特許第6236230号(P6236230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6236230-石綿管の撤去方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236230
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】石綿管の撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   E04G23/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-129583(P2013-129583)
(22)【出願日】2013年6月20日
(65)【公開番号】特開2015-4197(P2015-4197A)
(43)【公開日】2015年1月8日
【審査請求日】2016年3月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】513155448
【氏名又は名称】日本トリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100064414
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 道造
(74)【代理人】
【識別番号】100111545
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 悦夫
(72)【発明者】
【氏名】臼井 淳一郎
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−208368(JP,A)
【文献】 特開2011−208719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/02
E04G 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に埋設された石綿管の撤去方法であって、
前記壁部において前記石綿管の開口端部を含む領域を、筒状のコアドリルを用いて切除した後に、
前記石綿管の内周面に高圧水を吹き付けて、前記石綿管の開口端部以外の部位を破砕することを特徴とする石綿管の撤去方法。
【請求項2】
壁部に埋設された石綿管の撤去方法であって、
前記石綿管の内周面に高圧水を吹き付けて、前記石綿管の開口端部以外の部位を破砕した後に、
前記壁部において前記石綿管の開口端部を含む領域を、筒状のコアドリルを用いて切除することを特徴とする石綿管の撤去方法。
【請求項3】
前記石綿管は、縦引き管と、前記縦引き管に連通するとともに、前記壁面に開口している横引き管とを備えており、
前記壁部において前記横引き管を含む領域を、前記コアドリルを用いて切除することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の石綿管の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁部に埋設された石綿管の撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石綿(アスベスト)とセメントとを原料とする石綿管が、建物の換気管や水道管として利用されていた。
建物を解体するときに、壁部に石綿管が埋設されている場合は、壁部から石綿管を予め撤去して、石綿が外部に飛散するのを防ぐ必要がある。
壁部から石綿管を撤去する方法としては、石綿管に噴水装置のノズルを挿入し、石綿管の内周面に高圧水を吹き付けて、石綿管を破砕しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3273138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記した従来の石綿管の撤去方法によって、石綿管の開口端部を破砕しようとすると、壁面の開口部から高圧水が外部に流出する虞がある。また、石綿管の開口端部が横引き管である場合には、噴水装置を横向きに配置することが難しいため、横引き管を破砕することができないという問題がある。
したがって、従来は石綿管の開口端部を作業者が工具で斫って除去しているため、石綿が飛散するとともに、石綿管の撤去作業が煩雑になるという問題がある。
【0005】
本発明は、前記した問題を解決し、壁部に埋設された石綿管を撤去するときに、石綿の飛散を防ぐとともに、壁部から石綿管の開口端部を簡単に撤去することができる石綿管の撤去方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、壁部に埋設された石綿管の撤去方法であって、前記壁部において前記石綿管の開口端部を含む領域は、筒状のコアドリルを用いて切除した後に、前記石綿管の開口端部以外の部位は、前記石綿管の内周面に高圧水を吹き付けて破砕することを特徴としている。
また、本発明は、壁部に埋設された石綿管の撤去方法であって、前記石綿管の内周面に高圧水を吹き付けて、前記石綿管の開口端部以外の部位を破砕した後に、前記壁部において前記石綿管の開口端部を含む領域を、筒状のコアドリルを用いて切除することを特徴としている。
【0007】
この構成では、壁部の一部とともに、石綿管の開口端部も壁部から切削されるため、石綿の飛散を防ぐとともに、壁部から石綿管の開口端部を簡単に除去することができる。
【0008】
前記した石綿管の撤去方法において、前記石綿管が、縦引き管と、前記縦引き管に連通するとともに、前記壁面に開口している横引き管とを備える場合には、前記壁部において前記横引き管を含む領域を、前記コアドリルを用いて切除することが望ましい。この構成では、石綿の飛散を防ぐとともに、壁部から横引き管を簡単に撤去することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の石綿管の撤去方法では、壁部の一部とともに、石綿管の開口端部も壁部から切削することで、石綿の飛散を防ぐとともに、壁部から石綿管の開口端部を簡単に撤去することができ、作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の石綿管の撤去方法において、横引き管を撤去する工程を示した側断面図である。
図2】本実施形態の石綿管の開口端部を示した図で、(a)は側断面図、(b)は壁面側から見た図である。
図3】本実施形態の石綿管の撤去方法を示した図で、縦引き管の開口端部を撤去する工程を示した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
本実施形態の石綿管の撤去方法は、図1に示すように、建物1を解体するときに、壁部2に埋設されている石綿管5を予め撤去するための方法である。
【0012】
建物1の壁部2は、コンクリートによって形成された側壁である。壁部2には、ボイラや暖房機器の換気管または水道管として石綿管5が埋設されている。
石綿管5は、石綿とセメントとを原料として成形されたものである。石綿管5は、縦方向に延在している縦引き管6と、横方向に延在している横引き管7とを備えている。
【0013】
縦引き管6は、図3に示すように、建物1の屋上に突設された突出部1aの上壁面1bに開口している。また、横引き管7は、図1に示すように、一端が縦引き管6に連通するとともに、他端は壁部2の内壁面2aに開口している。
【0014】
本実施形態の石綿管5の撤去方法は、壁部2から横引き管7を撤去する工程と、壁部2から縦引き管6の開口端部を撤去する工程と、壁部2から縦引き管6を撤去する工程と、を備えている。
【0015】
壁部2から横引き管7を撤去する工程では、図1に示すように、内壁面2aに切削装置10を設置する。なお、壁部2から横引き管7を撤去する作業は、シート等によって仕切られた作業空間内で行われる。
切削装置10は、円筒状のコアドリル11と、コアドリル11を回転させる駆動装置12と、駆動装置12を支持するアンカー部材13と、を備えている。
切削装置10は、コアドリル11によってコンクリート部材から円柱状の部位(コア)を切り抜いて、コンクリート部材に円形の穴を形成することができるものである。
【0016】
コアドリル11の内径は、縦引き管6および横引き管7の外径よりも大きく形成されている。また、コアドリル11の開口縁部には複数の切削刃が取り付けられている。
コアドリル11の基端部には駆動装置12の回転軸が取り付けられており、駆動装置12の駆動力によってコアドリル11が軸回りに回転する。
【0017】
アンカー部材13は、基端部が駆動装置12に取り付けられている。アンカー部材13の先端部を内壁面2aに取り付けることで、切削装置10を内壁面2aに対して安定させることができる。
また、切削装置10には、給水ホース14を通じて供給された水をコアドリル11の先端部に供給する給水機構が設けられている。
【0018】
作業者は、アンカー部材13の先端部を内壁面2aに取り付けるとともに、コアドリル11の開口縁部を内壁面2aに当接させる。このとき、コアドリル11の開口部内に、横引き管7の開口部7aが収まるように、コアドリル11を位置決めする。
【0019】
そして、コアドリル11を回転させ、壁部2を内壁面2a側から切削することで、図2(a)および(b)に示すように、壁部2において、横引き管7を含む領域A1を円柱状に切り抜いて除去する。切削時にコアドリル11の先端部に水が供給されており、切削部位が湿潤されるため、粉塵が飛散するのを防ぐことができる。このようにして、壁部2の一部とともに、壁部2から横引き管7全体を撤去する。
【0020】
続いて、壁部2から縦引き管6の開口端部を撤去する工程では、図3に示すように、横引き管7(図1参照)を撤去する場合と同様に、突出部1aの上壁面1bに切削装置10を設置する。
このとき、コアドリル11の開口部内に縦引き管6の開口部6aが収まるように、コアドリル11を位置決めする。なお、壁部2から縦引き管6の開口端部を撤去する作業は、シート等によって仕切られた作業空間内で行われる。
【0021】
そして、コアドリル11を回転させ、壁部2において、縦引き管6の開口端部を含む領域A2を円柱状に切り抜いて除去する。これにより、壁部2の一部とともに、壁部2から縦引き管6の開口端部が撤去される。
【0022】
なお、撤去する縦引き管6の開口端部の深さは、後記する噴水装置(図示せず)によって縦引き管6を破砕した場合に、上壁面1bの開口部から高圧水が噴水してしまう虞がある領域である。すなわち、縦引き管6において撤去された開口端部よりも下側の部位は、後記する噴水装置によって破砕することができる。
【0023】
壁部2から縦引き管6を撤去する工程では、図1に示す縦引き管6の上部の開口部から公知の噴水装置(図示せず)のノズルを縦引き管6内に挿入し、ノズルから縦引き管6の内周面に高圧水を吹き付けて縦引き管6を破砕する。なお、縦引き管6の破砕片は、水とともに石綿管5の下側の開口部から回収する。
このようにして、壁部2から縦引き管6全体を撤去し、壁部2に埋設された石綿管5の撤去作業を完了する。
【0024】
以上のような石綿管5の撤去方法では、図1および図3に示すように、壁部2の一部とともに、石綿管5の横引き管7や開口端部も壁部2から切削されるため、石綿の飛散を防ぐとともに、壁部2から石綿管5の横引き管7や開口端部を簡単に除去することができ、作業効率を高めることができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
本実施形態では、図1および図3に示すように、壁部2から横引き管7および縦引き管6の開口端部を撤去した後に、噴水装置によって壁部2から縦引き管6全体を撤去しているが、噴水装置によって壁部2から縦引き管6の開口端部以外の部位を撤去した後に、壁部2から横引き管7および縦引き管6の開口端部を撤去してもよい。
また、壁部2から横引き管7を撤去する工程および縦引き管6の開口端部を撤去する工程は同時に行ってもよい。
【符号の説明】
【0026】
1 建物
1b 上壁面
2 壁部
2a 内壁面
5 石綿管
6 縦引き管
7 横引き管
10 切削装置
11 コアドリル
12 駆動装置
図1
図2
図3