【実施例】
【0019】
以下、本発明の各種の実施例を、
図1〜
図5を用いて説明する。
図1〜
図5は、車両の側面からの衝突時に、着座した乗員を保護するために、着座した乗員とドアの間に、シートバックのドア側の側部から車両の前方に向けてエアバッグを展開する本発明のエアバッグ装置について説明した図である。
【0020】
本発明のエアバッグ装置のエアバッグ1は、例えば
図1(a)に示すように、略同形状に切断した、車内側に位置する第1の基布2と車外側に位置する第2の基布3の外周縁部2a,3a同士を縫製した縫製部4によって袋状に形成したものである。この時、両基布2,3の外周端面は切断した状態のままである。
【0021】
その際、前記外周縁部2a,3aの、展開方向の前端部に縫製しない部分を設けて排気孔6を形成し、エアバッグ1が展開した後或いは乗員がエアバッグ1に当接した後に、エアバッグ1内のガスを排気して乗員への衝撃を緩和するようにしている。
【0022】
なお、図示省略したインフレータは、エアバッグ1の前記排気孔6と相対する後端部に設けた縫製しない部分(取付け部5)に、包み込まれるようにして内蔵される。
【0023】
本発明では、前記排気孔6の形成部分に、
図1〜
図5に示すように、折り返した布8を位置させて第1と第2の基布2,3と一緒に縫製したことを特徴としている。
【0024】
図1及び
図2は、排気孔6の形成部分における前記第1と第2の基布2,3それぞれの外周縁部2a,3aの表裏面を覆うように、前記折り返した布8を配置して縫製した第1及び第2実施例である(
図1(b)、
図2(b)参照)。
【0025】
このうち、
図1に示す第1実施例では、前記折り返した布8は、排気孔6を形成する第1と第2の基布2,3の外周端部2a,3aを全て覆うように、第1と第2の基布2,3のそれぞれの側に1枚ずつ、計2枚設けている。前記折り返した布8は、排気孔6を形成する縫製部4の端部、即ち、縫製端部4aに重ねるように設けている。また、折り返した布8は、縫製部4によって外周縁部2a,3aを縫製する前に、予め各基布2,3に対して縫製部8aによって縫製したものであっても良い。
【0026】
図2に示す第2実施例でも、前記折り返した布8は、排気孔6を形成する縫製部4の端部、すなわち、縫製端部4aに重なるように設けている。また、折り返した布8は、縫製部4によって外周縁部2a,3aを縫製する前に、予め各基布2,3に対して縫製部8aによって縫製したものであっても良い。この第2実施例の場合、
図2(a)にロで示す範囲の外周縁部2a,3aには、折り返した布8は存在せず、第1と第2の基布2,3の切断された状態の端面が露出した開口部が設けられている。
【0027】
この
図2に示す第2実施例の場合、折り返した布8は、前記ロで示す範囲の外周縁部2a,3aに折り返した布8が存在しない開口部を、第1と第2の基布2,3のそれぞれの側に1枚ずつ、計2枚設けたものを示している。
【0028】
また、
図3は、排気孔6の形成部分における前記第1と第2の基布2,3それぞれの外周縁部2a,3aの前記排気孔6の内側に、前記折り返した布8を設けた第3実施例である。この第3実施例の場合も、折り返した布8の配置は、前記第2実施例と同様に設ければ良い。
【0029】
また、
図4は、折り返し布8を設ける代わりに、排気孔6の形成部分における前記第1と第2の基布2,3それぞれの外周縁部2a,3aを延長し、この延長した延長基布部2b,3bを折り返した実施例である。
【0030】
このうち、
図4(a)は、前記延長基布部2b,3bの端面2c,3cは切断された状態のままで、排気孔6の内側に向けて折り返した第4実施例である。また、
図4(b)は、前記延長基布部2b,3bの端面2c,3cは切断された状態のままで、排気孔6の外側に向けて折り返した第5実施例である。いずれの場合も、前記延長基布部2b,3bを折り返した後、当該折り返した部分が縫製部2d,3dによって基布2,3に固定されていても良い。
【0031】
また、
図5(a)は、
図4(a)に示す第4実施例を補強するため、排気孔6の内側に補強布9を設けた第6実施例、
図5(b)は、
図4(b)に示す第5実施例を補強するため、排気孔6の内側に補強布9を設けた第7実施例である。これら第6,7実施例の場合の補強布9も、前記第2実施例の折り返した布8と同様の配置で設ければ良い。
【0032】
次に、
図1に示す本発明のエアバッグ装置のエアバッグと、
図7に示す従来のエアバッグ装置のエアバッグを使用した引張り試験の結果を
図6に示す。
【0033】
排気孔を形成する縫製端部に1枚の補強布を重ね合わせて縫製しただけの
図7に示すエアバッグの場合、
図6に示すように、400N程度の力が作用した時に基布の縫製端部(
図7(a)のイ部)近傍に破れが発生した。
【0034】
これに対して、排気孔の形成部分に折り返した布を配置して縫製した
図1に示すエアバッグの場合、
図6に示すように、400N程度の力が作用しただけでは異常は無く、700N程度の力が作用した時に縫製部に切れが発生した。また、同程度の力が作用した時のエアバッグに発生する変位も、従来のエアバッグの1/2程度であった。
【0035】
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良い。
【0036】
すなわち以上で述べたエアバッグ装置は、本発明の好ましい例であって、これ以外の実施態様も、各種の方法で実施または遂行できる。特に本願明細書中に限定する主旨の記載がない限り、本発明は添付図面に示した詳細な部品の形状、大きさ、および構成配置等に制約されるものではない。また、本願明細書の中に用いられた表現および用語は、説明を目的としたもので、特に限定される主旨のない限り、それに限定されるものではない。
【0037】
例えば、上記の例では、第1と第2の基布2,3の外周縁部2a,3aを縫製することで袋状のエアバッグ1を形成しているが、1枚の基布の中央部分で二つ折りにして重ね合わせ、その外周縁部2a,3aを縫製して袋状に形成したものでも良い。
【0038】
また、上記本発明のエアバッグ装置は、運転席用、助手席用、後部座席用の何れにも適用できる。
【0039】
さらに、本発明のエアバッグ装置は、実施例に示したサイドエアバッグ装置に限らず、縫製しない部分を排気孔とするエアバッグを備えたものであれば、運転席用や助手席用のフロントエアバッグ装置にも適用できる。