【実施例】
【0021】
(実施例1)
上記ソレノイド装置およびソレノイド制御システムに係る実施例について、
図1〜
図9を用いて説明する。
図1に示すごとく、本例のソレノイド装置1は、通電により磁束Φを発生する第1電磁コイル2a及び第2電磁コイル2bと、第1プランジャ3aと、第2プランジャ3bと、第1固定コア5aと、第2固定コア5bと、ヨーク4とを備える。第1プランジャ3aは、第1電磁コイル2aへの通電に伴って進退する。第2プランジャ3bは、第2電磁コイル2bへの通電に伴って進退する。
【0022】
第1固定コア5aは、第1プランジャ3aの進退方向(Z方向)において第1プランジャ3aに対向する位置に配されている。第2固定コア5bは、第2プランジャ3bの進退方向(Z方向)において第2プランジャ3bに対向する位置に配されている。ヨーク4には第1ヨーク4aと第2ヨーク4bとがある。
図2、
図3に示すごとく、第1ヨーク4aと第1プランジャ3aとの間には磁束Φが流れる。また、
図4に示すごとく、第1ヨーク4aと第2プランジャ3bとの間にも磁束Φが流れる。第2ヨーク4bは、第1ヨーク4aと第1固定コア5aと第2固定コア5bとに接続している。
【0023】
図1に示すごとく、2つの電磁コイル2に両方とも通電しない両非通電状態では、第1プランジャ3aと第1固定コア5aとの間、および第2プランジャ3bと第2固定コア5bとの間に、それぞれギャップG(G1,G2)が形成されている。
【0024】
図2、
図3に示すごとく、第1電磁コイル2aに通電した状態においては、第1電磁コイル2aの磁束Φが第1磁気回路C1に流れ、これによって生じた磁力により、第1プランジャ3aを第1固定コア5aに吸引する。第1磁気回路C1は、2つの固定コア5a,5bのうち第1固定コア5aのみを含む磁気回路である。第1磁気回路C1は、第1固定コア5aと第1プランジャ3aと第1ヨーク4aと第2ヨーク4bとからなる。
【0025】
また、
図4に示すごとく、第2電磁コイル2bに通電した状態においては、第2電磁コイル2bの磁束Φが第2磁気回路C2に流れ、これによって生じた磁力により第2プランジャ3bを第2固定コア5bに吸引する。第2磁気回路C2は、2つの固定コア5a,5bのうち第2固定コア5bのみを含む磁気回路である。第2磁気回路C2は、第2固定コア5bと第2プランジャ3bと第1ヨーク4aと第2ヨーク4bとからなる。
【0026】
図5に示すごとく、2つの電磁コイル2に両方とも通電した両通電状態では、第1電磁コイル2aの磁束Φが第1磁気回路C1を流れ、第2電磁コイル2bの磁束Φが第2磁気回路C2を流れる。これによって生じる磁力により、第1プランジャ3aを第1固定コア5aに吸引すると共に、第2プランジャ3bを第2固定コア5bに吸引する。また、第1電磁コイル2aの磁束Φの一部が第3磁気回路C3を流れる。第3磁気回路C3は、2つの固定コア5a,5bを両方とも含む磁気回路である。第3磁気回路C3は、第1固定コア5aと第1プランジャ3aと第1ヨーク4aと第2プランジャ3bと第2固定コア5bと第2ヨーク4bとからなる。
【0027】
両通電状態(
図5参照)から、
図6に示すごとく、第1電磁コイル2aへの通電を維持したまま第2電磁コイル2bへの通電を停止したときには、第2電磁コイル2bの磁束Φが消滅する。そして第1電磁コイル2aの磁束Φが、第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とを流れ続ける。これによって生じる磁力により、第1プランジャ3aを第1固定コア5aに吸引しかつ第2プランジャ3bを第2固定コア5bに吸引した状態を維持するよう構成されている。
【0028】
本例のソレノイド装置1は、電磁継電器10に使用されている。電磁継電器10には、2つのスイッチ19(19a,19b)を形成してある。
図1に示すごとく、個々のスイッチ19は、固定接点13と、可動接点14と、固定接点13を支持する金属製の固定接点支持部15と、可動接点14を支持する金属製の可動接点支持部16とからなる。可動接点支持部16には接点側ばね部材12が取り付けられている。この接点側ばね部材12は、可動接点支持部16を固定接点支持部15側へ押圧している。
【0029】
また、電磁コイル2にはコイル側ばね部材11が設けられている。コイル側ばね部材11は、プランジャ3(第1プランジャ3aおよび第2プランジャ3b)をスイッチ19側へ押圧している。
【0030】
図3に示すごとく、第1プランジャ3aが第1固定コア5aに吸引されると、接点側ばね部材12の押圧力により、可動接点支持部16が固定接点支持部15側へ押圧される。これにより、第1スイッチ19aがオン状態となる。
【0031】
また、
図1に示すごとく、第1電磁コイル2aへの通電を停止すると、磁束Φが消滅し、コイル側ばね部材11aの押圧力により、第1プランジャ3aが可動接点支持部16側へ押圧される。そして、第1プランジャ3に取り付けた絶縁部300が可動接点支持部16に当接し、接点側ばね部材12の押圧力に抗して、可動接点支持部16を固定接点支持部15から離隔させる。これにより、第1スイッチ19aがオフ状態となる。なお、第2スイッチ19bも同様に、第2電磁コイル2bへの通電または通電停止を切り替えることにより、オン状態またはオフ状態を切り替えるようになっている。
【0032】
本例の電磁継電器10は、
図9に示す回路に用いられる。同図に示すごとく、本例では、直流電源7と電子機器73とを繋ぐ電力線76に電磁継電器10を設けてある。電力線76は、直流電源7の正電極と電子機器73とを繋ぐ正側配線74と、直流電源7の負電極と電子機器73とを繋ぐ負側配線75とからなる。正側配線74と負側配線75との間には、平滑コンデンサ71を接続してある。
【0033】
負側配線75には第1スイッチ19aを設けてあり、正側配線74には第2スイッチ19bを設けてある。また、電力線76には、電流センサ79が取り付けられている。電流センサ79は制御回路部70に接続している。この制御回路部70によって、スイッチ19a,19bのオンオフを制御している。
また、ソレノイド装置1と制御回路部70とによって、本発明のソレノイド制御システム100が構成されている。
【0034】
本例の制御回路部70は、電子機器73を起動する前に、スイッチ19a,19bが溶着しているか否かを確認する。すなわち、まず制御回路部70が、第1電磁コイル2aのみ通電するよう制御する。これにより、第1スイッチ19aのみがオンになる(
図3参照)。このとき、電流センサ79によって電流が検知されなければ、第2スイッチ19bは溶着していないと判断する。その後、第1スイッチ19aをオフし、第2電磁コイル2bのみ通電する。これにより、第2スイッチ19bのみがオンになる(
図4参照)。このとき、電流センサ79によって電流が検知されなければ、第1スイッチ19aは溶着していないと判断する。これら2個のスイッチ19a,19bが両方とも溶着していないことを確認した後、2個の電磁コイル2a,2bに通電し、2個のスイッチ19a,19bを両方ともオンする(
図5参照)。その後、第1電磁コイル2aへの通電を維持したまま、第2電磁コイル2bへの通電を停止する(
図6参照)。この状態で、2個のスイッチ19a,19bをオンし続ける。そして、2個のスイッチ19a,19bを通じて、電子機器63に電力を供給する。
【0035】
一方、
図1に示すごとく、2つの電磁コイル2a,2bのどちらにも通電しない両非通電状態では、第1プランジャ3aと第1固定コア5aとの間に第1ギャップG1が形成されている。また、第2プランジャ3bと第2固定コア5bとの間に第2ギャップG2が形成されている。したがって、この両非通電状態では、第1磁気回路C1(
図2参照)におけるギャップGの数は、第1ギャップG1の1個のみである。また、第3磁気回路C3(
図5参照)におけるギャップGの数は、第1ギャップG1と第2ギャップG2との2個である。そのため、両非通電状態では、第1磁気回路C1の磁気抵抗は、第3磁気回路C3の磁気抵抗よりも小さい。
また、両非通電状態では、第2磁気回路C2(
図4参照)におけるギャップGの数は、第2ギャップG1の1個のみである。そのため、両非通電状態では、第2磁気回路C2の磁気抵抗は、第3磁気回路C3の磁気抵抗よりも小さい。
【0036】
図2に示すごとく、両非通電状態(
図1参照)から、第1電磁コイル2aのみ通電した状態に切り替えると、第1磁気回路C1の方が第3磁気回路C3よりも磁気抵抗が小さいため、第1電磁コイル2aの磁束Φは殆ど第1磁気回路C1に流れる。そのため、
図3に示すごとく、第1プランジャ3aは第1固定コア5aに吸引されるが、第2プランジャ3bは第2固定コア5bに吸引されない。
【0037】
同様に、
図4に示すごとく、両非通電状態(
図1参照)から、第2電磁コイル2bのみ通電した状態に切り替えると、第2磁気回路C2の方が第3磁気回路C3よりも磁気抵抗が小さいため、第2電磁コイル2bの磁束Φは殆ど第2磁気回路C2に流れる。そのため、第2プランジャ3bは第2固定コア5bに吸引されるが、第1プランジャ3aは第1固定コア5aに吸引されない。
【0038】
また、
図5に示すごとく、2つの電磁コイル2a,2bのどちらにも通電する両通電状態では、第1電磁コイル2aの磁束Φは第1磁気回路C1を流れ、第2電磁コイル2bの磁束Φは第2磁気回路C2を流れる。これにより磁力が生じ、2つのプランジャ3a,3bが吸引される。このように、2つのプランジャ3a,3bが吸引されると、第1ギャップG1と第2ギャップG2とが無くなり、第3磁気回路C3の磁気抵抗が低下する。したがって、第1電磁コイル2aの磁束Φの一部が第3磁気回路C3を流れるようになる。
【0039】
なお、本例では、2つの電磁コイル2a,2bの間Mにおいて、第1ヨーク4aと第2ヨーク4bとが互いに接続していない。そのため、この間Mにおいて、磁束Φが第1ヨーク4aから第2ヨーク4bへ短絡しないようになっている。これにより、第1電磁コイル2aの磁束Φを第3磁気回路C3へ流すことを可能にしている。
【0040】
また、本例では、両通電状態(
図5参照)において、第3磁気回路C3を流れる第1電磁コイル2aの磁束Φと、第2磁気回路C2を流れる第2電磁コイル2bの磁束Φとが、第2固定コア5bにおいて同じ方向を向くように、第1電磁コイル2aおよび第2電磁コイル2bに流す電流の向きをそれぞれ定めてある。
【0041】
両通電状態(
図5参照)から、
図6に示すごとく、第1電磁コイル2aへの通電を維持しつつ、第2電磁コイル2bへの通電を停止すると、第2磁気回路C2に流れる磁束Φが消滅する。そして、第1電磁コイル2aの磁束Φが、第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とを流れ続けることになる。これにより生じた磁力によって、第1プランジャ3aと第3プランジャ3bとを両方とも吸引し続ける。
【0042】
一方、本例のプランジャ3a,3bは円板状に形成されている。
図1、
図5に示すごとく、プランジャ3が進退すると、プランジャ3の中央部350が固定コア5の先端部510に接離する。また、プランジャ3が進退すると、プランジャ3の周縁部360は第1ヨーク4aに接離する。
【0043】
固定コア5は略円柱形状を呈している。固定コア5の上記先端部510は拡径している。また、
図7に示すごとく、第1ヨーク4aには円形状の貫通穴410(410a,410b)を形成してある。この貫通穴410の内側に、固定コア5の先端部510を配置してある。第1ヨーク4aは平板状に形成されている。
【0044】
図1に示すごとく、第2ヨーク4bは、2つの側壁部420と、底壁部430とを備える。2つの側壁部420は、2つの電磁コイル2a,2bの配列方向(X方向)における、第1ヨーク4aの両端部470に接続している。また、底壁部430は、固定コア5の後端部520に接続している。
【0045】
図8に示すごとく、第2ヨーク4bの底壁部430には、3つのスリット69(69a〜69c)を形成してある。個々のスリット69は、Y方向(X方向とZ方向との双方に直交する方向)に細長い長方形状を呈している。スリット69と、底壁部430の側面460との間の部位は、磁束Φが飽和する磁気飽和部6(6a〜6c)になっている。
図5に示すごとく、磁気飽和部6には、第1磁気回路C1を流れる磁束Φが飽和する第1磁気飽和部6aと、第2磁気回路C2を流れる磁束Φが飽和する第2磁気飽和部6bと、第3磁気回路C3を流れる磁束Φが飽和する第3磁気飽和部6cとがある。
【0046】
本例の作用効果について説明する。本例では、
図5、
図6に示すごとく、両通電状態から、第1電磁コイル2aへの通電を維持したまま第2電磁コイル2bへの通電を停止したとき、第1電磁コイル2aの磁束Φが第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とを流れることにより生じる磁力によって、第1プランジャ3aを第1固定コア5aに吸引しかつ第2プランジャ3bを第2固定コア5bに吸引した状態を維持する。そのため、第2電磁コイル2bに通電しなくても、第1電磁コイル2aへの通電のみによって、2本のプランジャ3a,3bを吸引し続けることができる。したがって、電磁コイルの消費電力を低減することが可能になる。
【0047】
また、本例では、両非通電状態(
図1参照)から、第1電磁コイル2aのみ通電した状態(
図3参照)に切り替えると、第2プランジャ3bを吸引することなく、第1プランジャ3aのみを第1固定コア5aに吸引することができる。つまり、上述したように、両非通電状態では、第1磁気回路C1の方が第3磁気抵抗よりも磁気抵抗が小さい。したがって、両非通電状態から、第1電磁コイル2aのみ通電した状態(
図3参照)に切り替えると、第1電磁コイル2aの磁束Φは主に第1磁気回路C1を流れ、磁気抵抗が大きい第3磁気回路C3には殆ど流れない。そのため、第2プランジャ3bを吸引することなく、第1プランジャ3aのみを第1固定コア5aに吸引することが可能になる。
同様に、両非通電状態(
図1参照)から、第2電磁コイル2bのみ通電した状態(
図4参照)に切り替えると、第1プランジャ3aを吸引することなく、第2プランジャ3bのみを第2固定コア5bに吸引することができる。
【0048】
また、本例では
図1に示すごとく、第1磁気回路C1に、該第1磁気回路C1を流れる磁束Φが飽和する第1磁気飽和部6aを形成してある。
そのため、両通電状態の後、第2電磁コイル2bへの通電を停止したとき(
図6参照)に、第1電磁コイル2aの磁束Φを使って、2つのプランジャ3a,3bを確実に吸引し続けることができる。すなわち、第1磁気飽和部6aを形成すると、第1磁気回路C1に流れる磁束Φの量を制限できるため、磁束Φが第1磁気回路C1のみに流れすぎず、第3磁気回路C3にも十分に流れるようになる。そのため、第1電磁コイル2aの磁束Φを第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とに均等に流しやすくなり、2つのプランジャ3a,3bを吸引する力を均等にしやすくなる。そのため、2つのプランジャ3a,3bを両方とも吸引し続けやすくなる。
【0049】
また、本例では、第3磁気回路C3に、該第3磁気回路C3を流れる磁束Φが飽和する第3磁気飽和部6cを形成してある。
そのため、第1プランジャ3aのみを吸引する動作を行いやすくなる。すなわち、両非通電状態から、第1電磁コイル2aのみ通電する状態(
図3参照)に切り替えると、上述したように第1電磁コイル2aの磁束Φは主に第1磁気回路C1を流れるが、第2ギャップG2が小さい場合等には、磁束Φの一部が第3磁気回路C3を流れ、第2プランジャ3bが吸引されてしまうことがある。そのため第3磁気飽和部6cを形成しておくと、この場合でも、第1電磁コイル2aの磁束Φが第3磁気回路C3を流れにくくなり、第2プランジャ3bを吸引することなく第1プランジャ3aのみを確実に吸引することが可能になる。
【0050】
また、本例のように第2磁気飽和部6bを形成しておくと、第1電磁コイル2aのみに通電して2つのプランジャ3a,3bを吸引し続ける動作を行いやすくなる。すなわち、
図7に示すごとく、第1ヨーク4aの貫通穴410bの周囲には、磁束Φが流れる部分415が存在するため、第1電磁コイル2aの磁束Φはこの部分415を通って第2ヨーク4bに流れることがある。そのため、仮に、第2磁気飽和部6bを形成しなかったとすると、第1電磁コイル2aのみ通電して2つのプランジャ3a,3bを吸引し続けるとき(
図6参照)に、第1電磁コイル2aの磁束Φが上記部分415を通り、第2ヨーク4bへ流れる可能性がある。したがって、第3磁気回路C3に流れる磁束Φの量が減ってしまう可能性がある。そのため、第2磁気飽和部6bを形成しておけば、磁束Φが、上記部位415を含む経路を流れにくくなる。これにより、第3磁気回路C3に流れる磁束Φの量が低減することを抑制でき、第2プランジャ3bを強い磁力で吸引することが可能になる。
【0051】
なお、第1磁気飽和部6aは、
図5に示すごとく、第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とが重複しない部位に形成することが好ましい。すなわち、例えば第1固定コア5aのように、第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とが重複する部位に第1磁気飽和部6aを形成すると、この2つの磁気回路C1,C3に十分に磁束Φを流せなくなる場合が生じる。
同様に、第2磁気飽和部6bは、第2磁気回路C2と第3磁気回路C3とが重複しない部位に形成することが好ましい。すなわち、例えば第2固定コア5bのように、第2磁気回路C2と第3磁気回路C3とが重複する部位に第2磁気飽和部6bを形成すると、この2つの磁気回路C2,C3に十分に磁束Φを流せなくなる場合が生じる。
また、第3磁気飽和部6cも、第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とが重複しない部位に形成することが好ましい。
【0052】
なお、「磁気飽和する」とは、BHカーブの磁気飽和領域に入ったことを意味する。磁気飽和領域とは、磁束密度が、飽和磁束密度の50%以上になる領域と定義することができる。また、飽和磁束密度とは、磁性体に外部から磁界を加え、それ以上外部から磁界を加えても磁化の強さが増加しない状態における磁束密度である。
【0053】
また、本例のソレノイド制御システム100では、両通電状態(
図5参照)において、第3磁気回路C3を流れる第1電磁コイル2aの磁束Φと、第2磁気回路C2を流れる第2電磁コイル2bの磁束Φとが、第2固定コア5bにおいて同じ方向を向くように、上記制御回路部70が、第1電磁コイル2aおよび第2電磁コイル2bに流す電流の向きをそれぞれ制御している。
したがって、両通電状態では、2つの電磁コイル2a,2bの磁束Φが第2固定コア5bにおいて強め合う。そのため、第2プランジャ3bに作用する磁力を強くすることができる。また、両通電状態では、第2電磁コイル2bの磁束Φも第3磁気回路C3を流れる。上記構成にすると、第3磁気回路C3に流れる第2電磁コイル2bの磁束Φと、第1磁気回路C1に流れる第1電磁コイル2aの磁束Φとが、第1固定コア5aにおいて同じ方向を向くようになる。そのため、第1プランジャ3aも強い磁力で吸引することが可能になる。
【0054】
以上のごとく、本例によれば、個々のプランジャを個別に固定コアに吸引でき、かつ、複数のプランジャを同時に吸引する際には、電磁コイルの消費電力を小さくすることができるソレノイド装置と、ソレノイド制御システムを提供することができる。
【0055】
なお、本例では、両非通電状態から、第1電磁コイル2aのみ通電する状態に切り替えたときに、第1プランジャ3aのみ吸引し、両非通電状態から、第2電磁コイル2bのみ通電する状態に切り替えたときに、第2プランジャ3bのみ吸引するようにした(
図3、
図4参照)が、この動作の仕方を変更することもできる。例えば、両非通電状態から、第1電磁コイル2aのみ通電する状態に切り替えたときには第1プランジャ3aのみ吸引し、両非通電状態から、第2電磁コイル2bのみ通電する状態に切り替えたときに、第1プランジャ3aと第2プランジャ3bとの双方を吸引するように構成してもよい
【0056】
また、本例では、
図8に示すごとく、スリット69を形成することにより、磁気飽和部6を形成したが、底壁部430を部分的に細くしたり、磁束が流れにくい材料を用いたりすることにより、磁気飽和部6を形成してもよい。
【0057】
また、本例では
図7に示すごとく、第1ヨーク4aの貫通穴410bの近傍に、磁束Φが流れる部分415が存在する。第1電磁コイル2aに通電すると、第1電磁コイル2aの磁束Φの一部は、第1固定コア5aからこの部分415に流れ、第2ヨーク4bに移り、そして第1固定コア5aに戻る。この経路が、第4磁気回路になっている。
【0058】
(実施例2)
以下の実施例においては、図面に用いた符号のうち、実施例1において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、実施例1と同様の構成要素等を表す。
【0059】
本例は、磁気飽和部6の数を変更した例である。
図10に示すごとく、本例では第1磁気飽和部6aと第2磁気飽和部6bのみを形成し、第3磁気飽和部6cを形成していない。
【0060】
このようにすると、磁気飽和部6の数が少ないため、ヨーク4の加工を行いやすくなる。なお、本例では、両非通電状態から、第1電磁コイル2aのみ通電する状態に切り替えて、第1プランジャ3aのみ吸引するとき(
図3参照)に、第3磁気回路C3に磁束Φが多く流れすぎ、第2プランジャ3bも吸引されてしまう可能性が考えられる。この場合には、ばね部材11、12のばね定数を最適化することができる。この最適化により、第1電磁コイル2aへの通電のみによって、第1プランジャ3aのみを吸引するように調整することができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0061】
(実施例3)
本例は、磁気飽和部6の数を変更した例である。
図11に示すごとく、本例では、第3磁気飽和部6cのみを形成し、第1磁気飽和部6aと第2磁気飽和部6bとを形成していない。
【0062】
このようにすると、磁気飽和部6の数が少ないため、ヨーク4の加工を行いやすくなる。なお、本例では、両通電状態から、第1電磁コイル2aへの通電を維持しつつ第2電磁コイル2bへの通電を停止(
図6参照)して、2つのプランジャ3a,3bを吸引し続けるときに、第1磁気回路C1に第1電磁コイル2aの磁束Φが流れすぎ、第2プランジャ3bを充分に吸引できない可能性が考えられる。この場合には、ばね部材11、12のばね定数を最適化することができる。この最適化により、第1電磁コイル2aへの通電のみによって、2つのプランジャ3a,3bを両方とも吸引し続けるように調整することができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0063】
(実施例4)
本例は、第2電磁コイル2bの形状を変更した例である。
図12に示すごとく、本例では、第2電磁コイル2bの巻数を、第1電磁コイル2aの巻数よりも少なくしてある。本例では、第2電磁コイル2bの巻数は、第1電磁コイル2aの巻数の半分以下にしてある。また、本例では、2つのコイル2a,2bに両方とも通電する両通電状態において、第2電磁コイル2bに、第1電磁コイル2aよりも多く電流を流している。これにより、2つの電磁コイル2a,2bの起磁力を略等しくしてある。
【0064】
本例の作用効果について説明する。本例では、第2電磁コイル2bに用いる導線の使用量を減らすことができ、第2電磁コイル2bの製造コストを低減することができる。すなわち、上述したように、両通電状態の後、第2電磁コイル2bへの通電を停止して、第1電磁コイル2aの磁束Φのみを使って2本のプランジャ3a,3bを吸引し続ける。したがって、第2電磁コイル2bに電流を流す時間は比較的短い。また、本例では、第2電磁コイル2bに第1電磁コイル2aよりも多くの電流を流すことにより、第2電磁コイル2bの起磁力と第1電磁コイル2aの起磁力とを殆ど同じにしてある。このようにすると、第2電磁コイル2bに流れる電流が多くなるが、上述したように、第2電磁コイル2bに電流を流す時間は短いため、第2電磁コイル2bが消費する電力量は少なくてすむ。したがって、消費電力量を増大させることなく、第2電磁コイル2bの巻数を減らすことができ、第2電磁コイル2bの製造コストを低減することが可能になる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0065】
(実施例5)
本例は、
図13、
図14に示すごとく、電磁コイル2a,2bの通電方法を変更した例である。
図13に示すごとく、第1電磁コイル2aに通電して第1プランジャ3aのみを吸引するときに、第1電磁コイル2aの磁束Φは主に第1磁気回路C1を流れるが、磁束Φの一部が第3磁気回路C3を流れることがある。ここで仮に、第3磁気回路C3に流れる磁束Φをそのままにしておくと、第2プランジャ3bが吸引される可能性がある。そこで本例では、第1電磁コイル2aから発生し第3磁気回路C3を流れる磁束Φのうち、第2固定コア5bと第2プランジャ3bとの間を流れる部分を、第2電磁コイル2bの磁束Φによって打ち消すように、第2電磁コイル2bに電流を流すようにした。これにより、第2プランジャ3bを吸引することなく、第1プランジャ3aのみを確実に吸引することが可能になる。なお、第2電磁コイル2bにあまり多く電流を流すと、第2プランジャ3bが吸引されてしまうため、電流量を少なくしている。
【0066】
同様に本例では、
図14に示すごとく、第2電磁コイル2bに通電して第2プランジャ3bのみを吸引するときに、第1電磁コイル2aにも僅かに電流を流している。つまり、第2電磁コイル2bから発生し第3磁気回路C3を流れる磁束Φのうち、第1固定コア5aと第1プランジャ3aとの間を流れる部分を、第1電磁コイル2aの磁束Φによって打ち消すように、第1電磁コイル2aに電流を流している。これにより、第2プランジャ3bのみを確実に吸引できるようにしてある。
【0067】
また、本例では、第3磁気飽和部6cを形成していない。これは、例えば
図13に示すごとく、第1プランジャ3aを吸引するときに、第1電磁コイル2aの磁束Φが第3磁気回路C3に流れても、これを第2電磁コイル2bの磁束Φによって打ち消すことができるため、第1電磁コイル2aの磁束が第3磁気回路C3に流れることを抑制するための第3磁気飽和部6cを形成する必要がないからである。また、第3磁気飽和部6cを形成しなくてすむため、第3磁気回路C3の磁気抵抗と第1磁気回路C1の磁気抵抗を等しくするために第1磁気飽和部6aを形成する必要もなくなる。そのため、第1磁気回路C1と第3磁気回路C3の磁気抵抗を小さくすることができる。したがって、両通電状態にした後に第2電磁コイル2bへの通電を停止したとき(
図15参照)に、第1電磁コイル2aの磁束Φが第1磁気回路C1と第3磁気回路C3とを流れやすくなる。そのため、強い磁力によって、第1プランジャ3aと第2プランジャ3bとを吸引し続けることができる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0068】
(実施例6)
本例は、プランジャ3の形状を変更した例である。
図16に示すごとく、本例のプランジャ3はZ方向に細長い形状をしている。また、固定コア5のZ方向長さは、実施例1と比べて短くなっている。固定コア5は、電磁コイル2の内側に配されている。第1ヨーク4aには、2つのプランジャ挿通孔475を形成してある。このプランジャ挿通孔475に、プランジャ3を挿通してある。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0069】
(実施例7)
本例は、ヨーク4の形状を変更した例である。本例では
図17に示すごとく、第2電磁コイル2bに隣接する位置において、第1ヨーク4aと第2ヨーク4bとが接続していない。第2ヨーク4bは、固定コア5a,5bに接続する底部ヨーク491と、該底部ヨーク491から立設する側壁ヨーク490を備える。この側壁ヨーク490が、第1電磁コイル2aに隣接する位置において、第1ヨーク4aに接続している。
【0070】
両非通電状態から、
図18に示すごとく、第1電磁コイル2aのみ通電する状態に切り替えると、第1電磁コイル2aの磁束Φは、第1固定コア5aと第1プランジャ3aと第1ヨーク4aと側壁ヨーク490と底部ヨーク491とからなる第1磁気回路C1を流れる。これにより、第1プランジャ3aが吸引される。
【0071】
また、両非通電状態から、
図19に示すごとく、第2電磁コイル2bのみ通電する状態に切り替えると、第2電磁コイル2bの磁束Φは、第2固定コア5bから底部ヨーク491、側壁ヨーク490、第1ヨーク4aへ流れる。そして、第1ヨーク4aの、貫通穴410a(
図7参照)の近傍の部位416を通って、第2プランジャ3bへ流れる。この経路が、第2磁気回路C2になっている。磁束Φが第2磁気回路C2を流れることによって生じた磁力により、第2プランジャ3bを第2固定コア5bへ吸引する。
【0072】
図20に示すごとく、両通電状態では、第1電磁コイル2aの磁束Φの一部が第3磁気回路C3を流れると共に、第2電磁コイル2bの磁束Φも第3磁気回路C3を流れる。これにより生じた磁力によって、2つのプランジャ3a,3bをそれぞれ吸引する。
【0073】
図21に示すごとく、両通電状態の後、第1電磁コイル2aへの通電を維持しつつ第2電磁コイル2bへの通電を停止すると、第1電磁コイル2aの磁束Φの一部が第3磁気回路C3を流れ続ける。これにより、2つのプランジャ3a,3bを吸引した状態を維持する。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0074】
なお、本例では、第2ヨーク4bに第1磁気飽和部6aのみを形成したが、第2磁気飽和部6bを併せて形成してもよい。
【0075】
(実施例8)
本例は、電磁継電器10を用いた回路を変更した例である。
図22に示すごとく、本例では、正側配線74に第1スイッチ19aを設け、負側配線75に第2スイッチ19bを設けてある。また、本例では、プリチャージ抵抗Rとプリチャージスイッチ19cとを直列接続した直列体180を、第2スイッチ19bに並列接続してある。第1スイッチ19aと第2スイッチ19bとは、電磁継電器10(ソレノイド装置1)内に収容されている。プリチャージスイッチ19は、上記電磁継電器10とは別部材として構成されたプリチャージ用電磁継電器150内に収容されている。
【0076】
本例では、電子機器73(DC−DCコンバータ)の駆動を開始する前に、スイッチ19a〜19cが溶着しているか否かをチェックする。溶着のチェックを行う際には、まず
図22に示すごとく、制御回路部7を用いて、3つのスイッチ19a〜19cのうち第1スイッチ19aのみをオンする。このとき、仮に第2スイッチ19b又はプリチャージスイッチ19cが溶着していたとすると、直流電源7から電流が流れ、平滑コンデンサ71が充電される。そのため、電流センサ79によって電流が検出される。制御回路部7は、電流センサ79が電流を検出した場合には、2つのスイッチ19b,19cのいずれか一方が溶着していると判断し、電子機器73の駆動を開始しないように制御する。
【0077】
電流センサ79によって電流が検出されず、第2スイッチ19bとプリチャージスイッチ19cとが両方とも溶着していないと判断した場合には、
図23に示すごとく、制御回路部70は、第1スイッチ19aをオフし、次いで、プリチャージスイッチ19cをオンする。このとき、仮に第1スイッチ19aが溶着していたとすると、直流電源7から電流が流れて平滑コンデンサ71が充電される。そのため、電流センサ79によって電流が検出される。したがって、電流を検出した場合には、制御回路部7は、電子機器73の駆動を開始しないように制御する。
【0078】
3つのスイッチ19a〜19cが全て溶着していないと判断した場合には、
図24に示すごとく、第1スイッチ19aとプリチャージスイッチ19cとをオンする。このようにすると、直流電源7から電流Iが流れ、平滑コンデンサ71が充電される。電流Iは、プリチャージ抵抗Rを通るため、大きな電流は流れず、平滑コンデンサ71が徐々に充電される。
【0079】
平滑コンデンサ71の充電が完了すると、電流が流れなくなる。制御回路部7は、電流センサ79によって電流Iが検出されなくなった場合には、
図25に示すごとく、第1スイッチ19aと第2スイッチ19bをオンにし、プリチャージスイッチ19cをオフにする。そして、2つのスイッチ19a,19bを介して、直流電源7の電力を電子機器73に供給する。
【0080】
仮に、平滑コンデンサ71が充電されていないときに、第1スイッチ19aと第2スイッチ19bとをオンすると、平滑コンデンサ71に突入電流が流れて、これらのスイッチ19a,19bが溶着するおそれがある。しかしながら、上述したように、プリチャージ抵抗Rを介して平滑コンデンサ71を予め充電しておけば、2つのスイッチ19a,19bをオンしたときに突入電流が流れなくなる。そのため、これらのスイッチ19a,19bが溶着することを防止できる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0081】
なお、本例では、電流センサ79が電流を検出した場合に、スイッチ19が溶着したと判断しているが、必ずしも電流センサ79を用いなくても良い。例えば、平滑コンデンサ71の電圧を測定する電圧センサを設け、これを用いて溶着の判断をすることもできる。例えば第1スイッチ19aをオンしたときに、第2スイッチ19bやプリチャージスイッチ19cが溶着していると、電流が流れて平滑コンデンサ71の電圧が上昇する。そのため、電圧センサが電圧を検出した場合に、第2スイッチ19bやプリチャージスイッチ19cが溶着していると判断するよう構成することができる。
【0082】
(実施例9)
本例は、固定コア5及びヨーク4の形状を変更した例である。
図26に示すごとく、本例の第1固定コア5aと第2固定コア5bとは一体化して、Z方向に延びる棒状の一体固定コア50を構成している。この一体固定コア50の、Z方向における一方の端部580に、第1プランジャ3aが吸引される。また、一体固定コア50の、Z方向における他方の端部590に、第2プランジャ3bが吸引されるよう構成してある。第1固定コア5aの外側には第1電磁コイル2aが配され、第2固定コア5bの外側には第2電磁コイル2bが配されている。
【0083】
また、本例は、実施例1と同様に、個々のプランジャ3a,3bの進退動作によって、スイッチ19a,19b(図示しない)をオンオフするよう構成してある。
【0084】
図27に示すごとく、ヨーク4は、2個の電磁コイル2a,2bを取り囲むように設けられている。ヨーク4は、第1板状部431と、第2板状部432と、第3板状部433と、第4板状部434とからなる。第1板状部431と第2板状部432は、互いに平行であり、その厚さ方向がZ方向に直交するように配されている。また、第3板状部433と第4板状部434とは、互いに平行であり、その厚さ方向がZ方向に平行になるように配されている。
図26に示すごとく、第3板状部433と第4板状部434には貫通孔450をそれぞれ形成してある。この貫通孔450内に、プランジャ3a,3bの一部が収容されている。また、プランジャ3a,3bは、進退動作すると、その外周縁部390が、第3板状部433又は第4板状部434にそれぞれ接離するよう構成されている。
【0085】
図26、
図27に示すごとく、2つの電磁コイル2a,2bの間には、軟磁性体からなる磁気飽和部6が配されている。磁気飽和部6は、板状に形成されており、第1板状部431と第2板状部432とを接続している。
なお、ソレノイド装置1には、磁気飽和部6を形成した方が好ましいが、必ずしも磁気飽和部6を形成しなくてもよい。また、磁気飽和部6は、ヨークに貫通穴を設けたり、ヨークの一部を細らせたりすることにより、形成することができる。磁気飽和部6は、磁気回路を構成するヨークの断面積を部分的に小さくすることによって形成することが有効である。また、磁気回路上に、磁束Φが流れにくい部材を設けることにより、磁気飽和部6を形成してもよい。磁気回路上にエアギャップを形成し、これを磁気飽和部6としてもよい。
【0086】
本例では
図28に示すごとく、第1プランジャ3aのみを吸引するときには、第1電磁コイル2aに電流を流すと共に、第2電磁コイル2bにも僅かに電流を流す。第1電磁コイル2aから発生した磁束Φは、第1固定コア5aのみを含む第1磁気回路C1を流れる。第1磁気回路C1は、磁気飽和部6を含む回路である。第1電磁コイル2aの磁束Φの一部は、第1固定コア5aと第2固定コア5bとを両方とも含む第3磁気回路C3を流れる。この第3磁気回路C3を流れる磁束Φを、第2電磁コイル2bから発生した磁束Φによって打ち消している。これにより、第2プランジャ3bが吸引されないようにしている。
【0087】
なお、第2電磁コイル2bの磁束Φの一部は、第3磁気回路C3を流れる。第2電磁コイル2bの磁束Φのうち、第3磁気回路C3を流れる部分は、量が少ないため、図示を省略する。
【0088】
また、図示しないが、第2プランジャ3bのみを吸引することも可能である。この場合、第2電磁コイル2bに通電し、第2プランジャ3bを吸引すると共に、第1電磁コイル2aにも僅かに電流を流す。そして、第2コイル2bから発生し第3磁気回路C3を流れる磁束Φを、第1電磁コイル2aの磁束Φによって打ち消す。これにより、第1プランジャ3aが吸引されることを防止し、第2プランジャ3bのみを吸引する。
【0089】
図29に示すごとく、第1プランジャ3aと第2プランジャ3bを両方とも吸引する場合には、2つの電磁コイル2a,2bを両方とも通電する。このようにすると、第1電磁コイル2aから発生した磁束Φが第1磁気回路C1を流れ、これによって生じた磁力により、第1プランジャ3aが吸引される。また、第2電磁コイル2bから発生した磁束Φが第2磁気回路C2を流れ、これによって生じた磁力により、第2プランジャ3bが吸引される。第1電磁コイル2aから発生した磁束Φの一部は、第3磁気回路C3をも流れる。このとき、第3磁気回路C3には、比較的大きな磁束Φが流れる。
【0090】
図30に示すごとく、両通電状態にした後、第1電磁コイル2aへの通電を維持しつつ第2電磁コイル2bへの通電を停止すると、第1電磁コイル2aから発生した磁束Φが第1磁気回路C1を流れると共に、磁束Φの一部が第3磁気回路C3をも流れる。これにより生じた磁力によって、第1プランジャ3aと第2プランジャ3bとをそれぞれ吸引した状態を維持するよう構成されている。
【0091】
本例では上述したように、第1磁気回路C1上に磁気飽和部6を形成してある。そのため、第1電磁コイル2aの磁束Φが磁気飽和部6において磁気飽和し、磁束Φが第3磁気回路C3を流れやすくなっている。
【0092】
2個のプランジャ3a,3bが吸引された後は、コア5(5a,5b)とプランジャ3(3a,3b)との間のギャップGが極小になっている。そのため、小さな起磁力でも大きな磁束Φを流すことができる。したがって、1個の電磁コイル2(本例では第1電磁コイル2a)を用いて、2個のプランジャ3a,3bを吸引し続けることが可能である。
【0093】
なお、図示しないが、両通電状態にした後、第2電磁コイル2bへの通電を維持しつつ、第1電磁コイル2aへの通電を停止した場合でも、第1プランジャ3aと第2プランジャ3bとをそれぞれ吸引し続けることができる。
【0094】
本例の作用効果について説明する。本例では、一体固定コア50に第1プランジャ3aが吸引される向き(図の下側)と、一体固定コア50に第2プランジャ3bが吸引される向き(図の上側)とが互いに反対向きになっている。そのため、例えば外部から強い振動がソレノイド装置1に加わった場合に、この振動によって、2つのプランジャ3a,3bが同時に両方とも一体固定コア50に接近することがなくなる。したがって、ソレノイド装置1に振動が加わっても、この振動によって、2つのスイッチ19a,19b(
図22参照)が同時にオンすることがなくなる。ソレノイド装置1を
図22に示す回路等に利用する場合には、平滑コンデンサ71が充電されていないときに2つのスイッチ19a,19bが同時にオンすると、突入電流が流れてスイッチ19a,19bが溶着する不具合が生じ得るが、本例のソレノイド装置を用いれば、振動が加わっても2つのスイッチ19a,19bが同時にオンしにくいため、このような不具合を防止できる。
その他、実施例1と同様の構成および作用効果を有する。
【0095】
(実施例10)
本例は、電磁コイル2a,2bの構造を変更した例である。本例では、第2電磁コイル2bを構成する導線は、第1電磁コイル2aを構成する導線よりも細い。そのため、第2電磁コイル2bは、第1電磁コイル2aよりも小型であり、軽量である。また、第2電磁コイル2bは、第1電磁コイル2aよりも使用する銅の量が少ないため、製造コストが低い。
【0096】
上述したように、第2電磁コイル2bの導線は、第1電磁コイル2aの導線よりも細いため、電気抵抗が高く、流れる電流が少ない。したがって、第2電磁コイル2bは、第1電磁コイル2aよりも低消費電力で、かつ起磁力が低い。
【0097】
図31に示すごとく、本例では、両非通電状態から、第1電磁コイル2aのみ通電した状態に切り替えると、第1電磁コイル2aから発生した磁束Φによって2つのプランジャ3a,3bを両方とも吸引できるようになっている。すなわち、第1電磁コイル2aの磁束Φが第1磁気回路C1を流れ、これによって生じた磁力により、第1プランジャ3aが吸引される。また、磁束Φの一部は第3磁気回路C3を流れ、これによって生じた磁力によって第2プランジャ3bが吸引される。
【0098】
本例では、第1磁気回路C1上に磁気飽和部6を形成してある。そのため、第1電磁コイル2aの磁束Φが磁気飽和部6において磁気飽和し、磁束Φが第3磁気回路C3を流れやすくなっている。
【0099】
また、
図32に示すごとく、第1電磁コイル2aと第2電磁コイル2bを同時に通電した場合も、2つのプランジャ3a,3bが両方とも吸引される。このとき、第3磁気回路C3を流れる第1電磁コイル2aの磁束Φ1と、第2磁気回路C2を流れる第2電磁コイル2bの磁束Φ2とが、第2プランジャ5bにおいて同じ方向を向くように、各電磁コイル2a,2bに流す電流の向きが定められている。電流の向きは、上述した制御回路部70(
図22参照)によって制御される。
【0100】
図33に示すごとく、第1プランジャ3aのみ吸引する場合には、第1電磁コイル2aに通電し、第2電磁コイル2bにも電流を流す。そして、第1電磁コイル2aから発生し第3磁気回路C3を流れる磁束Φのうち、第2固定コア5bと第2プランジャ3bとの間を流れる部分Φ1を、第2電磁コイル2bの磁束Φ2によって打ち消す。これにより、第1電磁コイル2aの磁束Φ1によって第2プランジャ3bが吸引されることを防止している。
【0101】
なお、第2電磁コイル2bの磁束Φの一部は、第3磁気回路C3を流れる。第2電磁コイル2bの磁束Φのうち、第3磁気回路C3を流れる部分は、量が少ないため、図示を省略する。
【0102】
また、図示しないが、第2プランジャ3bのみを吸引することも可能である。この場合、第2電磁コイル2bに通電し、第2プランジャ3bを吸引すると共に、第1電磁コイル2aにも僅かに電流を流す。そして、第2コイル2bから発生し第3磁気回路C3を流れる磁束Φを、第1電磁コイル2aの磁束Φによって打ち消す。これにより、第1プランジャ3aが吸引されることを防止しつつ、第2プランジャ3bのみを吸引する。
【0103】
また、本例では、両通電状態(
図32参照)から、2つの電磁コイル2a,2bのどちらを通電停止した場合でも、2つのプランジャ3a,3bを両方とも吸引した状態(両吸引状態)を維持できるようになっている。すなわち、両通電状態(
図32参照)から、
図34に示すごとく、第1電磁コイル2aへの通電を維持しつつ第2電磁コイル2bへの通電を停止した場合でも両吸引状態を維持でき、
図35に示すごとく、第2電磁コイル2bへの通電を維持しつつ第1電磁コイル2aへの通電を停止した場合でも両吸引状態を維持できるようになっている。
【0104】
上述したように、第2電磁コイル2bは、第1電磁コイル2aよりも消費電力が少ない。本例では、このような第2電磁コイル2bのみに通電して(
図35参照)両吸引状態を維持できるように構成してあるため、より消費電力を抑制できる。つまり、本例のソレノイド制御システム100は、実施例8(
図22参照)と同様に、制御回路部70によって、その動作が制御されている。制御回路部70には電源81が接続している。電源81から各電磁コイル3a,3bに流れる電流量や向きを、制御回路部70によって制御している。また、電源81には電圧センサ82が設けられている。この電圧センサ82によって測定した、電源81の電圧Vが、予め定められた基準値Vsよりも高い場合には、消費電力が低い第2電磁コイル2bのみに通電して(
図35参照)、両吸引状態を維持するようにしている。これにより、ソレノイド装置1全体の消費電力をより抑制できるようにしてある。また、電源81の電圧Vが上記基準値Vsよりも低い場合は、起磁力が低い第2電磁コイル2bのみに通電すると、充分な起磁力が得られず両吸引状態を維持できなくなるおそれが生じ得る。そのため本例では、電源81の電圧Vが基準値Vsよりも低い場合は、起磁力が高い第1電磁コイル2aのみに通電して(
図34参照)、両吸引状態を維持するようにしてある。これにより、確実に両吸引状態を維持できるようにしている。
【0105】
制御回路部70のフローチャートを
図36に示す。本例では、
図36のフローチャートに示すプログラムを実行する前に、実施例8と同様に、スイッチ19a〜19cの溶着チェック(
図22、
図23参照)と、平滑コンデンサ71のプリチャージ動作(
図24参照)を行う。これらの動作が完了した後、
図36のステップS1を行なう。すなわち、2つの電磁コイル2a,2bを両方とも通電して(
図32参照)、2つのプランジャ3a,3bを両方とも吸引する。その後、ステップS2、S3を続けて行う。ステップS2では、一定時間待機する。また、ステップS3では、電源81の電圧Vが基準値Vsよりも高いか否かを判断する(ステップS3)。
【0106】
ステップS3においてNoと判断した場合は、ステップS6に移動し、第1電磁コイル2aへの通電を維持しつつ第2電磁コイル2bの通電を停止する(
図34参照)。また、ステップS3においてYes、すなわち電源81の電圧Vが基準値Vsよりも高いと判断した場合は、ステップS4に移動し、第2電磁コイル2bへの通電を維持しつつ第1電磁コイル2aの通電を停止する(
図35参照)。
【0107】
このようにステップS3、S4、S6を行うことにより、2個の電磁コイル2a,2bのいずれか一方のみを通電して両吸引状態を維持することが可能となり、ソレノイド装置1全体の消費電力を低減することが可能となる。また、電源81の電圧Vが基準値Vsよりも高い場合には、消費電力が低い第2電磁コイル2bのみに通電するため、さらに消費電力を低減できる。また、電源81の電圧Vが基準値Vsよりも低い場合には、起磁力が高い第1電磁コイル2aに通電するため、確実に両吸引状態を維持することができる。
【0108】
ステップS4の後、ステップS5に移動し、電源81の電圧Vを再び確認する。ここで、電圧Vが基準値Vsよりも高い(Yes)と判断した場合は、プログラムを終了する。また、電圧Vが基準値Vsよりも低い(No)と判断した場合は、ステップS7〜S9を行って、第1電磁コイル2aのみ通電するモードに切り替える。すなわち、ステップS7において、第1電磁コイル2aに通電し、一定時間経過した(ステップS8)後、第1電磁コイル2aへの通電を維持しつつ第2電磁コイル2bへの通電を停止する(ステップS9)。
【0109】
このようにステップS5、S7〜S9を行うと、より確実に両吸引状態を維持することが可能になる。すなわち、ステップS4において、第2電磁コイル2bのみ通電する状態になった後、電源81の電圧Vが基準値Vsよりも低くなった場合には、起磁力が高い第1電磁コイル2aのみ通電する状態に切り替える(ステップS7〜S9)。そのため、電源81の電圧Vが低くなった場合でも両吸引状態を確実に維持することが可能になる。
その他、実施例9と同様の構成および作用効果を有する。
【0110】
(実施例11)
本例は、プランジャ3a,3bの形状を変更した例である。
図37に示すごとく、本例では、ヒンジ型のプランジャ3a,3bを用いている。このプランジャ3a,3bは、ヨーク4に対して回動自在に取り付けられている。また、プランジャ3a,3bにばね部材11を取り付けてある。電磁コイル2a,2bへの通電を停止した場合には、ばね部材11の弾性力によって、プランジャ3a,3bが固定コア5a,5bから離隔する。また、電磁コイル2a,2bに通電すると磁力が発生し、この磁力によって、ばね部材11の弾性力に抗して、プランジャ3a,3bを固定コア5a,5bに吸引するよう構成されている。
その他、実施例10と同様の構成および作用効果を有する。