(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
製造組成物を有する溶融ガラスからガラス板を製造するための調製において、少なくとも一部がジルコンから構成され且つ使用中に溶融ガラスと接触する、外面を有する成形構造物を処理するための処理方法であって、
(A)シリカを含むバッチ材料を溶融して、処理組成物を有する溶融ガラスを製造する工程と、
(B)前記処理組成物を有する前記溶融ガラスを前記成形構造物に供給温度T供給/処理において供給する工程と、
を含み、前記製造組成物が前記処理組成物よりも、前記供給温度においてジルコニア欠陥を生じる傾向があるガラス組成物である、処理方法において、
(i)T供給/処理において、前記処理組成物が反応:
ZrO2+SiO2→ZrSiO4
を促進し、
(ii)処理方法が、前記成形構造物を使用して前記製造組成物から製造されたガラス板内のジルコニア欠陥のレベルを低減することを特徴とする、処理方法。
【背景技術】
【0007】
A.フュージョン法
オーバーフロー、ダウンドロー、フュージョン法(「フュージョン・ドロー法」、「ダウンドローフュージョン法」、または、単に、「フュージョン法」としても知られる)は、薄いガラス板の大規模製造の好ましい工業技術である。フロートまたはスロット・ドロー法などの他の平板ガラス製造技術と比較して、フュージョン・ドロー法は、すぐれた平面度および表面の品質を有する薄いガラス板をもたらす。結果として、この方法は、液晶ディスプレイのための薄いガラス基材、ならびにパーソナル電子デバイスのためのカバーガラスの製造において主要な製造技術になっている。
【0008】
フュージョン・ドロー法は、ジルコンまたは別の耐火材料から製造される、「アイソパイプ」として公知の成形構造物の上に溶融ガラスを流すことを必要とする。溶融ガラスは、アイソパイプ上に両側から溢れ、アイソパイプの底部で交わって単一板を形成し、そこで最終ガラス板の内部だけがアイソパイプと直接接触している。最終ガラス板の露出面はどちらも、ドロー法を実施する間アイソパイプ材料と接触していないので、ガラスの両方の表面が、初期のままの品質を有し、後続の仕上げを必要としない。
【0009】
フュージョン・ドロー法の考察は、例えば、本願と同一の譲受人に譲渡された、Stuart M.Dockertyに対する特許文献1および特許文献2(その内容を参照によって本明細書に組み込む)に見出すことができる。フュージョン・ドロー法を使用してガラス板15を製造する例示的なガラス製造装置100の略図を
図1に示す。
【0010】
そこに示されるように、ガラス製造装置100は溶融容器110、清澄容器115、混合容器120(例えば、撹拌チャンバ120)、供給容器125(例えば、ボウル125)、フュージョン・ドロー装置(FDM)141および移動アンビル装置(TAM)150を備える。
【0011】
溶融容器110は、ガラスバッチ材料が矢印112によって示されるように導入されて溶融され、溶融ガラス126を形成する場所である。清澄容器115(例えば、清澄管115)は、溶融容器110から溶融ガラス126を受け取る高温加工領域を有し(この時点では
図1に示されない)、その中で気泡が溶融ガラス126から除去される。清澄容器115は、清澄器から撹拌チャンバへの接続管122によって混合容器120(例えば、撹拌チャンバ120)に接続され、混合容器120は、撹拌チャンバからボウルへの接続管127によって供給容器125に接続される。
【0012】
供給容器125は、溶融ガラス126を立下り管130を通って、入口132と、アイソパイプ135と、引張ロール組立体140とを備えるFDM141に供給する。図示されるように、立下り管130からの溶融ガラス126は、アイソパイプ135の側面の開口136を通って入口管132に流入し、次いでアイソパイプのトラフ137に流入する。溶融ガラスはトラフ137の上に溢れ(すなわち、それはトラフの堰から溢れる)、アイソパイプの2つの側面138aおよび138bを流れ落ちて、基礎部139として知られている場所で融合する。特に、基礎部139は、アイソパイプの2つの側面138aおよび138bが一緒になる場所であって、2枚の溢れる溶融ガラス126が接合してガラスリボン11を形成する場所であり、それは引張ロール組立体140によって下方に延伸される。
【0013】
引張ロール組立体140は、延伸されたガラスリボン11を折り目付け/分離用組立体150(例えば、移動アンビル装置またはTAM)に供給するが、それは例えば、ノージング装置と、ガラスリボンにわたって折り目をつけるための折り目付け装置(例えば、折り目付けホイール)とを備えることができる。折り目付けの後、ガラスリボン11を折り目を中心にして曲げて、リボンから単一ガラス板を分離する(
図1の折り目付け/分離用組立体150の下方の板15を参照)。
【0014】
B.イオン交換可能ガラス
イオン交換可能ガラスを使用して、イオン強化ガラス物品としても公知の化学的に強化されたガラス物品を製造する。イオン強化ガラス物品の例には、携帯電子デバイスにおいて使用される耐引掻き性フェイスプレート、例えば、Corning IncorporatedのGorilla(登録商標)銘柄ガラス板から製造されたフェイスプレートなどが含まれる。概略すると、このような物品は、イオン交換可能ガラスを所望の構成に、例えば、フェイスプレートの場合はガラス板に成形し、次に、成形されたガラスをイオン交換処理に供する、例えば、成形されたガラスが予め決められた時間にわたって高温の塩浴に浸される処理に供することによって製造される。
【0015】
イオン交換処理は、ガラスからのイオン、例えば、ナトリウムイオンがガラスから外に拡散する間、塩浴からのイオン、例えば、カリウムイオンをガラス中に拡散させる。それらの異なったイオン半径のために、ガラスと塩浴との間のこのイオン交換によって、ガラスの表面に圧縮層が形成され、それはガラスの機械的性質、例えば、その表面硬度を高める。イオン交換プロセスの効果は典型的に、2つのパラメータ、すなわち、(1)このプロセスによって製造された層(DOL)の化学深さと(2)最終的な最大表面圧縮応力(CS)とを用いて特徴づけられる。これらのパラメータの値は、光学測定を使用して決定されるのが最も便利であり、この目的のために市販の装置、例えば、Orihara Industrial Company,Ltd.によって販売されている応力測定器が利用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
上に記載したように、本開示は、溶融ガラスと全体または一部がジルコンから構成される成形構造物(例えば、アイソパイプ)との反応すなわち、溶融ガラスとジルコン含有成形構造物との反応によるガラス板内のジルコニア欠陥を低減するための方法に関する。フュージョン・ドロー法において使用されるジルコンアイソパイプと共に使用されるとき特に有益であるが、本明細書において開示される清浄化技術は一般に、ジルコン含有成形構造物を使用してこの成形構造物の使用中にジルコンが溶融ガラスと接触する任意の方法と共に使用され得る。
【0028】
溶融ガラスとジルコン含有成形構造物との間の反応は、温度の強い関数であり、したがって、「ジルコン破壊温度」(T
破壊)は、それを超えるとジルコンと溶融ガラスとの反応が、得られたジルコニア欠陥レベルが商業的に許容できないほど十分に好調になる温度として定義され得る。実施形態において、T
破壊は、フュージョン法によって製造されたガラス板の融合線にガラス1ポンドにつき0.01超のジルコニア欠陥が観察される温度として定義される。T
破壊の数値は、実験的にまたは以下に考察される式(1)を用いて得ることができる。
【0029】
ジルコン破壊温度は溶融ガラスの組成の関数である。したがって、ジルコンとの高い反応性を有するガラス組成物は、低いジルコン破壊温度を有するが、他方、より不活性なガラス組成物は高いジルコン破壊温度を有する。任意の特定のガラス組成物のジルコン破壊温度は、本明細書において「ジルコン破壊粘度」と称される、相当する粘度を有する。
【0030】
ジルコン破壊温度と相当するジルコン破壊粘度との両方が、任意の与えられたガラス組成物について実験的に測定され得る。しかしながら、処理ガラスとして使用するためにガラス組成物を選択する際、少なくとも一部はコンピュータ実装モデルに基づいてバッチ材料を選択することによってかなりのコストおよび時間の節減を達成することができる。実施形態によって、イオン交換可能ガラスについて、(上に定義された)ジルコン破壊温度を方程式:
【0032】
(式中、符号x
iはSiO
2以外の酸化物成分のモル%である)によってモデル化することができることが見出された。パラメータT
b0(切片)およびZ
iは、実験データの或る範囲、例えば、ガラス組成物の粘度がアイソパイプを使用する良好な成形のために必要とされる粘度を超える範囲にわたる測定されたジルコン破壊温度との一致を最適にするように選択されたフィッティングパラメータである(以下を参照)。測定されたデータおよびモデル予想の例を
図2に示す。
【0033】
実施形態によって、ガラス粘度(例えば、T
破壊においてのガラスの粘度)は、2010年10月1日に出願された“Methods and Apparatus for Predicting Glass Properties”と題された本願と同一の譲受人に譲渡された米国特許出願第12/896,355号明細書(その内容を本明細書にその全体において参照によって組み込む)に開示されたタイプのコンピュータ実装モデルを使用して推定/予想され得る。要約すると、その出願は、(i)ガラスまたはガラス形成液であり且つ(ii)N個の粘度に影響を与える成分を含有する材料について温度Tと粘度ηとの間の関係を決定するための方法が開示されており、それは、
(a)複数の基準材料の粘度を複数の温度において測定する工程と、
(b)プログラムされたコンピュータを使用して、
log
10η(T,x)=C
1+C
2・(f
1(x,FC1)/T)・exp([f
2(x,FC2)−1]・[f
1(x,FC1)/T−1])(2)
の式の関数を工程(a)の測定された粘度にフィッティングしてFC1およびFC2の値を決定する工程と、
を包含し、ここで、前記関数において:
(i)C
1およびC
2が定数であり、
(ii)x={x
1,x
2,...x
i...x
N}がN個の粘度に影響を与える成分の濃度であり、
(iii)FC1={FC
11,FC
12...FC
1i...FC
1N}が第1のセットの温度非依存係数であり、N個の粘度に影響を与える成分の各々について1つの係数があり、
(iv)FC2={FC
21,FC
22...FC
2i...FC
2N}が第2のセットの温度非依存係数であり、N個の粘度に影響を与える成分の各々について1つの係数があり、
ここで、工程(b)において決定されたFC1およびFC2の関数および値が、材料の粘度と温度との間の関係を構成する。粘度対温度分布を予想するためのこの方法に関するさらなる詳細を上に参照された出願に見出すことができる。もちろん、他の粘度対温度モデルを必要ならば本開示の実施において使用することができ、例えば、従来のFulcher式の方法を使用することができる。必要ならば、もちろん、特定の温度においての粘度を実験的に測定することができる。
【0034】
ジルコン破壊粘度(本明細書においてη
破壊と称される)の他に、ジルコニア欠陥を低減することと関連して考えられる必要がある別の重要な粘度は、溶融ガラスが成形構造物に供給される必要がある粘度(本明細書においてη
供給と称される)である。アイソパイプを使用するフュージョン法のための代表的な値として、η
供給は、30〜40キロポアズのオーダーである。{T
破壊、η
破壊}のペアと同様に、η
供給は、例えば、実験的にまたはコンピュータ実装モデル、例えば、上記の式(2)のモデルを使用して決定され得る相当するT
供給を有する。
【0035】
最終ガラス生成物のジルコニア欠陥のレベルを最小にするために、T
破壊はT
供給を超えるのがよく、すなわち、溶融ガラスは、ジルコンからジルコニアへの反応が有利になる温度より低い温度においてジルコン含有成形構造物に供給されるのがよい。(粘度の観点から、これは、破壊粘度が供給粘度よりも低いことがよいことを意味する。)しかしながら、最終ガラス生成物の要件に応じて、これは必ずしも可能ではなく、可能な時でも、T
破壊とT
供給との間の差は非常に小さいので、例えば、長い製造行程にわたって低レベルのジルコニア欠陥を確実にすることができない場合がある。
【0036】
本開示に従い、ジルコン含有成形構造物を状態調節する(再調節する)ように作用するガラス組成物(本明細書において「処理組成物」と称される)の使用によってこの問題に対処する。以下により詳細に考察されるように、これらの組成物は反応ZrO
2+SiO
2→ZrSiO
4を促進し、したがって高レベルのジルコニア欠陥が生じる可能性を低減する。
【0037】
処理組成物を使用する3つの場合を考えることができる。(1)成形構造物の初利用、(2)特定のガラス組成物による成形構造物の継続的な操作、および(3)第1のガラス組成物から第2のガラス組成物への
移行による成形構造物の継続的な操作。
【0038】
第1の場合において、1つまたは複数の処理ガラス組成物による成形構造物の使用前の状態調節は、所望の生成物のためにガラス組成物を導入する前に成形構造物のガラス接触表面上のジルコニアが低レベルであることを確実にする。このような使用前の状態調節は、使用される供給温度においてジルコニア欠陥を生じる傾向があるガラス組成物(以下に「ジルコニア生成組成物」と称される)については特に重要であり得る。「清浄な」出発表面を有することによって、このような組成物をこのような供給温度において使用する時に商業的に許容できない欠陥レベルが生じるまで、より長い作業が可能になる。
【0039】
第2の場合は典型的に、ジルコニア生成組成物から生成物を製造するのに関連して生じる。遅かれ早かれこのような組成物は、十分なジルコンをジルコニアに変換して、許容できないほど高レベルのジルコニア欠陥を最終生成物に生じる。このような時に、成形構造物を1つまたは複数の処理組成物を使用して再状態調節して、成形構造物を清浄化することができ、したがって、それを再び使用して所望の生成物を製造することができる。
【0040】
第3の場合は第2の場合と似ているが、1つまたは複数の処理組成物の使用後に元の生成物に戻る代わりに、新しい生成物への
移行がなされる。このような場合において、第1および第2のガラス組成物のどちらかまたは両方がジルコニア生成組成物であり得る。別の選択肢として、どちらの組成物もジルコニア生成組成物である必要がないが、
移行が行なわれるのが望ましく、またいずれにしても行なわれるので、
移行する組成物としてのそれらの適
切性のために1つまたは複数の処理組成物を使用してもよい(以下を参照)。
【0041】
第3の場合は、先進技術産業において、例えば、平板ガラス産業においてしばしば生じる可能性があることに注目すべきであり、そこでは新しい商用ガラス組成物がしばしば開発され、先行のガラス組成物と比べて最終性質に利点がもたらされる。したがって、ガラス製造装置はしばしば、1つのタイプのガラスの製造から、異なった組成の新しいガラスへと変換されなければならない。従来より、このような変更は、プロセスを停止し、溶融容器およびその他の容器を完全に抜き、その後に、新しいガラス組成物を使用してすぐにプロセスを再開することを必要とした。しかしながら、このプロセスは、時間も費用もかかる。第3の場合によって、いずれかの特定の製造ラインによって製造されるガラス生成物の組成を変更するこの必要性は
、実際、成形構造物を状態調節/再調節
し、したがって、変更された組成物から製造されたガラス板内のジルコニア欠陥のレベルを低減する
機会とな
り得る。したがって、本明細書において開示される技術の実施形態によって、ガラス板内のジルコニア欠陥のレベルを低減すると共に、このようなガラス板の継続的な工業生産の中断を最小に抑える「両者に有利な」状態を達成することができる。
【0042】
ジルコニア欠陥に関連する問題の他に、実施形態において、1つまたは複数の処理組成物は、バッチ組成物の変更および/またはガラス製造装置の作業パラメータに対応する速度関連の制限条件に対処するように選択される。関連因子は、(i)ガラス密度、(ii)バッチ成分の濃度、および(iii)供給温度の変化率である。
【0043】
密度変化の場合の問題は、プロセス全体において1つまたは複数の時点で溶融ガラスの層化が生じる可能性である。層化が生じると、ガラス製造装置の完全な停止および修理を行なわなければ除くことが難しい可能性がある。より高密度のガラス(それは系の1つまたは複数の低い場所に蓄積している)が、それの上に流れているより低密度のガラス中に浸出する時に規格外ガラスとして層化が現れる。
【0044】
バッチ成分の濃度の変化率にかかる制限は、バッチ成分を溶融するために使用される容器(溶融装置)への損傷を避けるために、ガラス板が形成されている速度に実質的に一致する速度においてバッチ材料が溶融装置に連続的に添加されるという事実に起因する。このようにして、溶融装置内の溶融ガラスの体積は実質的に一定のままである。結果として、ガラス組成物は、段階的でなく、定常的に既存の組成物から新しい組成物へと経時的に変化する。特に、新たに添加されたバッチ材料が溶融装置内の溶融ガラスと混合して溶融装置を出る溶融ガラスの含有量の増加分になる時に組成は徐々に変化する。この混合効果は、いずれかの特定のガラス溶融ラインのために組成物を変化させることができる最大速度にフロアを設定することができ、例えば、層化の問題または供給温度の問題が無い場合でも(以下を参照)、溶融装置内の混合効果があるために組成物を変化させる有限量の時間が必要とされる。
【0045】
供給温度の変化率にかかる制限は、ガラス成形プロセスの異常を避けるために供給粘度はしばしば、経時的に実質的に一定に保持される必要があるという事実に関連している。組成が変化する時に粘度を実質的に一定に保持することは典型的に、溶融ガラスが成形構造物に提供される温度の変化、すなわち、供給温度の変化を必要とする。供給温度の変化が大きくなると、一般的には、時間が長くなり、変化がより小さい場合よりもリスクが大きくなる。したがって、密度変化と同じように、処理組成物の使用に関して供給温度が変化される速度は、しばしば、処理手順から望ましくない副次的効果を生じないように制限される必要がある。
【0046】
実施形態において、(i)密度の最大許容変化率、(ii)各々の原料の濃度の最大許容変化率、および(iii)供給温度の最大許容変化率を考慮することによって処理に費やされる時間量(または、より一般的には、1つのガラス組成物から別のガラス組成物への
移行に必要とされる時間)を最小にするように選択される処理組成物が使用される。また、処理組成物の選択は、生成物ガラスおよび処理ガラスを含めて、必要とされるガラスの全組の液相線および破壊挙動を考慮する。これらの因子、ならびにフュージョン・ドロー法の変化に対する感度を考えると、実施形態において、欠陥を最小にするのと同時に最終ガラス組成物への
移行時間を最小にする
移行経路が選択される。
【0047】
実施形態において、処理組成物は、以下の基準の少なくとも1つが満たされるように設計される。
(1)各処理組成物とその後の組成物(別の処理組成物であるか生成物組成物であるかに関わらず)との間の密度の変化の大きさは0.1g/cm
3以下(例えば、0.05g/cm
3以下)である。
(2)各処理組成物とその前の組成物(別の処理組成物であるか生成物組成物であるかに関わらず)との間の密度の変化の大きさは0.1g/cm
3以下(例えば、0.05g/cm
3以下)である。
(3)各処理組成物とその後の組成物(別の処理組成物であるか生成物組成物であるかに関わらず)との間の任意のバッチ成分の濃度の最大の変化の大きさは5モルパーセント以下(例えば、3モルパーセント以下)である。
(4)各処理組成物とその前の組成物(別の処理組成物であるか生成物組成物であるかに関わらず)との間の任意のバッチ成分の濃度の最大の変化の大きさは5モルパーセント以下(例えば、3モルパーセント以下である。
(5)各処理組成物とその後の組成物(別の処理組成物であるか生成物組成物であるかに関わらず)との間のT
供給の変化の大きさは100℃以下(例えば、50℃以下)である。
(6)各処理組成物とその前の組成物(別の処理組成物であるか生成物組成物であるかに関わらず)との間のT
供給の変化の大きさは100℃以下(例えば、50℃以下)である。
【0048】
実施形態において、前述の基準の2つ以上が満たされる。実施形態において、前述の基準の全てが満たされる。
【0049】
実施形態において、1つまたは複数の処理ガラスの適切な溶融挙動、ならびに出発ガラス、1つまたは複数の処理ガラス、および最終ガラスの間のガラスの連続性を確実にすることが望ましい。すなわち、これらのガラスの全てが望ましくは、十分に低い溶融温度、例えば、1750℃以下、または1700℃以下の溶融温度(200ポアズ温度)を有する。同様に、ガラスは望ましくは、例えば、フュージョン法によって加工するための十分に高い液相線粘度、例えば、100キロポアズ以上、または300キロポアズ以上、または500キロポアズ以上の液相線粘度を有する。
【0050】
実施形態において、処理方法(または、より一般的には、任意のガラス
移行)に関連したコストを低減するために、1つまたは複数の処理ガラス(
移行ガラス)のうちの1つ、いくつか、または全てに商品性があることが望ましい。イオン交換ガラスの場合には、これは、ガラスが、イオン交換処理後に所望の層深さにおいて十分に高い圧縮応力、例えば、50マイクロメートルの層深さにおいて750MPa以上の圧縮応力を有するべきであることを意味し、ここで、圧縮応力と層深さとの両方は例えば、Orihara Industrial Company, Ltd.によって販売されているタイプの応力計を使用して光学的に定量される。したがって、この実施形態によって、イオン交換性能などの最終製品の特質に対する顧客の要求は、処理組成物(
移行組成物)を選択するために使用される設計プロセスの一部である。
【0051】
実施形態において、1つまたは複数の処理ガラス(
移行ガラス)は、処理/
移行手順の標準化を可能にするために複数対の製造ガラスに対して使用可能であるように設計される。
【0052】
図3は、複数の処理組成物(具体的には、2つの処理組成物)を使用して第1の生成物組成物と第2の生成物組成物との間の
移行の代表的な時間経過を示す略図であり、ここで、処理組成物は、成形構造物を「清浄化する」ように設計され、したがって、第2の生成物組成物から製造されたガラス板内の高レベルのジルコニア欠陥の生じる可能性を低減する。この図において、破線および実線は、それぞれ、ガラスの供給温度およびジルコン破壊温度を示す。
【0053】
曲線の左端および右端(参照番号1および4を参照)は、第1および第2の生成物組成物の、それぞれの供給温度(破線)およびジルコン破壊温度(実線)を示す。見ることができるように、各々の場合において、供給温度(破線)が破壊温度(実線)より高く、それは、両方の組成物がジルコニア欠陥を生じる傾向があることを意味する。曲線の左端(参照番号1を参照)において、
その破壊温度(実線)がその供給温度(破線)よりも高い第1の処理組成物
への移行が
為される。上に記載したように、組成物間の
移行はステップ関数ではなく、むしろ或る時間にわたって生じる。
図3において、この経時的な
移行は、破壊温度(実線)の線形増加、ならびに供給温度(破線)の線形増加によって表わされ、破壊温度線の傾きは供給温度線の傾きより大きく、その結果、成形構造物に供給されているガラス組成物が第1の処理組成物に実質的に完全に
移行する時までに(参照番号2を参照)、破壊温度(実線)は供給温度(破線)よりも高くなっている。(破壊温度および供給温度の経時的な線形変化は図解目的のためにすぎず、実際には、変化は経時的に線形である必要はなく、一般的には、線形ではないということに留意しなければならない。)
図3の参照番号2において、第1の処理組成物と第2の処理組成物との間の
移行が開始される。この図に示されるように、第2の処理組成物は、その破壊温度(実線)とその供給温度(破線)との間の差が第1の処理組成物の場合よりもいっそう大きく、その結果、第2の組成物への
移行が完了する時までに(
図3の参照番号3を参照)、これらの2つの温度間の差(すなわち、Δ
破壊−供給=T
破壊−T
供給)はかなりの差になり、それは高レベルの清浄化を達成するために望ましい。(繰り返すと、第2の処理組成物への
移行は、図解目的のためにだけ
図3において経時的に線形に進むように示されることに留意のこと。)
図3の参照番号3において、第2の生成物組成物への
移行が開始され、参照番号4において
移行が完了する。上述のように、第2の生成物組成物は、そのジルコン破壊温度(実線)より高い供給温度(破線)を有し、その結果、
移行が進むにつれて、破壊温度が低下し、供給温度が上昇し、すなわち、Δ
破壊−供給が高い正側からあるていど負側になる。繰り返すと、この
移行は、図解目的のためにだけ経時的に線形に生じるように示される。
【0054】
量的には、実施形態において、その破壊温度とその供給温度の間の正のデルタを有する、例えば、実施形態において、5℃以上、または25℃以上、または50℃以上であるΔT
破壊−供給を有する少なくとも1つ処理ガラスを使用することが望ましい。このようにして、成形構造物を「清浄化」するために必要とされる時間量を低減することができる。実施形態において、使用される処理組成物の全てが、ゼロより大きいΔT
破壊−供給を有し、例えば、実施形態において、処理組成物の全てが、5℃以上、または25℃以上、または50℃以上のΔT
破壊−供給を有する。これらのΔT
破壊−供給値は相当する粘度Δを有し、供給粘度は破壊粘度より大きい。30〜40キロポアズの範囲の供給粘度について、実施形態において成形構造物を状態調節(再調節)するために使用される1つまたは複数の処理組成物の少なくとも1つについてΔη
供給−破壊は3キロポアズ以上であるか、または5キロポアズ以上、または10キロポアズ以上、または20キロポアズ以上である。実施形態において、30〜40キロポアズの範囲の供給粘度について、1つまたは複数の処理組成物の全てについてΔη
供給−破壊が3キロポアズ以上であるか、または5キロポアズ以上、または10キロポアズ以上、または20キロポアズ以上である。
【0055】
本明細書において開示される技術の実施において様々な処理組成物を使用することができる。表1は、イオン交換可能である、生成物組成物と共に使用することができる処理組成物の成分と例示的なモル百分率の範囲とを示す。これらの処理組成物において、様々な成分は以下の目的のために役立つ可能性がある。
【0056】
シリカ、またはSiO
2は、一次ガラス形成酸化物であり、溶融ガラスのための基幹網を形成する。ジルコン破壊挙動の見地から、高純度SiO
2は、ジルコン含有成形構造物と非反応性である。確かに、ジルコンが融合線ジルコニアを生じる反応は、
ZrSiO
4→ZrO
2+SiO
2
として記述されてもよい。
【0057】
明らかにSiO
2の存在は、反応を左方向に推進するのに有利であり、すなわち、ジルコン(ZrSiO
4)の形成を促進する。しかしながら、任意の他の酸化物の存在は、ジルコン破壊性能を損ない、最終的に融合線ジルコニア(ZrO
2)欠陥の形成を促進する場合がある(以下を参照)。
【0058】
しかしながら、高純度SiO
2は、その極度に高い溶融温度のためにフュージョン・ドロー法に適合しない。高純度SiO
2または高SiO
2ガラスの粘度は溶融領域において非常に高いので、清澄気泡(fining bubbles)などの欠陥が現れる場合があり、耐火物の浸蝕および白金の劣化が非常に大きくなるので連続法を使用して長時間製造することができなくなる場合がある。さらに、シリカ濃度が増加するにつれて、連続法において望ましくない失透相であるSiO
2の結晶多形体のクリストバライトの安定性が増加するために、液相線温度が増加する場合がある。酸化ホウ素(B
2O
3)以外のあらゆる酸化物と比較して、SiO
2は密度および熱膨脹率を減少させ、B
2O
3に対してそれは耐久性を改善する。実施形態において、処理ガラスのSiO
2含有量は、68〜72モル%である。
【0059】
また、酸化アルミニウム、すなわちAl
2O
3は、ガラス形成材として役立つ。SiO
2のように、それは、ガラス溶融体におけるその四面体配位のために粘度に寄与する。SiO
2濃度およびアルカリおよび/またはアルカリ土類酸化物の濃度と注意深くバランスをとるとき、アルミナを使用して液相線温度を低下させることができ、したがって液相線粘度を高め、フュージョン・ドロー法との適合性を促すことができる。SiO
2のように、アルカリまたはアルカリ土類に対してAl
2O
3が増加すると一般に、密度の減少、熱膨脹率の減少、および耐久性の改善をもたらす。Al
2O
3は、アルカリイオンの速い拡散率のまま強い基幹網(すなわち、高い焼きなまし点)を可能にするので、イオン交換可能ガラスにおいて非常に重要な役割を果たす。したがって、Al
2O
3の存在は、高い圧縮応力を促進しながらイオン交換プロセスの速度論を速める。Al
2O
3の主な欠陥は、それがまた、ジルコンが融合線ジルコニア欠陥になる反応を促進することである。例えば、式(1)のZ
i係数を用いて、ジルコン破壊温度は、ガラスに添加されるAl
2O
3の1モル%毎にほぼ25℃低下する。改善された溶融/液相線特性の間のこのバランスのために、しかしジルコン破壊温度の低下のために、実施形態において、処理ガラスのAl
2O
3含有量は8〜9.5モル%の間である。
【0060】
酸化ホウ素、すなわちB
2O
3もまた、ガラス形成酸化物であり、粘度を低減し且つ液相線温度を低減するために使用される。一般的には、B
2O
3の1モル%の増加は、このガラス組成物および粘度の詳細に応じて、等価粘度において10〜14℃温度を低下させる。しかしながら、B
2O
3は1モル%につき液相線温度を18〜22℃低下させる可能性があり、したがって、それが粘度を減少させるよりも急速に液相線温度を低下させ、それによって液相線粘度を減少させる効果がある。処理ガラスについて、B
2O
3は、ガラス網目を軟化させるがジルコン破壊温度への影響は最小にとどまる(例えば、式(1)のZ
i係数を用いて1モル%のB
2O
3につきたった3℃の低下)という点で有用であり得る。したがって、B
2O
3は、ジルコン破壊挙動を犠牲にせずに溶融性能を改善するために有用であり得る。
【0061】
また、B
2O
3は、ガラスの密度を低下させる際に最も有効な酸化物である。タンク転移時間が初期ガラスおよび最終ガラスとの間の密度の差によって制限される場合があるので(上を参照)、密度を低下させるためのB
2O
3の使用は、特定の用途に応じて、非常に重要である場合がある。しかしながら、B
2O
3は、イオン交換性能に悪影響を与え、拡散率および圧縮応力の両方を減少させる。実施形態において、処理ガラスのB
2O
3含有量は、0〜2モル%の間である。
【0062】
また、アルカリ酸化物(Na
2OおよびK
2O)は、ガラスの溶融温度の低減および液相線温度の低減において有効である。イオン交換可能ガラスについて、小さなアルカリイオン(例えばNa
+)の存在は、溶融塩槽内に浸漬される時により大きなアルカリイオン(例えばK
+)と交換するために必要である。圧縮応力はガラスから交換されるアルカリイオンの数に比例するので、ガラス内に大きな圧縮応力を生じさせるために十分に高い濃度のNa
2Oが必要である。したがって、イオン交換可能処理ガラスが望ましいとき、Na
2Oは、ジルコン破壊温度に悪影響を有する場合でも、例えば、式(1)のZ
i係数を用いて1モル%のNa
2Oにつき約34.5℃の低下がある場合でも、組成物に含有される必要がある。また、Na
2Oは溶融挙動を改善し、転移時間を低下させる。実施形態において、処理ガラスのNa
2O含有量は13.5〜14.5モル%の間である。
【0063】
少量のK
2Oの存在は一般に、拡散率を改善する。しかしながら、K
2Oはジルコン破壊温度をかなり損なう可能性がある。例えば、式(1)のZ
i係数を用いて、ガラスに添加されるK
2Oの1モル%毎に、T
破壊のほぼ45℃の低下をもたらす。T
破壊のこの低減は、Al
2O
3、B
2O
3、Na
2O、MgO、およびCaOに伴うT
破壊の低減よりも大きい。この理由のために、処理ガラス中にK
2Oは最小限に抑えられるのがよい。実施形態において、処理ガラスのK
2O含有量は0〜0.05モル%の間である。
【0064】
Na
2Oのように、アルカリ土類酸化物は、ガラスの溶融挙動を改善するが、負にジルコン破壊温度に寄与する(例えば、MgOおよびCaOについて式(1)のZ
i係数は、それぞれ−12.6℃/モル%および−25.3℃/モル%である)。アルカリ土類酸化物がジルコン破壊性能に与える悪影響は、アルカリ酸化物の影響ほど重大ではない。イオン交換性能に対して、MgOおよびCaOの存在は、アルカリ移動度を減少させるように作用する。この効果は、CaOに対して特に著しく、したがって、実施形態において、処理ガラスのCaO含有量は0〜0.1モル%の間である。MgOは、アルカリ拡散率に与える悪影響を最小に抑えたまま、溶融挙動の改善および応力緩和の増加など、アルカリ土類酸化物のいくつかの利点を提供する。さらに、MgOは、CaOと比較してジルコン破壊温度に与える悪影響は半分にすぎない。したがって、実施形態において、処理ガラスのMgO含有量は5〜6.5モル%の間である。
【0065】
SnO
2は、フュージョン法において清澄剤としてしばしば使用されるので、表1に記載されている。SnO
2が多くなることは一般に、清澄能力の改善と同等とみなされるが、比較的高価な原料であるため、必要とされる量を超えないように添加して、気体含有物を適切に低いレベルに至らせることが望ましい。また、SnO
2は、ジルコン破壊温度に悪影響を有する。実施形態において処理ガラスの、SnO
2含有量は0〜0.3モル%の間である。あるいは、As
2O
3および/またはSb
2O
3が清澄剤として使用されてもよい。しかしながらこれらは、毒性があるという不便な点がある。
【0066】
また、表1は、ZrO
2(ジルコニア)の代表的な範囲を記載する。ジルコニアは、ガラスの溶融または清澄挙動において実際的な役割を果たさず、このような低いレベルにおいて興味深い性質を与えない。しかしながら、それはしばしば、溶融装置内で高温ガラスをジルコニア系耐火材料と接触させることによってガラス組成物に導入される。同様に、表1はまた、Fe
2O
3の代表的な範囲を記載するが、それが商用のバッチ原材料中の一般的な不純物だからである。基礎研究において、表1のレベルのZrO
2およびFe
2O
3を含有することは、商業生産条件をより厳密にシミュレートする時に有用であり得る。
【0067】
表2は、表1の範囲内の成分濃度を有する代表的な処理組成物を示す。これらの組成物を、イオン交換可能ガラスの製造においてのその使用前または1つのイオン交換可能ガラス組成物から別のイオン交換可能ガラス組成物への
移行時にジルコンアイソパイプを処理するために使用することができる。また、処理組成物を同じイオン交換可能ガラス組成物の2つの送りの間に使用して、2つの送りのうちの最初の送りの間にアイソパイプ上に蓄積した可能性があるジルコニアを除去することができる。
【0068】
成分濃度の他に、表2はまた、処理組成物の様々な測定された性質を記載する。これらの測定値を得るために使用された試料は、比較的均質なガラス組成物をもたらす温度および時間において、例えば、約1625℃の温度において約11時間にわたって白金るつぼ内で各ガラス組成物の4,000グラムのバッチを溶融することによって調製された。特に、セラミックミル内でセラミック媒体を使用して1時間にわたってバッチ材料をボールミル処理した。バッチを2つの1800cc白金るつぼに移し、1625℃の炉内に装填した。5時間後に、るつぼを炉から取り出し、ガラスを鋼バケツ内に冷たい流水と共に流し込んだ。得られたカレットを6時間にわたって、再び1625℃において1800ccの単一白金るつぼ内で再溶融した。次に、このるつぼを炉から取り出し、ガラスを冷たい鋼板上に流し込んだ。取り扱うために十分な粘性であるとき、ガラスを630℃の焼きなまし炉に移し、1時間にわたってこの温度に保持し、次いで0.5℃/分で室温に冷却した。
【0069】
表2に示されたガラス性質は、ガラス技術の従来の技術に従って、具体的には、ASTM技術に従って定量された。したがって、温度範囲0〜300℃の線熱膨脹率(CTE)はx10
-7/
oCを用いて表わされ、軟化点、焼きなまし点、および歪点は℃を用いて表わされる。これらは繊維引き伸ばし技術により定量された。グラム/cm
3を用いて密度をアルキメデス法によって測定した。℃を用いて溶融温度(ガラス溶融体が200ポアズの粘度を示す温度として定義される)は、回転円筒粘度測定法によって測定された高温粘度データに当てはめたMauro−Yue−Ellison−Gupta−Allan(MYEGA)方程式(Mauro et al.,(2009)Viscosity of glass−forming liquids.Proc Nat Acad Sci,106:19780−19784を参照)を使用して計算された。35キロポアズの粘度に相当する温度を同じ方法で測定した。℃を用いてガラスの液相線温度を勾配ボート液相線法を使用して測定した。これは、粉砕されたガラス粒子を白金ボート内に置く工程と、ボートを勾配温度の領域を有する炉内に置く工程と、72時間にわたってボートを適切な温度域内で加熱する工程と、結晶が空気と白金との境界面におよびガラスの内部に現れる最高温度を顕微鏡検査によって測定する工程とを必要とする。キロポアズ単位で液相線粘度を液相線温度およびMYEGA方程式および係数から定量した。Mpsiを用いてヤング率および剪断弾性率の値を共鳴超音波分光法技術を使用して定量した。ポアソン比の値をヤング率および剪断弾性率の測定値から計算した。ガラスの屈折率およびnm/cm/MPa単位の応力光係数(SOC)を光学測定によって定量した。℃単位のジルコン破壊温度(T
破壊)は、一定の温度勾配を有する炉内でガラスをジルコン耐火物と接触させて168時間保持することによって測定された。ジルコン破壊温度は、ジルコン/ガラス境界面においてガラスの顕微鏡検査によってジルコニア結晶が観察される最低温度であった。キロポアズ単位の相当するジルコン破壊粘度(η
破壊)をMYEGA方程式および係数を使用して定量した。
【0070】
いかなる方法においてもそれを限定することを意図せずに、本発明は、以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0071】
表3は、フュージョン法およびジルコンアイソパイプを使用して製造される時に融合線ジルコニア欠陥を受けやすい2つのイオン交換可能ガラスの主成分の代表的な組成を示す。
【0072】
第1の組成物は、許容できないレベルの融合線ジルコニア欠陥が観察されるまでフュージョン・ドロー装置上で送られる。その後、表2のガラス11の組成および性質を有する処理組成物
への移行を
為し、その後、表3の第2の組成物
への移行を
為す。表2のガラス11は、第1の組成物から第2の組成物への
移行の際に必要とされる時間を最小限に抑えると共に
移行の間にジルコニアのジルコンアイソパイプを清浄化するように設計される。ガラス11はイオン交換可能ガラスであり、したがって、イオン交換され、強化されて販売可能である。ガラス11は35キロポアズの粘度においてアイソパイプに供給され、したがって、そのΔT
破壊−供給およびΔη
供給−破壊はそれぞれ95および26である。
【0073】
第1の組成物から第2の組成物への
移行は、ガラス製造装置の運転を中断せずに、短い時間量で、すなわち、6週間未満で達成される。
移行組成物としてガラス11を使用することによって、第1の組成物の使用中に蓄積した高レベルのジルコニアをジルコンアイソパイプから取り除き、したがって、ガラス11による処理後に第2の組成物によって製造されたガラス板は、融合線ジルコニア欠陥を本質的に全く含有しない。
【0074】
前述の記載から、処理ガラス組成物(
移行ガラス組成物)を使用して、溶融ガラスとジルコン含有成形構造物、例えば、ジルコンアイソパイプとの相互作用から生じる欠陥、例えば、融合線ジルコニア欠陥を取り除くための手順が提供されたことを理解することができる。これは、処理ガラス組成物を、そのジルコン破壊温度がガラスの供給温度よりも高いように設計することによって達成される。フュージョン法のための供給温度は一般に、30〜40キロポアズの範囲の固定剪断粘度に相当するので、破壊温度のこの条件は、処理ガラスを、そのジルコン破壊粘度(すなわち、その破壊温度においての溶融ガラスの粘度)が30〜40キロポアズの供給粘度より少ないように設計することに等しい。
【0075】
高いジルコン破壊温度(すなわち、換言すれば、低いジルコン破壊粘度)を有する他に、特定の実施形態において、処理ガラス組成物は、出発ガラス組成物と最終ガラス組成物との間の
移行時間を低減するように選択される。
移行時間は、密度の変化率、供給温度の変化率、および組成の変化率によって制限される。したがって、これらの実施形態によって、処理ガラスは、これらの性質の値を念頭において、短い
移行時間を確実にするように設計される。
【0076】
本明細書において開示される技術の利点は、以下のいくつかそして好ましくは全てを包含する。
【0077】
(1)フュージョン法の場合、1つまたは複数の処理ガラスが、融合線ジルコニア欠陥などのジルコニア欠陥を成形構造物から取り除く。処理ガラスを使用しない単純な
移行と比較して、最終製造ガラスの品質が改善される。
【0078】
(2)出発ガラス組成物と最終製造ガラス組成物との間の
移行時間を低減するように1つまたは複数の処理ガラスを選択することができる。
【0079】
(3)ガラスは全体にわたり連続的に製造可能なので、1つまたは複数の処理ガラスを使用する手順は、タンク排出口を必要としない。
【0080】
(4)1つまたは複数の処理ガラスはそれら自体、販売に適した性質、例えば、イオン交換能力を有することができるため、
移行中にガラスを販売し続けることができる。
【0081】
式(1)および(2)の数学的な手続きは、様々なコンピュータ装置および様々なプログラミング言語または数学計算パッケージ、例えばMATHEMATICA(イリノイ州、シャンペーンのWolfram Research)、MATLAB(マサチューセッツ州、ナティックのMathWorks)等を使用して容易に実施可能である。また、カスタマイズソフトウェアを使用することもできる。手続きからの出力は電気的および/またはハードコピーの形態であってもよく、表形式およびグラフ形式など、様々なフォーマットで表示することができる。例えば、図面2および3に示されるタイプのグラフは、MICROSOFTのEXCELプログラムまたは同様なプログラムなどの市販のデータ表示ソフトウェアを使用して作製することができる。本明細書に記載された手続きのソフトウェアの実施形態を様々な形態、例えば、ハードドライブ、ディスケット、CD、フラッシュドライブ等で保存および/または流通させることができる。ソフトウェアは、パーソナル・コンピュータ、ワークステーション、汎用コンピュータ等の様々な計算プラットフォーム上で作動することができる。
【0082】
本発明の範囲および精神から逸脱しない様々な修正は、前述の開示から当業者には明らかである。以下の請求の範囲は、本明細書に示された特定の実施形態ならびに修正、変型、およびそれらの実施形態の等価物に及ぶことが意図される。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2-1】
【0085】
【表2-2】
【0086】
【表3】