特許第6236073号(P6236073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236073
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、および、制御装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20171113BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20171113BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20171113BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01N21/956 B
   B41J2/01 451
   B41J2/01 201
   H05K3/10 D
   G06T1/00 310A
   G06T1/00 305A
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-516867(P2015-516867)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2013063837
(87)【国際公開番号】WO2014184960
(87)【国際公開日】20141120
【審査請求日】2016年4月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】富士機械製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】特許業務法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雅登
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
(72)【発明者】
【氏名】杉山 和裕
(72)【発明者】
【氏名】川尻 明宏
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
(72)【発明者】
【氏名】橋本 良崇
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭61−239105(JP,A)
【文献】 特開2010−192733(JP,A)
【文献】 特開2012−104728(JP,A)
【文献】 特開2010−204408(JP,A)
【文献】 特開2008−264608(JP,A)
【文献】 特開平10−86322(JP,A)
【文献】 特開平6−27031(JP,A)
【文献】 米国特許第5555316(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
H05K 3/10− 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体に目標形状となるように流体を吐出する流体吐出装置による印刷精度を検査する検査装置において、
当該検査装置が、
前記流体吐出装置によって流体が吐出された印刷媒体を撮像する撮像部と、
前記撮像部により撮像された画像の画像データに基づいて、印刷媒体の予め設定された設定領域のうちの流体が吐出されていない箇所の面積を演算する演算部と、
前記演算部により演算された面積と予め設定された閾面積との比較により、前記流体吐出装置による印刷精度の良否を判定する判定部と
を備え
前記設定領域として、少なくとも前記目標形状全体を含む第1の領域と、少なくとも前記目標形状全体を除いた第2の領域と、前記目標形状内に納まる第3の領域と、が設定されており、
前記判定部は、
前記第1の領域を前記設定領域として前記演算部により演算された面積が第1の前記閾面積以下であり、前記第2の領域を前記設定領域として前記演算部により演算された面積が第2の前記閾面積以上であり、前記第3の領域を前記設定領域として前記演算部により演算された面積が第3の前記閾面積以下である際に、前記流体吐出装置による印刷精度が良好であると判定することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
印刷媒体に目標形状となるように流体を吐出する流体吐出装置の作動を制御する制御装置において、
当該制御装置が、
請求項1に記載の検査装置の判定部による判定結果に基づいて、前記流体吐出装置の作動条件を調整する作動条件調整部を備えることを特徴とする制御装置。
【請求項3】
印刷媒体に目標形状となるように流体を吐出する流体吐出装置による印刷精度を検査する検査方法において、
当該検査方法が、
前記流体吐出装置によって流体が吐出された印刷媒体を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程において撮像された画像の画像データに基づいて、印刷媒体の予め設定された設定領域のうちの流体が吐出されていない箇所の面積を演算する演算工程と、
前記演算工程において演算された面積と予め設定された閾面積との比較により、前記流体吐出装置による印刷精度の良否を判定する判定工程と
を含み、
前記設定領域として、少なくとも前記目標形状全体を含む第1の領域と、少なくとも前記目標形状全体を除いた第2の領域と、前記目標形状内に納まる第3の領域と、が設定されており、
前記判定工程は、
前記第1の領域を前記設定領域として前記演算工程において演算された面積が第1の前記閾面積以下であり、前記第2の領域を前記設定領域として前記演算工程において演算された面積が第2の前記閾面積以上であり、前記第3の領域を前記設定領域として前記演算工程において演算された面積が第3の前記閾面積以下である際に、前記流体吐出装置による印刷精度が良好であると判定することを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷媒体に目標形状となるように流体を吐出する流体吐出装置による印刷精度を検査する検査装置、検査方法、および、流体吐出装置の作動を制御する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板等の印刷媒体への印刷作業時には、流体吐出装置によって印刷媒体上に流体を吐出することで、回路パターン等が印刷される。この際、回路パターン等の形状が目標の形状となるように、流体吐出装置の作動が制御されるが、流体の吐出位置,吐出量等の印刷条件により、回路パターン等の形状が目標の形状とならない場合がある。このようなことに鑑みて、印刷媒体に印刷された回路パターン等の形状が目標形状となっているか否かの検査、つまり、流体吐出装置による印刷精度の検査が行われる。下記特許文献には、流体吐出装置による印刷精度の検査を行うための検査装置および検査方法の一例が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2005−297438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載の技術によれば、流体吐出装置による印刷精度の検査を行うことは可能である。しかしながら、種々の手法により、印刷精度の検査を行うことで、印刷精度の検査装置等の実用性が向上すると考えられる。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、実用性の高い検査装置等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の検査装置は、印刷媒体に目標形状となるように流体を吐出する流体吐出装置による印刷精度を検査する検査装置であって、前記流体吐出装置によって流体が吐出された印刷媒体を撮像する撮像部と、前記撮像部により撮像された画像の画像データに基づいて、印刷媒体の予め設定された設定領域のうちの流体が吐出されていない箇所の面積を演算する演算部と、前記演算部により演算された面積と予め設定された閾面積との比較により、前記流体吐出装置による印刷精度の良否を判定する判定部とを備え、前記設定領域として、少なくとも前記目標形状全体を含む第1の領域と、少なくとも前記目標形状全体を除いた第2の領域と、前記目標形状内に納まる第3の領域と、が設定されており、前記判定部は、前記第1の領域を前記設定領域として前記演算部により演算された面積が第1の前記閾面積以下であり、前記第2の領域を前記設定領域として前記演算部により演算された面積が第2の前記閾面積以上であり、前記第3の領域を前記設定領域として前記演算部により演算された面積が第3の前記閾面積以下である際に、前記流体吐出装置による印刷精度が良好であると判定することを特徴とする。
【0006】
【0007】
【0008】
また、請求項2に記載の制御装置は、印刷媒体に目標形状となるように流体を吐出する流体吐出装置の作動を制御する制御装置であって、請求項1に記載の検査装置の判定部による判定結果に基づいて、前記流体吐出装置の作動条件を調整する作動条件調整部を備えることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の検査方法は、印刷媒体に目標形状となるように流体を吐出する流体吐出装置による印刷精度を検査する検査方法であって、前記流体吐出装置によって流体が吐出された印刷媒体を撮像する撮像工程と、前記撮像工程において撮像された画像の画像データに基づいて、印刷媒体の予め設定された設定領域のうちの流体が吐出されていない箇所の面積を演算する演算工程と、前記演算工程において演算された面積と予め設定された閾面積との比較により、前記流体吐出装置による印刷精度の良否を判定する判定工程とを含み、前記設定領域として、少なくとも前記目標形状全体を含む第1の領域と、少なくとも前記目標形状全体を除いた第2の領域と、前記目標形状内に納まる第3の領域と、が設定されており、前記判定工程は、前記第1の領域を前記設定領域として前記演算工程において演算された面積が第1の前記閾面積以下であり、前記第2の領域を前記設定領域として前記演算工程において演算された面積が第2の前記閾面積以上であり、前記第3の領域を前記設定領域として前記演算工程において演算された面積が第3の前記閾面積以下である際に、前記流体吐出装置による印刷精度が良好であると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の検査装置および、請求項3に記載の検査方法では、流体が吐出された印刷媒体の画像データに基づいて、印刷媒体の予め設定された設定領域のうちの流体が吐出されていない箇所の面積が演算される。そして、演算された面積と予め設定された閾面積との比較により、流体吐出装置による印刷精度の良否が判定される。印刷媒体に吐出された流体の形状が、目標形状となっている場合には、設定領域のうちの流体が吐出されていない箇所の面積は、所定の面積となる。つまり、その所定の面積に基づいて閾面積を設定し、閾面積と、画像データに基づいて演算された面積とを比較することで、印刷媒体に吐出された流体の形状が、目標形状と近似しているか否かを判定することが可能である。このように、請求項1に記載の検査装置および、請求項3に記載の検査方法によれば、簡易な手法により、流体吐出装置による印刷精度の良否を判定することが可能となる。
【0011】
【0012】
また、請求項1に記載の検査装置および、請求項3に記載の検査方法では、目標形状全体を含む第1の領域が、設定領域として設定されている場合には、画像データに基づいて演算された面積が第1の閾面積以下である際に、流体吐出装置による印刷精度が良好であると判定される。第1の閾面積を、第1の領域のうちの目標形状を除いた箇所の面積程度に設定すれば、画像データに基づいて演算された面積が、第1の閾面積より大きい場合には、印刷媒体に吐出された流体の占有面積が、目標形状の占有面積より小さいと考えられ、印刷精度が低いと想定される。つまり、画像データに基づいて演算された面積が第1の閾面積以下である際には、印刷媒体に吐出された流体の占有面積は、目標形状の占有面積程度となっており、印刷精度は高いと想定される。これにより、流体吐出装置による印刷精度を適切に判定することが可能となる。
【0013】
また、請求項1に記載の検査装置および、請求項3に記載の検査方法では、少なくとも前記目標形状全体を除いた第2の領域が、設定領域として設定されている場合には、画像データに基づいて演算された面積が第2の閾面積以上である際に、流体吐出装置による印刷精度が良好であると判定される。第2の閾面積を、第2の領域の面積程度に設定すれば、画像データに基づいて演算された面積が、第2の閾面積より小さい場合には、印刷媒体に吐出された流体が、第2の領域にはみ出していると考えられ、流体の印刷位置が、目標位置から大きくズレていると想定される。つまり、画像データに基づいて演算された面積が第2の閾面積以上である際には、印刷媒体に吐出された流体が、第2の領域にはみ出しておらず、印刷精度は高いと想定される。これにより、流体吐出装置による印刷精度を適切に判定することが可能となる。
【0014】
また、請求項1に記載の検査装置および、請求項3に記載の検査方法では、目標形状内に納まる第3の領域が、設定領域として設定されている場合には、画像データに基づいて演算された面積が第3の閾面積以下である際に、流体吐出装置による印刷精度が良好であると判定される。第3の閾面積を、0程度に設定すれば、画像データに基づいて演算された面積が、第3の閾面積より大きい場合には、第3の領域全体が、印刷媒体に吐出された流体によって覆われていないと考えられ、印刷媒体に吐出された流体間に隙間が存在すると想定される。つまり、画像データに基づいて演算された面積が第3の閾面積以下である際には、印刷媒体に吐出された流体間に隙間が存在せず、印刷精度は高いと想定される。これにより、流体吐出装置による印刷精度を適切に判定することが可能となる。
【0015】
また、請求項2に記載の制御装置は、流体吐出装置の作動を制御する制御装置であって、上述した検査装置による判定結果に基づいて、流体吐出装置の作動条件が調整される。つまり、流体吐出装置による印刷精度が低いと判定された場合には、流体吐出装置の作動条件、つまり、流体の吐出位置,吐出量,吐出ピッチ等の吐出条件が自動で調整される。これにより、作業者に負担をかけることなく、適切に印刷条件を調整し、高い印刷精度を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例である検査装置および制御装置を備える印刷装置を示す図である。
図2】印刷装置が備える制御装置を示すブロック図である。
図3】回路パターンが印刷された回路基板を示す図である。
図4】回路パターンが印刷された回路基板での第1の領域を示す図である。
図5】回路パターンが印刷された回路基板での第2の領域を示す図である。
図6】回路パターンが印刷された回路基板での第3の領域を示す図である。
図7】回路パターンが印刷された回路基板を示す図である。
図8】回路パターンが印刷された回路基板での第1の領域を示す図である。
図9】回路パターンが印刷された回路基板での第2の領域を示す図である。
図10】回路パターンが印刷された回路基板での第3の領域を示す図である。
図11】回路パターンが印刷された回路基板を示す図である。
図12】回路パターンが印刷された回路基板での第1の領域を示す図である。
図13】回路パターンが印刷された回路基板での第2の領域を示す図である。
図14】回路パターンが印刷された回路基板での第3の領域を示す図である。
図15】回路パターンが印刷された回路基板を示す図である。
図16】回路パターンが印刷された回路基板での第1の領域を示す図である。
図17】回路パターンが印刷された回路基板での第2の領域を示す図である。
図18】回路パターンが印刷された回路基板での第3の領域を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0018】
<印刷装置の構成>
図1に、本発明の実施例の印刷装置10を示す。印刷装置10は、回路基板上に回路パターンを印刷するための装置である。印刷装置10は、搬送装置20と、ヘッド移動装置22と、インクジェットヘッド24とを備えている。
【0019】
搬送装置20は、X軸方向に延びる1対のコンベアベルト30と、コンベアベルト30を周回させる電磁モータ(図2参照)32とを有している。回路基板34は、それら1対のコンベアベルト30によって支持され、電磁モータ32の駆動により、X軸方向に搬送される。また、搬送装置20は、基板保持装置(図2参照)36を有している。基板保持装置36は、コンベアベルト30によって支持された回路基板34を、所定の位置(図1での回路基板34が図示されている位置)において固定的に保持する。
【0020】
ヘッド移動装置22は、X軸方向スライド機構50とY軸方向スライド機構52とによって構成されている。X軸方向スライド機構50は、X軸方向に移動可能にベース54上に設けられたX軸スライダ56を有している。そのX軸スライダ56は、電磁モータ(図2参照)58の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸方向スライド機構52は、Y軸方向に移動可能にX軸スライダ56の側面に設けられたY軸スライダ60を有している。そのY軸スライダ60は、電磁モータ(図2参照)62の駆動により、Y軸方向の任意の位置に移動する。そのY軸スライダ60には、インクジェットヘッド24が取り付けられている。このような構造により、インクジェットヘッド24は、ヘッド移動装置22によってベース54上の任意の位置に移動する。
【0021】
インクジェットヘッド24は、導電性インク、具体的には、銀ナノ粒子ペーストを吐出し、回路基板34上に回路パターンを印刷する。詳しくは、インクジェットヘッド24の下面には、複数のノズル穴(図示省略)が形成されている。そして、電気信号に従って、圧電素子(図2参照)66や熱による蒸気泡を駆動源として、銀ナノ粒子ペーストがインクジェットヘッド24の複数のノズル穴から吐出される。これにより、回路基板34上に回路パターンが印刷される。
【0022】
また、印刷装置10は、検査カメラ(図2参照)68を備えている。検査カメラ68は、下方を向いた状態でY軸スライダ60の下面に固定されている。これにより、Y軸スライダ60が、ヘッド移動装置22によって移動させられることで、回路基板34上の任意の位置を撮像することが可能である。
【0023】
また、印刷装置10は、図2に示すように、制御装置70を備えている。制御装置70は、コントローラ72と、複数の駆動回路74とを備えている。複数の駆動回路74は、上記電磁モータ32,58,62、基板保持装置36、圧電素子66に接続されている。コントローラ72は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路74に接続されている。これにより、搬送装置20、ヘッド移動装置22、インクジェットヘッド24の作動が、コントローラ72によって制御される。また、コントローラ72は、画像処理装置76に接続されている。画像処理装置76は、検査カメラ68によって得られた画像データを処理するものであり、コントローラ72は、検査カメラ68によって得られた画像データから各種情報を取得する。
【0024】
<印刷装置による回路パターンの形成>
印刷装置10では、上述した構成によって、インクジェットヘッド24が搬送装置20に保持された回路基板34に銀ナノ粒子ペーストを吐出することで、回路基板34に回路パターンが形成される。具体的には、コントローラ72の指令により、回路基板34が作業位置まで搬送され、その位置において、回路基板34が、基板保持装置36によって固定的に保持される。そして、インクジェットヘッド24が、コントローラ72の指令により、回路基板34の所定の位置の上方に移動する。続いて、インクジェットヘッド24は、コントローラ72の指令により、回路基板34の上面に銀ナノ粒子ペーストを吐出し、回路パターンが印刷される。
【0025】
<回路パターンの印刷精度の検査>
印刷装置10では、上述したように、インクジェットヘッド24の下面に形成された複数のノズル穴から銀ナノ粒子ペーストを吐出することで、回路パターンが印刷される。このため、図3に示すように、回路パターン80は、複数のドット状に吐出された銀ナノ粒子ペースト82によって、回路基板34上に形成される。このようにして形成された回路パターン80では、ドット状の銀ナノ粒子ペースト82の径、つまり、銀ナノ粒子ペースト82の吐出量等によって、銀ナノ粒子ペースト82と銀ナノ粒子ペースト82との間に隙間が生じる場合がある。このような場合には、電極間に形成される回路パターンが断線するため、好ましくない。また、銀ナノ粒子ペースト82が適切な位置に吐出されない場合等には、回路パターン80の長さが目標とする長さとならずに、電極と電極とを接続できない虞がある。
【0026】
このようなことに鑑みて、印刷装置10では、目標となる形状に回路パターンが印刷されているか否かが、検査カメラ68の撮像により得られる画像データに基づいて判定される。具体的には、コントローラ72の指令により、ヘッド移動装置22の作動が制御され、検査カメラ68が、回路基板34に印刷された回路パターン80の上方に移動させられ、回路基板34の所定の領域が、検査カメラ68によって撮像される。この所定の領域は、図4に示すように、回路パターン80の目標となる目標形状86および、目標形状86の周辺部を囲う第1の矩形88の内部の領域(以下、「第1の領域」と記載する場合がある)である。なお、検査カメラ68による所定の領域の撮像は、検査カメラ68の撮像範囲が所定の領域に限定されることで、実行される。
【0027】
第1の領域が撮像されると、その画像データが画像処理装置76によって処理される。そして、その画像データに基づいて、第1の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第1の矩形88と回路パターン80の外縁との間の面積が、コントローラ72によって演算される。詳しくは、画像データに基づいて、回路パターン80の外縁が認識され、その回路パターン80の外縁の内部の面積、つまり、回路パターン80の占有面積が演算される。一方、第1の領域の面積は、コントローラ72に記憶されている。そして、第1の領域の面積から回路パターン80の占有面積が減算されることで、第1の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積(以下、「第1の演算面積」と記載する場合がある)が演算される。
【0028】
第1の演算面積が演算されると、その第1の演算面積が、第1の領域に対応して設定されている第1の閾面積以下であるか否かが、判定される。第1の閾面積は、第1の領域のうちの目標形状86を除いた箇所の面積、つまり、第1の矩形88と目標形状86の外縁との間の面積程度に設定されている。このため、第1の演算面積が、第1の閾面積より大きい場合には、回路パターン80の占有面積が、目標形状86の占有面積より小さいと考えられる。つまり、回路パターン80の長さが、目標形状86の長さに満たないと想定される。したがって、第1の演算面積が、第1の閾面積より大きい場合には、回路パターン80の長さが目標とする長さとならずに、電極と電極とを接続できない虞があるため、印刷精度が低いと判定される。ちなみに、図4に示す回路パターン80では、第1の演算面積は第1の閾面積以下であり、回路パターン80の長さは目標形状86の長さ以上であると判定される。
【0029】
また、印刷装置10では、第1の領域と異なる領域に対しても、第1の領域と同様に、回路パターン80の印刷の良否が判定される。第1の領域と異なる領域としては、図5に示すように、第2の矩形90と第1の矩形88との間の領域(以下、「第2の領域」と記載する場合がある)が設定されている。つまり、第2の領域は、目標形状86および、目標形状86の周辺部を含まない領域とされており、その領域が検査カメラ68によって撮像される。
【0030】
そして、その画像データに基づいて、第2の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積が、コントローラ72によって演算される。詳しくは、画像データに基づいて、第2の領域内での回路パターン80の外縁が認識され、第2の領域での回路パターン80の占有面積が演算される。なお、第2の領域内で回路パターン80の外縁が認識されない場合には、回路パターン80が、第2の領域に存在しないと判定され、第2の領域での回路パターン80の占有面積は、0となる。一方、第2の領域の面積は、コントローラ72に記憶されている。そして、第2の領域の面積から第2の領域での回路パターン80の占有面積が減算されることで、第2の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積(以下、「第2の演算面積」と記載する場合がある)が演算される。
【0031】
第2の演算面積が演算されると、その第2の演算面積が、第2の領域に対応して設定されている第2の閾面積以上であるか否かが、判定される。第2の閾面積は、第2の領域の面積程度に設定されている。このため、第2の演算面積が、第2の閾面積より小さい場合には、回路パターン80が、第2の領域にはみ出していると考えられる。つまり、回路パターン80が、目標形状86から大きくズレて印刷されていると想定される。したがって、第2の演算面積が、第2の閾面積より小さい場合には、回路パターン80が、目標とする箇所に印刷されておらず、印刷精度が低いと判定される。ちなみに、図5に示す回路パターン80では、回路パターン80は第2の領域にはみ出しておらず、第2の演算面積は第2の閾面積以上である。
【0032】
さらに、印刷装置10では、もう1つ別の領域に対しても、第1の領域および、第2の領域と同様に、回路パターン80の印刷の良否が判定される。もう1つ別の領域は、図6に示すように、目標形状86内に設定された第3の矩形92の内部の領域(以下、「第3の領域」と記載する場合がある)であり、目標形状86内に納まっている。そして、その第3の領域が検査カメラ68によって撮像され、画像データに基づいて、第3の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積が、コントローラ72によって演算される。詳しくは、画像データに基づいて、第3の領域内での回路パターン80の外縁が認識され、第3の領域での回路パターン80の占有面積が演算される。なお、第3の領域内で回路パターン80の外縁が認識されない場合には、第3の領域が回路パターン80によって覆われていると判定され、第3の領域での回路パターン80の占有面積は、第3の領域の面積となる。ちなみに、第3の領域の面積は、コントローラ72に記憶されている。そして、第3の領域の面積から第3の領域での回路パターン80の占有面積が減算されることで、第3の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積(以下、「第3の演算面積」と記載する場合がある)が演算される。
【0033】
第3の演算面積が演算されると、その第3の演算面積が、第3の領域に対応して設定されている第3の閾面積以上であるか否かが、判定される。第3の閾面積は、0に設定されている。このため、第3の演算面積が、第3の閾面積より大きい場合には、第3の領域全体が、回路パターン80によって覆われていないと考えられる。つまり、回路パターン80を形成する複数の銀ナノ粒子ペースト82の間に隙間が存在すると想定される。したがって、第3の演算面積が、第3の閾面積より大きい場合には、複数の銀ナノ粒子ペースト82の間に存在する隙間により、回路パターン80が断線している虞があるため、印刷精度が低いと判定される。ちなみに、図6に示す回路パターン80では、第3の演算面積は第3の閾面積以下であり、複数の銀ナノ粒子ペースト82の間に隙間は存在しないと判定される。
【0034】
このように、第1の領域,第2の領域および、第3の領域の全ての領域に対して、上記判定を行うことで、回路パターン80の長さ、回路パターン80の印刷位置、回路パターン80の断線等を検査することが可能となり、適切な回路パターン80の印刷を担保することが可能となる。
【0035】
なお、コントローラ72は、検査カメラ68によって、回路パターン80が印刷された回路基板34を撮像するための機能部として、撮像部(図2参照)100を有しており、その撮像部100によって処理される工程が撮像工程である。また、コントローラ72は、画像データに基づいて、第1〜第3の演算面積を演算するための機能部として、演算部(図2参照)102を有しており、その演算部102によって処理される工程が演算工程である。さらに、コントローラ72は、第1〜第3の演算面積と第1〜第3の閾面積との比較により、印刷精度を判定するための機能部として、判定部(図2参照)104を有しており、その判定部104によって処理される工程が判定工程である。
【0036】
<回路パターンの印刷条件の調整>
また、印刷装置10では、上記判定により、回路パターンの印刷精度が低いと判定された場合には、印刷条件が自動で調整される。具体的に、例えば、図7に示す形状の回路パターン110に対して、上記判定が行われる場合について説明する。回路パターン110では、図8に示すように、第1の矩形88の内部の領域、つまり、第1の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第1の演算面積が、比較的小さく、第1の閾面積より小さい。このため、回路パターン110の長さが、目標形状86の長さより短いと想定され、印刷精度が低いと判定される。
【0037】
また、回路パターン110は、図9に示すように、第1の矩形88と第2の矩形90との間の領域、つまり、第2の領域にはみ出していない。このため、第2の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第2の演算面積は、第2の領域の面積となり、第2の閾面積以上となる。これにより、回路パターン110の印刷位置と目標形状86の印刷位置とのズレは、問題ないと判定される。
【0038】
また、回路パターン110では、図10に示すように、第3の矩形92の内部領域、つまり、第3の領域において、回路パターン80の両端に、隙間が存在しており、第3の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第3の演算面積は、第3の閾面積より大きい。このため、回路パターン110が断線していると想定され、印刷精度が低いと判定される。
【0039】
このように、回路パターン110では、第1の領域および、第3の領域での判定において、印刷精度が低いと判定され、回路パターン110の長さが、目標形状86の長さより短いと想定されるとともに、回路パターン110が断線していると想定される。このため、コントローラ72では、銀ナノ粒子ペースト82間の距離が長くなるように、インクジェットヘッド24による銀ナノ粒子ペースト82の吐出ピッチが調整される。これにより、回路パターン110の長さが適切化され、印刷精度を向上させることが可能となる。さらに、コントローラ72では、銀ナノ粒子ペースト82の径が大きくなるように、インクジェットヘッド24による銀ナノ粒子ペースト82の吐出量が調整される。これにより、第3の領域を回路パターン110で覆うことが可能となり、印刷精度を向上させることが可能となる。
【0040】
また、例えば、図11に示す形状の回路パターン112では、図12に示すように、第1の矩形88の内部の領域、つまり、第1の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第1の演算面積は、比較的大きく、第1の閾面積以上である。このため、回路パターン112の長さは、目標形状86の長さ程度であると想定される。
【0041】
また、回路パターン112は、図13に示すように、第1の矩形88と第2の矩形90との間の領域、つまり、第2の領域にはみ出していない。このため、第2の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第2の演算面積は、第2の領域の面積となり、第2の閾面積以上となる。これにより、回路パターン112の印刷位置と目標形状86の印刷位置とのズレは、問題ないと判定される。
【0042】
また、回路パターン112では、図14に示すように、第3の矩形92の内部領域、つまり、第3の領域において、銀ナノ粒子ペースト82の間に隙間が存在しており、第3の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第3の演算面積は、第3の閾面積より大きい。このため、回路パターン112が断線していると想定され、印刷精度が低いと判定される。
【0043】
このように、回路パターン112では、第3の領域での判定において、印刷精度が低いと判定され、回路パターン112が断線していると想定される。このため、コントローラ72では、銀ナノ粒子ペースト82の径が大きくなるように、インクジェットヘッド24による銀ナノ粒子ペースト82の吐出量が調整される。これにより、第3の領域を回路パターン112で覆うことが可能となり、印刷精度を向上させることが可能となる。
【0044】
また、例えば、図15に示す形状の回路パターン114では、図16に示すように、第1の矩形88の内部の領域、つまり、第1の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第1の演算面積は、比較的大きく、第1の閾面積以上である。このため、回路パターン114の長さは、目標形状86の長さ程度であると想定される。
【0045】
また、回路パターン114は、図17に示すように、第1の矩形88と第2の矩形90との間の領域、つまり、第2の領域にはみ出している。このため、第2の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第2の演算面積は、第2の閾面積より小さい。これにより、回路パターン114は、目標とする箇所に印刷されておらず、印刷精度が低いと判定される。
【0046】
また、回路パターン114では、図18に示すように、第3の矩形92の内部領域、つまり、第3の領域は、銀ナノ粒子ペースト82によって覆われており、第3の領域のうちの銀ナノ粒子ペースト82が吐出されていない箇所の面積、つまり、第3の演算面積は、0であり、第3の閾面積以下である。このため、回路パターン114は断線していないと想定される。
【0047】
このように、回路パターン114では、第2の領域での判定において、印刷精度が低いと判定され、回路パターン114が、目標とする箇所に印刷されていないと想定される。このため、コントローラ72では、ヘッド移動装置22の作動が調整され、インクジェットヘッド24による銀ナノ粒子ペースト82の吐出位置が調整される。これにより、回路パターン114を目標とする箇所に印刷することが可能となり、印刷精度を向上させることが可能となる。
【0048】
このように、印刷装置10では、印刷精度が低いと判定された領域に応じて、回路パターン80の印刷条件が自動で調整されている。これにより、作業者に負担をかけることなく、適切に印刷条件を調整し、高い印刷精度を維持することが可能となる。なお、印刷精度が低いと判定された領域に応じて、回路パターン80の印刷条件を自動で調整するための機能部として、コントローラ72は作動条件調整部(図2参照)106を有している。
【0049】
また、印刷装置10では、上記判定が任意の時間毎に実行されている。これにより、印刷精度のチェックおよび、印刷条件の調整が定期的に行われることで、印刷品質を好適に担保することが可能となる。
【0050】
ちなみに、上記実施例において、ヘッド移動装置22とインクジェットヘッド24とによって構成されるものは、流体吐出装置の一例である。回路基板34は、印刷媒体の一例である。制御装置70は、検査装置および制御装置の一例である。撮像部100は、撮像部の一例である。演算部102は、演算部の一例である。判定部104は、判定部の一例である。作動条件調整部106は、作動条件調整部の一例である。
【0051】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例において、検査カメラ68による所定の領域の画像データは、検査カメラ68の撮像範囲が所定の領域に限定されることで、取得されるが、検査カメラ68によって得られた画像データを処理することで、所定の領域の画像データを取得することが可能である。詳しくは、検査カメラ68によって、所定の領域を含む領域を撮像し、その撮像により得られた画像データから、所定の領域の画像データを抽出することが可能である。
【0052】
また、上記実施例では、印刷媒体として、回路基板34が採用されているが、リードフレーム,樹脂製の部材,紙等の種々の媒体を採用することが可能である。また、印刷媒体に吐出される流体として、銀ナノ粒子ペースト82等の導電性インクに限られず、接着剤,クリーム半田,樹脂インク等の種々の流体を採用することが可能である。さらに、流体を吐出する装置としては、インクジェットヘッド24に限られず、ディスペンサヘッド等を採用することが可能である。
【0053】
また、上記実施例では、本発明の技術を用いて、回路基板の回路パターンの印刷精度が検査されているが、種々の印刷物の印刷精度を検査することが可能である。具体的には、例えば、導光板のドットパターンの印刷精度を検査することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
22:ヘッド移動装置(流体吐出装置) 24:インクジェットヘッド(流体吐出装置) 34:回路基板(印刷媒体) 70:制御装置(検査装置) 100:撮像部 102:演算部 104:判定部 106:作動条件調整部
図1
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