))、ならびに「リンパ球ホーミング」機構の阻害剤(例えば、FTY720)、ならびに細胞シグナル伝達に作用する薬剤、例えば、接着分子阻害剤(例えば、抗LFAなど)である。
【0292】
1つの態様において、本発明の抗TF抗体は、1種類または複数の種類の他の治療用抗体、例えば、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、ザルツムマブ、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))、パニツムマブ(Vectibix(商標))、オファツムマブ、ザノリムマブ(zanolimumab)、ダラツムマブ(daratumumab)、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、Zenapax、Simulect、Remicade、Humira、Tysabri、Xolair、ラプティバ、ニモツズマブ(nimotuzumab)、リツキシマブ、および/またはトラスツズマブ(Herceptin(登録商標))と併用されるものである。本発明の抗体と併用することができる他の治療用抗体は、WO98/40408(ネイティブなヒトTFに結合することができる抗体)、WO04/094475(ヒト組織因子に結合することができ、正常血漿対照と比較して、因子により媒介される血液凝固を阻害しない、抗体)、WO03/093422(TF単独より、TF:VIIa複合体に対して高い親和性で結合する抗体)、またはWO03/037361(アポトーシスに関連する治療のためのTFアゴニストまたはアンタゴニスト)に開示されたものである。
【0293】
別の態様では、疾患を治療するために、本明細書に記載の2種類以上の本発明の抗体が併用される。特に興味深い組み合わせには、2種類以上の非競合抗体が含まれる。従って、1つの態様において、患者は、本明細書において定義されるクロスブロック(cross-block)グループIの抗体と、本明細書において定義されるグループIIまたはIIIの抗体の組み合わせによって治療される。別の態様では、患者は、下記で本明細書において定義されるグループIIの抗体と、グループIIIの抗体の組み合わせによって治療される。このような併用療法は、細胞1個につき多数の抗体分子を結合させることができ、このために、例えば、補体媒介性溶解の活性化を介して、効力が増大し得る。
【0294】
1つの態様において、抗TF抗体は、腫瘍内部への抗TF抗体または組み合わせ組成物の接近を促進する1種類または複数の種類の薬剤の送達と共に投与することができる。このような方法は、例えば、腫瘍を弛緩することができるリラキシンの送達に関連して行うことができる(例えば、US6,719,977を参照されたい)。1つの態様において、本発明の抗TF抗体は細胞透過ペプチド(CPP)に結合されてもよい。細胞透過ペプチドおよび関連ペプチド(例えば、操作された細胞透過抗体)は、例えば、Zhao et al., J Immunol Methods.
254 (1-2), 137-45(2001)、Hong et al., Cancer Res.
60 (23), 6551-6(2000)、Lindgren et al., Biochem J.
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129 (12), 669-75(2003)、Pooga et al., FASEB J.
12 (1), 67-77(1998)、およびTseng et al., Mol Pharmacol.
62 (4), 864-72(2002)に記載されている。
【0295】
1つの態様において、本発明は、被験体において、TFを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、治療的有効量の抗TF抗体および少なくとも1種類の抗炎症剤を、障害の治療を必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0296】
1つの態様において、このような抗炎症剤は、アスピリンおよび他のサリチル酸塩、Cox-2阻害剤(例えば、ロフェコキシブおよびセレコキシブ)、NSAID(例えば、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナプロキセン、スリンダク、ジクロフェナク、ピロキシカム、ケトプロフェン、ジフルニサル、ナブメトン(nabumetone)、エトドラク、オキサプロジン、およびインドメタシン)、抗IL6R抗体、抗IL8抗体(例えば、WO2004058797に記載の抗体、例えば、10F8)、抗IL15抗体(例えば、WO03017935およびWO2004076620に記載の抗体)、抗IL15R抗体、抗CD4抗体(例えば、ザノリムマブ)、抗CD11a抗体(例えば、エファリズマブ)、抗α-4/β-1インテグリン(VLA4)抗体(例えば、ナタリズマブ)、炎症疾患治療用のCTLA4-Ig、プレドニゾロン、プレドニゾン、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、例えば、メトトレキセート、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、ピリミジン合成阻害剤(例えば、レフルノミド)、IL-1受容体遮断薬(例えば、アナキンラ)、TNF-α遮断薬(例えば、エタネルセプト、インフリキシマブ、およびアダリムマブ)、ならびに類似の薬剤により選択されてもよい。
【0297】
1つの態様において、このような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、シクロスポリン、アザチオプリン、ミコフェノール酸、ミコフェノール酸モフェチル、コルチコステロイド、例えば、プレドニゾン、メトトレキセート、金の塩、スルファサラジン、抗マラリア剤、ブレキナル、レフルノミド、ミゾリビン、15-デオキシスペルグアリン(deoxyspergualine)、6-メルカプトプリン、シクロホスファミド、ラパマイシン、タクロリムス(FK-506)、OKT3、抗胸腺細胞グロブリン、チモペンチン、サイモシン-α、および類似の薬剤により選択されてもよい。
【0298】
1つの態様において、このような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、免疫抑制性抗体、例えば、IL-2受容体のp75に結合する抗体、CD25に対する抗体(例えば、WO2004045512に記載の抗体、例えば、AB1、AB7、AB11、およびAB12)、または、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD28、B7、CD40、CD45、IFNγ、TNF-α、IL-4、IL-5、IL-6R、IL-7、IL-8、IL-10、CD11a、もしくはCD58に結合する抗体、あるいはこれらのリガンドに結合する抗体により選択されてもよい。
【0299】
1つの態様において、このような免疫抑制剤および/または免疫調節剤は、可溶性のIL-15R、IL-10、B7分子(B7-1、B7-2、その変異体、およびその断片)、ICOS、およびOX40、負のT細胞制御因子の阻害剤(例えば、CTLA4に対する抗体)、ならびに類似の薬剤により選択されてもよい。
【0300】
1つの態様において、本発明は、被験体において、TFを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、治療的有効量の抗TF抗体および抗C3b(i)抗体を、障害の治療を必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0301】
1つの態様において、前記の障害を治療するために抗TF抗体と併用するための治療剤は、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤(例えば、フェニルブチレート(phenylbutyrate))ならびに/またはDNA修復剤(例えば、DNA修復酵素および関連組成物、例えば、ジメリシン(dimericine))により選択されてもよい。
【0302】
治療的有効量の抗TF抗体を投与する工程を含む、前記の障害を治療するための本発明の方法はまた、抗癌剤に向けられる光線力学的療法(例えば、抗癌レーザー療法-任意で、光感作薬を用いて実施されてもよい。例えば、Zhang et al., J Control Release.
93 (2), 141-50(2003)を参照されたい)、抗癌音波療法および抗癌衝撃波療法(例えば、Kambe et al., Hum Cell.
10 (1), 87-94(1997)を参照されたい)、ならびに/または抗癌栄養療法(例えば、Roudebush et al., Vet Clin North Am Small Anim Pract.
34 (1), 249-69, viii(2004)、およびRafi, Nutrition.
20 (1), 78-82(2004)を参照されたい)を含んでもよい。同様に、抗TF抗体は、抗癌剤に向けられる光線力学的療法(例えば、抗癌レーザー療法-任意で、光感作薬を用いて実施されてもよい)、抗癌音波療法および抗癌衝撃波療法、ならびに/または抗癌栄養療法と共に投与される、前記の障害を治療するための薬学的組成物を調製するために使用することができる。
【0303】
1つの態様において、本発明は、被験体において、TFを発現する細胞に関与する障害を治療するための方法であって、治療的有効量の抗TF抗体、例えば、本発明の抗TF抗体、および放射線療法を、治療を必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0304】
1つの態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法であって、治療的有効量の抗TF抗体、例えば、本発明の抗TF抗体、および放射線療法を、癌の治療または予防を必要とする被験体に投与する工程を含む方法を提供する。
【0305】
1つの態様において、本発明は、放射線療法と組み合わせて投与される、癌を治療するための薬学的組成物を調製するための抗TF抗体、例えば、本発明の抗TF抗体の使用を提供する。
【0306】
放射線療法は放射線照射を含む場合があり、または患者への放射性医薬品の関連する投与が提供される。放射線源は、治療を受けている患者の外部にあってもよく、内部にあってもよい(放射線治療は、例えば、外部ビーム放射線療法(EBRT)または近接照射療法(BT)の形をとってもよい)。このような方法の実施において使用することができる放射性元素には、例えば、ラジウム、セシウム-137、イリジウム-192、アメリシウム-241、金-198、コバルト-57、銅-67、テクネチウム-99、ヨウ素-123、ヨウ素-131、およびインジウム-111が含まれる。
【0307】
さらなる態様において、本発明は、癌を治療または予防するための方法を提供する。この方法は、治療的有効量の抗TF抗体、例えば、本発明の抗TF抗体を、外科手術と組み合わせて、癌の治療または予防を必要とする被験体に投与する工程を含む。
【0308】
前記のように、本発明の薬学的組成物は、併用療法で、すなわち、治療しようとする疾患または状態に関連する1種類または複数の種類の薬剤と組み合わせて投与されてもよく、別々の薬学的組成物として投与されてもよく、本発明の化合物を、前記の1種類または複数の種類のさらなる治療剤と同時に処方されてもよい。このような併用療法は、本発明の化合物および/または同時投与される薬剤の少ない投与量を必要とし、従って、様々な単独療法に関連する可能性のある毒性または合併症を避けることができる。
【0309】
前記に加えて、他の興味深い併用療法は、以下を含む:
●膵臓癌を治療するためには、抗TF抗体と、代謝拮抗剤、例えば、5-フルオロウラシルおよび/またはゲムシタビンとの併用、可能性があれば、90Y-hPAM4、ARC-100、ARQ-197、AZD-6244、バルドキソロン(bardoxolone)メチル、シクスツムマブ(cixutumumab)、(IMC-A12)、フォリチキソリン(folitixorin)カルシウム、GVAX、イピリムマブ、KRX-0601、メルバロン、MGCD-0103、MORAb-009、PX-12、Rh-Apo2L、TLN-4601、トラベデルセン(trabedersen)、ボロシキシマブ(volociximab)(M200)、WX-671、ペメトレキセド、ルビテカン(rubitecan)、イクサベピロン、OCX-0191Vion、216586-46-8、ラパチニブ、マツズマブ、イマチニブ、ソラフィニブ(sorafinib)、トラスツズマブ、エキサベピロン(exabepilone)、エルロチニブ、アバスチン、およびセツキシマブより選択される1種類または複数の種類の化合物との併用。
【0310】
●結腸直腸癌を治療するためには、抗TF抗体と、ゲムシタビン、ベバシズマブ、FOLFOX、FOLFIRI、XELOX、IFL、オキサリプラチン、イリノテカン、5-FU/LV、カペシタビン、UFT、EGFR標的剤、例えば、セツキシマブ、パニツムマブ、ザルツムマブ、ニモツズマブ(nimotuzumab);VEGF阻害剤、またはチロシンキナーゼ阻害剤、例えば、スニチニブより選択される1種類または複数の種類の化合物との併用。
●乳癌を治療するためには、抗TF抗体と、代謝拮抗物質、アントラサイクリン、タキサン、アルキル化剤、エポシロン、抗ホルモン(フェマーラ(femar)、タモキシフェンなど)、ErbB2(Her2/neu)阻害剤(例えば、ハーセプチンおよび類似の薬剤)、CAF/FAC(シクロホスファミド(cyclofosfamide)、ドキソルビシン(doxorubicine)、5FU)、AC(cyclo、doxo)、CMF(cyclo、メトトレキセート、5FU)、ドセタキセル+カペシタビン、GT(パクリタキセル、ゲムシタビン)、FEC(cyclo、epi、5FU)とハーセプチン(herceptine)との併用:パクリタキセル+/-カルボプラチン、ビノレルビン、ドセタキセル、CTとラパチニブとの併用;カペシタビンより選択される1種類または複数の種類の化合物との併用。
●膀胱を治療するためには、抗TF抗体と、代謝拮抗物質(ゲムシタビン、アリムタ、メトトレキセート)、白金類似体(シスプラチン、カルボプラチン)、EGFr阻害剤(例えば、セツキシマブまたはザルツムマブ)、VEGF阻害剤(例えば、Avastin)、ドキソルビシン、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ゲフィチニブ、トラスツズマブ、有糸分裂阻害剤、例えば、タキサン、例えば、パクリタキセル、およびビンカアルカロイド、例えば、ビンブラスチンより選択される1種類または複数の種類の化合物との併用。
●前立腺癌を治療するためには、抗TF抗体と、ホルモン/抗ホルモン療法;例えば、抗アンドロゲン、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト、および化学療法剤、例えば、タキサン、ミトキサントロン、エストラムスチン、5FU、ビンブラスチン、イクサベピロンより選択される1種類または複数の種類の化合物との併用。
●卵巣癌を治療するためには、抗TF抗体と、有糸分裂阻害剤、例えば、タキサンおよびビンカアルカロイド、カエリクス(caelyx)、トポテカンより選択される1種類または複数の種類の化合物との併用。
【0311】
診断用途
本発明の抗TF抗体は診断目的でも使用することができる。従って、さらなる局面において、本発明は、本明細書において定義された抗TF抗体を含む診断用組成物に関する。
【0312】
1つの態様において、本発明の抗TF抗体は、TFを発現する活性化細胞が発病において積極的な役割を果たしている疾患を診断するために、TFレベルまたは膜表面上にTFを含有する細胞レベルを検出することによって、インビボまたはインビトロで使用することができる。これは、例えば、処理しようとする試料と抗TF抗体とを、任意で対照試料と共に、抗体とTFとの複合体が形成する条件下で接触させることによって達成することができる。次いで、(例えば、ELISAを用いて)複合体形成が検出される。対照試料と試験試料を一緒に使用する場合、両試料で複合体が検出され、試料間で複合体形成に統計的に有意な差があることが、試験試料中にTFが存在することを示す。
【0313】
従って、さらなる局面において、本発明は、試料中のTF抗原またはTFを発現する細胞の存在を検出するための方法であって、以下の工程:
-試料と、本発明の抗TF抗体または本発明の二重特異性分子とを、抗体とTFとの複合体が形成する条件下で接触させる工程;および
-複合体が形成したかどうか分析する工程
を含む方法に関する。
【0314】
1つの態様において、前記方法はインビトロで行われる。
【0315】
さらに具体的には、本発明は、浸潤細胞および浸潤組織、ならびに本発明の抗TF抗体によって標的化される他の細胞を特定および診断するための方法、ならびに治療処置の進行、治療後の状況、癌が発症するリスク、癌の進行などをモニタリングための方法を提供する。
【0316】
このような診断アッセイの一例において、本発明は、組織における浸潤細胞のレベルを診断する方法であって、抗TF抗体と、潜在的なTF含有組織との免疫複合体を形成する工程、および免疫複合体の形成を検出する工程であって、免疫複合体の形成が組織における浸潤細胞の存在と相関する、工程を含む方法を提供する。接触は、標識された単離抗体および標準的な画像化法を用いてインビボで行われてもよく、組織試料上でインビトロで行われてもよい。
【0317】
抗TF抗体は、任意の適切な技法によって、任意の適切な生物学的試料中の、TFを含有するペプチドおよびペプチド断片を検出するのに使用することができる。本発明によって提供される従来のイムノアッセイの例には、抗TF抗体を用いた、ELISA、RIA、FACSアッセイ、プラズモン共鳴アッセイ、クロマトグラフィーアッセイ、組織免疫組織化学、ウエスタンブロット、および/または免疫沈降が含まれるが、それに限定されるわけではない。本発明の抗TF抗体は、ヒトに由来するTFおよびTF断片を検出するのに使用することができる。抗TF抗体および/またはこのような技法において用いられる二次抗体に適した標識には、様々な酵素、補欠分子団、蛍光材料、発光材料、および放射性材料が含まれるが、それに限定されるわけではない。適切な酵素の例には、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが含まれる。適切な補欠分子団複合体の例には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれる。適切な蛍光材料の例には、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが含まれる。発光材料の一例にはルミノールが含まれる。適切な放射性材料の例には、
125I、
131I、
35S、および
3Hが含まれる。
【0318】
抗TF抗体はまた、検出可能な物質で標識されたTFペプチド標準および標識されていない抗TF抗体を用いた競合イムノアッセイによって、生物学的試料中でアッセイすることもできる。このようなアッセイにおいて、生物学的試料、標識されたTFペプチド標準、および抗TF抗体が組み合わされ、標識されたTFペプチド標準と標識されていない抗TF抗体が結合した量が求められる。生物学的試料中のTFペプチドの量は、標識されたTFペプチド標準と抗TF抗体とが結合した量に反比例する。
【0319】
抗TF抗体は、腫瘍のインビボ画像化において特に有用である。TFに関連する腫瘍のインビボ画像化は、任意の適切な技法によって行うことができる。例えば、
99Tc標識またはγ線を放射する別の同位体による標識は、腫瘍内の抗TF抗体、または腫瘍に由来する二次標識された(例えば、FITC標識された)抗TF抗体:TF複合体を標識するために使用することができ、ガンマシンチレーションカメラ(例えば、Elscint Apex 409ECT装置)、典型的には、低エネルギー高分解能コリメーターまたは低エネルギー汎用コリメーターを用いて画像化することができる。次いで、染色された組織は、腫瘍内のTF関連ペプチドの量の指標である放射能測定について評価することができる。このような技法を用いて得られた画像は、例えば、浸潤癌細胞の存在についてのバイオマーカーとしてTFまたはTF断片を使用する状況において、患者、哺乳動物、または組織におけるTFの生体内分布を評価するために使用することができる。この技法のバリエーションには、ガンマカメラ法以上に画像化を改善する核磁気共鳴画像法(MRI)の使用が含まれ得る。類似の免疫シンチグラフィー法および原理が、例えば、Srivastava (ed.), Radiolabeled Monoclonal Antibodies For Imaging And Therapy (Plenum Press 1988), Chase, 「Medical Applications of Radioisotopes」, in Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Gennaro et al., (eds.), pp. 624-652 (Mack Publishing Co., 1990)およびBrown, 「Clinical Use of Monoclonal Antibodies」, in Biotechnology And Pharmacy 227-49、Pezzuto et al., (eds.) (Chapman & Hall 1993)に記載されている。このような画像はまた、他の抗癌剤の標的化送達に使用することもできる。他の抗癌剤の例は本明細書に記載されている(例えば、アポトーシス剤、毒素、またはCHOP化学療法組成物)。さらに、このような画像は、加えて、または代わりに、腫瘍を取り除く手術法の基礎として役立つことがある。さらに、(他のバイオマーカー、転移などの存在により)患者に腫瘍があると分かっているが、従来の分析法では腫瘍を特定できない状況では、このようなインビボ画像化法によって腫瘍を特定する、および腫瘍の場所を突き止めることができる。これらの方法の全てが本発明の特徴である。
【0320】
インビボ画像化および本発明によって提供される他の診断方法は、ヒト患者(例えば、以前に癌と診断されたことのない患者または癌から回復/軽快中の患者)における微少転移の検出において特に有用である。全ての癌細胞の90%を占め得る癌腫細胞は、例えば、抗TF抗体結合体組成物によって非常によく染色されることが証明されている。本明細書に記載のモノクローナル抗TF抗体による検出は高悪性度/浸潤性の癌腫の存在を示している可能性があり、加えて、または代わりに、このような微少転移に対して、関連するモノクローナル抗TF抗体が使用可能なことを示している可能性がある。
【0321】
1つの態様において、本発明はインビボ画像化方法を提供する。この方法では、本発明の抗TF抗体は、検出を促す放射線不透剤と結合体化され、結合体化された抗体は、例えば、血流への注射によって宿主に投与され、宿主における標識抗体の存在および位置がアッセイされる。この技法および本明細書において提供される他の任意の診断方法を介して、本発明は、ヒト患者またはヒト患者から採取された生物学的試料における疾患関連細胞の存在をスクリーニングするための方法を提供する。
【0322】
画像診断の場合、中間官能基を用いて、放射性同位体を抗TF抗体に直接または間接的に結合することができる。有用な中間官能基には、キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびジエチレントリアミンペンタ酢酸が含まれる(例えば、US5,057,313を参照されたい)。
【0323】
放射性同位体および放射線不透剤に加えて、診断方法は、色素(例えば、ビオチン-ストレプトアビジン複合体を用いる)、造影剤、蛍光化合物または蛍光分子、および核磁気共鳴画像法(MRI)用の造影剤(例えば、常磁性イオン)(例えば、MRI法およびMRI造影剤と結合体化した抗体の調製について説明している米国特許第6,331,175号を参照されたい)と結合体化した抗TF抗体を用いて行うことができる。このような診断剤/検出剤は、核磁気共鳴画像法において使用するための薬剤および蛍光化合物により選択されてもよい。抗TF抗体に放射性金属または常磁性イオンを付けるために、イオンを結合するための多数のキレート基が取り付けられた長い尾(tail)を有する試薬と、抗TF抗体を反応させることが必要な場合がある。このような尾は、キレート基が結合し得るペンダント基、例えば、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビスチオセミカルバゾン、ポリオキシム、およびこの目的に有用であることが知られている公知の同様の基を有するポリマー、例えば、ポリリジン、多糖、または他の誘導体化した鎖または誘導体化可能な鎖でもよい。キレートは、標準的な化学を用いて抗TF抗体と共役することができる。
【0324】
従って、本発明は、診断用抗TF抗体結合体を提供する。ここで、抗TF抗体は、造影剤(例えば、核磁気共鳴画像法用の造影剤、コンピュータ断層撮影法用の造影剤、もしくは超音波コントラストを強化する薬剤)、または、例えば、γ、β、α、オージェ電子、もしくは陽電子を放出する同位体であり得る放射性核種と結合体化される。
【0325】
さらなる局面において、本発明は、
-本発明の抗TF抗体または本発明の二重特異性分子;および
-キットを使用するための説明書
を含む、試料中のTF抗原またはTF発現細胞の存在を検出するためのキットに関する。
【0326】
1つの態様において、本発明は、抗TF抗体、および抗TF抗体とTFペプチドとの結合を検出するための1種類または複数の種類の試薬を含む容器を含む、癌を診断するためのキットを提供する。試薬は、例えば、蛍光タグ、酵素タグ、または他の検出可能なタグを含んでもよい。試薬はまた、二次または三次の抗体または酵素反応用試薬を含んでもよく、酵素反応によって、視覚化可能な産物が産生される。1つの態様において、本発明は、適切な容器に入っている、標識型または非標識型の1種類または複数の種類の本発明の抗TF抗体、間接アッセイのためのインキュベーション用の試薬、および標識の性質に応じた、このようなアッセイにおける検出用の基質または誘導体化剤を含む診断キットを提供する。対照試薬および使用説明書も含めることができる。
【0327】
診断キットはまた、抗TF抗体、例えば、結合体化された抗TF抗体/標識された抗TF抗体と使用するのに合わせて、細胞活性を検出するのに合わせて、または組織試料もしくは宿主におけるTFペプチドの存在を検出するのに合わせて供給することもできる。このような診断キットにおいて、ならびに本明細書の他の場所で説明される治療用キットにおいて、抗TF抗体は、典型的には、凍結乾燥した形で容器に入れた状態で、単独で、または標的細胞もしくは標的ペプチドに特異的なさらなる抗体と組み合わせて提供されてもよい。典型的には、薬学的に許容される担体(例えば、不活性希釈剤)および/またはその成分、例えば、Tris、リン酸緩衝液、または炭酸緩衝液、安定剤、防腐剤、殺生物剤、殺生物剤、不活性タンパク質、例えば、血清アルブミンなども(典型的には、混合のために別々の容器に入れた状態で)含まれ、さらなる試薬も(これも典型的には別々の容器に入れた状態で)含まれる。ある特定のキットでは、抗TF抗体と結合することができ、典型的には別々の容器に入れた状態で存在する二次抗体も含まれる。第2の抗体は、典型的には、標識と結合体化され、本発明の抗TF抗体と同様に処方される。前記の方法および本明細書の他の場所に記載の方法を用いると、抗TF抗体を用いて、癌/腫瘍細胞の一部を規定し、このような細胞および関連する組織/増殖を特徴付けることができる。
【0328】
インサイチュー検出は、患者から組織学的標本を取り出し、標識された本発明の抗TF抗体とこのような標本との組み合わせを準備することによって達成することができる。本発明の抗TF抗体は、標識された本発明の抗TF抗体を生物学的試料に適用することによって、または生物学的試料に標識された本発明の抗TF抗体を覆うことによって準備することができる。このような手順を使用することによって、TFまたはTF断片の存在だけでなく、(例えば、癌細胞の広がりを評価する状況において)調べられた組織におけるこのようなペプチドの分布も確かめることができる。本発明を用いると、当業者であれば、このようなインサイチュー検出を実現するために、多種多様な組織学的方法(例えば、染色手順)を改良できることを容易に理解するだろう。
【0329】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記載の本発明の抗TF抗体に結合する抗イディオタイプ抗体に関する。
【0330】
抗イディオタイプ(Id)抗体は、概して、抗体の抗原結合部位に関連する独特の決定基を認識する抗体である。Id抗体は、抗TF mAbの供給源と同じ種および遺伝子型の動物を、抗Idの抗原となるmAbで免疫することによって調製することができる。免疫された動物は、典型的には、免疫用抗体のイディオタイプ決定基に対する抗体(抗Id抗体)を産生することによって、これらのイディオタイプ決定基を認識し、イディオタイプ決定基に応答することができる。このような抗体は、例えば、US4,699,880に記載されている。このような抗体は本発明のさらなる特徴である。
【0331】
抗Id抗体はまた、さらに別の動物において免疫応答を誘導するための「免疫原」として使用して、いわゆる抗抗Id抗体を産生することもできる。抗抗Idは、抗Idを誘導した最初のmAbとエピトープが同一である可能性がある。従って、mAbのイディオタイプ決定基に対する抗体を用いることによって、特異性が同一の抗体を発現する他のクローンを特定することができる。抗Id抗体は、任意の適切な技法、例えば、本願発明の抗TF抗体に関し本明細書の他の場所で説明される技法によって変更することができる(それにより、抗Id抗体変異体が作製される)、および/または誘導体化することができる。例えば、抗Id mAbは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などの担体と共役し、BALB/cマウスを免疫するのに使用することができる。これらのマウスに由来する血清は、典型的には、最初の/親TF抗体と同一ではないとしても類似の結合特性を有する抗抗Id抗体を含む。
【0332】
本発明は、以下の実施例によってさらに例示され、以下の実施例は、さらに限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0333】
実施例1
組織因子(TF)の発現構築物
HEK細胞、NS0細胞、またはCHO細胞においてTFまたはその細胞外ドメインを発現させるために、完全にコドン最適化された構築物を作製した。これらの構築物によってコードされるタンパク質は、TFについてのGenBankアクセッションNP_001984と同一である。この構築物は、クローニングに適した制限部位および最適Kozak配列(Kozak, 1987)を含んだ。この構築物を、哺乳動物発現ベクターpEE13.4(Lonza Biologies)(Bebbington, Renner et al. 1992)にクローニングして、pEE13.4TFを得た。PCRを用いて、6個のHis残基を含むC末端Hisタグを付加して、合成構築物からTF細胞外ドメイン(ECD)(アミノ酸1-251)をコードする部分(TFECDHis)を増幅した。この構築物をpEE13.4にクローニングし、構築物が正しいことを確認するために全配列決定した。
【0334】
実施例2
HEK-293F細胞における一過的発現
Freestyle(商標)293-F(懸濁増殖およびFreestyle合成培地に順応させたHEK-293サブクローン)細胞(HEK-293F)をInvitrogenから入手し、293fectin(Invitrogen)を使用し、製造業者の説明書に従って、適切なプラスミドDNAでトランスフェクトした。抗体発現の場合には、実施例10に記載されているように、適切な重鎖ベクターおよび軽鎖ベクターを同時発現させた。
【0335】
実施例3
NS0細胞における準安定発現
pEE13.4TFをNS0細胞において安定にトランスフェクトし、グルタミンの非存在下および7.5μMのメチルスルホキシミン(methylsulphoximine)(MSX)の存在下での増殖に関して、安定クローンを選択した。選択圧を維持しながら、1プールのクローンを懸濁培養で増殖させた。FACS分析によって、複数のプールをTF発現について試験し、さらなる使用のために確保した。
【0336】
実施例4
CHO細胞における安定発現
pEE13.4TFをCHO-K1SV(Lonza Biologics)細胞において安定にトランスフェクトし、グルタミンの非存在下でおよび50μM MSXの存在下での増殖に関して、安定クローンを選択した。シングルクローンをつつき、増殖させ、下記のようにFACS分析によってTF発現について試験した。高発現クローンを選択し、さらなる使用のために確保した。
【0337】
実施例5
Hisタグ化TFの精製
HEK-293F細胞においてTFECDhisを発現させた。TFECDHisの中のhisタグを用いると、固定化金属アフィニティクロマトグラフィーにより精製を行うことができる。このプロセスでは、クロマトグラフィー樹脂上に固定されたキレート剤にCo
2+カチオンが充填されている。TFECDHisを含有する上清を、バッチ形式(すなわち、溶液中)で樹脂とインキュベートする。Hisタグ化タンパク質は樹脂ビーズに強く結合するのに対して、培養上清中に存在する他のタンパク質は強く結合しない。インキュベーション後に、ビーズを上清から回収し、カラムに詰める。弱く結合しているタンパク質を除去するために、カラムを洗浄する。次いで、HisとCo2+の結合と競合するイミダゾールを含有する緩衝液を用いて、強く結合しているTFECDHisタンパク質を溶出する。脱塩カラムでの緩衝液交換によって、タンパク質から溶出剤を除去する。
【0338】
実施例6
トランスジェニックマウスの免疫手順
HuMabマウスを、2週間毎に、5x10
6個の準安定トランスフェクトNS0-TF細胞または20μgのTFECDHisタンパク質を交互に用いて免疫した。全部で8回の免疫、4回は腹腔内(IP)免疫、4回は尾のつけ根での皮下(SC)免疫を行った。細胞による1回目の免疫は、完全フロイントアジュバント(CFA; Difco Laboratories, Detroit, MI, USA)に溶解して行った。他の全ての免疫については、細胞をPBSに溶解してIP注射し、TFECDHisを、不完全フロイントアジュバント(IFA; Difco Laboratories, Detroit, MI, USA)を用いてSC注射した。血清力価が十分であると分かった時に(実施例7に記載されているように、少なくとも2回の連続した隔週スクリーニング事象での抗原特異的スクリーニングアッセイにおいて、1/50以下の血清希釈が陽性であると分かった時に)、融合の4日前および3日前に、10μgのTFECDHisタンパク質を溶解したPBS 100μlを用いて、静脈内(IV)に2回、マウスをさらに追加免疫した。細胞による1回目の免疫はCFAに溶解して行い、他の全ての(7回の)免疫については、細胞をPBSに溶解してIP注射した。血清力価が十分であると分かった時に、融合の4日前および3日前に、1x10
6個の一過的準安定トランスフェクトNS0-TF細胞を溶解したPBS 100μlを用いて、IVに2回、マウスをさらに追加免疫した。
【0339】
(前記で規定したように)血清力価が十分であると分かった時に、融合の4日前および3日前に、10μgのTFECDHisタンパク質を溶解したPBS 100μlを用いて、静脈内(IV)に2回、マウスをさらに追加免疫した。
【0340】
実施例7
均一抗原特異的スクリーニングアッセイ
抗TF抗体が免疫マウスの血清中またはHuMab(ヒトモノクローナル抗体)ハイブリドーマもしくはトランスフェクトーマの培養上清中に存在するかどうかを、蛍光微量アッセイ技術(FMAT; Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いた、均一抗原特異的スクリーニングアッセイ(4クワドラント(four quadrant))によって確かめた。
【0341】
このために、3種類の細胞ベースアッセイおよび1種類のビーズベースアッセイの組み合わせを使用した。細胞ベースアッセイでは、TH1015-TF(TFを一過的に発現するHEK-293F細胞;前記のように作製した)およびA431(細胞表面でTFを発現する)ならびにHEK293野生型細胞(TFを発現しない、負の対照)との結合を確かめた。ビーズベースアッセイでは、ストレプトアビジンビーズ上で共役したビオチン化TF(SB1015-TF)との結合を確かめた。
【0342】
TFに結合させるために、試料を細胞/ビーズに添加した。その後に、蛍光結合体(ヤギ抗ヒトIgG-Cy5; Jackson ImmunoResearch)を用いて、HuMabの結合を検出した。マウス抗ヒトTF抗体(ERL; GenmabでAlexa-647と共役した)を正の対照として使用し、HuMAbマウスプール血清およびマウス-クロムピュア(chrompure)-Alexa647抗体を負の対照として使用した。Applied Biosystems 8200 Cellular Detection System (8200 CDS)を用いて試料をスキャンし、「カウントx蛍光」を測定値として使用した。
【0343】
実施例8
HuMabハイブリドーマの作製
(前記のように規定した)十分な抗原特異的力価が生じたHuMabマウスを安楽死させ、脾臓、ならびに腹大動脈および大静脈に隣接するリンパ節を集めた。脾細胞およびリンパ節細胞とマウス骨髄腫細胞株との融合は、CEEF 50 Electrofusion System(Cyto Pulse Sciences, Glen Burnie, MD, USA)を使用し、本質的に製造業者の説明書に従って電気融合によって行った。得られたHuMabハイブリドーマの選択および培養は、標準的なプロトコール(例えば、Coligan J. E., Bierer, B. E., Margulies, D. H., Shevach, E. M. and Strober, W., eds. Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons, Inc., 2006に記載)に基づいて行った。
【0344】
実施例9
精製された抗体の質量分析
6ウェルまたはHyperflaskステージからの抗体含有上清0.8mlの少量のアリコートを、Sciclone ALH 3000ワークステーション(Caliper Lifesciences, Hopkinton, USA)に搭載されているプロテインG樹脂(PhyNexus Inc., San Jose, USA)を含むPhyTipカラムを用いて精製した。PhyTtipカラムは製造業者の説明書に従って使用したが、緩衝液は、結合用緩衝液PBS(B.Braun, Medical B. V., Oss, Netherlands)および溶出用緩衝液0.1Mグリシン-HCl pH2.7(Fluka Riedel-de Haen, Buchs, Germany)と交換した。精製後に、試料を2M Tris-HCl pH9.0(Sigma-Aldrich, Zwijndrecht, Netherlands)で中和した。または、場合によっては、プロテインAアフィニティカラムクロマトグラフィーを用いて、さらに大量の培養上清を精製した。
【0345】
精製後、試料を384ウェルプレート(Waters, 100ul角型ウェルプレート,部品番号186002631)に入れた。N-グリコシダーゼF(Rocheカタログ番号11365177001)を用いて、試料を37℃で一晩、脱グリコシルした。DTT(15mg/ml)を添加し(1μl/ウェル)、37℃で1時間インキュベートした。試料(5 ulまたは6ul)を、BEH300 C18、1.7μm、2.1x50mmカラムを備えたAcquity UPLC(商標)(Waters, Milford, USA)によって60℃で脱塩した。0.1%ギ酸(Fluka, カタログ番号56302, Buchs, Germany)を含むMQ水を溶出剤(Eluens)Aとして使用し、0.1%ギ酸(Fluka, カタログ番号56302, Buchs, Germany)を含むLC-MSグレードのアセトニトリル(Biosolve, カタログ番号01204101,Valkenswaard, The Netherlands)を溶出剤Bとして使用した。陽イオンモードで動作しているmicrOTOF(商標)質量分析計(Bruker, Bremen, Germany)によって、飛行時間型エレクトロスプレーイオン化質量スペクトルをオンラインで記録した。分析前に、900〜3000m/zスケールを、ESチューニングミックス(Agilent Technologies, Santa Clara, USA)で較正した。DataAnalysis(商標)ソフトウェアv.3.4(Bruker)と、5〜80kDaの分子量を探索するMaximal Entropyアルゴリズムを用いて、質量スペクトルのデコンボリューションを行った。
【0346】
デコンボリューション後、重複する抗体を見つけるために、全ての試料について、得られた重鎖および軽鎖の質量を比較した。重鎖の比較では、C末端リジン変異体が存在する可能性があることを考慮に入れた。これにより、重複しない抗体のリストが得られた。ここで、重複しないとは、重鎖および軽鎖の重複しない組み合わせと定義される。重複する抗体が見つかった場合には、他の試験からの結果を用いて、実験を続けるためにどれが最良の材料であるかを決定した。
【0347】
118個のTF特異的ハイブリドーマの重鎖および軽鎖の分子量のMS分析によって、70個の重複しない抗体(重複しない重鎖/軽鎖の組み合わせ)が得られた。これらを多くの機能アッセイにおいて特徴付けて、14個のリード候補、TF特異的抗体が特定された。
【0348】
実施例10
抗TF HuMab可変ドメインの配列分析および発現ベクターへのクローニング
5x10
6個のハイブリドーマ細胞から抗TF HuMabの総RNAを調製し、SMART RACE cDNA Amplificationキット(Clontech)を使用し、製造業者の説明書に従って、100ngの総RNAから、5'-RACE-Complementary DNA(cDNA)を調製した。VH(重鎖可変領域)コード領域およびVL(軽鎖可変領域)コード領域をPCR増幅し、Zero Blunt PCRクローニングキット(Invitrogen)を用いて、pCR-BluntII-TOPOベクター(Invitrogen)にクローニングした。それぞれのHuMabについて、16個のVLクローンおよび8個のVHクローンを配列決定した。
【0349】
配列は、本明細書の配列表および
図1に示した。
【0350】
表1Aおよび表1B(以下)は、抗体配列情報および最も相同性のある生殖系列配列の概要を示す。
【0351】
(表1A)重鎖相同性
【0352】
(表1B)軽鎖相同性
【0353】
配列表への参照:
【0354】
実施例11
抗体の精製
培養上清を0.2μmデッドエンドフィルターで濾過し、5mlプロテインAカラム(rProtein A FF, Amersham Bioscience)にロードし、0.1Mクエン酸-NaOH、pH3を用いて溶出した。すぐに、溶出液を2M Tris-HCl、pH9で中和し、12.6mM NaH2PO4、140mM NaCl、pH7.4(B.Braun)に対して一晩、透析した。透析後、試料を0.2μmデッドエンドフィルターで濾過滅菌した。SDS-PAGEによって純度を求め、比濁分析および280nmでの吸光度によって、濃度を測定した。精製された抗体を分注し、-80℃で保管した。精製された抗体アリコートを解凍したら、4℃に保った。実施例9に記載されているようにハイブリドーマによって発現された抗体重鎖および軽鎖の分子量を特定するために、質量分析を行った。
【0355】
実施例12
サンドイッチ-ELISAを用いた抗体交差競合研究
ELISAプレートウェルを、PBSで希釈した抗TF HuMab(0.5μg/mlまたは2μg/ml、100μL/ウェル)でそれぞれ、+4℃で一晩コーティングした。ELISAウェルをPBSで洗浄し、2%(v/v)ニワトリ血清(Gibco, Paisley, Scotland)を溶解したPBSを用いて室温で1時間ブロックし、PBSで再洗浄した。その後に、50μLの抗TF HuMab(10μg/mL)を添加した後に、50μLのTFECDHis(0.5μg/mlまたは1μg/ml)(Genmabで作製;実施例5)を添加し、(振盪しながら)RTで1時間インキュベートした。プレートをPBST(PBS+0.05%tween)で3回洗浄し、1:2000で希釈した抗hisビオチンBAM050とRTで1時間(振盪しながら)インキュベートした。プレートを洗浄し、ストレプトアビジン-ポリ-HRP(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)とRTで20分間インキュベートし、再洗浄した。さらに、反応物を、ABTS(Roche Diagnostics)を用いて、RT、暗所で発色させ、15分後に2%(w/v)シュウ酸を添加して止め、405nmでの吸光度を測定した。
【0356】
表2は、3つのクロスブロックグループ(TFECDHis結合において互いに競合する抗体のグループ)を特定できたことを示す。抗体013、044、および087-Lg6は、1つのクロスブロックグループ(グループI)に属し、抗体011、017-D12、42、092-A09、および101は別のクロスブロックグループ(グループII)に属し、抗体003、025、109、および111は第3のクロスブロックグループ(グループIII)に属する。抗体114は、クロスブロックグループIIおよびIIIの両方の抗体と、TFECDHis結合において競合することが見出された。TFECDHisに結合する抗体098は、クロスブロックグループIIおよびIIIの両方の抗体と競合することができた。
【0357】
(表2)TFECDHisとの結合における抗TF抗体の競合
白色の囲みは結合において競合が無いことを示し、薄灰色の囲みは結合において部分的な競合があることを示し、濃灰色の囲みはTFECDHisとの結合において競合があることを示す。
【0358】
実施例13
ELISAにおける抗TF HuMabとTF細胞外ドメインとの結合
得られた抗TF HuMabの特異性をELISAによって評価した。ELISAプレート(Microlon; Greiner Bio-One)を+4℃で一晩、0.5μg/mLのTFECDHisを含むPBS、pH7.4でコーティングした。コーティングされたELISAプレートを空にし、2%(v/v)ニワトリ血清(Gibco, Paisley, Scotland)を含むPBSを用いて室温で1時間ブロックし、0.05%Tween 20(PBST)を含有するPBSで洗浄した。その後に、HuMabをPBSTC(2%(v/v)ニワトリ血清および0.05%(v/v)Tween-20を添加したPBS)で連続希釈し、振盪条件(300rpm)下で、RTで1時間インキュベートした。結合したHuMabは、PBSTCで1:5,000に希釈したHRP結合体化ヤギ抗ヒトIgG抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて検出した。これらは、RTで1時間、振盪条件下(300rpm)インキュベートした。さらに、反応物を、ABTS(Roche Diagnostics)を用いて、RT、暗所で発色させ、15〜30分後に2%(w/v)シュウ酸を添加して止め、405nmでの吸光度を測定した。HuMab-KLH (KLH(キーホールリンペットヘモシアニン)に対するヒトモノクローナル抗体)を負の対照として使用した。マウス抗ヒトTF(ERL)を正の対照として使用した(結合体としてのHRP標識抗マウスIgG)。非線形回帰(可変傾き(variable slope)を伴うシグモイド型用量反応)を使用し、GraphPad Prism V4.03ソフトウェアを用いて、結合曲線を分析した。
【0359】
図3から分かるように、全ての抗TF抗体がTFECDHisに結合した。HuMabのEC50値は3回の実験の平均であり、0.09〜0.46nMの間で変動した(以下の表3)。
【0360】
(表3)
【0361】
実施例14
抗TF HuMabと膜結合型TFとの結合
抗TF HuMabと膜結合型TFとの結合を、TFでトランスフェクトされたCHO細胞またはTF発現腫瘍細胞株MDA-MB-231、(ルシフェラーゼでトランスフェクトされた)A431、およびBx-PC3を用いたFACS分析によって確かめた。細胞をPBS(2x10
6細胞/ml)に再懸濁し、96ウェルV底プレート(50μl/ウェル)に入れた。FACS緩衝液(0.1%BSAおよび0.02%アジ化ナトリウムを添加したPBS)で連続希釈したHuMab 50μlを細胞に添加し、氷上で30分間インキュベートした。FACS緩衝液で3回洗浄した後に、FACS緩衝液で1:100に希釈したフィコエリトリン(PE)結合体化ヤギ抗ヒトIgGFc(Jackson ImmunoResearch)50μlを添加した。氷上で30分間(暗所)の後に、細胞を3回洗浄し、HuMabとの特異的結合を、FACSCalibur(BD Biosciences)によってフローサイトメトリーで検出した。HuMab-KLHは負の対照として使用した。マウス抗TFに続くPE結合体化抗マウスIgGFcを正の対照として使用した。非線形回帰(可変傾きを伴うシグモイド型用量反応)を使用し、GraphPad Prism V4.03ソフトウェア(GraphPad Software, San Diego, CA, USA)を用いて、結合曲線を分析した。
【0362】
図4は、TF特異的HuMabとMDA-MB-231細胞との結合曲線の一例を示す。
【0363】
表4は、TF特異的HuMabと、TFトランスフェクトCHO細胞(S1015-TF)、MDA-MB-231、A431、およびBx-PC3細胞の結合のEC50値の概要を示す。
【0364】
(表4)TF特異的HuMabと様々な細胞タイプとの結合のFACS分析によって確かめられたEC50および最大平均蛍光指数(最大MFI)値の概要
EC50値はnMで表した。MDA-MB-231、BxPC3、およびA431細胞については、30μg/mL抗体での最大MFI。S1015-TFについては、7.5μg/mL抗体での最大MFI。
【0365】
実施例15
FVIIaとTFとの結合の阻害
TF-HuMabによるFVIIaとTFECDHisとの結合の阻害をELISAによって測定した。ELISAプレートをTFECDHis(0.5μg/mL、100μL/ウェル)で一晩コーティングした。プレートを空にし、2%(v/v)ニワトリ血清を含むPBSを用いてブロックし(1時間、RT)、再度、空にした。TF-HuMabまたはHuMab-KLH(負の対照)の4倍連続希釈液をウェルに添加した後に、EC50濃度(100nM)でFVIIaを添加し、プレートを、(300rpmで振盪しながら)RTで1時間インキュベートした。プレートを洗浄し、前記のようにウサギ抗FVIIa(2.5μg/mL;Abcam)とインキュベートした。プレートを洗浄し、ブタ抗ウサギIgG-HRP抗体(1:2,500;DAKO)とインキュベートした。洗浄後、基質としてABTSを用いて、免疫複合体を視覚化した。2%v/vシュウ酸を添加して反応を止めた後に、ELISAリーダーを用いて405nmでの光学密度を測定した。GraphPad prism(非線形回帰分析)を用いて、50%阻害(IC50)を得るのに必要な抗体濃度を計算した。
【0366】
図5は、クロスブロックグループIIおよびIIIからの抗体がFVIIaとTFとの結合を効率的に阻害したのに対して、クロスブロックグループIからの抗体はFVIIa結合を阻害しなかった(またはかなり低い程度で阻害した)ことを示す。
【0367】
表5は、TF特異的HuMabによるFVIIaとTFとの結合の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)を示す。
【0368】
(表5)TF特異的HuMabによるFVIIaとTFとの結合の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)
【0369】
実施例16
FVIIa誘導性ERKリン酸化の阻害
凝固因子VIIa(FVIIa)がTFに結合すると、マイトジェン活性化キナーゼ(p42およびp44 MAPKまたはERK1およびERK2)のリン酸化が誘発される。類表皮癌細胞株A431は高レベルのTFを発現し、FVIIaによる刺激後10分以内に、最適な(3〜5倍の)ERKリン酸化(ERK-P)が誘導され、AlphaScreen Surefire ERKアッセイ(Perkin Elmer)によって測定される。
【0370】
A431細胞(30,000個細胞/ウェル)を96ウェルTCプレートに播種し、O/N(37℃、5%CO2、85%湿度)で無血清培地(20%HSAおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含むRPMI)中で培養した。次いで、培地をDMEM(添加物なし)と交換し、細胞を1.5時間インキュベートした。TF-HuMabまたはHuMab-KLHの3倍連続希釈液を添加し、細胞を0.5時間インキュベートした。次いで、細胞を、EC80濃度(50nM;10分;37℃、5%CO2、85%湿度)でFVIIaで刺激した。細胞をPBSで1回洗浄し、25μL溶解緩衝液(Perkin Elmer, Surefireキット)を用いて溶解した。溶解産物を遠心分離した(3分、330xg、RT)。4μLの上清を384ウェルProxiplates(Perkin Elmer)に移した。AlphaScreenビーズ(Perkin Elmer Surefireキット)を含む反応緩衝液/活性化緩衝液混合物7μlを添加し、プレートを暗所で、RTで2時間インキュベートした。EnVision技術からの「Surefire Plus」プロトコールを用いて、プレートを読み取った。
【0371】
図6は、AlphaScreen Surefire ERKアッセイを用いて測定され、抗体013がFVIIa誘導性ERKリン酸化を阻害せず、044および111がERKリン酸化を中程度に阻害し、他の全ての抗体がERKリン酸化を効率的にブロックすることを示す。
【0372】
表6は、AlphaScreen Surefire ERKアッセイを用いて測定された、TF特異的HuMabによるFVIIa誘導性ERKリン酸化の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)を示す。
【0373】
(表6)TF特異的HuMabによる、FVIIa誘導性ERKリン酸化の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)(AlphaScreen Surefire ERKアッセイを用いて測定した)
【0374】
AlphaScreen Surefire ERKアッセイにおいて得られた結果を、HaCaTおよびBxPC3細胞株を用いたウエスタンブロット分析によって確認した。30,000個細胞/ウェルを、最小濃度の血清を含有するDMEM(飢餓培地(starvation medium))に播種し、一晩培養した。さらに、細胞を、血清を含まないDMEM中で2時間、培養し、培養の最後の30分の間に、抗TF抗体を添加した。細胞を0nM、10nM、または50nM FVIIaで、10分間(37℃)刺激し、その後に、細胞溶解緩衝液に入れて溶解した(50μl溶解緩衝液/ウェル、振盪条件下、RT で30〜60分間の溶解)。SDS含有試料緩衝液25μlを各試料に添加した。試料をSDS-PAGEゲルにロードし、流し、ウェスタンブロッティングのための標準的な手順を用いてブロットした。ブロットを、5%の無関係なタンパク質(ELK)を含むTBST1xでRTで1時間ブロックした。ブロットを、ウサギ抗ERK-P抗体(O/N、4℃)とインキュベートした。ブロットをTBST1xで洗浄し、抗ウサギIgG HRPとインキュベートし(1時間、RT)、洗浄し、HRP基質を用いて発色させ、Optigo Ultima Imagingシステム(Isogen Life Sciences)を用いて画像化した。
【0375】
図6Aは、抗体サブパネルについてのBxPC3細胞における結果を示す。10nMのFVIIaによって誘導されるERKリン酸化は抗体013によって阻害されなかったのに対して、抗体111、044、および025によって効率的に阻害された(後者は、本明細書に記載の他の全てのTF特異的HuMabの一例である)。ERKリン酸化のさらに強力な誘導(50nM FVIIa)は抗体013、111および044によって阻害されなかったが、抗体025によって阻害された。
【0376】
実施例17
FVIIa誘導性IL-8放出の阻害
FVIIa誘導性IL-8放出をTF特異的HuMabが阻害する能力を、MDA-MB-231細胞を用いて試験した。細胞を96ウェルプレート(60,000個細胞/ウェル)に播種し、CS、ピルビン酸ナトリウム、l-グルタミン、MEM NEAA、およびペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM中で培養した(O/N、37℃、5%CO2)。組織培地を除去し、細胞を無血清高カルシウム培地(ペニシリン/ストレプトマイシンを含有するDMEM)で2回洗浄し、この培地中で、さらに105分間培養した。抗体の連続希釈液を添加し、細胞を15分間培養した。FVIIa(Novo Nordisk;最終濃度10nM)を添加し、細胞を5時間培養した。上清を除去し、遠心分離した(300xg、RT)。上清中のIL-8濃度は、IL-8 ELISAキットを使用し、製造業者のプロトコール(Sanquin)に従って測定した。
【0377】
図7は、クロスブロックグループIIIからの抗体111を除く、クロスブロックグループIIおよびIIIからの抗体が、MDA-MB-231細胞によるFVIIa誘導性IL-8放出を効率的に阻害したことを示す。クロスブロックグループIからの抗体(013、044、および87-Lg6)は全てFVIIa誘導性IL-8放出を阻害しなかった。
【0378】
表7は、TF特異的HuMabによるFVIIa誘導性IL-8放出の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)を示す。
【0379】
(表7)TF特異的HuMabによるFVIIa誘導性IL-8放出の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)
【0380】
実施例18
FXa生成の阻害
TF特異的HuMabがFXa生成を阻害する能力は、比色(colometric)FXa特異的基質を用いて、TF/FVIIa複合体によるFXからFXaへの変換を測定するアッセイにおいて試験した。TF(Innovin)を、TF特異的HuMabの連続希釈液、正の対照(マウス抗TF)、または負の対照(HuMab-KLH)(全て3mM CaCl2を含有するHepes緩衝液で希釈した)と共に平底96ウェルプレートに添加した。プレートをRTで30分間インキュベートし、FVIIa(最終濃度1nM)およびFX(ERL;最終濃度200nM)を添加した。プレートを37℃で30分間インキュベートした。各ウェルから50μlを、(余熱済み、37℃)停止緩衝液(5mM EDTAを含むHepes緩衝液)100mlを含む96ウェルプレートに移した。FXa特異的基質Chromogenix-2765(Instrumation Laboratory Company)を添加し、プレートを37℃で60分間インキュベートした。37℃でのOD405nmを測定した。
【0381】
図8は、抗体017-D12がFXa生成を強く阻害し、013が中間の阻害を証明し、他の抗体がFXa生成の弱い阻害から阻害なしを示したことを示す。
【0382】
表8は、TF特異的HuMabによるFXa生成の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)を示す。
【0383】
(表8)TF特異的HuMabによるFXa生成の阻害のIC50値および最大阻害値(パーセント)
【0384】
実施例19
血液凝固の阻害
TF-HuMabによる血液凝固の阻害は、TFにより誘導される凝固時間を求めるアッセイにおいて測定した。17μlの100mM CaCl2 (最終濃度17mM)、10μlの1:100インノビン(innovin)(最終濃度1:1000)、23μlの1xHEPES緩衝液、および50μlの連続希釈抗体の混合物を96ウェルプレートに入れて調製した。50μlのプールしたヒト血漿をImmulon2Bプレート(Thermo Electron)のウェルに添加した。50μlの調製済み抗体混合物をImmulon 2Bプレートに添加し、405nmでの凝固発生を、キネティックプレートリーダーを用いて、25分間、15秒毎に測定した。時間内の光学密度の増加をプロットし、凝固時間(t1/2)を計算した。凝固時間を抗体濃度に対してプロットした。これから、非線形回帰分析によって、GraphPad Prismを用いて、抗体により誘導される凝固阻害のIC50を計算した。
【0385】
図9は、抗体044、087、および111が、TFにより誘導される血液凝固を阻害しなかったのに対して、他の全ての抗体が阻害したことを示す。
【0386】
表9は、TF特異的HuMabによる血液凝固の阻害のIC50値を示す。
【0387】
(表9)TF特異的HuMabによる血液凝固の阻害のIC50値
【0388】
実施例20
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害
標的細胞の調製:
TF発現標的細胞(5x10
6個のBx-PC3細胞、MDA-MB-231細胞、またはA431細胞)を収集し、洗浄し(PBS、1500rpm、5分で2回)、Cosmic Calf Serum、ピルビン酸ナトリウム、L-グルタミン、MEM NEAA、およびペニシリン/ストレプトマイシンを添加したRPMI1640培地1mlに入れて集め、これに、100μCi
51Cr(クロム-51; Amersham Biosciences Europe GmbH, Roosendaal, The Netherlands)を添加した。混合物を振盪水浴中で37℃で1時間インキュベートした。細胞を洗浄した後に(PBS、1500rpm、5分で2回)、培地に再懸濁した。生細胞をトリパンブルー排除によって計数した。生細胞の濃度を1x10
5細胞/mlにした。
【0389】
エフェクター細胞の調製:
末梢血単核球(PBMC)を、新鮮バフィーコート(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands)から、標準的なFicoll密度遠心分離を使用し、製造業者の説明書(リンパ球分離培地; Lonza, Verviers, France)に従って単離した。細胞を培地に再懸濁した後、細胞をトリパンブルー排除によって計数し、細胞の濃度を1x10
7細胞/mlにした。
【0390】
ADCCの準備:
50μlの
51Cr標識標的細胞をマイクロタイターウェルに移し、50μlの連続希釈抗体を添加し、培地で希釈した。細胞をインキュベートし(RT、15分)、50μlのエフェクター細胞を添加して、100:1のエフェクター:標的比にした。最大溶解レベルを求めるために、エフェクター細胞の代わりに、100μlの5%Triton-X100を添加した。自発性溶解レベルを求めるために、100μlの培地を添加した。抗体非依存性溶解レベルを求めるために、50μlのエフェクター細胞および50μlの培地を添加した。その後に、細胞をO/N、37℃、5%CO2でインキュベートした。細胞をスピンダウンした後に(1200rpm、3分)、75μlの上清をミクロンチューブに移した。放出された
51Crをガンマカウンターで計数し、抗体を介した溶解のパーセントを、以下の通りに計算した。
((cpm試料-cpm抗体非依存性溶解)/(cpm最大溶解-cpm自発性溶解))x100%
式中、cpmはカウント毎分である。
【0391】
図10は、効率(EC50)は異なるが、試験した全てのTF-HuMabがADCCによってBx-PC3細胞溶解を誘導したことを示す。
【0392】
表10は、TF特異的HuMabによる様々な細胞株のADCCのEC50値(nM)を示す。
【0393】
(表10)TF特異的HuMabによる様々な細胞株のADCCのEC50値(nM)
【0394】
実施例21
補体沈着
TF-HuMabとインキュベートされた標的細胞への補体断片C3cおよびC4cの沈着をFACS分析によって測定した。TF発現標的細胞(Bx-PC3またはMDA-MB-231細胞)を、96ウェル丸底プレート(1x10e5細胞/ウェル)に入れて、1%BSAを含有するRPMI中でプレートした。抗体(30μg/mL)を添加し、細胞をRTで15分間インキュベートした。25μlのプールしたヒト血清を補体源として添加し、熱失活ヒト血清を用いて自発性補体結合を求めた。細胞を37℃で45分間インキュベートした。細胞を1回洗浄し、FACS緩衝液に溶解した抗ヒトC3c FITCまたは抗ヒトC4c FITC(DAKO)とインキュベートし、氷上で30分間インキュベートした。試料を、FACS Cantoを用いて分析した。
【0395】
図11は、クロスブロックグループIからの抗体は、BxPC3細胞上でもMDA-MB-231細胞上でもC3c沈着もC4c沈着も誘導しなかったことを示す。クロスブロックグループIIからの試験した全ての抗体はC3c沈着およびC4c沈着を誘導し、抗体003を除くクロスブロックグループIIIからの抗体も同様であった。
【0396】
実施例22:
アビディティ/親和性の研究
親和性の決定:
抗体とTFとの結合を、表面プラズモン共鳴によってBIAcore 3000(GE Healthcare)において分析した。TFECDHisを分析に使用した。製造業者により推奨される手順に従って、HuMab抗体(500共鳴単位)をCM-5センサーチップ上に固定した。簡単に述べると、EDCおよびNHSによる表面活性化後に、pHが4.0〜5.5の10mM酢酸ナトリウム中で、活性化CM-5表面上にHuMab抗体を5μl/minで注入した後に、非活性化のために1Mエタノールアミンを注入した。HBS-EP緩衝液に溶解したTFECDHisの濃度シリーズを、固定化抗体上に30μl/minの流速で180秒間、注入した。HuMab表面の再生は、10mMグリシン-HCl pH2.0または10mM酢酸ナトリウムpH3.0を注入することで行った。動力学分析は、ダブルレファレンスサブトラクション(double reference subtraction)およびモデル1:1(ラングミュア)結合分析を用いて行った。
【0397】
表11は、ほとんどのHuMabについての、nM(nM以下)範囲にある確かめられた親和性を示す。全ての抗体から、動力学パラメータを求めることができたわけではない。044はオフレート(kd)に大きなばらつきを示し、大きな残差があった。これは、曲線のフィッティングが良くなかったことを意味している。098、111、および087-Lg6のオフレートは高すぎて、Biacore 3000では測定できなかった。
【0398】
(表11)TFECDHisとの反応性についてのTF-HuMabの動力学定数-親和性測定値
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-3sec
-1
【0399】
アビディティの決定:
TF(TFECDHis)とTF特異的HuMabとの結合は本質的に前記のように確かめた。TFECDHisをCM-5センサーチップ上に固定化し(300共鳴単位)、Humab抗体の濃度シリーズを動力学分析に使用した。動力学分析は、ダブルレファレンスサブトラクションおよびモデル1:1(ラングミュア)結合分析を用いて行った。
【0400】
表12は、抗体11、98、109および111のアビディティ測定値を示す。98および111の親和性測定値は高いオフレートを示したのに対して(Biacoreによる測定限界を超えている(すなわち、>10
-3))、アビディティの決定によってナノモル範囲での相互作用が明らかになった。
【0401】
(表12)TF-HuMabとの反応性についてのTFECDHISの動力学定数-アビディティ測定値
【0402】
実施例23:
正常ヒト組織および膵臓腫瘍との結合の免疫組織化学分析
TF-HuMabと、TFを発現することが知られている様々なヒト組織(結腸、心臓、腎臓、皮膚、肺、および脳)との結合を免疫組織化学(IHC)によって確かめた。
【0403】
凍結組織上でのIHC
凍結組織切片を切断し(4〜6μmの厚さ)、アセトンで固定した。内因性組織ペルオキシダーゼ(PO)をブロックし、後で適用される抗体と内因性Fc受容体との非特異的結合を阻止するために、組織スライドを正常ヒト血清とプレインキュベートした。ヒトTFに対するマウスAb(および負の対照マウスAb)を最適希釈で組織に適用し、その後に、Powervision-PO(ヤギ抗マウス/-ウサギIgG)-POを用いて検出した。TF特異的HuMabをFab'ヤギ抗ヒトIgG(Fc)-FITCと共役させ、その後に、予め決められていた最適希釈を含む3種類の希釈で凍結組織スライドに適用した。その後に、HuMab-Fab-FITC複合体を、ウサギ抗FITCおよびPowervision-POによって検出した。PO活性は、AECを基質として用いて視覚化し、核は、ヘマトキシリンを用いて視覚化した。染色は明視野顕微鏡によって分析した。
【0404】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織上でのマウスAbによるIHC
FFPE組織生検材料を4μmで切断し、脱パラフィンし、内因性組織ペルオキシダーゼについてブロックし、抗原賦活化(pH6、クエン酸塩緩衝液)に供した。マウス-Abとのインキュベーションの前に、内因性Fc受容体との非特異的結合を阻止するために、組織スライドを正常ヒト血清中でプレインキュベートした。ヒトTFに対するマウスAb(および負の対照マウスAb)を最適希釈で組織スライドに適用し、その後に、Powervision-PO(ヤギ抗マウス/-ウサギIgG)-POを用いて検出した。PO活性は、AECを基質として用いて視覚化し、核は、ヘマトキシリンを用いて視覚化した。染色は明視野顕微鏡によって分析した。
【0405】
図12は、抗体013と腎臓糸球体との結合(陽性染色)、011と腎臓糸球体との結合(陽性染色)、114と腎臓糸球体との結合(陽性染色)、および111と腎臓糸球体との結合(中間の染色)の一例を示す。抗体098および044は糸球体に結合しなかった。
【0406】
表13は、調べた全てのヒト腎臓組織における全てのTF-HuMabの染色結果の概要を示す。
【0407】
(表13)ヒト糸球体のIHC染色
【0408】
表14は、ヒト腎臓、結腸、心臓、大脳、および皮膚、ならびにヒト膵臓腫瘍における、選択されたTF特異的HuMabの染色結果の概要を示す。
【0409】
(表14)正常ヒト組織および膵臓腫瘍のIHC染色
【0410】
TF-HuMabとヒト膵臓腫瘍との結合のIHC分析は、全てのTF-HuMabについて陽性染色を示した(
図13に例示した)。
【0411】
実施例24:
SCIDマウスの乳房脂肪パッドにおける確立したMDA-MB-231腫瘍異種移植片の治療
TF-HuMabのインビボ効力を、SCIDマウスの確立した同所MDA-MB-231異種移植片腫瘍において確かめた。2x10
6腫瘍細胞を含むPBSを、雌SCIDマウスの2番目の乳房脂肪パッドにs.c.注射した後に、腫瘍サイズが測定可能になった時から、TF-HuMabまたは対照mAb(HuMab-KLH)を用いて治療した。抗体は、21日目(260μg/マウス)、28日目(130μg/マウス)、および42日目(130μg/マウス)に注射した。腫瘍量は少なくとも2x/週で求めた。体積(mm
3)は、カリパス(PLEXX)測定値から0.52x(長さ)x(幅)
2として計算した。
【0412】
図14は、抗体114、111、013、098、011、および044が全て、確立した同所MDA-MB-231腫瘍の成長の阻害において有効であったことを示す。
【0413】
実施例25:
カニクイザルにおけるTF特異的HuMabの試験的反復投薬
TF特異的HuMabが凝固カスケードを妨害する能力、従って、曝露された動物における出血リスクを潜在的に上げる能力の評価を含む、TF特異的HuMabの毒物学的特性に関する初期情報を得るために、カニクイザルにおいて試験的反復投薬研究を行った。
【0414】
2匹の雄および2匹の雌のカニクイザル(Macaca fascicularis)、約2歳に、抗体011を静脈内注射した。
-研究の1日目:0mg/kg(ビヒクルのみ)
-8日目:1mg/kg;1mL/分
-15日目:10mg/kg;1mL/分
-22日目:100mg/kg;1mL/分
【0415】
動物を27日目まで追跡した。この時点で、剖検および臓器の組織学的評価のために動物を安楽死させた。
【0416】
この研究の主なエンドポイントは、以下であった。
-臨床観察:歯肉、眼からの出血の徴候を、毎日、確かめた。
-機能性出血時間および失血:1日目、8日目、15日目、および22日目(投薬の1時間後、24時間後、および120時間後)に、ならびに2つの試験前時点で、確かめた。
-血液/血液の痕跡/血餅:全組織のHE染色(最終的に屠殺した時に得た組織で確かめた)。
-尿、糞便、吐瀉物の中の血液:毎日/毎週、確かめた。
【0417】
抗体011を漸増して反復投薬した時の明らかな毒性は観察されなかった。動物は臨床徴候を示さず、サイトカイン放出を示さなかった。さらに、凝固系の不全または全身出血の明らかな臨床徴候はなかった。投薬の1時間後の時点で、22日目の平均出血時間は、1日目に見られたものより有意に長かった(p=0.012)。1日目と比較して、8日目、15日目、および22日目の間で、他の統計的に有意な差は無かった。さらに、主要臓器に対する明らかな毒性は無く、有害な血液学的作用は無いことが見出された。この研究からの組織の組織学的評価に関する予備的な結論は、4匹の治療された動物において、試験品目による治療に起因し得る組織学的知見は無かったことである。
【0418】
図15は、時間の関数としての各動物(複製試料)の個々のデータ点を示す。1日目、8日目、15日目、および22日目(1時間、24時間、および120時間)ならびに2つの試験前時点で、4匹の動物の出血時間を求めた。
【0419】
実施例26
SCIDマウスにおけるBxPC3腫瘍異種移植片の予防処置および治療処置
SCIDマウスにおけるBxPC3細胞異種移植片の予防処置および治療処置におけるTF-HuMabのインビボ効力を確かめた。10x10
6個のBxPC3腫瘍細胞を含むPBSを雌SCIDマウスにs.c.注射した後に、TF-HuMabまたは対照mAb(HuMab-KLH)によって治療した。予防処置には、腫瘍誘導の1時間後に、抗体(400μg/マウス)をi.p.注射した。治療処置には、腫瘍誘導後の8日目に、抗体注射(300μg/マウス)を開始し、その後に、毎週、抗体注射(150μg/マウス)を行った。腫瘍量は少なくとも2x/週で求めた。体積(mm
3)は、カリパス(PLEXX)測定値から0.52x(長さ)x(幅)
2として計算した。
【0420】
図16は、TF特異的HuMabが、BxPC3異種移植片腫瘍の予防処置ならびに治療処置が可能なことを示す。
【0421】
実施例27
抗TF HuMabの結合に重要なドメインを決定するための、マウスTFとヒトTFとの間のDNAシャフリング
抗TF HuMabとヒトTFとの結合に重要なドメインを決定するために、ヒトTFおよびマウスTFとの間でDNAシャフリングを行った。シャッフル構築物は、ヒトTFをコードするDNAから、ヒトドメインとマウスドメインを交換することによって、およびマウスTFをコードするDNAから、マウスドメインとヒトドメインを交換することによって調製した。ヒトTFの中のドメインが抗TF HuMabとの結合に重要であれば、このドメインとマウスドメインが交換されると、結合は失われる。ヒトTFおよびマウスTFはタンパク質レベルで57%相同である。
図17Aおよび17Bは、マウスTFドメインを含有するヒトTFの構築物(TFhs、TFmmドメインを含む)、およびヒトTFドメインを含むマウスTFの構築物を示す。HEK293F細胞を、構築物またはベクター(pcDNA3.3SP;モック)のみで一過的にトランスフェクトした。FACS分析は、本質的に前記のように、30μg/mLの精製された親材料を用いて行った。HuMab-KLHは対照Abとして使用した。
【0422】
図17は、1つを除く全ての抗TF HuMabがヒトTFにのみ結合し、マウスTFには結合しないことをを示す。HuMab-TF-003は、マウスTFとある程度、結合する。
【0423】
図18A〜Oは、様々な抗TF HuMabと、HEK293F細胞上で発現した構築物との結合の結果を示す。これらの結果を表15にまとめた。この表では、これらのHuMabの結合に重要なヒトTFドメインに基づいて、抗TF HuMabをグループに分けて分類した。
【0424】
(表15)
【0425】
実施例28
ELISAによって確かめた、抗TF HuMabのFab断片とTF細胞外ドメインとの結合、およびFACSによって確かめた、抗TF HuMabのFab断片とBxPC3細胞上の細胞TFとの結合
抗TF HuMabのFab断片とTFとの結合を、ELISA(コーティングされたTF細胞外ドメイン)およびFACS(BxPC3細胞上のTF)によって測定した。ELISAは本質的に前記のように行った。結合したFab断片は、HRP結合体化ロバ抗ヒトH+Lを用いて検出した。FACS分析は本質的に前記のように行った。FITC結合体化ヤギ抗ヒトIgG(H+L)(Jackson)を用いて、結合したリード候補を検出した。蛍光はFACSCantoIIによって測定した。結合曲線は、前記のように、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて分析した。
【0426】
図19は、HuMab-TF-098および-111 Fab断片とTF細胞外ドメインとの結合が-011 Fab断片と比較して弱いことを示す。これは、ELISAによって測定した。
【0427】
図20は、HuMab-TF-098および-111 Fab断片と、細胞TFとの結合が-011 Fab断片と比較して弱いことを示す。これは、BxPC3細胞上でのFACSによって測定した。
【0428】
表16は、ELISAによるTF細胞外ドメインとの結合についての、およびFACSによるBxPC3細胞上の細胞TFとの結合についてのHuMab-TF Fab断片のEC50値を示す。
【0429】
(表16)ELISAによって確かめた、HuMab-TF Fab断片とTF細胞外ドメインとの結合、およびFACSによって確かめた、HuMab-TF Fab断片とBxPC3細胞上の細胞TFとの結合についてのEC50値の概要
EC50値はμg/mLで示した。
na-検出できなかった。
【0430】
実施例 29
抗TF HuMabと、異なるレベルのTFを発現する細胞株との結合
抗TF HuMabと、異なるレベルのTFを発現する細胞株上の膜結合型TFとの結合を、FACS分析によって、本質的に前記のように確かめた。正の対照として、マウス抗TF抗体の後にPE結合体化抗マウスIgGFcを使用した。蛍光はFACSCantoIIによって測定した。結合曲線は本質的に前記のように、GraphPad Prism 5ソフトウェアを用いて分析した。細胞株上のTF分子の量は、Qifiキット(Dako, Glostrup, Denmark)によって、製造業者の説明書に従って確かめた。SW480細胞は、細胞1個あたり約20,000個のTF分子を発現し、SK-OV-3細胞は、細胞1個あたり約60,000個の分子を発現し、AsPC-1細胞は、細胞1個あたり約175,000個の分子を発現し、MDA-MB-231細胞は、細胞1個あたり約900,000個の分子を発現すると確かめられた。
【0431】
図21 HuMab-TF-98および-111は、高TF発現細胞株MDA-MD-231において、HuMab-TF-11、-13、および109と同様の結合特性を示す。細胞1個あたりのTF分子が少ない細胞株、例えば、SK-OV-3およびSW480細胞株では、HuMab-TF-98および111は他のHuMab-TF抗体と比較して異なる結合特性を示す。