(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236174
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】原位置浄化島構造体
(51)【国際特許分類】
E02B 1/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
E02B1/00 Z
【請求項の数】8
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-568990(P2016-568990)
(86)(22)【出願日】2014年12月5日
(65)【公表番号】特表2017-506713(P2017-506713A)
(43)【公表日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】CN2014093086
(87)【国際公開番号】WO2015139485
(87)【国際公開日】20150924
【審査請求日】2016年8月15日
(31)【優先権主張番号】201410107220.4
(32)【優先日】2014年3月21日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516245287
【氏名又は名称】ナンジン ユニバーシティー エコロジカル リサーチ インスティチュート オブ チャンシュ
【氏名又は名称原語表記】NANJING UNIVERSITY ECOLOGICAL RESEARCH INSTITUTE OF CHANGSHU
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン シュチン
(72)【発明者】
【氏名】ヂョウ リンイェン
(72)【発明者】
【氏名】レン リージュン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン ユーユェン
【審査官】
岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平06−328095(JP,A)
【文献】
特開2003−020697(JP,A)
【文献】
特開平03−068496(JP,A)
【文献】
米国特許第04452548(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 1/00,3/00
C02F 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の上流に位置する上流浄化島本体(1)と河川の下流に位置する下流浄化島本体(
2)とを備え、
前記上流浄化島本体(1)は、第1基礎埋戻し層(11)、第1下層(12)、第1疎
水層(13)、第1透水層(14)及び第1上層(15)を含み、
前記第1基礎埋戻し層(11)は、河床に設けられ、上部が河川水位の水平面と同じ高
さであり、前記第1下層(12)は、前記第1基礎埋戻し層(11)の上部に位置し、前
記第1疎水層(13)は、前記第1下層(12)の上部に位置し、前記第1透水層(14
)は、前記第1疎水層(13)の上部に被覆され、前記第1上層(15)は、前記第1透
水層(14)の上部に位置し、
前記第1基礎埋戻し層(11)の周囲の表面には、第1ジオテキスタイル袋(111)
が配置され、前記第1下層(12)の中央位置には、下層埋戻し遷移ゾーン(121)が
形成され、前記第1疎水層(13)の中央位置には、疎水層埋戻し遷移ゾーン(131)
が形成され、前記第1透水層(14)の中央位置には、透水層埋戻し遷移ゾーン(141
)が形成され、前記第1基礎埋戻し層(11)の上部は、前記下層埋戻し遷移ゾーン(1
21)、前記疎水層埋戻し遷移ゾーン(131)及び前記透水層埋戻し遷移ゾーン(14
1)を順次に経由し、前記第1透水層(14)と前記第1上層(15)との間のエリアま
で延在して、第1基礎埋戻し層ピーク(112)を形成し、前記第1基礎埋戻し層ピーク
(112)の先端部には、ピーク保護層(1121)が設けられ、前記第1上層(15)
の表面には、第1斜面保護層(151)が敷設され、
前記下流浄化島本体(2)は、第2基礎埋戻し層(21)、第2下層(22)、第2疎
水層(23)、第2透水層(24)及び第2上層(25)を含み、
前記第2基礎埋戻し層(21)は、河床に設けられ、上部が河川水位の水平面と同じ高
さであり、前記第2下層(22)は、前記第2基礎埋戻し層(21)の上部に位置し、前
記第2疎水層(23)は、前記第2下層(22)の上部に位置し、前記第2透水層(24
)は、前記第2疎水層(23)の上部に被覆され、前記第2上層(25)は、前記第2透
水層(24)の上部に位置し、
前記第2基礎埋戻し層(21)の周囲の表面には、第2ジオテキスタイル袋(211)
が配置され、前記第2透水層(24)と前記第2上層(25)との間の中央に位置するエ
リアには、第2基礎埋戻し層ピーク(212)が形成され、前記第2上層(25)の表面
には、第2斜面保護層(251)が敷設されていることを特徴とする原位置浄化島構造体
。
【請求項2】
前記第1基礎埋戻し層(11)、前記第1基礎埋戻し層ピーク(112)、前記第2基
礎埋戻し層(21)及び前記第2基礎埋戻し層ピーク(212)は、それぞれ河川の浚渫
泥土であることを特徴とする請求項1に記載の原位置浄化島構造体。
【請求項3】
前記第1下層(12)及び前記第2下層(22)は、直径が2〜4mmの砂利から形成
され、それぞれの厚さが25cmであることを特徴とする請求項1に記載の原位置浄化島
構造体。
【請求項4】
前記第1疎水層(13)及び第2疎水層(23)は、両方とも粒径が0.8〜1.2m
mのシンダから構成され、それぞれの厚さが20cmであることを特徴とする請求項1に
記載の原位置浄化島構造体。
【請求項5】
前記第1透水層(14)及び前記第2透水層(24)は、両方とも透水性ジオテキスタ
イルであることを特徴とする請求項1に記載の原位置浄化島構造体。
【請求項6】
前記透水性ジオテキスタイルは、重量が500〜1000g/m2の不織布であること
を特徴とする請求項5に記載の原位置浄化島構造体。
【請求項7】
前記第1上層(15)及び前記第2上層(25)は、両方とも土壌から形成され、それ
ぞれの厚さが30cmであり、前記ピーク保護層(1121)は、砂利であり、厚さが5
0cmであることを特徴とする請求項1に記載の原位置浄化島構造体。
【請求項8】
前記第2斜面保護層(251)の構造は、前記第1斜面保護層(151)の構造と同じ
であり、前記第1斜面保護層(151)は、中央に土充填キャビティ(15111)を有
する六角形の斜面保護レンガ(1511)から構築されていることを特徴とする請求項1
に記載の原位置浄化島構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚水処理の技術分野に関し、特に原位置浄化島構造体及びその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
前述の原位置浄化島構造体とは、河川や湖沼の槽体を担体として構築された、河川や湖沼の汚染水を自然浄化する施設を示す。
【0003】
川や湖は、自然資源及び環境の重要な担体として、洪水防止・排水、農地の灌漑、給水、運航及び養殖等の経済機能、生物の生息地を提供することにより生物の多様性の具現化、気候調整、環境の改善、水資源の保全及び景観づくり等のエコ機能を有すると共に、都市の盛衰、経済の発展及び繁栄に対して重要な現実的及び将来的意義を有する。
【0004】
水環境の保護は、もはや人々のコンセンサスとなっている。しかしながら、様々な主観的条件及び客観的条件の制約を受けるため、大量の工業汚水及び都市生活汚水は、適切な処理を受けることができず、河や湖に直接排出されるため、水塊に対する汚染だけでなく、川や湖の槽体土壌にもダメージを与える。特に、水塊が窒素・リンのような有機汚染物質及び各種の重金属等の汚染を受けると、水質が人為的に悪化される状況がより顕著になる。従って、水処理能力及び水処理効率を向上させ、汚水を資源化することは、我が国の水資源不足の解決に対して積極的な現実的及び将来的意味を有する。
【0005】
水塊自然浄化メカニズムを用いて河川の水質を改善することは、地上の場所を取らず、地上の建築物の干渉も受けず、投資が軽減され、エネルギーを消費せず、メンテナンスがほとんど不要であり、水系環境に対する修復効果が良好で且つ有効期間が長いなどのメリットがある。従って、水塊自然浄化は、業界において認められ、一定の傾向になりつつある。しかしながら、川水は、流量が大きく、形態が複雑で変化しやすく、さらに、水塊自然浄化は、様々な要因によって影響される複雑な過程を有する。そのため、水塊自然浄化を通常の汚水処理方式で行うと、建設、稼働及びメンテナンスのコストが高価になるだけでなく、景観性も悪化してしまう。
【0006】
河川の水塊自然浄化に関する技術が、中国の特許文献に公開されている。典型的なのは、特許文献1の"水圧荷重による土壌浸透システム"である。特許文献1のシステムは、表面被覆層、配水槽、配水槽内に配置された配水管、第1人工フィラー層、第2人工フィラー層、底部支持層及び出水管から構成されている。当該システムのポイントは、以下の通りである。第1人工フィラー層と第2人工フィラー層との間に粘土層が設けられている。第1人工フィラー層及び第2人工フィラー層は、両方とも細粒のバーミキュライト層及び粗粒のバーミキュライト層から形成され、細粒のバーミキュライト層は、粗粒のバーミキュライト層の上方に位置する。特許文献1は、明細書段落0010に記載の技術的効果を奏するが、以下の欠陥を有する。
その1、管路(配水管及び出水管)を敷設する必要があるため、施工が煩雑であり、また、管路が塞がると、メンテナンスが困難ひいては不可能である。
その2、第1フィラー層及び第2フィラー層は、それぞれ細粒バーミキュライト及び粗粒バーミキュライトから形成され、底部支持層内に出水管を配置する必要があるため、出水管が詰まるリスクが極めて大きい。
その3、構造上の制限を受け、河川の水塊の拡散汚染(面源汚染)物質を塞き止めることが困難ひいては不可能である。また、特許文献2の"生態系斜面保護型による汚水の土地浸透システム及びその浸透方法"によれば、堤防斜面を利用してグリッドプール、嫌気性加水分解タンク及び多段斜面保護浸透槽を上方から下方までの順に配置することにより、段丘状(段々畑状ともいう)構造が形成される。当該発明は、構築コストが高く、構築困難度が大きく、稼働のエネルギー消費が莫大で、景観が悪化し、河川の土手斜面に対する敏感性を有するという欠陥を有する。
【0007】
上記の既存技術を改善すべく、本出願人は、有益な探求を続け、秘密保護対策を講じる上で実験を繰り返した結果、以下の技術的解決手段を完成させた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願公告第203247173号明細書
【特許文献2】中国特許出願公告第103395930号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、河川水系の汚染物質の塞き止めに貢献することにより汚染水塊の浄化効果を顕著に改善し、持続的なメンテナンスフリー効果の反映に貢献し、また、エネルギーを消費しないことにより使用コストを削減し、応用場所に対する敏感性の回避に貢献することにより河や湖に対する適応性を向上させ、処理水量を増加させることにより処理効率を向上させることができる原位置浄化島構造体を提供することである。
【0010】
本発明のもう1つの課題は、原位置浄化島構造体の構築方法を提供することである。当該方法によれば、施工が簡単であり、これによって、構築コストが軽減され、河床の沈泥を利用することで資源の節約が可能であり、原位置浄化島構造体による技術的効果の全面的な反映が確保される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主要な課題は、以下のような手段によって解決される。本発明に係る原位置浄化島構造体は、河川の上流に位置する上流浄化島本体と河川の下流に位置する下流浄化島本体とを備えている。前記上流浄化島本体は、第1基礎埋戻し層、第1下層、第1疎水層、第1透水層及び第1上層を含む。前記第1基礎埋戻し層は、河床に設けられ、上部が河川水位の水平面と同じ高さである。前記第1下層は、前記第1基礎埋戻し層の上部に位置する。前記第1疎水層は、前記第1下層の上部に位置する。前記第1透水層は、前記第1疎水層の上部に被覆されている。前記第1上層は、前記第1透水層の上部に位置する。前記第1基礎埋戻し層の周囲の表面には、第1ジオテキスタイル袋が配置されている。前記第1下層の中央位置には、下層埋戻し遷移ゾーンが形成されている。前記第1疎水層の中央位置には、疎水層埋戻し遷移ゾーンが形成されている。前記第1透水層の中央位置には、透水層埋戻し遷移ゾーンが形成されている。前記第1基礎埋戻し層の上部は、前記下層埋戻し遷移ゾーン、前記疎水層埋戻し遷移ゾーン及び前記透水層埋戻し遷移ゾーンを順次に経由し、前記第1透水層と前記第1上層との間のエリアまで延在して、第1基礎埋戻し層ピークを形成する。前記第1基礎埋戻し層ピークの先端部には、ピーク保護層が設けられている。前記第1上層の表面には、第1斜面保護層が敷設されている。前記下流浄化島本体は、第2基礎埋戻し層、第2下層、第2疎水層、第2透水層及び第2上層を含む。前記第2基礎埋戻し層は、河床に設けられ、上部が河川水位の水平面と同じ高さである。前記第2下層は、前記第2基礎埋戻し層の上部に位置する。前記第2疎水層は、前記第2下層の上部に位置する。前記第2透水層は、前記第2疎水層の上部に被覆されている。前記第2上層は、前記第2透水層の上部に位置する。前記第2基礎埋戻し層の周囲の表面には、第2ジオテキスタイル袋が配置されている。前記第2透水層と前記第2上層との間の中央に位置するエリアには、第2基礎埋戻し層ピークが形成されている。前記第2上層の表面には、第2斜面保護層が敷設されている。
【0012】
本発明に係る1つの具体的な実施形態において、前記第1基礎埋戻し層、前記第1基礎埋戻し層ピーク、前記第2基礎埋戻し層及び前記第2基礎埋戻し層ピークのそれぞれは、河川の浚渫泥土である。
【0013】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記第1下層及び前記第2下層は、直径が2〜4mmの砂利から形成され、それぞれの厚さが25cmである。
【0014】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記第1疎水層及び前記第2疎水層は、粒径が0.8〜1.2mmのシンダ(Cinder)から形成され、それぞれの厚さが20cmである。
【0015】
本発明のもう1つの具体的な実施形態において、前記第1透水層及び前記第2透水層は、両方とも透水性ジオテキスタイルである。
【0016】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記透水性ジオテキスタイルは、重量が500〜1000g/m
2の不織布である。
【0017】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記第1上層及び前記第2上層は、両方とも厚さが30cmの土壌から形成され、前記ピーク保護層は、厚さが50cmの砂利である。
【0018】
本発明に係るもう1つの具体的な実施形態において、前記第2斜面保護層の構造は、前記第1斜面保護層の構造と同じである。前記第1斜面保護層は、中央に土充填キャビティを有する六角形の斜面保護レンガから構築されている。
【0019】
本発明のもう1つの課題は、以下のような手段によって解決される。本発明に係る原位置浄化島構造体の構築方法は、以下のステップを含む。
【0020】
ステップA:上流浄化島本体を構築する。河川の浚渫・還水の前に、河川の浚渫によって生成された沈泥を用いて第1基礎埋戻し層を構築する。前記第1基礎埋戻し層の上部は、河川水位の水平面と同じ高さとする。次に、前記第1基礎埋戻し層の上部に第1下層を設け、前記第1下層の上部に第1疎水層を設け、前記第1疎水層の上部に第1透水層を被覆し、前記第1透水層の上部に第1上層を設け、前記第1基礎埋戻し層の周囲の表面に第1ジオテキスタイル袋を配置する。前記第1下層の中央位置に下層埋戻し遷移ゾーンを形成し、前記第1疎水層の中央位置に疎水層埋戻し遷移ゾーンを形成し、前記第1透水層の中央位置に透水層埋戻し遷移ゾーンを形成する。前記第1基礎埋戻し層の上部は、前記下層埋戻し遷移ゾーン、前記疎水層埋戻し遷移ゾーン及び前記透水層埋戻し遷移ゾーンを順次に経由し、前記第1透水層と前記第1上層との間のエリアまで延在して、第1基礎埋戻し層ピークを形成する。前記第1基礎埋戻し層ピークの先端部にピーク保護層を設け、前記第1上層の表面に第1斜面保護層を敷設する。
【0021】
ステップB:下流浄化島本体を構築する。河川の浚渫・還水の前に、河川の浚渫によって生成された沈泥を用いて第2基礎埋戻し層を構築する。前記第2基礎埋戻し層の上部は、河川水位の水平面と同じ高さとする。前記第2基礎埋戻し層の上部に第2下層を設け、前記第2下層の上部に第2疎水層を設け、前記第2疎水層の上部に第2透水層を設け、前記第2透水層の上部に第2上層を設け、前記第2基礎埋戻し層の周囲の表面に第2ジオテキスタイル袋を配置する。前記第2透水層と前記第2上層との間の中央に位置するエリアに第2基礎埋戻し層ピークを形成し、前記第2上層の表面に前記第2斜面保護層を敷設する。
【0022】
本発明の更なるもう1つの具体的な実施形態において、前記上流浄化島本体の体積は、前記下流浄化島本体の2倍であり、前記上流浄化島本体の高さは、前記下流浄化島本体の高さと同じである。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る技術的解決手段の技術的効果の1つ目として、上流浄化島本体及び下流浄化島本体によって河川内の汚染物質が塞き止められることにより、汚染された水塊に対して良好な自然浄化効果を奏する。効果の2つ目として、人為的な動力エネルギーが不要なため、エネルギーの消費が削減され、メンテナンスの必要がほとんどなく、これによって、投資コスト及び使用コストを節約できる。効果の3つ目として、河川の河床に直接に位置するため、応用場所に制限されない。効果の4つ目として、川水の流れにより川水の浄化を実現することができるため、浄化処理量が大きく、効率がよい。効果の5つ目として、第1基礎埋戻し層及び第2基礎埋戻し層は、河川の浚渫により発生した沈泥を直接採用するため、資源の節約ができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】
図1に示されている第1斜面保護層及び第2斜面保護層の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、原位置浄化島構造体の構築方法は、以下のステップを含む。
【0026】
ステップA:上流浄化島本体1を構築する。河川の浚渫・還水の前に、河川の浚渫によって生成された沈泥を用いて第1基礎埋戻し層11を構築する。第1基礎埋戻し層11の上部は、河川水位の水平面と同じ高さとする。次に、第1基礎埋戻し層11の上部に第1下層12を設け、第1下層12の上部に第1疎水層13を設け、第1疎水層13の上部に第1透水層14を被覆し、第1透水層14の上部に第1上層15を設け、第1基礎埋戻し層11の周囲の表面に第1ジオテキスタイル袋111を配置する。第1下層12の中央位置に下層埋戻し遷移ゾーン121を形成し、第1疎水層13の中央位置に疎水層埋戻し遷移ゾーン131を形成し、第1透水層14の中央位置に透水層埋戻し遷移ゾーン141を形成する。第1基礎埋戻し層11の上部は、下層埋戻し遷移ゾーン121、疎水層埋戻し遷移ゾーン131及び透水層埋戻し遷移ゾーン141を順次に経由し、第1透水層14と第1上層15との間のエリアまで延在して、第1基礎埋戻し層ピーク112を形成する。第1基礎埋戻し層ピーク112の先端部にピーク保護層1121を設け、第1上層15の表面に第1斜面保護層151を敷設する。
【0027】
ステップB:下流浄化島本体2を構築する。河川の浚渫・還水の前に、河川の浚渫によって生成された沈泥を用いて第2基礎埋戻し層21を構築する。第2基礎埋戻し層21の上部は、河川水位の水平面と同じ高さとする。第2基礎埋戻し層21の上部に第2下層22を設け、第2下層22の上部に第2疎水層23を設け、第2疎水層23の上部に第2透水層24を設け、第2透水層24の上部に第2上層25を設け、第2基礎埋戻し層21の周囲の表面に第2ジオテキスタイル袋211を配置する。第2透水層24と第2上層25との間の中央に位置するエリアに第2基礎埋戻し層ピーク212を形成し、第2上層25の表面に第2斜面保護層251を敷設する。
【0028】
当該実施形態において、第1下層及12及び第2下層22は、直径が2〜4mmの砂利から形成され、それぞれの厚さが25cmである。第1疎水層13及び第2疎水層23は、両方とも直径が0.8〜1.2mmのシンダから構成され、それぞれの厚さが20cmである。第1透水層14及び第2透水層24は、それぞれ重量が1000g/m
2の不織布(500g/m
2又は750g/m
2の不織布を使用してもよい)から形成されている。第1上層15及び第2上層25は、両方とも厚さが30cmの土壌(新しい土ともいう)から形成されている。ピーク保護層1121は、厚さが50cmの砂利層である。第2斜面保護層251の構造は、第1斜面保護層151の構造と同じである。第1基礎埋戻し層ピーク112及び第2基礎埋戻し層ピーク212は、両方とも河川の浚渫泥土である。
【0029】
図1と併せて
図2を参照されたい。第1斜面保護層151は、中央に土充填キャビティ15111を有する六角形(正六角形)の斜面保護レンガ1511から構築(即ち、相互嵌め込むことにより構成)されている。土充填キャビティ15111内には、土壌が充填されている。土充填キャビティ15111内の充填された土壌には、例えばショウブのような抽水植物が栽培されている。
【0030】
好ましくは、上流浄化島本体1及び下流浄化島本体2は、体積比が1:2であり、両方の高さが同じである。上流浄化島本体1及び下流浄化島本体2、それぞれ全体として半球状を呈している。
【0031】
上記のジオテキスタイル袋は、ポリプロピレン(PP)又はポリエステル繊維(PET)を原料として製作された両面アイロンニードリング不織布処理された袋であり、耐紫外線(UV)性、抗老化、非毒性及び酸・アルカリによる腐食を受けないなどのメリットを有し、袋内には、河川の浚渫土が充填されている。川水が本発明の原位置浄化島構造体を経過する際に、汚水は、浸透性が異なる多層人工土壌及び基質に分布され、塞き止め、吸着、化学反応及び生物分解などの作用によって、汚染物質が分解・除去される。
【0032】
原位置浄化島構造体は、浸透性が上方から下方にわたって徐々に弱まり、多層の濾過構造を有する。これにより、粒径が異なる粒子状物質は、浸透性が異なる土壌層、基質及びその接触界面に十分に分散され、分解の効率が向上する。上流浄化島本体1を例とすると、配水時に、汚水が第1下層12から第1基礎埋戻し層11まで均等に分布されて下方に移動する。配水の過程において、土壌内の水分はほぼ飽和状態であり、このときの土壌層内の酸素が急激に消費され、直ちに補充されないため、第1基礎埋戻し層11は、嫌気状態に陥る。1回目の配水が完了すると、第1下層12内の水分が乾燥し、土壌内の酸素が直ちに補給される。このとき、酸素供給挟層が好気性環境に置かれ、下部土壌層の酸化還元電位が大幅に増加し、有機物の分解が加速され、同時に、有機態窒素のアンモニア化及び硝化が発生する。一定期間後、土壌の深さの増加につれ、土壌内の酸素は徐々に減少する。1つのサイクルを実行することで、土壌層の環境が好気性から嫌気性へと変化し、汚水内の窒素が分解・除去される。また、土壌内のリンも、吸着、化学沈殿及び微生物の蓄積等の作用により、除去される。また、原位置浄化島構造体が一定の勾配を有するため、汚水が処理後に河へ戻ることが容易である。システムの稼働と共に、人工土壌層内の有機物が蓄積し続ける。乾湿交互によって、土壌層内部に多段孔性を有する団粒構造が形成され、土壌層の透水性、通気性及び安定した処理効率が確保される。乾湿交互によって、原位置浄化島構造体における有機物及び微生物の代謝物質の蓄積による表層の隙間の過度な詰まりが回避され、システムの浸透性能が効果的に復元され、安定した処理水量及び処理効率が保たれる。下流浄化島本体2についても同様であり、説明を省略する。