(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236150
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】光線追跡方法及びその装置
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0354 20130101AFI20171113BHJP
【FI】
G06F3/0354 444
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-522160(P2016-522160)
(86)(22)【出願日】2013年6月26日
(65)【公表番号】特表2016-526725(P2016-526725A)
(43)【公表日】2016年9月5日
(86)【国際出願番号】CN2013078083
(87)【国際公開番号】WO2014205704
(87)【国際公開日】20141231
【審査請求日】2016年4月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】516000734
【氏名又は名称】林 大偉
【氏名又は名称原語表記】LIN,Dai Wei
(73)【特許権者】
【識別番号】516000745
【氏名又は名称】チャン ウィンサン
【氏名又は名称原語表記】CHANG,Yun−Shan
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウィンサン
【審査官】
星野 昌幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−127240(JP,A)
【文献】
特開平03−287002(JP,A)
【文献】
特開2007−198979(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0043223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/0354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導チップは表面から反射された反射光を受光し、当該誘導チップが幾何学的対称に配列された複数の誘導ユニットを備え、
各当該誘導ユニットは時間間隔の前後に受光した光線により、各誘導ユニットが受けたエネルギーを計算し、第1の時刻と第2の時刻から当該時間間隔になり、
当該時間間隔の前後の全て又は一部の当該誘導ユニットが受けたエネルギーの平均値を計算し、
各当該誘導ユニットが受けたエネルギーと当該平均値との差を計算し、当該差は各当該誘導ユニットが当該第1の時刻又は当該第2の時刻のエネルギー状態を計算し、及び
当該誘導チップ中の誘導ユニットの、当該時間間隔の前後のエネルギー状態が収集時間前後の統計的な平均値に対する変化により、移動ベクトルを判断する
ことを特徴とする光線追跡方法。
【請求項2】
当該反射光は空間的コヒーレンスが良い光線であることを特徴とする請求項1に記載の光線追跡方法。
【請求項3】
当該反射光は光源装置が放射した光線が当該表面に入射して得たことを特徴とする請求項2に記載の光線追跡方法。
【請求項4】
当該光源装置は光ポインティング装置に設けられたレーザー光装置であることを特徴とする請求項3に記載の光線追跡方法。
【請求項5】
当該誘導チップはアレー状に配列された当該複数の誘導ユニットのセンサーアレーであり、当該光ポインティング装置内に設け、前記反射光を受光することを特徴とする請求項4に記載の光線追跡方法。
【請求項6】
当該光線追跡方法のステップを繰り返し、複数の時間間隔の移動ベクトルを計算することにより、移動軌跡を判断することを特徴とする請求項5に記載の光線追跡方法。
【請求項7】
一部の当該誘導ユニットが受けたエネルギーの平均値は、行又は列又は周囲又は中央部分の当該誘導ユニットが受けたエネルギーの平均値であり、
当該表面は、ミクロに不規則な構造を備える表面構造を持つ平面であり、
当該反射光は各当該誘導ユニットにより受けられ、それぞれの光経路に建設的干渉と相殺的干渉のパターンを生じている
ことを特徴とする請求項1に記載の光線追跡方法。
【請求項8】
当該誘導ユニットの当該時間間隔の前後におけるエネルギー状態が収集時刻前後の統計的平均値に対する変化を計算するステップは、
各誘導ユニットの当該第1の時刻のエネルギー状態を判断するステップと、
各誘導ユニットの当該第2の時刻のエネルギー状態を判断するステップと、
当該誘導ユニットの当該第1の時刻から当該第2の時刻までのエネルギー状態が収集時刻前後の統計的平均値に対する変化を取得し、当該移動ベクトルを判断することを特徴とする請求項1に記載の光線追跡方法。
【請求項9】
請求項1に記載の光線追跡方法を利用する光線追跡装置であって、
当該表面に入射する光線を発生させるための光源装置と、
アレー状に配列された当該複数の誘導ユニットを有するセンサーアレーと、
、当該光源装置と当該センサーアレーをカップルし、当該複数の誘導ユニットが受けた光信号を取得し、エネルギー状態を計算し、及び当該誘導ユニットの当該時間間隔の前後エネルギー状態に対する収集時刻前後の統計的平均値的変化を計算するコントローラーと、を含み、
当該センサーアレー及び当該コントローラーが半導体回路に集積し,当該光源装置と当該集積されたセンサーアレーと当該コントローラーが当該光線追跡装置内の回路基板に封止されることを特徴とする光線追跡装置。
【請求項10】
当該光線追跡装置はレーザー光を光源とした光学ポインティング装置であることを特徴とする請求項9に記載の光線追跡装置。
【請求項11】
当該誘導チップ中の誘導ユニットの、当該時間間隔の前後のエネルギー状態が収集時間前後の統計的な平均値に対する変化により、移動ベクトルを判断するステップは、
当該第1の時刻において、当該誘導ユニットの組み合わせの中に二つの隣接する誘導ユニットが、別々にLとHの二つのエネルギー状態であり、当該第2の時刻になると、当該二つの隣接する誘導ユニットのエネルギー状態はHとHに変換される場合は、左への移動ベクトルがあると初歩的に判断され、
当該第1の時刻において、当該誘導ユニットの組み合わせの中にもう二つの隣接する誘導ユニットが、別々にHとLの二つのエネルギー状態であり、当該第2の時刻になると、当該もう二つの隣接する誘導ユニットのエネルギー状態はLとLに変換される場合は、左への移動ベクトルがあると判断され、
当該第1の時刻において、当該誘導ユニットの組み合わせの中の左側の二つの隣接する誘導ユニットが、別々にLとHの二つのエネルギー状態であり、当該第2の時刻になると、当該左側の二つの隣接する誘導ユニットのエネルギー状態はLとLに変換される場合は、右への移動ベクトルがあると初歩的に判断され、
当該第1の時刻において、当該誘導ユニットの組み合わせの中の右側の二つの隣接する誘導ユニットが、別々にHとLの二つのエネルギー状態であり、当該第2の時刻になると、当該右側の二つの隣接する誘導ユニットのエネルギー状態はHとHに変換される場合は、右への移動ベクトルがあると判断され、
当該Hと当該Lはそれぞれ平均エネルギーに対し、一つのエネルギー状態である
ことを特徴とする請求項1に記載の光線追跡方法。
【請求項12】
当該誘導チップ中の誘導ユニットの、当該時間間隔の前後のエネルギー状態が収集時間前後の統計的な平均値に対する変化により、移動ベクトルを判断するステップは、
当該第1の時刻において、当該誘導ユニットの組み合わせの中の複数の隣接する誘導ユニットが、X@@のエネルギー状態であり、当該第2の時刻になると、当該複数の隣接する誘導ユニットのエネルギー状態は@@Xに変換される場合は、左への移動ベクトルがあると判断され、
当該第1の時刻において、当該誘導ユニットの組み合わせの中の複数の隣接する誘導ユニットが、@@Xのエネルギー状態であり、当該第2の時刻になると、当該複数の隣接する誘導ユニットのエネルギー状態はX@@に変換される場合は、右への移動ベクトルがあると判断され、
当該Xは気にしない値であり、当該@は電圧変化があることを示す
ことを特徴とする請求項1に記載の光線追跡方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光ポインティング装置に係わり、特に移動軌跡判断根拠としてコヒーレント光干渉パターン及び特殊バイナリ収集イメージングを用いる光線追跡方法及び装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
図1は従来の光学式マウス10の内部回路を示す模式図である。光学式マウス10は表面11の上を移動し、マウスハウジング12の内部回路の主要な部品として、若干の光学部品の他に、回路部分に回路基板14が設けられ、回路基板14に発射光とセンシング光を制御及び計算するコントローラー18、及び光源16とセンサー19が設けられている。
【0003】
この光学式マウス10のハウジング12に外部表面11に向いた一つのアパーチャー(aperture)17を有し、この回路基板14がこのアパーチャー17の近傍に設けられ、回路基板14に例えレーザー又は発光ダイオード(LED)の光源16が設けられている。図面の点線のように示され、この光学式マウス10は動作する時、光源16が連続的に発射光を発生させ、特定の角度で表面11に入射し、センサー19により反射光の信号を取得し、又は反射光の強度のイメージ分布を取得し(センサー19は例えばCMOS又はCCDイメージセンサーでいい)、そしてコントローラー18は光学式マウス10の移動方向を分析することができる。
【0004】
上記のよく知られた光学式マウス10の軌跡判断の技術には、表面11により取得される反射光の信号に強く依存するので、普通光学式マウス10の機能は表面11の形によって異なるパフォーマンスになる。
【0005】
例えば、表面11が透明な又は光を反射しにくい材料であると、この光学式マウス10はスムーズに動作できない。例え皺を有する布のように、表面11が起伏する非平面構造であると、この光学式マウス10はスムーズに操作できない。
【0006】
従来では、前記の光センサーを用いる追跡装置に異なる平面でもある程度の追跡機能をキープさせようとすると、光線移動動作を取得する方式は付加の外部ポジションニング・センシング又は複雑な演算を多く使われる。しかし、これらのポジションニング・センシング又は演算は、感度の制限と、高いエネルギー消費と、複雑なアルゴリズム等の理由で、有限的な平面様態にしか適応しない。これらの普通の方式はすべての高反射の又は極めて低い反射率の平面に適応することができないし、光線追跡の目的達成することさえできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の光線追跡装置が異なる平面で追跡機能をキープできなく、そしてすべての高反射の又は極めて低い反射率の平面に適応することができない課題を解決できる光線追跡方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は光線追跡方法であり、
誘導チップは表面から反射された反射光を受光し、当該誘導チップが幾何学的対称に配列された複数の誘導ユニットを備え、
各誘導ユニットは時間間隔の前後に受光した光線により、各誘導ユニットが受けたエネルギーを計算し、
当該時間間隔の前後に、全ての又は一部の誘導ユニットのエネルギー状態を計算し、及び
当該誘導チップ中の誘導ユニットの、当該時間間隔の前後のエネルギー状態が収集時刻前後の統計的な平均値に対する変化により、移動ベクトルを判断する。
【0009】
具体的に、当該反射光は空間的コヒーレンスが良い光線である。
【0010】
具体的に、当該反射光は光源装置が放射した光線が当該表面に入射して得た。
【0011】
具体的に、当該光源装置は光ポインティング装置に設けられたレーザー光装置である。
【0012】
具体的に、当該誘導チップはアレー状に配列された当該複数の誘導ユニットのセンサーアレーであり、当該光ポインティング装置内に設け、前記反射光を受光する。
【0013】
具体的に、当該光線追跡方法のステップを繰り返し、複数の時間間隔の移動ベクトルを計算することにより、移動軌跡を判断する。
【0014】
具体的に、第1の時刻と第2の時刻から当該時間間隔になり、当該誘導ユニットが当該第1の時刻又は当該第2の時刻のエネルギー状態の計算ステップは:
当該全ての又は一部の誘導ユニットが受けたエネルギーの平均値を計算するステップと、
各誘導ユニットが受けたエネルギーと当該平均値との差を計算し、当該差は各誘導ユニットが当該第1の時刻又は当該第2の時刻のエネルギー状態を計算するステップを備える。
【0015】
具体的に、当該誘導ユニットが当該時間間隔の前後のエネルギー状態が収集時刻前後の統計的平均値に対する変化を計算するステップは:
各誘導ユニットの当該第1の時刻のエネルギー状態を判断するステップと、
各誘導ユニットの当該第2の時刻のエネルギー状態を判断するステップと、
当該誘導ユニットの当該第1の時刻から当該第2の時刻までのエネルギー状態が収集時刻前後の統計的平均値に対する変化を取得し、当該移動ベクトルを判断する。
【0016】
本発明は、前記の請求項の光線追跡方法を利用する光線追跡装置であり、
当該表面に入射する光線を発生させるための光源装置と、
アレー状に配列された当該複数の誘導ユニットを有するセンサーアレーと、
コントローラー、当該光源装置と当該センサーアレーをカップルし、当該複数の誘導ユニットが受けた光信号を取得し、エネルギー状態を計算し、及び当該誘導ユニットの当該時間間隔の前後エネルギー状態に対する収集時刻前後の統計的平均値的変化を計算する、
当該センサーアレー及び当該コントローラーが半導体回路に集積し,当該光源装置と当該集積されたセンサーアレーと当該コントローラーが当該光線追跡装置内の回路基板に封止されることを特徴とする光線追跡装置。
【0017】
具体的に、当該光線追跡装置はレーザー光を光源とした光学ポインティング装置である。
【0018】
本発明は、反射干渉により光線追跡を行う方法及び光線追跡装置であり、追跡識別の根拠として、表面で反射される光と元の発射光との建設的に干渉と相殺的に干渉するパターンを使用し、あらゆる様態の平面上での追跡機能を備え、全ての高反射又は極めて低い反射率の平面に適応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は従来の光学式マウスの内部回路の模式図である。
【
図2】
図2は本発明の入射平面と反射光の反射光経路の模式図である。
【
図3】
図3は本発明の光線追跡装置の集積回路内に封止されたセンサーアレーの模式図である。
【
図4】
図4に示すフローは本発明の光線追跡方法の実施例のステップである。
【
図5】
図5は本発明の追跡装置に使われるセンサーアレーの実施例の模式図である。
【
図6】
図6は本発明が開示した装置の誘導ユニットが光線追跡方法を行う模式図の一つである。
【
図7】
図7は本発明が開示した装置の各誘導ユニットが光線追跡方法を行う模式図のもう一つである。
【
図8】
図8に示すフローは追跡方法がエネルギー変化の方向により移動ベクトルを判断するステップを示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
移動位置の判断にはコヒーレント光(non−coherent light)を用いる技術は、例えばマウス移動軌跡を判断するため、普通複雑な資料演算プログラムが要る。このような技術は幾つかの平面(例えば、光反射率が極めて低い平面を避ける)に限られていなければよい効果を出せない。そのため、本発明は光線追跡方法及び装置を開示する。一つの実施例は光源としてコヒーレント光(coherent light)即ち空間コヒーレンス(spatial coherence)のよい光線を使用し、これにより移動方向を検出し、感度コンペンセーション(sensitivity compensation)の方式も組み合わせ、光線追跡アルゴリズム(movement recognition algorithm)を利用する。この技術を使用する装置はあらゆる様態の平面に適応する。
【0021】
本発明が提案した光線追跡装置は、コヒーレント光源統合型パッケージング技術(coherent light source package integration)が採用される。このような技術を採用する装置、例えば光学ポインティング装置は、余分の光学レンズ又は特定なイメージセンサー、例えば相補型金属酸化膜半導体イメージセンサー(CMOS image sensor,CIS)を、実装する必要がない。
【0022】
先ず、
図2に示す特定な光源装置(図示せず)が入射光201を発生させ、平面に入射してから反射され複数の反射光203を形成する模式図を参照する。光源は特に例えばレーザー光のコヒーレント光(coherent light)を採用する。ここで述べた「コヒーレント光」は、空間コヒーレンスの良好な光線であること。
【0023】
図2に示す複数の光経路は、入射光201が一つの表面構造205を持つ平面に入射してから反射され反射光203を形成するのを含んでいる。表面構造205がミクロに不規則な構造であるため、反射光203は
図2のように異なる方向を持つ光線になる。
【0024】
光源装置は入射光201を連続的に発生させ平面に入射し、反射され反射光203を形成する。その中、反射光203はセンサー(
図2に図示せず)により受けられ、それぞれの光経路に建設的干渉と相殺的干渉のパターン(pattern)を生じている。ここで、特にコヒーレント光源の入射光201の使用は、この干渉効果(interference effect)を強めることができる。
【0025】
この追跡方法を行う関連回路を載せた装置がセンシング平面(X−Y平面)に対して移動する時、光センサーは反射光203の情報を受け、時間間隔(time slot)に従いその中の情報をサンプリング(sampling)し、そして反射光203の平均エネルギー値を取得し、反射光203の異なる時刻で、異なる位置でのエネルギー差を計算する。特に、本発明が開示した光線追跡装置は、好ましくセンサーアレー(sensor array)を採用し、反射光203の異なる位置のエネルギー及び、平均エネルギー値との差を取得し、移動軌跡を判断することができる。反射光203の平均値の計算は、全ての誘導ユニット(sensor cell)が取得したエネルギー平均値を使用し、又は一部の誘導ユニットが取得したエネルギー平均値を(例えば行(
図5のX方向)平均値又は列(
図5のY方向)平均値を平均値とする計算参照)使用してもいい。周辺又は中央部分のエネルギー平均値を参照平均値にすることも可能である。
【0026】
上記のセンサーアレーを採用する実施例の一つにより、コヒーレント光を光源とすると、反射光線の干渉効果を強めることができる。コヒーレント光は、波の包絡線(wave envelope)の中に極めて小さい位相遅延(phase delay)を有する光源であり、その中レーザー光は一種のコヒーレント光であり、太陽光又はLED光等の非コヒーレント光と違っている。
【0027】
コヒーレント光を本発明が開示した追跡装置に適用し、コヒーレント光は反射光の干渉をセンシングする光学センサーの感度を改善できる。コヒーレント光は極めて小さい位相差(phase difference)を有する特性から、非コヒーレント光の反射光に生じる空間干渉(spatial interference)に対し、コヒーレント光では比較的に小さい位相遅延(phase delay)を持つ。そのため、コヒーレント光を採用することで、反射光の空間干渉の長所を強めることができ、前記のセンサーアレー(光線に対し)一つの平面に光が反射される空間干渉の差異を取得できる。
【0028】
センサーアレーは、
図3に示す本発明の光線追跡装置の集積回路(IC)に封入されたセンサーアレーの模式図を参照できる。
【0029】
図3にはある装置(例えば光学式マウス又は特定のポインティング装置)内に設けられた回路基板30上の一つのセンサーアレー32を示している。センサーアレー32はアレー状に配列された複数の誘導ユニット301を有し、この統合型パッケージング技術(integrated optical sensor array on IC)により、センサーアレー32上の各誘導ユニット301が固定の位置で平面に反射された光線を均一に取得できる。
図3には、光源装置34が一つの平面に光線を発射し照射範囲303に当たって、光線が平面に反射されセンサーアレー32に入射する。中には、各誘導ユニット301はそれぞれ異なる方向の反射光を受光し、適当な光電信号変換により、装置内のセンサーアレー32と一緒に半導体回路に集積されたコントローラー36と係わる回路が信号を取得した後、各誘導ユニット301が受けたエネルギーを足した平均値を計算できる。そして各誘導ユニット301と平均値との差を計算し、平面に反射され形成した空間干渉のエネルギー差(spatial interference difference)を計算する。コントローラー36は時間間隔(time slot)毎の前後に累積して計算したエネルギー差により、移動方向を判断する。
【0030】
上記の実施例が開示した光線追跡装置では、空間干渉とは、光線(特にコヒーレント光であるが、本発明ではコヒーレント光に限定されない)が不規則な表面構造を有する表面に入射してから、反射され異なる方向の反射光を生じることで生じる光線の干渉(interference)である。このような光線は反射された後、建設的又は相殺的に干渉するパターンを形成し、その後、センサーアレーにより相対的運動(装置と平面との相対的運動)による平面反射の空間情報を取得し、X−Y平面上の移動資料を作り出す。
【0031】
図3に示すように、特に一実施例において、本発明が開示した光線追跡装置はレーザー光を光源とする光学ポインティング装置、例えば光学式マウスである。中には、主な回路部品として、表面に入射する光線を発生させるための回路基板30上に設けた光源装置34と、アレー状に配列された複数の誘導ユニット301を持つセンサーアレー32と、前記のコントローラー36とを有する。当該コントローラー36は光源装置34とセンサーアレー32とをカップリングし、複数の誘導ユニット301内の複数の誘導・ピクセルが受けた光信号を取得し、エネルギー状態を計算し、そして時間間隔のエネルギー状態が収集時刻前後に対する統計的な平均値の変化を計算する。
【0032】
図4に示すフローは、本発明の光線追跡方法の実施例のステップである。
【0033】
この実施例フローにおいて、ステップの最初はS401のように、光線追跡装置内に設けられた光源装置が光線を発射し、一つの表面に入射してから、ステップS403のように、装置内のセンサーが反射光を受光する。
【0034】
実施例により、光源は好ましく例えばコヒーレント光である。その主な目的はコヒーレント光の比較的に小さい位相遅延の特性を利用し、反射光干渉により移動方向を検出する感度を向上することにある。中には、光源装置は光ポインティング装置内に設けたレーザー光装置でよいし、センサーは好ましく
図3に示すようなセンサーアレーを利用する。
【0035】
その後、本発明が開示した光線追跡方法は、主に前記の時間間隔の前後の全て又は一部の誘導ユニットのエネルギー状態を計算することにより、そして誘導ユニットの時間間隔の前後のエネルギー状態が収集時刻前後の統計的平均値に対する変化により、移動ベクトルを判断する。その実施方式の一つは下記のように詳しく述べる。
【0036】
センサーにより反射光を受光した後、ステップS405のように、装置内の控制回路は一つの時間間隔(time slot)前後の各誘導ユニットが受けたエネルギーを計算し、そしてステップS407のように、全て又は一部(
図6の例のように、全ての誘導ユニット/誘導・ピクセル(sensor pixel)がエネルギーの計算に十分な光線を受光することではないかもしれない)の誘導ユニットが当該時間間隔の前後に取得したエネルギー平均値を計算する(同じ時間に少なくとも2つの値を処理する)。前後の異なる時刻に各誘導ユニットのエネルギーと全て又は一部(例えば行平均値、列平均値、周囲平均値、中央平均値を参照平均値とする)のエネルギー平均値を計算した後、各誘導ユニットが受けるエネルギーと平均値との差を計算することができる(一実施例において、ここの差は各誘導ユニットのエネルギー状態を示す)、ステップS409のように、中では、当該時間間隔の前後の少なくとも2つの差をそれぞれ処理する。時間間隔の前後の二組の数値の間に一つの差異はあってもよく、つまり前後時刻のエネルギー変化である。その後、ステップS411のように、誘導チップ内の複数の(少なくとも2つ)誘導ユニットが計算したエネルギー変化により、この追跡技術を一体に用いる装置の移動ベクトルを判断する。
【0037】
上記の光線追跡方法のステップを繰り返すことで、複数の時間間隔の移動ベクトルが計算される。これより、一定時間内の移動軌跡を判断する。中では、各誘導ユニット中のセンシングしたエネルギー変化により、装置と表面との相対的移動を判断する方式は、
図6、
図7に記載されている例を参照してよいし、ステップは
図8に示すフローを参照してよい。
【0038】
図5は光線追跡装置に用いられるセンサーアレーが動作しエネルギー分布を計算する実施例の模式図である。本発明の実施例により、その追跡の演算方式はこの
図5に示す回路構造及びセンサーアレーに依頼する。
【0039】
図5にセンサーアレーのレーアウトを示している。複数の誘導ユニットがX−Y平面に分布し、N×Mのセンサーアレーを形成する。アレー状に配列された複数の誘導ユニット501、502、503、504、505が、それぞれX、Y方向に設置されるが、実際の数はこの模式図に限定されない。これらの誘導ユニット501、502、503、504、505が敷設された回路基板上の主な部品は、複数のコンパレーター521、522、523、524、525もある。各コンパレーターそれぞれ対応する2つの誘導ユニットに接続し、その入力値は各誘導ユニットが生じたエネルギーの平均電圧信号Vavgであり、誘導ユニットが光線をセンシングして得た電圧信号を比較することに用いられ、比較して高い又は低い電圧の信号値が得られる。最後に、追跡方法は隣接する2つのセンサー値を取得し結果を比べ、移動方向を判断する。
【0040】
例えば、
図5のコンパレーター521は誘導ユニット501とカップリングし、一つの入力信号即ち誘導ユニット501がセンシングして得たエネルギー信号は、電圧信号で表すことができる。もう一つの入力端は、平均電圧信号Vavgであり、コンパレーター521がこの2つの入力信号を比較し、一つの比較結果、例えば
図6に示すH又はLで表す高い又は低い電圧信号を出力する。
【0041】
本発明に記載された光線追跡方法によると、追跡の方式は、光線(好ましくコヒーレント光)が平面に反射されて形成した建設的と相殺的に干渉するパターンに表示されるエネルギー分布(energy pattern)を利用し、異なる時刻のエネルギー分布の変化により、移動ベクトルを判断することを特徴とする。実施方式では、例えば非相関視点を用い移動判断(non−relative view points to do movement judgment)を行う方式では、つまり周りの誘導ユニットのエネルギー情報を引き入れ、平均誘導エネルギーと比較し、移動方向を判断する。ちなみに、一般的に映像像素(pixel)情報を利用し移動ベクトルを判断する方式と違い、本発明は時間の採用とエネルギー変化の計算と(バイナリの示度、及び統計的平均値の比較した結果、HとL)により移動軌跡を判断する。
【0042】
異なる時刻のエネルギー変化により移動方向を判断するステップは
図8に示している。ステップS801では、装置は先ず各誘導ユニットが前後時刻(t0, t1)に受けたエネルギーを取得する。次に、ステップS803のように、前後時刻のエネルギーの全て又は一部の誘導ユニットが受けたエネルギーの平均値を計算する。各誘導ユニットは、異なる時刻に取得したエネルギーの数値(電圧信号で表示できる)を平均数値と比較した後、ステップS805のように、前後時刻のエネルギー変化を計算することができる。
【0043】
その後、ステップS807のように、異なる時刻(t0, t1)の誘導ユニットのエネルギー変化を参照し、前後時刻のエネルギー変化の方向を判断することができる。最後に、ステップS809のように、複数の誘導ユニットのエネルギー変化方向により、全体的な移動ベクトルを判断することができる。
【0044】
図8に記載された前後エネルギー変化により移動ベクトルを判断する方式では、誘導ユニットの前後時刻のエネルギーは、電圧形式で表すエネルギー状態であってもよい。例えば、全体の同一時間のエネルギー平均値と比較した後、一つの
図6に示すH又はLで表すエネルギー状態を取得することができる。従って、先ず、各誘導ユニットがそれぞれ第1の時刻(t0)と第2の時刻(t1)とのエネルギー状態を判断し、その後誘導ユニットが第1の時刻から第2の時刻までのエネルギー状態が収集時刻前後の統計的平均値に対する変化を取得し、移動ベクトルを判断することができる。
【0045】
移動ベクトルの判断は、
図6に示す本発明が開示した装置中の複数の誘導ユニットが光線追跡方法を行う模式図を参照すればよい。
【0046】
本例は、複数のアレー状に配列された誘導ユニットの組み合わせ601、602、603、604、605、606を示しているが、本例は隣接する誘導ユニットが異なる時刻(例えば第1の時刻t0、第2の時刻t1)にセンシングしたエネルギー変化により移動ベクトルを識別する例を挙げるのみである。
【0047】
中には、t0とt1は前後の二つのサンプリング時刻であり、HとLはそれぞれ前記のコンパレーターが出力する高い又は低い電圧信号を意味し、すなわちエネルギー状態(平均エネルギーに対し、一つのエネルギー状態であり)に視される。主に前後時刻の電圧信号転換により一つの全体的な移動ベクトルを判断する。
図6は、個別の誘導ユニットの前後二つの異なる時刻のエネルギー変化を示している。
【0048】
例えば、誘導ユニットの組み合わせ601の中に幾つか(少なくとも二つ)の誘導ユニットを模式的に示している。中には、左側が第1の時刻t0の時、二つの誘導ユニットが別々にLとHの二つのエネルギー状態を誘導したことを示している。第2の時刻t1になると、二つの誘導ユニットのエネルギー変化はHとHに変換される。L、H(t0)がH、H(t1)に変わる時、中の一つの誘導ユニットのエネルギー状態はLからHに変わり、右側のHが左側の位置にシフトを示している。従って、この時間間隔では、有效誘導の移動方向は左であることを初歩的に判断できる。
【0049】
この誘導ユニット組み合わせ601のもう一組の誘導ユニットは、第1の時刻のt0において、エネルギー状態がHとLである。第2の時刻のt1になると、エネルギー状態はLとLになる。中の一つの誘導ユニットのエネルギー状態はHからLに変わり、つまり右側のLが左側の位置にシフトを示している。従って、左への移動方向があると判断できる。
【0050】
また、例えば誘導ユニットの組み合わせ602中の左側の二つの誘導ユニットは、第1の時刻のt0におけるエネルギー状態がLとHであり、第2の時刻のt1になると、LとLに変わり、中のHが左側のLを介して右へLにシフトしたことがわかる。従って、右への移動ベクトルがあると判断できる。
【0051】
同じように、誘導ユニット組み合わせ602の中、右側の二つの誘導ユニットは、第1の時刻t0におけるエネルギー状態がHとLであり、その後、第2の時刻t1に、HとHに変わり、中の右側のLが左側のHを介して、Hにシフトした。従って、右への移動ベクトルがあると判断できる。
【0052】
図には、誘導ユニット組み合わせ605と606は、矢印で方向を示していない。判断した結果、この例では、複数の誘導ユニットは、第1の時刻t0と第2の時刻t1の時間間隔に、エネルギー変化はない、またはエネルギー変化より移動方向を判断することができない。例えば、誘導ユニット組み合わせ606は、第1の時刻t0にエネルギー状態はLとHであり、第2の時刻t1になると、エネルギー状態はHとLに変わった。これはエネルギー状態変化により移動方向を判断することができない。従って、この二つの様態は、有效出力信号がない。
【0053】
前後2つの時刻の全ての誘導ユニットが各々のエネルギー変化の方向を判断した時、一つの総移動ベクトルを全体的に判断できる。
【0054】
他の一つの移動方向の判断方式は、
図7に示すように、本発明が開示した装置の中誘導チップが行う光線追跡方法の模式図もう一つである。この例は、異なる時刻の誘導ユニットのエネルギー状態の転換方向により、移動ベクトルの方法を識別する模式図であり、中には、Xは気にしない値,@はt0とt1センシングした信号の比、これにより移動ベクトルを判断する。
【0055】
誘導チップが反射光を受光した時、誘導チップ内の複数の誘導ユニットが異なる時刻に受けた信号エネルギーと平均エネルギーとを比較する時、高い又は低い異なる電圧信号を生じ、
図7に示すように、誘導信号"@"を生じている;ある場合、一部の誘導ユニットにエネルギー変化がなく、又は電圧信号のレベルと関係ない。この時、
図7のように、気にしない値"X"を示す。
【0056】
図7に示す実施例によると、誘導ユニットの組み合わせ701の中、前記のコンパレーターが第1の時刻t0に隣接する誘導ユニットのエネルギー変化を取得し、状態"X@@"で示す。中の"X"は気にしない値であり、"@"は電圧変化があることを示す。第2の時刻t1に複数の隣接する誘導ユニットのエネルギー変化を取得し、状態"@@X"で示す。第1の時刻t0と第2の時刻t1の各誘導ユニットのエネルギー状態変化により、本例は状態"X@@"から"@@X"に変わることを示している。"@@"が左へシフト(shift)することが判断できるので、図の中の矢印で示すように、この誘導ユニットの組み合わせ701には左への移動の変化があると判断できる。
【0057】
誘導ユニットの組み合わせ702では、その隣接する誘導ユニットの第1の時刻t0のエネルギー変化を状態"@@X"に示し、第2の時刻t1の時、エネルギー状態を"X@@”に示している。この時、時間転換(t0からt1へ)の後、状態"@@"は右へのシフトトレンドがあると示す。したがって、本発明が開示した追跡方法はこの前後時刻のエネルギー変化により、全体の装置の移動方向を判断する。
【0058】
ちなみに、移動方向を判断する時、本発明はセンサーアレーを採用するため、微小な誤差が全体の判断の結果に影響を及ぼさない。追跡方法はコンピュータの光学式マウスに適用されると、一般の使用者がマウスを操作し移動する頻度は、例えば中の制御回路の処理速度により遥かに低いので、スローに変わる参照数値は全体の判断に影響を及ぼさない。
【0059】
以上をまとめ、本発明が提供する反射干渉により光線追跡を行う方法とその光線追跡装置は、開示された光線追跡装置が半導体パッケージ内に統合し、これにより、内部に固有する雑音(intrinsic noise)を効率的に抑制することができる。そして、その追跡方法を適応する装置は、光源として特にコヒーレント光を採用する。コヒーレント光は反射光干渉をセンシングする光学センサーの感度を改善することができる。
【0060】
以上のように述べられたのは、本発明の好ましい実施方式であるが、説明すべきことは、本技術分野の普通の従業者にとって、本発明の原理を背離しない限り、若干の改善と修正もできる。これらの改善と修正は、本発明の保護範囲に入ることと視される。