(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記窒素含有官能基は、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアミド基、置換もしくは非置換のイミノ基からなる群から選択される少なくとも1種であり、前記酸素含有官能基は置換もしくは非置換のアルコキシシリル基、であることを特徴とする請求項2に記載のゴム組成物。
前記ブチルゴム類が、1)ブチルゴム、2)ハロゲン化ブチルゴム、3)(a)イソブチレン及び(b)ハロゲン基を含有したビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体、若しくは、(a)イソブチレン、(b)ハロゲン基を含有したビニル化合物又は(a)イソブチレン、(c)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物、及び(d)ハロゲン基を含有しないビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体から選ばれることを特徴とする請求項4に記載のゴム組成物。
前記層状化合物は、カオリン鉱物、サーペンティン、パイロフィライト‐タルク、雲母、クロライト、スメクタイト、バーミキュライトからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
前記層状化合物は、モンモリロナイト、雲母、バーミキュライト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のゴム組成物。
前記有機化処理剤は、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のオニウムカチオンを含むことを特徴とする請求項10に記載のゴム組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてその実施形態を例示して具体的に説明する。本発明のゴム組成物は、層状化合物と、前記層状化合物と相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体とを含む。
【0011】
<層状化合物>
本発明において層状化合物としては、層状粘土鉱物、層状ポリケイ酸塩、リン酸ジルコニウムが挙げられる。
層状粘土鉱物としては、例えば、カオリン鉱物、サーペンティン、パイロフィライト‐タルク、雲母、クロライト、スメクタイト、バーミキュライト等を挙げることができる。
【0012】
カオリン鉱物としては、例えば、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト等を挙げることができる。
【0013】
サーペンティンとしては、例えば、クリソタイル、リザーダイト、アンチゴライト等を挙げることができる。
【0014】
パイロフィライト‐タルクとしては、例えば、パイロフィライト、タルク、ケロライト、ウィレムスアイト、ビメライト、ミネソタアイト等を挙げることができる。
【0015】
雲母は、完全な基底劈開により特徴付けられる斜晶系層状ケイ酸塩であり、その一般化学組成は、以下の式、
XY
2〜
3Z
4O
10(OH、F)
2
(上記式中、XはBa、Ca、(H
3O)、K、Na、(NH
4)のいずれかを、YはAl、Cr
3+、Fe
2+、Fe
3+、Li、Mg、Mn
2+、V
3+のいずれかを、ZはAl、Be、Fe、Siのいずれかを表す)で表される。雲母は天然のものでも合成されたものでもよい。雲母には白雲母、金雲母、黒雲母、フッ素金雲母等がある。
【0016】
クロライトとしては、例えば、クリノクロア(Mgクロライト)、FeMgクロライト、シャモサイト(Feクロライト)、ニマイト、ペナンタイト、ドンバサイト、スドーアイト、クッケアイト等を挙げることができる。
【0017】
スメクタイトとしては、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スティブンサイト等を挙げることができる。スメクタイトとは、以下の式、
〔Si
8(Mg
aLi
b)O
20OH
cF
4-c〕
-xNa
+x
(上記式中、0<a≦6,0<b≦6,4<a+b<8,0≦c<4,X=12−2a−bを表す)で表される物質を含む粘土鉱物である。この粘土鉱物は、天然品でも合成品でもよく、親油化処理されたものでもよい。
【0018】
層状ポリケイ酸塩としては、例えば、マガディアイト、カネマイト、ケニアイト等を挙げることができる。
【0019】
これら層状化合物の中でも、ゴム組成物のガスバリア性向上の観点からは、カオリン鉱物、サーペンティン、パイロフィライト‐タルク、雲母、クロライト、スメクタイト、バーミキュライトが好ましい。そして、2対1型構造をとるモンモリロナイト、雲母、バーミキュライト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチブンサイトがより好ましい。2対1型構造を有するこれらの層状化合物は、層間に交換可能な陽イオンを持っているため、層状化合物の各層の剥離性をより向上させることができ、その結果、本発明のゴム組成物のガスバリア性をさらに向上させることができる。また、これらの中でも、層状化合物の各層の剥離性の観点から、モンモリロナイト、雲母が特に好ましい。
【0020】
本発明において、層状化合物は有機化処理剤により有機化されていることが好ましい。層状化合物が有機化されていることにより、層状化合物のゴム成分との相溶性を高めることができる。また、層状化合物が有機化されていることにより、層状化合物の層間距離を広げることができ、後述する変性共役ジエン系重合体の層間への侵入を容易とすることができる。その結果、本発明のゴム組成物のガスバリア性をさらに向上させることができる。ここで、有機化処理剤としては、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、オキソニウムカチオン、スルホニウムカチオンからなる群から選択される少なくとも1種のオニウムカチオンを含むものがゴム組成物のガスバリア性の向上の観点から好ましい。具体的には、有機化処理剤としては、それらのカチオンを含む塩であることが好ましい。
【0021】
本発明において、有機化処理剤は、下記式(1)で示される構造を有する4級アンモニウムカチオン、及び、下記式(2)で示される構造を有する4級ホスホニウムカチオンの少なくとも一方を含むものが、上述した有機化処理剤の効果の観点から特に好ましい。
【0024】
式(1)及び(2)中、R
1〜R
4はそれぞれ独立してベンジル基などのアリール基、炭素数1〜30のアルキル基、(CH
2CH(CH
3)O)
nH基、または、(CH
2CH
2O)
nH基を示し、nは1〜50の整数を示す。
【0025】
式(1)の4級アンモニウムカチオンを含む4級アンモニウム塩として、例えば、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムクロリド、ポリオキシプロピレン・トリアルキルアンモニウムブロミド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムクロリド、ジ(ポリオキシプロピレン)・ジアルキルアンモニウムブロミド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムクロリド、トリ(ポリオキシプロピレン)・アルキルアンモニウムブロミド等を挙げることができる。
【0026】
式(2)の4級ホスホニウムカチオンを含む4級ホスホニウム塩として、例えば、アリールトリ-n-ブチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリ-n-ブチルホスホニウムクロライド、ベンジルトリエチルホスホニウムクロリド、ドデシルトリ-n-ブチルホスホニウムブロミド、ドデシルトリ-n-ブチルホスホニウムクロリド、エチルトリ-n-オクチルホスホニウムブロミド、ヘキサデシルトリ-n-ブチルホスホニウムブロミド、ヘキサデシルトリ-n-ブチルホスホニウムクロリド、ヘキサデシルトリ-n-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレイト、メチルトリ-n-ブチルホスホニウムクロリド、テトラエチルホスホニウムブロミド、テトラ-n-ブチルホスホニウムクロリド、n-オクチルトリ-n-ブチルホスホニウムブロミド等を挙げることができる。
【0027】
層状化合物を有機化処理剤で有機化する場合、該層状化合物としては、例えば上記4級アンモニウムカチオンが層状化合物の層間に浸入し易いように、水、有機溶剤に対して膨潤性のあるものを用いることが好ましい。このような膨潤性の層状化合物を使用することにより上記4級アンモニウムカチオンの層間への浸入がより容易となり、結果としてゴム組成物中の層状化合物を構成する各層の剥離性をさらに改良することができる。かかる観点からは、上記層状化合物の中でも、平均粒径が大きい雲母、特に膨潤性雲母を用いることが好ましい。雲母の平均粒径としては、特に限定されないが、3〜30μmのものが好ましい。
【0028】
層状化合物の有機化は、例えば、オニウムカチオンを含む水溶液中に層状化合物を浸漬した後、水洗して、過剰なオニウムカチオンを除去することにより得られる。有機化された層状化合物中の上記オニウムカチオンの含有量は、特に限定されないが20〜60質量%が好ましい。
【0029】
さらに、これらの層状化合物としては、有機化の有無を問わず層状化合物の各層の間の距離(以下、層間距離という)が12Å以上であることが好ましい。12Å以上であることで、後述する共役ジエン系重合体の層間への侵入を容易とすることができる。なお、層状化合物の層間距離は、特に限定されないが、通常40Å以下である。層状化合物の層間距離はX線回折により測定することができる。
【0030】
本発明のゴム組成物中において、これらの層状化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。層状化合物の含有量は、後述する変性共役ジエン系重合体及び後述するブチルゴム類の合計量(ゴム成分)100質量部に対し、1〜200質量部が好ましく、1〜100質量部がより好ましく、3〜80質量部が特に好ましい。層状化合物の含有量が、変性共役ジエン系重合体及びブチルゴム類の合計量100質量部に対し、1質量部以上であることで本発明の効果を十分に得ることができ、200質量部以下であることでゴム組成物の加工性が良好である。なお、本発明において、層状化合物が有機化されている場合は、層状化合物の含有量は、有機化後の層状化合物の含有量をいう。
【0031】
<変性共役ジエン系重合体>
本発明における変性共役ジエン系重合体は、共役ジエン系重合体を、層状化合物と相互作用する官能基を有する変性剤で変性されてなる。本発明における変性共役ジエン系重合体は、上記層状化合物と相互作用する官能基が、重合開始側末端、重合停止側末端、主鎖及び側鎖の中から選ばれる少なくとも一つの位置に存在すればよい。上記層状化合物と相互作用する官能基としては、特に限定されないが、層状化合物と、水素結合、ファンデルワールス相互作用等する官能基が挙げられる。これらの中でも、層状化合物の各層の剥離性、ひいてはゴム組成物のガスバリア性の観点から、該相互作用は水素結合であることが好ましい。なお、本発明のゴム組成物においては、重合体そのものが層状化合物と相互作用する官能基を有している点が特徴である。このような構成をとることで、本発明のゴム組成物は、例えば、層状化合物と、層状化合物と相互作用する官能基を有する低分子化合物(オリゴマー等)と、層状化合物と相互作用する官能基を有しない重合体とを含むゴム組成物に比して、重合体(本発明においては変性共役ジエン系重合体)を層状化合物の層間により十分挿入することができ、結果として層状化合物の各層の、ゴム組成物中での分散性を良好なものとすることができる。
なお、変性に用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物単独重合体であってもよく、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエン(BR)またはスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)が好ましく、スチレン−ブタジエン共重合体が特に好ましい。
【0032】
上記層状化合物と相互作用する官能基は、窒素含有官能基、酸素含有官能基の少なくともいずれかであることが好ましい。かかる窒素含有官能基としては、例えば、ニトリル基、アゾ基、イソシアネート基、そして、置換もしく非置換のアミノ基、置換もしく非置換のアミド基、置換もしく非置換のイミノ基、置換もしく非置換のイミダゾール基、置換もしく非置換のピリジル基、置換もしく非置換のイミド基が挙げられる。また、かかる酸素含有官能基としては、例えば、エステル基、ケトン基、そして、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシシリル基、置換もしく非置換のヒドロキシル基、置換もしく非置換のアルデヒド基、置換もしく非置換のカルボキシル基等が挙げられる。これらの官能基を有する変性共役ジエン系重合体は、層状化合物との親和性に特に優れており、層状化合物を構成する各層の剥離性をより向上させることできる。その結果、本発明のゴム組成物のガスバリア性を更に向上させることができる。なお、本発明において、窒素含有官能基に酸素原子が含まれてもよく、酸素含有官能基に窒素原子が含まれてもよい。
【0033】
上記層状化合物と相互作用する官能基の中でも、上記剥離性の向上、ひいてはゴム組成物のガスバリア性の向上の観点から、窒素含有官能基は、置換もしくは非置換のアミノ基、置換もしくは非置換のアミド基、置換もしくは非置換のイミノ基からなる群から選択される1種であることがより好ましく、酸素含有官能基は置換もしくは非置換のアルコキシシリル基であることがより好ましい。さらに、上記層状化合物と相互作用する官能基としては、上記剥離性およびガスバリア性の向上の観点から、第1級アミノ基又は第2級アミノ基であることが特に好ましい。
【0034】
上記変性共役ジエン系重合体は、特に限定されないが、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤とするアニオン重合、又は希土類金属化合物を重合開始剤とする配位重合により重合したものであることが好ましい。
重合方法については特に制限はなく、溶液重合法、気相重合法、バルク重合法のいずれも用いることができるが、特に溶液重合法が好ましい。また、重合形式は、回分式及び連続式のいずれであってもよい。
【0035】
上記変性共役ジエン系重合体の製造に使用する共役ジエン系重合体としては、ゴム工業界で一般的に使用されるものであれば特に限定されないが、共役ジエン化合物の単独重合体、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体が好ましい。
【0036】
上記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエン、イソプレン及び2,3−ジメチル−1,3−ブタジエンが特に好ましい。
【0037】
また、芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
【0038】
単量体として共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、単量体の入手の容易さ等の実用性面、及びアニオン重合特性がリビング性等の点で優れること等から、それぞれ1,3−ブタジエン及びスチレンの使用が特に好ましい。また、溶液重合法を用いた場合には、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。なお、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は0質量%を越えて55質量%以下の範囲が好ましい。
【0039】
《アニオン重合》
アニオン重合により上記変性共役ジエン系重合体を得る方法としては、例えば有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られた、重合開始側末端に、層状化合物と相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体、又は重合停止側末端に該官能基が導入された変性共役ジエン系重合体、あるいは重合停止側末端と重合開始側末端の両方に該官能基が導入された変性共役ジエン系重合体を得る方法等を挙げることができる。
【0040】
上記有機アルカリ金属化合物としては、ヒドロカルビルリチウム化合物、リチウムアミド化合物又は第1族金属アルコキシドを用いることが好ましい。第1族金属アルコキシドの第1族金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。重合開始剤としてヒドロカルビルリチウム化合物を用いる場合、重合開始側末端にヒドロカルビル基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。一方、重合開始剤としてリチウムアミド化合物を用いる場合は、重合開始側末端に窒素含有官能基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。なお、ヒドロカルビルリチウム化合物、リチウムアミド化合物等の有機リチウム化合物又は第1族金属アルコキシドの、重合開始剤としての使用量は、単量体100g当り0.2〜20mmolの範囲が好ましい。
【0041】
上記ヒドロカルビルリチウム化合物としては、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチル-フェニルリチウム、4-フェニル-ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物等が挙げられる。これらの中でも、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム等のアルキルリチウムが好ましく、n-ブチルリチウムが特に好ましい。
【0042】
上記リチウムアミド化合物としては、式:Li−AM[式中、AMは、下記式(3)で表される置換アミノ基又は式(4)で表される環状アミノ基である]で表されるリチウムアミド化合物を用いることで、式(3)で表される置換アミノ基及び式(4)で表される環状アミノ基からなる群から選択される少なくとも一種の窒素含有官能基が導入された変性共役ジエン系重合体が得られる。例えば、リチウムヘキサメチレンイミドを用いた場合、少なくとも一つのヘキサメチレンイミノ基が導入された変性共役ジエン系重合体が得られる。
【0045】
式(3)中、R
5は、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アラルキル基、又はアルキルシリル基である。R
5としては、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、3-フェニル-1-プロピル基等が好ましい。なお、R
5はそれぞれ同じでも異なっていてもよい。
【0046】
式(4)中、R
6は3〜16個のメチレン基を有するアルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN-アルキルアミノ-アルキレン基である。ここで、置換アルキレン基には、一置換から八置換のアルキレン基が含まれ、置換基としては、炭素数1〜12の鎖状若しくは分枝状アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。R
6としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オキシジエチレン基、N-アルキルアザジエチレン基、ドデカメチレン基及びヘキサデカメチレン基等が好ましい。
【0047】
上記式(3)の置換アミノ基を有するリチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。
【0048】
上記式(4)の環状アミノ基を有するリチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウム-N-メチルピペラジド、等が挙げられる。
【0049】
これらの中でも、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状のリチウムアミド化合物が好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが特に好ましい。
【0050】
上記リチウムアミド化合物は、二級アミンとリチウム化合物から予備調製して重合反応に用いてもよいが、重合系中で生成させてもよい。ここで、二級アミンとしては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジイソブチルアミン、アザシクロヘプタン(即ち、ヘキサメチレンイミン)、2−(2−エチルヘキシル)ピロリジン、3−(2−プロピル)ピロリジン、3,5−ビス(2−エチルヘキシル)ピペリジン、4−フェニルピペリジン、7−デシル−1−アザシクロトリデカン、3,3−ジメチル−1−アザシクロテトラデカン、4−ドデシル−1−アザシクロオクタン、4−(2−フェニルブチル)−1−アザシクロオクタン、3−エチル−5−シクロヘキシル−1−アザシクロヘプタン、4−ヘキシル−1−アザシクロヘプタン、9−イソアミル−1−アザシクロヘプタデカン、2−メチル−1−アザシクロヘプタデセ−9−エン、3−イソブチル−1−アザシクロドデカン、2−メチル−7−t−ブチル−1−アザシクロドデカン、5−ノニル−1−アザシクロドデカン、8−(4'−メチルフェニル)−5−ペンチル−3−アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1−ブチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8−エチル−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1−プロピル−3−アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3−(t−ブチル)−7−アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5−トリメチル−3−アザビシクロ[4.4.0]デカン等の環状アミンが挙げられる。一方、リチウム化合物としては、上記ヒドロカルビルリチウムを用いることができる。
【0051】
上記重合開始剤の有機アルカリ金属化合物としては、アルキルリチウムを用いることが好ましい。また、上記有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として、アニオン重合により当該変性共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、例えば、重合反応に不活性な炭化水素溶媒中で、共役ジエン化合物単独で、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との混合物を重合させることで共役ジエン系重合体を製造することができる。ここで、重合反応に不活性な炭化水素溶媒としては、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
上記アニオン重合は、ランダマイザーの存在下で実施してもよい。該ランダマイザーは、共役ジエン化合物のミクロ構造を制御することができる。該ランダマイザーは、例えば、単量体としてブタジエンを用いた重合体のブタジエン単位の1,2−結合含量を制御したり、単量体としてスチレンとブタジエンを用いた共重合体のブタジエン単位とスチレン単位とをランダム化する等の作用を有する。
【0053】
上記ランダマイザーとしては、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、カリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシド、ナトリウム−t−アミレート等が挙げられる。これらランダマイザーの使用量は、重合開始剤の有機アルカリ金属化合物1mol当り0.01〜100mol当量の範囲が好ましい。
【0054】
上記アニオン重合の重合温度は、0〜150℃の範囲が好ましく、20〜130℃の範囲がより好ましい。また、該重合は、発生圧力下で実施できるが、通常は、使用する単量体を実質的に液相に保つのに十分な圧力下で行うのが好ましい。ここで、重合反応を発生圧力より高い圧力下で実施する場合、反応系を不活性ガスで加圧するのが好ましい。また、重合に使用する単量体、重合開始剤、溶媒等の原材料は、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を予め除去したものを用いるのが好ましい。
【0055】
《配位重合》
一方、希土類金属化合物を重合開始剤として、配位重合で当該変性共役ジエン系重合体を製造する場合は、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分を組み合わせて用いるのが好ましい。
【0056】
上記配位重合に用いる(A)成分は、希土類金属化合物、及び希土類金属化合物とルイス塩基との錯化合物等から選択される。ここで、希土類金属化合物としては、希土類元素のカルボン酸塩、アルコキサイド、β−ジケトン錯体、リン酸塩及び亜リン酸塩等が挙げられる。上記ルイス塩基としては、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、1価又は2価のアルコール等が挙げられる。上記希土類金属化合物の希土類元素としては、ランタン、ネオジム、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウムが好ましく、これらの中でも、ネオジムが特に好ましい。また、(A)成分として、具体的には、ネオジムトリ−2−エチルヘキサノエート,それとアセチルアセトンとの錯化合物,ネオジムトリネオデカノエート,それとアセチルアセトンとの錯化合物,ネオジムトリn−ブトキシド等が挙げられる。これら(A)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0057】
上記配位重合に用いる(B)成分は、有機アルミニウム化合物から選択される。該有機アルミニウム化合物として、具体的には、式:R
123Alで表されるトリヒドロカルビルアルミニウム化合物、式:R
122AlH又はR
12AlH
2で表されるヒドロカルビルアルミニウム水素化物(式中、R
12は、それぞれ独立して炭素数1〜30の炭化水素基である)、炭素数1〜30の炭化水素基をもつヒドロカルビルアルミノキサン化合物等が挙げられる。該有機アルミニウム化合物として、具体的には、トリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムヒドリド、アルキルアルミニウムジヒドリド、アルキルアルミノキサン等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。なお、(B)成分としては、アルミノキサンと他の有機アルミニウム化合物とを併用するのが好ましい。
【0058】
上記配位重合に用いる(C)成分は、加水分解可能なハロゲンを有する化合物又はこれらとルイス塩基の錯化合物;三級アルキルハライド、ベンジルハライド又はアリルハライドを有する有機ハロゲン化物;非配位性アニオン及び対カチオンからなるイオン性化合物等から選択される。かかる(C)成分として、具体的には、アルキルアルミニウム二塩化物、ジアルキルアルミニウム塩化物、四塩化ケイ素、四塩化スズ、塩化亜鉛とアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化マグネシウムとアルコール等のルイス塩基との錯体、塩化ベンジル、塩化t−ブチル、臭化ベンジル、臭化t−ブチル、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。これら(C)成分は一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。
【0059】
上記重合開始剤は、上記の(A),(B),(C)成分以外に、必要に応じて、重合用単量体と同じ共役ジエン化合物及び/又は非共役ジエン化合物を用いて予備的に調製してもよい。また、(A)成分又は(C)成分の一部又は全部を不活性な固体上に担持して用いてもよい。上記各成分の使用量は、適宜設定することができるが、通常、(A)成分は単量体100g当たり0.001〜0.5mmolである。また、モル比で(B)成分/(A)成分は5〜1,000、(C)成分/(A)成分は0.5〜10が好ましい。
【0060】
上記配位重合における重合温度は、−80〜150℃の範囲が好ましく、−20〜120℃の範囲がより好ましい。また、配位重合に用いる溶媒としては、上述のアニオン重合で例示した反応に不活性な炭化水素溶媒を用いることができ、反応溶液中の単量体の濃度もアニオン重合の場合と同様である。更に、配位重合における反応圧力もアニオン重合の場合と同様であり、反応に使用する原材料も、水、酸素、二酸化炭素、プロトン性化合物等の反応阻害物質を実質的に除去したものが望ましい。
【0061】
《変性反応》
本発明における変性共役ジエン系共重合体は、上記のアニオン重合や配位重合により得られた共役ジエン系重合体の活性部位に、適当な変性剤を反応させることによって製造することができる。該変性剤は、上記窒素含有官能基及び上記酸素含有官能基の少なくともいずれかを有することが好ましい。
【0062】
上記変性剤としては、例えば、保護された第一級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物が好適に挙げられる。該保護された第一級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンが好ましい。また、これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物は、部分縮合物であってもよい。ここで、部分縮合物とは、これらの変性剤のSiORの一部が、縮合によりSiOSi結合したものをいう。これらを、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
上記保護された第一級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物の使用量は、共役ジエン系重合体1kgに対して好ましくは0.5〜200mmolである。同使用量は、さらに好ましくは共役ジエン系重合体1kgに対して1〜100mmolであり、特に好ましくは共役ジエン系重合体1kgに対して2〜50mmolである。ここで、共役ジエン系重合体とは、製造時又は製造後、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。なお、前記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
【0064】
本発明においては、上記変性反応の後、更に特定の縮合促進剤を用いて縮合反応を行わせてもよい。該縮合反応においては、共役ジエン系重合体の活性部位に導入された上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物残基の縮合又は未反応の上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物との縮合が行われる。このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかに属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なくとも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、トリアルキルシロキサン又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。具体的な縮合促進剤としては、例えば、テトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタン、テトラキス(2−エチルヘキソキシ)チタン、チタンジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)スズ等が好適に挙げられる。
【0065】
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び/又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性部位との直接反応が起こり、活性部位に該変性剤が導入されない場合がある。縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率よく進行する。
【0066】
上記縮合反応は、上述の縮合促進剤と、水蒸気又は水の存在下で進行する。水蒸気の存在下の場合として、スチームストリッピングによる脱溶媒処理が挙げられ、スチームストリッピング中に縮合反応が進行する。また、縮合反応を有機溶媒中に水が液滴として分散している系又は水溶液中で行っても良く、縮合反応温度は20〜180℃が好ましく、より好ましくは30〜170℃、さらに好ましくは50〜170℃、特に好ましくは80〜150℃である。縮合反応時の温度を前記範囲にすることによって、縮合反応を効率よく進行完結することができ、得られる変性共役ジエン系重合体の経時変化によるポリマーの老化反応等による品質の低下等を抑えることができる。
【0067】
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。なお、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。縮合反応を水溶液中で行う場合の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器等の装置を用いて連続式で行っても良い。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行っても良い。
【0068】
本発明においては、上記共役ジエン系重合体と保護された第一級アミノ基を有するヒドロカルビルオキシシラン化合物を反応させた後又は上記縮合反応の後、保護された窒素原子の保護基を脱離させることが好ましい。保護基の脱離は、スチームストリッピング等の水蒸気を用いる脱溶媒処理や、加水分解等の公知の方法を用いることができる。
【0069】
本発明において、上記変性剤として用いられる他の化合物としては、窒素含有官能基を有する化合物、例えばビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N-メチルピロリドン、4-ジメチルアミノベンジリデンアニリン等を挙げることができる。これらの窒素含有官能基を有する化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。窒素含有官能基を有する化合物を変性剤として使用することにより、例えば、ニトリル基、アゾ基、イソシアネート基、置換もしく非置換のアミノ基、置換もしく非置換のアミド基、置換もしく非置換のイミノ基、置換もしく非置換のイミダゾール基、置換もしく非置換のピリジル基、置換もしく非置換のイミド基等の窒素を含む官能基を共役ジエン系重合体に導入することができる。
【0070】
本発明において、上記変性剤として用いられるさらに他の化合物としては、酸素含有官能基を有する化合物、例えばヒドロカルビルオキシシラン化合物、(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、イミン残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、イミダゾール残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、カルボン酸ヒドロカルビルエステル残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、イソシアナート基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、カルボン酸無水物残基ヒドロカルビルオキシシラン化合物等を挙げることができる。酸素含有官能基を有する化合物を変性剤として使用することにより、例えば、エステル基、ケトン基、そして、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルコキシシリル基、置換もしくは非置換のヒドロキシル基、置換もしくは非置換のアルデヒド基、置換もしくは非置換のカルボキシル基等の酸素を含む官能基を共役ジエン系重合体に導入することができる。
なお、本明細書において「(チオ)エポキシ」とは、エポキシおよび/またはチオエポキシを意味する。
【0071】
上記ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、テトラエトキシシランが好ましい。
【0072】
前記(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、例えば2−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、2−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、(2−グリシドキシエチル)メチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(3−グリシドキシプロピル)メチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メチル)ジメトキシシラン及びこれらの化合物におけるエポキシ基をチオエポキシ基に置き換えたものを挙げることができるが、これらの中でも、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及び3−グリシドキシプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0073】
イミン残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン,N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びこれらのトリエトキシシリル化合物に対応するトリメトキシシリル化合物,メチルジエトキシシリル化合物,エチルジエトキシシリル化合物,メチルジメトキシシリル化合物,エチルジメトキシシリル化合物等を挙げることができるが、これらの中でも、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン及びN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンが好ましい。
【0074】
イミダゾール残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、1−[3−(トリエトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール,1−[3−(トリメトキシシリル)プロピル]−4,5−ジヒドロイミダゾール,N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール,N−(3−イソプロポキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール,N−(3−メチルジエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾール等が挙げられ、これらの中でも、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールが好ましい。
【0075】
カルボン酸ヒドロカルビルエステル残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、3−メタクリロイロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイロキシプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、3−メタクリロイロキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0076】
イソシアナート基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、3−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリイソプロポキシシラン等が挙げられ、これらの中でも、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0077】
カルボン酸無水物残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物としては、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物残基、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物残基、3−メチルジエトキシシリルプロピルコハク酸無水物残基等が挙げられ、これらの中でも、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物残基が好ましい。
【0078】
これらのヒドロカルビルオキシシラン化合物、(チオ)エポキシ基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、イミン残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、イミダゾール残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、カルボン酸ヒドロカルビルエステル残基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、イソシアナート基含有ヒドロカルビルオキシシラン化合物、カルボン酸無水物残基ヒドロカルビルオキシシラン化合物は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらヒドロカルビルオキシシラン化合物の部分縮合物も用いることができる。
【0079】
上記変性剤として用いられる他の化合物、及び、上記変性剤として用いられるさらに他の化合物による変性反応は、溶液反応で行うのが好ましく、該溶液中には、重合時に使用した単量体が含まれていてもよい。また、変性反応の反応形式は特に制限されず、バッチ式でも連続式でもよい。更に、変性反応の反応温度は、反応が進行する限り特に限定されず、重合反応の反応温度をそのまま採用してもよい。なお、変性剤の使用量は、共役ジエン系共重合体の製造に使用した重合開始剤1molに対し、0.25〜3.0molの範囲が好ましく、0.5〜1.5molの範囲がより好ましい。
【0080】
また、本発明のゴム組成物に使用する変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)が10×10
3〜5000×10
3であることが好ましく、100×10
3〜500×10
3であることがより好ましい。
重量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることで、加工性が良好である。さらに、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)比で表される分子量分布は1〜4であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。分子量分布を上記範囲内にすることにより、当該変性共役ジエン系重合体をゴム組成物に配合しても、該ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練りが容易で、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
なお、上記重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法で測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0081】
<ブチルゴム類>
本発明のゴム組成物は、ブチルゴム類を含んでいてもよい。ゴム成分として、ブチルゴム類と共に、上述の層状化合物と相互作用する官能基を有する変性共役ジエン系重合体と併用することにより、すなわち、末端変性ポリマー等となる変性共役ジエン系重合体とブチルゴム類であるIIR系ポリマーのブレンド系にすることにより、層状化合物の層間を拡大し、ナノコンポジットを形成させるので、ブチルゴム類単独使用よりも、更に、優れたガスバリア性を発揮するものとなる。
【0082】
本発明に用いることができるブチルゴム類としては、1)ブチルゴム(IIR)、2)臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)、3)(a)イソブチレン及び(b)ハロゲン基を含有したビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体、若しくは、(a)イソブチレン、(b)ハロゲン基を含有したビニル化合物又は(a)イソブチレン、(c)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物、及び(d)ハロゲン基を含有しないビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0083】
本発明に使用するブチルゴム類は、空気不透過性(ガスバリア性)、耐オゾン性、耐老化性、電気的性質、耐化学薬品性などに優れ、特に、空気透過性の低いゴムであり、各種ゴム部材、空気入りタイヤなどのタイヤ部材、特に、インナーライナー用に有用となるものである。
【0084】
本発明で使用する上記3)の共重合体は、(a)イソブチレン及び(b)ハロゲン基を含有したビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体、(a)イソブチレン、(b)ハロゲン基を含有したビニル化合物及び(d)ハロゲン基を含有しないビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体、(a)イソブチレン、(c)ハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物及び(d)ハロゲン基を含有しないビニル化合物をカチオン重合開始剤を用いて重合させた共重合体の3種が挙げられ、これらの共重合体中には少なくともハロゲン基を含有するため、通常のゴム成分より極性が高く、有機化された層状粘土鉱物の層間にインターカレートし易いものとなる。また、上記3)の3種の共重合体は、通常のゴム成分より極性が高いものの、イソブチレンや芳香族ビニル化合物といった極性の低い部分も具えるため、上述の変性共役ジエン系重合体との相溶性も高いため、用いる層状化合物の各層を剥離して層状化合物のアスペクト比を向上させることができ、ガスバリア性を更に向上させることができる。
【0085】
上記3)の共重合体の製造に用いるハロゲン基を含有したビニル化合物としては、例えば、ビニルクロロアセテート、アリルクロロアセテート、塩化ビニル等が挙げられ、また、市販品なども用いることができる。上記共重合体中のハロゲン基を含有したビニル化合物単位の結合量は、0.1〜8質量%であり、0.3〜5質量%が好ましい。共重合体中のハロゲン基を含有したビニル化合物単位の結合量が0.1質量%未満では、層状化合物、有機化された層状化合物の層間にインターカレートし難く、8質量%を超えると、ゴム組成物の弾性率が高くなり、耐クラック性が悪化する。
また、上記3)の共重合体の製造に用いるハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物としては、例えば、p−クロロメチルスチレン、p−ブロモメチルスチレン、p−クロロスチレン、p−ブロモスチレン等が挙げられ、これらの中でもp−クロロメチルスチレン、p−ブロモメチルスチレン等のp−ハロメチルスチレンが好ましい。上記共重合体中のハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物単位の結合量は、5〜70質量%であり、10〜70質量%が好ましい。共重合体中のハロゲン基を含有した芳香族ビニル化合物単位の結合量が5質量%未満では、有機化された層状粘土鉱物の層間にインターカレートし難く、70質量%を超えると、ゴム組成物の弾性率が高くなり、耐クラック性が悪化する。
【0086】
上記共重合体の製造に用いることができるハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられ、これらの中でもスチレンが好ましい。上記共重合体の製造にハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物を用いることにより、製造された共重合体のゴムとの相溶性を向上させることができる。上記共重合体中のハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物単位の結合量は、65質量%以下が好ましく、5〜45質量%が更に好ましい。共重合体中のハロゲン基を含有しない芳香族ビニル化合物単位の結合量が65質量%を超えると、ゴム組成物の弾性率が高くなり、耐クラック性が悪化する。
【0087】
上記3)の共重合体の製造に用いるカチオン重合開始剤は、陽イオンを成長活性種とする連鎖重合反応であるカチオン重合を開始するための試薬であり、特に限定されるものではないが、例えば、三塩化ホウ素(BCl
3)、塩化アルミニウム(AlCl
3)、四塩化スズ(SnCl
4)、四塩化チタン(TiCl
4)、五塩化バナジウム(VCl
5)、三塩化鉄(FeCl
3)、三フッ化ホウ素(BF
3)、クロロジエチルアルミニウム(Et
2AlCl)、ジクロロエチルアルミニウム(EtAlCl
2)等のルイス酸が挙げられ、これらの中でも四塩化チタンが好ましい。
【0088】
上記共重合体の重量平均分子量は、2000〜200000であり、2000〜50000が好ましい。上記共重合体の重量平均分子量が2000未満では、インナーライナーの耐破壊性が低下し、200000を超えると、有機化された層状粘土鉱物の層間に共重合体がインターカレートし難くなる。
上記3)の共重合体は、上記カチオン重合開始剤を用いて公知の方法でカチオン重合することにより製造することができる。
【0089】
上記3)の共重合体の製造に用いる溶媒としては、通常カチオン重合に用いられる溶剤を適宜用いることができ、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素等の炭化水素溶媒等が用いられる。この中でも芳香族炭化水素が好ましく、トルエンがより好ましい。かかる脂肪族炭化水素の具体例としては、ペンタン、ヘキサン等を、芳香族炭化水素の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を、またハロゲン化炭化水素の具体例としては、クロロメタン、クロロエタン、塩化メチレン、1,1−ジクロロエタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等を例示できる。
これらは、一種単独でも、二種以上を混合して使用してもよい。更に、これらの溶媒と共に少量の他の溶媒、例えば、酢酸エチル等の酢酸エステルやニトロエタン等のニトロ基を持つ有機化合物を併用してもよい。
【0090】
上記3)の共重合体の製造における重合温度は、−100℃〜−30℃が好ましい。−100℃未満では、重合反応の進行が遅く、−30℃を超えると、連鎖移動反応が激しく、分子量が著しく低下する傾向があるので好ましくない。
また、上記3)の共重合体の重合反応は、モノマーを実質的に液相下に保つのに充分な圧力下で行うのが望ましい。即ち、反応圧力は重合される各モノマーや、使用する溶媒及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力下で重合させることができ、このような高い圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で達成される。
更に、上記3)の共重合体の製造においては、一般にモノマー、カチオン重合開始剤、溶媒等の製造に使用する全ての物質から、水、酸素、二酸化炭素等の触媒毒を除去するのが好適である。
【0091】
なおゴム組成物のガスバリア性を向上させる観点から、前記変性共役ジエン系重合体(X)とブチルゴム類(Y)の配合比率(Y/X)は、好ましくは99.5/0.5〜40/60、より好ましくは、99/1〜80/20、特に好ましくは、95/5〜60/40である。
【0092】
(ゴム組成物)
本発明のゴム組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記変性共役ジエン系重合体、ブチルゴム類以外の他のゴム成分を含んでもよい。
また、本発明のゴム組成物は、例えば硫黄等の加硫剤、シリカやカーボンブラック等の充填剤、プロセスオイル等の油分、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、及び、ステアリン酸等の配合剤を含んでもよい。
そして、本発明のゴム組成物は、常法により作製できる。該作製方法に特に制限は無く、例えば、ゴム成分(変性共役ジエン系重合体、任意のブチルゴム類およびその他ゴム成分)、層状化合物、配合剤を混練して作製してもよいし、ゴム成分、層状化合物を含むゴムマスターバッチを作製し、その後該ゴムマスターバッチと上記のような配合剤を混練して作製してもよい。層状化合物の各層の、ゴム組成物中での分散性の観点からは、ゴムマスターバッチを用いた作製が好ましい。
ゴムマスターバッチは、例えば、ゴム成分及び層状化合物を水及び/又は有機溶媒に混合し、その後水及び/又は有機溶媒を除去することによって得られる。有機溶媒としては、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサンなどを用いることができる。
【0093】
(インナーライナー素材)
本発明のインナーライナー素材は、本発明のゴム組成物からなることを特徴とする。本発明のインナーライナー素材を常法により押出して加工し、空気入りタイヤと共に、又は別途加硫してインナーライナーとすることができる。該インナーライナーは、優れたガスバリア性を有する。
【0094】
(空気入りタイヤ)
本発明の空気入りタイヤは、本発明のインナーライナー素材を用いたインナーライナーを具えることを特徴とする。本発明の空気入りタイヤは、特に制限は無く、常法により製造することができる。また、該タイヤに充填する空気としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気に加え、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを含んでもよい。該空気入りタイヤは、優れた充填気体保持性を有する。
【実施例】
【0095】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各例における諸特性は、以下に示す測定方法により測定した。また、変性共役ジエン系重合体等の材料は、以下に示すものを用いた。
【0096】
<未変性SBR、変性SBRのミクロ構造>
重合体のブタジエン部分のビニル結合量を赤外法で求め、結合スチレン量を
1H−NMRスペクトルの積分比より算出した。
【0097】
<変性BRのミクロ構造>
ミクロ構造〔シス−1,4結合量(Cis)(%)及び1,2−ビニル結合量(Vi)(%)〕
同一セルの二硫化炭素をブランクとして、5mg/mlの濃度に調製したポリブタジエンの二硫化炭素溶液のFT−IRによる透過率スペクトルを測定し、下記行列式:
【数1】
〔上記式中、aは、フーリエ変換赤外分光法(FT−IR)による透過率スペクトルの1130cm
-1付近の山ピーク値であり、bは、967cm
-1付近の谷ピーク値であり、cは、911cm
-1付近の谷ピーク値であり、dは、736cm
-1付近の谷ピーク値である〕から導かれるe、f、gの値を用い、下記式(I')及び式(II'):
(シス−1,4結合量)=e/(e+f+g)×100・・・(I')
(ビニル結合量)=g/(e+f+g)×100・・・(II')
に従ってシス−1,4結合量及びビニル結合量を求めた。
【0098】
<分子量>
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー製HLC−8220、カラム:東ソー製GMH−XL(2本直列)、検出器:示差屈折率計(RI)]で、単分散ポリスチレンを基準として、未変性SBR、変性SBR、変性BRのMn及びMwを求めた。
【0099】
<変性剤>
・変性剤1 N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラスフラスコ中のジクロロメタン溶媒400ml中にアミノシラン部位として36gの3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン(Gelest社製)を加えた後、更に保護部位として塩化トリメチルシラン(Aldrich社製)48ml、トリエチルアミン53mlを溶液中に加え、17時間室温下で攪拌した。その後反応溶液をエバポレーターにかけることにより溶媒を取り除き、反応混合物を得、更に得られた反応混合物を665Pa(5mm/Hg)条件下で減圧蒸留することにより、130〜135℃留分としてN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランを40g得た。
【0100】
・変性剤2 1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
・変性剤3
テトラエトキシシラン
・変性剤4 N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン
・開始剤 ヘキサメチレンイミン
上記変性剤2,3及び開始剤は東京化成工業株式会社から、上記変性剤4は日美商事株式会社から購入して使用した。
【0101】
<変性共役ジエン系重合体および未変性共役ジエン系重合体、並びにブチルゴム類>
[製造例1 N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン変性SBR(変性SBR−1)の製造]
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン300g、1,3−ブタジエン40g、スチレン10g、ジテトラヒドロフリルプロパン0.40mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(n−BuLi)0.35mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。
次に、この重合体溶液を温度60℃に保ち、変性剤1(N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン)を0.35mmol添加し、15分間反応させた後、重合体溶液を温度60℃に保ったままテトラキス(2−エチル−1,3−ヘキサンジオラト)チタンを0.35mmol加え更に15分間撹拌し反応させた。その後、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り、重合停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、結合スチレン量:20質量%、ビニル結合量:55%、Mw:250×10
3及びMw/Mn:1.2の変性SBR−1を得た。
【0102】
[製造例2 1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン変性SBR(変性SBR−2)の製造]
製造例1の変性剤1を等モルの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(変性剤2)に変更した以外は、製造例1と同様にして、結合スチレン量:20質量%、ビニル結合量:50%、Mw:250×10
3及びMw/Mn:1.2の変性SBR−2を得た。
【0103】
[製造例3
テトラエトキシシラン変性SBR(変性SBR−3)の製造]
製造例1の変性剤1を等モルの
テトラエトキシシラン(変性剤3)に変更した以外は、製造例1と同様にして、結合スチレン量:35質量%、ビニル結合量:20%、Mw:250×10
3及びMw/Mn:1.2の変性SBR−3を得た。
【0104】
[製造例4 N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン変性SBR(変性SBR−4)の製造]
製造例1の変性剤1を等モルのN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン(変性剤4)に変更した以外は、製造例1と同様にして、結合スチレン量:20質量%、ビニル結合量:50%、Mw:250×10
3及びMw/Mn:1.2の変性SBR−4を得た。
【0105】
[製造例5 ヘキサメチレンイミン変性SBR(変性SBR−5)の製造]
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン300g、1,3−ブタジエン37.5g、スチレン12.5g、カリウム−t−アミレート0.03mmol、THF 2mmolを注入し、更に第二アミンとしてヘキサメチレンイミン0.41mmolを加えた。これにn−ブチルリチウム(BuLi)0.45 mmolを加えた後、50℃で2.5時間重合を行った。重合系は重合開始から終了まで、全く沈澱は見られず均一で透明であった。重合転化率はほぼ100%であった。
次に、この重合系に更に変性剤として四塩化スズの1mol/Lシクロヘキサン溶液0.09 mmolを加えた後に、更に30分間変性反応を行った。この後、重合系に更に2,6−ジ−ターシャリブチルパラクレゾール(BHT)のイソプロピルアルコール5質量%溶液0.5mLを加えて反応の停止を行い、更に常法に従い乾燥することにより、結合スチレン量:25質量%、ビニル結合量:30%、Mw:250×10
3及びMw/Mn:1.2の変性SBR−5を得た。
【0106】
[製造例6 未変性SBRの製造]
乾燥し、窒素置換した800mLの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン300g、1,3−ブタジエン40g、スチレン10g、ジテトラヒドロフリルプロパン0.40mmolを加え、更にn−ブチルリチウム(n−BuLi)0.35mmolを加えた後、50℃で1.5時間重合反応を行った。この際の重合転化率は、ほぼ100%であった。
その後、重合反応系に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液(BHT濃度:5質量%)0.5mLを加えて、重合反応を停止させ、更に常法に従って乾燥して、結合スチレン量:20質量%、ビニル結合量:55%、Mw:250×10
3及びMw/Mn:1.1の未変性SBRを得た。
【0107】
[製造例7 N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン変性BR(変性BR−1)の製造]
製造例1において、スチレンを加えずに、1,3−ブタジエンとした以外は、製造例1と同様にして、Mw:250×10
3及びMw/Mn:1.2の変性BR−1を得た。
【0108】
[ブチルゴム類]
下記のブチルゴム、臭素化ブチルゴムを用いた。
・ブチルゴム(IIR):Butyl269(Exxon Mobile Chemical社製)
・臭素化ブチルゴム(Br−IIR):Bromobutyl2222(Exxon Mobile Chemical社製)
【0109】
<層状化合物>
下記の層状化合物を用いた。
[層状化合物A]
cloisite20A:Southern clay products社製、ジメチル二水素化牛脂アンモニウムクロリドで有機化(改質)されたモンモリロナイト〔ジメチル二水素化牛脂アンモニウムクロリドに含まれるジメチル二水素化牛脂アンモニウムカチオンは、式(1)中、R
1は、メチル基、R
2はメチル基、R
3は炭素数14〜18のアルキル基、R
4は炭素数14〜18のアルキル基の構造を有する〕
[層状化合物B]
エスベンE:ホージュン製、トリメチルステアリルアンモニウムで有機化されたモンモリロナイト
[層状化合物C]
エスベンNZ:ホージュン製、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムで有機化されたモンモリロナイト
[層状化合物D]
エスベンN400: ホージュン製、 ジメチルジステアリルアンモニウムで有機化されたモンモリロナイト
[層状化合物E]
エスベンNO12S: ホージュン製、オレイルビス(2-ヒドロキシエチル)メチルアンモニウムで有機化されたモンモリロナイト
[層状化合物F]
4C−TS: トピー工業製、ジメチルジステアリルアンモニウムで有機化された雲母
[層状化合物G]
ヘンゲルHV:ホージュン製、有機化されていないモンモリロナイト
【0110】
(実施例
1、4、6〜9、参考例2、3、5、比較例1〜3)
まず、ブチルゴム類を使用せずにゴム組成物を調製し、評価を行った。
【0111】
<ゴムマスターバッチの作製>
表1に記載の変性SBR、未変性SBRをそれぞれトルエンに溶解した。該トルエン溶液に、表1に記載の層状化合物を変性SBR又は未変性SBR100質量部に対し、20質量部を添加し100℃で6時間攪拌した。該攪拌後、溶媒を除去し、ゴムマスターバッチを得た。
【0112】
<ゴム組成物の作製>
上記ゴムマスターバッチにそれぞれ表1の配合剤を加え、プラストミルで混練してゴム組成物を作製した。得られたゴム組成物について、層状化合物の剥離した各層の分散性、空気透過性A(ガスバリア性)を以下のように評価した。
【0113】
《分散性》
得られたゴム組成物のTEM観察を行い、分散性を目視で評価した。分散性が非常に良好なものを4、良好なものを3、あまり良好でないものを2、そして全く分散していないものを1とした。結果を表1に示す。
【0114】
《空気透過性A(ガスバリア性)》
上記ゴム組成物を150℃で30分間加硫し、以下に示す方法で空気透過性Aを評価した。空気透過試験機M−C1(東洋精機社製)を用いて60℃で各ゴム組成物の空気透過率を測定し、比較例3のゴム組成物の空気透過率を100とし、それぞれ指数表示で表1に示す。指数値が小さい程、空気透過率が小さく、即ちガスバリア性が良好であることを示す。
【0115】
【表1】
【0116】
上記表1、そして後述する表2〜8中の*1〜*6は以下のとおりである。
*1:ACID CHEM製、PALMAC 1600
*2:MID WEST ZINC CO.製、205P
*3:LANXESS製、VULKACIT DM/MG
*4:LANXESS製、VULKACIT D/EGC
*5:Emerald Performance Materials製、CURE−RITE BBTS
*6:鶴見化学工業製、粉末硫黄
【0117】
表1の結果から明らかなように、変性SBRと層状化合物を使用した実施例
1、4、6〜9、参考例2、3、5のゴム組成物は、未変性SBRと層状化合物を使用した比較例1,2、未変性SBRを使用し層状化合物を使用しない比較例3のゴム組成物に比して、空気透過率が低く、即ちガスバリア性について優れていた。特に、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン変性SBRを使用した実施例1,6〜9のゴム組成物、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを使用した
参考例2のゴム組成物は、空気透過率が非常に低く、即ちガスバリア性について顕著に優れていた。
【0118】
比較例を個別的にみると、未変性SBRと有機化された層状化合物を使用した比較例1は空気透過率が高く、即ちガスバリア性に劣っていた。未変性SBRと有機化していない層状化合物を使用した比較例2は、比較例1よりもさらに空気透過率が高く、即ちガスバリア性に劣っていた。そして未変性SBRを使用し、層状化合物を使用しない比較例3は、空気透過率が最も高く、即ちガスバリア性について非常に劣っていた。
【0119】
(実施例
10〜26および33〜37、参考例27〜32、比較例4〜9)
次に、ブチルゴム類を使用してゴム組成物を調製し、評価を行った。
下記表2〜表8に示す配合処方、並びに、下記記載の調製法等により、ゴム組成物を調製した。
表2、4〜8は、下記記載の方法によりゴムマスターバッチによりゴム組成物を調製した。表2〜8中に、ゴムマスターバッチにより調製した場合は、WMBを「有」とし、ゴムマスターバッチを行わず、通常の機械練りの場合(表3)は、WMBを「―」として表記した。
【0120】
<ゴムマスターバッチおよびゴム組成物の作製>
各表中のWMB「有」のサンプルは、ゴム成分(変性共役ジエン系重合体とブチルゴム類)と層状化合物を含むゴムマスターバッチを下記に示す方法で調製し、その後、残りの表2、4〜8の各配合剤をプラストミルで混練してゴム組成物を調製した。
[ゴムマスターバッチの作製:各配合量は各表中の質量部数]
表2、4〜8に記載の共役ジエン系重合体をそれぞれトルエンに溶解した(W1)。層状化合物をトルエンに分散させ、上記W1に加えて混合し、100℃で6時間撹拌させた(W2)。トルエンに溶解させた表2、4〜8に記載のブチルゴム類に添加して、100℃で撹拌後、溶媒を除去し、ゴムマスターバッチを得た。
【0121】
また、WMB「―」のサンプルは、ゴム成分(変性共役ジエン系重合体とブチルゴム類)と層状化合物、表3中等の各配合剤をプラストミルで混練してゴム組成物を調製した。
得られたゴム組成物について、空気透過性Bを以下のように評価した。
【0122】
《空気透過性B(ガスバリア性)》
上記ゴム組成物を150℃で30分間加硫し、以下に示す方法で空気透過性Bを評価した。空気透過試験機M−C1(東洋精機社製)を用いて、60℃で各ゴム組成物の空気透過率を測定し、比較例6の空気透過率を1とし、それぞれ指数表示で表2〜8に示す。指数値が小さい程、空気透過率が小さく、即ちガスバリア性が良好であることを示す。
【0123】
【表2】
【0124】
【表3】
【0125】
【表4】
【0126】
【表5】
【0127】
【表6】
【0128】
【表7】
【0129】
【表8】
【0130】
表2〜表8の結果から明らかなように、変性共役ジエン系重合体、層状化合物およびブチルゴム類を使用した実施例
10〜26および33〜37、参考例27〜32のゴム組成物は、それぞれ対応する、本発明の範囲外となる比較例4〜9の各ゴム組成物に比して、空気透過率がはるかに低く、即ち、ガスバリア性について極めて優れていた。また、変性共役ジエン系重合体、ブチルゴム類、層状化合物を含むゴムマスターバッチを経て、該ゴムマスターバッチと配合剤を混練した表2、4〜7の各実施例のゴム組成物は、変性共役ジエン系重合体、ブチルゴム類、層状化合物、配合剤を含み、ゴムマスターバッチを経ずに作製された表3の各実施例のゴム組成物に較べて、更にガスバリア性について優れていた。
【0131】
比較例を個別的にみると、比較例4、5、7〜9は、変性共役ジエン系重合体を使用せず(0質量部:0phr)ブチルゴム類単独において、それぞれ層状化合物の各質量部数(5〜60質量部)での評価であり、比較例6は、層状化合物を使用しないブチルゴム類での各評価であり、これらの場合は、表2〜表7において対象となる各実施例に較べて、ガスバリア性がはるかに劣っていた。