特許第6236360号(P6236360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236360施工体の強度管理方法及び施工体の強度管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236360
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】施工体の強度管理方法及び施工体の強度管理システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/00 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   E02D1/00
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-120527(P2014-120527)
(22)【出願日】2014年6月11日
(65)【公開番号】特開2016-899(P2016-899A)
(43)【公開日】2016年1月7日
【審査請求日】2016年11月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】594051655
【氏名又は名称】株式会社セントラル技研
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】石井 健嗣
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】北本 幸義
(72)【発明者】
【氏名】吉田 輝
(72)【発明者】
【氏名】川野 健一
(72)【発明者】
【氏名】照井 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】池尻 健
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−001981(JP,A)
【文献】 特開2002−030643(JP,A)
【文献】 特開2009−098055(JP,A)
【文献】 特開2009−228352(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0125158(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/00
E02D 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間の経過に伴って硬化する材料を含む施工体の強度管理方法において、
前記材料の強度と経過時間との関係を含む管理基準関数を準備する準備工程と、
前記施工体の施工から強度取得時間の経過後、質量体を前記施工体に衝突させて前記質量体に印加された加速度の波形を得る波形取得工程と、
Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の前記波形を入力条件として適用し、前記強度取得時間における前記施工体の実測強度を得る実測強度算出工程と、
前記管理基準関数と前記強度取得時間と前記実測強度とを利用して、前記施工体の施工から前記強度取得時間よりも長い強度管理時間だけ経過した後の前記施工体の強度が所定の閾値を満たすか否かを判定する判定工程と、を有する施工体の強度管理方法。
【請求項2】
前記判定工程は、
前記管理基準関数と前記強度取得時間とを利用して管理基準強度を得る管理基準強度算出工程と、
前記実測強度と前記管理基準強度とを互いに比較する比較工程と、を有し、
前記比較工程では、前記実測強度が前記管理基準強度以上である場合に、前記強度管理時間だけ経過した後の前記施工体の強度が所定の閾値を満たすと判定する、請求項1に記載の施工体の強度管理方法。
【請求項3】
前記管理基準関数は、前記材料の強度と経過時間との関係を示す強度特性関数に基づいて準備されると共に、前記強度管理時間において前記所定の閾値以上且つ前記管理時間における推定強度以下の範囲を通り、
前記推定強度は、前記強度特性関数に前記強度管理時間を適用したときの強度である、請求項1又は2に記載の施工体の強度管理方法。
【請求項4】
前記材料は、時間の経過に伴って硬化する改良材を混合した土質材料であり、
前記施工体は、地盤である、請求項1〜3の何れか一項に記載の施工体の強度管理方法。
【請求項5】
時間の経過に伴って硬化する材料を含む施工体の強度管理システムにおいて、
質量体に加速度計が取り付けられた衝撃印加部と、
前記施工体の施工から強度取得時間の経過後、前記質量体を前記施工体に衝突させて前記加速度計で得られる加速度波形を処理するデータ処理部と、を備え、
前記データ処理部は、
前記材料の強度と経過時間との関係を含む管理基準関数を記憶する管理基準関数記録部と、
Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の前記波形を入力条件として適用し、前記強度取得時間における前記施工体の実測強度を得る実測強度算出部と、
前記管理基準関数と前記強度取得時間と前記実測強度とを利用して、前記施工体の施工から前記強度取得時間よりも長い強度管理時間だけ経過した後の前記施工体の強度が所定の閾値を満たすか否かを判定する判定部と、を有する施工体の強度管理システム。
【請求項6】
前記判定部は、
前記管理基準関数と前記強度取得時間とを利用して管理基準強度を得る管理基準強度算出部と、
前記実測強度と前記管理基準強度とを互いに比較する比較部と、を有し、
前記比較部では、前記実測強度が前記管理基準強度以上である場合に、前記強度管理時間だけ経過した後の前記施工体の強度が所定の閾値を満たすと判定する、請求項5に記載の施工体の強度管理システム。
【請求項7】
前記管理基準関数は、前記材料の強度と経過時間との関係を示す強度特性関数に基づいて準備されると共に、前記強度管理時間において前記所定の閾値以上且つ前記管理時間における推定強度以下の範囲を通り、
前記推定強度は、前記強度特性関数に前記強度管理時間を適用したときの強度である、請求項5又は6に記載の施工体の強度管理システム。
【請求項8】
前記材料は、時間の経過に伴って硬化する改良材を混合した土質材料であり、
前記施工体は、地盤である、
請求項5〜7の何れか一項に記載の施工体の強度管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間の経過に伴って硬化する材料を含む施工体の強度管理方法及び施工体の強度管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、原位置において地盤材料の強度特性を測定する強度特性測定方法が記載されている。この方法は、剛性体を一定の高さから落下させ、剛性体が地盤と衝突したときに発生する加速度波形を取得する。そして、加速度波形とHertzの衝撃理論に基づく理論式とを利用して、地盤の強度特性を算出する。この方法によれば、原位置における様々な地盤材料の強度特性を正確かつ効率よく測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−228352号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】山崎孝成、山田正雄、「FEMによる地すべり解析の基礎理論」、日本地すべり学会誌、Vol.41、No.1、pp.74〜77(2004)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
施工体を構築する材料には、材料を形成した後、時間の経過とともに強度特性が変化し、所定時間経過後に設計された強度特性を発現するものがある。このような材料により施工体を構築した場合、施工体の強度特性は、予め決められた設定時間の経過後における強度特性をもって管理している。
【0006】
この設定時間は、数時間から数日にもおよぶ場合がある。しかし、施工現場における工期の観点から、強度特性を管理するために数日の期間にも亘って工事を中断することは困難である。従って、設定時間の経過を待つことなく工事を継続する場合もある。そうすると、設定時間経過後の強度特性が仕様を満たさない場合には、補修工事が必要になるため施工体の施工期間が長期化する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、強度管理時間経過後の強度特性が管理閾値を満たすか否かを予測することにより、施工期間の長期化を抑制可能な施工体の強度管理方法及び施工体の強度管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態は、時間の経過に伴って硬化する材料を含む施工体の強度管理方法である。施工体の強度管理方法は、材料の強度と経過時間との関係を含む管理基準関数を準備する準備工程と、施工体の施工から強度取得時間の経過後、質量体を施工体に衝突させて質量体に印加された加速度の波形を得る波形取得工程と、Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の波形を入力条件として適用し、強度取得時間における施工体の実測強度を得る実測強度算出工程と、管理基準関数と強度取得時間と実測強度とを利用して、施工体の施工から強度取得時間よりも長い強度管理時間だけ経過した後の施工体の強度が所定の閾値を満たすか否かを判定する判定工程と、を有する。
【0009】
この施工体の強度管理方法では、まず、準備工程において管理基準関数を準備する。管理基準関数は、施工体に含まれる材料の強度と経過時間との関係を示している。次に、波形取得工程を実施して、質量体を施工体に衝突させたときに発生する加速度の波形を取得する。次に、Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の波形を適用して、強度取得時間における実測強度を算出する。この工程によれば、施工体の強度を原位置において直接計測して得ることが可能であるため、精度の良い値を得ることができる。
そして、判定工程において、強度管理時間経過後における施工体の強度が閾値を満たすか否かを判定する。この工程によれば、強度取得時間よりも長い強度管理時間の経過を待つことなく、強度管理時間経過後における施工体の強度が閾値を満たすか否かを判定することが可能になる。従って、施工体の強度を評価するために強度管理時間の経過を待つことなく施工を継続することが可能になる。その上、強度管理時間経過後における施工体の強度が満たさないと予測される場合には、強度取得時間において必要な処置を実施することが可能になる。従って、補修に要する期間が短縮化されるため、施工期間の長期化を抑制することができる。
【0010】
また、判定工程は、管理基準関数と強度取得時間とを利用して管理基準強度を得る管理基準強度算出工程と、実測強度と管理基準強度とを互いに比較する比較工程と、を有し、比較工程では、実測強度が管理基準強度以上である場合に、強度管理時間だけ経過した後の施工体の強度が所定の閾値を満たすと判定する。この構成によれば、強度管理時間経過後における施工体の強度が、閾値を上回るか否かを容易に判定することができる。
【0011】
また、管理基準関数は、材料の強度と経過時間との関係を示す強度特性関数に基づいて準備されると共に、強度管理時間において所定の閾値以上且つ管理時間における推定強度以下の範囲を通る。推定強度は、強度特性関数に強度管理時間を適用したときの強度である。この構成によれば、施工体に含まれた材料特性のばらつきを考慮することが可能になる。従って、判定の精度を高めることができる。
【0012】
また、上記材料は、時間の経過に伴って硬化する改良材を混合した土質材料であり、上記施工体は、地盤であってもよい。
【0013】
本発明の別の形態は、時間の経過に伴って硬化する材料を含む施工体の強度管理システムである。施工体の強度管理システムは、質量体に加速度計が取り付けられた衝撃印加部と、施工体の施工から強度取得時間の経過後、質量体を施工体に衝突させて加速度計で得られる加速度波形を処理するデータ処理部と、を備える。データ処理部は、材料の強度と経過時間との関係を含む管理基準関数を記憶する管理基準関数記録部と、Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の波形を入力条件として適用し、強度取得時間における施工体の実測強度を得る実測強度算出部と、管理基準関数と強度取得時間と実測強度とを利用して、施工体の施工から強度取得時間よりも長い強度管理時間だけ経過した後の施工体の強度が所定の閾値を満たすか否かを判定する判定部と、を有する。
【0014】
この施工体の強度管理システムでは、管理基準関数記録部が管理基準関数を記録している。管理基準関数は、施工体に含まれる材料の強度と経過時間との関係を示している。次に、衝撃印加部を用いて質量体を施工体に衝突させ、衝突により発生する加速度の波形を波形入力部を用いて取得する。そして、実測強度算出部により、Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の波形を適用して、強度取得時間における実測強度が算出される。これらの構成によれば、施工体の強度を原位置において直接計測して得ることが可能であるため、精度の良い値を得ることができる。
そして、判定部において、強度管理時間経過後における施工体の強度が閾値を満たすか否かが判定される。この工程によれば、強度取得時間よりも長い強度管理時間の経過を待つことなく、強度管理時間経過後における施工体の強度が閾値を満たすか否かを判定することが可能になる。従って、施工体の強度を評価するために強度管理時間の経過を待つことなく施工を継続することが可能になる。その上、強度管理時間経過後における施工体の強度が満たさないと予測される場合には、強度取得時間において必要な処置を実施することが可能になる。従って、補修に要する期間が短縮化されるため、施工期間の長期化を抑制することができる。
【0015】
また、判定部は、管理基準関数と強度取得時間とを利用して管理基準強度を得る管理基準強度算出部と、実測強度と管理基準強度とを互いに比較する比較部と、を有し、比較部では、実測強度が管理基準強度以上である場合に、強度管理時間だけ経過した後の施工体の強度が所定の閾値を満たすと判定する。この構成によれば、強度管理時間経過後における施工体の強度が、閾値を上回るか否かを容易に判定することができる。
【0016】
また、管理基準関数は、材料の強度と経過時間との関係を示す強度特性関数に基づいて準備されると共に、強度管理時間において所定の閾値以上且つ管理時間における推定強度以下の範囲を通る。推定強度は、強度特性関数に強度管理時間を適用したときの強度である。この構成によれば、施工体に含まれた材料特性のばらつきを考慮することが可能になる。従って、判定の精度を高めることができる。
【0017】
また、上記材料は、時間の経過に伴って硬化する改良材を混合した土質材料であり、上記施工体は、地盤であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の施工体の強度管理方法及び施工体の強度管理システムによれば、強度管理時間経過後の強度特性が管理閾値を満たすか否かを予測することにより、施工期間の長期化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る施工体の強度管理方法の工程を示すフロー図である。
図2図1に示された強度確認工程を示す詳細なフロー図である。
図3】変形係数と一軸圧縮強度との関係を示すグラフである。
図4】材齢と変形係数との関係を示すグラフである。
図5】一軸圧縮強度の実測値と強度特性曲線とを示すグラフである。
図6】強度特性曲線と管理基準曲線とを示すグラフである。
図7】管理基準曲線と実測した一軸圧縮強度とを示すグラフである。
図8】本発明に係る施工体の強度管理システムの構成を示す図である。
図9図8に示されたコンピュータの構成を示す図である。
図10】本発明に係る施工体の強度管理システムの構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0021】
発明者らが鋭意検討したところ、時間の経過に伴って材料を含む施工体の強度は、ある程度の再現性を有していた。そこで、時間と強度との関係を事前に得ておくことにより、強度の変化を予測して所定の材齢時における強度が管理閾値を満たすか否かを評価し得ることを見出した。例えば、施工体の強度管理方法及び施工体の強度管理システムによれば、材齢5日の地盤強度を利用して、材齢28日目の地盤強度が管理閾値を満たすか否かを判定することが可能である。以下、施工体の若材齢時の強度を利用して、所定の材齢時における強度が管理閾値を満たすか否かを評価する施工体の強度管理方法及び施工体の強度管理システムについて詳細に説明する。
【0022】
なお、以下の説明では、地盤の強度管理を例に、本発明を実施するための形態について説明する。このような地盤には、水分と反応して硬化する水硬化物や、強度が時間の経過と共に硬化する時間硬化物などがある。更に詳細には、地盤の施工には、無機系凝集剤、セメント、セメント系固化剤、スラグ等といった改良材を混合し性質を改良した改良土を用いることもある。
【0023】
図1に示されるように、施工体の強度管理方法は、実際の強度確認の前に予め実施される準備工程S10と、施工現場で実施される強度確認工程S20とを有する。準備工程S10において、地盤を構築する材料の強度と時間との関係を含む管理基準関数を取得する。そして、準備工程S10で取得した管理基準関数を利用して、若材齢時における強度特性から所定の材齢時における強度特性が管理閾値を満たすか否かを評価する。
【0024】
ここで、施工体の強度管理方法に利用される落球探査試験について説明する。特許文献1に記載されているように落球探査試験とは、加速度計を内蔵したアルミ球を一定高さから落下させ、測定波形から塑性変形理論に基づいて地盤の変形係数を瞬時に測定する技術である。一般的に、地盤の変形係数と一軸圧縮強度には、相関関係が認められるため(非特許文献1)、この関係を落球探査試験の測定システムに導入し、変形係数から強度算出が可能となる技術に拡張した。また、室内配合試験や試験施工時に改良土の強度増加特性を把握することで、各材齢における一軸圧縮強度の予測も可能である。
【0025】
また、変形係数とは、土質材料に力が加えられたときの変形量をいい、いわゆるヤング率に対応する係数である。変形係数は、Hertzの衝撃理論に基づく理論式から算出する。この算出方法では、重錘3を自由落下させ、地盤13との接触時間を測定する。そして、接触時間を基に、Hertzの衝撃理論に基づく理論式から地盤の変形特性を算出する。
【0026】
Hertzの衝撃理論によれば、落下球体(例えば、重錘3)と弾性体平面(例えば、地盤)との接触時間Tcは、(1)球体の変形特性(ヤング率Eとポアソン比μ)、(2)弾性体平面の変形特性(ヤング率Eとポアソン比μ)、(3)球体の質量M、球体の半径R及び落下高h、の要因によって決まる。
【0027】
質量M、半径Rの球体を落下高hから弾性体平面に落下させたとき、球体と弾性体平面との接触時間Tcは、式(1)により示される。
【数1】

ここで、δ=(1−μ)/(Eπ)(i=1,2)である。また、gは重力加速度であり、g=9.8(m/s)である。
【0028】
式(1)から、球体と弾性体平面との接触時間Tcは、球体の質量M、球体の半径R、落下高h、球体の変形特性(ヤング率Eとポアソン比μ)、及び弾性体平面の変形特性(ヤング率Eとポアソン比μ)によって決まることがわかる。そして、接触時間Tcは、加速度波形から取得可能であり、球体の質量M、球体の半径R、落下高h、球体の変形特性(ヤング率E、ポアソン比μ)、弾性体平面の変形特性(ポアソン比μ)は既知であることから、未知量は、弾性体平面の変形特性(ヤング率E)である。従って、同じ変形特性を持つ弾性体平面に対して、1回落下させれば、弾性体平面の変形特性(ヤング率E)を推定することが可能となる。
【0029】
準備工程S10は、変形係数と一軸圧縮強度quとの関係を示す関数を取得する第1の工程S11と、落球探査試験により得た変形係数Eと一軸圧縮試験により得た変形係数E50との関係を示す係数を取得する第2の工程S12と、地盤を構築する材料の一軸圧縮強度quと材齢との関係を示す関数を取得する第3の工程S13と、強度確認工程S20で利用する管理基準曲線を取得する第4の工程S14と、を有している。
【0030】
第1の工程S11では、改良土の変形係数E50と一軸圧縮強度quとの関係を取得する。より詳細には、第1の工程S11では、改良土の配合試験や試験施工の結果から、変形係数E50と一軸圧縮強度quとの関係式を算出する。ここで変形係数E50とは、一軸圧縮試験により取得される値をいう。また変形係数Eとは、落球探査試験により取得される値をいう。
【0031】
図3は、一軸圧縮強度quと変形係数E50との関係の一例を示している。このような関係を示すデータP3は、実験により得てもよいし、公知のデータベースを利用して準備してもよい。そして、データPから一軸圧縮強度quと変形係数E50の関係を示す式(2)の係数αを算出する。式(2)により示されるグラフは、図3におけるグラフG3aである。
【数2】

なお、一軸圧縮強度quと変形係数E50との関係を示す関数は、式(2)のような一次関数に限定されることなく、一軸圧縮強度quと変形係数E50との関係を好適に示すことができる公知の関数を利用することができる。
【0032】
第2の工程S12では、所定の材齢時における変形係数E50及び変形係数Eの関係を取得する。施工体の強度管理方法では、落球探査試験を実施して変形係数Eを取得する。一方、通常の地盤の強度管理方法では、一軸圧縮試験を実施して変形係数E50を取得する。ここで、落球探査試験を実施して得た変形係数Eと、一軸圧縮試験を実施して得た変形係数E50とは、供試体が同一であれば同一の値になるが、種々の条件により僅かに異なる場合があり得る。
【0033】
第2の工程S12では、まず、所定の材齢(例えば材齢28日)を有する地盤に対して落球探査試験を実施して変形係数Eを取得する。次に、落球探査試験を実施した箇所の地盤から供試体を採取し、一軸圧縮試験を実施して変形係数E50を取得する。そして、式(3)に変形係数E及び変形係数E50を代入して、相関係数βを取得する。
【数3】
【0034】
そして、第1の工程S11で得た式(2)の変形係数E50に、第2の工程S12で得た式(3)を代入すると、落球探査試験により得た変形係数Eから、一軸圧縮強度quを得る下記式(4)が得られる。
【数4】
【0035】
第3の工程S13は、変形係数Eと一軸圧縮強度quとの関係を取得する。より詳細には、第3の工程S13では、地盤の構築に用いる改良土と同質の材料を利用して試験施工を実施する。そして、この試験施工時における材齢0日〜28日までの地盤に対して、落球探査試験を実施して、各材齢時における変形係数Eを取得する。図4は、材齢を横軸とし地盤の変形係数Eを縦軸とした二次元座標系に、変形係数Eをプロット(点P4)したものである。図4に示されるように、地盤の変形係数Eは、材齢が増すほど大きくなっていることがわかる。
【0036】
次に、図5に示されるように、式(4)を利用して、縦軸を変形係数Eから一軸圧縮強度quに変換する。そして、材齢と一軸圧縮強度quとの関係を示す強度特性関数における各係数を算出する。本実施形態では、強度特性関数として式(5)に示される双曲線関数を用いた。ここで、a、bは係数であり、tは材齢であり、qu(t)は材齢tであるときの一軸圧縮強度である。
【数5】
【0037】
なお、材齢と一軸圧縮強度quとの関係は、双曲線関数に限定されることはなく公知の関数を利用することが可能である。式(5)により示されるグラフは、図5におけるグラフG5aである。
【0038】
第4の工程S14では、管理基準関数を取得する。すなわち、第4の工程S14では、第3の工程S13で取得した強度特性関数(式(5))を利用して、管理基準曲線を示す管理基準関数とその係数を決定する。より詳細には、変形係数Eのばらつきが正規分布に従うと仮定し、99.73%(即ち±3σ)の結果を含むように、管理基準曲線を決定する。
【0039】
図6に示されるように、まず、複数の測定点P6を利用して標準偏差σを算出する。続いて、一軸圧縮強度quを示す強度特性関数(式(5)及びグラフG6a参照)に対して、+3σとなる曲線(グラフG6b)と、−3σとなる曲線(グラフG6c)とを決定する。このグラフG6bとグラフG6cとの間には、99.73%の測定データが含まれることになる。従って、−3σとなる曲線(グラフG6c)を判定のための閾値として利用する。この曲線は、例えば式(6)により示される。以下、この曲線を管理基準曲線と呼ぶ。
【数6】
【0040】
図6に示された管理基準曲線(グラフG6c)と、管理基準線(グラフG6d)とを参照すると、材齢28日(672時間)では、管理基準曲線は管理基準線を上回っている。ここで管理基準線は、材齢28日において満たすべき管理閾値qucriを示す。すなわち、材齢28日における地盤の一軸圧縮強度quは、管理閾値qucriを満たしている。そして、地盤の一軸圧縮強度quが管理基準曲線と同様の経時変化を辿るならば、それぞれの材齢時において測定された地盤の一軸圧縮強度quが管理基準曲線を上回っていれば、材齢28日における一軸圧縮強度quは、管理閾値qucriを満たすと予測することが可能である。
【0041】
すなわち、管理基準関数により示される管理基準曲線(グラフG6c)は、管理閾値qucriにより示される直線(グラフG6d)より上であり、強度特性関数(式(5))から算出される材齢28日における推定強度である一軸圧縮強度qu(28)(点P6b)より下の範囲を通過する。
【0042】
なお、強度特性関数に対して設定される幅は、±3σに限定されることはなく、±2σなどであってもよい。また、変形係数Eのばらつきは、正規分布以外の確率分布に従うものとして処理してもよい。
【0043】
上記第1〜第4の工程S11〜S14を含む準備工程S10を実施することにより、地盤を構築する材料の強度と時間との関係を含む管理基準曲線を示す関数(式(6))が取得される。
【0044】
次に、実施工時における強度確認を行う強度確認工程S20を実施する。この工程S20は、実際の施工現場において落球探査試験を実施して一軸圧縮強度qu(t)を取得し、その結果を利用して材齢28日目における一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすか否かを判定するものである。図2に示されるように、この強度確認工程S20は、落球探査試験を実施して加速度波形を取得する工程(波形取得工程S21)と、加速度波形を入力条件として一軸圧縮強度qu(t)を算出する工程(実測強度算出工程S22)と、一軸圧縮強度qu(t)が将来に管理閾値qucriを満たすか否かを判定する工程(判定工程S23)とを有する。
【0045】
まず、地盤の施工直後からt日経過後に落球探査試験を実施して、加速度波形を取得する。この工程S21では、加速度波形と落球探査試験を実施した時の地盤の材齢(t日)とが結果として取得される。続いて、加速度波形を利用して一軸圧縮強度qu(t)を算出する。より詳細には、加速度波形から得られる接触時間を利用して変形係数Eを算出する(工程S22a)。この算出には、上記特許文献1(特開2009−228352号公報)に記載されたようなHertzの衝撃理論に基づく公知の計算法を利用する。そして、変形係数Eを利用して、一軸圧縮強度qu(t)を算出する(工程S22b)。
【0046】
続いて、工程S22で算出した一軸圧縮強度qu(t)が、材齢28日となったときに管理閾値qucriを満たすか否かを判定する(工程S23)。より詳細には、材齢t日であるときの一軸圧縮強度qu(t)を利用して、材齢28日目の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucri以上になるか否かを判定する。すなわち、本実施形態では、所定の材齢であるときの一軸圧縮強度qu(t)から将来取り得る一軸圧縮強度qu(28)の値を予測するものではなく、将来取り得る一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucri以上になるか否かを判定する。
【0047】
図7には、管理基準曲線(グラフG7a)が示されている。材齢tであるときの一軸圧縮強度qu(t)がこの管理基準曲線を上回る場合には、材齢28日目の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを上回ると判定する。具体的には、落球探査試験を実施したときの材齢t日と、管理基準曲線又は管理基準曲線を示す関数(式(6))を利用して、材齢t日であるときの管理基準強度quを算出する(管理基準強度算出工程s23a)。そして、工程S22で算出した実測の一軸圧縮強度qu(t)と管理基準強度quとを比較する(比較工程S23b)。
【0048】
ここで、一軸圧縮強度qu(t)が管理基準強度qu以上である場合には、材齢28日目の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすと判定する(工程S23b:YES)。そして、地盤の施工を継続しつつ(工程S24)、所定のタイミングで再度強度判定を実施する。一方、一軸圧縮強度qu(t)が管理基準強度qu未満である場合には、材齢28日目の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満さないと判定する(工程S23b:NO)。そして、地盤の施工を一時中断し(工程S25)、地盤に対して必要な補強対策を実施する。
【0049】
例えば、材齢tであるとき、落球探査試験により取得された一軸圧縮強度qu(t)は点P7aで示され、管理基準強度quは点P7bで示される。一軸圧縮強度qu(t)と管理基準強度quとを比較すると、一軸圧縮強度qu(t)を示す点P7aは、管理基準強度quを示す点P7bよりも上にある。従って、この場合には、材齢28日における一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすと判断する。
【0050】
ここで、改良土で構築した地盤特性を評価する比較例に係る強度管理方法について説明する。時間の経過に伴って硬化する改良土等により構築された地盤の品質は、例えば、一軸圧縮強度を利用して管理される。一軸圧縮強度は、日本工業規格(JIS−A−1216)に規定されている一軸圧縮試験に従った試験により取得される。この理由としては、一軸圧縮強度が、高度な試験技術や長期の試験期間を必要とすることなく、耐久性や透水性といった地盤の特性評価を可能とするためである。
【0051】
一軸圧縮試験を利用した地盤特性を評価する手法の一つとして、製造直後の改良土を用いて供試体を作製し、所定の材齢(28日)であるときに一軸圧縮試験を行う手法がある。また、所定の材齢(28日)の地盤から供試体を採取して、一軸圧縮試験を行う手法もある。
【0052】
しかし、前述した方法によれば、供試体の性状が実際の改良土で構築した地盤の性状と異なることがあり、一軸圧縮試験により得た特性が実際の地盤の性状を正確に示さないおそれがある。より詳細に説明すると、製造直後の改良土を用いて供試体を作製するとき、供試体の作成時における許容最大粒径の制約によって、供試体の性状が実際の改良土と異なる場合がある。例えば、最大粒径(Dmax)が100mmである改良土で盛土を構築するとき、粒径が100mmの土の混入を許容する突き固めによる供試体の規格は存在しないので、規格に規定された許容最大粒径以上の土は除去される。そうすると、供試体と改良土との性状が変化する。このような問題は、突き固め以外の方法により作製した供試体においても同様である。さらに、改良土で構築した地盤の一軸圧縮強度は、その締固め度に依存する。しかし、供試体の締固め度を、地盤と同一にすることは多大な労力を要するため、現実的な方法とは言い難い。
【0053】
また、後述した手法は、実際の地盤から供試体を採取するため、一軸圧縮試験を行う方法として有効であると考えられている。しかし、改良土の最大粒径が大きくなると、供試体の取得に要求される難易度が高くなり、熟練したボーリング技術を有する作業者が必要になる。更に、改良土による地盤は層状に構築される。そうすると、施工環境によっては、材齢28日目の層上に若年齢の層が積層されるため、材齢28日目の層から供試体を採取することは困難である。また、一軸圧縮試験は、材料が若年齢であるときにはそもそも圧縮試験を実施することが困難である。
【0054】
比較例に係る方法に対して、本実施形態の強度管理方法及び強度管理システムでは、実際に改良土で構築した地盤を測定対象にしている。従って、供試体作製時の許容最大粒径に起因する供試体の性状変化はない。従って、本実施形態の強度管理方法及び強度管理システムによれば、改良土で構築した地盤の一軸圧縮強度qu(t)を、原位置において正確に測定できる。
【0055】
また、測定された一軸圧縮強度qu(t)を用いて、その後の強度が管理閾値qucriを満たすか否かを予測することが可能になる。従って、本実施形態の強度管理方法及び強度管理システムによれば、改良土で構築した地盤の一軸圧縮強度qu(t)を、原位置において正確且つ効率的に評価できる。更には、品質トラブルを早期に発見し、対応することが可能になる。
【0056】
また、本実施形態の強度管理方法は、誰でも手軽且つ迅速に実施することが可能である。従って熟練した技術者を必要とせず、施工を長期間中断することを防止できる。
【0057】
より具体的に説明すると、この施工体の強度管理方法では、まず、準備工程S10において管理基準関数を準備する。管理基準関数は、施工体である地盤に含まれる材料の強度と経過時間との関係を示している。次に、波形取得工程S21を実施して、質量体を地盤に衝突させたときに発生する加速度の波形を取得する。次に、Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の波形を適用して、落球探査試験時における一軸圧縮強度qu(t)を算出する。この工程S21及び工程S22によれば、地盤の強度を原位置において直接計測して得ることが可能であるため、精度の良い値を得ることができる。
【0058】
そして、強度確認工程S20において、材齢28日における地盤体の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすか否かを判定する。この強度確認工程S20によれば、施工時から落球探査試験を実施した時の期間よりも長い期間の経過を待つことなく、将来の地盤強度が管理閾値qucriを満たすか否かを判定することが可能になる。従って、地盤の強度を評価するために時間経過を待つことなく施工を継続することが可能になる。その上、地盤の強度が満たさないと予測される場合には、落球探査試験を実施した直後に必要な処置を実施することが可能になる。従って、補修に要する期間が短縮化されるため、施工期間の長期化を抑制することができる。
【0059】
また、判定工程S23によれば、材齢28日における地盤の強度が、管理閾値qucriを上回るか否かを容易に判定することができる。
【0060】
また、管理基準曲線は、材料の強度特性を示す強度特性関数に対して−3σの幅を持たせている。この関数によれば、地盤に含まれた材料特性のばらつきを考慮することが可能になる。従って、判定の精度を高めることができる。
【0061】
また、本実施形態に係る施工体の強度管理方法では、落球探査試験を利用しているので、地盤を構成する材料が若年齢の場合であっても試験を実施することが可能である。
【0062】
また、施工体の強度管理方法では、原位置において強度を評価することが可能である。このため、一軸圧縮試験を実施する場合のように供試体を採取する必要がない。従って、水中に施工された施工体のように、供試体の採取が困難である場所においても強度管理を行うことが可能になる。
【0063】
次に、上述した施工体の強度管理方法を実施するためのシステムについて説明する。施工体の強度管理システムは、地盤に重量物を衝突させて得た加速度波形を利用して、地盤の強度特性を得るものである。図8に示されるように、施工体の強度管理システム1は、加速度計2が内蔵された重錘3と、加速度計2に接続されたチャージアンプ4と、チャージアンプ4に接続されたターミナルパネル6と、ターミナルパネル6に接続されたA/D変換装置7と、A/D変換装置7に接続されたコンピュータ8とを備えている。
【0064】
より詳細には、重錘3及び加速度計2は、衝撃印加部9を構成する。チャージアンプ4、ターミナルパネル6及びA/D変換装置7は、波形入力部11を構成する。コンピュータ8は、データ処理部12を含む(図10参照)。
【0065】
重錘3は、測定対象である地盤13に対して落下衝突させるものである。重錘3は、例えば19.1kgの質量を有し、50cmの高さから地盤13に対して垂直に落下させる。すなわち、重錘3の移動方向は地盤13のほぼ法線方向である。チャージアンプ4、ターミナルパネル6、A/D変換装置7は、重錘3の落下衝突により重錘3に作用する加速度波形を取得し、コンピュータ8に入力する。
【0066】
図9は、コンピュータ8のハードウェア構成を示す図である。コンピュータ8として、CPUを具備しソフトウエアによる処理や制御を行なうサーバ装置、パーソナルコンピュータ等の各種データ処理装置を含む。図9に示されるように、コンピュータ8は、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ装置、CD−ROMドライブ装置、DVDドライブ装置等の読取装置8aと、オペレーティングシステムを常駐させた作業用メモリ(RAM)8bと、記録媒体8cに記憶されたプログラムを記憶するメモリ8dと、ディスプレイ8eといった表示装置と、入力装置であるマウス8f及びキーボード8gと、データ等の送受を行うための通信装置8hと、プログラムの実行を制御するCPU8jとを備えている。コンピュータ8は、記録媒体8cが読取装置8aに挿入されると、読取装置8aから記録媒体8cに格納されたプログラムにアクセス可能になり、当該プログラムによって、データ処理部12として動作することが可能になる。
【0067】
データ処理部12は、入力された加速度波形を利用して所定の処理を実施する。より詳細には、入力された加速度波形を利用して材齢t日目の一軸圧縮強度qu(t)を取得し、その一軸圧縮強度qu(t)を利用して材齢28日目の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすか否かを判定する。
【0068】
図10に示されるように、データ処理部12は、実測強度算出部12aと、管理基準関数記録部12bと、判定部12cと、を有している。実測強度算出部12aは、変形係数Eを算出する工程S22aと、一軸圧縮強度qu(t)を算出する工程S22bとを実行する。実測強度算出部12aは、波形入力部11のA/D変換装置7に接続され、A/D変換装置7からデジタル化された加速度データが入力される。また、実測強度算出部12aは、データ処理部12に接続されたマウス8fやキーボード8gといった入力装置14から試験を行ったときの材齢データが入力される。実測強度算出部12aは、これら加速度データと材齢データとを利用して、実測強度としての一軸圧縮強度qu(t)を算出し、判定部12cに出力する。
【0069】
管理基準関数記録部12bには、管理基準関数に関する情報が記録され、判定部12cから参照可能に構成されている。例えば、管理基準関数に関する情報には、管理基準関数を示す関数(式(6)参照)とその係数の値や、材齢と管理閾値qucriとが関連付けられたデータベースなどがある。これら管理基準関数に関する情報は、入力装置14から入力されてもよいし、記録媒体8cに記録された情報から読取装置8aを介して読み取ったものであってもよい。
【0070】
また、工程S20の前に、この施工体の強度管理システム1を使用して各材齢時における地盤強度を取得し、管理基準関数記録部12bが所定の処理を行うことにより管理基準関数に関する情報を得てもよい。このような構成によれば、管理基準関数が所定のタミングで更新されて、予測の精度を高めることが可能になる。また、管理基準関数記録部12bには、衝撃を印加した場所に関するデータが記録されていてもよい。
【0071】
判定部12cは、一軸圧縮強度quと管理基準関数(式(6))とを利用して、材齢t日目の一軸圧縮強度qu(t)から、材齢28日目の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすか否かを判定する。すなわち、判定部12cは、管理基準強度算出部12eと、比較部12fとを有し、工程S20を実施する。そして、一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たす、又は一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たさない、といった判定結果をディスプレイ8eといった表示装置16に出力して表示させる。判定部12cは、実測強度算出部12aに接続され、一軸圧縮強度qu(t)が入力される。また、判定部12cは、管理基準関数記録部12bに接続され管理基準関数に関する情報が入力される。
【0072】
施工体の強度管理システム1では、管理基準関数記録部12bに管理基準曲線に関する情報が記録されている。管理基準関数は、地盤13に含まれる材料の強度と経過時間との関係を示している。次に、衝撃印加部9を用いて重錘3を地盤13に衝突させ、衝突により発生する加速度の波形を加速度計3と波形入力部11を用いて取得する。そして、実測強度算出部12aにより、Hertzの衝撃理論に基づく理論式に加速度の波形を適用して、所定時間における一軸圧縮強度qu(t)が算出される。これらの構成によれば、地盤13の一軸圧縮強度qu(t)を原位置において直接計測して得ることが可能であるため、精度の良い値を得ることができる。
【0073】
そして、判定部12cにおいて、地盤13の一軸圧縮強度qu(t)を利用して、材齢28日における一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすか否かが判定される。この判定部12cによれば、所定期間経過後における地盤13の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすか否かを判定することが可能になる。従って、地盤13の一軸圧縮強度qu(28)を評価するために所定期間の経過を待つことなく施工を継続することが可能になる。その上、所定期間経過後における地盤13の一軸圧縮強度qu(28)が満たさないと予測される場合には、所定期間の経過を待つことなく必要な処置を実施することが可能になる。従って、補修に要する期間が短縮化されるため、施工期間の長期化を抑制することができる。
【0074】
また、判定部は、管理基準関数に強度取得時間を適用して、管理基準強度を得る管理基準強度算出部12eと、実測強度と管理基準強度とを互いに比較する比較部12fと、を有する。比較部12fでは、実測強度が管理基準強度以上である場合に、強度管理時間だけ経過した後の地盤13の一軸圧縮強度qu(28)が管理閾値qucriを満たすと判定する。この構成によれば、強度管理時間経過後における地盤13のqu(28)が、管理閾値qucriを上回るか否かを容易に判定することができる。
【0075】
また、管理基準関数は、材料の強度と時間との関係を示す強度特性関数に基づいて準備されると共に、強度管理時間において管理閾値qucri以上且つ推定強度以下の範囲を通る。推定強度は、強度特性関数に強度管理時間を適用したときの強度である。この構成によれば、地盤13に含まれた材料特性のばらつきを考慮することが可能になる。従って、判定の精度を高めることができる。
【0076】
また、判定部12cによれば、材齢28日における地盤の強度が、管理閾値qucriを上回るか否かを容易に判定することができる。
【0077】
また、管理基準関数記録部12bに記録された管理基準曲線は、材料の強度特性を示す強度特性関数に対して−3σの幅を持たせている。この関数によれば、地盤13に含まれた材料特性のばらつきを考慮することが可能になる。従って、判定の精度を高めることができる。
【0078】
本発明は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、下記のような種々の変形が可能である。
【0079】
管理基準曲線を取得する工程S14では、強度特性関数に対して、材齢の全範囲に亘って同じばらつきの幅(−3σ)を設定し、管理基準曲線を得た。このばらつきの幅は、所定の材齢ごとに異なる幅を設定してもよい。
【0080】
また、施工体の強度管理方法では落球探査試験を実施して変形係数Eなどを取得している。この、落球探査試験では、地盤13の法線方向に沿って重錘3を落下させる場合のほか、法線方向に対して斜めになるように地盤13へ衝撃を加えてもよい。例えば、水平面である地盤に対して斜めに重錘3を衝突させてもよいし、斜面である地盤に対して鉛直方向に重錘3を落下衝突させてもよい。
【0081】
また、施工体の強度管理システムは、重錘3に3軸加速度計を配置してそれぞれの方向に作用する加速度波形を取得してもよい。この構成によれば、地盤に対する重錘3の衝突方向を算出することが可能になるので、変形係数Eの算出の精度を高めることが可能になる。
【0082】
施工体の強度管理システムは、重錘3の地盤13への衝突によって生じた加速度波形を取得するほか、重錘3の地盤13への衝突させた位置をGPS等により記録してもよい。
【0083】
また、落球探査試験は、大気中の実施に限定されることはなく、水中において実施してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…強度管理システム、2…加速度計、3…重錘、4…チャージアンプ、6…ターミナルパネル、7…A/D変換装置、8…コンピュータ、9…衝撃印加部、11…波形入力部、12…データ処理部、12a…実測強度算出部、12b…管理基準関数記録部、12c…判定部、13…地盤、E50…一軸圧縮試験による変形係数、E…落球探査試験による変形係数、S10…準備工程、S20…強度確認工程、S21…波形取得工程、S22…実測強度算出工程、S23…判定工程、qu…一軸圧縮強度、t…材齢、t日における一軸圧縮強度、qu(28)…材齢28日における一軸圧縮強度、qucri…管理閾値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10