(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
複合地盤(例えば、粘土層、砂層、泥岩層から成る地盤)を改良する場合には、支持層(支持基盤)となり得る層(例えば、泥岩層:ただし、岩盤に限定されない)までボーリング孔を削孔する。そして、削孔後、ボーリング孔に固化材噴射装置を挿入して、固化材噴射装置から固化材を噴射しながら回転しつつ、地上側に引き上げて、改良するべき地盤を削孔して、固化材と混合し、支持層となり得る層よりも上方の領域に地中固結杭を造成する。
ここで、地中固結杭の下端部が支持層となり得る層まで到達していなければ、地中固結杭が安定しなくなってしまう。そのため、ボーリング孔の削孔においては、支持層となり得る層まで到達する様に削孔する必要がある。
【0003】
従来技術では、大型の機械を用いて、ロッド継ぎ足しの無い長い削孔用ロッドを使用して削孔を行っている。あるいは、ロッドの径に対して、径寸法が大きな羽根(削孔ビット)を回転して削孔している。
目標となる層(支持層になり得る層:硬い層)に到達した際には、削孔時における施工機の電動機の抵抗値あるいは電流値の変化が大きくなるので、これにより、目標となる層に到達したことを判別していた。
しかし、大型の機械を使用せず、ロッドを継ぎ足しながら削孔し、ロッド径に比較してビット径が僅かに大きい場合には、施工機の電動機の抵抗値(電流値)は小さい。そのため、電流値により目標となる層に到達したか否かを判断することは出来ない、という問題が存在する。
【0004】
また、上述した従来技術では、ロッドの径に対して削孔ビットの径寸法が大きいため、ロッドの周囲に出来る円環状の隙間から、排泥を地上側へ容易に排出することが出来る。
しかし、ロッド径に比較してビット径の増加が僅かである場合には、ロッド周囲の円環状の隙間から、排泥を地上側へ排出することが困難である。そのため、比較的短い削孔深度でロッドを上下動して、排泥を促進しなければならない。ここで、削孔の際に比較的短い削孔深度毎にロッドを上下動する場合には、目標となる層に到達したか否かを判断するためには、未削孔地盤を削孔しているのか、あるいは、既に削孔した領域を上下動しているのかをも判断しなければならない。
従来技術では、その様な判断を行うことが困難であり、そのため、削孔に際して比較的短い削孔深度毎にロッドを上下動する場合には、目標となる層に到達したか否かを判断するのが困難であった。
【0005】
その他の従来技術として、例えば、ボーリングデータに基づき、負荷電流と負荷トルクを用いて着底判定をする技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし。係る従来技術は大型の機械を使用し、排泥を地上側へ容易に排出できる施工方法であるため、削孔している地盤による電動機の抵抗値(電流値)が小さく、比較的短い削孔深度毎にロッドを上下動する削孔については、適用することが困難である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1は、地盤改良工事に際して本発明の実施形態を適用した施工現場の概要を示している。
図1において、本発明の実施形態に係る削孔工法では、削孔用ロッド駆動部10を有する施工機100と、削孔用ロッド11と、ポンプ20と、残土タンク30と、マッドスクリーン40と、排泥ポンプ25を用いて、施工している。ここで、削孔用ロッド11の頭部には、ウォータースイベル12が取り付けられている。
【0018】
ポンプ20は削孔するための高圧水を圧送するウォーターポンプであり、排泥ポンプ25は削孔して発生する排泥を地上側に吸引するスラリーポンプである。前記2つのポンプ20、25に加え、高圧エアーを圧送するエアコンプレッサー(図示せず)を装備することもできる。
ポンプ20とウォータースイベル12の間は、高圧ホース22で接続されている。
削孔用ロッド11の先端には、例えばビット(図示せず)が配置され、当該ビットにより、あるいは、ノズル(図示せず)から噴射される高圧水により、施工領域においてボーリング孔Hを削孔する。
削孔用ロッド11は、例えば2重管(あるいは単管、3重管)であり、内管(あるいは管内)を経由して削孔用高圧水が供給され、削孔して発生した排泥は、2重管の外管と削孔されたボーリング孔H内壁の間の円環状の隙間を経由して、地上側の排泥ポンプ25に吸引される。
【0019】
排泥ポンプ25は、削孔の際に生じた排泥を吸引し、排泥ライン27に突出する。排泥ポンプ25で吐出された排泥は、残土タンク30の上方に設置したマッドスクリーン40(篩)に回収される。マッドスクリーン40は、粒径の小さな排泥を残土タンク30に収容し、粒径の大きな排泥を残土タンク30外に排出する。
図1における符号Gは施工領域の地盤を示し、符号GBは、ボーリング孔Hの削孔目標である「支持層となり得る層」、例えば岩盤層を示している。
【0020】
次に、
図2を参照して、本発明の実施形態に係る削孔工法の概要を説明する。
図2において、縦軸は地盤を削孔するロッド先端の位置(深度方向位置)、横軸は時間を示している。縦軸に沿って示されている白抜きの矢印は、未削孔地盤の削孔工程を示している。
【0021】
図2から明らかなように、図示の実施形態では、地盤を削孔する削孔用ロッド11は、削孔の際には下方にのみ進行するのではない。削孔用ロッド11は比較的短い距離、例えば
図2の符号αで示す領域を削孔したならば(符号βで示す箇所まで削孔したならば)、削孔用ロッド11を上方(符号γで示す領域)へ引き上げる(符号δで示す箇所まで引き上げる)。その後、削孔用ロッド11を下降して、符号βで示す箇所よりも下方の位置(E)まで削孔する(符号ε1、ε2で示す領域を削孔する)。
すなわち、
図2で示す様に図示の実施形態では、比較的短い距離で削孔用ロッド11の下降(削孔)、上昇を繰り返している(上下動している)。削孔されたボーリング孔Hの排泥を促進するためである。
ここで、軟らかい地層ほど削孔速度が速いため排泥量が多くなり、排泥促進のため、上下動の繰り返し回数が増加する。一方、硬い地層や岩盤であれば、削孔速度が遅く排泥量が少ないので、排泥促進のための上下動の繰り返し回数は少なくて良い。
【0022】
図示の実施形態では、実効使用電
流を判断のパラメータとして、削孔されたボーリング孔Hが支持層となり得る地層GBまで到達したか否かを判断している。
図2において、実効使用電
流は網掛けした領域(短い横線が多数付けられている領域:縦軸に沿った白抜きの矢印と深度方向の長さが等しい)における実効使用電
流が、図示の実施形態における判断パラメータとなっている。
実効使用電
流は、単位深度当たり(例えば深度0.5m当たり)の使用電
流として定義される。そして、使用電
流は以下の式によって与えられる。
使用電
流=電流×時間
すなわち、
実効使用電
流=電流×「地盤を削孔している時間(実際に削孔している時間)」
ここで、「地盤を削孔している時間(実際に削孔している時間)」とは、
図2の領域αや領域ε2の様に、それまでに削孔されていない地盤を削孔する場合の時間であり、既に削孔された領域(
図2の領域γ、ε1)を移動する時間は含めない。
換言すれば、図示の実施形態において、削孔用ロッド11で削孔した後、一度ロッド11を上げてから削孔したところまで下げる領域(
図2の領域γ、ε1)は、「実効使用電
流」における「地盤
を削孔している時間」には包含しない。
なお、「それまでに削孔されていない地盤」を削孔する深度(
図2の縦軸の白い矢印の長さ)は、
図2で示す様に不均一であっても良いし、均等であっても良い。
【0023】
図2を参照して、削孔用ロッド11の切り継ぎについて概説する。削孔用ロッド11の切り継ぎを行う場合、切り継ぎ直前においてロッド11で削孔した位置EC(削孔用ロッド11の先端がボーリング孔Hの底部に着底した位置)から、削孔用ロッド11を若干量だけ上方に移動して、ロッド11の先端(下端:
図2では図示せず)を位置EDに移動する。これにより、切り継ぎの際に、削孔用ロッド11の先端EDは、削孔用ロッド11の着底位置ECよりも上昇しており、ボーリング孔Hの底部には着底していない。
切り継ぎ時に、削孔用ロッド11内の地下水位よりも高い位置にある水の量だけ、削孔用ロッド11先端から流出する。その際に、削孔用ロッド11先端(下端)が着底していると(最深位置ECに位置していると)、流出した水がボーリング孔Hの底部近傍の地盤に衝突して、ボーリング孔Hの底部近傍の地盤を緩めてしまう等の悪影響が生じる。これに対して、削孔用ロッド11の切り継ぎを行う際に削孔用ロッド11を着底位置(最深位置EC)から若干上方に移動の位置EDまで引き上げることにより、ロッド11先端とボーリング孔Hの底部との間に比較的大きな隙間が形成されることになり、切り継ぎの際に削孔用ロッド11内の水が地下水位よりも上方に溜まった水の量だけロッド11先端から流出しても、当該比較的大きな隙間の分だけ流出した水が保有するエネルギーが減衰し、ボーリング孔Hの底部に衝突する速度が遅くなり、当該底部近傍の地盤を緩めてしまう等の悪影響が減少する。
その後、従来公知の手順に従って、削孔ロッド11の切り継ぎ作業を行えば良い。
【0024】
図2で説明したような削孔を行う施工機100の削孔用ロッド取扱部10が、
図3で示されている。
図3において、削孔用ロッド取扱部10は、複数のチャック110と、複数のホルダ120と、複数のロッド移動用のシリンダ機構130と、計測スケール140と、削孔用ロッド回転駆動用電動モータ(以下、「電動モータ」と言う)150を備えている。
チャック110は、削孔用ロッド11を上下に移動する場合等において、削孔用ロッド11を把持する部材である。一方、ホルダ120は、チャック110が削孔用ロッド11の把持を解除している場合に、削孔用ロッド11を把持(保持)するための部材である。
【0025】
図3において、符号160は地表Gfに対して(直接或は間接的に)固定されたベース部材である。
シリンダ機構130の近傍には、計測スケール(以下、「スケール」と言う)140がシリンダ機構130と平行に配置されている。スケール140は、シリンダ機構130のピストンロッド133の伸縮量(あるいはチャック移動量)を計測するように構成されている。
シリンダ機構130のピストンロッド133にはスケール指針134が取り付けられており、スケール指針134はスケール140の目盛を指し示している。スケール指針134は、指し示した目盛(読み取った目盛)の情報を電気信号に変換して、ラインLi2を介して、コントロールユニット50の実効使用電
流演算ブロック51(
図3参照)に出力する機能を有している。
【0026】
図3において、電動モータ150には、電源ラインLEを介して交流電源から電
流が供給される。
交流電源の配電盤の電
流メータEMは、電動モータ150の消費電
流に関する情報(電流値)を、ラインLi1を介して、コントロールユニット50の実効使用電
流演算ブロック51に出力する機能を有している。
【0027】
制御手段であるコントロールユニット50は、実効使用電
流演算ブロック51と、記憶装置52と、比較ブロック53と、計時手段であるタイマ54を備えている。
実効使用電
流演算ブロック51は、電
流メータEMから得た消費電
流に関する情報(電流値)と、スケール指針134からの情報とタイマ54の計時データから決定された「有効な削孔に消費された時間」を決定し、電流値と「有効な削孔に消費された時間」とを乗算して「実効使用電
流」を演算する機能を有している。
記憶装置52は、過去の実証実験等で得られた「目標とする地盤に到達した際の実効使用電
流値のしきい値」を記憶している。ここで、「目標とする地盤に到達した際の実効使用電
流値のしきい値」は、施工現場(削孔される地盤)の状況、使用する機器、その他の条件により、ケース・バイ・ケースに決定される。
【0028】
比較ブロック53は、記憶装置52に記憶された「目標とする地盤に到達した際の実効使用電
流値のしきい値」と、実効使用電
流演算ブロック51で演算した「実効使用電
流」とを比較する機能を有している。そして、実効使用電
流演算ブロック51で演算した「実効使用電
流」が「目標とする地盤に到達した際の実効使用電
流値のしきい値」以上である場合に、「ボーリング孔Hが目標値に達した」と判断する機能を有している。
比較ブロック53は、外部のモニター60とラインLoで接続されており、比較ブロック53における比較結果や判断内容をモニター画面上に表示するように構成されている。
なお、
図3では明示されていないが、コントロールユニット50は、スケール指針134からの情報とタイマ54の計時データから決定された「有効な削孔に消費された時間」から、削孔速度を演算する機能を有している。
【0029】
図3で示す施工機100により、粘土層、砂層、泥岩層から成る複合地盤を、泥岩層に到達するまで削孔した際における電流値、削孔速度、実効使用電
流が、
図4で示されている。
図4において、横軸は深度を示しており、符号H1は粘土層、符号H2は砂層、符号H3は泥岩層を示している。
図4の左側の縦軸は電流値(
図4の実線LA)、実効使用電
流(
図4の一点鎖線LB)を示しており、右側の縦軸は削孔速度(
図4の点線LC)を示している。ここで、
図4における実効使用電
流は、深度0.5m当たりの実効使用電
流である。
【0030】
図4の泥岩層H3において、電流値については粘土層H1、砂層H2における電流値とは有意な差異はないが、実効使用電
流の値は遙かに大きくなっている。
泥岩層H3における削孔速度は、粘土層、砂層の削孔速度よりも遅いのに、実効使用電
流の値が増大しているのは、泥岩層H3では削孔速度が遅いため削孔する時間が長いことによる。すなわち、「実効使用電
流=電流×時間」であり、電流値に差異がなくても未削孔地盤等では削孔時間が長くなり、実効使用電
流が大きくなる(実効使用電
流の値が上昇する)ため、泥岩層H3における実効使用電
流が増大する。
ここで、泥岩層H3に到達したか否かを電流値で判断すると、例えば、砂層H2において礫が存在すると、一瞬だけ削孔の抵抗が上昇して電流値が大きくなってしまい、砂層H2であるにも拘らず、泥岩層H3に到達した旨の誤判断をする可能性がある。実効使用電
流をパラメータとして判断すれば、砂層H2において礫が存在した場合でも実効使用電
流は増大しないので、上述した様な誤判断をすることなく、支持層となるのに十分な硬い層に到達したか否かを判断することができる。
【0031】
上述した通り、
図4から明らかな様に、泥岩層H3における実効使用電
流は、粘土層H1の実効使用電
流、砂層H2の実効使用電
流に比較して、遙かに大きい。
従って、支持層となり得る地層として泥岩層H3を選択した場合に、実効使用電
流を監視すれば、支持層となり得る地層まで削孔したか否かが判断出来る。
【0032】
図4において、粘土層H1における実効使用電
流に比較して、砂層H2の実効使用電
流の方が有意に大きい。
このことから、粘土層H1と砂層H2から成る複層地盤において、支持層となり得る地層として砂層H2を選択した場合であっても、実効使用電
流を監視すれば、支持層となり得る地層まで削孔したか否かが判断出来る。
【0033】
なお、図示はされていないが、粘土層H1と砂層H2から成る複層地盤において、支持層となり得る地層として砂層H2を選択した場合において、実効使用電
流ではなく、電流値を観察することにより、支持層となり得る地層まで削孔したか否かを判断することが可能である。
【0034】
次に、主として
図5を参照して、
図3をも参照しつつ、支持層となり得る地層GB(
図1参照)まで削孔する際の制御について説明する。
図5において、ステップS1では、コントロールユニット50の実効使用電
流演算ブロック51により実効使用電
流を演算して、ステップS2に進む。
ステップS2では、コントロールユニット50の比較ブロック53により、ステップS1で演算した実効使用電
流と、記憶装置52に記憶されたしきい値(実効使用電
流のしきい値)とを比較する。上述した通り、実効使用電
流のしきい値は、施工現場(削孔される地盤)の状況、使用する機器、その他の条件により、ケース・バイ・ケースに決定される。
ステップS1で演算された実効使用電
流が、しきい値以上であれば(ステップS2がYES)、ステップS3に進み、しきい値未満であれば(ステップS2がNO)、ステップS4に進む。
【0035】
ステップS3(ステップS1で演算された実効使用電
流がしきい値以上の場合)では、比較ブロック53により、削孔用ロッド11の先端が支持基盤になり得る層GBに「到達した」と判断する。そして制御を終了する。
一方、ステップS4(ステップS1で演算された実効使用電
流がしきい値未満の場合)では、削孔用ロッド11は支持基盤になり得る層GBに未だ「到達していない」と判断して、削孔を続行するべくステップS1まで戻る。そして、ステップS1以降を繰り返す。
【0036】
ここで、
図5におけるステップS1の「実効使用電
流の演算」の詳細を、主として
図6を参照して、併せて
図2、
図3をも参照して説明する。
図6において、ステップS11では、電
流メータEMから
の電流値に関するデー
タ及びスケール140からのデータ(スケールデータ:
図2の領域αや領域ε2の様に、未削孔地盤を削孔する場合の時間を決定するのに必要なデータ)を読み込んで、コントロールユニット50の実効使用電
流演算ブロック51に入力する。そしてステップS12に進む。
ステップS12では、スケール140からのデータ(スケールデータ)とタイマ54の計時結果とに基づいて、「未削孔地盤を削孔する時間」(有効な削孔に費やした「時間」:例えば、
図2の領域αや領域ε2を削孔する時間)を決定する。
【0037】
図2を参照して上述した様に、実効使用電
流の演算で用いられる「未削孔地盤を削孔する時間」は、未削孔領域(地盤中のそれまでに削孔されていない領域:例えば、
図2の領域α、ε2)を削孔する時間であり、既に削孔された領域(
図2の領域γ、ε1)を上下動する時間は含めない。
未削孔領域(例えば、
図2の領域α、ε2)を削孔しているのか、あるいは、既に削孔された領域(
図2の領域ε1)を上下動しているのかを判断するには、
図3で示すスケール140を用いる。
ステップS12で、「未削孔地盤を削孔する時間」(有効な削孔に費やした「時間」:例えば、
図2の領域αや領域ε2等を削孔する時間:
図2において短い横線が多数付けられている領域の削孔に費やした時間)を決定する態様を、より詳細に説明する。
【0038】
図2において、削孔用ロッド11及びシリンダ機構130のピストンが下降して上昇する一つのサイクルにおいて、削孔用ロッド11が最も深度が深い位置(例えば
図2の位置β)となった際にはシリンダ機構130のピストンも、当該1つのサイクルにおいて最も下方の位置となり、その位置をスケール140(
図3)で計測する。シリンダ機構130のピストンの位置を「PS1(図示せず)」とする。
次のサイクル(シリンダ機構130のピストンの下降/上昇のサイクル)で下降する際(
図2の位置δ〜位置E間の領域)において、既に削孔された領域(
図2の領域ε1)を下降している間は、スケール140で計測されるシリンダ機構130のピストンの位置は、上記位置PS1よりも上方の位置となる。
図6のステップS12では、スケール140で計測されるシリンダ機構130のピストンの位置が、上記位置PS1よりも上方の位置となっている間は、「実効使用電
流」における「未削孔地盤を削孔している時間(実際に削孔している時間)」には包含しない。
スケール140で計測されるシリンダ機構130のピストンの位置が上記位置PS1以下(位置PS1と同一深度か、それよりも深い位置)となれば、「地盤中の未削孔領域を削孔している(
図2の領域ε2である)」と判断して、「実効使用電
流」における「未削孔地盤を削孔している時間」として計時する。
この様にして、
図6のステップS12において、「有効な削孔に費やされた『時間』」あるいは「未削孔地盤を削孔している時間」を決定する。
【0039】
ステップS13では、ステップS11の「電流値」とステップS12で決定された「時間」(未削孔地盤を削孔している時間)とを乗算して、実効使用電
流値(=電流値×「未削孔地盤を削孔している時間」)を演算する。
ステップS13で実効使用電
流値を演算したならば、
図5のステップS2へ進み、支持層となり得る地層GB(
図1参照)まで削孔する制御(支持層となり得る地層GBに到達したか否かを判断する制御)を実行する。
【0040】
図示の実施形態による削孔に際して、シリンダ機構130のピストンの位置がシリンダ下死点に到達してしまうと、そのままでは削孔ロッド11を下降させることが出来ないので、当該ピストンをシリンダ機構130のシリンダの上死点近傍まで戻さなければならない。シリンダ機構130のピストンをシリンダ上死点近傍まで戻す手順については、従来技術と同様に行われる。すなわち、削孔用ロッド11をホルダ120で把持して、チャック110を削孔用ロッド11から離隔してシリンダ機構130のピストンを上死点まで上昇させる。そしてチャック110で削孔用ロッド11を把持(チェック)して、ホルダ120による削孔用ロッド11の把持を解除する。
【0041】
図示の実施形態によれば、実効使用電
流を演算し、実効使用電
流がしきい値以上となったならば支持層となり得る層GBまで到達したと判断しているため、削孔用ロッド11の径に比較してビット(図示を省略)の径の増加が僅かであり、施工機100の電動モータ150の抵抗値(電流値)が小さい場合でも、目標となる層GBに到達したか否かを判断することが出来る。
また、例えば泥岩層H3が支持層となり得る層である場合に、砂層H2において礫が存在しても実効使用電
流は有意には増大しないので、砂層H2中の礫が存在する箇所を泥岩層H3であると誤判断をすることがなく、支持層となる泥岩層H3に到達したか否かを判断することができる。
【0042】
ここで実効使用電
流は、削孔用ロッド11を回転させる電動モータ150に供給される電流に、地盤を削孔している時間(実際に削孔している時間)を乗じた数値(実効使用電流=電流×「地盤
を削孔している時間」)であり、既に削孔された領域(
図2の領域γ、ε1)を移動する時間を包含しない。
従って、図示の実施形態では、排泥を促進するために、比較的短い削孔深度で削孔用ロッド11を上下動して地盤を削孔する場合に、実効使用電流の演算に際して、既に削孔された領域(
図2の領域ε1)を下方へ移動する時間を積算してしまうことはなく、実際に削孔している時間のみをパラメータとして実効使用電
流を演算することが出来るので、実効使用電
流を演算することが出来て、支持層となり得る地層GBに到達したか否かの判断を行うことが出来る。
【0043】
図示の実施形態において、削孔用ロッド11を切り継ぐ際に削孔用ロッド11を切り継ぎ直前の位置よりも所定量だけ上昇させる工程を包含すれば、ロッド11先端とボーリング孔Hの底部との間に比較的大きな隙間が形成され、切り継ぎの際に削孔用ロッド11内の水がロッド11先端から流出しても、当該比較的大きな隙間の分だけ流出した水が保有するエネルギーが減衰し、ボーリング孔Hの底部に衝突する速度が遅くなる。そのため、当該底部近傍の地盤を緩めてしまう等の悪影響が減少する。
【0044】
図示の実施形態では、実効使用電
流をパラメータとしているが、その他のパラメータを用いて、支持層GBとなり得る層まで到達したか否かについて、総合的に判断することが可能である。
図7は、その様な変形例(実施形態の変形例)を示している。係る変形例の構成については、
図3を参照して説明したのと同様である。
変形例により、支持層GBとなり得る層まで到達したか否かを判定する制御あるいは手順について、主として
図7により、
図3をも参照しつつ説明する。
【0045】
図7において、先ず、コントロールユニット50(
図3)により、スケール指針134からの情報とタイマ54の計時データから決定された「有効な削孔に消費された時間」から、削孔速度を演算する(ステップS11)。
「実効使用電
流=電流×未削孔地盤を削孔している時間」であり、削孔時間が長ければ、実効使用電
流は大きくなる。そして、削孔時間が長ければ、削孔速度は遅くなる。そのため
図7で示す変形例では、最初に削孔速度をパラメータとして、その後、実効使用電
流をパラメータとしている。そのため、削孔速度を演算(ステップS11)した後、ステップS12では、演算された削孔速度が削孔速度のしきい値以下であるか否かを判断する。
ここで、削孔速度のしきい値についても、施工現場(削孔される地盤)の状況、使用する機器、その他の条件により、ケース・バイ・ケースで決定される。
【0046】
ステップS11で演算された削孔速度がしきい値以下であれば(ステップS12がYES)ステップS13に進み、しきい値よりも速ければ(ステップS12がNO)ステップS16に進む。
ステップS16(ステップS11で演算された削孔速度がしきい値よりも速い場合)では、未だに支持基盤になりうる層GBには到達していないと判断して、ステップS11に戻る。
ステップS13(ステップS11で演算された削孔速度がしきい値以下である場合)では実効使用電
流を演算し、しきい値と比較する(ステップS14)。
【0047】
ステップS13で演算された実効使用電
流がしきい値以上であれば(ステップS14がYES)、換言すれば、削孔速度がしきい値以下であり且つ実効使用電
流がしきい値以上であれば、支持基盤になりうる層GBに到達したと判断する(ステップS15)。
ステップS13で演算された実効使用電
流がしきい値未満であれば(ステップS14がNO)、支持基盤になりうる層GBには到達していないと判断して(ステップS16)、ステップS11に戻る。
なお、
図7のステップS13〜S16は、
図6のステップS1〜S4と同一である。
【0048】
図7の第2実施形態によれば、掘削速度と実効使用電
流の2種類のパラメータを用いて、支持層GBとなり得る層まで到達したか否かを総合的に判断することが出来る。
また、実効使用電
流の演算は、掘削速度が削孔速度がしきい値以下である制御サイクルのみ行なえば良いので、その分、自動制御におけるコントロールユニット50の負担が軽くなる。
図7の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、
図1〜
図6で説明した実施形態と同様である。
【0049】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、図示の実施形態では、支持層となり得る地層に到達したか否かを判断するパラメータとして実効使用電
流を用いているが、係るパラメータとして電流値を採用することも可能である。
また、図示の実施形態において、コントロールユニット50に代えて、オペレータが判断、操作を実行することが可能である。