特許第6236074号(P6236074)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236074
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ラミネート・シートの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/02 20060101AFI20171113BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B29C63/02
   B32B3/30
   B32B15/08 M
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-517560(P2015-517560)
(86)(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公表番号】特表2015-520054(P2015-520054A)
(43)【公表日】2015年7月16日
(86)【国際出願番号】CA2013000501
(87)【国際公開番号】WO2013188951
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2016年5月23日
(31)【優先権主張番号】2,780,397
(32)【優先日】2012年6月18日
(33)【優先権主張国】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】514304692
【氏名又は名称】アール.エー.インベストメント マネジメント エス.エー.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100091443
【弁理士】
【氏名又は名称】西浦 ▲嗣▼晴
(74)【代理人】
【識別番号】100130720
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼見 良貴
(74)【代理人】
【識別番号】100130432
【弁理士】
【氏名又は名称】出山 匡
(74)【代理人】
【識別番号】100186819
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 俊尚
(72)【発明者】
【氏名】アーベスマン,レイ
(72)【発明者】
【氏名】ファム,ニー
(72)【発明者】
【氏名】マッケルビー,ウィンストン
【審査官】 大塚 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−223157(JP,A)
【文献】 特開平09−011387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 − 63/14
B32B 3/30
B32B 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラミネート・シートの製造方法であって、
a.第1の金属製シート及び第2の金属製シートを用意し、前記第1の金属製シート及び前記第2の金属製シートのそれぞれは、前記シートから隆起し、概ね尖った複数の尖端構造部でテクスチャ加工を施された面を少なくとも1つ有しており、前記第1の金属製シート及び前記第2の金属製シートは、せん孔されておらず、
b.前記第1の金属製シートの前記テクスチャ加工を施された面を、前記複数の尖端構造部によってピアシング可能な材料からなるコア材第1の面と接触するように移動し、
c.前記第1の金属製シートの前記複数の尖端構造部の少なくともいくつかを前記コア材に入り込ませ、ラミネート・シートを形成するように前記第1の金属製シートの前記テクスチャ加工を施された面と前記コア材前記第1の面とを押し付け合い、前記押し付け合うステップは、前記複数の尖端構造部の少なくとも先端部を前記コア材に貫通させ、前記コア材第2の面に複数の前記先端部を突き出させ、
d.前記コア材の前記第2の面から突き出た前記第1の金属製シートの前記複数の先端部を変形して、前記複数の先端部を前記コア材の前記第2の面の上に対して向ける、前記第2の面上に向ける、または、前記コア材内に向け前記第2の金属製シートの前記テクスチャ加工された面を介して、前記第1の金属製シートの前記複数の先端部を押すことで、前記第1の金属製シートの前記複数の先端部を変形することからなることを特徴とするラミネート・シートの製造方法。
【請求項2】
前記第1の金属製シート及び/または前記第2の金属製シートは、スチールである請求項1に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項3】
前記コア材は、プラスチック、樹脂、ポリマ、発泡材、ゴム、木材、及び、ハイブリッド材のうち少なくとも1つからなる請求項1に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項4】
前記コア材は、硬化可能な材料である請求項1に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項5】
前記押し付け合うステップ(前記ステップc)は、部分的に硬化した状態にある前記コア材を前記第1の金属製シートに取り付け、その後、前記コア材硬化することからなる請求項に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項6】
前記第1の金属製シート及び/または前記第2の金属製シートは、ブリネル硬さが約80より高く、前記コア材は、ブリネル硬さが約30より低い請求項1に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項7】
前記第1の金属製シート及び前記コア材同士を押し付け合う前に、さらに、前記第1の金属製シート及び前記コア材のいずれか一方または両方を加熱することからなる請求項1に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項8】
前記押し付け合うステップ(前記ステップc)は、加熱状態で前記第1の金属製シート及び前記第2の金属製シートの少なくとも一部を組み合わせ、その後、組み合わせた材料を冷却することからなる請求項に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項9】
軟らかい状態になるように、前記コア材を加熱し、
前記押し付け合うステップ(前記ステップc)は、前記軟らかい状態で前記コア材を前記第1の金属製シートと部分的に組み合わせ、前記コア材を冷却して少なくとも一部を硬化し、その後、前記ラミネート・シートを形成するように材料同士をさらに押し付け合うことからなる請求項に記載のラミネート・シートの製造方法。
【請求項10】
前記複数の尖端構造部は、予めフック形状に曲げられている請求項1に記載のラミネート・シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネート材(laminated materials)に関するものであり、さらに具体的には、ラミナ(lamina)または複数のプライ(plies)を積層し、改良した構造材料(improved structural material)を製造する積層方法に関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
よりよい製品を製造するために、軽く、硬く、安価な構造材料(structural materials)で、好ましくは3つの質の全てを備えた構造材料の要求が高まっている。
【課題を解決するための手段】
【0003】
ラミネートは、少なくとも1つの硬いラミナ(harder lamina)(層[layer])に、少なくとも1つの軟らかいラミナ(softer lamina)を組み合わせて作製されている。1つの実施の形態では、2つの外側の(outer)硬いラミナを用いて、軟らかいコア(core)または中央ラミナ(centre lamina)を挟んで(サンドイッチして)いる。(複数の)硬いラミナは、スチールのような、延性のある材料(ductile material)からなることが好ましい。硬いラミナのそれぞれは、少なくとも一方の面が、テクスチャ加工を施されており(textured)、表面から、無数の(myriad)、尖った、爪状の、ピアシング構造部(piercing structures)が隆起している。テクスチャ加工を施されたラミナは、せん孔(perforated)されていないことが好ましい。コアまたは中央ラミナは、シート状のプラスチックのような、軟らかい、ピアシング可能な材料であることが好ましい。テクスチャ加工を施された1以上のラミナは、尖端構造部によってピアシングされ、また、好ましくは、ピアシング構造部の尖った先端部が貫通するように、少なくとも1つのピアシング可能なラミナに対して押し付けられている。ピアシング構造部の尖った先端部は、互いに対して共にクリンチされ(co-clinched)、3つのラミナをロックする。
【0004】
本発明の第1の実施の形態では、ラミネート・シート(laminate sheet)の製造方法を提供する。比較的硬い第1の材料(first relatively hard material)からなり、表面にテクスチャ加工を施され、隆起した、また、概ね尖った複数の尖端構造部を有するシートの少なくとも1つの面を用意する。それから、第1の材料のテクスチャ加工を施された少なくとも1つの面を、軟らかい第2の材料(second softer material)の面と接触するように移動する。そして、複数の尖端構造部の少なくともいくつかを第2の材料に入り込ませ、ラミネート・シートを形成するように第1の材料の面と第2の材料の面とを押し付け合う(forced together)。
【0005】
様々な材料を用いることができる。好ましい1つの実施の形態では、第1の材料は、ブリネル硬さ(Brinell hardness)が約80より高く、第2の材料は、ブリネル硬さが約30より低い。第1の材料は、金属(例:スチール)であることが好ましい。第2の材料は、プラスチック(plastic)、樹脂(resin)、ポリマ(polymer)、発泡材(foam)、ゴム(rubber)、木材(wood)、または、ハイブリッド材(hybrid material)であることが好ましい。
【0006】
1つの実施の形態では、第2の材料は、硬化可能な材料(curable material)であり、この場合には、"押し付け合う"ステップ("forcing" step)は、部分的に硬化した状態にある第2の材料を第1の材料に取り付け、その後、第2の材料を硬化することを許容することを含む。
【0007】
複数のロールの間にラミネート・シート(または、その一部)を通すことで、第1の材料及び第2の材料を押し付け合う。押し付け合うステップは、複数の尖端構造部の少なくとも先端部を第2の材料に貫通させ、第2の材料の他方の面に複数の先端部を突き出させることが好ましい。例えば、ローラー(roller)を複数の先端部の上で転がし、複数の先端部を変形したり、第1の材料からなる別のシート(第2のシート)を介して複数の先端部を押し下げて、第2の材料の他方の面から突き出た複数の先端部を変形して、複数の先端部を第2の材料の他方の面の上に対して向ける、他方の面上に向ける、または、第2の材料内に向けてもよい(direct them over or onto or into)。必ずしも必要はないが、複数の先端部は、相互作用を生じてもよい(interact with each other)(実施の形態によっては、接触によって相互に変形したり、相互に係合している)。
【0008】
製造方法は、第1の材料及び第2の材料同士を押し付け合う前に、さらに、第1の材料及び第2の材料のいずれか一方または両方を加熱することを含んでもよい。複数の材料は、加熱状態(heated state)で少なくとも一部を組み合わせ、その後、組み合わせた材料を冷却してもよい。軟らかい状態で第2の材料を第1の材料と部分的に組み合わせる前に、軟らかい状態になるように第2の材料を加熱し、ラミネート・シートを形成するように材料同士をさらに押し付け合う前に、第2の材料を冷却して少なくとも一部を硬化することを許容してもよい。
【0009】
複数の尖端構造部は、フック形状(hooked shape)であってもよい。構造部は、予めフック形状に曲げられていてもよい。
【0010】
第2の実施の形態によれば、ラミネート・シートの連続的な製造方法を提供する。比較的硬い第1の材料からなり、表面にテクスチャ加工を施され、隆起した、また、概ね尖った複数の尖端構造部を有するシート状の供給品(supply)を、連続するロール(continuous roll)から用意する。第1の材料のテクスチャ加工を施された少なくとも1つの面を、軟らかい第2の材料の面と接触するように移動する。それから、複数の尖端構造部の少なくともいくつかを第2の材料に入り込ませ、ラミネート・シートを形成するように第1の材料の面と第2の材料の面とを押し付け合う。
【0011】
第2の材料は、第1の材料に連続的に供給され、2つの材料は、それぞれの材料の供給装置(feeds)の下流(downstream)で押し付け合わされることが好ましい。第2の材料は、第1の材料に連続的に転がりながら送り出される(rolled onto)ことが好ましい。第1の材料も、第2の材料を適用する前に、切断されていることが好ましい(または、積層のために、[例えば、マガジン(magazine)から]予め切断されたピースが、連続的に供給されてもよい)。代わりに、押し付け合うステップの後に、さらに、ラミネート・シートを所定の長さ(lengths)に切断してもよい。
【0012】
前述の製造方法によって製造されたラミネート・シートも提供する。
【0013】
第3の実施の形態によれば、ラミネート・シートを提供する。表面にテクスチャ加工を施され、隆起した、また、概ね尖った複数の尖端構造部を有する比較的硬い第1の材料を、軟らかい第2の材料と組み合わせている。複数の尖端構造部の少なくともいくつかは、第2の材料内に向かって突き出ている。
【0014】
複数の尖端構造部の少なくともいくつかは、第2の材料内を延びて、完全に突き出ていてもよい。複数の尖端構造部の先端部の少なくともいくつかは、第1の材料と第2の材料とを相互に保持するように、第2の材料の上に向かって曲げられている、第2の材料上に向かって曲げられている、または、第2の材料内に向かって曲げられていてもよい(turned over, onto or into the second material)。
【0015】
第4の実施の形態によれば、多層構造のラミネート・シート(multi-layer laminate sheet)を提供する。少なくとも1つの両面シート(dual sided sheet)が、ラミネートのコアを形成する。両面シートは、比較的硬い第1の材料からなり、2つの面にテクスチャ加工を施されている。表面のテクスチャは、隆起した、また、概ね尖った複数の尖端構造部を有している。第2の材料からなる複数の外側層(outer layers)は、両面シートの両面に配置されており、第2の材料は、第1の材料の複数の尖端構造部の少なくともいくつかが、第2の材料内に向かって突き出るように、第1の材料と組み合わされている。
【0016】
多層構造のラミネート・シートは、外側層のそれぞれの外側に配置された、片面シートである複数の境界層(boundary layers)をさらに備えている。複数の境界層のそれぞれは、一方の面に隆起した、また、概ね尖った複数の尖端構造部を有している(反対側の面は、平面[plain]である)。表面の構造部は、対応する外側層の少なくとも一部内に向かって延びるように配置されている。(この一般構造[general structure]を用いて、より複雑なラミネートを提供してもよいのはもちろんである。一般構造とは、第1の境界層と、それぞれの両側が軟らかい材料で囲まれた、両面にテクスチャ加工を施された1以上のシートを有するコアと、第2の境界層とである。)
1つの変形例では、外側層の少なくとも1つは、複数の尖端構造部にアクセスできる少なくとも1つの凹部(recess)を有している。他の変形例では、外側層の少なくとも1つは、複数の尖端構造部にアクセスできる少なくとも1つの比較的薄い領域(relatively thinner area)を有している。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】3つの供給コイル(supply coils)から、連続的に、ロックされた(locked)ラミネート・シートを製造する製造方法を示す図である。外側の2つのラミナは、複数のピアシング構造部を有しており、中央のラミナは、軟らかく、ピアシング可能な材料からなる。3つのラミナは、複数の圧力ロール(pressure rolls)によって、互いに対して力を加えられ、ロックされている。複数のピアシング構造部は、複数の圧力ロールによって、対向する外側のラミナにクリンチする。材料の硬さやそのピアシング性(pierceability)を変えるために使用できるヒーター及び/またはクーラーを示してある。
図2】2セットの圧力ローラーを使用する場合(例:常温下においてコアのラミナが硬すぎてピアシングできない場合、または、貫通するのに厚すぎる場合)の実施の形態を示す図である。第1のローラーは、積層を開始し、第2のローラーは、ラミナ同士を完全に結合させる。
図3】複数のピアシング構造部を有するテクスチャ加工を施された薄板シート材の詳細を示す図である。ピアシング構造部は、横断面形状(cross-section)の端部が尖った先細形(tapered)であり、面を装着する(populating)ようになっている。
図3a】フック状の構造体を使用した変形(variation)の詳細(例:セメントや樹脂のような軟らかいコア材に埋め込む場合)を示す図である。
図3b】どのようにしてピアシング構造部を曲げて、返しを有する(barbed)フックを形成するかを示す図である。
図4】ピアシング構造部が隣接するラミナを貫通し、先端部が表面から出ている同じ実施の形態を示す図である。
図5】製造工程において、軟らかいコア・ラミナを貫通し、先端部がクリンチされたピアシング構造部を有する2つのラミナを示す図である。
図6】両側にテクスチャ加工が施されたピアシング構造部を有するラミナを示す図である。
図7】5層を積層した他の実施の形態を示す図である。外側の2つのラミナは片側にテクスチャ加工が施されており、中央のラミナは両面にテクスチャ加工が施されており、テクスチャ加工が施された3つの面の全ては、隣接するラミナを貫通し、ピアシング構造部の先端部はクリンチされている。
図8】ピアシング可能なラミナの表面上で、先端部を順次丸めて、最終的なクリンチ状態にするクリンチ処理の詳細を示す図である。
図9】貫通するには厚すぎる、加熱して軟らかくなったコア・ラミナに大部分が埋め込まれた、1つのピアシング構造部の詳細を示す図である。
図10】冷却によりコア・ラミナを再硬化し、更に力を加えることで積層が完了した同じ実施の形態を示す図である。力を加えることで、ピアシング構造部がわずかに更に入り込み、このことにより、ピアシング構造部の周りに圧縮された領域(region of compression)が形成され、ピアシング構造部が保持されることになる。
図11】コア材が、両側にテクスチャ加工が施された、ピアシング構造部を有する硬いラミナであり、外側のラミナが、ピアシング可能であり、硬いコア材に対して押し付けられている、他の実施の形態を示す図である。
図12】パンチ(punch)のためにラミナに溝部(recess)を設けることにより、厚すぎるラミナに尖端構造部をクリンチさせる方法を示す図である。
図13】テクスチャ加工を施された材料の一部(short portions)を誇張して(exaggerated)示した図である。右側の図では、材料はまっすぐであり、複数のピアシング構造部はそれぞれに対して実質的に平行に、且つ、面に対して直角になっている。左側の図は、先端部を相互に近づけると、先端部が非平行になる、または、先端部が集束する(convergent)ことを示すために、曲げられた材料の同じ部分を示している。複数のピアシング構造部が硬いラミナに入り込むと、先端部がその位置に固定され、相互に対して動けなくなる。このことにより、ラミネートに高い剛性(stiffness)を与える。
【発明を実施するための形態】
【0018】
下記では、「クリンチ("clinch"(clinching, clinchable, clinched))」の語は、2以上の層を貫通し、そこから延びる、露出したピンまたは爪の先端部を曲げる行為を意味している。クリンチは、木造建築業界(wood construction trade)では一般的な手法である。クリンチは、金属加工(metal work)におけるリベット打ち(riveting)や、留め具を変形させて簡単に取り外せないようにする他の方法と類似するものである。クリンチすることの目的は、結合させて積層した2つの層の間の結合(cohesion)をより強くすることである。
【0019】
「(複数の)尖端構造部("pointed structure" or "pointed structures")」の語は、材料の表面に隆起した(埋め込み、または、ピアシングのための)、任意の爪状、若しくは、ピン状の構造部(またはフック、若しくは、返しを有する構造部)を表す総括的な用語として使用している。「ピアシング構造部(Piercing structure)」は、構造部が、積層工程において、軟らかい材料を貫通するように構成された例の1つである。
【0020】
本発明では、尖端構造部(例:ピアシング構造部)は、硬いラミナの表面から隆起している。尖端構造部は、隣接する軟らかいラミナに入り込み、尖端構造部の長さが、軟らかいラミナの厚みよりも長い場合には、突き出ることが好ましい。突き出た先端部を曲げたり、クリンチすることで、本発明の「ロックされたラミネート(locked-laminate)」を作製することができる。このように貫通させてクリンチすることで、結果物であるラミネートに予期せぬ利点である、並外れた剛性(extraordinary stiffness)を与えることができる。
【0021】
図1は、連続するロックされたラミネート材を製造方法を示している。コイル1は、ポリエチレンのような、軟らかいピアシング可能な材料である、第1のラミナ1aを供給する。これが、コア・ラミナになる。コイル2及び2aは、硬い材料からなる、外側の第2のラミナ3b、及び、外側の第3のラミナ3cを供給する。第2及び第3のラミナのそれぞれは、一方の側3aがテクスチャ加工を施されており、複数のピアシング構造部20を有している。3つのラミナの層は、圧力ロール4,4aの間に供給される。外側の2つのラミナ3b,3cのピアシング構造部は、ロール4,4aによる圧力によってコア・ラミナ1aを貫通し、反対側の外側のラミナによってクリンチされ、連続して3つのラミナが相互にロックされる。その後、ロックされたラミネートからなる個々のシート6に切断されてもよい。代わりに、ラミネート5は、図示しない巻取リールに巻き取ったバルク材として集められてもよい。したがって、この場合には、製造方法は、coil-to-coilとなる。バルク材は、さらに切断したり、特定の用途(現場で好きな大きさに切断できる用途[cut-to-measure applications]を含む)のために成形してもよい。
【0022】
ロール4,4aは、材料の"サンドイッチ"の全幅にわたって圧力を与えてもよく、また、局所的な領域(例:端部)にのみ圧力を与えてもよい。
【0023】
ラミナ1aが硬すぎて容易にピアシングできない場合、及び/または、厚すぎて複数のピアシング構造部20が完全に貫通できない場合、材料を軟らかくするために、ヒーター10を使用してもよい。この場合は、切断してラミネート・シート6にする前に、ラミネートのストリップ(strip)5を冷却するためにクーラー11を使用してもよい。
【0024】
他の実施の形態では、図2に示すように、例えばポリカーボネート(polycarbonate)のような硬いシート状のコア・ラミナ1bに、上記のように外側のテクスチャ加工を施されたラミナの間を通して、同様に積層してもよい。相違点は、部分的にピアシングすることを可能にするためにヒーター10を用いて、第1のローラー4c,4dを通過した後に、各ラミナの間に、ピアシング構造部の高さの約5%ほどの、小さな隙間(contact gap)をあけることである。それからクーラー11でラミナ1aを再硬化させ、その後、第2のローラー4,4aがピアシングを完了させて、十分に接触させる。この方法により、ピアシング構造部は、硬すぎる(too-stiff)、または、厚すぎる(too-thick)コア・ラミナ内の短い距離を移動するように力を加えられ、各ピアシング構造部の周りに相当な圧縮されたテンションの領域(region of considerable compressive tension)が形成され、このことにより、予想以上の保持力が生まれる。ピアシング構造部は、もともと横断面形状が先細形であるため、二次的なテーパー嵌合による保持(secondary taper-fit retention)が得られ(これは、機械分野ではよく知られている)、さらに保持力を強くすることができる。このことにより、幅広い用途に適した非常に硬い低コストのラミネートを得ることができる。シートを、短いラミネート・シート6aに切断してもよい。
【0025】
図3は、外側の硬いラミナ3b,3cのテクスチャ加工を施された側3aと、平坦な側3を示している。ラミナ3b,3cは、スチールとスチールの組み合わせ(steel-steel)や、スチールとアルミニウム(steel-aluminum)の組み合わせのように、それぞれ同種の材料であってもよく、異種の材料であってもい。ピアシング構造部20は、ピアシング可能な尖った先端部20aを有している。図4では、先端部20aはラミナ1aを貫通し、ラミナ1aを越えて延び出ている。図3aは、構造部はフックの形状を有していてもよいことを示している。例えば、複数のフックは、外側のテクスチャ加工を施されたラミナを用意する初期の工程でもともと形成しておいてもよい(例えば、カナダで2012年5月29日に出願された、同じ出願人による同時係属の特許出願「テクスチャ加工を施されたバルクシート材」(カナダ特許出願No.TBA[未公表])に開示された方法、または、カナダ特許No.1,330,521;1,337,622;若しくは2,127,339のいずれかに開示された方法を用いてもよい。本明細書の一部を構成するものとして、公報の内容を援用する)。代わりに、より直立した(例:爪状)構造部を予め曲げて、よりフック状の構造部にしてもよい。このように予め曲げる加工は、ローラーや平らなプラテン(platen)の間のプレス装置(press arrangement)を使用して、細い先端部を曲げてフックにすればよい。フックの形状は、流動性を有するタイプのコア材料にテクスチャ加工を施された面3aを係合させまたは取り付ける手段となり、その後、コア材料は、複数のフックを包み込んで固める。例えば、このようにアレンジすれば、テクスチャ加工を施された面3aを、塗布された(applied)、硬化されていない(non-cured)、または、硬くない(non-solid)材料(例えば、セメント、樹脂、溶かしたポリマ、接着剤など)に固定するのに使用することができる。この場合、クリンチするために、コアを貫通する必要がないため、厚いコア材1aを使用することもできる。
【0026】
図3bは、どのようにして構造部の先端部20aをさらに成形して、または、曲げて、逆向きのフック(retroverted hooks)または返し20bを形成するかを示している。このような返しは、布地や軟らかいラミナの係合のために、また、加熱したラミナに押し入れて使用することができる。返しの形状によって、外れてしまうことを防ぐことができることはよく知られており、このことにより、本発明の積層方法にさらなるロック動作(locking action)を付加する。
【0027】
図5の例では、外側の2つの硬いラミナの構造部がコア・ラミナ1aを貫通しており、先端部は、対向する外側のラミナに対する圧力によってクリンチされている。このことにより、本発明のロックされたラミネートが作製されている。図6は、テクスチャ加工を施されて両側に複数のピアシング構造部を有する硬いラミナ3を示している。このラミナは、例えば、図7に示す、外側の2つの軟らかいラミナの間のコアとなる。図7は、コア・ラミナとして、両側にテクスチャ加工を施された、同じラミナを示している。コア・ラミナは、両側に、軟らかい、ピアシング可能なラミナと、さらに外側に、テクスチャ加工を施された硬いラミナを有している。これにより、いっしょにクリンチすることができ、5層のラミネートを作製することができる。
【0028】
図8は、第3の硬い面(例:アンビル[anvil])によってプレスされ、ローラーの間を通過する間に先端部20aがクリンチされて、完全にクリンチされた先端部20bになる工程を明確に示するために、2つのラミナのみを示している。図8は、どのようにして先端部を戻してラミナ内に刺し入れるか(20c)、及び、リベット打ちと同種の効果を得るために先端部を潰しているか(20d)についての例も示している。
【0029】
図9及び図10は、事前に軟らかくなるように処理されたラミナ1cに、その間に小さな隙間30を残して、ほぼ完全に係合しているラミナ3aの1つのピアシング構造部の詳細を示している。第2のプレスを施されると、硬化処理を施された(post-hardened)(ラミナ1cを冷却して通常の硬さに戻した)ラミナ1dは、さらにある距離だけピアシングされ、隙間が無くなり、構造部全体に‘圧縮されたテンションのエンベロープ(compressive tension envelope)’40が作り出される。本積層方法において、全ての構造体に同じことが行われることはもちろんである。
【0030】
図11は、ローリング積層方法(rolling lamination process)を、外側に軟らかいラミナ1aを有する、両側にテクスチャ加工を施された硬いラミナ3aのコアに適用した場合を示している。外側のラミナ1aは、同じ材料及び厚みでもよく、異なる材料及び厚みでもよい。
【0031】
図12は、ラミネートが厚すぎて先端部が突き出ることを妨げる場合にクリンチをする2つの異なる方法を示している。フランジ部(flange)1a’は薄い端部(thinner edge portion)を備えている。ピアシング構造部は、この端部を通して現れ、クリンチされる。同様に、厚いラミナ1eの凹部(recess)または窪み(cavity)41を通じて、先端部にアクセスすることができ、先端部はクリンチされる。凹部41または薄い端部にクリンチをするための工具(例:小型のローラーまたはプラテン)を押し付けることで、露出した複数のピアシング構造部を局所的にクリンチすることができる。この方法では、ラミネートの特定の領域がクリンチされており、他の領域はクリンチされていない。
【0032】
図13は、それぞれに対して実質的に平行に、且つ、ラミナの表面に対して直角に配置された、複数のピアシング構造部を有する硬いラミナ3の一部を示している。複数のピアシング構造部は、誇張して表現してある。同部分を曲げると、ピアシング構造部の先端部は、それぞれ固有の(intrinsic)、また、そこから突出する、テクスチャ加工を施されたラミナに対して直角を維持するため、先端部は、いっしょに動く、または、少なくとも少しは集束する(converge)。図示した部分が上述のロックされたラミネート材料の一部であった場合には、複数の先端部は所定の位置に固定されており、集束することが妨げられ、同様に、各ピアシング構造部が曲げに対する抵抗力を与えるため、曲げに対する強い抵抗力が与えられる。この方法により、比較的硬くないラミナから、非常に優れた硬いラミネートを作製することができる。先端部をクリンチすると、引き離す力または剥がす力に対する抵抗力がラミネートに与えられ、この力によって、強度を更に相当上げることができる。
【0033】
上述のロックされたラミネート材は、曲げ、絞り(drawing)、パンチ等、異なる既知の製造方法(fabrication methods)で形成されてもよい。この製造方法は、ラミネートを加熱し、構造部の先端部50aが軟らかくされたラミナ内を動き、新たな角度関係になることを許容し(図13)、ラミナを冷却して通常の硬さに戻すことでその位置にロックし、形成されたラミネート・シートに望ましい硬さを戻すことで効果を向上させることができる。
【0034】
上述の説明は、3またはそれ以上のプライのラミネートに関するものであるが、1つの硬い(テクスチャ加工を施された)材料と、1つの軟らかい(ピアシング可能な)材料を使用して、(適切な改良をした)上記と同じローラー装置を使用して、材料同士を"ロックして"、単純な2つのプライのラミネートを作製してもよいのはもちろんである。
【0035】
上述の記載は、本発明の特定の好ましい実施の形態を示すものに過ぎない。本発明は、上述の例に限定されるものではない。つまり、当業者であれば、上述の本発明の教えを使用及び実行するために、変更及び変化させることが可能である、または将来的に可能である、ということが理解できるであろうということである。請求の範囲は、上述の実施の形態によって制限されるべきものではなく、明細書全体と矛盾のない、最も広い合目的的解釈(purposive construction)をすべきである。
図1
図2
図3
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13