(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236070
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ブレーキコントローラおよびエレベータシステム
(51)【国際特許分類】
B66B 1/32 20060101AFI20171113BHJP
B66B 1/30 20060101ALI20171113BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
B66B1/32
B66B1/30 H
B66B11/08 G
【請求項の数】15
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-514544(P2015-514544)
(86)(22)【出願日】2013年5月20日
(65)【公表番号】特表2015-521144(P2015-521144A)
(43)【公表日】2015年7月27日
(86)【国際出願番号】FI2013050541
(87)【国際公開番号】WO2013178872
(87)【国際公開日】20131205
【審査請求日】2016年5月16日
(31)【優先権主張番号】20125596
(32)【優先日】2012年5月31日
(33)【優先権主張国】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】591159044
【氏名又は名称】コネ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】KONE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100079991
【弁理士】
【氏名又は名称】香取 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】カッタイネン、 アリ
(72)【発明者】
【氏名】ラアッシナ、 パシ
(72)【発明者】
【氏名】サアリコスキ、 タピオ
(72)【発明者】
【氏名】ストルト、 ラウリ
(72)【発明者】
【氏名】ナカリ、 アルト
(72)【発明者】
【氏名】カッリオニエミ、 アンッティ
【審査官】
有賀 信
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−292257(JP,A)
【文献】
特表2011−524319(JP,A)
【文献】
特開平11−165963(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/046129(WO,A1)
【文献】
国際公開第2008/139567(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00─ 1/52
B66B 11/00─11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータの電磁ブレーキを制御するブレーキコントローラであって、
前記エレベータの巻上機を駆動する周波数変換器の直流中間回路に前記ブレーキコントローラを接続する入力部と、
該ブレーキコントローラをブレーキの電磁石に接続する出力部と、
前記エレベータの巻上機を駆動する前記周波数変換器の前記直流中間回路から、前記出力部を介してブレーキの前記電磁石に電力を供給するソリッドステート・スイッチと、
該ブレーキコントローラの前記スイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることにより、該ブレーキコントローラの動作を制御するプロセッサとを備え、
該ブレーキコントローラは安全信号の入力回路を有し、該安全信号は該ブレーキコントローラの外側から遮断/接続でき、
該ブレーキコントローラはブレーキスイッチング論理回路を有し、該ブレーキスイッチング論理回路は前記入力回路に接続され、安全信号が遮断された場合に、該ブレーキコントローラの前記スイッチの制御ポールへ制御パルスを通さないように構成され、
前記ブレーキスイッチング論理回路はバイポーラまたは多極性の信号スイッチを含み、該信号スイッチを介して、制御パルスがブレーキコントローラの前記スイッチの制御ポールに伝わり、
前記信号スイッチの少なくとも1極が前記入力回路に接続されて、安全信号が遮断されると、該信号スイッチを経由する制御パルスの信号経路が切断されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキコントローラにおいて、該安全信号を遮断することにより、安全信号の信号経路を通じて行われる電力供給が遮断されるように構成されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のブレーキコントローラにおいて、該ブレーキコントローラは機械接点なしで実現されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項4】
請求項1に記載のブレーキコントローラにおいて、前記ブレーキスイッチング論理回路は、安全信号が接続された場合に、該ブレーキコントローラの前記スイッチの制御ポールへ制御パルスが通るよう構成されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のブレーキコントローラにおいて、該ブレーキコントローラは走行を開始させる信号を生成する表示論理回路を含み、
該表示論理回路は、前記ブレーキスイッチング論理回路の状態データに基づいて、走行を開始させる信号を有効にしたり、遮断したりするよう構成されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のブレーキコントローラにおいて、制御パルスの信号経路は前記ブレーキスイッチング論理回路を介して該ブレーキコントローラの前記スイッチの制御ポールに通じ、
該ブレーキスイッチング論理回路への電力供給は前記安全信号の信号経路を通じて行われることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のブレーキコントローラにおいて、前記プロセッサから前記ブレーキスイッチング論理回路へと通じる前記制御パルスの信号経路がアイソレータを経由するように構成されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項8】
エレベータの電磁ブレーキを制御するブレーキコントローラであって、
該ブレーキコントローラを直流電源に接続する入力部と、
該ブレーキコントローラをブレーキの電磁石に接続する出力部と、
一次回路および二次回路を含む変圧器と、
該変圧器の二次回路と前記ブレーキコントローラの前記出力部との間に接続されるブリッジ整流回路とを備えるブレーキコントローラにおいて、
前記入力部は正電流導体および負電流導体を有し、
該ブレーキコントローラは、
前記正電流導体と負電流導体との間で直列に接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチと、
該ハイサイドスイッチおよび該ローサイドスイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることにより、前記ブレーキの前記電磁石への電力供給を制御するプロセッサと、
前記正電流導体と前記負電流導体との間で直列に接続された2つのコンデンサとを有し、
前記変圧器の前記一次回路は、前記ハイサイドスイッチおよび前記ローサイドスイッチ間の接続点と前記コンデンサ間の接続点との間に接続され、
該ブレーキコントローラは安全信号の入力回路を有し、該安全信号は該ブレーキコントローラの外側から遮断/接続でき、
該ブレーキコントローラはブレーキスイッチング論理回路を有し、該ブレーキスイッチング論理回路は前記入力回路に接続され、安全信号が遮断された場合に、該ブレーキコントローラの前記スイッチの制御ポールへ制御パルスを通さないように構成され、
前記ブレーキスイッチング論理回路はバイポーラまたは多極性の信号スイッチを含み、該信号スイッチを介して、制御パルスがブレーキコントローラの前記スイッチの制御ポールに伝わり、
前記信号スイッチの少なくとも1極が前記入力回路に接続されて、安全信号が遮断されると、該信号スイッチを経由する制御パルスの信号経路が切断されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項9】
請求項8に記載のブレーキコントローラにおいて、該ブレーキコントローラは前記プロセッサによって個々に制御される2つの出力部を有し、該出力部のうちの第1出力部を介して電力が前記エレベータの前記巻上機を駆動する前記周波数変換器の前記直流電源からブレーキの第1電磁石に供給され、第2出力部を介して電力が前記エレベータの前記巻上機を駆動する前記周波数変換器の前記直流電源から第2電磁石に供給されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項10】
請求項9に記載のブレーキコントローラにおいて、該ブレーキコントローラは2つのソリッドステート・スイッチを有し、該ソリッドステート・スイッチのうちの第1スイッチは電力をブレーキの第1電磁石に供給するよう構成され、第2スイッチは電力を該ブレーキの第2電磁石に供給するよう構成され、
前記プロセッサは、前記第1スイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることにより前記第1電磁石への電力供給を制御するよう構成され、
前記プロセッサは、前記第2スイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることにより前記第2電磁石への電力供給を制御するよう構成されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項11】
請求項9または10に記載のブレーキコントローラにおいて、前記プロセッサは通信インターフェースを有し、該インターフェースを介して該プロセッサがエレベータ制御装置に接続され、
該ブレーキコントローラは、該エレベータ制御装置から緩減速による緊急停止の開始を求める緊急停止要求を受信した場合に、前記第1電磁石への電力供給を遮断する一方で、前記周波数変換器の前記直流電源から前記第2電磁石への電力供給を継続させるよう構成されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項12】
請求項11に記載のブレーキコントローラにおいて、該ブレーキコントローラは前記エレベータ制御装置からエレベータ乗りかごの減速度が閾値を下回っていることを示す信号を受信した場合に、前記第1および第2電磁石への電力供給を遮断するように構成されることを特徴とするブレーキコントローラ。
【請求項13】
エレベータの巻上機のブレーキを制御する請求項1ないし12のいずれかに記載のブレーキコントローラを備えることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のエレベータシステムにおいて、該エレベータシステムは、
巻上機と、
エレベータ乗りかごと、
前記巻上機に電力を供給して該エレベータ乗りかごを駆動する周波数変換器と、
エレベータの安全を監視するよう構成されたセンサと、
該センサのデータの入力部を有するエレベータ制御装置とを備え、
該エレベータ制御装置は、前記センサから受け取ったデータがエレベータの安全性が危ういことを示す場合に、緩減速での緊急停止の開始を求める緊急停止要求を生成するよう構成されることを特徴とするエレベータシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のエレベータシステムにおいて、該エレベータシステムは前記エレベータ乗りかごに接続された加速度センサを有し、
前記エレベータ制御装置は該加速度センサの測定データの入力部を有し、
該エレベータ制御装置はエレベータ乗りかごの減速度の閾値を記録した記憶装置を有し、
該エレベータ制御装置は、前記加速度センサの測定データを、前記記憶装置に記録されたエレベータ乗りかごの減速度の閾値と比較するよう構成され、
該エレベータ制御装置は、前記エレベータ乗りかごの減速度が閾値を下回ることを示す信号を生成するよう構成されることを特徴とするエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、エレベータのブレーキのコントローラに関するものである。
【0002】
エレベータシステムにおいて、電磁ブレーキは、とりわけ巻上機の保持ブレーキおよび乗りかごブレーキとして使用され、エレベータ昇降路内の垂直ガイドレールに係合してエレベータ乗りかごの動きを制動する。
【0003】
電磁ブレーキは、ブレーキの電磁石のコイルに電流を供給することで開放状態になり、ブレーキの電磁石のコイルへの電流供給を遮断することで接続状態になる。
【0004】
従来、リレーを使用して電流の供給/電流供給の遮断が行われており、各リレーは電源とブレーキの電磁石のコイルとの間で並列に接続される。
【0005】
リレーの接続で騒音が生じ、騒音が建物の居住者の悩みの種となることもある。また、リレーはサイズも大きいため、とくに機械室を備えていないエレベータシステムでは配置が難しい場合もある。さらに、リレーは機構部品であるため損耗も早く、とくに接点が腐食した場合または溶着した場合に故障することがある。
【0006】
本発明は、より静かで、より狭い空間にも適したブレーキ制御回路を開示することを目的のひとつとする。当該目的は、請求項1および
8に係るブレーキコントローラ、および請求項
13に係るエレベータシステムによって達成できる。
【0007】
また、本発明は、例えば停電などの機能的な不具合に関係した緩減速でのエレベータの緊急停止を可能とする方式を開示することを目的のひとつとする。当該目的は、請求項
9に係るブレーキコントローラ、
および請求項
13に係るエレベータシステ
ムによって達成できる。
【0008】
本発明の好適な実施形態については、従属請求項に記載する。また、いくつかの発明の具体例、および発明の種々の具体例の組み合わせを、本願明細書および図面に示す。
【発明の概要】
【0009】
本発明によるエレベータの電磁ブレーキを制御するブレーキコントローラは、エレベータの巻上機を駆動する周波数変換器の直流中間回路にブレーキコントローラを接続する入力部、ブレーキコントローラをブレーキの電磁石に接続する出力部、エレベータの巻上機を駆動する周波数変換器の直流中間回路から出力部を介してブレーキの電磁石に電力を供給するソリッドステート・スイッチ、およびブレーキコントローラのスイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることによりブレーキコントローラの動作を制御するプロセッサを備える。
【0010】
本発明は、ブレーキコントローラをエレベータの巻上機の周波数変換器の直流中間回路に一体化できる。周波数変換器とブレーキコントローラとの連携はエレベータの巻上機の安全な運転という点で不可欠なことであり、ひいては、エレベータ全体の安全な運転の点においても必要なことであるため、上述の一体化は有益である。また、ブレーキコントローラおよび周波数変換器を小さくできるため、例えば機械室を備えていないエレベータシステムにおいて、スペースの節約が可能となる。さらに、本発明に係るブレーキコントローラは、安全信号によりエレベータの安全機構の一部として接続可能であり、この場合、エレベータの安全機構が簡易になり、さまざまな方法で容易に実現できる。さらに、本発明に係るブレーキスイッチング論理回路と安全信号を組み合わせることで、機械接点なしで、ソリッドステート部品のみでブレーキコントローラを完全に実現できる。接点が不要になることで、接点の作動によって生じる騒音も排除できる。最適には、安全信号の入力回路およびブレーキスイッチング論理回路は、個別半導体部品のみによって、すなわち集積回路を有さずに実現される。この場合、さまざまな障害状況の分析に加えて、例えば外部からの安全信号の入力回路に関連するEMC妨害の分析が容易になり、その結果、ブレーキコントローラを種々のエレベータ安全機構に接続しやすくなる。
【0011】
ブレーキコントローラを周波数変換器の直流中間回路に接続できるため、エレベータモータのモータ制動に関連した直流中間回路に戻るエネルギーをブレーキ制御で活用でき、それにより、エレベータの効率比が向上する。また、ブレーキコントローラの主回路がより簡易になる。その他に、最初に一方のブレーキのみの電磁石への電力供給を遮断し、他方のブレーキの電磁石への電力供給は継続させることで、停電による緊急停止に関連するブレーキの接続を容易にできる。これは、停電時に周波数変換器の直流中間回路の電気エネルギー、とくに直流中間回路のコンデンサに充電された電気エネルギーを利用できるだけでなく、モータの制動が続く限り、停電時にエネルギーが中間回路に戻ることで可能になる。
【0012】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキコントローラは安全信号の入力回路を有し、安全信号はブレーキコントローラの外部から遮断/接続できる。
【0013】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキコントローラはブレーキスイッチング論理回路を有し、ブレーキスイッチング論理回路は入力回路に接続され、安全信号が遮断された場合に、ブレーキコントローラのスイッチの制御ポールへ制御パルスを通さないよう構成される。
【0014】
したがって、機械接点なしで、本発明によるブレーキスイッチング論理回路を使用してブレーキコントローラのスイッチの制御ポールへ制御パルスが通さないようにすることにより、電磁ブレーキの制御コイルへの電力供給を遮断できる。ブレーキコントローラのソリッドステート・スイッチは、例えばMOSFETトランジスタまたは炭化ケイ素(SiC)MOSFETトランジスタでよい。
【0015】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキスイッチング論理回路は、安全信号が接続された場合に、ブレーキコントローラのスイッチの制御ポールへ制御パルスが通るように構成される。
【0016】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキコントローラは、走行を開始させる信号を生成する表示論理回路を含む。表示論理回路は、ブレーキスイッチング論理回路の状態データに基づいて、走行を開始させる信号を有効にしたり、遮断したりするよう構成される。
【0017】
本発明の好適な実施形態において、制御パルスの信号経路は、ブレーキスイッチング論理回路を経由してブレーキコントローラのスイッチの制御ポールに通じ、ブレーキスイッチング論理回路への電力供給は安全信号の信号経路を通じて行われるように構成される。
【0018】
電力を安全信号の信号経路を経由してブレーキスイッチング論理回路に供給するように構成することで、安全信号が遮断されると、ブレーキスイッチング論理回路への電力供給が確実に遮断され、ブレーキコントローラのスイッチの制御ポールへ制御パルスが通ることを確実に停止させることができる。この場合、安全信号を遮断することにより、電磁ブレーキの制御コイルへの電源供給を、独立した機械接点がなく、フェイルセーフ方式で遮断できる。
【0019】
本発明の好適な実施形態において、プロセッサからブレーキスイッチング論理回路へと通じる制御パルスの信号経路がアイソレータを介するよう構成される。ここで、アイソレータとは信号経路に沿った電荷の移動を遮断する要素のことである。したがって、アイソレータでは、信号が例えば電磁放射として伝達されるか(光アイソレータ)、または、磁界もしくは電界を介して伝達される(デジタルアイソレータ)。アイソレータを使用することにより、例えばブレーキ制御回路が短絡した際に、ブレーキ制御回路からブレーキスイッチング論理回路へ電荷担体が通ることを阻止できる。
【0020】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキスイッチング論理回路は、バイポーラまたは多極性の信号スイッチを含み、信号スイッチを介して、制御パルスがブレーキコントローラのスイッチの制御ポールに伝わる。信号スイッチの少なくとも1極が入力回路に接続され、安全信号が遮断されると、信号スイッチを経由する制御パルスの信号経路が切断される。
【0021】
本発明の好適な実施形態において、安全信号を遮断することにより、安全信号の信号経路を通じて行われる電力供給が遮断される。
【0022】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキコントローラは1個の機械接点もなしで実現される。
【0023】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキコントローラはプロセッサによって個々に制御される2つの出力部を含み、出力部のうちの第1出力部を介して電力がエレベータの巻上機を駆動する周波数変換器の直流中間回路からブレーキの第1電磁石に供給され、第2出力部を介して電力がエレベータの巻上機を駆動する周波数変換器の直流中間回路から第2電磁石に供給される。
【0024】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキコントローラは2つの可変スイッチを含み、可変スイッチのうちの第1スイッチは電力をブレーキの第1電磁石に供給するよう構成され、第2スイッチは電力をブレーキの第2電磁石に供給するよう構成される。プロセッサは、第1スイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることにより第1電磁石への電力供給を制御するよう構成され、また、プロセッサは、第2スイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることにより第2電磁石への電力供給を制御するよう構成される。
【0025】
本発明の好適な実施形態において、プロセッサは通信インターフェースを含み、インターフェースを介してプロセッサがエレベータ制御装置に接続される。ブレーキコントローラは、エレベータ制御装置から緩減速による緊急停止の開始を求める緊急停止要求を受信した場合に、第1電磁石への電力供給を遮断する一方で、周波数変換器の直流中間回路から第2電磁石への電力供給を継続させるよう構成される。
【0026】
本発明の好適な実施形態において、ブレーキコントローラは、エレベータ制御装置からエレベータ乗りかごの減速度が閾値を下回っていることを示す信号を受信した場合に、第1電磁石および第2電磁石への電力供給を遮断するように構成される。
【0027】
また、本発明はエレベータの電磁ブレーキを制御するブレーキコントローラに関するものである。ブレーキコントローラは、ブレーキコントローラを直流電源に接続する入力部、ブレーキコントローラをブレーキの電磁石に接続する出力部、一次回路および二次回路を含む変圧器、ならびに変圧器の二次回路とブレーキコントローラの出力部との間に接続されるブリッジ整流回路を備える。入力部は正電流導体および負電流導体を有し、ブレーキコントローラは、正電流導体と負電流導体との間で直列接続されたハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチ、ならびに、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチの制御ポールに制御パルスを発生させることにより、ブレーキの電磁石への電力供給を制御するプロセッサを有する。また、ブレーキコントローラは、正電流導体と負電流導体との間で直列に接続された2つのコンデンサを有する。変圧器の一次回路は、ハイサイドスイッチおよびローサイドスイッチ間の接続点とコンデンサ間の接続点との間に接続される。入力部に接続される上述の直流電圧源は、最適にはエレベータの巻上機を駆動する周波数変換器の直流中間回路である。上述の回路では、コンデンサの電圧によって変圧器の一次回路の電圧が低下し、その結果、変圧器の特別な条件を過度に引き上げることなく、ブレーキコントローラの入力部の正電流導体および負電流導体を周波数変換器の高電圧直流中間回路に接続できる。周波数変換器の直流中間回路の電圧は、好適には約500V〜700Vである。また、本発明の好適な実施形態において、独立したチョークコイルを変圧器の一次回路とハイサイドおよびローサイドスイッチ間の接続点との間に接続させる。チョークコイルは、変圧器の電流リップルを低減させ、電流の調節を容易にする。
【0028】
本発明によるエレベータシステムは、本明細書によるエレベータの巻上機のブレーキを制御するブレーキコントローラを備える。
【0029】
本発明の好適な実施形態において、エレベータシステムは、巻上機、エレベータ乗りかご、巻上機に電力を供給してエレベータ乗りかごを駆動する周波数変換器、エレベータの安全を監視するよう構成されたセンサ、およびエレベータ制御装置を備え、エレベータ制御装置はセンサのデータの入力部を有する。エレベータ制御装置は、センサから受け取ったデータがエレベータの安全性が危ういことを示す場合に、緩減速での緊急停止の開始を求める緊急停止要求を生成するよう構成される。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、エレベータシステムはエレベータ乗りかごに接続された加速度センサを有し、エレベータ制御装置は加速度センサの測定データの入力部を有する。また、エレベータ制御装置はエレベータ乗りかごの減速度の閾値を記録した記憶装置を有し、エレベータ制御装置は、加速度センサの測定データを記憶装置に記録されたエレベータ乗りかごの減速度の閾値と比較し、エレベータ乗りかごの減速度が閾値を下回ることを示す信号を生成するよう構成される。
【0031】
周波数変換器を使用して駆動されるエレベータ巻上機の緊急停止を行う本発明による方法において、ブレーキの電磁石への電力供給を遮断することで巻上機のブレーキの1つが接続され、巻上機の他のブレーキは、周波数変換器の直流中間回路から巻上機の当該他のブレーキの電磁石への電力供給を継続することで、開放状態が維持される。
【0032】
本発明に係る実施形態において、エレベータ乗りかごの緊急停止動作の間の減速度を計測し、エレベータ乗りかごの減速度が設定された閾値を下回ると、設定された時間の経過後に巻上機の少なくともひとつの第2ブレーキも接続させる。
【0033】
上述の発明の概要、ならびに後述する本発明の付加的な特徴および付加的な効果は、以下の種々の実施形態の説明によってより理解できるであろう。ただし、本発明に関する説明は本発明の適用範囲を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態によるエレベータシステムを示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるブレーキ制御回路を示す回路図である。
【
図3】本発明の第2実施形態によるブレーキ制御回路を示す回路図である。
【
図4】
図3によるエレベータの安全構造における安全信号の回路を示す図である。
【
図5】本発明によるブレーキ制御回路を、エレベータの安全回路との接続に適合させる様子を示す回路図である。
【0035】
図1はエレベータシステムをブロック図で示し、エレベータ乗りかご(図示せず)は、エレベータ昇降路(図示せず)内でエレベータの巻上機6を使用してロープ摩擦またはベルト摩擦によって駆動される。エレベータ乗りかごの速度の調整は、エレベータ制御ユニット35が算出するエレベータ乗りかごの速度目標値、すなわち、速度基準値に基づいて行われる。速度基準値は、エレベータの乗客がなすエレベータの呼び出しに基づいて、エレベータ乗りかごを使用して乗客を階床間で輸送可能とする値に設定される。
【0036】
エレベータ乗りかごは、巻上機のトラクションシーブを介して走行するロープまたはベルトによってカウンタウェイトに連結される。公知のさまざまなローピング方式をエレベータシステムに用いることが可能であるが、ここではこれらの方式に関する詳述は省略する。巻上機6はエレベータモータとして電気モータも備え、電気モータを使用してトラクションシーブを回転させてエレベータ乗りかごを駆動し、またその他に、2つの電磁ブレーキ9A、9Bを備えて、電磁ブレーキを使用してトラクションシーブを制動してシーブを定位置に保つ。
【0037】
巻上機の電磁ブレーキ9A、9Bはいずれも、巻上機のフレームに固定されたフレーム部、およびフレーム部に可動支持される電機子部を備える。ブレーキ9A、9Bは推進バネを備え、推進バネはフレーム部に接触し、電機子部を巻上機の回転子の軸上のブレーキ面に押し付けるか、あるいはトラクションシーブなどのブレーキ面に押し付けることで、ブレーキと係合してトラクションシーブを制動する。ブレーキ9A、9Bのフレーム部は電磁石(つまり制御コイル)を備え、電磁石は通電されるとフレーム部と電機子部の間に引力をもたらす。ブレーキは、ブレーキコントローラ7によってブレーキの制御コイルに電流を供給することにより開放され、その際、電磁石の引力によって電機子部がブレーキ面から引き離され、制動力の効果がなくなる。これに対し、ブレーキの制御コイルへの電流供給を遮断することにより、ブレーキがかけられる。ブレーキコントローラ7を使用して、巻上機の電磁ブレーキ9A、9Bの各制御コイル10に別々に電流を供給することにより、電磁ブレーキ9A、9Bを個別に制御する。
【0038】
巻上機6は周波数変換器1を用いて駆動されるものであり、周波数変換器1によって電力を配電網25から巻上機6の電気モータに供給することで駆動される。周波数変換器1は整流器26を備え、整流器を使用して交流網25の電圧を周波数変換器の直流中間回路2A、2B用に整流する。直流中間回路2A、2Bは1つまたは複数の中間回路コンデンサ49を備え、中間回路コンデンサは電気エネルギーの一時貯蔵部として機能する。直流中間回路2A、2Bの直流電圧はさらに、モータブリッジ回路3によって、振幅可変および周波数可変な電気モータの供給電圧に変換される。
【0039】
モータの制動中に、電力を電気モータからモータブリッジ回路3を介して直流中間回路2A、2Bに戻すこともでき、直流中間回路から整流器26によって配電網25に戻すこともできる。また、モータの制動中に直流中間回路2A、2Bに戻る電力は、中間回路コンデンサ49にも貯蔵される。モータの制動中、電気モータ6の力の作用はエレベータ乗りかごの移動方向とは反対向きである。そのため、例えば、カウンタウェイトを備えたエレベータにおいて、無人または積荷の無い状態のエレベータ乗りかごを上方向に運転するとき、または満員または満載状態のエレベータ乗りかごを下方向に運転するとき、モータにブレーキがかかる。
【0040】
図1によるエレベータシステムは機械式の常時閉の安全スイッチ28を備え、安全スイッチはエレベータ昇降路の入り口の位置/ロッキング、およびエレベータ乗りかごの過速度調速機の動作などを監視するように構成される。エレベータ昇降路の入り口の各安全スイッチは、互いが直列に接続される。安全スイッチ28を開くことにより、例えば、エレベータ昇降路の入り口が開放されていること、エレベータ乗りかごの位置が許容運転範囲を定める最大リミット・スイッチに達したこと、過速度調速機が起動したことなど、エレベータシステムの安全にかかわる事態の発生を知らせる。
【0041】
エレベータシステムは電子監視ユニット20を備え、監視ユニットは安全規格EN IEC61508を満たすマイクロプロセッサ制御による専用の安全装置であり、安全度基準のSIL3に準拠した設計がなされている。安全スイッチ28は、電子監視ユニット20に接続される。また、電子監視ユニット20は、通信バス30によって、周波数変換器1、エレベータ制御ユニット35、およびエレベータ乗りかごの制御ユニットに接続され、安全スイッチ28および通信バスから受信するデータに基づいて、エレベータシステムの安全を監視する。電子監視ユニット20が安全信号13を生成し、安全信号に基づいてエレベータの走行が可能になり、一方、エレベータモータ6の電力供給を遮断して機械ブレーキ9A、9Bを作動させて巻上機のトラクションシーブを制動することによりエレベータの走行を抑制できる。したがって、電子監視ユニット20は、例えばエレベータ昇降路の入り口が開いたことを検知した場合、エレベータ乗りかごの位置が許容運転範囲を定める最大リミット・スイッチに達したことを検知した場合、過速度調速機が作動したことを検知した場合などに、エレベータを走行させないようにする。また、電子監視ユニットは、通信バス30を介してパルスエンコーダ27の測定データを周波数変換器1から受け取り、周波数変換器1から受け取ったパルスエンコーダ27の測定データに基づいて、とりわけエレベータ乗りかごの緊急停止に関連する動作を監視する。周波数変換器1には、安全信号13の信号経路に接続される安全論理回路15、16が設けられ、安全論理回路によってエレベータモータの電力供給を遮断し、機械ブレーキ9A、9Bを接続させる。
【0042】
安全論理回路は、駆動防止論理回路15およびブレーキスイッチング論理回路16で構成される。
【0043】
ブレーキスイッチング論理回路16およびブレーキコントローラ7の主系統の回路図を、
図2および
図3に、より詳細に示す。ブレーキ9A、9Bに関連する回路図はいずれも類似しているため、明確さの観点から、
図2および
図3にはブレーキ9A、9Bの一方のみに関する回路図を示している。ただし、ブレーキ9A、9Bはどちらも、
図2および
図3に示すDSPプロセッサ11によって制御される。
【0044】
図2および
図3では、ブレーキコントローラ7は周波数変換器1の直流中間回路2A、2Bに接続され、電磁ブレーキ9A、9Bの制御コイル10への電流供給は直流中間回路2A、2Bから発生する。
【0045】
図2のブレーキコントローラ7は入力部を備え、入力部の正電流導体29Aは周波数変換器の直流中間回路の正母線2Aに接続され、負電流導体29Bは周波数変換器の直流中間回路の負母線2Bに接続される。ブレーキコントローラの出力部はコネクタ4A、4Bを備え、各コネクタにブレーキの制御コイル10の電源ケーブルが接続される。ブレーキコントローラ7は一次回路および二次回路を有する変圧器36と、ブリッジ整流回路37とを備え、ブリッジ整流回路は変圧器の二次回路とブレーキコントローラの出力部4A、4Bとの間に接続される。ハイサイドMOSFETトランジスタ8AおよびローサイドMOSFETトランジスタ8Bは、正電流導体29Aと負電流導体29Bとの間に接続され、各トランジスタは、互いが直列に接続される。さらに、変圧器の電流リップルを低減させるチョークコイル47が、変圧器36の一次回路とハイサイドおよびローサイドMOSFETトランジスタ8A、8B間の接続点22との間に接続される。また、上述の電流導体29A、29B間に、互いが直列に接続されたコンデンサ19A、19Bが設けられている。変圧器36の一次回路およびチョークコイル47は、上述のハイサイドMOSFETトランジスタ8AおよびローサイドMOSFETトランジスタ8B間の接続点22と上述のコンデンサ19A、19B間の接続点24との間に接続される。コンデンサの接続点24の電圧は、周波数変換器の直流中間回路の負母線2Aと正母線2Bの各電圧間の範囲内であり、この種の回路は変圧器36の一次回路および一次回路に直列接続されたチョークコイル47の電圧ストレスを低減させる。これにより、直流中間回路の正母線2Aおよび負母線2B間の電圧をかなり高くでき、約800ボルトまたは瞬間的にはそれ以上にまで上げられるという効果が得られる。いくつかの実施形態では、MOSFETトランジスタ8A、8Bの代わりに炭化ケイ素(SiC)MOSFETトランジスタを、ハイサイドスイッチ8A、ローサイドスイッチ8Bとして使用する。炭化ケイ素(Sic)MOSFETトランジスタは低損失素子であるため、ブレーキコントローラ7の寸法があまり大きくならずに、ブレーキコントローラ7の電流供給能力を向上させることができる。
図2では、MOSFETトランジスタに並列接続された並列接続フライバックダイオードが設けられ、フライバックダイオードはショットキーダイオードであることが最も好ましく、最適には全炭化ケイ素のショットキーダイオードである。
【0046】
ハイサイドMOSFETトランジスタ8AおよびローサイドMOSFETトランジスタ8Bは、DSPプロセッサ11を使用して、好適にはパルス幅変調(PWM)された短パルスをMOSFETトランジスタ8A、8Bのゲートに発生させることにより、交互に接続状態になる。スイッチング周波数は、約100〜150キロヘルツであることが好ましい。このような高スイッチング周波数を用いることで、変圧器36のサイズを最小にできる。変圧器36の二次回路の整流器37を使用して変圧器の二次電圧を整流した後、整流した電圧を電磁ブレーキの制御コイル10に供給する。また、電流減衰回路38が変圧器の二次側で制御コイル10に並列に接続され、電流減衰回路は1つまたは複数の素子(例えば、抵抗器、コンデンサ、バリスタなど)を備え、ブレーキの制御コイル10の電流遮断に関して、ブレーキの制御コイルのインダクタンスに蓄積されているエネルギーを受け取ることで制御コイル10の電流遮断を促進させて、ブレーキ9の起動を早める。ブレーキコントローラの二次回路のMOSFETトランジスタ39を開放することで電流の遮断が促進され、ブレーキのコイル10の電流が整流されて、電流減衰回路38を通って流れるようになる。とくに地絡の観点から、ここで述べる変圧器を用いて実現されるブレーキコントローラは、具体的にはフェイルセーフ構造である。その理由は、変圧器36の一次側のIGBTトランジスタ8A、8Bの変調が停止すると、直流中間回路2A、2Bからブレーキの制御コイル10の両電流導体への電力供給が遮断されるからである。
【0047】
図2のブレーキコントローラ7はブレーキスイッチング論理回路16を備え、ブレーキスイッチング論理回路はDSPプロセッサ11とMOSFETトランジスタ8A、8Bのコントロールゲート8A、8Bとの間の信号経路に取り付けられる。スイッチング論理回路によって、ブレーキの制御コイル10への電流供給を機械的な接触器を用いずに安全に遮断できる。スイッチング論理回路16はデジタル式のアイソレータ21を備え、アイソレータは例えばアナログ・デバイセズ社製のADUM4223なる型式表示を有する装置でよい。デジタルアイソレータ21は、二次側21’における作動電圧を安全リレーの接点14を通じて直流電圧源40から取得し、この場合、接点14が開放すると、デジタルアイソレータ21の出力が変調を停止し、DSPプロセッサ11からMOSFETトランジスタ8A、8Bのコントロールゲートにつながる信号経路が切断される。簡潔にするために、ブレーキスイッチング論理回路16は、
図2ではローサイドMOSFETトランジスタ8Bの電流経路に関連した部分のみを示すが、スイッチング論理回路16の回路図はハイサイドMOSFETトランジスタ8Aの電流経路に関連する部分にも同様である。
【0048】
図3は、ブレーキスイッチング論理回路の別の回路図を示す。ブレーキコントローラ7の主回路は
図2に示す回路と同様である。ただし、デジタルアイソレータ21の代わりにトランジスタ46を使用し、DSPプロセッサ11の出力はトランジスタ46のベースに直接送られる。MELF抵抗器45がトランジスタ46のコレクタに接続される。エレベータの安全規格EN81-20では、故障分析を行う際には、MELF抵抗器が短絡する故障を考慮しなくてもよいとしているので、MELF抵抗器の値を十分に高く設定することにより、安全接点14が開いたときに、ブレーキ制御回路11の出力部からMOSFETトランジスタ8A、8Bのゲートまでの信号経路を安全に阻止できる。また、ブレーキスイッチング論理回路16はPNPトランジスタ23を備え、PNPトランジスタのエミッタは安全信号13の入力回路12に接続される。そのため、電子監視ユニット20の安全リレーの接点14が開くと、直流電圧源40からブレーキスイッチング論理回路16のPNPトランジスタ23のエミッタに供給される電力が遮断される。同時に、ブレーキ制御回路11からブレーキコントローラ7のMOSFETトランジスタ8A、8Bのコントロールゲートまでの制御パルスの信号経路が遮断され、この場合、MOSFETトランジスタ8A、8Bが開放状態になり、直流中間回路2A、2Bからブレーキのコイル10への電力供給が停止する。簡潔にするために、
図3に示すブレーキスイッチング論理回路16の回路図は、図中には直流中間回路の低電圧母線2Bに接続するMOSFETトランジスタ8Bに関連した部分のみを示すが、スイッチング論理回路16の回路図は直流中間回路の高電圧母線2Aに接続するMOSFETトランジスタ8Aに関連する部分も同様である。
図3に示す方式を用いることで、安価で簡易なスイッチング論理回路16を実現できる。
【0049】
直流中間回路2A、2Bからブレーキのコイル10への電力の再供給は安全リレー14の接点を閉じるよう制御することで可能となり、この場合、直流電圧源40からブレーキスイッチング論理回路16のPNPトランジスタ23のエミッタに直流電圧が印加される。
【0050】
上述のとおり、
図1(ならびに
図2および
図3)に示すブレーキコントローラ7は、第1および第2機械ブレーキ9A、9Bの制御コイル10の電流供給用の同様な主回路を、個別に複数備える。第1主回路のMOSFETトランジスタ8A、8Bは第1機械ブレーキ9Aの電磁石10に電力を供給し、第2主回路のMOSFETトランジスタ8A、8Bは第2機械ブレーキ9Aの電磁石10に電力を供給する。いずれの主回路のMOSFETトランジスタ8A、8Bも同一のプロセッサ11で制御され、第1ブレーキ9Aの制御コイル10および第2ブレーキ9Bの各制御コイル10への電流供給は同一のプロセッサ11によってそれぞれ個別に制御できる。プロセッサ11はバス・コントローラを備え、プロセッサ11はバス・コントローラを介して同一のシリアルインターフェース・バスにエレベータ制御ユニット35および電子監視ユニット20(20、35)として接続される。DSPプロセッサ11は、第1機械ブレーキ9Aの制御コイル10への電力供給を遮断する一方で、シリアルインターフェース・バスを経由してエレベータ制御ユニット35から緩減速での緊急停止を開始する緊急停止要求を受けると、周波数変換器の直流中間回路2A、2Bから第2機械ブレーキ9Bの制御コイル10への電力供給を継続させるように構成される。また、DSPプロセッサ11は、シリアルインターフェース・バスを経由してエレベータ制御ユニット35からエレベータ乗りかごの減速度が閾値を下回っていることを示す信号を受信すると、第2機械ブレーキ9Bの制御コイルへの電力供給を遮断するように構成される。エレベータ乗りかごの減速度は、例えば、エレベータ乗りかごに接続された加速度センサで計測してもよいし、あるいは巻上機のトラクションシーブの減速度を巻上機のシャフトに取り付けられたエンコーダで計測することでエレベータ乗りかごの減速度を計測してもよい。
【0051】
すなわち、
図1に示すエレベータシステムは、
図2または
図3に示すブレーキコントローラとともに、エレベータの巻上機6、ひいてはエレベータ乗りかごを例えば停電時に緩減速で制動する緊急制動方法を有効にする。緩減速にすることにより、例えば、巻上機のトラクションシーブとロープとの間の摩擦力が高いタイプのエレベータシステムにおいて効果を奏する。エレベータ乗りかごの減速度がエレベータ乗りかごの乗客の観点から必要以上に増大しそうな場合、緊急停止動作の間にトラクションシーブ上で滑ることができないロープによって高い摩擦力を生じることができる。トラクションシーブとロープの間の高摩擦力は、例えばトラクションシーブおよび/またはロープのコーティングによって得られるものであり、例えばコーティングされたベルトとトラクションシーブとの間の摩擦力は通常高く、また、トラクションシーブに設けられた溝内を走行する歯付きベルトを使用する場合、摩擦力は(絶対的に)高くなる。
【0052】
緊急制動方法において、巻上機の一方のブレーキ9Aは、上述のブレーキの電磁石10への電力供給を遮断することにより接続状態になるが、他方のブレーキ9Bは、周波数変換器の直流中間回路2A、2Bから上述の他方のブレーキ9Bの電磁石10への電力供給を継続させることにより、開放状態に維持される。また、エレベータ乗りかごの緊急停止動作の間に減速度が計測され、エレベータ乗りかごの減速度が設定された閾値を下回ると、一定時間の経過後に第2ブレーキ9Bの電磁石10への電力供給を遮断することで上述の第2ブレーキ9Bも接続される。
【0053】
また、
図1に示す周波数変換器1は表示論理回路17を備え、表示論理回路は、電子監視ユニット20で使用される駆動防止論理回路15およびブレーキスイッチング論理回路16の動作状態に関するデータを生成する。
図4は、上述の電子監視ユニット20および周波数変換器1の各安全機能が共にエレベータの安全回路に接続される様子を示す。
図4によると、安全信号13は、周波数変換器1の直流電圧源40から電子監視ユニット20の安全リレーの接点14を経由して周波数変換器1に戻され、安全信号の入力回路12に送られる。入力回路12は、各ダイオード41を介して、駆動防止論理回路15およびブレーキスイッチング論理回路16に接続される。ダイオード41は、例えば短絡などの障害が駆動防止論理回路15またはブレーキスイッチング論理回路16に生じた場合に、駆動防止論理回路15からブレーキスイッチング論理回路16への電圧供給および/またはブレーキスイッチング論理回路16から駆動防止論理回路15への電圧供給を防止するためのものである。
【0054】
図1に示す周波数変換器は表示論理回路を備え、表示論理回路は、電子監視ユニット20で使用される駆動防止論理回路15およびブレーキスイッチング論理回路16の動作状態を示すデータを生成する。表示論理回路17は、AND論理回路として構成され、当該回路の入力は反転される。走行を開始させる信号が表示論理回路の出力として得られ、この信号は、駆動防止論理回路15およびブレーキスイッチング論理回路16が動作可能な状態であり、次の走行が可能であることを知らせる。走行を開始させる信号18を有効にするには、安全リレーの接点14を開いて、電子監視ユニット20によって安全信号13を遮断するが、この場合、駆動防止論理回路15およびブレーキスイッチング論理回路16の電力供給をゼロにしなければならない。表示論理回路は、
図4に示す。
【0055】
図5は、本発明に係る一実施形態を示し、この実施形態では周波数変換器1の安全論理回路が従来の安全回路34を備えるエレベータに取り付けられる。安全回路34は、例えばエレベータ昇降路への入り口のドアの安全スイッチなど、複数の安全スイッチ28から構成されるものであり、各スイッチが直列に接続される。安全リレー44のコイルは、安全回路34と直列に接続される。安全回路34の安全スイッチ28が開いてコイルへの電流供給が停止すると、安全回路44の接点が開く。そのため、例えば、保守員が保守用の鍵を使ってエレベータ昇降路の入り口のドアを開くと、安全リレー44の接点が開く。安全リレー44の接点は、周波数変換器1の直流電圧源40からブレーキスイッチング論理回路16まで配線され、安全リレー44の接点が開くと、ブレーキスイッチング論理回路への電力供給が停止するようにされている。その結果、安全スイッチ28が開くと、ブレーキコントローラ7のIGBTトランジスタ8A、8Bへの制御パルスが通らなくなり、巻上機のブレーキ9が作動して、巻上機のトラクションシーブを制動する。
【0056】
当業者には明白なことであるが、上述の態様とは異なり、電子監視ユニット20を、好適にはブレーキスイッチング論理回路16と同じ回路カード上で、ブレーキコントローラ7に組み込んでもよい。この場合、電子監視ユニット20およびブレーキスイッチング論理回路16は、互いにはっきりと区別できるサブアセンブリを形成するため、本発明によるフェイルセーフ装置の構造は壊れない。
【0057】
また、当業者には明白なことであるが、上述のブレーキコントローラ7は、エレベータの巻上機の機械ブレーキ9A、9Bの他に、機械接点なしに、乗りかごのブレーキを制御することにも適している。
【0058】
上述のとおり、本発明について実施形態をいくつか参照して述べた。当業者には明白なことであるが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に規定する発明の概念の範囲内であれば他のさまざまな用途に適用可能である。