【0015】
本発明のサスペンションアームのアーム本体は、例えば高張力鋼板や丸パイプ、角パイプ等により構成された中空長手形状のもの
が用いられる。このアーム本体は
、焼入れ処理により引張強度が1000〜1500MPa程度の高強度とされる一方、
焼入れ処理が行われない部分は500〜700MPa程度で、
焼入れ処理の有無により軟弱部を設けることができる。車輪側取付部および車体側取付部は、例えば内部に弾性体が設けられた円筒形状のブッシュや、そのブッシュの取付穴内に挿入される取付軸などである。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された車両用のサスペンションアーム10を車両前後方向から見た正面図で、
図1の右方向が車輪側、左方向が車体側すなわち差動装置が設けられた車両幅方向の中央側である。また、
図2は、サスペンションアーム10を車両上方から見た平面図である。これ等の図から明らかなように、このサスペンションアーム10は、ドライブシャフト12の近傍に車両幅方向に配設されるもので、長手形状のアーム本体14、そのアーム本体14の一端に設けられた車輪側取付部16、およびアーム本体の他端に設けられた車体側取付部18を備えている。車輪側取付部16および車体側取付部18は、何れも内部に弾性体が設けられた円筒形状のブッシュで、車輪側取付部16は連結軸20を介してアクスルキャリア22の上部に連結されており、車体側取付部18は連結軸24を介して車体に連結されている。これ等の車輪側取付部16および車体側取付部18は、
図1に示す正面視において何れもドライブシャフト12よりも上方で連結軸20、24に連結されている。
【0019】
アーム本体14は、高張力鋼板にて構成された断面が上下方向に長い長方形乃至は長円形の中空長手形状を成しており、
図2に示す平面視においてドライブシャフト12と略平行になる姿勢で配置されている。このアーム本体14の車体側取付部18側には、車両下方側へ凸となるように湾曲させられた湾曲部26が設けられており、その湾曲部26の下端部26rは
図1の正面視においてドライブシャフト12と重なっている。この下端部26rはラップ部に相当する。また、アーム本体14には、上記湾曲部26と車輪側取付部16との間の中間位置に定められた軟弱部28(細かい斜線部)を除いて高周波加熱による焼入れ処理が施され、引張強度が1400〜1500MPa程度の高強度とされている。高周波加熱は電源のON、OFFによって行われ、加熱しない軟弱部28では引張強度が550〜650MPa程度であり、この軟弱部28以外の部分には総て焼入れ処理が施されて高強度とされている。但し、軟弱部28の両側の境界部分では、加熱温度が連続的に変化し、引張強度も連続的に変化している。軟弱部28は、
図1の正面視においてドライブシャフト12よりも上方に位置する部分に設定されている。
【0020】
このようなサスペンションアーム10においては、アーム本体14の湾曲部26と車輪側取付部16との間に軟弱部28が設けられているため、過大な負荷が加えられた場合には、
図3および
図4に示すようにその軟弱部28が優先的に変形させられ、湾曲部26が変形して下端部26rがドライブシャフト12と干渉することが防止される。すなわち、サスペンションアーム10と同一形状でアーム本体14の強度が略均一である場合、そのアーム本体14に過大な荷重が作用すると、
図5および
図6に示すように、形状的に応力集中が生じ易い湾曲部26で折れ曲がり座屈が発生し、その下端部26rがドライブシャフト12と干渉して傷つける可能性がある。
【0021】
また、湾曲部26が高周波加熱による焼入れ処理によって高強度とされているため、その湾曲部26が変形して下端部26rがドライブシャフ12と干渉することが適切に防止される。特に、焼入れ処理で高強度化しているため、高強度化されていない軟弱部28との境界部分で強度が連続的に変化し、強度変化に起因する応力集中が抑制されて割れや亀裂の発生が抑制される。
【0022】
また、加熱処理のON、OFFだけで強度を変化させることができ、従来の加熱処理に比較して軟弱部28で加熱処理をOFFするだけで良いため、板厚や断面形状で強度を変化させる場合に比較して追加コストが掛からず、容易且つ安価に実施できる。
【0023】
また、湾曲部26と車輪側取付部16との間の中間位置に軟弱部28が部分的に設けられており、その軟弱部28の両側は比較的高強度であるため、負荷により軟弱部28が一層確実に優先的に変形させられるようになり、湾曲部26が変形して下端部26rがドライブシャフト12と干渉することが一層適切に防止される。
【0024】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。