特許第6236416号(P6236416)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 輝能科技股▲分▼有限公司の特許一覧 ▶ プロロジウム ホールディング インクの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236416
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】活性材料
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/40 20060101AFI20171113BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20171113BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01M4/40
   H01M4/38 Z
   H01M4/36 C
   H01M4/36 A
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-141275(P2015-141275)
(22)【出願日】2015年7月15日
(65)【公開番号】特開2016-29651(P2016-29651A)
(43)【公開日】2016年3月3日
【審査請求日】2015年8月14日
(31)【優先権主張番号】103124345
(32)【優先日】2014年7月16日
(33)【優先権主張国】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512306818
【氏名又は名称】輝能科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】PROLOGIUM TECHNOLOGY CO., LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】512316932
【氏名又は名称】プロロジウム ホールディング インク
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 真二郎
(72)【発明者】
【氏名】楊思▲ダン▼
【審査官】 川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/133566(WO,A1)
【文献】 特開2005−174924(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/031929(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
H01M 10/00−10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置に使用される活性材料であって、
リチウム活性物質と、水分と酸素をバリアするために使われ、前記リチウム活性物質を完全に覆う複合層とを備え、
前記複合層は、前記リチウム活性物質に直接隣接し水分と酸素をバリアするために使われる保護層であって、第1の保護材料と第2の保護材料とを有し、前記第1の保護材料がリチウム金属/リチウムイオンと合金に形成され、前記第2の保護材料がリチウム金属/リチウムイオンと合金に形成できず、前記第1の保護材料の含有量が0.1重量%以上である保護層と、前記保護層と隣接し、リチウム金属/リチウムイオンと合金に形成されず、構造が崩れない構造層とを含むことを特徴する、
活性材料。
【請求項2】
前記保護層は、更に前記リチウム活性物質の外表面を覆う請求項1に記載の活性材料。
【請求項3】
前記保護層は、更に前記構造層で覆われる請求項1に記載の活性材料。
【請求項4】
前記構造層は、前記リチウム活性物質の外表面を局所的に覆う請求項1に記載の活性材料。
【請求項5】
前記構造層は多孔性材料から構成される請求項1に記載の活性材料。
【請求項6】
前記構造層は、更に複数スルーホール及び/または止り穴を含む請求項1に記載の活性材料。
【請求項7】
前記構造層は、ポリマー材料、セラミックス材料、繊維材料、金属材料、固体電解質、コロイド電解質またはその組み合わせから選ばれる請求項1に記載の活性材料。
【請求項8】
前記構造層の材料は金属材料であり、銅、ニッケル、鉄、銅合金、ニッケル合金、鉄合金または上記材料の組み合わせから選ばれる請求項1に記載の活性材料。
【請求項9】
前記保護層及び前記構造層は、互いに積層して設置される請求項1に記載の活性材料。
【請求項10】
前記リチウム活性物質の材料は、リチウム金属、リチウム化合物またはその組み合わせから選ばれる請求項1に記載の活性材料。
【請求項11】
前記保護層における第1の保護材料の成分には、一つの金属及び/または一つのメタロイド材料を含む請求項1に記載の活性材料。
【請求項12】
前記金属及び/またはメタロイド材料は、アルミニウム、スズ、シリコン、アルミニウム合金、スズ合金、シリコン合金或はリチウム合金に形成される材料を含む請求項11に記載の活性材料。
【請求項13】
前記第1の保護材料及び/又は第2の保護材料は非合金態或いは合金態であり、前記第2の保護材料はリチウムと合金に形成されない物質である請求項1に記載の活性材料。
【請求項14】
前記保護層の少なくとも一部と合金化反応を発生する、リチウムイオンから提供される媒体によって酸化還元反応を行う請求項1に記載の活性材料。
【請求項15】
前記媒体は、液体電解質、固体電解質、コロイド電解質、液体イオン、リチウム塩含有有機溶液、リチウム塩含有無機溶液またはこれらの組み合わせから選ばれる請求項14に記載の活性材料。
【請求項16】
前記構造層は更に導電性を持つ請求項1に記載の活性材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性材料に関し、特に通常環境で直接保管、作業できる活性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
給電装置に電気を提供させるために、給電装置において、化学エネルギーと電気エネルギーを変換する材料として適当な活性材料を使用する必要がある。例えば、一般的なリチウムバッテリーによく使われる活性材料としてリチウム化合物と、炭含有化合物等が挙げられる。このうち、リチウム化合物において純リチウム金属がより高いエネルギー密度を持つが、リチウム金属の化学活性が非常に高く、空気における水分と接触すると、酸素によって酸化還元反応が発生し始める。したがって、リチウム金属を活性材料の原材料として給電装置に使用するには、適切な環境で保管する必要があり、例えば、環境に含有される水分と酸素の含有量は極低く、かつ温度と湿度も良好に制御される作業環境で作製しなければいけない。よって、リチウム金属が使用される給電装置の作製コストが大幅に向上する。また、リチウム金属は活性が極高い金属であるので、適切な保管環境或いは良好な作業環境ではないと、リチウム金属自体に激しい酸化還元反応である燃焼反応が発生しやすい。よって、リチウム金属は使用上の安全性に懸念がある。
【0003】
さらに、給電単元の電極における反応単元、例えばリチウムがミクロン或いはナノメートルであると、表面積の増加によって、電気化学特性を更に向上することはよく知られている。したがって、今までの技術はこの趨勢について、殻層としてミクロン或いはナノメートルのボール状リチウム金属で炭酸リチウムを覆う概念が報告された。これによって、リチウム金属の極高い化学活性による保管、作業しにくい問題を解決する。しかし、粒径の低下による高い表面積では炭酸リチウムの活性が依然に高いので、一般的な電極でスラリ混合のプロセスにおいて、例えば、PVDFを含有するNMP溶液と反応が発生するなどの反応が発生しやすい。したがって、低極性の溶液、例えばトルエンを使用してスラリ混合を行わなければいけないが、極性が低い溶液は、一般的に人体に対して高い毒性があり、かつ環境を汚染する恐れもある。
【0004】
本発明は上述した公知技術の欠点に対して、新しい活性材料を提出し、上記の問題を解決する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、リチウム活性物質の外部に、少なくとも一つの保護層と少なくとも一つの構造層からなる、リチウム活性物質の表面を完全に覆う複合層が形成されることによって、外部環境における水分、酸素などの物質を完全に隔絶することによって、化学反応性をもつリチウム活性物質が一般的な環境に保管され、活性材料を製造する際に環境制御に対する依存性が低減できる活性材料を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記リチウム活性物質の表面を覆う複合層が活性材料に酸化還元反応を進行する時にイオン導電経路を提供する役割を担う共に、構造強度を向上させることによって反応した保護層材料をリチウム活性物質から完全に離れないように所定の空間範囲に制限して固定し、活性材料に合金化と脱合金化反応を繰り返し行う過程においてゆるい構造で構造が崩れることが発生しない活性材料を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、複合層における保護層は第1の保護材料と第2の保護材料を含み、かつ第2の保護材料はリチウムと反応せず、リチウム金属/リチウムイオンと合金に形成できる材料の含有量は0.1%以上である活性材料を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、リチウム活性物質と複合層における保護層との間に設けられるバリア層によって、直接に接触しないようにリチウム活性物質と保護層を区分し、活性材料に必要な反応を行う前にリチウム活性物質と保護層が先に化学反応、例えば合金化反応を発生する場合が低減できる活性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明はリチウム活性物質と、少なくとも1つの保護層及び少なくとも1つの構造層からなり、リチウム活性物質を完全に覆う複合層とを含む活性材料を提供する。
保護層はリチウム活性物質と合金に形成できる少なくとも1つの材料を含有する。そして、構造層はリチウムと合金反応を発生しない。複合層は、有効に水分と酸素をバリアすることによって、活性物質を完全に外部環境と隔絶させる。したがって、活性材料は直接に通常環境で保管、作業できる一方、構造層が有する構造応力によって、反応した保護層材料の構造がゆるくて崩れることが避けられる。
【0010】
本発明の目的、技術内容、特徴及び達成できる効果をさらに理解するために、具体的な実施例について以下に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1A】本発明に係る活性材料の1つの実施形態の構造を示す模式図である。
図1B】本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。
図1C】本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。
図2A】本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。
図2B】本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。
図3A】本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。
図3B】本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。
図3C】本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の趣旨は、遊離イオンを含有する給電装置、例えばリチウムバッテリーに適用される活性材料を提供することである。
この活性材料は、活性物質、例えばリチウム活性物質と、リチウム活性物質を完全に覆う複合層とを含む。この複合層は、少なくとも1つの保護層と、少なくとも1つの構造層から組成する。複合層は、保護層と構造層との材料選択及び対応位置関係によって、有効に水分と酸素をバリアしてリチウム活性物質を完全に外部環境と隔絶させる。したがって、活性材料は、通常環境で直接保管、作業でき、構造がゆるくなる保護層材料を複合層内に分散し、リチウム活性物質と離れすぎることを避けることができる。したがって、保護層の逆使用率が大幅に向上すると共に、構造が崩れることによって活性材料が電極内で破壊されることを抑制できる。
【0013】
以下の通り、保護層と構造層との特性を更に定義する。
【0014】
保護層の条件は、1.少なくとも1つのリチウム活性物質及び遊離イオンと合金化反応が発生できる材料を含み、かつ形成された合金物質の構造がゆるく、遊離イオンとリチウム活性物質が電気化学反応を行う経路を提供できる。2.給電装置の内部に封入する前に、リチウム活性物質が外界環境における水分或いは酸素等の反応要素と接触することによって激しい酸化還元反応が発生することを避けるようにリチウム活性物質を外界環境と隔絶させる。つまり、保護層にとって良好な水分、酸素のバリア効果を発揮することが必要である。
【0015】
構造層の条件は、1.構造型体変異(例えば、合金化から格子が膨張してゆるくなる)が発生する保護層及び/或はリチウム活性物質を支えるための所定な強度を備え、かつ活性材料と電極層における粘着剤との粘着点として提供し、活性材料において表面構造と型態の変化で電極層の構造が崩れることを低減する。2.イオンを保護層に進入させて保護層に酸化還元反応を行うために、イオン伝導性を提供するエリアを備える。3.更に導電性を含有し、活性材料の内部抵抗を低減することに有用である。
【0016】
上記した本発明の趣旨について以下詳しく説明する。
【0017】
まず、図1Aの本発明に係る活性材料の1つの実施形態の構造を示す模式図を参照する。
【0018】
図面のように、本発明に係る活性材料10は、リチウム活性物質12と、リチウム活性物質12を完全に覆う複合層14とを備える。複合層14は、保護層142と構造層144とを備える。
【0019】
保護層142は、リチウム活性物質12を完全に保護層142の内部に覆うように、リチウム活性物質12の外表面に貼り付ける。このうち、リチウム活性物質12の外表面は保護層142で完全に覆われるので、リチウム活性物質12が外部環境における水分或いは酸素等の反応要素と接触することによって激しい酸化還元反応が発生しないように、リチウム活性物質12は完全に外部環境と隔絶され、良好な水分、酸素バリア効果を達する。
【0020】
保護層142の外表面の上に構造層144が少なくとも局所的に配置され、合金化した保護層142及びリチウム活性物質12が電極板(図示しない)の空間に限制される上で、構造層144はリチウム活性物質12の最外層の表面を覆うから、構造層144は有効に活性材料10全体の形体構造強度を向上できる。特に保護層142が合金化された後に構造がゆるい合金物質が発生する時に、構造層144によってゆるい合金物質を所定な空間範囲内で保護層142の近くに固定して限制する。
したがって、脱合金化反応を行う時に、脱合金化を行った後に、ゆるい合金物質は保護層142と離れすぎず、次回の合金化反応を行う時に、リチウム活性物質12及び崩れていない保護層142の近傍に分散される合金物質は、適切な電圧で再び合金化反応を進行できる。また、構造層144で合金物質の分布を固定或は限制することによって、活性材料10全体の導電性とイオン導電度を維持できる。
【0021】
詳しく述べると、本発明に係るリチウム活性物質12は、リチウム金属、リチウム化合物及びこれらの組み合わせから選ばれ、かつリチウム活性物質は粒状、シート状或いは何れの形状であってもよい。
本発明に係る保護層142は、少なくとも1つの金属物質及び/又は一つの類金属物質を含有してもよく、もちろん、多様な金属物質及び/又は類金属物質を含有してもよい。在リチウムバッテリーの実施の形態において、遊離イオンはリチウムであるので、保護層142はリチウムと合金に形成できるアルミニウム金属、アルミニウム合金、スズ金属、スズ合金、シリコン、シリコン合金又はリチウムと合金に形成できる何れの金属及び/或は合金から選ばれる。
なお、本発明に係る遊離イオンは一般的な給電装置に採用される電解質から提供することができ、かつ上記電解質はその型態に限られず、例えば、媒体は液体電解質、固体電解質、コロイド電解質、液体イオン及びこれらの組み合わせから選ばれる。
【0022】
以下、リチウムバッテリーを給電装置として例を挙げる。活性材料10における保護層142は、リチウムバッテリー内からの電解質であるリチウムイオン(遊離イオン)と合金化した後に、或いはリチウムイオンが保護層142の表面上に先に還原反応を行ってリチウム金属を形成した後に、さらに保護層142においてリチウムと合金に形成できる材料と合金化反応を行う。発生した合金物質の格子が膨張して活性材料10全体における保護層142が少しずつ崩れるが、保護層142の主な効果は、リチウム活性物質12がリチウムバッテリー内部に封入する前に接触可能な水分、酸素をバリアすることであるので、活性材料10が完全にリチウムバッテリー内部に封入すると、活性材料10の保護層142が合金化と脱合金化反応が繰り返し行われて保護層142の構造が膨張して崩れるとしても、実質的には、リチウム活性物質12の保護効果に影響が及ばない。
【0023】
しかし、公知の活性材料にとって、少しずつ崩れている保護層は活性材料の特性表現に影響する恐れもある。その原因は、公知の活性材料の外表面上は構造層で覆われないので、崩れた保護層が所定の数に達し、かつ前記崩れた保護層が合金物質になった後に所定の空間の範囲内に限られないと、合金物質の分布の距離が長すぎるため又は合金物質全体の構造がゆるくなりすぎるため、活性材料の導電性とイオン導電度の何れもが劣化して、活性材料の反応活性が低減され、極性化現象が更にひどくなる。換言すると、合金化した保護層は、合金化反応の程度を低下させる(酸化還元の反応速度が遅くなる)ので、何回か反応するうち、リチウムバッテリー全体におけるリバーシブル電気容量が少しずつ低減される。
この外、公知の活性材料の最外層は保護層であるため、保護層は公知の活性材料と電極層における粘着剤(一般的にはポリマー材料である)との粘着点になる。保護層と電解質におけるリチウムイオンとが複数回の合金化と脱合金化反応した後に、保護層の構造が最外部から少しずつ膨張して崩れた後、公知の活性材料と電極層における粘着剤との粘着点も崩れ、最後は公知の活性材料が電極層中から剥離する。これによって、リチウムバッテリー全体の電性表現に影響を及ぼす。
これに対して、本発明の活性材料10は、その最外層が構造層144に覆われるので、合金化した保護層142が所定の空間範囲内に固定又は制限される。活性材料10と電極板内粘着剤と結合点としてもよく、たとえ何回反応しても、構造層144の構造は崩れず、活性材料10が電極層から剥離される問題も当然発生しない。
【0024】
以上から、本発明に係る構造層144は所定の構造強度を提供でき、活性材料10の最外層全体に所定の構造応力があって活性材料10の形体を維持できるほか、良好かつ安定的な結合力を提供でき、更に何回も反応した後に構造が膨張して崩れた、合金化した保護層142を所定の空間範囲内に維持できるので、構造層144は少なくとも局所に保護層142と接触する形態になる必要がある。
この実施例において構造層144は少なくとも局所に保護層142を覆う形態でリチウム活性物質12を覆う。換言すると、構造強度が十分である場合、構造層144は、完全に保護層142を覆う必要がなく、部分的に保護層142を覆ってもよい。
【0025】
この実施例において、構造層144は構造強度が高く且つ導電性を持つ金属、例えば銅層であってもよい。また、構造層144にイオン導電度を持たせるために、銅層は完全に保護層142を覆わず、孔部16或いは隙間を設けて、電子とイオンをここで交換して酸化還元反応を行い、イオン導電度を提供するエリアとすることができる。孔部16又は隙間に部分的な保護層142が現れるので、遊離イオンを保護層142と直接接触させ、露出した保護層142が合金化されてゆるい構造になり、リチウム活性物質12を露出させて酸化還元反応を行う。
【0026】
さらに、図1Bを参照する。図1Bは本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。かかる実施例と上記実施例において、複合層14は保護層142と構造層144とが互いに積層して配置してなる点で異なっている。
この構造に設計する理由は、水分或は酸素をバリアできない材料、例えば銅を選んで構造層144の材料とする場合でも、リチウム活性物質12を給電装置内部に封入する前に、有効に環境中の水分と酸素を隔絶する効果も兼備できるからである。このとき、構造層144が必要とするイオン導電度エリアは、直接に隣接する保護層142から形成される。
【0027】
更に、図1Cを参照する。図1Cは、本発明に係る活性材料の他の実施形態の構造を示す模式図である。此実施例と図1Aの実施例は、構造層144の材料として材料自身は多孔質材料である点で異なっている。
例えば、適当な材料として、ポリマー材料、陶瓷材料、繊維材料及びその組み合わせが挙げられる。また、構造層144は、イオンを通過させる特性を持つほか、構造層144の材料自身が導電性を有して構造層144に導電性を持たせてもよく、直接に導電性を持つ材料を使用するはか、導電特性を持たない材料に適当な導電材料を添加してもよい。例えば、適当の導電材料として、カーボンブラック、硬質炭素、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、炭素粉末、金属粉末等が挙げられる。更に、構造層144の孔部に固体或コロイド電解質を充填してもよく、また、浸潤の方法によりポリマー材料に固体或コロイド電解質を吸着させてもよい。
【0028】
なお、本発明に係る活性材料10の保護層142は多種金属材料及び/又はメタロイドを含んでもよく、ここでは二つの金属材料として例を挙げる。保護層142における第1の保護材料はリチウム金属/リチウムイオンと合金に形成でき、第2の保護材料はリチウム金属/リチウムイオンと合金に形成できず、かつ二つの金属は非合金態及び/又は合金態の形式で存在できる。このうち、第1の保護材料の含有量は0.1重量%以上であり、リチウム金属/リチウムイオンと合金に形成できる金属物質の含有量は少なくとも≧0.1重量%であり、第2の保護材料はリチウムと合金に形成されない。

【0029】
第1の保護材料として、アルミニウム、スズ、シリコン、アルミニウム合金、スズ合金、シリコン合金或はリチウム合金に形成される材料が挙げられ、第2の保護材料として、単独の金属でも複数の金属又はメタロイド材料を組み合わせてもよい。例えば、銅、ニッケル、鉄、チタン、亜鉛、銀、金、銅合金、ニッケル合金、鉄合金、チタン合金、亜鉛合金、銀合金、金合金又はその組み合わせが挙げられる。
したがって、この保護層142は、二元合金、三元合金或いは多元合金の組み合わせであってもよい。例えば、保護層142が二元合金である場合、リチウムイオン/リチウム金属と合金に形成できるスズ金属と、チウムイオン/リチウム金属と合金反応を発生しないニッケル金属からなるニッケル−スズ合金であり、このうち、スズの含有量は0.1%以上である。
【0030】
リチウム金属/リチウムイオンと合金に形成できる第1の保護材料がリチウムイオン/リチウム金属と合金に形成される時に、リチウム金属/リチウムイオンと合金に形成できない第2の保護材料が存在するため、保護層142の体積が膨張する程度は有効に低下される。これによって、リチウム金属/リチウムイオンと合金に形成できない金属が存在しているために、合金が形成された後に材料全体の膨張率が有効に低減されることによって、合金物質の発生で体積の膨張によるリバーシブル電気容量が低下する問題を解決する。
【0031】
次に、図2A図2Bを参照する。図2A図2Bは、本発明に係る活性材料の他の二つの実施形態である。このうち、図2Aで示される実施形態において、活性材料10の構造層144は更に複数の止り穴を含む。止り穴の中の、下方の構造はリチウム活性物質12であり、保護層142はリチウム活性物質12の上方にある。図2Bで示される実施形態において、構造層144の止り穴におけるリチウム活性物質12と保護層142とは、実質的に接触しない。また、前記構造層144における止り穴はスルーホールの形態であってもよい。
【0032】
また、図3Aから図3Cには、本発明に係る活性材料10がバリア層18を含有する形態が開示されている。このうち、バリア層18の主な機能はリチウム活性物質12と複合層とを分離させることである。
バリア層18が備える条件は以下の通りである。1.リチウムと反応しない。2.導電性を持って外部電子をリチウム活性物質12に進入させて酸化還元反応を発生する。3.イオン導電度はバリア層18自体の材料特性でもよいし、保護層142からなる合金物質で媒体(電解質)をバリア層18に持ち込んでリチウム活性物質12と接触してもよい。これによって、イオンをリチウム活性物質12と伝導させて活性材料10全体の電位がリチウム活性物質12の電位と同様になる。
【0033】
構造的には、バリア層18はリチウム活性物質12の外表面と隣接しても、その外表面を覆ってもよく、保護層142はバリア層18の外表面と隣接しても、バリア層18の外表面を覆ってもよい。例えば、図3Aの実施形態では、バリア層18が直接にリチウム活性物質12の外表面を完全に覆う形態が開示され、図3Bの実施形態においてはバリア層18が直接リチウム活性物質12の外表面を局所的に覆う形態が開示される。
図3Cの実施形態においてバリア層18が直接リチウム活性物質12の外表面を局所に覆う形態が開示されているが、図3Bと異なる点は、図3Cの実施形態において、バリア層18がさらに少なくとも1つの不動態金属エリア182及び少なくとも1つの空乏エリア184を含み、このうち、不動態金属エリア182はリチウム活性物質12の外表面に位置し、かつリチウムと合金に形成されない点である。空乏エリア184は不動態金属エリア182と隣接して配置され、かつ複合層14とリチウム活性物質12との間に位置する。しかし、上記いずれの形態においても、バリア層18の設置により、リチウム活性物質12を複合層14における保護層142と隔絶させ、リチウム活性物質12がファラデー反応を行う前に不適切な条件(例えば高温)で予め保護層142と望ましくない合金化反応が発生することを避けて、保護層142の全体性を確保する。
【0034】
なお、図3Cで開示される実施形態において、不動態金属エリア182の材料は銅、ニッケル、鉄、チタン、亜鉛、銀、金、銅合金、鉄合金、チタン合金、亜鉛合金、銀合金、金合金或は他のリチウムと反応しない物質であり、空乏エリア184は隙間であってもよい。空乏エリア184は、保護層142と媒体におけるリチウムイオンと反応して合金物質を形成する時に、合金化反応した後に構造の体積が膨張するバーファー空間を提供すると共に、イオンを流す経路になる。
【0035】
詳しく言うと、導電性を持つバリア層18は、活性材料10を負極系全体(或は負極板、図示しない)と同じ電位に維持させる。これによって、活性材料10が完全に給電装置内部に封入され、媒体を活性材料10に提供する際に(例えば、媒体が液体電解質である場合に、この工程は液体電解質を給電装置内に注入し、活性材料10を完全に液体電解質に浸入する)、リチウム活性物質12がイオン導通の状態になるので、活性材料10全体の電位がリチウム活性物質12の電位と同じようになり、液体電解質におけるリチウムイオンが均一かつ繊細的に保護層142の表面上に沈殿され、更に複合層14の保護層142と合金反応を行って体積が小さい合金物質に分解される。さらに、化合物が膨張して砕いた後に、保護層142が電気化学反応の経路になり、バリア層18は液体電解質の導入(イオンの導入)によってイオン伝導経路になる。
【0036】
材料特性について、バリア層18は導電/イオンの材料からなる層状構造であってもよく、採用する材料は導電性ポリマー、例えばPA或はいずれの導電性とイオン伝導性を持つポリマーであってもよい。また、バリア層18は多孔性導電材料、例えば導電粒子が添加される不導電性ポリマーであってもよく、このうち、導電粒子は金属或は非金属材料であってもよい。この時、導電材料を使用することによって、リチウム活性物質12は保護層142を介してイオンを得る一方、多孔性材料における孔部或は図3Cで示される空乏エリア184のいずれをイオン伝導の経路としてもよい。
【0037】
以下、本発明に係る活性材料の反応メカニズムの流れについて説明する。このうち、図1Aで示される構造模式図によって活性材料を説明する。
【0038】
まず、給電装置において媒体を活性材料10に提供する。例えば、媒体が液体電解質或は液体イオンである場合、この工程は電解質を給電装置内に注入して活性材料10に電解質を浸入させることである。つまり、この工程において、注入した電解質は構造層144の孔部16を通して保護層142の表面と接触する。
【0039】
そして、給電装置(リチウムバッテリー)に対して充電を行って、媒体(電解質)から提供される遊離イオン(リチウムイオン)を保護層142における物質と反応して、合金化反応した保護層142がイオンを得る。
【0040】
例えば、リチウム活性物質12はリチウム金属であり、かつ保護層142におけるリチウム活性物質12と反応できる物質がアルミニウム金属である時に、電解質が保護層142の表面を潤すために、リチウムバッテリーが充電し始めてリチウム金属沈積の電位に達する時、リチウムイオンが保護層142のアルミニウム金属の表面に沈殿してリチウム金属が形成されてリチウム−アルミニウム合金物質が発生する。
しかし、リチウム−アルミニウム合金物質は、その格子が膨張して破断することによってゆるい状態になり、その時、保護層142の表面は構造層144に覆われるので、リチウム−アルミニウム合金物質はランダムに電解質に分散されることなく、電極材料の接着材と粘着される構造層144で有効に所定な空間範囲内に限られる。したがって、電極材料に分散されるリチウム活性物質12は、保護層142がゆるくなることにより完全に潰れることがない。
【0041】
さらに、ゆるくなる保護層142は、電解質においてリチウムイオンをリチウム活性物質12に進入させる反応経路になると共に、活性材料10とリチウム活性物質12との電位を同じようにするので、続く酸化還元反応に影響を及ばさない。そして、リチウム活性物質12は周知のリチウムバッテリーの電極状態になって、電子とイオンの受け入れ又は放出を行い、公知の充放電過程に戻るので、それについての説明はここでは省略する。
【0042】
以上から、本発明に係る活性材料は、保護層と構造層からなる複合層で高度化学反応性を持つリチウム活性物質が完全に覆われるので、活性材料が直接に通常環境に設けられ、制御条件がよりゆるい環境で作業でき、活性材料の使用と作業について、便利とコスト低下の利点を提供する。
【0043】
また、本発明において、構造層の存在によって、空間的に保護層から発生される合金反応物が有効に限られ、合金反応物が集中的にリチウム活性物質と近いエリアに発生するので、給電装置が充放電を行う過程に、合金物質が既有の位置に固定される。これによって、構造が崩れることによる活性材料の機能低下という欠点が避けられると共に、構造層と電極層との間の安定かつ良好な結合力によって、保護層の崩れによる電極層内における、活性材料の分布が変化する問題も解決できる。
【0044】
以上の説明は、本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明の実施範囲を限定するものではない。本発明の特許請求の範囲で述べられる特徴と趣旨に均等な変化或いは修飾は、本発明の特許請求の範囲に含められる。
【符号の説明】
【0045】
10 活性材料
12 リチウム活性物質
14 複合層
142 保護層
144 構造層
16 孔部
18 バリア層
182 不動態金属エリア
184 空乏エリア
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C