【実施例】
【0147】
実施例では、以下の用語は、示された意味を有する。
6xhis=6ヒスチジン;
xg=遠心力(重力数);
ATP=アデノシン三リン酸;
BCA=ビシンコニン酸;
BSA=ウシ血清アルブミン;
℃=摂氏度;
CaCl
2=塩化カルシウム;
CV=カラム容量;
DNA=デオキシリボ核酸;
DSC=示差走査熱量測定;
DTT=ジチオトレイトール;
dNTP=デオキシヌクレオシド三リン酸;
EDTA=エチレンジアミン四酢酸;
FT=フロースルー;
HCl=塩化水素;
His=his=ヒスチジン;
HEPES=4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸;
IMAC=固定化メタルアフィニティークロマトグラフィー;
IPTG=イソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド;
KCl=塩化カリウム;
K
2HPO
4=第二リン酸カリウム;
KH
2PO
4=第一リン酸カリウム;
LDS=ドデシル硫酸リチウム;
L=リットル;
MES=2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸;
MgCl
2=塩化マグネシウム;
ml=ミリリットル;
RPM=回転毎分
min=分;
mM=モリモル;
μL=マイクロリットル;
NaCl=塩化ナトリウム;
Na
2HPO
4=第二リン酸水素ナトリウム;
NaH
2PO
4=第一リン酸ナトリウム;
ng=ナノグラム;
nm=ナノメートル;
O/N=一晩;
PBS=リン酸緩衝生理食塩水;
PCR=ポリメラーゼ連鎖反応;
SB=サンプルバッファー;
sec=秒;
w/v=重量/容量
PS=多糖、「糖類」と互換的に使用することができる。
1.実施例
実施例1:融合タンパク質
種々のシグナルペプチドおよびアミノ酸リンカー配列との融合タンパク質を作製した。これらの融合タンパク質は、タンパク質EおよびPilA(またはそれらの断片)の両方の分泌を、単一の細菌株に限定されることなく可能とした。融合タンパク質は、シグナルペプチドペプチダーゼにより異種シグナルペプチドが取り除かれた後に周辺質に放出される。細菌から精製された融合タンパク質は、異種シグナルペプチドを含有しない。「精製された」タンパク質は、細菌から取り出され、シグナルペプチドを欠く。
【0148】
下表に作製した融合タンパク質構築物を記載する。
【0149】
【表3】
表3に挙げたシグナルペプチドおよびプラスミドそれぞれのDNA配列およびアミノ酸配列を以下に示す。
シグナル配列:
融合タンパク質構築物配列:
アミノ酸配列の一本の下線を引いた箇所はHaemophilus influenzae 86−028NP株由来のPilAに由来する。アミノ酸配列の太い下線を引いた箇所はHaemophilus influenza 772株に由来するタンパク質Eに由来した。
上記配列が得られたPE及びPilAの全長配列を、配列番号4(PE)及び配列番号58(PilA)にそれぞれ示す。
実施例2:ベクター構築物及び形質転換
H.influenzae 772株由来のPEを増幅するためのプライマーをH.influenzae Hi Rd株の配列に基づいて設計した。5’プライマー配列はNTHi 772配列と比べて一つ異なるヌクレオチドを含み、これは現在報告されているNTHi 772ゲノム配列と比べて、24位に異なるアミノ酸が導入されている。融合タンパク質構築物におけるアミノ酸#24は、NTHi 772にて見出されるK(リシン)に代えて、グルタミン酸である。
ベクター構築:
LVL312、LVL291、LVL268、LVL269、LVL270、LVL702、LVL735、LVL778、LVL779、LVL780、LVL781およびLVL782を作製するために、下記の成分のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)調製物を調製した(具体的成分を次に例示する):36.6μlの脱イオン水、5μlのバッファー#1 10×、5μlのdNTP 2mM、2μlのMgCl
2 25mM、0.4μlのプライマー#1(50μM)、0.4μlのプライマー#2(50μM)、0.5μlの鋳型(100ng/μl)および0.4μlのKOD HiFi DNAポリメラーゼ2.5単位/μl(NOVAGEN(登録商標))を配合した。ポリメラーゼ連鎖反応は、98℃で15秒の変性、55℃で2秒のアニーリングおよび72℃で20秒のプライマー伸長を25サイクル含んだ。PCR産物をQIAQUICK(登録商標)PCR精製キット(QIAGEN(登録商標))を用いて精製した。この産物を、1容量のPCR調製物に対して、QIAQUICK(登録商標)PCR精製キットに提供されている5容量のバッファーPBの添加という供給者により推奨されている条件下で使用した。次に、バッファーPBを含むPCR調製物をボルテックスにより混合した。QIAQUICK(登録商標)カラムを2mlのコレクションチューブに入れた。PCR調製物中のDNAをカラムに結合させるため、混合したサンプルをQIAQUICK(登録商標)カラムに適用し、14000RPMで30〜60秒間遠心分離した。フロースルーを廃棄し、QIAQUICK(登録商標)カラムを同じチューブに戻した。結合したDNAを洗浄するために、QIAQUICK(登録商標)PCR精製キットに提供されている0.75mlのバッファーPEをQIAQUICK(登録商標)カラムに加え、このカラムを14000RPMで30〜60秒間遠心分離した。フロースルーを廃棄し、QIAQUICK(登録商標)カラムを同じチューブに戻した。残留する洗浄バッファーを除去するために、QIAQUICK(登録商標)カラムを2mlコレクションチューブ中でもう1回、1分間、遠心分離した。各QIAQUICK(登録商標)カラムを1.5 mlの透明なマイクロ遠沈管に入れた。DNAを溶出させるため、33μlの水をQIAQUICK(登録商標)膜の中央に加え、カラムを14000RPMで1分間遠心分離した。制限酵素および関連のバッファーはNew England BioLabsから入手した。例えば、およそ5μlのpET26bベクター(100ng/μl)、2μlのNEバッファー2(New England Biolabs、1×NEバッファー2:50mM NaCl、10mM Tris−HCl、10mM MgCl
2、1mMジチオトレイトール、pH7.9、25℃)、1μlのNdeI(20000単位/ml)、1μlのHindIII(20000単位/ml)および11μlの脱イオン水を混合し、DNA消化のために37℃で2時間インキュベートした。その後、QIAQUICK(登録商標)PCR精製キット(QIAGEN(登録商標))を上記の手順に従って用い、第2段階の精製を行った。
【0150】
ライゲーションは、New England BioLabsからのQuick T4 DNAリガーゼおよびQuickライゲーション反応バッファーを用いて行った。例えば、10μlの脱イオン水中、10ng前後のベクターおよび30ngのインサートを、10μlの2×Quickライゲーション反応バッファー(New England Biolabs、132mM Tris−HCl、20mM MgCl
2、2mMジチオトレイトール、2mM ATP、15%ポリエチレングリコール、pH7.6、25℃)および1μlのQuick T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)と混合した。この酵素反応物を室温で5分間インキュベートした後、形質転換を行った。
【0151】
LVL315、LVL317、LVL318、LVL736、LVL737、LVL738、LVL739およびLVL740を作製するために、下記の成分のPCR調製物を調製した:40μlの脱イオン水、5μlの反応バッファー10×、1μlのdNTPsミックス、1μlのプライマー#1(10μM)、1μlのプライマー#2(10μM)、1μlの鋳型(25ng/μl)および1μlのPfuUltra High−Fidelity DNAポリメラーゼ2.5単位/μl(QuikChange II部位特異的突然変異誘発キット、Agilent Technologies、Stratagene Division)を配合した。ポリメラーゼ連鎖反応は、95℃で30秒の変性1サイクル、95℃で30秒の変性、55℃で1分のアニーリング、および68℃で5分30秒のプライマー伸長18サイクルを含んだ。PCR産物を1μlのDpnI制限酵素を用い、37℃で1時間消化した後、形質転換を行った。
【0152】
増幅に用いたPCRプライマー配列の詳細な一覧を表4に示す。
【0153】
pRIT16711を作製するため、配列番号4のアミノ酸22〜160をコードするPE遺伝子断片(その対応する分泌シグナルをコードする配列を除く)を、NTHi 772株のゲノムDNAからPCRにより増幅した。増幅プライマーは、利用可能なHi Rd株配列に基づいて設計した(その時点で、772配列は未知であった)。5’プライマー配列は、NTHi 772配列(現在利用可能なものとしての配列)に比べて1つの突然変異を含み、24番のPEコード配列に1つのアミノ酸の違い、すなわち、リシン(K)の代わりにグルタミン酸(E)が導入されている。PCR増幅後、BamHIおよびXhoI制限部位を用い、インサートをpET−26(+)発現ベクター(NOVAGEN(登録商標))にクローニングした。
【0154】
pRIT16671を生成するために、PilA遺伝子断片(配列番号58のアミノ酸40〜149、配列番号127)をコードするDNA断片(そのリーダーペプチドならびに推定疎水性αヘリックスの部分を除く)を、NTHi 86−028NP株のゲノムDNAから増幅し、pET15発現ベクターにクローニングした。ベクターpRIT16790(NTHi 86−028NP株に由来するアミノ酸40〜149を含有する)を鋳型として用い、ベクターpRIT16671を作製した。PilA遺伝子断片は、ベクターpRIT16790ならびにプライマーMDES PILA−3およびMDES PILA−4を用い、PCRにより増幅した。このPilA断片を、NdeI/XhoI制限部位を用いてpET−26発現ベクターにクローニングした。6ヒスチジン(his)アミノ酸をコードするDNA配列を5’プライマーに組み込み、PilA配列のN末端に6ヒスチジン(6xhis)を付加した(MDES PILA−3)。
【0155】
LVL312(FlgIシグナルペプチド−E−PilA断片−GG−PE断片−GGHHHHHH)を作製するために、鋳型としてのpRIT16671ベクターとプライマーCAN534およびCAN537を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、PilA遺伝子(アミノ酸40〜149/86−028NP株)を増幅した。FlgIシグナルペプチド(sp)およびグルタミン酸(E)アミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN534)に組み込んだ。PilA配列をPE配列に連結させるために、2個のグリシン(GG)に相当するDNA配列をアミノ酸リンカーおよびN末端PEアミノ酸を3’プライマー(CAN537)に組み込んだ。鋳型としてのpRIT16711ベクターとプライマーCAN536およびCAN538を用い第2のポリメラーゼ連鎖反応を行い、PE遺伝子(アミノ酸18〜160)を増幅した。pilAをPE配列に連結するために、C末端PilAアミノ酸およびGGアミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN536)に組み込んだ。GGアミノ酸リンカーおよび6xhisアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN538)に組み込んだ。最後に、LVL312を作製するために、第3のポリメラーゼ連鎖反応を行い、N末端にFlgIシグナルペプチド、FlgIとpilAの間にグルタミン酸(E)アミノ酸、PilA配列とPE配列の間にGGリンカーおよびPEとC末端の6xhisアミノ酸の間にGGリンカーとなるように融合したPilAおよびPE遺伝子を増幅した。この増幅を達成するために、鋳型としての上記の2つのポリメラーゼ連鎖反応の産物をプライマーCAN534およびCAN538とともに用いた。NdeI制限部位に相当するDNA配列を5’プライマーに組み込み、HindIII制限部位を3’プライマーに組み込んだ。作製されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0156】
LVL291(pelBシグナルペプチド−PE断片−GG−PilA断片−GG−6xhis)を作製するために、鋳型としてのpRIT16711ベクターとプライマーCAN544およびCAN546を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、PE遺伝子(アミノ酸19〜160)を増幅した。pelBシグナルペプチド(sp)アミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN544)に組み込んだ。PilA配列をPE配列に連結させるために、GGアミノ酸リンカーおよびN末端PilAアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN546)に組み込んだ。鋳型としてのpRIT16671ベクターをプライマーCAN545およびCAN535とともに用いて第2のポリメラーゼ連鎖反応を行い、PilA遺伝子(配列番号58のアミノ酸40〜149、配列番号127)を増幅した。PilA配列をPE配列に連結させるために、C末端PEアミノ酸およびGGアミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN545)に組み込んだ。リンカーGGアミノ酸および6xhisアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN535)に組み込んだ。最後に、LVL291を作製するために、第3のポリメラーゼ連鎖反応を行い、N末端にpelBシグナルペプチド、PE配列とPilA配列の間にGGリンカーおよびPilAとC末端の6xhisアミノ酸の間にGGリンカーとなるように融合したPEおよびPilA遺伝子を増幅した。この増幅を達成するために、鋳型としての上記の2つのポリメラーゼ連鎖反応の産物をプライマーCAN544およびCAN535とともに用いた。NdeI制限部位に相当するDNA配列を5’プライマーに組み込み、HindIII制限部位を3’プライマーに組み込んだ。作製されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0157】
LVL268(pelBシグナルペプチド−D−PE断片−GG−PilA断片−GG−6xhis)を作製するために、鋳型としてのpRIT16711ベクターをプライマーCAN547およびCAN546とともに用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、PE遺伝子(アミノ酸20〜160)を増幅した。pelBシグナルペプチド(sp)アミノ酸およびアスパラギン酸(D)アミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN547)に組み込んだ。PilA配列をPE配列に連結させるために、GGアミノ酸リンカーおよびN末端PilAアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN546)に組み込んだ。鋳型としてのpRIT16671ベクターをCAN545およびCAN535を用いて第2のポリメラーゼ連鎖反応を行い、PilA遺伝子(アミノ酸40〜149/NTHi 86−028NP株)を増幅した。PilA配列をPE配列に連結させるために、C末端PEアミノ酸およびGGアミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN545)に組み込んだ。リンカーGGアミノ酸および6xhisアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN535)に組み込んだ。最後に、LVL268を作製するために、第3のポリメラーゼ連鎖反応を行い、N末端にpelBシグナルペプチド、pelBシグナルペプチドとPEの間にDアミノ酸、PE配列とpilA配列の間にGGリンカーおよびPilAとC末端の6xhisアミノ酸の間にGGリンカーとなるように融合したPEおよびPilA遺伝子を増幅した。この増幅を達成するために、鋳型としての上記の2つのポリメラーゼ連鎖反応の産物をプライマーCAN547およびCAN535とともに用いた。NdeI制限部位に相当するDNA配列を5’プライマーに組み込み、HindIII制限部位を3’プライマーに組み込んだ。作製されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0158】
LVL269(NadAシグナルペプチド−ATNDDD−PE断片−GG−PilA断片−GG−6xhis)を作製するために、鋳型としてのpRIT16711ベクターをプライマーCAN548およびCAN546とともに用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、PE遺伝子(配列番号4のアミノ酸22〜160)を増幅した。pelBシグナルペプチド(sp)アミノ酸およびATNDDDアミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN548)に組み込んだ。PilA配列をPE配列に連結させるために、GGアミノ酸リンカーおよびN末端PilAアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN546)に組み込んだ。鋳型としてのpRIT16671ベクターをプライマーCAN545およびCAN535とともに用いて第2のポリメラーゼ連鎖反応を行い、PilA遺伝子(配列番号58のアミノ酸40〜149、配列番号127)を増幅した。PilA配列をPE配列に連結させるために、C末端PEアミノ酸およびGGアミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN545)に組み込んだ。リンカーGGアミノ酸および6xhisアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN535)に組み込んだ。最後に、LVL269を作製するために、第3のポリメラーゼ連鎖反応を行い、N末端にNadAシグナルペプチド、pelBシグナルペプチドとPEの間にATNDDDアミノ酸、PE配列とpilA配列の間にGGリンカーおよびPilAとC末端の6xhisアミノ酸の間にGGリンカーとなるように融合したPEおよびPilA遺伝子を増幅した。この増幅を達成するために、鋳型としての上記の2つのポリメラーゼ連鎖反応の産物をプライマーCAN548およびCAN535とともに用いた。NdeI制限部位に相当するDNA配列を5’プライマーに組み込み、HindIII制限部位を3’プライマーに組み込んだ。作製されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0159】
LVL270(M−6xHis−PE断片−GG−PilA断片)を作製するために、鋳型としてのpRIT16711ベクターをプライマーCAN540およびCAN542とともに用いてポリメラーゼ連鎖反応を行い、PE遺伝子(アミノ酸17〜160)を増幅した。6xhisアミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN540)に組み込んだ。PilA配列をPE配列と連結させるために、GGアミノ酸リンカーおよびN末端PilAアミノ酸に相当するDNA配列を3’プライマー(CAN542)に組み込んだ。鋳型としてのpRIT16671ベクターをプライマーCAN541およびCAN543とともに用いて第2のポリメラーゼ連鎖反応を行い、PilA遺伝子(アミノ酸40〜149/NTHi 86−028NP株)を増幅した。PilAをPE配列と連結させるために、C末端PEアミノ酸およびGGアミノ酸に相当するDNA配列を5’プライマー(CAN541)に組み込んだ。最後に、LVL270を作製するために、第3のポリメラーゼ連鎖反応を行い、6−his−PE−GG−PilA遺伝子を融合物として増幅した。この増幅を達成するために、鋳型としての上記の2つのポリメラーゼ連鎖反応の産物をプライマーCAN540およびCAN543とともに用いた。NdeI制限部位に相当するDNA配列を5’プライマーに組み込み、HindIII制限部位を3’プライマーに組み込んだ。作製されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0160】
LVL315(pelBシグナルペプチド−MD−PE断片−GG−PilA断片−GG−6xhis)を作製するために、鋳型としてのLVL291をプライマーCAN670およびCAN671とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)を用いて部位特異的突然変異誘発を行い、N末端PEアミノ酸配列のQIQ〜MDを変化させた。
【0161】
LVL317(pelBシグナルペプチド−PE断片−GG−pilA断片)を作製するために、鋳型としてのLVL291をプライマーCAN678およびCAN679とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)を用いて部位特異的突然変異誘発を行い、PilA遺伝子とGGHHHHHHアミノ酸残基に相当するDNA配列(配列番号3)の間に終止コドンを組み込んだ。
【0162】
LVL318(pelBシグナルペプチド−MD−PE−GG−PilA)を作製するために、鋳型としてのLVL315をプライマーCAN678およびCAN679とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)を用いて部位特異的突然変異誘発を行い、PilA遺伝子とGGHHHHHHアミノ酸残基(配列番号3)に相当するDNA配列との間に終止コドンを組み込んだ。
【0163】
LVL702(LVL291 ΔQ)を作製するために、鋳型としてのLVL291ベクターとプライマーCAN1517およびCAN1518を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行った。LVL291配列上の23番におけるアミノ酸Qに相当する3つのヌクレオチドの欠失を5’プライマーに組み込んだ。LVL702とLVL291の間の唯一の違いは、LVL291配列上の23番におけるアミノ酸Qの欠失である。NdeI制限部位およびHindIII制限部位をそれぞれ5’プライマーおよび3’プライマーに組み込んだ。作製されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0164】
LVL735(LVL317 ΔQ)を作製するために、鋳型としてのLVL317ベクターとプライマーCAN1517およびCAN1519を用いてポリメラーゼ連鎖反応を行った。LVL317配列上の23番におけるアミノ酸Qに相当する3つのヌクレオチドの欠失を5’プライマーに組み込んだ。LVL735とLVL317の間の唯一の違いは、LVL317配列上の23番におけるアミノ酸Qの欠失である。NdeI制限部位およびHindIII制限部位をそれぞれ5’プライマーおよび3’プライマーに組み込んだ。作製されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0165】
LVL736(LVL291+SA)を作製するために部位特異的突然変異誘発を行い、LVL291配列上のアミノ酸22と23の間にアミノ酸SおよびAを付加した。鋳型としてのLVL291をプライマーCAN1531およびCAN1532とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)とともに用いた。
【0166】
LVL737(LVL291+A)を作製するために部位特異的突然変異誘発を行い、LVL291配列上のアミノ酸22と23の間にアミノ酸Aを付加した。鋳型としてのLVL291をプライマーCAN1529およびCAN1530とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)とともに用いた。
【0167】
LVL738(LVL291 ΔQIQ)を作製するために部位特異的突然変異誘発を行い、LVL291配列上の23〜25番のアミノ酸Q、IおよびQを欠失させた。鋳型としてのLVL291をプライマーCAN1523およびCAN1524とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)とともに用いた。
【0168】
LVL739(LVL291 ΔQIQK)を作製するために部位特異的突然変異誘発を行い、LVL291配列上の23〜26番のアミノ酸Q、I、QおよびKを欠失させた。鋳型としてのLVL291をプライマーCAN1525およびCAN1526とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)とともに用いた。
【0169】
LVL740(LVL291 ΔQIQKA)を作製するために部位特異的突然変異誘発を行い、LVL291配列上の23〜27番のアミノ酸Q、I、Q、KおよびAを欠失させた。鋳型としてのLVL291をプライマーCAN1527およびCAN1528とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)とともに用いた。
【0170】
LVL778(LVL736 Δ6xHisタグ)、LVL779(LVL737 Δ6xHisタグ)、LVL780(LVL738 Δ6xHisタグ)、LVL781(LVL739 Δ6xHisタグ)およびLVL782(LVL740 Δ6xHisタグ)を作製するために、それぞれ鋳型としてのLVL736、LVL737、LVL738、LVL739およびLVL740ベクターをプライマーCAN1669およびCAN543とともに用いてポリメラーゼ連鎖反応を行った。6xHisタグの欠失は、C末端配列のアミノ酸配列GGHHHHHH(配列番号3)に相当する。この欠失を3’プライマーに組み込んだ。NdeI制限部位およびHindIII制限部位をそれぞれ5’プライマーおよび3’プライマーに組み込んだ。生成されたPCR産物を次に、pET−26b(+)クローニングベクター(NOVAGEN(登録商標))に挿入した。
【0171】
【表4】
形質転換
大腸菌(Escherichia coli)BLR(DE3)または大腸菌HMS(DE3)細胞を、CaCl
2処理細胞を用いた標準的方法に従ってプラスミドDNAで形質転換した(Hanahan D. ≪ Plasmid transformation by Simanis. ≫ In Glover, D. M. (Ed), DNA cloning. IRL Press London. (1985): p. 109-135.)。簡単に述べれば、BLR(DE3)またはHMS174(DE3)コンピテント細胞を氷上で温和に解凍した。およそ4μlのプラスミド(10〜100ng)を、50〜100μlコンピテント細胞を用いて混合した。その後、この配合物を氷上で30分間インキュベートした。形質転換反応を行うために、配合物に42℃で45秒、熱パルスをかけた後、氷上で2分間インキュベートした。およそ0.5mlのSOC培地(Super Optimal broth with Catabolite repression)を形質転換細胞に加え、細胞培養物を37℃で1時間インキュベートした後、50ug/mlのカナマイシンを含むLuria−Bertani(LB)寒天に播種した。100μl前後の形質転換細胞培養物を播種し、37℃で一晩インキュベートした。
【0172】
BLR(DE3): BLRは、BL21のrecA
−誘導体(F−ompT hsdSB(rB−mB−)gal dcm(DE3)である。組換えタンパク質の発現に使用されるこの大腸菌株はプラスミド単量体収率を改善し、反復配列を含有するまたはその産物がDE3プロファージの損失を生じ得る標的プラスミドを安定化させる助けとなり得る(Studier, F.W. (1991) J. Mol. Biol. 219: 37-44)。大腸菌BLR(DE3)の詳細な遺伝子型は、NOVAGEN(登録商標)により公開されている(F−ompT hsdSB(rB− mB−) gal dcm Δ(srl−recA)306::Tn10(TetR)(DE3)。
【0173】
HMS174(DE3): HMS174株は、K−12バックグラウンドでrecA突然変異を提供する。BLRと同様に、これらの株は、その産物がDE3プロファージの損失を生じ得るある特定の標的遺伝子を安定化させ得る。大腸菌HMS174(DE3)の詳細な遺伝子型は、NOVAGEN(登録商標)により公開されている(F− recA1 hsdR(rK12− mK12+)(DE3)(Rif R)。
BLR(DE3)を用いた生産およびHisタグを有する構築物の特徴を実施例3〜実施例6に記載する。
実施例3:振盪フラスコを用いたタンパク質発現
一般に、組換えプラスミドで形質転換された大腸菌BLR(DE3)を播種した1枚のコンフルエント寒天プレートを掻き取り、培養培地に再懸濁させ、これを用いて、800mlのLBブロス(Becton、Dickinson and Company)±1%(重量/容量、w/v)グルコース(Laboratoire MAT、カタログ番号:GR−0101)および50μg/mlカナマイシン(Sigma)を、O.D.
600nmが0.1〜0.2となるまで播種した。培養物を、O.D.
600nmが約0.8に達するまで、37℃にて250RPMの回転でインキュベートした。
【0174】
次に、1mlの各培養物を回収し、14000RPMで5分間遠心分離し、上清およびペレットを−20℃で別々に冷凍した。
【0175】
O.D.
600nmが約0.8の時、BLR(DE3)培養物を冷却(−20℃、20分または4℃、1時間、好ましくは、4℃、1時間)した後、1mMイソプロピルβ−D−1−チオガラクトピラノシド(IPTG;EMD Chemicals Inc.、カタログ番号:5815)を添加して16、22および30℃で一晩、または250RPMで振盪しながら37℃で3時間、好ましくは、22℃で一晩インキュベートすることにより組換えタンパク質の発現を誘導した。この誘導期間の後、培養物を14000RPMで5分間または6000RPMで15分間遠心分離し、上清(培地画分サンプル)およびペレット(可溶性および不溶性画分を含有する)を−20℃で別々に冷凍した。
【0176】
これらの条件を周辺質タンパク質発現に用いた。
実施例4:振盪フラスコ、細胞ペースト、Hisタグを有する構築物を用いたタンパク質精製
誘導後に得られた各細菌ペレットを、500mM NaCl、10mMイミダゾールおよびRoche COMPLETE(登録商標)プロテアーゼ阻害剤カクテル(1錠/500mM NaClを含有する50mlのHEPESバッファー、Roche COMPLETE(登録商標)ULTRA錠、Roche Diagnostics Corporation)を含有する20mMの4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)バッファー(pH8.0)を再懸濁した。
【0177】
あるいは、NaClを含有するHEPESバッファーの代わりに20〜50mMのビシンバッファー用いてよい。例えば、20mMのビシンバッファーを用いてよい。細菌を、Constant System 1.1 KW 2 X 30000 PSI(pounds per square inch)用いて溶解させた。20000gで4℃にて20分間遠心分離することによって可溶性(上清)と不溶性(ペレット)成分を分離した。
【0178】
6−Hisタグを有するタンパク質を、PROFINIA(商標)タンパク質精製プロトコール(Bio−Rad Laboratories,Inc.)を用い、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)にて、非変性条件下で精製した。可溶性成分を細菌の再懸濁に用いたものと同じバッファーで予め平衡化した5ml容のHis Trapカラム(Bio−Rad Laboratories,Inc.)にロードした。なお、可溶性成分は最大5ml/分で添加した(「フロースルー画分」を形成)。カラムにロードした後に、カラムを10カラム容量の同バッファーを用い、10ml/分の測度で洗浄した(「洗浄画分#1」を形成)。500mM NaClおよび20mMイミダゾールを含有する20mMビシンバッファーまたは20mM HEPESバッファー(pH8.0)を用いて第2の洗浄を行った(「洗浄画分#2」を形成)。500mM NaClおよび250mMイミダゾールを含有する2カラム容量の20mM HEPESバッファーまたは50mMビシンバッファー(pH8.0)を用い、10ml/分の測度で溶出を行った(「溶出画分」を形成する)。
【0179】
タンパク質の純度を改善するために、IMACからの陽性溶出画分をプールし、カルシウムまたはマグネシウム(NaCl 137mM、KCl 2.7mM、Na
2HPO
4 8.1mM、KH
2PO
4 1.47mM、pH7.4)を除いたリン酸緩衝生理食塩水で予め平衡化したサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)カラム(GE HealthcareからのHILOAD(商標)SUPERDEX(商標)200 26/60)にロードした。溶出画分からのサンプルをドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により分析した。Centricon 10000MW(Millipore)を用いてサンプルを濃縮した。
【0180】
タンパク質濃度は分光計を用いて測定した。
実施例5:Hisタグを有する構築物のSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析ならびにhisタグを有さないLVL317およびLVL318構築物のSDS−PAGE分析
可溶性画分および不溶性画分の調製
例えば、誘導後の1mlの培養物(例えば、上記の実施例3参照)を14000RPMで2分間遠心分離した。ペレットを、40μlのBUGBUSTE(登録商標)タンパク質抽出試薬(NOVAGEN(登録商標)、EMD4 Biosciences、Merck)を用いて再可溶化して細胞懸濁液を作製した。この細胞懸濁液を回転プラットフォーム上、室温で10分間インキュベートした。次に、この細胞懸濁液を14000RPMで2分間遠心分離して可溶性画分を分離した。得られたペレット(不溶性画分)を、70μlの脱イオン水、5μlのジチオトレイトール(DTT)1Mおよび25μlのNUPAGE(登録商標)LDS(ドデシル硫酸リチウム)サンプルバッファー4×(INVITROGEN(商標))を用いて再可溶化した。可溶性画分(再可溶化ペレットの細胞懸濁液からの上清)を30μlの脱イオン水、5μlのDTT 1Mおよび25μlのLDSサンプルバッファー4×に加えた。
培地画分の調製
例えば、培地画分を調製するために、遠心分離後の誘導済みの全細胞培養物からの100μlの上清(例えば、上記の実施例3参照)を、500μlのRC試薬I(Bio−Rad Laboratories,Inc.)を加えることによって濃縮し、このサンプルを室温で1分間混合し、インキュベートした。次に、500μlの試薬II(Bio−Rad Laboratories,Inc.)をこのサンプルに加え、混合した。この配合物を14000RPMで10分間遠心分離した。ペレットを、28μlの脱イオン水、2μlのDTT 1Mおよび10μlのLDS SB 4×を用いて再可溶化した。
精製画分の調製
例えば、SDS−PAGE分析のために、70μlのサンプル、5μlのDTT 1Mおよび25μlのLDSサンプルバッファー4×を加えることにより、精製タンパク質(例えば、実施例4に記載の通りに得た)調製した。
SDS−PAGE分析およびニトロセルロース膜への転写
SDS−PAGE分析およびニトロセルロース膜への転写は、NUPAGE(登録商標)Bis−Tris 4−12%ゲルを用い、製造者の推奨(Invitrogen)に従って行った。サンプル、バッファーの調製および泳動条件は、供給者が推奨している条件下で行った。
【0181】
一例では、ゲルに、70μlの精製タンパク質画分、5μlのDTT 1Mおよび25μlのLDS SB 4×を含むマスターミックスからの20μlサンプルをロードした。
【0182】
サンプルをNUPAGE(登録商標)Bis−Tris 4〜12%ゲルに流した後、それらのタンパク質をニトロセルロース膜に転写した。
【0183】
ニトロセルロース膜を、3%ミルク/PBS 1×新鮮溶液を用い、37℃、60RPMで30分間ブロッキングした。このブロッキングインキュベーションの後、一次抗体を(6X Hisタグ(登録商標)抗体、Abcam PLC、カタログ番号:ab9108)3%ミルク/PBS 1×新鮮溶液中1:1000倍希釈で、37℃、60RPMにて1時間加えた。その後、膜を、各回、室温で0.02%ポリソルベート(polsorbate)20(例えば、TWEEN(商標)20)/PBS 1×を用いて5分間、3回洗浄した。二次抗体(アルカリ性ホスファターゼ(AP)ウサギ抗IgG(H+L)ウサギ、Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)を、3%ミルク/PBS 1×新鮮溶液を用いて1:14000希釈で加えた。膜を37℃、60RPMで1時間インキュベートした。その後、膜を、0.02%ポリソルベート20(例えば、TWEEN(商標)20)/PBS 1×を用いて室温で5分間3回洗浄した後、膜を5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリルホスフェート/ニトロブルーテトラゾリウム(例えば、BCIP(登録商標)/NBT Sigma−Aldrich(登録商標)製、1錠剤/10ml水)に曝した。
【0184】
融合タンパク質構築物LVL291、LVL268およびLVL269に関する誘導細菌抽出物のSDS−PAGEに関しては
図1を参照。誘導(ind)前後のLVL291、LVL268およびLVL269に関して、不溶性画分(I)、可溶性画分(S)および培養培地画分(M)をロードした。
【0185】
融合タンパク質構築物LVL291、LVL268およびLVL269の精製抽出物に関するSDS−PAGEおよびウエスタンブロットに関しては
図2を参照。LVL291、LVL268およびLVL269の精製に関して、フロースルー画分(Ft)、洗浄画分(W)および溶出画分(E)をロードした。抗hisタグを用いて抽出物をプロービングした。
【0186】
融合タンパク質構築物LVL291およびLVL315に関する誘導細菌抽出物および精製抽出物のSDS−PAGEに関しては
図3を参照。LVL291およびLVL315に関して、培養培地画分(M)、可溶性画分(Sol)、不溶性画分(Ins)、フロースルー画分(Ft)、洗浄画分#1(W1)、洗浄画分#2(W2)および溶出画分(E)をロードした。
【0187】
融合タンパク質構築物LVL312に関する誘導細菌抽出物および精製抽出物のSDS−PAGEに関しては
図4を参照。LVL312に関して、培養培地画分(M)、可溶性画分(Sol)、不溶性画分(Ins)、フロースルー画分(Ft)、洗浄画分#1(W1)、洗浄画分#2(W2)および溶出画分(E)をロードした。
【0188】
融合タンパク質構築物LVL291、LVL702、LVL736、LVL737、LVL738、LVL739、LVL740およびpET26bベクター(陰性対照)に関する誘導細菌抽出物由来の可溶性画分のSDS−PAGEに関しては
図25を参照。(a)実験1(b)実験2(c)実験3。PE−PilA融合タンパク質を矢印で示す。
【0189】
実験1、2および3からの可溶性画分中の融合タンパク質の平均バンドパーセンテージに関しては
図26を参照。
【0190】
図5および
図6のそれぞれにおいてSDS−PAGE分析に使用したLVL317およびLVL318細菌抽出物は一般に上記のように調製した。
【0191】
図5.融合タンパク質構築物LVL317に関する誘導(1mMおよび10μM IPTG)細菌抽出物のSDS−PAGE。誘導前(NI)および誘導後(In)、可溶性画分(S)、不溶性画分(I)からの抽出物。
【0192】
図6.融合タンパク質構築物LVL318に関する誘導(1mMおよび10μM IPTG)細菌抽出物のSDS−PAGE。誘導前(NI)および誘導後(In)、培養培地画分(M)、可溶性画分(S)、不溶性画分(I)からの抽出物。
【0193】
SDS−PAGEによるタンパク質分離物をImmobilon−P膜に転写した。クーマシーブルー染色タンパク質バンドを切り取り、シークネーターリアクター(sequenator reactor)に入れた。配列決定は、Applied Biosystems PROCISE(登録商標)タンパク質シーケンサー、モデル494−cLCを用いて、製造者のプロトコールに従って行った。
【0194】
【表5】
実施例6:LVL291融合タンパク質の特徴
LVL291の物理的特性:LVL291におけるPEおよびPilAの折り畳みおよび融点
円偏光二色性:
二次構造の解析
円偏光二色性(CD)を用いて、構造的非対称による左円偏光と右円偏光の吸収の違いを測定することによってタンパク質の二次構造組成を決定する。遠UV領域(190〜250nm)内のCDスペクトルの形状および大きさは、タンパク質がβ−シートを呈するかα−ヘリックスを呈するかまたはランダムコイル構造を呈するかによって異なる。あるタンパク質サンプルにおける各二次構造タイプの相対的存在量は、参照スペクトルとの比較によって計算することができる。
【0195】
遠UVスペクトルは、Jasco J−720分光偏光計にて、0,01cmの光路長を用いて178〜250nmまで、1nmの分解能帯域幅で測定する。セルの温度は、PeltierサーモスタットRTE−111セルブロックによって23℃に維持する。測定の間、10L/分の窒素流を維持した。
結果:
PE(構築物pRIT16762由来)、PilA(構築物pRIT16790由来)およびPE−PilAタンパク質に関して得られた遠UV CDスペクトルは、α構造とβ構造の混合物を含有する折り畳まれたタンパク質に特徴的なものであるが、PEはPilAおよびPE−PilAよりもαヘリックスが有意に豊富である(
図7、PE、PilAおよびPE−PilA融合タンパク質のCDスペクトル)。
【0196】
ひと度、キメラタンパク質として相互に結合したPEおよびPilA個々のタンパク質の折り畳みの完全性を評価し、次に、両方の間の可能性のある相互作用を確認するために、様々なスペクトルを計算した。
【0197】
PEおよびPilA遠UVスペクトルが組み合わさると、得られるスペクトルはPE−PilAキメラ(chimer)のスペクトルに重なる(
図8、PEおよびPilA CDスペクトルの組合せ)。この結果は、PE−PilAキメラ(chimer)が個々の成分中に検出される全ての二次構造を含むことを示唆する。それはまた、これらのタンパク質の融合が個々の成分の二次構造に大きな影響を持たないこと、および結果として、PEおよびPilAの折り畳みが、これらのタンパク質が分離状態であっても融合していても有意に異ならないことも示唆する。
融点評価:
融合物としての発現が個々のタンパク質の熱力学的特性に影響力を持つかどうかを評価するために、PE、PilAおよびPE−PilAの融点を、温度によるαヘリックスの折り畳みの解除を円偏光二色性によってモニタリングすることにより評価した。
【0198】
αヘリックスの存在は、222nmにおける円偏光二色性シグナルが最小であることを特徴とし、従って、温度上昇中の222nmにおけるCDシグナルの有意な増強は、タンパク質変性の指標となる。タンパク質が二次構造の欠如を受ける温度を決定することで、それらのタンパク質の半数がその構造を失ってしまう温度に相当する融点(Tm)の決定が可能となる。
【0199】
融点は、CD 222nmプロットに対する温度から得られる熱変性曲線上の変曲点の同定により決定することができる。
【0200】
遠UV CDにより決定されたPilAおよびPEの融点は、それぞれ52℃および68℃である(
図9、PilAの熱変性曲線;
図10、PEの熱変性曲線)。
【0201】
PE−PilA融合タンパク質は、48℃および71℃に2つの明瞭に異なるTmを示す(
図11、PE−PilAの融合タンパク質熱変性曲線)。それらの値は、PEおよびPilAタンパク質がキメラ(chimer)中に結合されてもなお独立に折り畳まれること、およびそれらは分離状態であっても融合していても同様の温度で折り畳みを解くことを示す。48℃でのPilA部分の折り畳み解除が沈殿を生じない、または71℃におけるPE部分のTmに影響を及ぼさないという所見は、融合物内でのPEとPilAの間の相互作用が最小であること、およびそれらは互いに観察可能な大きな影響を持たないことを強く示唆する。タンパク質の融点は、バッファー組成物または相互作用分子の存在を含む様々な外部条件に感受性があり、PEとPilAの融合時に大きな変動が見られないということは、PEとPilAが相互に結合されている際に両者の構造および特性の大部分が保存されていることを強く示唆する。
実施例7:発酵プロセス
本発明の融合タンパク質は、当業者に公知の方法によって作製することができる。
実施例8:PE、PilA、およびLVL317のタンパク質の精製
pRIT16762からのPEタンパク質の精製:
pRIT16762発現ベクターを作製するために、BamHIおよびNcoI制限酵素を用いてpRIT16711ベクターを消化し、シグナル配列(pelB)とPEの間の6個のアミノ酸残基を削除した。得られたベクターをpRIT16712と呼称した。このベクターでは、シグナル配列pelBとPEの間に3個のアミノ酸MDPが存在する。第2段階で、鋳型としてのpRIT16712をプライマーMnoNTHi−44およびMnoNTHi−45(表4に記載)とQuikChange II部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies、Stratagene Division)とともに用いて部位特異的突然変異誘発を行い、アミノ酸配列をMDPからQIQへ変化させた。
【0202】
PE QIQ(pRIT16762構築物由来)を含有する大腸菌BLR(DE3)のワーキングシードを−80℃から解凍し、これを用い、37℃、215RPMの振盪下で一晩インキュベートすることにより、LBブロス中、100mlの前培養物を調製した。一晩インキュベートした後、800mlのLB APSを含有する8つのフラスコに12.5mlの前培養物を播種し、OD
600は0.06前後と測定された。これらの培養物を37℃で振盪しながら3時間インキュベートした。OD
600が0.9前後の際に、1mMのIPTGを加え、誘導を開始した。誘導中、培養物を22℃で振盪しながら19時間インキュベートした。誘導後、OD
600は2.2前後であった。これらの細胞培養物を、1Lボトル内に入れた1L遠心バッグ中に移し、4℃で30分間、6,000xg遠心分離し、上清を廃棄した。誘導前後の培養物および上清の1mlアリコートをさらなる分析のために保持した。
PE QIQで誘導したBLR(DE3)の溶解
遠心分離ボトルから遠心バッグを取り出し、開封し、ペレットをバックからビーカーに出した。8つのペレットを一緒にし、100mlの結合バッファー(20mM Hepes、10mMイミダゾール、500mM NaCl、pH8.01)に再懸濁させた。PE QIQ構築物を含有する大腸菌BLR(DE3)をConstant Systems Ltd.製のTS Series Bench Top細胞粉砕器(1×30kPsi;1×15kPsi)で粉砕した。溶解液を30分間、6000RPM、4℃で遠心分離した。上清を維持し、IMACカラムにロードした。
PE QIQのIMAC精製
IMACカラム(BioRad、Bio−Scale Mini Profinity IMACカートリッジ5ml)を5CVの結合バッファー(20mM HEPES、10mMイミダゾール、500mM NaCl、pH8.01)を5ml/分で用いて平衡化した。100mlの溶解液上清をIMACに2.5mL/分でロードした。フロースルーをさらなる分析のために50ml画分として回収した。カラムを3CVの結合バッファーで洗浄して、結合していないタンパク質を除去した。結合していないタンパク質を含有するサンプルを50mlのチューブに15mlの1アリコートとして回収した。カラムを2CVの洗浄バッファー(20mM HEPES、20mMイミダゾール、500mM NaCl、pH8.01)で洗浄し、96ウェルプレートに2ml画分として回収した。次に、結合したタンパク質を6CVの100%溶出バッファー(20mM HEPES、250mMイミダゾール、500mM NaCl、pH8.01)で溶出した。溶出されたタンパク質を96ウェルプレートに2ml画分として回収した。洗浄および溶出は5ml/分で行った。
PE QIQのIMACプールに対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SECカラム(GE healthcare、HILOAD(商標)26/60 SUPERDEX(商標)75分取グレード分取グレード、高さ60cm 容積およそ319ml)を3CVのSECバッファー(20mM HEPES、150mM NaCl、pH8.49)で平衡化した。11mlのIMAC溶出液を2.5ml/分の流速でカラムにロードした。0.3CV〜0.9CVから2ml画分を回収した。2回実施した後に、画分をSDS−PAGEにより分析した。Prot Eタンパク質を含有する2回の実施からの画分を一緒にプールした(「SECプール」、総容量およそ48ml)。500mMのアルギニンをSECプールに加えた。
上記SECプロトコールで作製されたPE QIQプールサンプルの用量
SECプールに対して、製造者のプロトコールに従い、Bio−Rad RC DC(商標)キットからのRCDC(還元剤およびDetergent Compatible)法を行った:
各供試サンプルおよび標品について、25μLをマイクロ遠沈管に二反復で分注した。125μLのBio−Rad RC試薬Iを各遠沈管に加え、各遠沈管をボルテックスにかけ、室温で1分間インキュベートした。125μLのBio−Rad RC試薬IIを各遠沈管に加え、各遠沈管をボルテックスにかけた後、14,000xgで5分間遠心分離する。きれいな吸収性のティッシュペーパー上に遠沈管を逆さに置き、遠沈管から液体を完全に排出させることによって上清を排出する。25.4μLの試薬A(1mlの試薬Aにつき20μLの試薬Sを混合することにより予め調製)を各遠沈管に加え、各遠沈管をボルテックスにかけ、室温で5分間、または沈殿が完全に溶解するまでインキュベートする。ボルテックスにかけた後、次工程に進む。200μLのDC試薬Bを各遠沈管に加え、すぐにボルテックスにかける。室温で15分間インキュベートした。全てのサンプルを96ウェルプレートに移し、750nmでの吸光度を読み取り、各未知のタンパク質サンプルのタンパク質濃度を決定する。
【0203】
ProtE濃度は1.069mg/mlであった。
PilA Hisタグを有するタンパク質の精製:
PilAは、下記の一般手順に従って精製した:
PilAまたはその断片をコードする構築物を含有する大腸菌細胞を、BUGBUSTER(登録商標)およびBENZONASE(登録商標)ヌクレアーゼ(NOVAGEN(登録商標))、例えば、10ml BUGBUSTER(登録商標)および10μl BENZONASE(登録商標)ヌクレアーゼに懸濁させる。細胞溶解液を室温にて回転プラットフォーム上で、例えば15分間混合する。細胞溶解液を4℃にて、例えば、16,000gにて20分間遠心分離する。タンパク質を含有する上清を、Ni NTA HIS・BIND(登録商標)樹脂を含むNi NTAカラムに加え、4℃で、例えば、1時間混合する。このカラムは2mlのNi NTA HIS・BIND(登録商標)樹脂(NOVAGEN(登録商標))および10ml 1×結合バッファー(NOVAGEN(登録商標)のNi−NTAバッファーキット)からなり得る。次に、カラムフロースルーを回収する。樹脂を例えば、300mM NaCl、50mM NaH
2PO
4、25mMイミダゾン、pH8.0を含有する1×洗浄バッファーで2回洗浄する。洗液を重力流により回収する。タンパク質をカラムから1×溶出バッファー、例えば、300mM NaCl、50mM NaH
2PO
4、250mMイミダゾン、pH8.0で溶出させる。タンパク質は、結合バッファーで透析し、上記のようにNi NTAカラムに再び流すことによりさらに精製することができる。
PilAのトロンビン切断
次に、PilAをトロンビン(1/50希釈)とともに室温で16時間インキュベートし、ヒスチジンタグを除去する。
トロンビンで切断したPilAに対するサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SECカラム(GE healthcare、HILOAD(商標)26/60 SUPERDEX(商標)75分取グレード、高さ60cm 容積およそ319ml)を5CVのSECバッファー(20mM HEPES、150mM NaCl、pH8.52)で平衡化した。およそ10mlの切断PilAをこのカラムに流速2.5ml/分でロードした。0.3CV〜0.9CVから2ml画分を回収した。2回の流出を行った後、画分をSDS−PAGEにより分析した。切断PilAタンパク質を含有する2回の流出からの画分をプールした(「SECプール」、総容量およそ52ml)。
PilA、SECプールの量
SECプールに対して上記のようにRCDC法を行った。切断PilAの濃度は5.37mg/mlであった。
PBS 1×pH7.4によるPilA SECプールの透析(透析倍率=1600)およびRCDCによる処理
RCDCにより測定された透析後濃度は3.0mg/mlであった。
LVL317の精製
浸透圧ショック
LVL317融合タンパク質は細菌周辺質で発現されプロセシングされるので、このタンパク質は浸透圧ショックにより抽出された。
【0204】
4Lのファーメンター培養物からの、LVL317を含有する冷凍(−20℃)採取した大腸菌B2448細胞ペーストをプールし、24mM Tris−HCl、16%(w/v)スクロース、9.9%(w/v)グルコース、10mM EDTA、pH8.0からなる高張バッファーに、最終容量が4Lとなるまで再懸濁させた。この懸濁液を、RW 16基本撹拌機に装備した3翼プロペラを用い、中速で室温にて30分間穏やかに混合した。懸濁液を15,900xgにて室温で30分間遠心分離した。上清(SN1)をゲル分析用に保持した。
【0205】
得られたペレットを低張溶液;38mM MgCl
2に再懸濁させ、室温で30分間混合した。この混合物を室温にて15,900xgで30分間遠心分離し、上清(SN2)中に抗原を回収した。
【0206】
600ml/分の流速で0.45/0.2μmポリエーテルスルホンSartorius Sartopore 2 MidiCapフィルターで濾過することにより、SN2の清澄化を行った。
【0207】
SN2を20mM NaH
2PO
4−Na
2HPO
4、pH7.0で1:3希釈し、必要であればpHを7.0に調整し、600ml/分で0.45/0.2μmポリエーテルスルホンSartorius Sartopore 2 MidiCapフィルターでの濾過によりさらに清澄化を行った。
SP SEPHAROSE(商標)ファーストフロー(SP FF)クロマトグラフィー
希釈/濾過したSN2を2CVの20mM NaH
2PO
4/Na
2HPO
4バッファーpH7.0で平衡化した14cm ID(内径)×20cm長のカラム(カラム容積3100ml)中の強陽イオン交換樹脂(SP SEPHAROSE(商標)FF−GE Healthcare)にロードし、捕捉させた。カラムを5CVの20mM NaH
2PO
4/Na
2HPO
4バッファーpH7.0で洗浄した後、抗原(LVL317内に含有)を、同じ洗浄バッファー中100mMまでNaCl濃度を高めることにより溶出させた。
典型的なSP SEPHAROSE(商標)ファーストフロークロマトグラムに関しては
図12を参照。
Q SEPHAROSE(商標)ファーストフロー(Q FF)クロマトグラフィー
SP FF溶出液中に存在する抗原を20mM Tris pH8.5で1:4希釈し、必要であればpHを8.5に調整し、2CVの20mM TrisバッファーpH 8.5で平衡化した14cm ID×11.8cm長のカラム(カラム容積1800ml)中の強陰イオン交換樹脂(Q SEPHAROSE(商標)FF−GE Healthcare)に通した。抗原はフロースルー画分に回収された。
【0208】
典型的なQ SEPHAROSE(商標)ファーストフロークロマトグラムに関しては
図13を参照。
濃度、ダイアフィルトレーション、ポリソルベート80の添加および濾過除菌
抗原を含有するQ FFフロースルーをクロマトグラムUVに基づいて0.7〜0.8mg/mlまで濃縮し、Pellicon−2(商標)10kDaカットオフメンブレン(Millipore)を用いて、5DVの10mM KH
2PO
4/K
2HPO
4バッファーpH6.5でダイアフィルトレーションを行った。
【0209】
5%保存溶液を用い、ポリソルベート80(例えば、TWEEN(商標)80)を前記限外濾過保持液に加え、マグネチックスターラーを用いて130rpm、4℃で30分間撹拌した。ポリソルベート80の終濃度は0.04%であった。限外濾過保持液を0.45/0.2μm酢酸セルロースメンブレン(Sartobran 300、Sartorius)で濾過することにより除菌した。精製されたバルクを−20℃または−80℃で保存した。絶対タンパク質濃度はAAA(アミノ酸分析)により0.737mg/mlで測定した。
実施例9:ポリソルベート80の使用
滴定実験は、濾過除菌の前に精製バルクに終濃度0.04%(w/v)までポリソルベート80、具体的には、TWEEN(商標)80を加えると、微細線維粒子の形成および凝集が軽減されることを示した。
【0210】
DSC分析によれば、TWEEN(商標)80は、−20℃で保存した後の冷凍/解凍サイクル後、ならびに4℃、−20℃および−80℃および37℃で4日間保存した後に見られる構造変化(30〜45℃)を軽減した。
実施例10:LVL317のSDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット分析:
NUPAGE(登録商標)、Bis−Tris 4〜12%ゲルに、95℃で5分間加熱した、50mM DTTを含有するNUPAGE(登録商標)LDSサンプルバッファー中、10μgのサンプルを下記のようにロードした(低濃度のサンプルに関しては20μLのサンプルをロードした)。泳動:NUPAGE(登録商標)MESランニングバッファー中、室温(RT)、200ボルトで35分。ゲルをインスタントブルー(Novexin cat.:ISB01L)で2時間染色し、水中で一晩脱染した。
レーン内容:
1:MW標品(10μL)
2:開始(全画分)(10μg)
3:濾過なしのSN1(10μg)
4:濾過なしのSN2(10μg)
5:抽出なし(10μg)
6:ロードSP FF(10μg)
7:フロースルーSP FF(6.9μg)
8:洗浄SP FF(20μL)
9:溶出SP FF(10μg)
10:ストリップSP FF(10μg)
11:ロードQ FF(8.9μg)
12:溶出Q FF(9.8μg)
13:ストリップQ FF(4.8μg)
14:0.04%TWEEN(商標)80添加前のTFF保持液(10μg)
15:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過しない精製バルク(10μg)
16:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過除菌した精製バルク(10μg)
17:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過除菌した精製バルク(20μg+添加大腸菌細胞溶解液Rix(1μg))
18:大腸菌細胞溶解液Rix(2μg)
19:大腸菌細胞溶解液Rix(1μg)
20:大腸菌細胞駅Rix(0.5μg)
PE−PilA融合タンパク質の精製プロセスからのインプロセスサンプルのSDS−PAGEに関しては
図14を参照。
【0211】
ウエスタンブロットについては、タンパク質をNUPAGE(登録商標)転写バッファー+20%メタノール、0.1%SDS中、30ボルト、4℃で一晩、ニトロセルロース膜に転写した。膜を50mM Tris、150mM NaCl pH7.4+5%脱脂粉乳で1時間ブロッキングし、ブロッキングバッファーで希釈したウサギポリクローナル一次抗体(抗Prot−E 1/50000および抗大腸菌(BLR)1/1000)中で2時間インキュベートし、50mM Tris pH7.4+0.05% Tween 20中で5分間3回洗浄し、二次抗体(ブロッキングバッファーで1/5000希釈したアルカリ性ホスファターゼ結合ヤギ抗ウサギ中で1時間インキュベートし、洗浄バッファー中で5分間3回洗浄し、BCIP/NBT基質(1錠/10ml)に溶解した。インキュベーションは全て25ml/膜で行った。
【0212】
PE−PilA融合タンパク質からの精製プロセスのインプロセスサンプルのウエスタンブロットに関しては
図15を参照。ウサギポリクローナル抗PEを用いてブロットした。
レーン内容:
1:MW標品(10μL)
2:開始(全画分)(10μg)
3:濾過なしのSN1(10μg)
4:濾過なしのSN2(10μg)
5:抽出なし(10μg)
6:ロードSP FF(10μg)
7:フロースルーSP FF(6.9μg)
8:洗浄SP FF(20μL)
9:溶出SP FF(10μg)
10:ストリップSP FF(10μg)
11:ロードQ FF(8.9μg)
12:溶出Q FF(9.8μg)
13:ストリップQ FF(4.8μg)
14:0.04%TWEEN(商標)80添加前のTFF保持液(10μg)
15:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過しない精製バルク(10μg)
16:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過除菌した精製バルク(10μg)
17:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過除菌した精製バルク(20μg+添加大腸菌細胞溶解液Rix(1μg))
18:大腸菌細胞溶解液Rix(2μg)
19:大腸菌細胞溶解液Rix(1μg)
20:大腸菌細胞駅Rix(0.5μg)
PE−PilA融合タンパク質からの精製プロセスのインプロセスサンプルのウエスタンブロットに関しては
図16参照。ウサギポリクローナル抗大腸菌(BLR)を用いてブロットした。
レーン内容:
1:MW標品(10μL)
2:開始(全画分)(10μg)
3:濾過なしのSN1(10μg)
4:濾過なしのSN2(10μg)
5:抽出なし(10μg)
6:ロードSP FF(10μg)
7:フロースルーSP FF(6.9μg)
8:洗浄SP FF(20μL)
9:溶出SP FF(10μg)
10:ストリップSP FF(10μg)
11:ロードQ FF(8.9μg)
12:溶出Q FF(9.8μg)
13:ストリップQ FF(4.8μg)
14:0.04%TWEEN(商標)80添加前のTFF保持液(10μg)
15:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過しない精製バルク(10μg)
16:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過除菌した精製バルク(10μg)
17:0.04%TWEEN(商標)80添加後の濾過除菌した精製バルク(20μg+添加大腸菌細胞溶解液Rix(1μg))
18:大腸菌細胞溶解液Rix(2μg)
19:大腸菌細胞溶解液Rix(1μg)
20:大腸菌細胞駅Rix(0.5μg)
SDS−PAGEおよびウエスタンブロット図の説明: PE−PilA融合タンパク質は30kDaに移動する。浸透圧ショックによる抽出は、細菌の周辺質で発現され、プロセシングされた融合タンパク質を抽出し、細菌由来のコンタミネーションを軽減した。高張処理中の融合タンパク質の損失は小さい(レーン3)。低張処理により小さな割合ながら抽出されないものがあり、細胞との結合を維持する(レーン5)。SP FFフロースルー(レーン7)および両カラムにおけるストリップ画分(レーン10および13)の損失は小さい。ストリップ画分の総容量は少ないので、融合タンパク質の損失は有意ではない。ストリップ画分には分解されたバンドが見られるが、最終産物には見られない。精製バルクには大腸菌宿主細胞タンパク質由来の有意なコンタミネーションはない(レーン16)。
【0213】
LVL735およびLVL778分析からLVL317と同様のプロファイルが得られた。
実施例11:PE、PilAおよびLVL317の融点データ
PE−PilA融合Hisタグ不含タンパク質(LVL317)の温度遷移を、上記のように精製したPE hisタグ含有(実施例8に記載の通り)タンパク質および切断型PilA(実施例8に記載の通り)タンパク質の両方の温度遷移と比較した。
【0214】
DSC前に、PEおよびPilAを10mM K
2HPO
4/KH
2PO
4 pH6.5+0.04%Tween80(1:250サンプル:バッファー容量比)中で一晩透析し、それらを融合タンパク質と同じバッファーとした。透析後、BCAによりタンパク質濃度を測定し、300μg/ml(PE)および500μg/ml(PilA)に調整した。
【0215】
MicroCal,LLC(GE Healthcareの一部門)製のVP(商標)−DSCで行った分析。最終的な透析バッファーを参照として用い、スキャンから差し引いた。DSCスキャン速度90℃/時。配合後の最終容器(FC)にて温度遷移を測定する能力を評価するために、融合タンパク質をFC濃度(60μg/ml)まで希釈した。最終容器のデータは示されていない。
結果:
PE−PilA融合タンパク質およびPEおよびPilAタンパク質の温度遷移に関しては
図17を参照。曲線:PilA(1)、タンパク質E(Prot E、PE)(2)、無希釈のPE−PilA PB737μg/ml(3)、およびFC濃度60μg/mlに希釈したPE−PilA PB(4)。
1−PilA Tm:53℃
2−タンパク質E Tm:63
3−無希釈のPE−PilA PB(精製バルク)737μg/ml Tm
1:53.7℃およびTm
2:66.1℃
4−FC濃度60μg/mlに希釈したPE−PilA PB Tm
1:53.2℃およびTm
2:67.6℃
精製融合タンパク質(LVL317)において2つの遷移が検出された(曲線3および4)。
【0216】
PE−PilA融合タンパク質のTm
1(53.7℃)は、PilA遷移(53℃)に類似している。
【0217】
PE遷移(63℃)に比べてPE−PilAのTm
2(66.1℃)は有意なシフトである。両ドメインの融合物はPE断片を安定化すると思われる。
【0218】
無希釈に比べて希釈融合タンパク質のTm
2のシフトは、濃度依存的である凝集に典型的な、急激に低下する勾配から生じる濃度の人為現象である。
【0219】
LVL735およびLVL778の抗原折り畳み分析は、LVL317の場合と同様である。
実施例12:Balb/cマウスにおけるPE−PilA融合タンパク質構築物LVL291抗PilAの免疫原性応答
AS03
A中に配合した精製LVL291 PE−PilA融合タンパク質(異種シグナルペプチドを含まないLVL291融合タンパク質)に対する免疫応答をBalb/cマウスにおいて評価した。0、14および28日目に、動物(マウス20個体/群)を、それぞれAS03
A中に配合した10μgのPE(ベクターpRIT16762由来)、PilA(ベクターpRIT16790由来)またはPE−PilAで筋肉内により免疫した。対照群にはAS03
Aのみを接種した。各抗原に対する抗体応答を、42日目に採取した個々の血清において測定した。抗体応答は陰性対照で得られた。
図18に示されるように、PilAに対する抗体応答は、一価PilAで免疫したマウスにおける抗体応答に比べてPE−PilA融合物で免疫したマウスで高かった。PEに対する抗体応答は、融合タンパク質で免疫したマウスと一価PEで免疫したマウスで同等であった。GMT=幾何平均力価。WINDOWS(登録商標)(Microsoft)下で実行するSOFTMAX(登録商標)Proソフトウエア(Molecular Devices)を用いてデータを取り込んで解析し、4パラメーターロジスティック対数関数を用いて標準曲線を計算した。4パラメーターロジスティック対数関数は、濃度に対する光学密度(対数)スケール上にプロットした際に明白なS字型を示す参照血清の曲線を高精度で表す。抗体濃度は、マウス血清サンプルの各希釈において、標準曲線の補間によって計算した。品質管理血清および未知の血清サンプル中の抗体は、参照の希釈曲線の有効範囲(10〜80%)内にある全ての希釈からの値の平均を取ることによって得られる。結果は
図18に示すが、これはBalb/cマウスモデルにおけるLVL291 PE−PilA融合タンパク質に対する抗体応答および一価PEおよびPilAに対する抗体応答をグラフで示したものである。
実施例13:マウス鼻咽頭定着モデル。PE−PilAによる免疫誘導。NTHi 86−028NP株およびNTHi 3224A株による抗原刺激
Balb/c雌マウス(20/群)を鼻腔内に、0日目と14日目に、LT(大腸菌(Escheria coli)の易熱性毒素)を配合した6μgの精製PE−PilA融合タンパク質(86−028NPによる抗原刺激にはLVL291;3224A株による抗原刺激にはLVL317)で、28日目にはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中、6μgの精製PE−PilA融合タンパク質で免疫を行った。対照マウス(20/群)にはLTのみを接種した。次に、マウスの鼻腔内を5×10
6 CFU(コロニー形成単位)の同種NTHi 86−028NP株および異種NTHi 3224A株で抗原刺激した。同種および異種は、マウスが免疫されたNTHi株のリファレンスにより決定される。抗原刺激の1日後および2日後に取り出した鼻腔において細菌コロニーを計数した。D1=1日目。D2=2日目。PE−PilA接種は、抗原刺激から1日後および2日後に、鼻咽頭におけるNTHi 86−028NP株および3224A株のクリアランスを高めた。
【0220】
NTHi 86−028NP株で行った実験に関して: 応答として計数値のlog10値を用いて2要因固定ANOVAを行った。なお、これらの固定要因は群(4水準)および日(2水準)であった。変数の異種性の仮説は棄却され、異種変数を有するモデルをデータに当てはめた。これらの2つの要因の間には有意な相互作用は検出されなかった。PE−PilA融合群(6μg/マウス)は、対照群(LT)に比べてCFUを有意に低下させ、幾何平均比は0.01、0.25の95%信頼区間で0.06に相当した。
【0221】
NTHi 3224A株で行った実験に関して: 応答としてlog10値を用いて3要因固定ANOVAを行った。なお、これらの固定要因は群、日および実験であった。Shapiro−WilkおよびLeveneの検定では、変数の正規性および異種性の仮説は棄却されなかった。いずれの2要因の間にもまたは3要因の間にも有意な相互作用は検出されず、この分析では主要な要因のみが維持された。PE−PilA/LTは、対照群に比べてCFUを有意に低下させ、幾何平均比は0.02、0.61の95%信頼区間で0.11に相当した。
【0222】
マウス鼻咽頭におけるNTHi 86−028NP株細菌クリアランスに対するPE−PilA融合タンパク質接種の効果に関しては
図19を参照。
【0223】
マウス鼻咽頭におけるNTHi 3224A株細菌クリアランスに対するPE−PilA融合タンパク質接種の効果に関しては
図20を参照。
実施例14:マウス鼻咽頭定着モデル。PilAによる免疫誘導。NTHi 3219C株による抗原刺激。
【0224】
雌OF1マウス(20マウス/群)の鼻腔内に0日目と14日目にLTを配合した3μgのPilA(ベクター16790由来)で、28日目にはPBS中3μgのPilAで免疫を行った。対照マウスにはLTのみを接種した。次に、マウスの鼻腔内を5×10
6 CFUのNTHi 3219C株で抗原刺激した。抗原刺激の3日後および4日後に取り出した鼻腔において細菌コロニーを計数した。D3=3日目。D4=4日目。
【0225】
マウス鼻咽頭における細菌クリアランスに対するPilA接種の効果に関しては
図21を参照。
実施例15:マウス鼻咽頭定着モデル。PEによる免疫誘導。NTHi 3224A株による抗原刺激。
【0226】
Balb/c雌マウス(20マウス/群)の鼻腔内に0日目と14日目にLTを配合した3μgのPE(ベクターpRIT16762由来)で、28日目にはPBS中3μgのPEで免疫を行った。対照マウスにはLTのみを接種した。次に、マウスの鼻腔内を5×10
6 CFUのNTHi 3224A株で抗原刺激した。抗原刺激の3日後および4日後に取り出した鼻腔において細菌コロニーを計数した。10個体のマウスを3日目(D3)に調べた。10個体のマウスを4日目(D4)に調べた。PE接種は、統計分析のためにダン(Dunn)検定を用いたところ、抗原刺激後4日目に鼻咽頭におけるNTHiのクリアランスを有意に増大させた(
図22)。
【0227】
マウスの鼻咽頭における細菌クリアランスに対するPE接種の効果に関しては
図22を参照。
実施例16:ビブロネクチン(vibronectin)結合。LVL317およびLVL735 PE−PilA融合タンパク質によるビブロネクチン(vibronectin)結合の阻害。
【0228】
精製されたLVL317 PE−PilA融合タンパク質構築物における、PEのビトロネクチンとの結合能を評価した。マイクロタイタープレート(POLYSORP(商標)、Nunc、Thermo Fisger Scientific)をPE(ベクターpRIT16762由来)または精製LVL317 PE−PilA融合タンパク質(10μg/ml)でコーティングした。プレートをNaCl 150mM−ポリソルベート20、0.05%(例えば、TWEEN(商標)20)で4回洗浄し、PBS−BSA 1%で1〜2時間ブロッキングした。4回の洗浄の後、ビトロネクチン(ヒト血漿由来ビトロネクチン、SIGMA−ALDRICH(登録商標))を加え(10μg/ml)、2倍希釈し(12種の希釈液)、これらのプレートを室温で1時間インキュベートした。次に、プレートをNaCl 150mM−ポリソルベート20、0.05%(例えば、TWEEN(商標)20)で4回洗浄した。洗浄後、結合したビトロネクチンを、ペルオキシダーゼヒツジ抗ヒトビトロネクチン(US Biological)を用いて検出した後、オルトフェニレンジアミン/H
2O
2基質を添加した。発色は、ビトロネクチンに固定された抗体の量に正比例する。
【0229】
(a)ビトロネクチンに結合したLVL317 PE−PilA融合タンパク質PilA=NTHi 86−028NP由来PilA(pRIT16790に関して記載の通り);PE=タンパク質E(pRIT16762に関して記載の通り)および(b)ビトロネクチンに結合したLVL317およびLVL735 PE−PilA融合タンパク質に関しては
図23を参照。
実施例17:ビブロネクチン(vibronectin)結合。LVL291 PE−PilA融合タンパク質に対する抗体によるビブロネクチン(vibronectin)の阻害。
【0230】
マイクロタイタープレート(POLYSORP(商標)、Nunc、Thermo Fisher Scientific)をPE(ベクターpRIT16762由来)または精製PE−PilA融合タンパク質(10μg/ml)でコーティングした。プレートをNaCl 150mM−ポリソルベート20、0.05%(例えば、TWEEN(商標)20)で4回洗浄し、PBS−BSA 1%で2時間ブロッキングした。洗浄後、ビトロネクチン(ヒト血漿由来ビトロネクチン、SIGMA−ALDRICH(登録商標))を50μg/mlで加え、精製抗体抗PE−PilA(自家生産および精製)を2倍連続希釈し、室温で1時間インキュベートした。次に、プレートをNaCl 150mM−ポリソルベート20、0.05%(例えば、TWEEN(商標)20)で4回洗浄した。4回の洗浄の後、結合したビトロネクチンを、ペルオキシダーゼヒツジ抗ビトロネクチン(US Biological)を用いて検出した後、オルトフェニレンジアミン/H
2O
2基質を加えた。発色は、ビトロネクチンに固定された抗体の量に正比例する。
【0231】
PE−PilAに対するポリクローナル抗体によるPEへのビトロネクチン結合の阻害を観察した。
【0232】
PE−PilA融合タンパク質に対するポリクローナル抗体によるビトロネクチン結合の阻害に関しては
図24を参照。
実施例18:LVL291 PE−PilA融合タンパク質の抗原性。ELISA。
【0233】
精製されたLVL291 PE−PilA融合タンパク質を、対照として一価タンパク質を用いた抗原性試験でバリデートした。融合タンパク質は、配列番号4のアミノ酸22〜160をコードするPE遺伝子断片(pRIT16711に関して記載の通り)に対して、またはNTHi 86−028NP株由来のPilA(ベクターpRIT16790由来)に対して作製されたポリクローナル抗体(ウサギおよびモルモット)で現像するサンドイッチELISAで試験した。
【0234】
PilAまたはPEは100ng/mlで加え、連続2倍希釈した。30分のインキュベーションの後および洗浄の後、結合した抗原を、PEまたはPilAでの免疫誘導の後に得られたウサギポリクローナル血清により検出した。結合した抗体を、ペルオキシダーゼ抗ウサギIg(Jackson ImmunoResearch Laboratories,Inc.)を用いて検出した後、オルトフェニレンジアミン/H
2O
2基質を加えた。発色は、存在する抗原の量に正比例する。マイクロタイタープレート用の分光光度計を用いて吸光度を測定した。サンプルの抗原性は、全長PEまたは全長PilA参照抗原の曲線との比較により決定し、μg/mlで表す。参照は100%の抗原性を示した。
【0235】
表6に見られるように、抗原性は、一価PEおよびPilA抗原に比べて精製LVL291 PE−PilA融合タンパク質で見られた。
【0236】
【表6】
実施例19:LVL735 PE−PilA融合タンパク質の免疫原性
雌Balb/cマウス(n=34)をAS01
EまたはAlPO
4(リン酸アルミニウム)を配合していない1、0.2または0.04μgのPE−PilA融合タンパク質LVL317またはLVL735を含有する0、14および28日目に50μlのワクチン製剤で、筋肉内経路により免疫した。42日目に採取した個々の血清においてPEおよびPilAに対する抗体応答を決定し、PEおよびPilAに対するIgGレベルを測定し、μg/mlで表した。
【0237】
LVL317およびLVL735に対するPEおよびPilA抗体の応答に関しては
図27を参照。GMC=幾何平均濃度。GMT=幾何平均力価。IC=信頼区間。
実施例20:無莢膜型インフルエンザ菌鼻咽頭定着のマウスモデルにおけるLVL735およびLVL317融合タンパク質の防御有効性
雌Balb/cマウスの鼻腔内に0日目と14日目に0.5μgの大腸菌易熱性毒素(LT)と混合した5.8μgのLVL735またはLVL317を含有する10μlのワクチン製剤で免疫を行った。28日目に追加免疫用量5.8μgのアジュバント不含LVL735またはLVL317を投与した。対照マウスには0日目と14日目にLTのみを、28日目にはPBSを接種した。42日目に動物の鼻腔内を5×10
6 cfuのNTHi 3224A株で抗原刺激した。抗原刺激の1日後および2日後に取り出した鼻腔において細菌コロニーを計数した(n=10/時点)。
【0238】
鼻腔を媒体中でホモジナイズし、細菌の定量を行う。結果はCFU/mlで良好に表される。
【0239】
無莢膜型インフルエンザ菌鼻咽頭定着のマウスモデルにおいて細菌クリアランスに対するLVL735およびLVL317接種の効果に関しては
図28を参照。
実施例21:PE−PilA融合タンパク質を含む多価ワクチンの調剤
3種類のワクチンを設計した:
10V: 下記の10種の肺炎球菌莢膜糖類コンジュゲート:タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型1由来の莢膜糖類(1−PD)、タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型4由来の莢膜糖類(4−PD)、タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型5由来の莢膜糖類(5−PD)、タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型6B由来の莢膜糖類(6B−PD)、タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型7F由来の莢膜糖類(7F−PD)、タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型9V由来の莢膜糖類(9V−PD)、タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型14由来の莢膜糖類(14−PD)、タンパク質Dにコンジュゲートされた血清型23F由来の莢膜糖類(23F−PD)、破傷風トキソイドにコンジュゲートされた血清型18C由来の莢膜糖類(18C−TT)およびジフテリア毒素にコンジュゲートされた血清型19F由来の莢膜糖類(19F−DT)を含有する10価(10V)のワクチン。
12V: 10Vと同じ10種の肺炎球菌莢膜糖類コンジュゲートを含有し、さらに2つの肺炎球菌糖類コンジュゲート、すなわち、CRM197にコンジュゲートされた19A(19ACRM)およびCRM197にコンジュゲートされた6A(6ACRM)を含む12価(12V)のワクチン。
12V+タンパク質(12V+prot): 12Vと同じ12種の肺炎球菌莢膜糖類コンジュゲートを含有し、さらにPhtD、dPlyおよびPE−PilA融合タンパク質を含むワクチン。
dPlyの調製: 肺炎球菌ニューモリシンを調製し、ホルムアルデヒド無毒化を用い、国際公開第2004/081515号および国際公開第2006/32499号に記載の通りに無毒化した。
PhtDの発現および精製:
PhtDの発現: PhtDタンパク質は、ヒスチジントライアドの存在を特徴とする肺炎球菌ヒスチジントライアド(Pht)タンパク質ファミリーのメンバーである。PhtDは、838aaの分子であり、5つのヒスチジントライアドを有する(Medlmmune 国際公開第00/37105号 アミノ酸配列は配列番号4およびDNA配列は配列番号5)。PhtDはまた、中央(アミノ酸348〜380番)にプロリンリッチ領域を含む。PhtDは20aaのN末端シグナル配列を有する。PhtDの調製および精製は国際公開第2007/071710号(例えば、実施例1b参照)に記載されている。国際公開第00/37105号からの配列番号4のアミノ酸21〜838の配列は配列番号220に相当する。
タンパク質Dの発現
タンパク質Dは、国際公開第2007/071710号に記載の通りに発現させた。
CRM197大腸菌の発現および精製:
CRM197の生産工程の収率を高めるために、選択的発現様式を、10倍の工程収率の標的を用いて評価した。選択した構築物を大腸菌株(B834(DE3))で、大腸菌由来Flglシグナル配列(19aa)とCRM197(537aa)の間の融合物として発現させた。このシグナル配列は周辺質への輸送の際に切断される。CRM197は浸透圧ショックにより抽出された後に精製される。この精製プロセスは、Q−Sepharose−XL工程とヒドロキシアパタイト工程の間に付加的なクロマトグラフィー工程(フェニルセファロース)が追加されること、および最後のオクチル−Sepharose 4FFでのクロマトグラフィー工程が除かれること以外は、国際公開第2006/100108号に開示されているものと同様である。
コンジュゲートの調製
精製された肺炎球菌多糖をいかにして調製するかは当技術分野で周知である。これらの実施例の目的で、多糖を本質的に欧州特許第072513号に記載の通りに、または密接に関連した方法により作製した。コンジュゲーション前に、多糖は下記のような微少溶液操作によってサイズ調整してもよい。
【0240】
活性化およびカップリング条件は、各多糖に特異的である。これらを表1に示す。サイズ調整済みの多糖(6Bおよび23F以外)はNaCl 2M、NaCl 0.2Mまたは注射水(WFI)に溶かした。全ての血清型について最適多糖濃度を評価した。血清型18C以外の全ての血清型は、下記に詳述するように、担体タンパク質に直接コンジュゲートした。
【0241】
アセトニトリルまたはアセトニトリル/水(50%/50%)溶液中100mg/mlの保存溶液から、CDAP(1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウムテトラフルオロボレート)(CDAP/PS比 0.5〜1.5mg/mg PS)を多糖溶液に加えた。1.5分後に、0.2M〜0.3MのNaOHを加えて特定の活性化pHとした。多糖の活性化はこのpHにて25℃で3分間行った。活性化した多糖に精製タンパク質(タンパク質D、CRM197またはDT)(この量は最初のPS/担体タンパク質比に依存する)を加え、その特定のpHで最大2時間(血清型による)、pH調整下でカップリング反応を行った。未反応のシアン酸エステル基をクエンチするために、次に、2Mグリシン溶液をこの混合物に加えた。pHをクエンチングpH(pH9.0)に調整した。この溶液を25℃で30分間撹拌した後、ゆっくり連続撹拌しながら2〜8℃で一晩インキュベートした。
18Cの調製:
18Cを、リンカー−アジピン酸ジヒドラジド(ADH)を介して担体タンパク質に連結した。
【0242】
コンジュゲーション前に多糖血清型18Cに微少溶液操を行った。
EDAC(2−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩)による破傷風トキソイドの誘導体化
破傷風トキソイドの誘導体化のため、精製したTTを0.2M NaCl中で25mg/mlに希釈し、ADHスペーサーを終濃度が0.2Mとなるように加えた。スペーサーの溶解が完了したところで、pHを6.2に調整した。次に、EDAC(1−エチル−3−(3−ジメチル−アミノプロピル)カルボジイミド)を終濃度が0.02Mとなるように加え、この混合物をpH調整下で1時間撹拌した。この縮合反応を、pHを25℃で少なくとも30分間9.0まで高めることによって停止させた。
【0243】
誘導体化されたTTに、次に、ダイアフィルトレーションを行い(10kDa CO膜)、残留するADHおよびEDAC試薬を除去した。
【0244】
TT
AH(ADHリンカーにコンジュゲートされた破傷風トキソイド)バルクを最後に濾過除菌し、カップリング工程まで−70℃で保存した。
TT
AHのPS 18Cへの化学的カップリング
コンジュゲーションパラメーターの詳細は表1に見出すことができる。
【0245】
2グラムの微少溶液操済みPSを定義された濃度で水に希釈し、NaCl粉末を加えることにより2M NaClに調整した。
【0246】
CDAP溶液(100mg/ml 50/50v/vアセトニトリル/WFI中に新たに調製)を、適当なCDAP/PS比となるように加えた。
【0247】
0.3M NaOHを加えることによりpHを活性化pH9.0まで上昇させ、TT
AHの添加までこのpHで安定させた。
【0248】
3分後、誘導体化されたTT
AH(0.2M NaCl中20mg/ml)をTT
AH/PS比が2となるように加え、pHをカップリングpH9.0に調整した。この溶液を1時間、pH調整下に置いた。
【0249】
クエンチングのため、2Mグリシン溶液をPS/TT
AH/CDAP混合物に加えた。
【0250】
pHをクエンチングpH(pH9.0)に調整した。
【0251】
この溶液を25℃で30分間撹拌した後、ゆっくり連続撹拌しながら一晩2〜8℃に置いた。
肺炎球菌莢膜糖類−タンパク質D/TT/DT/PhtD/Plyコンジュゲートの特定の活性化/カップリング/クエンチング条件
行ヘッダーに「μfluid」とある場合は、その糖類がコンジュゲーション前に微少溶液操作によりサイズ調整されたことを示す。微少溶液操作後の糖類のサイズは表2に示す。
【0252】
【表7】
コンジュゲートの精製:
コンジュゲートは、0.15M NaCl(ただし、18CではS500HRをバッファーとして使用し、19Aでは1.15MNaClを含有する20mM酢酸塩pH6.2を使用した)で平衡化したSephacryl S400HRゲル濾過カラムを用いたゲル濾過により小分子(DMAPを含む)および非コンジュゲート糖類およびタンパク質を除去することで精製した。反応成分の分子サイズの違いに基づき、PS−PD、PS−TT、PS−CRM197またはPS−DTコンジュゲートが最初に溶出し、遊離PS、次いで、遊離タンパク質担体、最後にDMAPおよび他の塩(NaCl、グリシン)が続く。
【0253】
コンジュゲートを含有する画分はUV
280nmにより検出される。画分をそれらのKdに従ってプールし、濾過除菌し(0.22μm)、+2〜8℃で保存する。コンジュゲート調製物のPS/タンパク質比を決定した。
ワクチンの調剤
10Vワクチンは、リン酸アルミニウム上に、1、3、1、1、1、1、1、3、3、1μgのヒト用量で吸着された肺炎球菌莢膜糖類血清型1、4、5、6B、7F、9V、14、18C、19Fおよび23Fコンジュゲートを一緒に含有する(これらの糖類はリン酸アルミニウムに個々に吸着させた後、それらを一緒に混合し、リン酸アルミニウムのレベルを500μgに調整した)。
【0254】
12Vワクチンは、リン酸アルミニウム上に吸着された2μg用量の血清型19Aおよび6Aコンジュゲートを追加し、10Vワクチンと同様にして作製した。
【0255】
12V+タンパク質ワクチンは、タンパク質PhtD、dPlyおよびPE−PilAを加えたこと以外は、12Vワクチンと同様にして作製した。PE−PilAは本明細書に記載の通りに作製した。12コンジュゲートと前記タンパク質を、12Vに関しては上記した用量、タンパク質は各30μg(注:これは30μgのPE−PilAを表し、30μgのPEと30μgのPilAを表すのではない)の用量を用いて一緒に混合した。
実施例22:マウスにおける10V、12Vおよび12V+タンパク質ワクチンの免疫原性の比較
抗肺炎球菌多糖PS(多糖)ELISAの説明
マイクロプレートを、莢膜多糖(CPS)(PBS中、2.5μg/mlのPS1およびPS3、5μg/mlのPS4、5、6A、6B、7F、9Vまたは14;10μg/mlのPS19Aおよび23Fまたは40μg/mlのPS18CおよびPS19F、100μl/ウェル)で37℃にて2時間コーティングした。これらのプレートをNaCl 150mM(0.9%)−ポリソルベート20 0.05%で3回洗浄した。CPS(2.5mg/mlであった6Aおよび6B以外は(except or) 1mg CPS/mlの無希釈血清)V/Vを含有するPBS−ポリソルベート20 0.05%中に血清を希釈し(6Aおよび6Bに関しては1/2、他の血清型に関しては1/10)、CPSに対する抗体を中和させるために37℃で1時間インキュベートした。「マウスにおける3種のワクチン製剤の免疫原性」と題された節に記載の通りに免疫したマウス由来の血清または参照(ChrompureマウスIgGで較正した内部参照)をマイクロウェルに加え、PBS−ポリソルベート20 0.05%で連続希釈して100μlとした(二倍希釈工程)。これらのプレートを振盪下、室温で30分間インキュベートした。これらのプレートを上記のように洗浄し、ペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体(100μl/ウェル)を加え、プレートを振盪しながら室温で30分間インキュベートした。洗浄後、基質(10mlのクエン酸塩0.1M pH4.5〜4.6および5μlのH
2O
2中、4mgのOPDA(オルトフェニレン−ジアミン))を各ウェルに加え(100μl)、これらのプレートを暗所で15分間インキュベートした。HCl 1N(50μl)を添加することにより反応を停止させた。分光光度計を用い、490nmまたは参照に関しては620nmで吸光度を読み取った。発色は、血清中に存在する抗体の量に正比例する。
PD、PEおよびPilA抗体を測定するためのELISAの説明
プレートを、100μl/ウェルの、炭酸バッファーpH9.6中、2μg/mlのPD(1mg/ml)、2μg/mlのPE(1500μg/ml)、2μg/mlのPilA(3660μg/ml)で4℃にて一晩コーティングした。これらのプレートをNaCl 0.9% ポリソルベート20 0.05%で4回洗浄した。PEおよびPilA ELISAに関しては、プレートを室温で30分間(振盪しながら)PBS−BSA1%で飽和させた。洗浄後、「マウスにおける3種のワクチン製剤の免疫原性」と題された節に記載の通りに免疫したマウス由来の血清または参照(ChrompureマウスIgGで較正した内部参照)をマイクロウェルに加え、PBSポリソルベート20 0.05%(PDアッセイの場合)およびPBSポリソルベート20 0.05% BSA 0.1%(PEおよびPilAアッセイの場合)で連続希釈して100μlとした(二倍希釈工程)。次に、これらのプレートを振盪しながら室温で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体とともに(100μl/ウェル)振盪しながら室温で30分間インキュベートした。次に、これらのプレートを上記のように洗浄し、基質コンジュゲート(10mlのクエン酸塩0.1M pH4.5〜4.6および5μlのH
2O
2中、4mgのOPDA(オルトフェニレン−ジアミン))を各ウェルに加え(100μl)、暗所で15分間置いた。HCl 1N 50μlの添加により反応を停止させ、490nm(参照に関しては620nm)で吸光度を読み取った。
PhtDおよびdPly抗体を測定するためのELISAの説明
プレートを、100μl/ウェルの1μg/mlのPhtD(1021μg/ml)または4μg/mlのPly(367μg/ml)で37℃にて2時間コーティングした。次に、これらのプレートをNaCl 0.09% ポリソルベート 0.05%で3回洗浄した。洗浄後、「マウスにおける3種のワクチン製剤の免疫原性」と題された節に記載の通りに免疫したマウス由来の血清または参照(ChrompureマウスIgGで較正した内部参照)をマイクロウェルに加え、PBSポリソルベート20 0.05%で連続希釈して100μlとした(二倍希釈工程)。次に、これらのプレートを振盪しながら室温で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗マウスIgG抗体とともに(100μl/ウェル)振盪しながら室温で30分間インキュベートした。これらのプレートを上記のように洗浄し、基質コンジュゲート(10mlのクエン酸塩0.1M pH4.5および5μlのH
2O
2中、4mgのOPDA(オルトフェニレン−ジアミン))を各ウェルに加え(100μl)、暗所で15分間置いた。HCl 1N 50μlの添加により反応を停止させ、490nm(参照フィルターに関しては620nm)で吸光度を読み取った。
オプソニン化貪食作用アッセイ(OPA)の説明
血清サンプルを56℃で45分間加熱して残存する内因性補体を不活性化した。各1:2希釈血清サンプルの25μlのアリコートを、96ウェル丸底マイクロタイタープレートのウェル当たり25μlのOPAバッファー(HBSS(ハンクス平衡塩溶液)−14.4%不活性化FCS(ウシ胎児血清))中に二倍連続希釈した。次に、活性化HL−60細胞(1×10
7細胞/ml)、新たに解凍した肺炎球菌ワーキングシードおよび新たに解凍したベビーウサギ補体の例えば、4/2/1比(v/v/v)(ただし、血清型1、6Bおよび6Aの場合、その比は4/2/2とした)の混合物25μlを希釈血清に加え、最終容量を50μlとした。このアッセイプレートを、オービタルシェーカー(210rpm)を用い、37℃で2時間インキュベートし、貪食作用プロセスを促進した。マイクロプレートを氷上に少なくとも1分間置くことにより反応を停止させ、プレートは使用するまで氷上で維持した。次に、プレートの各ウェルの20μlアリコートを96ウェル平底マイクロプレートの対応するウェルに移し、50μlのTodd−Hewittブロス−0.9%寒天を各ウェルに加えた。37℃、5%CO
2で一晩インキュベートした後、寒天内に現れた肺炎球菌コロニーを、自動画像解析システム(KS 400、Zeiss、オーバーコッヘン、ドイツ)を用いて計数した。血清サンプルを含まない8ウェルを細菌対照として使用し、ウェル当たりの肺炎球菌の数を決定した。対照ウェルのCFUの平均数を決定し、各血清サンプルの殺傷活性の計算に用いた。血清サンプルのOPA力価は、肺炎球菌の50%殺傷を促すことができる血清の希釈率の逆数により決定した。オプソニン化貪食作用力価は、4パラメーター曲線当てはめ解析を用いて計算した。
マウスにおける3種のワクチン製剤の免疫原性
2試験区に分配した2群の27個体雌Balb/cマウスを、0、14および28日目に1/10ヒト用量の、タンパク質単独(PhtD、dPlyおよびPEPilA)、Prevnar 13(商標)(市販の連鎖球菌ワクチン−結果は示さず)、10V、12V(DSP2A017)および12V+タンパク質(DSP2A012)GMPロットを含む種々の製剤の筋肉内(IM)注射によって免疫した。マウスの違う肢に、1/10ヒト用量のInfanrix Hexa(商標)(ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、線維状ヘマグルチニン、パータクチン、B型肝炎表面抗原、不活性化1、2および3型ポリオウイルスならびにインフルエンザ菌b糖類(PRP)を含むワクチン)を施した(臨床試験における乳幼児の異なる部位における併用投与を模倣)。
【0256】
42日目に採取した個々の血清およびプールした血清においてそれぞれ抗IgGレベルおよびオプソニン化貪食作用力価を決定した。
【0257】
12V+タンパク質ワクチンの、IgG抗体力価およびオプソニン化活性を誘導する能力を評価し、12Vおよび10Vワクチンの場合と比較した。
【0258】
種々の製剤を注射したマウス由来の血清を、多糖血清型およびタンパク質に対してELISA(上記のように)で試験し、また、12の多糖血清型に対してOPAで試験した。
【0259】
12V+タンパク質ワクチンは、ほとんどの血清型に対して12Vに類似する応答を誘導した。
【0260】
図31の結果は、12V+製剤および肺炎球菌糖類コンジュゲートを含まなかった製剤に関して測定されたPE、PilA、PhtD、PlyおよびPD抗体応答間に統計学的な差は無かったことを示した。
実施例23:モルモットにおける10V、12Vおよび12V+タンパク質ワクチンの免疫原性の比較
ELISA抗肺炎球菌多糖PSの説明
マイクロプレートを、100μl/ウェルの2.5μg/mlのPS1、5μg/mlのPS4、5、6A、6B、7F、9Vまたは14;10μg/mlのPS19Aおよび23F、40μg/mlのPS18CおよびPS19Fまたは参照ウェルに関してはPBS中2μg/mlに希釈したAffinipureヤギ抗モルモットIgG(2.4mg/ml)で37℃にて2時間コーティングした。これらのプレートをNaCl 150mM(0.9%)−ポリソルベート20 0.05%で3回洗浄した。各群からプールした血清を、CPS(2.5mg/mlの6Aおよび6B以外は1mg CPS/mlの無希釈血清)V/Vを含有するPBS−ポリソルベート20 0.05%中に希釈し(PS 6Aおよび6Bに関しては1/2、他の全ての血清型に関しては1/10)、CPSに対する抗体を中和させるために37℃で1時間インキュベートした。「モルモットにおける3種のワクチン製剤の免疫原性」と題された節に記載の通りに免疫したモルモット由来の血清をマイクロウェルに加え、PBS−ポリソルベート20 0.05%で連続希釈して100μlとするか(二倍希釈工程)、または参照(PBS−ポリソルベート20 0.05%で0.25μg/mlに希釈したChrompureモルモットIgG(11mg/ml)を加えた。これらのプレートを振盪下、室温で30分間インキュベートした。これらのプレートを上記のように洗浄し、ペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗モルモットIgG抗体(100μl/ウェル)を加え、プレートを振盪しながら室温で30分間インキュベートした。洗浄後、基質(10mlのクエン酸塩0.1M pH4.5〜4.6および5μlのH
2O
2中、4mgのOPDA)を各ウェルに加え(100μl)、暗所で15分間インキュベートした。HCl 1Nを添加することにより反応を停止させた。分光光度計を用い、490nm(参照に関しては620nm)で吸光度を読み取った。発色は、血清中に存在する抗体の量に正比例する。
抗PD、PE、およびPilA抗体を測定するためのELISAの説明
プレートを、100μl/ウェルの、PBS中の炭酸バッファーpH9.6中、2μg/mlのPD(1mg/ml)、2μg/mlのPE(1500μg/ml)、または2μg/mlのPilA(3660μg/ml)または参照ウェルに関してはPBS中2μg/mに希釈したAffinipureヤギ抗モルモットIgG(2.4mg/ml)で37℃にて2時間コーティングした。これらのプレートをNaCl 0.9% ポリソルベート20 0.05%で4回洗浄した。PEおよびPilA ELISAについては(この工程はPDおよびPly ELISAについては実施しなかった)、プレートを室温で30分、PBS−BSA1%で飽和させた。洗浄後、「モルモットにおける3種のワクチン製剤の免疫原性」と題された節に記載の通りに免疫したモルモット由来の血清または参照血清サンプル(ChrompureモルモットIgGで較正した内部標準)をマイクロウェルに加え、PBSポリソルベート20 0.05%(PD ELISAの場合)およびPBSポリソルベート20 0.05% BSA 0.1%(PEおよびPilA ELISAの場合)中に連続希釈して100μlとした(二倍希釈工程)。これらのプレートを室温で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗モルモットIgG抗体(100μl/ウェル)とともに振盪しながら室温で30分間インキュベートした。プレートを上記のように洗浄し、基質コンジュゲート(10mlのクエン酸塩0.1M pH4.5〜4.6および5μlのH
2O
2中、4mgのOPDA)を各ウェルに加え(100μl)、暗所で15分間置いた。HCl 1N 50μlを添加することにより反応を停止させ、490nm(参照フィルターに関しては620nm)で吸光度を読み取る。
PhtDおよびdPly抗体を測定するためのELISAの説明
プレートを、100μl/ウェルの、PBS中1μg/mlのPhtD(1021μg/ml)または2μg/ml Ply(376μg/ml)で37℃にて2時間コーティングした。次に、これらのプレートをNaCl 0.9% ポリソルベート20 0.05%で4回洗浄した。洗浄後、「モルモットにおける3種のワクチン製剤の免疫原性」と題された節に記載の通りに免疫したモルモット由来の血清または参照(ChrompureモルモットIgGで較正した内部標準)をマイクロウェルに加え、PBSポリソルベート20 0.05%中に連続希釈して100μlとした(二倍希釈工程)。これらのプレートを振盪しながら室温で30分間インキュベートした。洗浄後、プレートをペルオキシダーゼにコンジュゲートされた抗モルモットIgG抗体(100μl/ウェル)とともに振盪しながら室温で30分間インキュベートした。プレートを上記のように洗浄し、基質コンジュゲート(10mlのクエン酸塩0.1M pH4.5〜4.6および5μlのH
2O
2中、4mgのOPDA)を各ウェルに加え(100μl)、暗所で15分間置いた。HCl 1N 50μlを添加することにより反応を停止させ、490nm(参照フィルターに関しては620nm)で吸光度を読み取った。
オプソニン化貪食作用アッセイ
血清サンプルを56℃で45分間加熱して残存する内因性補体を不活性化した。各1:2希釈血清サンプルの25μlのアリコートを、96ウェル丸底マイクロタイタープレートのウェル当たり25μlのOPAバッファー(HBSS(ハンクス平衡塩溶液)−14.4%不活性化FCS(ウシ胎児血清))中に二倍連続希釈した。次に、活性化HL−60細胞(1×10
7細胞/ml)、新たに解凍した肺炎球菌ワーキングシードおよび新たに解凍したベビーウサギ補体の例えば、4/2/1比(v/v/v)(ただし、血清型1、6Bおよび6Aの場合、その比は4/2/2とした)の混合物25μlを希釈血清に加え、最終容量を50μlとした。このアッセイプレートを、オービタルシェーカー(210rpm)を用い、37℃で2時間インキュベートし、貪食作用プロセスを促進した。マイクロプレートを氷上に少なくとも1分間置くことにより反応を停止させた(プレートはさらなる使用まで氷上で維持しなければならない)。次に、プレートの各ウェルの20μlアリコートを96ウェル平底マイクロプレートの対応するウェルに移し、50μlのTodd−Hewittブロス−0.9%寒天を各ウェルに加えた。37℃、5%CO
2で一晩インキュベートした後、寒天内に現れた肺炎球菌コロニーを、自動画像解析システム(KS 400、Zeiss、オーバーコッヘン、ドイツ)を用いて計数した。血清サンプルを含まない8ウェルを細菌対照として使用し、ウェル当たりの肺炎球菌の数を決定した。対照ウェルのCFUの平均数を決定し、各血清サンプルの殺傷活性の計算に用いた。血清サンプルのOPA力価は、肺炎球菌の50%殺傷を促すことができる血清の希釈率の逆数により決定した。オプソニン化貪食作用力価は、4パラメーター曲線当てはめ解析を用いて計算した。
モルモットにおける3種の製剤の免疫原性
2試験区に分配した2群の17個体モルモットを、0、14および28日目に、1/4ヒト用量の、タンパク質単独(PhtD、dPlyおよびPEPilA)、Prevnar 13(商標)(市販の連鎖球菌ワクチン−結果は示さず)、10V、12V(DSP2A017)および12V+タンパク質(DSP2A012)GMPロットを含む種々の製剤の筋肉内(IM)注射によって免疫した。モルモットの違う肢に、ヒト用量の1/4のInfanrix Hexa(商標)(ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、百日咳トキソイド、線維状ヘマグルチニン、パータクチン、B型肝炎表面抗原、不活性化1、2および3型ポリオウイルス、ならびにインフルエンザ菌b糖類(PRP)を含むワクチン)を施した(臨床試験における乳幼児の異なる部位における併用投与を模倣)。
【0261】
42日目に採取した個々の血清およびプールした血清においてそれぞれ抗IgGレベルおよびオプソニン化貪食作用力価を決定した。
【0262】
IgG抗体力価およびオプソニン化活性を評価し、12V+タンパク質、12Vおよび10Vワクチン間で比較した。
【0263】
種々の製剤を注射したモルモット由来の血清を、多糖血清型およびタンパク質に対してELISAで試験し、また、製剤中の12の多糖血清型に対してOPAで試験した。
【0264】
12V+タンパク質は、12V製剤に類似する応答を誘導した。
【0265】
図34の結果は、PEPilAと組み合わせた場合に、12価コンジュゲートの免疫原性に対して負の影響は無いことを示した。
【0266】
12V+タンパク質GMP製剤で得られた結果は、10V多糖ならびにタンパク質の免疫原性を実証し、この製剤の臨床評価を裏付ける。