特許第6236370号(P6236370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236370
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】真空包装機
(51)【国際特許分類】
   B65B 31/02 20060101AFI20171113BHJP
   B65D 90/08 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   B65B31/02 B
   B65D90/08 H
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-185466(P2014-185466)
(22)【出願日】2014年9月11日
(65)【公開番号】特開2016-55914(P2016-55914A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年12月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064724
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 照一
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 直志
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】曽布川 武伸
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平06−081906(JP,U)
【文献】 特開2003−322257(JP,A)
【文献】 特開2009−014038(JP,A)
【文献】 特開平11−043108(JP,A)
【文献】 実開平05−081565(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 31/02
B65D 90/08
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバベースとチャンバカバーとにより密閉室が開閉自在に形成されるチャンバと、
前記チャンバベースと前記チャンバカバーとの間に介装されて、前記チャンバベースと前記チャンバカバーとの間を気密にシールする柔軟弾性部材よりなるパッキンと、
前記チャンバ内を脱気して負圧化する真空ポンプとを備えた真空包装機であって、
前記チャンバベースまたは前記チャンバカバーの周部には前記パッキンの基部を嵌合する底側を幅広部として開口側を幅狭部とした段付き溝を形成し、
前記パッキンは前記段付き溝の幅広部に嵌合して取り付けられる取付基部と、前記取付基部から前記幅狭部より狭い幅にて前記段付き溝の開口を突出して、前記チャンバベースと前記チャンバカバーとを互いに圧接させたときに前記幅狭部内にて弾性変形して前記チャンバベースと前記チャンバカバーとの間を気密にシールする中空のシール部とを備え、
前記取付基部の幅を前記段付き溝の幅広部の幅より長くするとともに、
前記取付基部の前記段付き溝の底壁との対向面には幅方向の中央部に前記幅広部の高さより低い凹溝を形成したことを特徴とする真空包装機。
【請求項2】
請求項1に記載の真空包装機において、
前記凹溝を幅方向の中央部が深くなるように形成したことを特徴とする真空包装機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空包装機において、
前記取付基部の高さを前記幅広部の高さより高くし、
前記取付基部の前記段付き溝の底壁との対向面には前記凹溝の両側にて幅方向の中央部に向けて高くなるように傾斜面を形成したことを特徴とする真空包装機。
【請求項4】
請求項1または2に記載の真空包装機において、
前記取付基部には前記シール部の付根部の両側を切り欠いた切欠き溝を形成することによって、前記取付基部の幅方向の両端部を外側に広がる爪部を形成するようにし、
前記爪部を前記段付き溝の幅広部の側面に弾性的に付勢させた状態にて、前記爪部の先端部を前記段付き溝の段部に係止させるようにしたことを特徴とする真空包装機。
【請求項5】
チャンバベースとチャンバカバーとにより密閉室が開閉自在に形成されるチャンバと、
前記チャンバベースと前記チャンバカバーとの間に介装されて、前記チャンバベースと前記チャンバカバーとの間を気密にシールするパッキンと、
前記チャンバ内を脱気して負圧化する真空ポンプとを備えた真空包装機であって、
前記チャンバベースまたは前記チャンバカバーの周部には前記パッキンの基部を嵌合する底側を幅広部として開口側を幅狭部とした段付き溝を形成し、
前記パッキンは前記段付き溝の幅広部に嵌合して取り付けられる取付基部と、前記取付基部から前記幅狭部より狭い幅にて前記段付き溝の開口を突出して、前記チャンバベースと前記チャンバカバーとを互いに圧接させたときに前記幅狭部内にて弾性変形して前記チャンバベースと前記チャンバカバーとの間を気密にシールする中空のシール部とを備え、
前記パッキンは前記取付基部と前記シール部との間に断面形状がく字形の部分を少なくとも含む緩衝部を設けたことを特徴とする真空包装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材等の被包装物を入れた包装袋をチャンバ内で真空包装する真空包装機に関し、チャンバを構成するチャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールするパッキンを備えた真空包装機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1には食材等の被包装物を入れた包装袋をチャンバ内で真空包装する真空包装機が開示されている。この真空包装機は、チャンバベースとチャンバカバーとにより密閉室を開閉自在に形成するチャンバと、チャンバベースの上面開口部周縁に設けられて、チャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールするパッキンと、チャンバ内を脱気して負圧化する真空ポンプと、包装袋の開口部周縁を加熱封止する封止装置とを備えている。この真空包装機で食材を入れた包装袋を真空包装するときには、チャンバ内に包装袋を収容し、チャンバ内を真空ポンプによって脱気して負圧化し、包装袋の開口部周縁を封止装置によって加熱溶着して包装袋を真空包装する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−81906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような真空包装機においては、チャンバベースの上面開口部周縁には底側の幅を広くした幅広部と開口側の幅を狭くした幅狭部とからなる段付き溝が形成されており、チャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールするパッキンはこの段付き溝に取り付けられている。パッキンは段付き溝の幅広部と同形状をした嵌合部と、嵌合部から段付き溝の幅狭部を隙間なく延びて上面開口から断面半円形に突き出るようにした中実のシール部とを備えている。
【0005】
チャンバ内を脱気して負圧化するときには、チャンバベースの上面開口部をチャンバカバーにより閉じて、パッキンのシール部をチャンバベースとチャンバカバーとの間にて弾性的に押し潰すようにして、チャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールする。このとき、シール部の全周がチャンバカバーの当たり面に対して平面的に密着するように潰せないと、シール部のチャンバカバーと平面的に密着できてない部分からチャンバ内に空気が流入し、チャンバ内を負圧とすることができなかった。この場合には、チャンバカバーを上側から強く押さえ付けて、シール部の全周を平面的に潰してチャンバカバーに密着させなければならないが、シール部が中実であるために潰れにくい問題があった。
【0006】
また、チャンバ内を脱気して負圧化したときに、パッキンのシール部をチャンバベースとチャンバカバーとの間にて弾性的に押し潰すようにしているが、シール部が中実であることと、シール部と段付き溝の幅狭部との間に隙間がないことから、シール部の全てを幅狭部の内部で圧縮できず、シール部の先端部が段付き溝の横側にはみ出て、シール部の先端部がチャンバベースとチャンバカバーとの間で潰れて破断するおそれがあった。
【0007】
これらの問題を解決するために、本願出願人は図9に示したパッキン100を開発するに至っている。このパッキン100は、チャンバカバー14の周部に形成された底側を幅広部15aとして開口側を幅狭部15bとした段付き溝15に取り付けられている。パッキン100は、幅広部15aに嵌合して取り付けられる取付基部101と、取付基部101から幅狭部15bより狭い幅にて段付き溝15の開口を突出するようにした中空のシール部102とを備えている。
【0008】
このパッキン100であれば、図10に示したように、チャンバベース13の上面開口部をチャンバカバー14により閉じたときに、シール部102が幅狭部15bからはみ出ることなく弾性変形し、チャンバベース13とチャンバカバー14とを密着した状態でシールすることができる。
【0009】
このパッキン100では、取付基部101の幅を幅狭部15bの幅より長くするとともに幅広部15aの幅より短くすることで、取付基部101を段付き溝15の幅広部15aに対して取付を容易とするようにしている。しかし、取付基部101の幅を幅狭部15bの幅より長くするとともに幅広部15aの幅より短くしたときには、取付基部101を段付き溝15の幅広部15aに容易に取付できるようになるが、チャンバカバー14を洗浄等をしてパッキン100に横方向の力が加えられた際に、図11に示したように、パッキン100が幅方向にずれて取り付けられることがあり、取付基部101の幅方向の一方が段付き溝15の段部から外れることがあった。この状態にてチャンバベース13の上面開口部をチャンバカバー14により閉じると、パッキン100のシール部102の一部がチャンバベース13とチャンバカバー14との間に挟まれ、チャンバ内が気密に保たれないばかりか、パッキン100がチャンバベース13とチャンバカバー14に挟まれて破断するおそれがあった。
【0010】
これに対し、パッキン100の取付基部101が段付き溝15の幅広部15aから外れにくくなるようにするために、取付基部101の幅を幅広部15aの幅より長くすれば、取付基部101を幅広部15aから外れにくくすることができる。しかし、取付基部101を幅広部15a内に圧縮して取り付けたときに、取付基部101の幅方向の両側部が段付き溝15の開口側にて圧縮されて幅方向の中央側に屈撓するように弾性変形し、図12(a)に示したように、中空のシール部102の左右両側壁部が内側に潰れた状態に変形することがある。この状態で、チャンバベース13の上面開口部をチャンバカバー14により閉じると、図12(b)に示したようにシール部102が横方向に倒れやすくなり、パッキン100のシール部102の一部がチャンバベース13とチャンバカバー14との間に挟まれ、チャンバ12内が気密に保たれないばかりか、パッキン100がチャンバベース13とチャンバカバー14に挟まれて破断するおそれがあった。本発明は、チャンバベースまたはチャンバカバーに形成した段付き溝に取り付けるパッキンにおいて、チャンバベースをチャンバカバーにより閉じたときに、中空のシール部が段付き溝の幅狭部から幅方向にはみ出ないようにし、中空のシール部がチャンバベースとチャンバカバーとの間で破断されないようにすることを目的とするものである。特に、本発明はパッキンのシール部が中空であることに起因した問題を解決することを目的としたものであり、中空のシール部が段付き溝の幅狭部から幅方向にはみ出ることに起因してチャンバベースとチャンバカバーとの間で破断されないようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、チャンバベースとチャンバカバーとにより密閉室が開閉自在に形成されるチャンバと、チャンバベースとチャンバカバーとの間に介装されて、チャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールする柔軟弾性部材よりなるパッキンと、チャンバ内を脱気して負圧化する真空ポンプとを備えた真空包装機であって、チャンバベースまたはチャンバカバーの周部にはパッキンの基部を嵌合する底側を幅広部として開口側を幅狭部とした段付き溝を形成し、パッキンは段付き溝の幅広部に嵌合して取り付けられる取付基部と、取付基部から幅狭部より狭い幅にて段付き溝の開口を突出して、チャンバベースとチャンバカバーとを互いに圧接させたときに幅狭部内にて弾性変形してチャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールする中空のシール部とを備え、取付基部の幅を段付き溝の幅広部の幅より長くするとともに、取付基部の段付き溝の底壁との対向面には幅方向の中央部に幅広部の高さより低い凹溝を形成したことを特徴とする真空包装機を提供するものである。
【0012】
上記のように構成した真空包装機においては、取付基部の幅を段付き溝の幅広部の幅より長くするとともに、取付基部の段付き溝の底壁との対向面には幅方向の中央部に幅広部の高さより低い凹溝を形成したので、パッキンの取付基部を段付き溝の幅広部から外れにくくすることができるとともに、取付基部の幅方向の両側部を凹溝側に圧縮するように弾性変形させることで、取付基部を幅狭部を通して幅広部に容易に取付けることができるようになった。また、取付基部を段付き溝の幅広部の幅より長くしたことで、取付基部が幅広部内で幅方向に圧縮されるが、取付基部の幅方向の両側部が段付き溝の底側で凹溝側に屈撓するので、取付基部の開口側に設けた中空のシール部が幅狭部内にて外側に広がるようになって、シール部が内側に潰れたときのように段付き溝の幅方向にて外側に倒れるのを防ぐことができる。これにより、チャンバカバーによりチャンバベースを閉じたときに、シール部を幅狭部からはみ出にくくすることができた。このように構成した真空包装機においては、凹溝を幅方向の中央部が深くなるように形成するのが特に好ましい。
【0013】
上記のように構成した真空包装機においては、取付基部の高さを幅広部の高さより高くし、取付基部の段付き溝の底壁との対向面には凹溝の両側にて幅方向の中央部に向けて高くなるように傾斜面を設けるのが好ましく、このようにしたときには、取付基部の幅方向の両側部が段付き溝の底側で凹溝側に確実に屈撓するようになるため、取付基部の開口側に設けた中空のシール部が幅狭部内にて外側に広がるようになり、チャンバカバーによりチャンバベースを閉じたときに、シール部が幅狭部から確実にはみ出にくくすることができた。
【0014】
上記のように構成した真空包装機の他の実施形態においては、取付基部にはシール部の付根部の両側を切り欠いた切欠き溝を形成することによって、取付基部の幅方向の両端部を外側に広がる爪部を形成するようにし、爪部を段付き溝の幅広部の側面に弾性的に付勢させた状態にて、爪部の先端部を段付き溝の段部に係止させるようにしてもよい。
【0015】
また、真空包装機のさらに他の実施形態においては、チャンバベースとチャンバカバーとにより密閉室が開閉自在に形成されるチャンバと、チャンバベースとチャンバカバーとの間に介装されて、チャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールするパッキンと、チャンバ内を脱気して負圧化する真空ポンプとを備えた真空包装機であって、チャンバベースまたはチャンバカバーの周部にはパッキンの基部を嵌合する底側を幅広部として開口側を幅狭部とした段付き溝を形成し、パッキンは段付き溝の幅広部に嵌合して取り付けられる取付基部と、取付基部から幅狭部より狭い幅にて段付き溝の開口を突出して、チャンバベースとチャンバカバーとを互いに圧接させたときに幅狭部内にて弾性変形してチャンバベースとチャンバカバーとの間を気密にシールする中空のシール部とを備え、パッキンは取付基部とシール部との間に断面形状がく字形の部分を少なくとも含む緩衝部を設けるようにしてもよい。
【0016】
このように構成した真空包装機においては、メンテナンスをするときにパッキンが段付き溝の幅方向または深さ方向にずれる方向にてシール部に接触しても、シール部に加えられた負荷は緩衝部が段付き溝の幅方向または深さ方向に弾性変形することによって吸収され、取付基部を段付き溝の幅広部から外れにくくすることができた。さらに、チャンバベースとチャンバカバーとを互いに圧接させたときには、緩衝部が段付き溝の深さ方向に弾性変形することでシール部を段付き溝の幅狭部内に収めることができ、シール部が段付き溝の幅狭部からはみ出にくくすることができた。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の真空包装機の一実施形態を縦方向に破断した斜視図である。
図2】真空包装機の主としてチャンバと油回転真空ポンプとを接続する配管を示す概略図である。
図3】チャンバカバーの段付き溝にパッキンを取り付けた状態を示す断面図である。
図4】チャンバベースをチャンバカバーにより閉じた状態を示す断面図である。
図5】パッキンの凹溝を浅くした図3に相当する断面図である。
図6】パッキンの取付基部の高さを段付き溝の幅広部の高さより高くし、凹溝の両側に凹溝側に高くなる傾斜面を形成したときの図3に相当する断面図である
図7】他の実施形態のパッキンを示す図3に相当する断面図である。
図8】さらに他の実施形態のパッキンを示す図3に相当する断面図である。
図9】従来技術のパッキンを示す図3に相当する断面図である。
図10】チャンバベースをチャンバカバーにより閉じたときの従来技術のパッキンを示す図4に相当する断面図である。
図11】従来技術のパッキンが段付き溝の一方の段部から外れた状態の図9に相当する断面図である。
図12】パッキンの取付基部を段付き溝の幅広部の幅より長くしたときに、シール部の両側壁部が内側に凹むように変形した状態を示す図9に相当する断面図(a)であり、シール部が幅方向に倒れた状態を示す図9に相当する断面図(b)である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の真空包装機の一実施形態を添付図面を参照して説明する。図1及び図2に示したように、真空包装機10は、ハウジング11の上部に包装袋を収容するチャンバ12と、チャンバ12内にて包装袋の開口部周縁を密閉する加熱封止装置(封止装置)30と、ハウジング11の下部にてチャンバ12内を脱気して負圧化させる真空ポンプ40とを備えている。
【0019】
図1及び図2に示したように、チャンバ12はチャンバベース13とチャンバカバー14とにより構成される耐圧容器であり、チャンバベース13とチャンバカバー14とを互いに圧接させることによって密閉室を開閉自在に形成している。チャンバベース13は浅い皿形をして包装袋を収容可能としている。チャンバベース13の上面開口には耐圧性のアクリル板よりなるチャンバカバー14が開閉自在に取り付けられており、チャンバカバー14は前端側が上下に移動可能となるように後端部がハウジング11の後端部に水平軸線回りに支持されている。
【0020】
図1及び図3に示したように、チャンバカバー14の下面の周部には全周にわたって段付き溝15が形成されており、段付き溝15にはゴム等の柔軟弾性部材よりなるパッキン20が着脱可能に取り付けられている。パッキン20はチャンバベース13とチャンバカバー14との間を気密にシールするものであり、チャンバベース13をチャンバカバー14により閉じたときに段付き溝15から幅方向にはみ出ないようにシールするものである。図3に示したように、段付き溝15は底側が幅の広い幅広部15aと開口側が幅の狭い幅狭部15bを備えている。パッキン20は幅広部15aに嵌合して取付られる取付基部21と、取付基部21から段付き溝15の開口を突出するシール部22とを備えている。取付基部21は幅広部15aより少し広い幅をし(図3では取付基部21は幅広部15a内に幅方向に圧縮されて取り付けられている)、幅広部15aの高さと略同じ高さとなっている。取付基部21の段付き溝15の底壁との対向面には幅方向の中心部に段付き溝15の溝方向と平行に延びる凹溝21aが形成されており、凹溝21aは取付基部21の幅方向の両側部を段付き溝15の底壁側にて中央側に屈撓させる機能を有している。この実施形態の凹溝21aは幅方向の中央部が深くなるように形成され、具体的には凹溝21aの両側壁を繋ぐ底壁は鈍角な中心角を有したV字形をしている。
【0021】
パッキン20のシール部22は取付基部21と一体的に形成され、取付基部21から段付き溝15の幅狭部15bを通って段付き溝15の開口を突出するように延びている。シール部22は段付き溝15の幅狭部15bを通って段付き溝15の開口を突出する両側壁と、両側壁の先端を繋ぐ連結壁とを有した段付き溝15に沿った方向に空洞が連続する中空の形状をしている。シール部22の両側壁は外側に広がる略く字形をしており、シール部22の幅は段付き溝15の幅狭部15bより狭く、この実施形態では略2/3の幅となっている。
【0022】
図1に示したように、チャンバ12内の前部には加熱封止装置30が設けられている。加熱封止装置30はチャンバ12内に収容した熱溶着可能な包装袋の先端開口周縁部を密閉するものである。なお、包装袋は内側に融点の低い材質を採用した二層構造の熱可塑性樹脂製フィルムを用いたものである。加熱封止装置30は包装袋の先端開口部周縁を狭圧して保持する下側及び上側狭圧ブロック31,32とを備えている。下側狭圧ブロック31はチャンバベース13の前部に上下に移動可能に設けられている。また、下側狭圧ブロック31の上面にはニクロム素材よりなる帯板状をしたヒータ33が設けられている。上側狭圧ブロック32は弾性変形可能なシリコン製のブロック体よりなり、下側狭圧ブロック31の上側に対向する位置にて、チャンバカバー14の下面前部に設けられている。
【0023】
図1及び図2に示したように、チャンバベース13の前部には下側狭圧ブロック31を上下に昇降させる左右一対の昇降機構34(図では右側のみを示す)が設けられている。昇降機構34はチャンバベース13の前部の底壁を貫通する左右一対の支持軸35を備え、これら支持軸35はチャンバベース13の前部にて下側狭圧ブロック31を上下動可能に支持している。支持軸35はチャンバベース13の下側にて昇降シリンダ36により上下に移動可能に支持されている。支持軸35には昇降シリンダ36内に鍔部36aが設けられており、鍔部36aは昇降シリンダ36内を上部空間36bと下部空間36cとに気密に区画している。昇降シリンダ36の上部空間36bには支持軸35の外周にコイルスプリング36dが介装されており、コイルスプリング36dは鍔部36aを介して支持軸35を下方に付勢している。
【0024】
図1及び図2に示したように、ハウジング11内には真空ポンプ40が設けられており、真空ポンプ40は吸気管41によってチャンバ12内と接続されている。吸気管41にはこれを開閉する真空弁42が設けられている。吸気管41にはチャンバ12と真空弁42との間に大気を導入する大気導入管43が接続されている。大気導入管43は第1管部43aと、第1管部43aから分岐した第2管部43bとからなり、第1及び第2管部43a,43bにはこれらを開閉する第1及び第2開放弁44,45が設けられている。第1管部43aは第2管部43bより径が太く形成されており、第1開放弁44を開放したときにはチャンバ12内に速く大気が導入され、第2開放弁45を開放したときには、チャンバ12内にゆっくりと大気が導入される。
【0025】
また、第2管部43bには真空検出管46が接続されており、真空検出管46にはチャンバ12の圧力を検出する真空計47が設けられている。吸気管41には真空ポンプ40と真空弁42との間から分岐したシリンダ管48が昇降シリンダ36の上部空間36bに接続されており、シリンダ管48にはこれを開閉するシリンダ弁49が設けられている。
【0026】
上記のように構成した真空包装機10の作動について説明する。包装袋の先端開口部周縁が下側狭圧ブロック31の上側に載るように包装袋をチャンバベース13に載置し、チャンバベース13の上面開口をチャンバカバー14により閉じて塞ぐ。全ての弁42,44,45及び49が閉止された状態から、真空弁42を開放するとともに真空ポンプ40を作動させてチャンバ12内を脱気して負圧化させる。真空計47により検出されるチャンバ12内の真空度が所定の圧力として0.5kPa(真空度が99.5%)となると、シリンダ弁49を開放して左右の昇降シリンダ36内を負圧化させることで左右の支持軸35を上昇させ、下側狭圧ブロック31を上昇位置まで上昇させて上側狭圧ブロック32に押圧させる。この状態にて、図示しない電源からヒータ33に通電させて発熱させると、下側及び上側狭圧ブロック31,32に狭圧されて保持された包装袋の先端開口部周縁は熱溶着されて密封される。その後、真空ポンプ40の作動を停止させるとともに、第2開放弁45と第1開放弁44とを順に開放させることにより、チャンバ12内に大気を導入して、チャンバ12内を大気圧に戻すとともに、昇降シリンダ36に大気を導入することによって支持軸35を下降させ、下側狭圧ブロック31を下降位置に戻す。このようにして、チャンバ12内に収容した包装袋は真空状態としてヒータ33により加熱溶着されて密封され、包装袋内の食材は真空包装される。
【0027】
上記のように構成した真空包装機10においては、チャンバカバー14の下面の周部には底側を幅広部15aとして開口側を幅狭部15bとした段付き溝15が形成されている。パッキン20は段付き溝15の幅広部15aに嵌合して取り付けられる取付基部21と、取付基部21から幅狭部15bより狭い幅にて段付き溝15の開口を突出して、チャンバベース13とチャンバカバー14とを互いに圧接させたときに幅狭部15b内にて弾性変形してチャンバベース13とチャンバカバー14との間を気密にシールする中空のシール部22とを備えている。
【0028】
この真空包装機10においては、取付基部21の幅を段付き溝15の幅広部15aの幅より長くするとともに、取付基部21の段付き溝15の底壁との対向面には幅方向の中央部に凹溝21aを形成した。これにより、パッキン20の取付基部21が段付き溝15の幅広部15aから外れにくくすることができるとともに、取付基部21の幅方向の両側部を凹溝21a側に圧縮するように弾性変形させることで、取付基部21を幅狭部15bを通して幅広部15aに容易に取付けることができるようになった。また、取付基部21の凹溝21aの深さ(高さ)は取付基部21の高さを超えたものでないので、取付基部21の段付き溝15の開口側で幅広部15aに突っ張る力を維持することができ、取付基部21が幅広部15aから外れにくくすることができた。
【0029】
また、取付基部21を段付き溝15の幅広部15aの幅より長くしたことで、取付基部21が幅広部15a内で幅方向に圧縮されるが、取付基部21の幅方向の両側部が段付き溝15の底側で凹溝21a側に屈撓するので(図3の矢印に示した)、取付基部21の開口側に設けた中空のシール部22の両側壁が幅狭部15b内にて外側に広がるようになって(図3の矢印に示した)、シール部22が内側に潰れたときのように段付き溝15の幅方向にて外側に倒れるのを防ぐことができる。これにより、チャンバカバー14によりチャンバベース13を閉じたときに、シール部22が幅狭部15bからはみ出にくくすることができた。特に、この実施形態の真空包装機10においては、凹溝21aを幅方向の中央部が深くなるように形成しているので、取付基部21の幅方向の両側部が段付き溝15の底側で凹溝21a側に屈撓しやすくなっており、これによって、上述した作用効果を得やすくできた。なお、取付基部21の凹溝21aの溝方向と直交する方向の断面形状を幅方向の中央部が深くなる形状の一例としてV字形またはU字形としたときであっても上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0030】
この実施形態では、取付基部21の凹溝21aの中央部の深さを幅広部15aの高さの略2/3とし、取付基部21の幅方向の両側部を凹溝21a側に屈撓しやすくしている。本発明は凹溝21aの中央部の深さを幅広部の高さの略2/3としたものに限られるものでなく、幅広部15aの高さより低い範囲でこれよりも深くまたは浅くしてもよい。具体的には、図5に例示したように、取付基部21の凹溝21aの中央部の深さを幅広部15aの高さの略1/4程度としてもよい。取付基部21の凹溝21aを深くしたときには、取付基部21の幅方向の両側部が凹溝21a側に屈撓しやすくなり、取付基部21を段付き溝15の幅広部に取り付けやすくすることができる。取付基部21の凹溝21aを浅くしたときには、取付基部21の幅方向の両側部が凹溝21a側に屈撓しにくくなり、取付基部21を段付き溝15の幅広部15aに取り付けにくくなるが、取付基部21を段付き溝15の幅広部15aから外れにくくすることができる。
【0031】
また、この実施形態では、取付基部21の高さを段付き溝15の幅広部15aの高さと同じとしたが、本発明はこれに限られるものでなく、取付基部21の高さを段付き溝15の幅広部15aの高さより高くしたものであってもよい。取付基部21の高さを段付き溝15の幅広部15aの高さより高くしたときには、図6に示したように、取付基部21の段付き溝15の底壁との対向面には凹溝21aの両側にて幅方向の中央部に向けて高くなるように傾斜面を形成するのが好ましい(図6の2点鎖線は幅広部15a内で圧縮されるまえの傾斜面を示している)。このようにしたことで、取付基部21が幅広部15a内で高さ方向にも圧縮されたときに、取付基部21の幅方向の両側部が段付き溝15の底側で凹溝21a側に確実に屈撓するようになるため、取付基部21の開口側に設けた中空のシール部22が幅狭部15b内にて外側に確実に広がるようになり、チャンバカバー14によりチャンバベース13を閉じたときに、シール部22が幅狭部15bから確実にはみ出にくくすることができた。
【0032】
真空包装機10の他の実施形態は、図7に示したように、取付基部21にはシール部22の付根部の両側を切り欠いた切欠き溝21bを形成することによって、取付基部21の幅方向の両端部を外側に広がる爪部21cとして形成するようにし、爪部21cを段付き溝15の幅広部15aの側面に弾性的に付勢させた状態にて、爪部21cの先端部を段付き溝15の段部に係止させるようにしたものである。
【0033】
このように構成した真空包装機10においては、取付基部21を段付き溝15の幅広部15a内に押し込めば、取付基部21の幅方向の両側部の爪部21cは外側に広がった状態(図7の2点鎖線に示す)から、幅広部15aの両側壁によって幅方向の内側に押されて外側に付勢された状態となり、爪部21cの先端部が段付き溝15の段部に係止するようになる。このように、取付基部21を段付き溝15の幅広部15aに押し込めば、取付基部21の両側部の爪部21cが内側に弾性変形して、爪部21cが段付き溝15の段部に係止して外れないようになり、取付基部21の取付作業が容易となる。また、取付基部21の幅方向の両側部の爪部21cは段付き溝15の段部に弾性的に外側に付勢された状態で係止しているので、取付基部21を段付き溝15の幅広部15aから外れにくくすることができた。
【0034】
また、真空包装機10のさらに他の実施形態においては、上述した実施形態と同様に、チャンバベース13とチャンバカバー14とにより密閉室が開閉自在に形成されるチャンバ12と、チャンバベース13とチャンバカバー14との間に介装されて、チャンバベース13とチャンバカバー14との間を気密にシールするパッキン20と、チャンバ12内を脱気して負圧化する真空ポンプ40とを備えている。この真空包装機10においては、チャンバカバー14の下面の周部にはパッキン20の基部を嵌合する底側を幅広部15aとして開口側を幅狭部15bとした段付き溝15を形成し、パッキン20は段付き溝15の幅広部15aに嵌合して取り付けられる取付基部21と、取付基部21から幅狭部15bより狭い幅にて段付き溝15の開口を突出して、チャンバベース13とチャンバカバー14とを互いに圧接させたときに幅狭部15b内にて弾性変形してチャンバベース13とチャンバカバー14との間を気密にシールする中空のシール部22とを備えている。図8に示したように、この真空包装機10においては、パッキン20は取付基部21とシール部22との間に溝方向と直交する方向の断面形状がく字形の部分を少なくとも含む形状として断面形状がS字形をした緩衝部23を設けるようにし、シール部22を緩衝部23を介して取付基部21から段付き溝15の開口から突出させるようにした。
【0035】
このように構成した真空包装機10においては、メンテナンスをするときにパッキン20が段付き溝15の幅方向または深さ方向にずれる方向にてシール部22に接触しても、シール部22に加えられた負荷は緩衝部23が段付き溝15の幅方向または深さ方向に弾性変形することによって吸収され、取付基部21が段付き溝15の幅広部15aから外れにくくすることができた。さらに、チャンバベース13とチャンバカバー14とを互いに圧接させたときには、緩衝部23が段付き溝15の深さ方向に弾性変形することでシール部22を段付き溝15の幅狭部15b内に収めることができ、シール部22が段付き溝15の幅狭部15bからはみ出にくくすることができた。
【0036】
上記のように構成した真空包装機10においては、チャンバベース13は上側に開口した浅い皿形をし、チャンバカバー14はチャンバベースの開口を塞ぐ板形をしたものであるが、本発明の真空包装機はこれに限られるものでなく、チャンバベース13を板形とし、チャンバカバーを下側に開口した浅い皿形をしたものであってもよく、このようにしたときにも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
上記のように構成した真空包装機10においては、チャンバカバー14の下面の周部に段付き溝15を形成し、段付き溝15にパッキン20を取り付けるようにしたが、本発明の真空包装機はこれに限られるものでなく、チャンバベース13の上面の周部に段付き溝15を形成し、段付き溝15にパッキン20を取り付けるようにしてもよく、このようにしたときにも上述したのと同様の作用効果を得ることができる。
【0038】
上記のように構成した真空包装機10においては、パッキン20のシール部22を殆どの部分で外側と遮断された中空としたものであるが、シール部22の周壁の一部を溝の方向または溝と直交する方向に開くようにして、外側と遮断されてない状態としたものであってもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…真空包装機、12…チャンバ、13…チャンバベース、14…チャンバカバー、15…段付き溝、15a…幅広部、15b…幅狭部、20…パッキン、21…取付基部、21a…凹溝、21b…切欠き溝、21c…爪部、22…シール部、23…緩衝部、40…真空ポンプ
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