(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236410
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】涙道内視鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20171113BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
A61B1/00 R
A61B1/00 713
G02B23/24 A
G02B23/24 C
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-98200(P2015-98200)
(22)【出願日】2015年5月13日
(65)【公開番号】特開2016-209448(P2016-209448A)
(43)【公開日】2016年12月15日
【審査請求日】2016年3月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】502109050
【氏名又は名称】ファイバーテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】三村 真士
(72)【発明者】
【氏名】吉本 羊介
【審査官】
田中 洋行
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−016317(JP,A)
【文献】
特開2010−158412(JP,A)
【文献】
特開2001−190492(JP,A)
【文献】
特開2014−076204(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00 − 1/32
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像伝送手段、前記画像伝送手段の先端に設けられた対物レンズ、及び照明手段を含む挿入部と、前記挿入部の基端側に設けられた把持部とを有する涙道内視鏡であって、
前記挿入部は、所定の角度で湾曲した第1の湾曲部及び第2の湾曲部と、前記対物レンズが位置する先端部と、前記把持部と連結される第1の直線部と、前記先端部と前記第1の直線部との間に位置する第2の直線部とを有し、
前記第1の湾曲部は、前記先端部と前記第2の直線部との連結部分に形成され、前記第2の湾曲部は、前記第2の直線部と前記第1の直線部との連結部分に形成されており、
前記第1の湾曲部及び前記第2の湾曲部は、前記第1の直線部に対して同じ方向に湾曲しており、
前記第1の直線部と前記第2の直線部とのなす角度である前記第2の湾曲部の角度は、前記先端部と前記第2の直線部とのなす角度である前記第1の湾曲部の角度よりも大きいことを特徴とする涙道内視鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は涙道内視鏡に関する。
【0002】
涙道内視鏡は、涙道疾患の診断、治療等に用いられる。涙道内視鏡は一般に細径の挿入部を有している。医師は、涙道内視鏡の挿入部を患者の涙点から挿入し、涙小管、涙嚢、涙嚢窩から鼻涙管(骨性鼻涙管)を通して下鼻道まで到達させる。
【0003】
このような涙道内視鏡として、特許文献1には挿入部の一部を湾曲させた構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−16317号公報
【0005】
ここで、涙小管や鼻涙管の形状、鼻涙管の開口部と下鼻道(下鼻甲介)との位置関係等、涙道の医学的構造には個人差がある。よって、涙道内視鏡を挿入する際、医師は挿入部を三次元的に動かしたり、捻りを加える等、複雑な操作が必要となる。
【0006】
一方、涙道内視鏡の挿入部が骨性鼻涙管に挿入されると、涙道内視鏡操作の自由度が大きく制限される。
図8は、患者の頭蓋骨Fを模式的に示した図である。
図8に示すように、涙道内視鏡の挿入部が骨性鼻涙管NDに挿入された状態で涙道内視鏡を操作する場合、骨性鼻涙管NDの走行角度によっては、患者の前頭部(前頭骨FB)と涙道内視鏡X(挿入部Y)とが干渉し、操作が困難となり検査が遂行できない場合がある。顔の彫りが深い患者の場合、前頭部との干渉はより顕著である。また、このような状態で無理やり挿入しようとすると、挿入部が変形する可能性もある。
【0007】
本発明の目的は、あらゆる涙道への挿入が可能で容易な涙道内視鏡を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る涙道内視鏡は、画像伝送手段、前記画像伝送手段の先端に設けられた対物レンズ、及び照明手段を含む挿入部と、前記挿入部の基端側に設けられた把持部とを有する涙道内視鏡であって、前記挿入部は、所定の角度で湾曲した第1の湾曲部及び第2の湾曲部を有する。
【0009】
このような涙道内視鏡によれば、挿入部が患者の前頭部に干渉し難いため、涙道への挿入が容易となる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、請求項2に係る涙道内視鏡は、請求項1記載の涙道内視鏡であって、前記第2の湾曲部の角度は、前記第1の湾曲部の角度よりも大きい。
【0011】
或いは、上記課題を解決するために、請求項3に係る涙道内視鏡は、請求項1記載の涙道内視鏡であって、前記第2の湾曲部の角度は、前記第1の湾曲部の角度よりも小さい。
【0012】
このように、湾曲部のうち、前頭部により干渉し易い側の角度を大きくすることにより、前頭部への干渉をより少なくすることができる。
【0013】
或いは、上記課題を解決するために、請求項4に係る涙道内視鏡は、請求項1記載の涙道内視鏡であって、前記第2の湾曲部の角度と前記第1の湾曲部の角度とは等しい。
【0014】
このように、2つの湾曲部の角度を等しくした場合であっても、挿入部が患者の前頭部に干渉し難いため、涙道への挿入が容易となる。
【0015】
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る涙道内視鏡は、請求項1または2記載の涙道内視鏡であって、前記挿入部は、前記対物レンズが位置する先端部、前記把持部と連結される第1の直線部、及び前記先端部と前記第1の直線部との間に位置する第2の直線部を有し、前記第1の湾曲部は、前記先端部と前記第2の直線部との連結部分に形成され、前記第2の湾曲部は、前記第2の直線部と前記第1の直線部との連結部分に形成されている。
【0016】
このような構成によれば、挿入部が患者の前頭部に干渉し難いため、涙道への挿入が容易となる。
【0017】
また、上記課題を解決するために、請求項4に係る涙道内視鏡は、請求項3記載の涙道内視鏡であって、前記第1の湾曲部及び前記第2の湾曲部は、前記第1の直線部に対して同じ方向に湾曲している。
【0018】
このように、2つの湾曲部を同じ方向に湾曲させることにより、医師は涙道内視鏡の先端がどの方向を向いているのかを把握し易くなる。よって、涙道への挿入がより容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る涙道内視鏡システムの全体構成を示す図である。
【
図2】実施形態に係る涙道内視鏡の構成を示す図である。
【
図3】実施形態に係る涙道内視鏡の挿入部を示す図である。
【
図4】実施形態に係る涙道内視鏡の挿入部を示す図である。
【
図5】実施形態に係る涙道内視鏡の挿入部の形状を示す図である。
【
図6】実施形態に係る涙道内視鏡の挿入部の形状を示す図である。
【
図7A】実施形態に係る涙道内視鏡の挿入状態を示す図である。
【
図7B】実施形態に係る涙道内視鏡の挿入状態を示す図である。
【
図8】従来の涙道内視鏡の挿入状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
==涙道内視鏡システムの概要==
図1は、本実施形態に係る涙道内視鏡システム1の全体構成を示す概略図である。涙道内視鏡システム1は、涙道内視鏡2、イメージングシステム3及びモニタ4を含む。
【0021】
涙道内視鏡2は、涙道内を観察するための内視鏡である。涙道内視鏡2は、挿入部2a、把持部2b、ケーブル部2c等を含む(詳細は後述)。イメージングシステム3は、映像処理装置を有し、涙道内視鏡2で得られた映像を処理してモニタ4に表示させる。また、イメージングシステム3は、光源装置を有し、涙道内視鏡2が涙道内を照明するための照明光を供給する。
【0022】
==涙道内視鏡の概要==
図2は、本実施形態に係る涙道内視鏡2の全体構成を示す概略図である。
図3は、挿入部2aを先端側から見た正面図である。
図4は、
図3のA−A断面である。
【0023】
挿入部2aは、患者の涙点から涙道内に挿入される部分である。挿入部2aは、外装パイプ20を有する。外装パイプ20は、ステンレス鋼等の金属で構成される。外装パイプ20内には、イメージガイドファイバー21、対物レンズ22、複数のライトガイドファイバー23、注水チャンネル24が設けられている(
図3及び
図4参照)。
【0024】
イメージガイドファイバー21は、その先端側に設けられた対物レンズ22を介して得られた映像をイメージングシステム3に伝送する。イメージガイドファイバー21は、石英、多成分ガラス、プラスチック等で形成されている。ライトガイドファイバー23は、イメージングシステム3内の光源装置からの光を導通し、涙道内を照明する。ライトガイドファイバー23は、ガラス、プラスチック等で形成されている。注水チャンネル24は、涙道内に生理食塩水等を供給する。イメージガイドファイバー21は「画像伝送手段」の一例であり、ライトガイドファイバー23は「照明手段」の一例である。
【0025】
なお、「画像伝送手段」としては、イメージガイドファイバー21の他、CMOS、CCD等の撮像素子を用いてもよい。この場合、挿入部2aの先端側に撮像素子を配置する。また、「照明手段」としては、LEDを用いてもよい。この場合、挿入部2aの先端側にLEDを配置する。
【0026】
把持部2bは、涙道内視鏡2を使用する際に術者が把持する部分である。把持部2bの先端側は挿入部2aの基端側(直線部L2の基端側)と連結されている。把持部2bの基端側には、注水口金25が設けられている。注水口金25は、生理食塩水等を充填したシリンジ等が接続される部分であり、注水チャンネル24内に生理食塩水等を供給するために設けられている。
【0027】
また、把持部2bの基端側の側面には、ケーブル部2cが連結されている。ケーブル部2cは、ケーブル分岐部26を介して2つに分岐している。分岐した一方の末端にはイメージガイドプラグ27が設けられ、他方の末端にはライトガイドプラグ28が設けられている。
【0028】
イメージガイドファイバー21は、挿入部2aから把持部2b及びケーブル分岐部26を通ってイメージガイドプラグ27まで延出している。イメージガイドプラグ27をイメージングシステム3のカメラ側ソケットに接続することにより、涙道内視鏡2はイメージガイドファイバー21で得られた映像をイメージングシステム3に伝送できる。
【0029】
ライトガイドファイバー23は、挿入部2aから把持部2b及びケーブル分岐部26を通ってライトガイドプラグ28まで延出している。ライトガイドプラグ28をイメージングシステム3の光源側ソケットに接続されることにより、涙道内視鏡2は涙道内を照明することができる。
【0030】
==挿入部の詳細==
次に、
図4及び
図5を参照して挿入部2aの詳細について述べる。
図5は、挿入部2aを側面から見た図である。本実施形態に係る挿入部2aは、先端部L1、第1の直線部L2、第2の直線部L3、第1の湾曲部C1、第2の湾曲部C2を含む。
【0031】
先端部L1は、挿入部2aの先端側の部分である。本実施形態における先端部L1は、対物レンズ22が位置する部分である(
図4参照)。
【0032】
第1の直線部L2及び第2の直線部L3は、挿入部2aの直線状の部分である。第1の直線部L2は、その一端(基端側)が把持部2bと連結される。第2の直線部L3は、先端部L1と第1の直線部L2との間に位置する。挿入部2aにおける各部位の長さは、第2の直線部L3が最も長く、次いで第1の直線部L2、先端部L1の順となっている。
【0033】
第1の湾曲部C1及び第2の湾曲部C2は、所定の角度で湾曲している。第1の湾曲部C1は、先端部L1と第2の直線部L3との連結部分に形成されている。すなわち、第1の湾曲部C1の先端側は先端部L1(先端部L1の基端側)と連結し、基端側は第2の直線部L3(第2の直線部L3の先端側)と連結している。第2の湾曲部C2は、第2の直線部L3と第1の直線部L2との連結部分に形成されている。すなわち、第2の湾曲部C2の先端側は第2の直線部L3(第2の直線部L3の基端側)と連結し、基端側は第1の直線部L2(第1の直線部L1の先端側)と連結している。
【0034】
本実施形態において、第1の湾曲部C1及び第2の湾曲部C2は、第1の直線部L2(把持部2b)の長手方向に対して同じ方向(
図4及び
図5の紙面上方)に湾曲している。このように複数の湾曲部を同じ方向に湾曲させることにより、涙道内視鏡2を操作する医師は、その先端がどの方向を向いているのかを把握し易くなる。よって、手技を円滑に行うことができ、患者に与える苦痛も少ない。
【0035】
また、
図5に示すように、本実施形態において、第1の直線部L2に対する第2の直線部L3の傾き角αは、第1の直線部L2に対する先端部L1の傾き角βよりも大きくなっている。但し、傾き角αと傾き角βが同じ角度であってもよいし、傾き角αが傾き角βより小さくてもよい。
【0036】
なお、挿入部2aに形成される湾曲部の数は特に限定されるものではないが、涙道内視鏡2の先端の方向を容易に把握するためには湾曲部は2つがより好ましい。
【0037】
また、第1の湾曲部C1の角度と第2の湾曲部C2の角度は等しくてもよいし、異なっていてもよい。ここで、第1の湾曲部C1の角度とは、先端部L1と第2の直線部L3とのなす角(
図4に示す角度A)である。第2の湾曲部C2の角度とは、第1の直線部L2と第2の直線部L3とのなす角(
図4に示す角度B)である。
【0038】
たとえば、第2の湾曲部C2の角度を第1の湾曲部C1の角度よりも大きく形成することが可能である。挿入部2aが骨性鼻涙管に挿入された状態で涙道内視鏡2を操作する場合、手元側(把持部2b側)の挿入部2aと前頭部との干渉がより起こりやすい。よって、手元側の湾曲部(第2の湾曲部C2)の角度を大きくすることにより、前頭部への干渉を効果的に避けることが可能となる。或いは、患者の骨格の違い等によっては、第2の湾曲部C2の角度を第1の湾曲部C1の角度よりも小さく形成してもよい。
【0039】
また、
図6に示すように、挿入部2aは、先端部L1、第1の湾曲部C1、第2の湾曲部C2を含み、第1の直線部L2及び第2の直線部L3を含まない構成としてもよい。
【0040】
図7A及び
図7Bは、本実施形態に係る涙道内視鏡2を涙道に挿入する例を示した図である。
図7Aは、頭蓋骨の正面斜視図であり、目の部分を拡大した図である。
図7Bは、頭蓋骨を側面から見た図であり、涙嚢窩FSL(
図7A参照)から骨性鼻涙管ND内に挿入部2aの先端が挿入された状態を示す。なお、
図7Aに示す涙道内視鏡2と
図7Bに示す涙道内視鏡2とでは湾曲部の角度が異なっている。第1の湾曲部C1を設けることにより、涙点から屈曲した涙小管を通り、骨性鼻涙管NDへの挿入部2aを導くことが容易となる。そして、第2の湾曲部C2を設けることにより、骨性鼻涙管NDに挿入部2aが挿入された状態で涙道内視鏡2を操作した場合であっても、挿入部2aが前頭骨FBに干渉し難くなる。すなわち、涙道内視鏡2の操作性が向上するため、医師は涙道内視鏡2の挿入操作を容易に行うことができる。よって、患者の負担も少ない。また、涙道内視鏡2に無理な力がかかることもないため、挿入部2aの変形も防止することができる。本発明の構成は、特に骨性鼻涙管NDが前方に傾斜していたり回旋している場合等、従来の構成では骨性鼻涙管NDへ挿入部2aを導くこと自体が困難な場合により効果的である。
【0041】
上記実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。また、上記の構成は、適宜組み合わせて実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。それらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 涙道用内視鏡システム
2 涙道内視鏡
2a 挿入部
2b 把持部
2c ケーブル部
3 イメージングシステム
4 モニタ
20 外装パイプ
21 イメージガイドファイバー
22 対物レンズ
23 ライトガイドファイバー
24 注水チャンネル
25 注水口金
26 ケーブル分岐部
27 イメージガイドプラグ
28 ライトガイドプラグ
L1 先端部
L2 第1の直線部
L3 第2の直線部
C1 第1の湾曲部
C2 第2の湾曲部