特許第6236170号(P6236170)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236170N−置換ピリジニオホスフィン、それらの製造方法およびそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236170
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】N−置換ピリジニオホスフィン、それらの製造方法およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C07F 9/58 20060101AFI20171113BHJP
   C07C 67/333 20060101ALI20171113BHJP
   C07C 69/753 20060101ALI20171113BHJP
   C07C 2/66 20060101ALI20171113BHJP
   C07C 15/50 20060101ALI20171113BHJP
   B01J 31/24 20060101ALI20171113BHJP
   C07F 15/00 20060101ALN20171113BHJP
   C07F 1/12 20060101ALN20171113BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   C07F9/58 ZCSP
   C07C67/333
   C07C69/753 Z
   C07C2/66
   C07C15/50
   B01J31/24 Z
   !C07F15/00 B
   !C07F15/00 F
   !C07F1/12
   !C07B61/00 300
【請求項の数】10
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2016-564619(P2016-564619)
(86)(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公表番号】特表2017-519722(P2017-519722A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】EP2015058618
(87)【国際公開番号】WO2015165781
(87)【国際公開日】20151105
【審査請求日】2016年12月8日
(31)【優先権主張番号】14166125.6
(32)【優先日】2014年4月27日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591091515
【氏名又は名称】シュトゥディエンゲゼルシャフト・コーレ・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Studiengesellschaft Kohle mbH
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】アルカラツォ・マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴィッレ・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ティンナーマン・ヘンドリク
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−503028(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/007709(WO,A1)
【文献】 特開2009−023925(JP,A)
【文献】 特開2008−088153(JP,A)
【文献】 特開2004−269522(JP,A)
【文献】 Organometallics,2004年,23(4),pp. 783-791
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】
[式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはR、R、RおよびRの少なくとも1つが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合している、またはR、R、RおよびR隣り合う2つが、直鎖状もしくは分枝状のC〜C12アルキル環(これらは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよく、かつこれらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよい、またはR、R、RおよびR隣り合う2つが、C〜C14芳香環または複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
は、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく;
およびRは、それぞれ、飽和もしくは不飽和の、直鎖状、分枝状もしくは環状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRおよびRは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよいC〜C20の環、または芳香環もしくは複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
Rは、C〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく、
はアニオンである]
のN−置換ピリジニオホスフィン。
【請求項2】
、RおよびRが、それぞれ水素を表し、Rが、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合しており、
、R、R、RおよびXは前記の意味を有する、請求項1に記載の一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィン。
【請求項3】
が、Cl、Br、I、PF、SbF、BF、ClO、FCCOO、Tf(Tf=トリフルオロメタンスルホニル)、TfO、トシル、[B[3,5−(CF、[B(C、[Al(OC(CF、BPhから選択されるアニオンである、請求項1または2に記載の一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィン。
【請求項4】
一般式I:
【化2】
[式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはR、R、RおよびRの少なくとも1つが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合している、またはR、R、RおよびR隣り合う2つが、直鎖状もしくは分枝状のC〜C12アルキル環(これらは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよく、かつこれらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよい、またはR、R、RおよびR隣り合う2つが、C〜C14芳香環または複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
は、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく;
およびRは、それぞれ、飽和もしくは不飽和の、直鎖状、分枝状もしくは環状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRおよびRは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよいC〜C20の環、または芳香環もしくは複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
Rは、C〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく、
はアニオンである]
を有するN−置換ピリジニオホスフィンの製造方法であって、
一般式II:
【化3】
[式中、R、R、R、R、RおよびXは前記定義の通りであり、Qは脱離基を表す]
を有するピリジニオ化合物の塩を、一般式III:
HPR (III)
[式中、RおよびRは前記定義の通りである]
のホスフィンと反応させる、方法。
【請求項5】
金属錯体の配位子としての、請求項1、2または3に記載の一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィンの使用。
【請求項6】
一般式(IV)
【化4】
[式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはR、R、RおよびRの少なくとも1つが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合している、またはR、R、RおよびR隣り合う2つが、直鎖状もしくは分枝状のC〜C12アルキル環(これらは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよく、かつこれらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよい、またはR、R、RおよびR隣り合う2つが、C〜C14芳香環または複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
は、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく;
およびRは、それぞれ、飽和もしくは不飽和の、直鎖状、分枝状もしくは環状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRおよびRは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよいC〜C20の環、または芳香環もしくは複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
Rは、C〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく、
はアニオンであり;
Mは、金属原子を表し、B、Cu、Fe、Ni、Co、Ag、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選択され;
Lは、カチオン性、中性またはアニオン性であってもよく、かつ1つを超えるLが金属に配位している場合は同一または異なっていてよい配位子を表し;
mは、1、2または3であってよく、
nは、1、2または3であってよく、
oは、1〜5の整数であってよく、
m、nおよびoは、金属錯体を得るために、前記金属原子に応じて選択される]
の金属錯体。
【請求項7】
前記配位子Lが、ハロゲン、CN、CO、アルケン、シクロアルケンおよび/またはアルキン、アレーン、ニトリル、ホスフィン、アミン、ピリジンまたはカルボキシレートから選択されてよいことを特徴とする、請求項6に記載の金属錯体。
【請求項8】
g、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtから選択されるMを含む、請求項6または7に記載の金属錯体。
【請求項9】
有機合成、環化異性化における触媒としての、請求項6〜8のいずれか一つに記載の金属錯体の使用。
【請求項10】
有機合成、エンイン37からシクロブテン38へのPt触媒による環化異性化における触媒としての請求項9に記載の金属錯体の使用。
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配位子として有用な新規カチオン性化合物の合成および用途に関する。具体的には、N−アルキル/アリール置換ピリジニオホスフィンを製造し、遷移金属のための配位子(リガンド)として使用する。このようにして得られた金属錯体およびそれらの化学合成における触媒としての使用も記載する。本発明のN−アルキル/アリールピリジニオホスフィンが、短く、拡張可能で、高度にモジュール化された経路によって合成できることも言及する価値がある。
【背景技術】
【0002】
効果的な金属触媒プロセスの設計のためには、補助配位子の選択が重要であり、実際に、金属自体の選択と同じくらい重要である場合がある。これは、得られた触媒の反応性に対して、そして重要性は低いが触媒プロセスの生成物選択性に対して、配位子が発揮する驚くべき制御に起因している。そして、特定の各転換のために最も適切な配位子の選択には、とりわけ、律速段階の特質と妥当な(望ましくない)反応経路とを考慮しなければならない。
【0003】
異なる性質を示す配位子が必要であるというこのような状況において、ホスファンは、リン原子に結合した置換基の修飾によって、それらの供与体能力および立体的要件の両方を調節できるので、重要な役割を果たす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ごく最近、本発明者らは、中心のP原子に3個以下のカチオン性ビス(ジアルキルアミノ)シクロプロペニウム置換基が直接結合して構成される、非常に弱い電子供与体ホスフィンの合成のための代替戦略を開発した。この結果として、正電荷は、これらの配位子が示す低いσ供与体能力および優れたπ受容体能力に重要性をもたらした。しかしながら、ジ(イソプロピルアミノ)シクロプロペニウム置換基の特異的な使用は、これらのカチオン性基が負わせる合成的および幾何学的制限に起因して、生成するホスフィンの立体的および電子的性質の独立した微調整をいくらか拡大するために、損なわれている。さらに、最良の触媒性能は、多くの場合、それらの高度に荷電した特質のために典型的な有機溶媒に対して低溶解度を示すジまたはトリカチオン性触媒の使用によって得られる。これらの理由により、立体電子的な修飾の影響をより受け入れやすい正に荷電した代替の置換基の使用は、極度のπ受容体配位子のいまだに限定されたレパートリーと金属触媒中でのそれらの用途をさらに拡大するために適切であると思われる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、本発明者らは、N−(アルキル/アリールピリジニウム)置換ホスフィンが、強いπ受容体配位子の非常に有用なファミリーとなる可能性があることを見出した。本発明者らの考察によれば、これは、3つの有利な要因:(a)ピリジニウム部分の低位のπ軌道が、リンの孤立電子対と効果的に相互作用して、生成するホスフィンを非常に弱い供与性配位子にするはずであること、(b)リンの他の2つのR基の選択に加えて、ピリジニウム環上への置換基の導入が、生成するホスフィンの立体電子的な微調整のための更なる多様性を提供すること(図1)、および最後に(c)異なる第二級ホスフィンとの1−アルキル/アリール−2−クロロピリジニウム塩の反応が、標的の配位子への、短く、効果的で、かつ高度にモジュール化された合成経路を提供することが同時に重なった状態に起因する。
【0006】
従って、本発明は、一般式(I)
【0007】
【化1】
[式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはR、R、RおよびRの少なくとも1つが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合している、またはR、R、RおよびRの少なくとも2つが、直鎖状もしくは分枝状のC〜C12アルキル環(これらは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよく、かつこれらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよい、またはR、R、RおよびRの少なくとも2つが、C〜C14芳香環または複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
は、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく;
およびRは、それぞれ、飽和もしくは不飽和の、直鎖状、分枝状もしくは環状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRおよびRは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよいC〜C20の環、または芳香環もしくは複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
Rは、C〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく、Xはアニオンである]
を有するN−アルキル/アリール−置換ピリジニオホスフィンを対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ピリジニウム置換ホスフィンの構造的特徴を示す図である。
図2】化合物12の結晶構造を示す図である。水素原子およびBFアニオンは明確にするために省略した。楕円体は50%の確率に設定している。
図3】プロパルギルアリールエーテル35からクロメン36へのPt触媒によるヒドロアリール化に対する配位子の効果を示す図である。
図4】エンイン37からシクロブテン38へのPt触媒による環化異性化に対する配位子の効果を示す図である。
図5】アレーン40を用いるアルキン39のAU触媒によるヒドロアリール化に対する配位子の効果を示す図である。
図6】スキーム1:ピリジニウム置換ホスフィンの合成を示す図である。
図7】スキーム2:Rh錯体の合成と23の結晶構造を示す図である。水素原子およびBFアニオンは明確にするために省略した。楕円体は50%の確率に設定している。
図8】スキーム3:PtおよびAu錯体の合成と28および31の結晶構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
、R、R、R、R、RおよびRならびにその任意選択の置換基は、ピリジニオ化合物またはその金属錯体の反応性に特に悪影響を及ぼさないようなものである。従って、例えば、R、R、R、R、R、RおよびRのいずれかの−OHのような任意の反応性の置換基は、好ましくは、ピリジニオ環原子に結合した炭素原子上にあるべきではない。−O−、−NHまたはNR−のような置換基は、R、R、R、R、R、R、RおよびRのC〜C20アルキル基中に存在してよく、従って、エーテル結合またはアミノ結合を形成してもよい。
【0010】
具体的な実施形態において、本発明は、R、RおよびRが、それぞれ水素を表し、Rが、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合しており、R、R、R、RおよびXは前記の意味を有する、一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィンに関する。
【0011】
本発明の一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィンにおいて、Xは、触媒反応に不利な影響を及ぼさない任意のアニオンであってよく、Cl、Br、I、PF、SbF、BF、ClO、FCCOO、Tf(Tf=トリフルオロメタンスルホニル)、TfO、トシル、[B[3,5−(CF、[B(C、[Al(OC(CFであってよく、好ましくは、BF、PF、SbF、[B(Cから選択されるアニオンであってよい。
【0012】
本発明は、一般式I:
【0013】
【化2】
[式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはR、R、RおよびRの少なくとも1つが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合している、またはR、R、RおよびRの少なくとも2つが、直鎖状もしくは分枝状のC〜C12アルキル環(これらは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよく、かつこれらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよい、またはR、R、RおよびRの少なくとも2つが、C〜C14芳香環または複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
は、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく;
およびRは、それぞれ、飽和もしくは不飽和の、直鎖状、分枝状もしくは環状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRおよびRは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよいC〜C20の環、または芳香環もしくは複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
Rは、C〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく、
はアニオンである]
を有するN−置換ピリジニオホスフィンの製造方法であって、
一般式II:
【0014】
【化3】
[式中、R、R、R、R、RおよびXは前記定義の通りであり、Qは脱離基を表す]
を有するピリジニオ化合物の塩を、一般式III:
HPR (III)
[式中、RおよびRは前記定義の通りである]
のホスフィンと反応させる、方法も対象とする。
【0015】
脱離基Qは、幅広い範囲から選択でき、ハロゲン、スルホネート、トシルまたはトリフレート基であってよい。
【0016】
反応条件は重要ではなく、基本的には、一般式IIのピリジニウム化合物(1.0当量)と所望の第二級ホスフィン(2.5〜3.0当量)を含有する有機溶媒(例えば、THF)の懸濁液中で、1日〜7日間、穏やかな加熱〜還流で加熱することを含む。立体的に厳しい基質に対しては、反応混合物のマイクロ波加熱(150℃)を使用してよい。
【0017】
このように製造された新規な一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィンは、金属錯体のための配位子として供することができる。それらは一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィンと所望の金属前駆体との反応によって容易に製造できる。説明例として、B、Cu、Fe、Ni、Co、Ag、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtを含有する錯体を製造した。
【0018】
このように、本発明は、一般式(IV)
【0019】
【化4】
[式中、
、R、RおよびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、ハロゲン、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基、あるいはC〜C14アリール基またはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはR、R、RおよびRの少なくとも1つが、−O−または−NR−を介してピリジニオ環と結合している、またはR、R、RおよびRの少なくとも2つが、直鎖状もしくは分枝状のC〜C12アルキル環(これらは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよく、かつこれらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよい、またはR、R、RおよびRの少なくとも2つが、C〜C14芳香環または複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
は、直鎖状、環状もしくは分枝状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく;
およびRは、それぞれ、飽和もしくは不飽和の、直鎖状、分枝状もしくは環状のC〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を表す、あるいはRおよびRは、少なくとも1つの不飽和結合を含んでいてよいC〜C20の環、または芳香環もしくは複素芳香環(これらは、ハロゲン、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよい)を形成してよく;
Rは、C〜C20アルキル基、またはC〜C14アリール基もしくはヘテロアリール基を表し、これらは、ハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NR、アリールまたはヘテロアリールから選択される適切な置換基を有していてよく、
はアニオンであり;
Mは、金属原子を表し、好ましくは、B、Cu、Fe、Ni、Co、Ag、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrおよびPtからなる群から選択され;
Lは、カチオン性、アニオン性または中性であってよく、かつ2つ以上のLが金属に配位している場合は全て同一または異なっていてよい配位子を表し;
mは、1、2または3であってよく、
nは、1、2または3であってよく、
oは、1〜5の整数であってよく、
m、nおよびoは、安定で、後述する様々な化学反応に触媒として供することができる金属錯体を得るために、金属原子に応じて選択される]
のような金属錯体にも関する。
【0020】
B、Cu、Ag、Fe、Ni、Co、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrまたはPtから選択される金属に応じて、安定な無荷電の金属錯体を得るために、配位子Lの数、本発明の一般式(I)のN−置換ピリジニオホスフィンの数、およびアニオンXの数は選択される。
【0021】
金属錯体における配位子Lは、ハロゲン、CN、CO、アルケン、シクロアルケンおよび/またはアルキン、アレーン、ニトリル、ホスフィン、アミン、ピリジンまたはカルボキシレートの中から選択できる。
【0022】
金属錯体は、好ましくは、B、Cu、Ag、Fe、Ni、Co、Au、Ru、Rh、Pd、Os、IrまたはPtから選択されるMを含む。
【0023】
本発明の金属錯体は、有機合成、特に、環化異性化反応およびヒドロアリール化反応だけでなく、不飽和化合物(例えば、アルキン、アレンおよびアルケン)のヒドロキシル化反応およびヒドロアミノ化反応、ならびに直接アリール化反応における触媒として有利に使用することができる。
【0024】
触媒プロセスの反応条件は、非常に柔軟で重要ではなく、通常、有機溶媒またはその混合物(例えば、ジクロロエタン)中、中程度の温度(20℃〜80℃)で、触媒および所望の基質を撹拌することを含む。
【0025】
本発明の化合物において、1つまたは複数のヘテロ原子は、上述のようなハロゲン、=O、−OH、−OR、−NH、−NHR、−NRの意味を有していてよいヘテロ置換基として存在してよい。従って、置換基群は、−CF基のように、1〜3個のハロゲン原子を含有してもよい。
【0026】
さらに、C〜C20アルキルは、直鎖状または分枝状であってよく、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の炭素原子を有していてよい。アルキルは、C〜C12アルキル、または低級アルキル(例えば、C〜Cアルキル)、具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチルまたはtert−ブチル、同様にペンチル、1−、2−または3−メチルプロピル、1,1−、1,2−または2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−または4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−または3,3−ジメチルブチル、1−または2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−または1,2,2−トリメチルプロピルであってよい。置換されたアルキル基は、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルおよび1,1,1−トリフルオロエチルである。
【0027】
シクロアルキルは、好ましくはC〜C10アルキルであってよく、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであってよい。
【0028】
アルケニルは、C〜C20アルケニルであってよい。アルキニルはC〜C20アルキニルであってよい。
【0029】
ハロゲンは、F、Cl、BrまたはIである。
【0030】
アルコキシは、好ましくは、C〜C10アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソ−プロポキシ、tert−ブトキシ等)である。
【0031】
N、OおよびSの中から選択される1つまたは複数のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキルは、好ましくは、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、テトラヒドロ−2−または−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−または−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、1−、2−または3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−または−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−または−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−または−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−ピリジル、1−、2−、3−または4−ピペリジニル、2−、3−または4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−または−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−または−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−または−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−または−5−ピリミジニル、1−、2−または3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−または8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニルである。
【0032】
任意選択で置換されたとは、炭化水素上の各水素が、無置換、または一置換、二置換、三置換、四置換、五置換もしくはさらに多く置換されたことを意味する。
【0033】
アリールは、フェニル、ナフチル、ビフェニル、アントラセニル、および他の多縮合芳香族系であってよい。
【0034】
アリール−(C〜C)アルキルは、ベンジルまたは置換ベンジルであってよい。
【0035】
N、OおよびSの中から選択される1つまたは複数のヘテロ原子を有していてよいヘテロアリールは、好ましくは、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2−、4−または5−イミダゾリル、1−、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソオキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニルであり、また好ましくは、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−または−5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、1−、2−、4−または5−ベンゾイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾオキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾイソオキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンゾ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニル、また好ましくは、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−または−5−イル、あるいは2,1,3−ベンゾオキサジアゾール−5−イルである。
【0036】
下記の実験項で説明するように、本発明者らは、その設計コンセプトを実行に移すために、図および反応スキームに示す2つの連続する工程によってピリジニウム置換ホスフィン12〜19を良い〜優れた収率で製造した。最初に、トリメチル−またはトリエチルオキソニウムテトラフルオロボレートを用いる容易に利用可能な2−クロロピリジン1〜4のN−アルキル化は、対応するピリジニウム塩6、8〜11を優れた収率で与えた。1−アリール置換2−クロロピリジニウム塩(例えば、7)は、ピリドン5とヨードアレーンとのウルマンカップリング、次いで塩化オキサリルによる処理からなる代替手順によって得ることもできた。続いて、各種の第二級ホスフィンを用いる、2−クロロピリジニウム塩6〜11の前例のない縮合は、所望のピリジニウム置換ホスフィン12〜19を中程度〜良い収率で効率的に与えた(スキーム1参照)。
【0037】
この時点で、本発明者らは、トランス−[RhCl(CO)L]錯体20〜25におけるCOの伸縮振動数の分析による新規カチオン性ホスフィンの供与体の能力の評価を試みた(表1およびスキーム2)。しかしながら、これらのデータは誤解を招くおそれがあり、確実に慎重に取得すべきである。例えば、16における4つの−CF基の形式的な導入は、得られる配位子19をさらに強くて素晴らしい供与体にするようにみえる(表1、項目3および6)。これは、Rh錯体20〜25において、COの伸縮振動数は、Rh上の配位子の電子的性質よって決定されるだけでなく、COと他の配位子の間のスルースペース相互作用、または立体的な要因に起因する周辺の金属の小さな幾何学的な変化によっても影響を受けるであろうことを明確に示している。この理由のために、サイクリックボルタンメトリーによって決定されたホスフィン12〜19の酸化電位E(ox)を、それらの電子的性質をランク付けするための信頼性がより高いパラメータとして選択した。これらのデータは、配位子17および18(両方とも2つのシクロヘキシル置換基で修飾されている)が、12、15、16および19がホスファイトよりもさらに弱い供与体であるが、(MeO)Pと同様の供与体能力を示すという予測された傾向および示唆に従っていた(表1)。
【0038】
【表1】
【0039】
【化5】
【0040】
[a]cm−1の値、[b]Vで表す酸化ピーク電位、CHCl中のフェロセン/フェロセニウム(E1/2=0.24V)、BuNPF(0.1M)で較正、[c]CHCN中で測定
【0041】
シクロプロペニウム置換ホスフィン26および27について測定されたE(ox)値も比較目的のために示す。[2a,2c]これらの値は、ピリジニウム置換基がジ(アルキルアミノ)シクロプロペニウム環よりもより有効な電子求引基であるという見解を支持し(項目1および7を比較)、適切に置換されれば、ピリジニオホスフィンはジカチオン性配位子の供与体能力の特性に達することができることも示す(項目3、6および8)。
【0042】
この分析の観点から、本発明者らは、触媒反応中でのピリジニオホスフィンの電位を試験し、塩12〜19を配位子として使用した一連のPt(II)およびAu(I)錯体を製造した(スキーム3)。このようにして、対応する配位子の溶液にKPtClまたは(MeS)AuClを添加することによって、空気中で安定な固体として化合物28〜34を得た。さらに、28および31の結晶を得て、それらの構造を決定し、予想された結合性を確認した。
【0043】
錯体28および29の触媒性能を標準的なPt触媒と比較するために、プロパルギルアリールエーテル35からクロメン36へのヒドロアリール化を最初のモデル反応として選択した。その理由は、この転換に対して提案されている機構が、カチオン特性が増強された白金触媒が全プロセスを促進するはずであると示唆しているからである。実際に、(CPを補助配位子として使用した場合、または高度に酸化されたPt種(例えば、PtCl)を触媒として使用した場合、中程度の促進が観察された。図3に、それ以外は同一の条件(2モル%のPt、80℃)下で、プレ触媒28および29についての時間に対して変換をプロットして示す。他の触媒混合物を明らかに上回るそれらの非常に優れた性能は、Pt中心のπ酸性度を高めるピリジニオホスフィン配位子の優れた能力を見事に実証する。さらに、触媒28および29によって示される反応性と、それらの対応する遊離配位子の測定された酸化電位E(ox)との間の定性的な相関関係を確立することができた。これは、P系配位子の電子的性質を特徴づけるための適切な技術としてサイクリックボルタンメトリーの使用をさらに支持する。
【0044】
重要なことは、他の合成的に有用で機構的により複雑なPt(II)が促進する転換は、配位子12〜19の強いπ受容体性質にも影響を受けていた。具体的には、エンイン37からシクロブテン38への環化異性化は、CO雰囲気下(1気圧)で行った場合に加速されることが知られているので、このプロセスを追加のモデルとして選択した。従って、この反応の検討は、ピリジニオホスフィンと、典型的なπ受容体配位子との間の直接的な比較を可能にする。図4に、それ以外は同一の条件(2モル%のPt、室温)下で、一連の異なる触媒系についてまとめた速度論的プロファイルを示す。十分に理解されるように、COは、試験した他のいずれのπ受容体配位子((PhO)Pまたは(CP)よりも反応性の点で優れた性能を示した。しかしながら、触媒28および29によって発揮された活性には匹敵せず、シクロブテン38をわずか数分後に優れた収率で得ることができた。
【0045】
最後に、メシチレン(40)を用いるフェニルアセチレン(39)のAU触媒によるヒドロアリール化は、Pt化学を超えるピリジニオホスフィンの有用性の証明の基礎となった。配位子12〜19の向上したπ受容体特性は、錯体30〜34中のAu原子により高い求電子性を与え、その結果として、それらは、40の分子間攻撃に対して、アルキン39をより効率的に活性化するはずである。この理解に従って、図4に示した結果は、錯体33および34の触媒活性が、古典的なπ受容体配位子に基づくAu触媒のものより大きく上回っていることを示す。
【0046】
本発明を添付の図およびスキームによってさらに説明する。これらの図およびスキームは以下の通りである。
【0047】
図1は、ピリジニウム置換ホスフィンの構造的特徴を示す図である。図2は、化合物12の結晶構造を示す図である。水素原子およびBFアニオンは明確にするために省略した。楕円体は50%の確率に設定している。図3は、プロパルギルアリールエーテル35からクロメン36へのPt触媒によるヒドロアリール化に対する配位子の効果を示す図である。図4は、エンイン37からシクロブテン38へのPt触媒による環化異性化に対する配位子の効果を示す図である。図5は、アレーン40を用いるアルキン39のAU触媒によるヒドロアリール化に対する配位子の効果を示す図である。図6は、スキーム1:ピリジニウム置換ホスフィンの合成を示す図である。図7は、スキーム2:Rh錯体の合成と23の結晶構造を示す図である。水素原子およびBFアニオンは明確にするために省略した。楕円体は50%の確率に設定している。図8は、スキーム3:PtおよびAu錯体の合成と28および31の結晶構造を示す図である。
【実施例】
【0048】
より詳しくは、図およびスキームは以下の通りである。
【0049】
図1は、本発明のピリジニウム置換ホスフィンの構造的特徴と、得られる配位子の供与体特性に対するそれらの影響とを説明する。
【0050】
図2は、固体状態中での12の構造を表す。P1−C1の距離(1.8551(7)Å)は、2個のフェニル環と比較した場合、残るN−メチルピリジニウムの立体障害の増加におそらく起因して、他の2つのC−P結合(P1−C7、1.8260(7)Å;P1−C13、1.8244(7)Å)よりもわずかに長い。加えて、リンにおけるピラミッド化度(61.3%)は、PPhで観察されるもの(56.7%)よりほんのわずかに高い。これらのパラメータは、リン原子における非結合電子対が維持されていることを示唆している。
【0051】
図3は、プロパルギルアリールエーテル35からクロメン36へのPt触媒によるヒドロアリール化に対する配位子の効果を示す。
試薬および条件:
a)33(0.05M)、Ptプレ触媒2モル%、AgSbF2モル%、(CHCl、80℃。変換はガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0052】
図4は、エンイン37からシクロブテン38へのPt触媒による環化異性化に対する配位子の効果を示す。
試薬および条件:
a)37(0.05M)、Ptプレ触媒2モル%、AgSbF2モル%、(CHCl、室温。変換はガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0053】
図5は、アレーン40を用いるアルキン39のAU触媒によるヒドロアリール化に対する配位子の効果を示す。
試薬および条件:
a)39(0.05M)、40(4当量;0.2M)、Auプレ触媒5モル%、AgX 5モル%、(CHCl、60℃。変換はガスクロマトグラフィーによって決定した。
【0054】
スキーム1は、ピリジニウム置換ホスフィンの合成を説明する。
試薬および条件(収率):
a)MeOBFまたはEtOBF、CHCl、室温;6(91%);8(99%);9(99%)10(98%);11(89%)
b)5(1.2当量)、ヨードベンゼン(1当量)、CuBr(10モル%)、CsCO(2.1当量)、DMSO、60℃、(95%)
c)塩化オキサリル(3当量)、Cl(CHCl、次いでNaBF(4当量)、(71%)
d)ジアリール/アルキルホスフィン(2当量)、THF、65℃;12(70%)、1〜3日;13(80%);14(71%);15(43%);16(60%);17(77%);18(89%);19(30%)
【0055】
スキーム2は、Rh錯体の合成と23の結晶構造とを説明する。水素原子およびBFアニオンは明確にするために省略し、楕円体は50%の確率に設定している。
試薬および条件(収率):
a)[RhCl(CO)(0.25当量)、CHCl、室温;20(99%);21(77%);22(57%);23(78%);24(74%)
【0056】
スキーム3は、PtおよびAu錯体の合成と、28および31の結晶構造とを説明する。水素原子、溶媒分子およびBFアニオンは明確にするために省略し、楕円体は50%の確率に設定している。
試薬および条件(収率):
a)KPtCl(1.0当量)、CHCN、室温;28(80%);29(40%)
b)(MeS)AuCl(1.0当量)、CHCl、室温;30(97%);31(69%);32(98%);33(98%);34(38%)
【0057】
以下の実験項によって本発明をさらに説明する。
【0058】
一般的手順
全ての反応はアルゴン下でフレームドライしたガラス器具中で行った。全ての溶媒は、示した乾燥剤上で蒸留することによって精製し、アルゴン下で移した。CHCl(CaH)、ヘキサン、トルエン(Na/K)。フラッシュクロマトグラフィー:Merck シリカゲル60(230〜400メッシュ)。IR:Nicolet FT−7199分光計、波数cm−1。MS(EI):Finnigan MAT820(70eV)、ESI−MS:Finnigan MAT95、正確な質量決定:Bruker APEX III FT−MS(7Tマグネット)。NMR:スペクトルを、示した溶媒中、Bruker DPX300またはAV400分光計で記録した;Hおよび13Cケミカルシフト(δ)をTMS基準のppmで表し、カップリング定数(J)をHzで表す。溶媒のシグナルを参照として使用し、ケミカルシフトをTMSスケールに変換した。市販品として入手可能な全ての化合物(Acros、Fluka、Lancaster、Alfa Aesar、Aldrich)は、特に明記しない限りそのまま使用した。化合物7、35および37は、文献に記載の手順に従って製造した。
【0059】
2−クロロピリジンのアルキル化のための一般的手順
対応する2−クロロピリジン(1当量)のDCM(0.05M)溶液を、固体のMeOBFまたはEtOBF(1当量)に添加し、懸濁液を一晩撹拌した。次いで溶媒をろ過し、残った白色固体をジクロロメタンで2回洗浄し、真空中で乾燥した。
【0060】
【化6】
化合物6:一般的手順に従って、2−クロロピリジン(2.0g、17.6mmol)およびMeOBF(2.6g、17.6mmol)から製造した。DCM(2×20ml)で洗浄後、6を白色固体(3.47g、91%)として得た。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=8.75(d,J=6.2Hz,1H)、8.47(td,J=8.2,1.5Hz,1H)、8.12(d,J=8.3Hz,1H)、7.94(t,J=6.8Hz,1H)、4.30(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=148.98、148.96、148.38、131.00、127.40、48.62;IR(非希釈)v=712、735、778、805、1024、1123、1177、1274、1286、1314、1446、1499、1574、1623、3059、3094、3115、3138cm−1 HRMS C1214BClの計算値:343.056684;実測値:343.056646。
【0061】
【化7】
化合物8:一般的手順に従って、2−クロロ−5−フルオロピリジン(1.0g、7.6mmol)およびMeOBF(1.12g、7.6mmol)から製造した。DCM(2×20ml)で洗浄後、8を白色固体(1.75g、99%)として得た。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=8.88(t,J=3.1Hz,1H)、8.36(ddd,J=9.4,6.7,2.9Hz,1H)、8.16(dd,J=9.3,4.9Hz,1H)、4.31(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=159.92(d,JC−F=255.1Hz)、145.62、138.70(d,JC−F=40.0Hz)、136.23(d,JC−F=19.8Hz)、132.21(d,JC−F=7.9Hz)、49.46;19F NMR(282MHz,CDCN)δ=−120.22、−151.77、−151.82;IR(非希釈)v=655、698、743、767、854、901、1022、1126、1165、1282、1392、1439、1509、1593、1641、3084、3104cm−1;HRMS C1212BClの計算値:379.036928;実測値:379.037035。
【0062】
【化8】
化合物9:一般的手順に従って、2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン(400mg、2.2mmol)およびMeOBF(325mg、2.2mmol)から製造した。DCM(2×2ml)で洗浄後、9を白色固体(620mg、99%)として得た。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=9.23(s,1H)、8.75(dd,J=8.7,2.0Hz,1H)、8.34(d,J=8.7Hz,1H)、4.39(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=153.30,147.41(m)、144.96(q,JC−F=3.0Hz)、132.13、129.37(q,JC−F=37.0Hz)、122.32(q,JC−F=272.7Hz)、49.45;19F NMR(282MHz,CDCN)δ=−63.45、−151.99、−152.04;IR(非希釈)v=663、690、722、804、861、888、916、944、998、1025、1125、1192、1268、1331、1435、1479、1590、1639、2296、2342、2383、3055cm−1;HRMS CNClFの計算値:196.013540;実測値:196.013563。
【0063】
【化9】
化合物11:一般的手順に従って、DCM(20ml)中の2−クロロ−5−メトキシピリジン(965mg、6.72mmol)およびMeOBF(994mg、6.72mmol)から製造した。DCM(2×20ml)で洗浄後、11を白色固体(1.47g、89%)として得た。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=8.47(d,J=2.7Hz,1H)、8.10〜7.93(m,2H)、4.27(s,3H)、4.00(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=158.33、140.00、136.02、134.07、130.94、58.76、48.98;19F NMR(282MHz,CDCN)δ=−151.67、−151.72;IR(非希釈)v=697、739、847、875、936、1013、1037、1099、1159、1177、1197、1271、1308、1391、1425、1445、1469、1513、1590、1622、3101、3156cm−1;HRMS C1418BClの計算値:403.077864;実測値:403.078070。
【0064】
【化10】
化合物10:一般的手順に従って、DCM(20ml)中の2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)ピリジン(1g、5.5mmol)およびEtOBF(1.05g、5.5mmol)から製造し、ろ過およびDCM(2×10ml)による洗浄によって精製して、10を白色固体(1.6g、5.4mmol、99%)として得た。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=9.24(d,J=0.7Hz,1H)、8.74(dd,J=8.7,2.1Hz,1H)、8.34(d,J=8.7Hz,1H)、4.82(q,J=7.3Hz,2H)、1.62(t,J=7.3Hz,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)=152.27、146.25、144.89(q,JC−F=3.0Hz)、132.79、129.92(q,JC−F=36.9Hz)、122.21(q,JC−F=273.7Hz);19F NMR(282MHz,CDCN)δ=−63.46、−151.88、−151.94;IR(非希釈)v=727、740、767、809、858、939、1023、1056、1095、1110、1146、1183、1193、1233、1299、1328、1395、1413、1453、1473、1509、1586、1639、3089cm−1;HRMS CNClFの計算値:210.029185;実測値:210.028857。
【0065】
ピリジニオホスフィンの製造のための一般的手順
対応する1−アルキル/アリール−2−クロロピリジニウムテトラフルオロボレート(1当量)のTHF(2ml)溶液に、所望の第二級ホスフィン(2.5〜3.0当量)を添加し、得られた懸濁液を1〜7日間加熱した。室温に冷却後、溶媒を留去し、粗反応混合物をn−ペンタン(2×2ml)で洗浄し、DCMに溶解し、飽和NaBF水溶液で洗浄した。有機相をNaSOで乾燥し、溶媒を留去した。必要に応じて、得られた固体をTHF(1〜2ml)で追加洗浄することにより、さらに精製することができた。
【0066】
【化11】
化合物12:6(400mg、1.8mmol)およびジフェニルホスフィン(1.1ml、5.6mmol)のTHF懸濁液を65℃で3日間加熱することにより製造した。白色固体(477mg、70%)。
H NMR(300MHz,CDCl)δ=9.04(d,J=5.7Hz,1H)、8.25(td,J=7.9,0.9Hz,1H)、8.03〜7.95(m,1H)、7.57〜7.43(m,6H)、7.39〜7.27(m,5H)、4.30(d,J=1.1Hz,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ=161.02(d,JC−P=33.4Hz)、149.54、144.04、134.70(d,JC−P=21.7Hz)、132.63、131.60、130.20(d,JC−P=8.4Hz)、129.03(d,J=6.7Hz)、127.96、47.64(d,JC−P=21.0Hz);31P NMR(121MHz,CDCl)δ=−8.61;IR(非希釈)v=696、724、748、798、954、1000、1038、1051、1161、1181、1265、1310、1436、1492、1571、1610、3055、3103、3134cm−1;HRMS C1817NPの計算値:278.109315;実測値:278.109239。
【0067】
【化12】
化合物13:6(500mg、2.3mmol)およびジシクロヘキシルホスフィン(0.75ml、5.8mmol)のTHF懸濁液を65℃で3日間加熱することにより製造した。白色固体(699mg、80%)。
H NMR(400MHz,CDCl)δ=9.11(d,J=5.2Hz,1H)、8.48(t,J=7.8Hz,1H)、8.05(dd,J=14.3,7.5Hz,2H)、4.59(s,3H)、2.11(t,J=11.8Hz,2H)、1.91(d,J=12.0Hz,2H)、1.81(d,J=12.8Hz,2H)、1.69(t,J=11.9Hz,4H)、1.51(d,J=12.5Hz,2H)、1.41〜1.01(m,10H);13C NMR(101MHz,CDCl)δ=160.33(d,JC−P=42.5Hz)、149.73、143.58、133.44(d,JC−P=3.2Hz)、128.24、48.82(d,JC−P=26.1Hz)、34.36(d,JC−P=15.1Hz)、29.95(d,JC−P=15.9Hz)、29.44(d,JC−P=8.6Hz)、26.78(d,JC−P=12.5Hz)、26.65(d,JC−P=8.8Hz)、25.91;31P NMR(162MHz,CDCl)δ=−3.52;IR(非希釈)v=728、779、851、915、1053、1179、1262、1448、1497、1571、1610、2851、2925cm−1;HRMS C1829NPの計算値:290.203217;実測値:290.203415。
【0068】
【化13】
化合物14:7(650mg、2.3mmol)およびジフェニルホスフィン(1.2ml、6.9mmol)のTHF懸濁液を130℃で12時間、マイクロ波オーブン中で加熱することにより製造した。白色固体(715mg、71%)。
H NMR(300MHz,CDCl)δ=8.76(d,J=5.1Hz,1H)、8.46(td,J=8.0Hz,1.3,1H)、8.06(t,J=6.9Hz,1H)、7.66〜7.50(m,4H)、7.50〜7.37(m,6H)、7.32〜7.21(m,6H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=149.53、146.74、135.83(d,JC−P=22.5Hz)、134.40、132.53、132.11、131.40(d,JC−P=8.2Hz)、130.58(d,JC−P=7.6Hz)、128.25、127.40(d,JC−P=3.8Hz);19F NMR(282MHz,CDCl)δ=−151.82、−151.87;31P NMR(121MHz,CDCN)δ=−7.74;IR(非希釈)v=692、699、734、748、757、786、841、863、901、931、979、997、1011、1035、1047、1079、1163、1178、1254、1288、1315、1438、1455、1475、1492、1563、1589、1607、3070、3117cm−1;HRMS C2319NPの計算値:340.124626;実測値:360.124961。
【0069】
【化14】
化合物15:8(500mg、2.14mmol)およびジフェニルホスフィン(0.92ml、5.35mmol)のTHF懸濁液を65℃で3日間加熱することにより製造した。白色固体(351mg、43%)。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=8.94〜8.82(m,1H)、8.18〜8.07(m,1H)、7.58(m,6H)、7.42(m,5H)、4.23(d,J=1.4Hz,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=160.91(d,JC−F=255.7Hz)、139.81(d,JC−P=38.2Hz)、135.66(d,JC−P=0.9Hz)、135.62(d,JC−P=21.9Hz)、132.84(d,JC−P=17.4Hz)、132.43(d,JC−P=0.6Hz)、130.92(d,JC−P=8.3Hz)、130.28(d,JC−P=6.7Hz)、49.12(d,JC−P=21.5Hz);31P NMR(121MHz,CDCl)δ=−9.34;IR(非希釈)v=699、715、738、753、760、858、895、931、958、998、1024、1143、1165、1181、1273、1314、1384、1436、1479、1500、1583、1623cm−1;HRMS C1816NFPの計算値:296.099965;実測値:296.099889。
【0070】
【化15】
化合物16:9(500mg、1.8mmol)およびジフェニルホスフィン(0.62ml、4.4mmol)のTHF懸濁液を65℃で1日間加熱することにより製造した。白色固体(451mg、60%)。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=9.18(s,1H)、8.51(dd,J=8.4,1.3Hz,1H)、7.72〜7.50(m,7H)、7.50〜7.38(m,4H)、4.25(d,J=1.0Hz,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=167.44(d,JC−P=35.6Hz)、147.74、141.70(q,JC−F=3.0Hz)、135.92(d,JC−P=22.0Hz)、134.82(d,JC−P=1.2Hz)、132.72、131.05(d,JC−P=8.6Hz)、129.85(q,JC−F=36.1)、129.43(d,JC−P=6.0Hz)、122.51(q,JC−F=272.6Hz)、49.24(d,JC−P=20.7);19F NMR(282MHz,CDCN)δ=−63.67、−151.79、−151.84;31P NMR(121MHz,CDCN)δ=−6.00;IR(非希釈)v=693、702、727、743、752、862、892、913、996、1048、1090、1115、1148、1174、1267、1342、1435、1504、1579、1639、3103cm−1;HRMS C1916NFPの計算値:346.09727;実測値:346.097027。
【0071】
【化16】
化合物17:8(500mg、2.14mmol)およびジシクロヘキシルホスフィン(1.08ml、5.35mmol)のTHF懸濁液を65℃で12時間加熱することにより製造した。白色固体(648mg、77%)。
H NMR(300MHz,CDCl)δ=9.06(d,J=2.3Hz,1H)、8.34〜8.21(m,1H)、8.21〜8.08(m,1H)、4.64(s,3H)、2.12(t,J=11.5Hz,2H)、1.98〜1.61(m,8H)、1.52(d,J=11.7Hz,2H)、1.44〜1.02(m,10H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=160.88(d,JC−F=255.9Hz)、158.18(dd,JC−P=43.7,JC−F=4.2Hz)、140.06(d,JC−P=36.1Hz)、136.29(dd,JC−P=7.4Hz,JC−F=3.4Hz)、131.93(d,JC−P=17.2Hz)、50.13(d,JC−P=26.4Hz)、34.72(d,JC−P=14.3Hz)、30.48(d,JC−P=16.2Hz)、30.01(d,JC−P=8.7Hz)、27.42(d,JC−P=10.9Hz)、27.28(d,JC−P=10.9Hz)、26.61;19F NMR(282MHz,CDCl)δ=−118.61、−151.62、−151.67;31P NMR(121MHz,CDCN)δ=−4.49;IR(非希釈)v=704、738、765、817、851、889、920、958、1004、1025、1040、1057、1112、1170、1182、1202、1269、1279、1433、1450、1504、1582、1626、2852、2925、3077cm−1;HRMS C1817NPの計算値:308.193442;実測値:308.193793。
【0072】
【化17】
化合物18:11(500mg、2.05mmol)およびジシクロヘキシルホスフィン(1.25ml、6.16mmol)のTHF懸濁液を65℃で12時間加熱することにより製造した。白色固体(744mg、89%)。
H NMR(300MHz,CDCl)δ=8.48(d,J=2.1Hz,1H)、8.04(d,J=9.0Hz,1H)、7.94(dd,J=9.0,2.6Hz,1H)、4.43(s,3H)、4.01(s,3H)、2.21〜2.08(m,2H)、1.85〜0.96(m,20H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=159.15、138.13、135.35、135.31、58.35、49.85(d,JC−P=27.5Hz)、34.82(d,JC−P=13.5Hz)、30.76(d,JC−P=16.9Hz)、29.97(d,JC−P=8.1Hz)、27.48(d,J=13.2Hz)、27.34(d,JC−P=8.8Hz)、26.73(d,JC−P=1.1Hz);19F NMR(282MHz,CDCl)δ=−151.83、−151.88;31P NMR(121MHz,CDCN)δ=−7.27;IR(非希釈)v=704、741、816、842、884、916、1000、1015、1035、1046、1163、1187、1196、1286、1317、1434、1447、1507、1574、1615、2845、2920cm−1;HRMS C1931NOPの計算値:320.213778;実測値:320.213335。
【0073】
【化18】
化合物19:KH(8.75mg、0.22mmol)のTHF(2ml)懸濁液に、ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホスフィン(100mg、0.22mmol)を−78℃で添加し、得られた真紅の懸濁液を1時間撹拌した。次いで、懸濁液を、予め冷却した10(64.9mg、0.22mmol)のTHF(2ml)懸濁液(−78℃)に同温で移し、混合物を室温まで昇温し、3日間撹拌した。溶媒の留去およびDCM(2×2ml)での洗浄後、化合物19をオフホワイト固体(48mg、30%)として得た。
H NMR(300MHz,CDCl)δ=9.32(s,1H)、8.62(d,J=7.7Hz,1H)、8.25(s,2H)、8.02(d,J=7.2Hz,4H)、7.92(d,J=7.9Hz,1H)、4.88(m,2H)、1.56(t,J=7.3Hz,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=161.99(d,JC−P=33.4Hz)、147.95〜146.40(m)、143.99〜142.39(m)、137.44、136.89〜136.01(m)、133.59(qd,JC−F=33.9Hz,JC−P=7.7Hz)、133.19(d,JC−P=13.5Hz)、132.18(d,JC−P=36.9Hz)、124.10(q,JC−F=272.4Hz)、121.46(q,JC−F=273.0Hz)、58.60(d,JC−P=23.4Hz)、16.29(d,JC−P=3.5Hz);19F NMR(282MHz,CDCl)δ=−63.52、−63.68、−151.80、−151.85;31P NMR(121MHz,CDCN)δ=−10.52;IR(非希釈)v=682、700、741、767、846、862、900、913、1051、1095、1120、1279、1331、1356、1405、1459、1502、1588、1634、2001、3090cm−1;HRMS C241415NPの計算値:632.062949;実測値:632.061889。
【0074】
ピリジニオホスフィンロジウム錯体の製造のための一般的手順
[Rh(CO)Cl](0.25当量)を対応するピリジニオホスフィン配位子(1当量)のDCM(2ml)溶液に添加した。得られた懸濁液を室温で1時間撹拌し、溶媒の留去後、固体をn−ペンタン(2×2ml)で洗浄し、真空中で乾燥した。これらの化合物はアセトニトリル/エーテル混合物から再結晶できる。
【0075】
【化19】
化合物20:一般的手順に従って、12(100mg、0.274mmol)および[Rh(CO)Cl(26.6mg、0.063mmol)から製造した。黄色固体(121mg、99%)。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=8.84(d,J=5.9Hz,2H)、8.38(t,J=7.7Hz,2H)、8.11〜8.02(m,2H)、7.84(s,8H)、7.79〜7.72(m,4H)、7.72〜7.58(m,10H)、4.50(s,6H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=186.07(dt,JC−Rh=31.9Hz,JC−P=15.6Hz)、153.59(t,JC−P=18.1Hz)、151.14、145.60、136.20、134.99、134.20、131.14、130.07、126.58(t,JC−P=24.3Hz)、50.82;31P NMR(121MHz,CDCN)δ=37.82(d,JP−Rh=130.7Hz);IR(非希釈)v=692、707、752、773、799、900、931、998、1056、1165、1182、1274、1314、1411、1438、1481、1499、1576、1610、1996、3093、3138cm−1;HRMS C3734BClFOPRhの計算値:809.092884;実測値:809.093025。
【0076】
【化20】
化合物21:一般的手順に従って、15(75mg、0.2mmol)および[Rh(CO)Cl](19.3mg、0.05mmol)から製造した。黄色固体(121mg、69%)。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=8.98(s,2H)、8.27〜8.16(m,2H)、7.84(s,8H)、7.76(t,J=7.4Hz,4H)、7.68(t,J=7.6Hz,10H)、4.54(s,6H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=161.59(d,JC−F=259.3Hz)、150.65、141.69(d,JC−F=38.2Hz)、136.72(d,JC−P=8.5Hz)、136.17、134.35、132.75(d,JC−F=17.3Hz)、131.22、126.48、51.51(d,JC−P=1.6Hz);31P NMR(121MHz,CDCN)δ=39.02(d,JRh−P=130.7Hz);IR(非希釈)v=694、738、754、850、962、998、1054、1169、1282、1437、1482、1505、1590、1624、1994、3087cm−1;HRMS C3732BClFOPRhの計算値:845.074040;実測値:845.073864。
【0077】
【化21】
化合物22:一般的手順に従って、16(100mg、0.231mmol)および[Rh(CO)Cl](22.5mg、0.058mmol)から製造した。黄色固体(68mg、57%)。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=9.28(s,2H)、8.65(d,J=8.2Hz,2H)、7.95〜7.63(m,22H)、4.56(s,6H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=167.45(d,JC−P=36.8Hz)、147.80、141.73、136.46(d,JC−P=22.1Hz)、134.84、132.76、131.08(d,JC−P=8.5Hz)、129.81(d,JC−P=36.7Hz)、129.44(d,JC−P=5.4Hz)、122.54(q,JC−F=272.8Hz)、47.26(d,JC−P=20.6Hz);31P NMR(121MHz,CDCN)δ=40.44(d,JRh−P=131.0Hz);IR(非希釈)v=691、705、752、858、890、932、998、1052、1090、1118、1159、1177、1243、1275、1334、1392、1438、1482、1509、1586、1634、1741、2004、3092cm−1;HRMS C3932BClF10OPRhの計算値:945.067689;実測値:945.067581。
【0078】
【化22】
化合物23:一般的手順に従って、14(100mg、0.253mmol)および[Rh(CO)Cl](24.6mg、0.063mmol)から製造した。黄色固体(94mg、78%)。
H NMR(300MHz,CDCl)δ=8.62(d,J=5.6Hz,2H)、8.49(t,J=7.9Hz,2H)、8.17〜8.07(m,4H)、7.78(dd,J=12.7,6.3Hz,8H)、7.54(ddd,J=22.9,14.9,7.8Hz,16H)、7.33(t,J=7.5Hz,2H)、6.91(t,J=8.0Hz,4H);13C NMR(101MHz,CDCN)δ=154.96、151.72、146.24、142.28、136.52(t,JC−P=7.2Hz)、136.12〜135.26(m)、133.73、132.75、130.74(t,JC−P=5.5Hz)、130.48、129.97、128.15、127.91、127.71;31P NMR(121MHz,CDCl)δ=42.09(d,JRh−P=134.4Hz);IR(非希釈)v=692、749、925、998、1034、1048、1182、1254、1286、1318、1437、1457、1479、1587、1603、1981、2350、3060cm−1;HRMS C4738BClFOPRhの計算値:933.124354;実測値:933.123835。
【0079】
【化23】
化合物24:一般的手順に従って、18(75mg、0.184mmol)および[Rh(CO)Cl](17.9mg、0.046mmol)から製造した。黄色固体(67mg、74%)。
H NMR(300MHz,DMSO)δ=9.11(s,2H)、8.38(d,J=9.1Hz,2H)、8.20(dd,J=9.0,2.3Hz,2H)、4.90(s,6H)、4.08(s,6H)、2.17(s,4H)、2.02〜0.94(m,40H);13C NMR(101MHz,DMSO)δ=185.13(dt,JC−Rh=33.4Hz,JC−P=16.4Hz)、158.14、140.35、138.33(t,JC−P=12.9Hz)、134.89、127.44、57.59、51.11(t,JC−P=4.2Hz)、36.04、33.28、29.39、28.39、27.61、26.59、25.77、25.49;31P NMR(121MHz,DMSO)δ=40.26(d,JRh−P=123.0Hz);IR(非希釈)v=706、739、765、815、854、888、918、940、1018、1050、1098、1172、1180、1207、1269、1317、1415、1450、1475、1515、1614、1974、2850、2928cm−1;HRMS C3962BClFRhの計算値:893.301860;実測値:893.302947。
【0080】
ホスフィン白金錯体の製造のための一般的手順
微粉砕したKPtCl(1当量)をピリジニオホスフィン塩(1当量)のMeCN(2ml)溶液に添加し、得られた懸濁液を室温で一晩撹拌した。溶媒の留去後、固体をn−ペンタン(2×2ml)で洗浄し、DMSO/DCMから結晶化し、真空中で乾燥して、所望の白金錯体を得た。
【0081】
【化24】
化合物28:一般的手順に従って、12(100mg、0.274mmol)およびKPtCl(114mg、0.274mmol)から製造した。白色固体(127mg、80%)。
H NMR(300MHz,DMSO)δ=9.18(d,J=5.7Hz,1H)、8.53(t,J=7.9Hz,1H)、8.20(t,J=6.9Hz,1H)、8.02(dd,J=12.3Hz,J=7.2Hz,4H)、7.79〜7.57(m,6H)、7.39(t,J=7.0Hz,1H)、4.35(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=150.13、144.54(d,JC−P=5.7Hz)、135.32(d,JC−P=11.6Hz)、132.81(d,JC−P=7.5Hz)、132.63(d,JC−P=2.5Hz)、129.28(d,JC−P=11.6Hz)、128.78、124.56、123.71、48.32(d,JC−P=7.3Hz);31P NMR(121MHz,DMSO)δ=8.49(JC−Pt=1954Hz);IR(非希釈)v=673、822、1003、1023、1051、1659、2126、2253、2342、2383cm−1;HRMS、DMSO付加体 C2023ClNOPPtSの計算値:621.024487;実測値:621.024734。
【0082】
【化25】
化合物29:一般的手順に従って、16(100mg、0.231mmol)およびKPtCl(96mg、0.231mmol)から製造した。白色固体(59mg、40%)。
H NMR(300MHz,DMSO)δ=9.85(s,1H)、8.98(d,J=8.2Hz,1H)、8.05(dd,J=12.4Hz,J=7.4Hz,4H)、7.81〜7.60(m,6H)、7.55(dd,J=7.5Hz,J=7.1Hz,1H)、4.42(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=155.07(d,JC−P=46.9Hz)、148.54、141.59、135.47(d,JC−P=11.7Hz)、133.48(d,JC−P=7.7Hz)、132.99、129.46(d,JC−P=11.6Hz)、128.77(d,JC−P=36.1Hz)、123.54(d,JC−P=64.0Hz)、121.24(q,JC−P=273.6Hz)、49.19(d,JC−P=6.8Hz);31P NMR(121MHz,DMSO)δ=10.63(JC−Pt=1953Hz);IR(非希釈)v=692、704、725、755、872、890、1036、1114、1148、1179、1192、1270、1332、1388、1438、1481、1508、1631、3001、3044cm−1;HRMS、DMSO付加体 C2122ClNOPPtSの計算値:689.013152;実測値:689.014029。
【0083】
ホスフィン金錯体の製造のための一般的手順
AuCl・SMe(1当量)を所望のピリジニオホスフィン塩(1当量)のDCM(2ml)溶液に添加し、得られた懸濁液を室温で1時間撹拌した。溶媒の留去後、得られた固体をn−ペンタン(2×2ml)で洗浄し、真空中で乾燥して、所望の金錯体を得た。
【0084】
【化26】
化合物30:一般的手順に従って、12(100mg、0.274mmol)およびAuCl・SMe(80.7mg、0.274mmol)から製造した。白色固体(159mg、99%)。
H NMR(300MHz,CDCl)δ=9.06(d,J=0.5Hz,1H)、8.44(t,J=7.7Hz,1H)、8.20(t,J=6.4Hz,1H)、7.86〜7.53(m,10H)、7.38(t,J=7.5Hz,1H)、4.45(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCl)δ=151.71、147.12(d,JC−P=52.2Hz)、145.39(d,J=5.6Hz)、134.83(d,JC−P=15.6Hz)、134.05(d,JC−P=2.0Hz)、133.77(d,JC−P=9.3Hz)、130.48(d,JC−P=12.8Hz)、122.55、121.90、48.64(d,JC−P=11.4Hz);31P NMR(121MHz,CDCl)δ=30.88;IR(非希釈)v=692、729、913、998、1055、1097、1162、1185、1278、1438、1482、1500、1609、3061、3138cm−1;HRMS C1817NAuClPの計算値:510.044722;実測値:510.044585。
【0085】
【化27】
化合物31:一般的手順に従って、14(50mg、0.12mmol)およびAuCl・SMe(34.5mg、0.12mmol)から製造した。白色固体(53mg、68%)。
H NMR(400MHz,CDCN)δ=8.94(s,1H)、8.63(t,J=8.0Hz,1H)、8.29(t,J=6.7Hz,1H)、7.83〜7.59(m,12H)、7.43(t,J=8.0Hz,2H)、7.23(d,J=7.9Hz,2H);13C NMR(101MHz,CDCN)δ=152.22、148.28(d,JC−P=5.2Hz)、141.55(d,JC−P=4.5Hz)、136.26(d,JC−P=15.9Hz)、136.10(d,JC−P=8.2Hz)、134.89(d,JC−P=2.5Hz)、133.32、131.31(d,JC−P=3.2Hz)、131.17、131.01、127.87、125.84、125.22;31P NMR(162MHz,CDCN)δ=31.36;IR(非希釈)v=668、689、712、735、753、765、786、853、926、980、997、1030、1044、1099、1144、1162、1189、1256、1283、1433、1442、1458、1483、1587、1603、3060cm−1;HRMS C2319NAuClPの計算値:572.060365;実測値:572.060083。
【0086】
【化28】
化合物32:一般的手順に従って、15(100mg、0.26mmol)およびAuCl・SMe(76.6mg、0.26mmol)から製造した。白色固体(166mg、97%)。
H NMR(400MHz,CDCN)δ=9.02(dd,J=6.0Hz,2.7,1H)、8.27(ddd,J=9.1,6.6,2.6Hz,1H)、7.88〜7.63(m,10H)、7.58〜7.48(m,1H)、4.40(s,3H);13C NMR(101MHz,CDCN)δ=162.24(d,JC−F=260.5Hz)、142.99(d,JC−P=37.3Hz)、137.51(dd,JC−F=10.0Hz,JC−P=8.4Hz)、136.23(d,JC−P=15.9Hz)、135.36(d,JC−P=2.6Hz)、133.81(d,JC−P=6.2Hz)、133.58(d,JC−P=6.3Hz)、131.65(d,JC−P=12.8Hz)、123.98(d,JC−P=62.6Hz)、50.70(d,JC−P=11.9Hz);31P NMR(162MHz,CDCN)δ=28.68;IR(非希釈)v=690、717、737、751、852、964、996、1034、1048、1170、1279、1437、1478、1505、1594、1615、3055、3079cm−1;HRMS C1816NAuClFPの計算値:528.035295;実測値:528.035127。
【0087】
【化29】
化合物33:一般的手順に従って、16(100mg、0.23mmol)およびAuCl・SMe(68mg、0.23mmol)から製造した。白色固体(151mg、99%)。
H NMR(300MHz,CDCN)δ=9.38(s,1H)、8.80〜8.71(m,1H)、7.90〜7.67(m,11H)、4.47(s,3H);13C NMR(75MHz,CDCN)δ=153.75(d,JC−P=46.8Hz)、150.38(d,JC−P=2.5Hz)、143.92(td,JC−P=6.1,JC−F=3.0Hz)、136.42(d,JC−P=15.7Hz)、136.41、135.62(d,JC−P=2.7Hz)、133.42〜131.99(dq,JC−P=37.1Hz,JC−F=1.6Hz)、131.74(d,JC−P=13.0Hz)、123.16(d,JC−P=64.7Hz)、122.07(q,JC−F=273.3Hz)、50.82(d,JC−P=11.3Hz);19F NMR(282MHz,CDCl)δ=−63.71、−151.49、−151.54;31P NMR(121MHz,CDCN)δ=31.54;IR(非希釈)v=691、705、715、752、873、892、996、1053、1118、1162、1200、1280、1334、1393、1440、1481、1510、1590、1634、3092cm−1;HRMS C2018NPの計算値:578.032104;実測値:578.032257。
【0088】
【化30】
化合物34:一般的手順に従って、19(73mg、0.1mmol)およびAuCl・SMe(30mg、0.1mmol)から製造した。白色固体(37mg、38%)。
H NMR(400MHz,CDCN)δ=9.44(s,1H)、8.78(d,J=8.4Hz,1H)、8.45(s,2H)、8.30(d,J=13.7Hz,4H)、7.92(t,J=7.7Hz,1H)、4.83(qd,J=7.0,0.9Hz,2H)、1.64(t,J=7.2Hz,3H);13C NMR(101MHz,CDCN)δ=149.17,144.40(dd,JC−P=5.9Hz,JC−F=3.0Hz)、138.49(d,JC−P=9.6Hz)、137.13(d,JC−P=3.1Hz)、136.96(d,JC−P=3.1Hz)、134.10(qd,JC−F=34.5Hz,JC−P=13.2Hz)、134.00(d,JC−P=37.3Hz)、129.97(d,JC−P=2.4Hz)、126.61(d,JC−P=60.9Hz)、123.66(q,JC−F=273.1Hz)、122.00(q,JC−F=273.6Hz)、58.97(d,JC−P=12.7Hz)、16.49;19F NMR(282MHz,CDCl)δ=−63.49、−63.59、−151.86、−151.90;31P NMR(162MHz,CDCN)δ=32.38;IR(非希釈)v=681、699、718、731、742、764、847、866、899、927、997、1032、1058、1097、1123、1186、1280、1337、1358、1405、1447、1505、1630、3093cm−1;HRMS C2414NAuClF15Pの計算値:863.997295;実測値:863.997181。
【0089】
上記に示したように、本発明者らは、短く高度にモジュール化された合成による、実験室的に安定なカチオン性ホスフィン(即ち、ピリジニオホスフィン)の新規ファミリーの製造を本明細書に概説した。本発明者らは、それらの電子的特性が、補助配位子として使用した場合に、弱いσ供与体および非常に強いπ受容体特性を証明していることを見出した。これらの特性は、誘導されたそのPt(II)およびAu(I)錯体に実質的に増強されたπ酸性度を与え、その結果、該化合物は求核攻撃に対してアルキンを活性化するための改善された能力を示す。この驚くべき性能は、幾つかの機構的に多様なPt(II)およびAu(I)が触媒する転換に従って実証された。従って、配位子として使用した場合、本発明の化合物は、優れたπ受容体特性を示し、結果として、それらが配位する金属のルイス酸性度を向上させる顕著な能力を示す。均一な触媒反応におけるこれらの性質の有利な効果は、3つの機構的に多様なPt(II)およびAu(I)が触媒する反応に従って実証された。
図1
図2
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図7
図8