特許第6236164号(P6236164)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236164タイムピース用の非接触シリンダー脱進機構
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236164
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】タイムピース用の非接触シリンダー脱進機構
(51)【国際特許分類】
   G04B 15/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   G04B15/00
【請求項の数】27
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2016-542197(P2016-542197)
(86)(22)【出願日】2014年12月8日
(65)【公表番号】特表2017-505431(P2017-505431A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2014076930
(87)【国際公開番号】WO2015096973
(87)【国際公開日】20150702
【審査請求日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】02140/13
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】CH
(31)【優先権主張番号】13199427.9
(32)【優先日】2013年12月23日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】01057/14
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】CH
(31)【優先権主張番号】14176816.8
(32)【優先日】2014年7月11日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】01416/14
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】CH
(31)【優先権主張番号】14185638.5
(32)【優先日】2014年9月19日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】14186261.5
(32)【優先日】2014年9月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599040492
【氏名又は名称】ニヴァロックス−ファー ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】シュトランツル,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ウィンクレ,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】ディ・ドメニコ,ジャンニ
(72)【発明者】
【氏名】エルフェ,ジャン−リュック
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第00671360(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイムピース脱進機構(1)であって、第一のピボット軸(D1)に対して、ノミナルトルク以の回転トルクを受けるガンギ車(3)と、第二の実ピボット軸または仮想ピボット軸(D)に対して旋回するように装着された調節性ホイールセット(5)と一体化された共振器(4)とを備え、前記ガンギ車(3)は、その外周縁部に規則的にスペースを空けられ、かつ各々は、前記調節性ホイールセット(5)の少なくとも第一のトラック(7)と直接協働するように配置された複数のアクチュエータ(6)を備え、前記各々のアクチュエータ(6)は、第一の磁気的または静電気的な停止手段を備え、障壁を形成し、かつそれぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性もしくは静電気的に導電性である前記第一のトラック(7)と協働して、前記第一のトラック(7)に前記ノミナルトルクよりも大きいトルクを発揮するように配置されるという点で特徴付けられ、かつさらに、各々の前記アクチュエータ(6)はまた、前記調節性ホイールセット(5)中に含まれる、少なくとも第一の補完的停止表面(10)とともに自律的脱進機構を構成するように配置された、ガンギ車の回転を機械的に停止させるというエンドオブトラベル停止を構成するように配置された第二の停止手段を備えるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記第一の停止手段は、表面(61;610;62;620)を備え、これはそれぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性もしくは静電気的に導電性であり、障壁を形成し、かつそれぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性もしくは静電気的に導電性である前記第一のトラック(7)と協働して、それによって、前記第一のトラック(7)と、前記アクチュエータ(6)の各々の前記表面(61;610;62;620)との間で、前記ノミナルトルクよりも大きいトルクを生じるように配置されるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項3】
請求項2に記載の脱進機構(1)であって、前記第一の停止手段は、
第一のトラック(7)と協働するように配置された、第一の表面(61;62)と第二の表面(610;620)とを含み、
前記第一の表面(61;62)は、この第一の表面(61;62)上に形成されている磁場または静電場よりも高い強度の磁場または静電場からなる障壁が形成されている第二の表面(610、620)によって発揮される停止トルクとしての第二のモーメントよりも低い第一のモーメントを有するトルクを発揮し、
前記第二の表面(610;620)は、前記調節性ホイールセット(5)に含まれる少なくとも第一の補完的停止表面(10)と協働するように配置されることで自律的脱進機構を構成するという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項4】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記第二の停止手段は、前記調節性ホイールセット(5)中に含まれる少なくとも第一の補完的停止表面(10)と、エンドオブトラベル停止配置で、協働して、それとともに自律的脱進機構を構成するように配置された機械的停止部材(9)を備えるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項5】
請求項3に記載の脱進機構(1)であって、前記第二の停止手段は、前記調節性ホイールセット(5)中に含まれる少なくとも第一の補完的停止表面(10)と、エンドオブトラベル停止配置で、協働して、それとともに自律的脱進機構を構成するように配置された機械的停止部材(9)を備えるという点で特徴付けられ、前記各々のアクチュエータ(6)は、連続して、前記第一のトラック(7)と協働するように進入する単一方向で、前記第一の表面(61;62)、前記第二の表面(610;620)、および前記機械的停止部材(9)を備えるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項6】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記脱進機構(1)は、非接触直進脱進機であるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項7】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記アクチュエータ(6)は、お互いに同一であるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項8】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記第一のトラック(7)は、前記第二の実ピボット軸または仮想ピボット軸(D2)上に中心がある回転体のセクター上に、かつ厳密に360°未満の角度振幅で位置していると言う点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項9】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記第一の補完的停止表面(10)は、前記第二の実ピボット軸または仮想ピボット軸(D2)上に中心がある回転体のセクターであり、かつ厳密に360°未満の角度振幅である、切り取りリングギヤ(50)によって保持されて、それによって、前記共振器の平衡位置に近い以外は、前記共振器(4)と前記ガンギ車(3)との間のエネルギーの交換を最小化するという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項10】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記第一のトラック(7)は、それぞれ第一の磁場、または静電気場を生じ、これは、前記アクチュエータ(6)の各々の第一の表面(61)を反発させる傾向であり、前記第一の表面(61)は、それぞれ前記第一の磁場または静電気場の極性と反対の極性で、それぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びているという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項11】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、各々の前記アクチュエータ(6)は、磁荷を与えられ、または電荷を帯びた前記第一のトラック(7)と協働することで互いが誘引するように配置される磁荷を与えられ、または電荷を帯びた第一の表面(61)を備えるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項12】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記ガンギ車(3)はまた、他の前記アクチュエータ(6)を含み、その各々は、少なくとも第二のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びた表面(62;620)を備え、これは前記調節性ホイールセット(5)の第二のトラック(8)と協働するように配置され、前記第二のトラック(8)は、前記第一のトラック(7)と並行であり、かつ前記第二のピボット軸(D2)に対して垂直であり、かつ前記第二のピボット軸(D2)に中心があり、厳密に360°未満の角度振幅を有する環状セクターであり、かつ第二のそれぞれ磁場または静電場を生じ、これは前記第二のそれぞれ磁場または静電場の極性と反対の極性を有する、それぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びた各々の前記第二の表面(62;620)を反発させる傾向であるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項13】
請求項12に記載の脱進機構(1)であって、前記ガンギ車(3)は、少なくとも前記第一の表面(61;610)を備える上部ディスク(31)、および前記第二の表面(62;620)を備えるとともに前記第一の表面(61;610)に対して垂直かつ対向して位置する下部ディスク(32)を備えるという点で、ならびに前記ガンギ車(3)は、それぞれ磁場または静電場閉鎖手段を、前記上部ディスク(31)と前記下部ディスク(32)との間に備えるという点で、ならびに前記第一のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたトラック(7)は、一連のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたスタッドから形成されるという点で、ならびに前記第二のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたトラック(8)は、一連のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたスタッドから形成されるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項14】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、各々の前記機械的停止部材(9)はまた、エンドオブトラベル停止配置において、前記調節性ホイールセット(5)中に含まれる少なくとも第二の補完的停止表面(11)と協働するように配置されているという点で特徴付けられ、かつさらに、前記第二の補完的停止表面(11)は、前記第二のピボット軸(D2)上に中心がある回転の表面によって保持され、かつ厳密に360°未満の角度振幅であるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項15】
請求項14に記載の脱進機構(1)であって、前記第二の補完的停止表面(11)は、前記第一の補完的停止表面(10)に対して、少なくとも1つの接合表面(12)(前記接合表面(12)は、その平衡位置に近い前記共振器に対してエネルギーを供給するように配置された前記アクチュエータ(6)に隣接する場合、前記共振器(4)の衝撃傾斜を形成するように配置される)によって接続されるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項16】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記機械的停止部材(9)は、その平衡位置に近い前記共振器に対してエネルギーを提供するように配置された衝撃傾斜を含むという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項17】
請求項15に記載の脱進機構(1)であって、前記衝撃傾斜は、前記ガンギ車(3)に付与される駆動トルクは、前記第一のトラック(7)と前記アクチュエータ(6)の各々の前記第一の表面(61)との間の、それぞれ反発または誘引は、前記機械的停止部材(9)と前記調節性ホイールセット(5)との間の接触を妨げるのに不十分であるような場合、その平衡位置に近い前記共振器に対してのみエネルギーを提供するという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項18】
請求項16に記載の脱進機構(1)であって、前記衝撃傾斜は、前記ガンギ車(3)に付与される駆動トルクは、前記第一のトラック(7)と前記アクチュエータ(6)の各々の前記第一の表面(61)との間の、それぞれ反発または誘引は、前記機械的停止部材(9)と前記調節性ホイールセット(5)との間の接触を妨げるのに不十分であるような場合、その平衡位置に近い前記共振器に対してのみエネルギーを提供するという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項19】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、各々の前記第一のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びた表面(61)は、前記第一のトラック(7)上に前記第一の表面(61)の突起に対応する重ね合わせ表面(71)の面積は、前記ガンギ車(3)および前記調節性ホイールセット(5)の相対的な旋回の間に変化し得るように、前記第一ピボット軸(D1)から離れて半径方向に徐々に減少するセクションを備えるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項20】
請求項1に記載の脱進機構(1)であって、前記ガンギ車(3)は前記システムに対して徐々にエネルギーを提供するという点で、および前記調節性ホイールセット(5)は、前記共振器(4)に付与される衝撃の形態で、全てのこの蓄積されたエネルギーを即時的に戻し、これによって、前記脱進機構(1)は、一定力の脱進機構を形成するという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項21】
請求項14に記載の脱進機構(1)であって、前記脱進機構(1)は、シリンダー脱進機構を構成し、ここで前記第一の補完的停止表面(10)は、シリンダー状管状セクターの内面であるという点で、および前記第二の補完的停止表面(11)は、前記シリンダー状管状セクターの外面であるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項22】
請求項15に記載の脱進機構(1)であって、前記脱進機構(1)は、シリンダー脱進機構を構成し、ここで前記第一の補完的停止表面(10)は、シリンダー状管状セクターの内面であるという点で、および前記第二の補完的停止表面(11)は、前記シリンダー状管状セクターの外面であるという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項23】
請求項14に記載の脱進機構(1)であって、前記脱進機構(1)は、ピンホイール脱進機構を構成し、ここで前記ガンギ車(3)は、各々の前記アクチュエータ(6)上にハーフピンを備え、かつここで前記第一の補完的停止表面(10)は、第一の製図用コンパスリンク部材の内面であるという点で、ならびに前記第二の補完的停止表面(11)は、第二の製図用コンパスリンク部材の外面であり、前記第一の製図用コンパスリンク部材の前記内面および前記第二の製図用コンパスリンク部材の前記外面は、前記ハーフピンの半径よりも広いスペースで隔てられているという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項24】
請求項15に記載の脱進機構(1)であって、前記脱進機構(1)は、ピンホイール脱進機構を構成し、ここで前記ガンギ車(3)は、各々の前記アクチュエータ(6)上にハーフピンを備え、かつここで前記第一の補完的停止表面(10)は、第一の製図用コンパスリンク部材の内面であるという点で、ならびに前記第二の補完的停止表面(11)は、第二の製図用コンパスリンク部材の外面であり、前記第一の製図用コンパスリンク部材の前記内面および前記第二の製図用コンパスリンク部材の前記外面は、前記ハーフピンの半径よりも広いスペースで隔てられているという点で特徴付けられる、脱進機構(1)。
【請求項25】
タイムピース運動(100)であって、請求項1に記載の少なくとも1つの脱進機構(1)を備え、かつ第一のピボット軸(D1)に対する、単一方向回転トルクを前記ガンギ車(3)に与える駆動モーター手段(2)を備え、前記駆動モーター手段(2)は、前記第一のトラック(7)との各々の前記第一の表面(61)の完全な重ね合わせを可能にするのに十分なトルクを送達するように配置されているという点で特徴付けられる、タイムピース運動(100)。
【請求項26】
請求項25に記載のタイムピース運動(100)であって、前記脱進機構(1)は、停止部材を欠いているという点で、かつ前記駆動モーター手段(2)によって送達される最大トルクが、前記第一のトラック(7)との各々の前記障壁(610)の完全な重ね合わせを可能にするのに不十分であるレベルに制限されるという点で特徴付けられる、タイムピース運動(100)。
【請求項27】
請求項25または請求項26に記載のタイムピース運動(100)を含むタイムピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイムピース脱進機構であって、第一のピボット軸に対して、ノミナルモーメント以下のモーメントを有する、回転トルクを与えられるガンギ車と、第二の実ピボット軸または仮想ピボット軸に対して旋回するように装着された調節性ホイールセットと一体化された共振器とを備え、上記ガンギ車は、その末端上で規則的にスペースを空けられている複数のアクチュエータを備えており、前記調節性ホイールセットの少なくとも第一のトラックと直接協働するように各々が配置されている、タイムピース脱進機構に関する。
【0002】
本発明はまた、タイムピース運動であって、少なくとも1つのこのような脱進機構を備えており、かつ第一のピボット軸に対して単一方向の回転トルクを前記ガンギ車に与える駆動モーター手段を備えている、タイムピース運動に関する。
【0003】
本発明はまた、1つのこのような運動を含むタイムピースにも関する。
【0004】
本発明は、タイムピース脱進機構の分野に、さらに具体的には、非接触脱進機構の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
シリンダー脱進機は、安全性の観点では満足だが、2つの大きい弱点がある。
−シリンダー脱進機は、デタッチド脱進機ではなく、すなわち、ガンギ車の歯のうちの1つは、一定して接触され、従って、てん輪と擦れ合っている。この摩擦によって、振動が壊されて、脱進機の有効性が低下されて、クロノメトリック特性が付与される。
−シリンダー脱進機は、一定力の脱進機ではない。てん輪に移行されるエネルギーは、ガンギ車からのトルクに依存する。
【0006】
特許文献1は、SMITH&SONSの名称で、永久磁石を有するてん真を備えるてん輪を開示しており、これは、各々がトラックを保有している(各々のトラックが、2つのフランジによって囲まれた内腔中で浮彫になっており、いずれかの側でフォークによって囲まれる開口を区切っている)、対称な平面の両側で、軟鉄のフランジと接触している。これらのトラックの配置は、シリンダー脱進機の配置を模倣しており、その末梢の一部に切り取りシリンダーがある。フランジの間の空隙中に磁場がある;ガンギ車は、その平面の両側に、軟鉄のスタッドを保持し、従って、これは、磁気的に活性ではなく、受動素子であり、スタッドの1つがフォークの間である時、フランジの間の電場の局所的な閉鎖を可能にする。スタッドは、トラックの間に配置されており、各々の側では、第一の側の上のスタッドと第一のトラックとの間の第一の空隙、ガンギ車の第二の側の上のスタッドと第二のトラックとの間の第二の同一の空隙がある。従って、スタッドとトラックとの間になんら機械的な接触が存在し得ず、なおさらフォークの進入があり、従って、なおさら隣接する接触はなくてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許出願公開第671360号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、とりわけショックの後に、過剰なトルクの事象で安全性を確立する(ただしその高い摩擦レベルによって、脱進機の有効性が有意に付与される)という利点を有する、機械的シリンダー脱進機の原理を適応させることを提案する。
【0009】
本発明は、磁石またはエレクトレットなど(適切に配置された場合、磁力または静電気的な反発を形成し、摩擦を除き、従って、この脱進機の主要な欠陥を除く)を導入することによって、シリンダー脱進機で接触および摩擦を排除するという原理に基づく。この磁石などは、ガンギ車上に置かれて、非接触停止部材として機能する。機械的な停止部材を追加して、ショックの事象でガンギ車の競争を妨げる。
【0010】
機械的な安全性事象を有する非接触システムを組み合わせるという事実は、本発明の重要な特徴である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明は、タイムピース脱進機構であって、第一のピボット軸に対して、ノミナルモーメント以下のモーメントを有する、回転トルクを受けるガンギ車と、第二の実ピボット軸または仮想ピボット軸に対して旋回するように装着された調節性ホイールセットと一体化された共振器とを備え、上記ガンギ車は、その末端上で規則的にスペースを空けられている複数のアクチュエータを備えており、前記調節性ホイールセットの少なくとも第一のトラックと直接協働するように各々が配置されており、各々の前記アクチュエータは、第一の磁気的、または電気的な停止手段を備え、障壁を形成し、それぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性もしくは静電気的に導電性の前記第一のトラックと協働するように配置されて、前記第一のトラックに対して、前記ノミナルモーメントよりも大きいモーメントを有するトルクを発揮するという点で特徴付けられ、さらに、各々の前記アクチュエータがまた、エンドオブトラベル停止を形成するように配置された第二の停止手段を備え、前記調節性ホイールセット中に含まれる少なくとも第一の補完的停止表面を有する自律的脱進機構を形成するように配置されるという点で特徴付けられる、タイムピース脱進機構に関する。
【0012】
本発明はまた、タイムピース運動であって、少なくとも1つのこのような脱進機構を備えており、かつ第一のピボット軸に対して単一方向の回転トルクを前記ガンギ車に与える駆動モーター手段を備えており、前記駆動モーター手段が、前記第一のトラックとの各々の前記第一の表面の完全な重ね合わせを可能にするのに十分なトルクを駆動するように配置されているという点で特徴付けられる、タイムピース運動にも関する。
【0013】
本発明はまた、1つのこのような運動を含むタイムピースに関する。
【0014】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読めば明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明による、脱進機構の部分的な模式的平面図を示し、磁気的代替では、ここでは、その末梢で、特定のアクチュエータを装備されたガンギ車(各々が、磁気トラックおよび機械的停止部材を備える)は、テンプのピボット軸に対して平行な磁化されている切り取りシリンダー状リングを備える、調節性ホイールセットを保持するローラーを有するてん輪と協働する。
図2図2は、図1の機構を、テンプのピボット軸およびガンギ車のピボット軸を通過する模式的な断面で示す。
図3図3は、図1および図2と同様の方式で、アクチュエータの第一の磁気表面とリングとの協働を示す。
図4図4は、図1および図2と同様の方式で、アクチュエータの第一の磁気表面とリングとの協働を示す。
図5図5は、特定の形状のアクチュエータを有する同様の機構(各々が、第一の磁気表面、第二の磁気表面および機械的停止部材を組み合わせる)を示す。図5は、全体的な平面図を示す。
図6図6は、特定の形状のアクチュエータを有する同様の機構(各々が、第一の磁気表面、第二の磁気表面および機械的停止部材を組み合わせる)を示す。図6は、側面図を示す。
図6A図6Aは、特定の形状のアクチュエータを有する同様の機構(各々が、第一の磁気表面、第二の磁気表面および機械的停止部材を組み合わせる)を示す。図6Aは、上面図を示し、これは磁化されたリングと協働する第一の磁気トラックを有する。
図7図7は、特定の形状のアクチュエータを有する同様の機構(各々が、第一の磁気表面、第二の磁気表面および機械的停止部材を組み合わせる)を示す。図7は、図6Aと同じ位置で透視図を示す。
図8図8は、過剰のトルクの事象では、場合によって、リングの内面または外面のシリンダー状表面と、アクチュエータの機械的停止部材との協働を部分的な平面図で図示する。
図9図9は、過剰のトルクの事象では、場合によって、リングの内面または外面のシリンダー状表面と、アクチュエータの機械的停止部材との協働を部分的な平面図で図示する。
図10図10は、過剰のトルクの事象では、場合によって、リングの内面または外面のシリンダー状表面と、アクチュエータの機械的停止部材との協働を部分的な平面図で図示する。
図11図11は、磁場的な代替で、本発明による脱進機構の例示的な実施形態を図示する。この非限定的な実施例では、ガンギ車は、各々が、軸方向で磁化されたアクチュエータを装備された2つのディスク(上側および下側)を備える。このガンギ車は、ローラーを有するテンプと協働し、これは、ローラーによって保持される調節性ホイールセットのみを示し、軸方向で磁化された、切り取りシリンダー状リングを備える。
図12図12は、磁場的な代替で、本発明による脱進機構の例示的な実施形態を図示する。この非限定的な実施例では、ガンギ車は、各々が、軸方向で磁化されたアクチュエータを装備された2つのディスク(上側および下側)を備える。このガンギ車は、図12に図示されない、ローラーを有するテンプと協働し、これは、ローラーによって保持される調節性ホイールセットのみを示し、軸方向で磁化された、切り取りシリンダー状リングを備える。
図13図13は、磁場的な代替で、本発明による脱進機構の例示的な実施形態を図示する。この非限定的な実施例では、ガンギ車は、各々が、軸方向で磁化されたアクチュエータを装備された2つのディスク(上側および下側)を備える。このガンギ車は、図13に図示されない、ローラーを有するテンプと協働し、これは、ローラーによって保持される調節性ホイールセットのみを示し、軸方向で磁化された、切り取りシリンダー状リングを備える。
図14図14は、図11図13の機構を示しており、上部ディスクは、特に、リングとの相互作用のエリアでアクチュエータの位置を図示するために、示していない。
図15図15は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図16図16は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図17図17は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図18図18は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図19図19は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図20図20は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図21図21は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図22図22は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図23図23は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図24図24は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図25図25は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図26図26は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図27図27は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図28図28は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図29図29は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図30図30は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図31図31は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図32図32は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図33図33は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図34図34は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
図35図35は、図14の部分的に展開された図面の上面図であって、本発明による脱進機構の運動力学を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、タイムピース脱進機構の分野に、さらに具体的には、非接触脱進機構の分野に関する。
【0017】
本発明は、特にショック後、過剰なトルクの事象で安全性を確保する(ただしその高い摩擦レベルによって脱進機の有効性が有意に得られる)という利点を有する、機械的シリンダー脱進機の原理を適合させることを提案する。
【0018】
この目的を達成するために、本発明は、バレルなどのような特に駆動モーター手段2にトルクを提供するための手段と協働するように配置されているタイムピース脱進機構1に関する。
【0019】
この脱進機構1は、ガンギ車3を備え、これは、トルクを提供するためのこのような手段の作用のもとで、第一のピボット軸D1に対して、ノミナルモーメント以下のモーメントを有する、回転トルクを受ける。
【0020】
この脱進機構1は、第二の実ピボット軸または仮想ピボット軸D2に対して好ましくは装着された、調節性ホイールセット5と一体化した調節性部材または共振器4を備える。
【0021】
ガンギ車3は、その末端で規則的にスペースが空いている、複数のアクチュエータ6を備える。これらのアクチュエータ6の各々は、調節性ホイールセット5中に含まれる少なくとも第一のトラック7と直接協働するように配置される。
【0022】
本発明によれば、各々のこのようなアクチュエータ6は、第一の磁気的または静電気的な停止手段を備え障壁を形成し、かつそれぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性、もしくは静電気導電性である1つのこのような少なくとも第一のトラック7と協働するように配置されて、第一のトラック7にノミナルモーメントよりも大きいモーメントを有するトルクを発揮する。
【0023】
各々のアクチュエータ6は、調節性ホイールセット5に含まれる少なくとも第一の補完的停止表面10と自律的脱進機構を構成するように配置された、エンドオブトラベル停止を形成するように配置された第二の停止手段をさらに備える。
【0024】
さらに具体的には、この第一の停止手段は、表面61、610、62、620を備え、これはそれぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性、もしくは静電気導電性であって、障壁を形成し、かつそれぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性、もしくは静電気導電性である第一のトラック7と協働して、それによって第一のトラック7と、関係するアクチュエータ6の各々の表面61、610、62、620との間に上記ノミナルモーメントより大きいモーメントを有するトルクを生じるように配置されている。
【0025】
さらに具体的には、これらの第一の停止手段は、第一のトラックと協働するように配置された、一方では、第一の表面61、62(他方では第二の表面610、620によって発揮される停止トルクの第二のモーメントよりも低い第一のモーメントを有するトルクを発揮して、第一の表面61、62上に存在するそれぞれ磁場または静電場よりも高い強度のそれぞれ磁場または静電場がある障壁を形成するため)と、第二の表面610、620(調節性ホイールセット5に含まれる少なくとも第一の補完的停止表面10と協働するように配置されて、それとともに自律的脱進機構を構成する)とを備える。
【0026】
さらに具体的には、この第二の停止手段は、機械的停止部材9であって、これは、エンドオブトラベル停止配置において、調節性ホイールセット5に含まれる少なくとも第一の補完的停止表面10と協働して、それとともに自律的脱進機構を構成するように配置されている、機械的停止部材9を備える。
【0027】
さらに具体的には、各々のこのようなアクチュエータ6は、連続して、第一のトラック7、第一の上記表面61、62、第二の表面610、620、および機械的停止部材9を協働して進入する単一方向を有する。
【0028】
さらに具体的には、第一のそれぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性、もしくは静電気導電性の表面61は、それぞれ磁荷を与えられるか、もしくは電荷を帯びているか、またはそれぞれ強磁性、もしくは静電気導電性である1つのそのような少なくとも第一のトラック7と協働して、それによって各々のアクチュエータ6の各々の第一の表面61と反発するかまたは誘引するように配置されている。
【0029】
各々の上記アクチュエータ6は、機械的停止部材9を備え、これは、エンドオブトラベル停止配置において、少なくとも第一の補完的停止表面10と、および/または傾斜接合表面12(調節性ホイールセット5に含まれる)と協働して、上記表面と構成するか、または上記表面および自律的脱進機構と構成するように配置される。
【0030】
本発明による脱進機構1は、より具体的には、非接触直進脱進機である。実際、機械的停止部材の役割は、過度のトルクの適用の事象、またはショックの事象でさえ脱進機構の作動を保証することである。正常な操作では、調節性ホイールセット5のトラック(単数または複数)7との第一の表面61の協働は、脱進機の作動を保証するのに十分である。
【0031】
好ましくは、ガンギ車3は、駆動モーター手段2から特に受けとるトルクの作用のもとで、第一のピボット軸D1に対して単一方向の回転トルクを与えられる。
【0032】
好ましくは、共振器4は、往復運動する旋回運動にあり、第二のピボット軸D2に対して旋回するように装着されたこのような調節性ホイールセット5と一体である。
【0033】
好ましくは、全てのアクチュエータ6は、お互いに同一である。それらは好ましくは、同一の抜本的配置を有する。
【0034】
図に例示される特定の実施形態では、第一のトラック7は、第二のピボット軸D2上に中心がある回転体のセクター上に位置し、厳密に360°未満の角度振幅を有する。第一のトラック7は、例示された場合のように連続であってもよく、または調節性ホイールセット5の末梢の少なくとも一部にわたってお互いと隣接するトラックセクションから形成されてもよい。特定の実施形態では、第一のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたトラック7は、一連のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたスタッドから形成される。以下の説明では、「第一のトラック7」という用語を両方の実施形態で用いる。
【0035】
好ましくは、第一のトラック7は、平坦であり、かつそれと協働するように配置される全てのアクチュエータ6は、同じ平面に位置する第一の表面61を有する。
【0036】
特定の非限定的な実施形態では、図に示されるとおり、第一の補完的停止表面10は、第二のピボット軸D2上に中心がある回転体のセクターである、切り取りリング50によって保持される。この第一の補完的停止表面10は、厳密に360°未満の角度振幅を有し、それによって、共振器の平衡位置に近いことを除いて、共振器4とガンギ車3との間のエネルギーの変換を最小限にする。
【0037】
特定の実施形態では、第一のトラック7は、第一のそれぞれ磁場または静電場を生じ、これは、各々のアクチュエータ6の各々の第一の表面61と反発する傾向であり、このような第一の表面61は、第一のそれぞれ磁場または静電場の極性と反対の極性でそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びている。
【0038】
特定の実施形態では、各々のアクチュエータ6は、第一のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びた表面61であって、それぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びている第一のトラック7と協働して、それによって、各々のアクチュエータ6の各々の第一の表面61を誘引するように配置された表面61を備える。ガンギ車3はまた、共振器4と一体の平面上で、鉄またはそれぞれ強磁性、もしくは静電気導電性の材料でできたトラックと相互作用する複数の磁石を備えてもよい。
【0039】
さらに具体的には、このプレートは、バッフルを形成するように配置された穴を備えるリングである。
【0040】
具体的には、各々のこのようなアクチュエータ6は、調節性ホイールセット5の第二のトラック8と協働するように配置された、第二のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びた表面62を備える。好ましくは、第一のトラック8は平坦であり、かつそれと協働するように配置されている全てのアクチュエータ6は、同じ平面に配置される第二の表面62を有する。さらに具体的には、このような第二のトラック8は、前記第一のトラック7に対して並行であり、かつ第二のピボット軸D2に対して垂直である。
【0041】
第一のトラック7と同様に、第二のトラック8は、第二のピボット軸D2の中心にある環状セクターであり、厳密に360°未満の角度振幅を有し、かつこれは、各々の第二の表面62と反発する傾向である、第二のそれぞれ磁場または静電場を生じる;このような第二の表面62は、このような第二のそれぞれ磁場または静電場の極性と反対の極性で、それぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びている。特定の実施形態では、第二のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたトラック8は、一連のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたスタッドから形成される。
【0042】
有利なことに、図12および図13でわかるとおり、ガンギ車3は、第一の表面61を備えている少なくとも1つの上部ディスク31と、このような第一の表面61と垂直に配置され、かつそれに面している第二の表面62を備えている下部ディスク32とを備え、かつガンギ車3は、それぞれ磁場または静電場閉鎖手段を、上部ディスク31と下部ディスク32との間に備える。この配置は、ガンギ車上の過剰な軸力を回避する。好ましくは、調節性ホイールセット5の両側に発揮された力は、等しい。
【0043】
本発明の特定の特徴によれば、各々の機械的停止部材9はまた、エンドオブトラベル停止配置において、調節性ホイールセット5に含まれる少なくとも第二の補完的停止表面11と協働するように配置される。この第二の補完的停止表面11は、さらに具体的には、第二のピボット軸D2上に中心がある回転の表面で保持され、かつ厳密に360°未満の角度振幅を有する。
【0044】
好ましくは、第二の補完的停止表面11は、その平衡位置と近い共振器へエネルギーを提供するように配置された、アクチュエータ6上で接合表面12が隣接する時、共振器4について衝撃傾斜を形成するように配置される、少なくとも1つの接合表面12によって第一の補完的停止表面10に接続される。図に図示される、好ましい非限定的な実施形態では、接合表面12は、平坦または実質的に平坦で、第二のピボット軸D2に対して並行で、かつ第二のピボット軸D2に対してそれを接続し、かつそれを通過する放射面に対して傾けられる。
【0045】
特定の実施形態では、機械的停止部材9は、同様の方式で、その平衡位置に近い共振器に対してエネルギーを提供するように配置された衝撃傾斜を備える。
【0046】
好ましくは、このような衝撃傾斜は、ガンギ車3に付与された駆動トルクは、第一のトラック7と各々の第一の表面61との間のそれぞれ反発または誘引が、機械的停止部材9と調節性ホイールセット5との間の接触を妨げるのに不十分であるような場合、その平衡位置に近い共振器にのみエネルギーを提供する。
【0047】
特定の実施形態では、第一のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたトラック7は、一連のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びたスタッドから形成される。
【0048】
特定の実施形態では、各々の第一のそれぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びた表面61は、第一のトラック7上の第一の表面61の突起に対応する重ね合わせ表面71の面積が、ガンギ車3および調節性ホイールセット5の相対的な旋回の間、変化可能であるように、第一のピボット軸D1から離れて半径方向で徐々に低下するセクションを備える。
【0049】
好ましくは、ガンギ車3は、調節性ホイールセット5に対して徐々にエネルギーを提供し、かつ調節性ホイールセット5は、全てのこの蓄積されたエネルギーを即時的に、共振器4に付与された衝撃の形態で戻し、これによって、脱進機構1は、一定力の脱進機構を形成する。
【0050】
図で例示される実施形態では、本発明による脱進機構1は、シリンダー脱進機構を構成し、ここで第一の補完的停止表面10は、シリンダー状管状セクターの内面であり、かつここでこの第二の補完的停止表面11は、このシリンダー状管状セクターの外面である。
【0051】
別の実施形態では、本発明による脱進機構1は、ルポート(Lepaute)型のピンホイール脱進機構を構成し、ここでガンギ車3は、各々のアクチュエータ6上にハーフピンを備え、かつここで第一の補完的停止表面10は、第一の製図用コンパスリンク部材の内面であり、かつここで第二の補完的停止表面11は、第二の製図用コンパスリンク部材の外面である。第一リンク部材の内面および上記第二のリンク部材の外面は、その幅がハーフピンの半径よりも大きいスペースで隔てられる。第一の代替では、この第一の製図用コンパスリンク部材および第二の製図用コンパスリンク部材は、お互いに一体にされる。第二の代替では、この第一の製図用コンパスリンク部材および第二の製図用コンパスリンク部材は、共通の軸に対して旋回し、お互いに対してバネなどで接続される。このピンホイール脱進は、静的タイムピースに最も適しており、磁場または静電場の実施から得られる摩擦の排除によって、正確で静かな操作が得られ、これによって、壁時計または置時計にこの脱進を使うことが可能になる。
【0052】
図12〜31を参照して下にさらに具体的に記載される、極めて特異的な実施形態では、各々のアクチュエータ6は、第一の表面61(またはそれぞれ第二の表面62)と機械的停止部材9との間に、それぞれ磁荷を与えられるか、または電荷を帯びている障壁610(それぞれ620)を備え、ここでは、第一の表面61(またはそれぞれ第二の表面62)上に存在する、それぞれ磁場または静電場よりも大きい強度のそれぞれ磁場または電場がある。
【0053】
従って、脱進機は、改善されて、一定力のシステムを構成する。いくつかのそれぞれ磁気的な、または静電気的な極を組み合わせること(これは、調節性ホイールセット5に対してガンギ車3の移行においてお互いを追跡する)によって、それぞれ磁気的な、または静電気的な反発電位(極と調節性ホイールセット5との間)を再荷電することを可能になり、これは、テンプのローラーノッチの通過の際に放出される。次いで、ガンギ車3は、第一のトラック7(またはそれぞれ第二のトラック8)上に第一の表面61(またはそれぞれ第二の表面62)を重ね合わせるのに十分なトルクだが、ホイールを停止する障壁610(それぞれ620)をその上に重ね合わせるには十分ではないトルクを有する。
【0054】
従って、伝達されたエネルギーは、一方では、第一の表面61(またはそれぞれ第二の表面62)と、他方では、第一のトラック7(またはそれぞれ第二のトラック8)との間の、磁気的または静電気的な反発電位に相当し、これは、一定電位であって、さらに一般的には「一定力」と呼ばれる一定の力またはトルクを提供する。
【0055】
脱進機の幾何形状は、従来のシリンダー脱進と実質的に異なってもよいことが注記されるべきである。例えば:
−シリンダーの直径は、より大きくてもよい;
−このシリンダーは、1つを超える多数の歯を備えてもよい;
−衝撃は、必ずしも各々の振動に付与される必要は無く;
−アーバーは、必ずしも中空である必要は無く、プレートは、シリンダーの機能を満たし得る;
−このシステムは、小さい振幅で作動し得る。
【0056】
従って、本発明は従来のシリンダー脱進機の特定の幾何的制約を回避する。
【0057】
追加の利点は、ほとんどの時間、ピボットが、ジュエルに圧縮され、これによって、従来のシリンダー脱進機におけるよりも時計の水平位置と垂直位置との間の速度の相違が小さくなるという事実にある。
【0058】
磁気的または静電気的な反発は、種々の方式で達成され得る。1つの可能性は、図で示されるとおり、テンプのローラーを挟む二段式(two−level)ガンギ車を形成することである。このガンギ車は、鉄、またはそれぞれ強磁性、もしくは静電気導電性の物質からできており、それぞれ、磁気的な、または静電気的なトラックを形成し得る。二段式(two−level)ローラーおよび一段式(single−level)ホイールを有する構造もまた可能である。
【0059】
本発明による脱進機構1は、とりわけ、パレットレバー(pallet lever)などのような停止構成要素を欠いている。
【0060】
本発明はまた、タイムピース運動100であって、少なくとも1つのこのような脱進機構1を含んでおり、かつ第一のピボット軸D1に対して単一方向回転トルクをガンギ車3に与える駆動モーター手段2を備えている、タイムピース運動100に関する。本発明によれば、駆動モーター手段2は、第一のトラック7との各々の第一の表面61の完全な重ね合わせを可能にするのに十分なトルクを送達するように配置されている。
【0061】
アクチュエータ6が障壁を含む有利なバージョンでは、駆動モーター手段2によって送達される最大トルクは、第一のトラック7との各々の障壁610の完全な重ね合わせを可能にするのに不十分であるレベルに限定される。
【0062】
本発明はまた、タイムピース、特に腕時計(少なくとも1つのこのような運動100を含んでいる)に関する。
【0063】
図11図13は、本発明による脱進機構の例示的な実施形態を、磁気的な代替で、例示しており、ここでガンギ車3、ピボット軸D1は、2つのディスク(上部ディスク31および下部ディスク32)を備え、各々は、D1と並行の軸方向に、ここで磁化されたアクチュエータ6、上部ディスク31上に第一の表面61、下部ディスク32上に第二の表面62、上部ディスク31上に第一の障壁610、下部ディスク32上に第二の障壁620、および両方のディスク上に機械的停止部材9を備える。ガンギ車3は、ローラーを有するテンプ4と協働し、このローラーは、図12および13には示されておらず、この図は、ローラーによって保持される調節性ホイールセット5のみを示し、かつここでD1に並行である、ピボット軸D2の、好ましくは切り取りシリンダー状リング50を備える。
リングギヤ50は、D2に平行な軸方向で磁化される。
【0064】
リングギヤ50は、補完的内側停止表面10、および第二の補完的外側停止表面11を、好ましくは傾斜した接合表面12によって開口51の各々の側に接続され、ならびに内側ビーク13によって内側で区切られて、および外側ビーク14によって外側で区切られる。
【0065】
好ましいが限定されていない実施形態では、図に示されるとおり、傾斜した表面12、ならびにビーク13および14の構成は、開口51の両側で対称ではない。好ましくは、2つの傾斜表面12は、平坦であり、かつ傾斜され、各々が、ピボット軸D2から誘導されるある放射状の直線で、同じ方向でかつ実質的に同じ値の角度を形成する。
【0066】
図12は、調節性ホイールセット5およびアクチュエータ6のそれぞれの磁化を示す。ガンギ車3からのトルクは、第一の磁化された部分、この場合、ほぼリング50に達する、アクチュエータ6の、それぞれ第一の表面61または第二の表面62を、磁化されたリング50と、それぞれ重ね合されるかまたは下になるように強制する。干渉の領域で出現する第二の磁化された部分(およびそれぞれ、第一の障壁610、第二の障壁620によって形成される)は、リング50との大きすぎる磁気的反発を示し、これは、ガンギ車3を停止する効果を有する。機械的停止部材9は、ガンギ車3でのショックまたは過剰なトルクの事象でシステムの同期化の消失を妨げる。
【0067】
図13に図示されるように、2つの部分31、32におけるガンギ車3の実施形態によって、磁気的なトラックを閉鎖することが可能になり、ローラーに対する過剰な軸の力が回避される。
【0068】
図14は、同じアセンブリを示し;上部ディスク31は、とりわけリング50との干渉のエリアでは、アクチュエータ6の位置を図示するために、示していない。
【0069】
図15図35は、図14のこの部分的な分解図の上面図であり、図15由来のシステムの運動力学を図示しており、これは、ギヤトレインを介するバレルのような、図示していない、駆動手段2の効果のもとで、時計回り方向Aでガンギ車3が回転するサイクルの終わりを図示する。このテンプはまた、ひげぜんまいの反作用のもとで時計回り方向で回転する。アクチュエータ6は、第二の補完的外側停止表面11の上で、リング50の外側との干渉に達する。ガンギ車3からのトルクは、第二の表面62が磁化されたリング50の下に重ね合されるように強制する。第二の障壁620は、外側リング50と関係するアクチュエータ6による、ガンギ車3を停止する効果を有する、リング50とのかなり大きすぎる磁性反発を示す。
【0070】
図16は、ひげぜんまいの戻りトルクがゼロであるデッドポイントを通過し、第二の表面62が出発して、時間衝撃を、一定力に対して同様の方式で、磁気反発によってテンプに加える、テンプの連続的な移動を時計回り方向で示す。
【0071】
以下の図は、この段階の後で、テンプおよびガンギ車によってすでに作成された回転を図示する矢印を含む。
【0072】
図17は、時間衝撃の終わりを示しており、第二の表面62は、接合表面12に交差し、上記接合表面を区切る内側ビーク13を回避する。その時計回り方向の回転を通じて、そのテンプは、アクチュエータ6の第二の表面62を放し、その第二の障壁620の通過または停止部材9の通過に抵抗しない。次いで、ガンギ車3は、時計回り方向に回転し始めることができる。
【0073】
図18は、そのシステムを、時計回り方向Hで衝撃の影響下で回転するテンプの振動の開始で、およびガンギ車3の回転を示す。アクチュエータ6は、前記リングギヤの内側で、リング50のフットプリントでエリアに入る。
【0074】
図19は、第一の補完的内側停止表面10上で、リング50の内側との干渉に達するアクチュエータ6を示しており、このテンプは、衝撃の影響下で時計回り回転方向Hでやはり回転する。ガンギ車3からのトルクは、第二の表面62が磁化されたリング50の下に重ね合されるように強制する。第二の障壁620は、リング50と大きすぎる磁気的反発を示し、これは、ガンギ車3を停止する効果を有し、内側リング50に関係するアクチュエータ6を有する。
【0075】
このテンプは、図20に示されるように、ガンギ車3が停止したままで、その回転を時計回り方向Hで、最大振幅まで続ける。
【0076】
次いで、このテンプは、図21および図22に示されるように、ガンギ車3が停止したままで、反時計回り方向AHに回転を変化し、ここでは、リング50の内側ビーク13が、ガンギ車3のアクチュエータ6に達する。
【0077】
図23では、このテンプは、反時計回り方向AHでやはり回転し、リングギヤ50は、停止して保持される第二のアクチュエータ6Bの後ろ、第一の補完的内側停止表面10上でブロック位置にあるアクチュエータ6Aの後ろを通過し、そしてこれは、解放されることを待っており、テンプに衝撃が与えられることが可能になる(この時間は反時計回り方向)。したがって、この特定の実施形態では、少なくとも2つのアクチュエータ6(6A、6B)は、リング50の内側容積内のままであり得る。
【0078】
図24は、図17と同様に、時間衝撃の終わりを示しており;第二の表面62は、接合表面12に交差し、内側ビーク13(上記接合表面を区切る)を回避する。その反時計方向回転を通じて、そのテンプは、アクチュエータ6の第二の表面62を解放し、その第二の障壁620の通過、または停止部材9の通過に抵抗しない。次いで、ガンギ車3は、時計回り方向で回転を開始し得る。
【0079】
図25は、リングギヤ50の平衡した第二の補完的外側停止表面11を引き出すアクチュエータ6、および前と同様に、ガンギ車3の停止を示す。
【0080】
図26は、ガンギ車3が停止したままで、テンプの反時計回り回転AHの終わりを図示している。
【0081】
図27は、ガンギ車3が停止したままで、テンプが時計回り方向H2に変化することを示す。図28では、そのテンプは、その時間回転を継続する。図29は、ガンギ車3が停止したままで、時間衝撃の開始を示す。2つの振動の振幅は実質的に対称である。図によって図示される実施例では、その衝撃は、ローラーの正確に同じ角度位置には与えられず、タイムピース脱進デザイナーの把持内の、最適化された脱進機のトレースされたラインは、この状況を改善し得ることに注目すべきである。
【0082】
本発明による機構は、過剰なトルクの場合に取り組むように工夫される。
【0083】
図30は、ノミナルトルクについてシステムをガンギ車で図示する。
【0084】
図30は、ノミナルトルクよりも高いトルクをガンギ車で示し:ノミナルトルクが、ガンギ車を超える場合、アクチュエータ6の機械的停止部材9は、システムが同調性を失うことを妨げる。図32は、同じ場合に、テンプの継続的な旋回を、時計回り方向Hで図示しており、ここでは、リング50の第二の補完的外側停止表面11上で、機械的停止部材9が停止している。図33は、即時的な進行、いわゆる機械的な衝撃を示しており、ここでは機械的停止部材9が、リング50の第二の補完的外側停止表面11と接合表面12との間の限界を記す外側ビーク14上にある。次いで、図34は、従来のシリンダー脱進機と同じ方式で機械的衝撃を付与する、リング50の傾斜した接合表面12の役割を図示する。これは、過剰なトルクの事象でさえ、システムの作動を保証する。図35は、この機械的な衝撃の終わりを示す。
【0085】
本発明は、従来のシリンダー脱進機よりも大きい有効性をもたらす。本発明による脱進機のクロノメトリック特性は満足なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図6A
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
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図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35