特許第6236229号(P6236229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236229
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】セキュリティルーム
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   E04G23/02 Z
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-129581(P2013-129581)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-4196(P2015-4196A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】513155448
【氏名又は名称】日本トリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】臼井 淳一郎
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−225156(JP,A)
【文献】 特開昭63−130874(JP,A)
【文献】 実開昭55−036809(JP,U)
【文献】 米国特許第04800597(US,A)
【文献】 登録実用新案第3131855(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04H 1/12
E04H 15/00−15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業空間と外部空間との間に設けられるセキュリティルームであって、
前記作業空間に通じる前室と、
前記前室に通じるともに、エアシャワー装置が設けられた洗浄室と、
前記洗浄室に通じる更衣室と、を備え、
前記更衣室には、前記外部空間に通じる出入口が形成され、
前記出入口は、地面に敷かれた下部シートの外周縁部を上向きに折り返した部位と、上部シートとによって塞がれ、前記下部シートの上縁部と前記上部シートの下縁部とが貼り合わされており、
前記上部シートおよび前記下部シートには縦方向および横方向に連続して形成されたスリットが形成され、前記スリットはファスナーによって開閉自在であり、
前記スリットは、縦方向に延在するとともに、縦方向の下端部から横方向に連続して延在していることを特徴とするセキュリティルーム。
【請求項2】
前記ファスナーは線ファスナーであることを特徴とする請求項1に記載のセキュリティルーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業空間と外部空間との間に設けられるセキュリティルームに関する。
【背景技術】
【0002】
アスベスト(石綿)やダイオキシン等の有害物質の処理作業を行った作業者が、作業空間から外部空間に移動するときには、作業者に付着した塵を除去する必要がある。そこで、作業空間と外部空間との間で作業者が作業着を脱衣するとともに、作業者の身体に付着した塵を除去するためのセキュリティルームを設けている。
【0003】
従来のセキュリティルームとしては、作業空間に通じる前室と、前室に通じる洗浄室と、洗浄室に通じるとともに、外部空間に通じる更衣室と、を備え、洗浄室にエアシャワー装置が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
作業者が作業空間から外部空間に移動する場合には、まず、作業者は作業空間から前室に移動し、前室で作業着を脱衣する。その後、作業者は洗浄室に移動し、身体に付着した塵をエアシャワー装置から噴出されたエアによって除去する。さらに、作業者は更衣室に移動し、衣服を着用して外部空間に移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−225156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した従来のセキュリティルームの各出入口はシートによって塞がれている。シートには縦方向にスリットが形成されており、作業者はスリットの間を通過して隣の空間に移動している。セキュリティルームでは、外部空間に通じるスリットを小さくして、外部空間に対する遮蔽性を高めることが望ましいが、スリットが小さいと、作業者がスリットを通過し難いという問題がある。
【0007】
本発明は、前記した問題を解決し、外部空間に対する遮蔽性を高めるとともに、外部空間に通じるスリットを作業者が通過し易くなるセキュリティルームを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、作業空間と外部空間との間に設けられるセキュリティルームであって、前記作業空間に通じる前室と、前記前室に通じるともに、エアシャワー装置が設けられた洗浄室と、前記洗浄室に通じる更衣室と、を備え、前記更衣室には、前記外部空間に通じる出入口が形成され、前記出入口は、地面に敷かれた下部シートの外周縁部を上向きに折り返した部位と、上部シートとによって塞がれ、前記下部シートの上縁部と前記上部シートの下縁部とが貼り合わされており、前記上部シートおよび前記下部シートには縦方向および横方向に連続して形成されたスリットが形成され、前記スリットはファスナーによって開閉自在ある。前記スリットは、縦方向に延在するとともに、縦方向の下端部から横方向に連続して延在している。
【0009】
この構成では、スリットをファスナーによって封止することで、更衣室と外部空間との間を確実に遮蔽することができるため、外部空間に対する遮蔽性を高めることができる。
また、スリットが縦方向だけではなく横方向にも連続して形成されており、スリットを開いたときの開口幅が大きくなるため、作業者がスリットを通過し易くなっている。
【0010】
前記したセキュリティルームにおいて、前記ファスナーが線ファスナーである場合には、スリットをスムーズに開閉することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のセキュリティルームでは、スリットをファスナーによって封止することで、外部空間に対する遮蔽性を高めることができる。また、スリットが縦方向および横方向に連続して形成されており、スリットを開いたときの開口幅が大きくなるため、作業者がスリットを通過し易くなっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態のセキュリティルームを示した側断面図である。
図2】本実施形態のセキュリティルームを示した斜視図である。
図3】本実施形態のセキュリティルームの組み立て手順を示した図で、下部シートに骨組みを載置した状態の斜視図である。
図4】本実施形態のセキュリティルームの組み立て手順を示した図で、骨組みを下部シートおよび上部シートによって覆った状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態のセキュリティルーム1は、図1に示すように、アスベストやダイオキシン等の有害物質を処理する作業空間A1と、外部空間Bとの間に設けられるものである。
作業者はセキュリティルーム1内で作業着を脱衣するとともに、身体に付着した塵を除去した後に外部空間Bに移動する。
【0014】
セキュリティルーム1は、図2に示すように、下部シート11と、下部シート11の上面に載置された骨組み20と、骨組み20の上面および側面を覆う上部シート12と、を備えている。
【0015】
下部シート11は、地面に敷かれたシートであり、ビニール製、ポリエチレン製またはポリプロピレン製等の樹脂製のシートである。
【0016】
骨組み20は、樹脂製の複数のパイプをパイプ継手によって縦方向および横方向に連結した直方体の構造物である。骨組み20は、地面に対して垂直に立設され、長手方向に等間隔に並設された四つの矩形の枠体21〜24を有し、隣接する枠体21〜24の各角部の間にパイプが介設されている。
【0017】
骨組み20は、下部シート11の上面に載置されている。なお、下部シート11は、骨組み20の底面よりも大きく形成されている(図3参照)。下部シート11の外周縁部は、上向きに折り曲げられており、骨組み20の側面の下部を覆っている。
【0018】
上部シート12は、骨組み20の上面および側面を覆うシートであり(図4参照)、ビニール製、ポリエチレン製またはポリプロピレン製等の樹脂製のシートである。
上部シート12の下縁部と下部シート11の上縁部とは、骨組み20の内側から粘着テープ30によって貼り合わされている。
【0019】
下部シート11および上部シート12に覆われた骨組み20の内部空間には、四つの枠体21〜24を境にして長手方向に三つの空間が区画されている。
図1において最も右側(作業空間A1側)の空間は前室2であり、前室2の左側の空間は洗浄室3であり、洗浄室3の左側の空間は更衣室4となっている。また、図2に示すように、四つの枠体21〜24の開口領域は、作業者が隣り合う空間を移動するための出入口21a〜24aとなっている。
【0020】
前室2は、図1に示すように、建物Aの開口部A2に隣接して配置される空間であり、作業空間A1から出た作業者が作業着を脱衣するための部屋となっている。
作業空間A1と前室2との間には、図2に示すように、第一枠体21によって第一出入口21aが形成されている。第一出入口21aは、下部シート11および上部シート12によって塞がれている。
【0021】
第一出入口21aを塞いでいる下部シート11および上部シート12には、第一スリット21bが形成されている。第一スリット21bは、第一出入口21aの横方向の中間部において縦方向に延在するとともに、縦方向の下端部から横方向の両側に延在されており、逆T形状となっている。
【0022】
洗浄室3は、前室2に隣接して配置される空間であり、作業着を脱衣した作業者の身体に付着した塵を除去するための部屋となっている。
洗浄室3には、作業者にエアを吹き付けるとともに、洗浄室3内の空気を吸引して集塵するエアシャワー装置3aが設けられている。
【0023】
前室2と洗浄室3との間には、第二枠体22によって第二出入口22aが形成されている。第二出入口22aは間切りシート13によって塞がれている。間切りシート13は、ビニール製、ポリエチレン製またはポリプロピレン製等の樹脂製のシートである。
第二出入口22aを塞いでいる間切りシート13には、第一スリット21bと同じ形状の第二スリット22bが形成されている。
【0024】
更衣室4は、洗浄室3に隣接して配置される空間であり、作業者が衣服を着衣するための部屋となっている。
洗浄室3と更衣室4との間には、第三枠体23によって第三出入口23aが形成されている。第三出入口23aは、第二出入口22aと同様に間切りシート13によって塞がれており、間切りシート13には第一スリット21bおよび第二スリット22bと同じ形状の第三スリット23bが形成されている。
【0025】
更衣室4と外部空間Bとの間には、第四枠体24によって第四出入口24aが形成されている。第四出入口24aは、下部シート11および上部シート12によって塞がれている。
第四出入口24aを塞いでいる下部シート11および上部シート12には、第四スリット24bが形成されている。
【0026】
第四スリット24bは、第四出入口24aの横方向の中間部よりも一方側(図2の手前側)において縦方向に延在するとともに、縦方向の下端部から他方側(図2の奥側)に延在されている。
すなわち、第四スリット24bは縦方向および横方向に連続して形成されており、正面視でL形状に形成されている。
【0027】
第四スリット24bには線ファスナー24c(チャック)が設けられている。線ファスナー24cを閉じることで第四スリット24bを封止することができる。
【0028】
次に、本実施形態のセキュリティルーム1を組み立てる手順について説明する。
まず、図3に示すように、地面に下部シート11を敷き広げて、下部シート11の上面に骨組み20を構築する。
図4に示すように、下部シート11の外周縁部を上向きに折り曲げて、骨組み20の側面の下部を覆う。また、上部シート12を骨組み20の上側から被せて、上部シート12によって骨組み20の上面および側面を覆う。
さらに、上部シート12の下縁部と下部シート11の上縁部とを骨組み20の内側から粘着テープ30によって貼り合わせる。
これにより、骨組み20の内部空間は、下部シート11および上部シート12によって密閉された空間となる。
【0029】
図2に示すように、第二出入口22aおよび第三出入口23aを間切りシート13によって覆うことで、骨組み20の内部空間に前室2、洗浄室3および更衣室4を区画する。また、洗浄室3の側面にエアシャワー装置3aを設置する。
さらに、各出入口21a〜24aを覆っている各シート11〜14にスリット21b〜24bをそれぞれ形成し、第四スリット24bには線ファスナー24cを設ける。
【0030】
以上のようにして、本実施形態のセキュリティルーム1を、図1に示すように、建物Aの開口部A2に隣接して設置し、第一出入口21aを開口部A2に連通させる。
なお、作業空間A1には図示しない集塵装置が設置されており、集塵装置が作業空間A1内の空気を吸い込むことで、作業空間A1内は負圧になっている。
【0031】
作業空間A1でアスベストやダイオキシンなどの有害物質の処理作業を行った作業者は、図2に示すように、作業空間A1から第一スリット21bを通過して前室2に移動する。そして、作業者は前室2で作業着を脱衣する。
【0032】
作業者は作業着を脱衣した後に、前室2から第二スリット22bを通過して洗浄室3に移動する。洗浄室3では作業者の身体にエアシャワー装置3aからエアが吹き付けられ、作業者の身体に付着した塵が除去される。
【0033】
さらに、作業者は洗浄室3から第三スリット23bを通過して更衣室4に移動し、更衣室4で衣服を着衣する。その後、作業者は第四スリット24bの線ファスナー24cを開けて、第四スリット24bを通過して外部空間Bに移動する。また、作業者は第四スリット24bを通った後に線ファスナー24cを閉じて第四スリット24bを封止する。
【0034】
なお、作業空間A1は負圧となっているため、作業者が各スリット21b〜24bを開いても、外部空間B側に空気が流れないため、セキュリティルーム1内の空気が外部空間Bに流出するのを防ぐことができる。
【0035】
以上のようなセキュリティルーム1では、図2に示すように、第四スリット24bを線ファスナー24cによって封止することで、更衣室4と外部空間Bとの間を確実に遮蔽することができるため、外部空間Bに対する遮蔽性を高めることができる。
【0036】
また、各スリット21b〜24bは縦方向だけではなく横方向にも連続して形成されており、各スリット21b〜24bを開いたときの開口幅が大きくなるため、作業者が各スリット21b〜24bを通過し易くなっている。
特に、外部空間Bに通じる第四スリット24bでは、外部空間Bに対する遮蔽性を高めつつ、作業者が第四スリット24bを通過し易くなっている。さらに、第四スリット24bは、線ファスナー24cによってスムーズに開閉することができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、本実施形態では、図2に示すように、第四スリット24bに線ファスナー24cが設けられているが、ファスナーの種類は限定されるものではなく、面ファスナーや点ファスナーを用いてもよい。
【0038】
また、本実施形態では、第二出入口22aおよび第三出入口23aが間切りシート13によって塞がれているが、第二出入口22aおよび第三出入口23aにエアカーテン装置を設け、空気の気流によって隣り合う空間の間を遮蔽してもよい。
【符号の説明】
【0039】
1 セキュリティルーム
2 前室
3 洗浄室
3a エアシャワー装置
4 更衣室
11 下部シート
12 上部シート
13 間切りシート
21 第一枠体
21a 第一出入口
21b 第一スリット
22 第二枠体
22a 第二出入口
22b 第二スリット
23 第三枠体
23a 第三出入口
23b 第三スリット
24 第四枠体
24a 第四出入口
24b 第四スリット
24c 線ファスナー
30 粘着テープ
A 建物
A1 作業空間
A2 開口部
B 外部空間
図1
図2
図3
図4