【文献】
ML8780/ML8781A エリアテスタ 製品紹介,日本,Anritu,2015年 8月,No.ML8780/81A-J-L-1-(6.00),16ページ,24ページ,URL,https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/files/Product-Introductions/Product-Introduction/ML8780A_81A_JL1600.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無線通信の規格を作成している3GPP(3rd Generation Partnership Project)では、LTE−A(Long Term Evolution-Advanced)の規格のなかで、キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation)技術が導入されている。このキャリアアグリゲーションは、複数のLTEキャリアを同時に用いて通信を行なうことで、伝送速度の向上を図るものである。
【0007】
キャリアアグリゲーションにおいては、コンポーネントキャリア(以下、「CC」ともいう)と呼ばれるLTEキャリアを複数用いて通信を行なう。キャリアアグリゲーションでは、移動体通信端末が基地局との接続を維持するために必要なCCである1つのプライマリコンポーネントキャリア(以下、「PCC」ともいう)と、移動体通信端末と基地局との伝送速度を向上させるために使用されるCCである1つ以上のセカンダリコンポーネントキャリア(以下、「SCC」ともいう)とにより通信が行なわれる。
【0008】
キャリアアグリゲーションを行なう複数のCCは、端末における受信タイミングのずれが一定時間差以内になっていなければならない。
【0009】
このため、キャリアアグリゲーションに対応したサービス提供エリアで使用される電波伝播測定装置では、複数のCCの受信タイミングのずれを容易に確認できることが求められる。
【0010】
そこで、本発明は、キャリアアグリゲーションを行なう複数のCCの受信タイミングのずれを容易に確認することができる電波伝播測定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電波伝播測定装置は、基地局からの無線信号の伝播状態を測定する電波伝播測定装置であって、画像を表示する表示部と、前記表示部に前記無線信号の測定結果を表示させる制御部と、
操作入力を受け付ける入力部と、を備え、前記制御部は、
前記無線信号の受信タイミングとマーカで選択された基準タイミングとの差を示すグラフと、前記無線信号の受信タイミングと前記マーカで選択された基準タイミングとの差の順に前記無線信号の情報を並べたリストとを前記表示部に表示させ、さらに、前記入力部への操作入力により前記グラフ上の前記マーカで選択された基準タイミングを移動させ、当該移動に合わせて前記マーカで選択された基準タイミングを変更するものである。
【0012】
この構成により、
グラフにより基準タイミングと無線信号の受信タイミングの差が表示される。このため、視覚的に容易に基準タイミングとの差を確認でき、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
また、予め設定された基準タイミングとの差の順に無線信号の情報がリスト表示される。このため、基準タイミングとの差が近い受信タイミングの無線信号が固まって表示され、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
また、入力部への操作入力によるグラフ上のマーカで選択された基準タイミングの移動により基準タイミングが変更される。このため、視覚的に容易に目的の受信タイミングに基準タイミングを変更でき、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
【0019】
また、本発明の受信タイミング表示方法は、
操作入力を受け付ける入力部を備え、基地局からの無線信号の伝播状態を測定する電波伝播測定装置の受信タイミング表示方法であって、受信した無線信号の受信タイミングを算出するステップと、
マーカで選択された基準タイミングと前記受信タイミングとの差を算出するステップと、
前記無線信号の受信タイミングと前記マーカで選択された基準タイミングとの差を示すグラフと、前記無線信号の受信タイミングと前記マーカで選択された基準タイミングとの差の順に前記無線信号の情報を並べたリストとを表示させるステップと、前記入力部への操作入力により前記グラフ上の前記マーカで選択された基準タイミングを移動させ、当該移動に合わせて前記マーカで選択された基準タイミングを変更するステップと、を備えるものである。
【0020】
この構成により、
グラフにより基準タイミングと無線信号の受信タイミングの差が表示される。このため、視覚的に容易に基準タイミングとの差を確認でき、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
また、予め設定された基準タイミングとの差の順に無線信号の情報がリスト表示される。このため、基準タイミングとの差が近い受信タイミングの無線信号が固まって表示され、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
また、入力部への操作入力によるグラフ上のマーカで選択された基準タイミングの移動により基準タイミングが変更される。このため、視覚的に容易に目的の受信タイミングに基準タイミングを変更でき、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、キャリアアグリゲーションを行なう複数のCCの受信タイミングのずれを容易に確認することができる電波伝播測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電波伝播測定装置について詳細に説明する。
【0024】
図1において、本発明の一実施形態に係る電波伝播測定装置1は、無線信号処理部10と、無線信号測定部11と、ユーザインターフェース部12と、制御部13とを含んで構成されている。
【0025】
無線信号処理部10は、アンテナ16を介して基地局2から受信した無線信号を、増幅や周波数変換などして無線信号測定部11に出力する。
【0026】
無線信号測定部11は、無線信号処理部10と接続され、無線信号処理部10の出力する無線信号の復調、復号を行なうとともに、RSRP(Reference Signal Received Power)、RSSI(Received Signal Strength Indicator)、RSRQ(Reference Signal Received Quality)、SIR(Signal to Interference Ratio)、受信タイミングなどを測定し、測定結果を制御部13に出力するようになっている。制御部13は、無線信号測定部11からの測定結果を時刻情報などと関連付けてハードディスク等に記憶しておき、ユーザの要求によりユーザインターフェース部12に表示出力させたり、ログとしてファイルに出力したりするようになっている。
【0027】
無線信号測定部11は、GPS(Global Positioning System)受信部14や内部クロック15からクロック信号を入力されるようになっている。無線信号測定部11は、GPS受信部14からのPPS(Pulse Per Second:1秒周期の信号)または内部クロック15からのクロック信号に基づいてLTEの無線信号の受信タイミングを測定するようになっている。なお、外部からGPS信号を入力するようにしてもよい。
【0028】
ユーザインターフェース部12は、ユーザからの操作入力を受け付ける入力部121と、測定のパラメータの設定画面や無線信号測定部11の測定結果などを表示する表示部122とを備えている。入力部121は、タッチパッドやキーボードやプッシュボタンやロータリーノブなどによって構成される。表示部122は、液晶表示装置などによって構成される。
【0029】
制御部13は、図示しないCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、ハードディスク装置と、入出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0030】
このコンピュータユニットのROM及びハードディスク装置には、各種制御定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットを制御部13として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、CPUがROM及びハードディスク装置に記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、制御部13として機能する。なお、ハードディスク装置は、フラッシュメモリによるCF(Compact Flash)カードであっても良い。
【0031】
制御部13の入出力ポートには、無線信号測定部11、ユーザインターフェース部12が接続され、制御部13と各部は信号の送受信をできるようになっている。
【0032】
なお、本実施形態において、無線信号測定部11は、各処理を実行するようにプログラミングされたDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサによってそれぞれ構成されている。また、無線信号処理部10は、通信モジュールによって構成されている。
【0033】
このような電波伝播測定装置1において、制御部13は、例えば、表示部122に表示させた設定画面に対する入力部121への操作入力で設定された周波数の無線信号の測定を無線信号測定部11に行わせる。
【0034】
制御部13は、表示部122に表示させた設定画面により、測定する無線信号の中心周波数や周波数帯域幅や測定する信号数などを入力部121から入力させる。測定する無線信号の中心周波数は、複数設定可能になっている。
【0035】
制御部13は、入力部121により入力された設定情報を無線信号測定部11に通知して、無線信号の測定を行わせる。
【0036】
無線信号測定部11は、制御部13から設定情報を通知されると、通知された中心周波数や周波数帯域幅を無線信号処理部10に通知して、その中心周波数や周波数帯域幅の無線信号を受信させる。
【0037】
無線信号処理部10は、無線信号測定部11から中心周波数や周波数帯域幅を通知されると、その中心周波数や周波数帯域幅の無線信号を受信し、増幅や周波数変換などして無線信号測定部11に出力する。
【0038】
無線信号測定部11は、無線信号処理部10の出力する無線信号の復調、復号を行なうとともに、RSRP、RSSI、RSRQ、SIR、受信タイミングなどを測定し、測定結果を制御部13に出力する。
【0039】
制御部13は、無線信号測定部11の出力する測定結果に基づいて、入力部121の操作入力により選択された測定結果表示種別に応じて表示部122に表示させる画像を作成して表示部122に表示させる。
【0040】
LTEの無線方式は、10msのフレームが連続した構成となっている。複数のCCを使用して通信を行なうキャリアアグリゲーションでは、各CCの受信タイミングのずれが一定時間以内でなければならない。
【0041】
無線信号測定部11は、
図2に示すように、GPS受信部14からのPPSを100分の1に分周した10ms周期の信号、または、内部クロック15が発生する10ms周期の信号を基準として、各CCのフレームの受信タイミングと10ms周期の信号との時間差をフレームタイミング値として測定するようになっている。
【0042】
図2において、CC−1のフレームタイミング値は、基準の10ms周期の信号からのずれTaであり、CC−2のフレームタイミング値は、Tbとなる。
【0043】
フレームタイミング値は、基準の10ms周期の信号からの相対時間で計算され、-5,000.00μsから4,999.99μsの値をとる。フレームタイミング値が正の値であれば、そのCCの受信タイミングは、基準の10ms周期の信号より遅れていることを示し、フレームタイミング値が負の値であれば、そのCCの受信タイミングは、基準の10ms周期の信号より早いことを示す。
【0044】
図3は、測定結果のフレームタイミングの表示例を示す図である。
図3において、測定条件表示部101は、測定条件として設定された、測定するCCである無線信号の条件を表示している。測定条件表示部101において、「Fn」は設定された無線信号の条件を識別する番号を示している。
【0045】
また、「MHz」は測定する無線信号の中心周波数を示している。「BW」は、測定する無線信号の周波数帯域幅を示している。「N」は、測定可能なPCI(Physical Cell Identity)の数を示している。PCIは、CCの物理識別番号であり、基地局2ごとに異なる値が設定される。
【0046】
図3において、グラフ表示部102には、フレームタイミング表示部103と拡大表示部104とが表示される。
【0047】
フレームタイミング表示部103の横軸は、基準の10msの信号を中心として、無線信号のフレームタイミングを-5,000.00μsから4,999.99μsの間に表示する。フレームタイミング表示部103の縦軸は、無線信号のRSRP受信レベルを示している。
【0048】
拡大表示部104は、フレームタイミング表示部103に表示した無線信号のフレームタイミングのうち、マーカ105で選択されたフレームタイミング(以下、「基準タイミング」ともいう)付近を中心に-250μsから+250μsの間の無線信号のフレームタイミングを表示する。マーカ105は、入力部121の、例えば、ロータリーノブの操作で、グラフ上を左右に移動させることができる。
【0049】
図3において、マーカ表示部106は、マーカ105で選択された受信信号、もしくは、マーカ105に最も近いフレームタイミングの受信信号の情報を表示する。
【0050】
マーカ表示部106の「F1」は、測定条件表示部101の「Fn」の「1:」で設定された信号であることを示す。また、「PCI」は、受信信号のPCIを0から503の番号で示している。PCIはCCの物理識別番号であり、基地局2ごとに異なる値が設定される。
【0051】
図3において、リスト表示部107は、受信している無線信号の情報をリストで表示するものである。「No.」は、並べ替えられた順に無線信号に付与された番号である。「Fn」は、測定条件表示部101の「Fn」を示している。「PCI」は、受信信号のPCIを示している。「RSRP」、「RSRQ」、「SIR」、「RSSI」は、測定されたRSRP、RSRQ、SIR、RSSIの測定値を示している。
【0052】
「Timing(μs)」は、無線信号のフレームタイミング値を示している。「Δt(μs)」は、マーカ105で選択された基準タイミングからのフレームタイミングの差分を示している。
【0053】
リスト表示部107の表示方法は、各種用意されており、入力部121への操作入力により1つが選択されて表示される。
【0054】
サーチ順表示は、検出された無線信号順に表示される。測定開始後は受信レベルの高いほうが検出されやすいため、レベル順と同じような表示になるが、測定地点が移動し、受信レベルが変わっても同じ位置に同じ無線信号の測定値が表示され続ける。
【0055】
サーチ順表示が選択されると、制御部13は、検出された順に付与された番号によって並べ替えてリストを作成して、表示部122に表示させる。
【0056】
レベル順表示は、RSRP、RSRQ、SIR、RSSIから、入力部121への操作入力により選択された測定結果により並び替えて表示される。リスト順の入れ替わりが頻発するが、各測定地点で一番レベルが高い無線信号がどれかが分かりやすい。
【0057】
レベル順表示が選択されると、制御部13は、入力部121で選択された測定項目の測定値によって並べ替えてリストを作成して、表示部122に表示させる。
【0058】
PCI順表示は、測定しているPCI値順に表示される。新しいPCIの無線信号が検出されたり、測定中の無線信号が検出されなくなったりするまで、リスト順の入れ替わりがない。
【0059】
PCI順表示が選択されると、制御部13は、測定結果のPCIの値によって並べ替えてリストを作成して、表示部122に表示させる。
【0060】
キャリアアグリゲーションを行なっている無線信号をリスト表示部107で同時に確認したい場合、上述の3つの表示方法ではこの要求を満たすことはできない。
【0061】
また、キャリアアグリゲーションでは、複数のキャリア周波数間でキャリアアグリゲーションが行なわれるため、測定周波数(「Fn」で設定された周波数)を超えた並び替えを行なわなければならない。
【0062】
このため、本実施形態では、測定周波数に関係なくフレームタイミング値の順にリスト表示するタイミング順表示を行なう。このようにすることで、キャリアアグリゲーションを行なっている無線信号が固まって表示される。
【0063】
タイミング順表示時には、制御部13は、測定結果のフレームタイミング値によって並べ替えてリストを作成して、表示部122に表示させる。
図3のリスト表示部107は、タイミング順表示の場合を示している。「No.」の7番以降がキャリアアグリゲーションで同期している無線信号のデータとなっている。
【0064】
このようなタイミング順表示の場合、一か所に留まって測定している間は、リストの順番に変更はないが、測定地点を移動していくと、キャリアアグリゲーションに関係ない無線信号が検出されたり、測定中の無線信号が検出されなくなったりする場合がある。
【0065】
図3のリスト表示部107の表示の表示において、「No.」の01から06番で測定できない無線信号があると、リストが上に移動してしまう。逆にキャリアアグリゲーションに関係ない無線信号が検出されてフレームタイミングが07番よりも前だった場合、リストが下に移動してしまう。このような移動が多くなると、キャリアアグリゲーションで同期している無線信号のリストがリスト表示部107から外れて見えなくなってしまう。
【0066】
リスト表示部107は、入力部121の操作によりスクロールして表示位置を変えることができるので、キャリアアグリゲーションで同期している無線信号を見えるようにすることは可能であるが、測定地点の移動に伴って画面をスクロールさせ続けないとフレームタイミング値が変化していく様子を確認することができなくなってしまう。
【0067】
このため、本実施形態では、マーカ105で選択された基準タイミングからのフレームタイミングの差の絶対値が小さい順にリスト表示するタイミングΔ順表示を行なう。このようにすることで、測定地点を移動してもキャリアアグリゲーションを行なっている無線信号が固まって表示される。
【0068】
タイミングΔ順表示時には、制御部13は、測定結果のフレームタイミング値とマーカ105で選択された基準タイミングとの差を算出し、その絶対値の小さい順に並べ替えてリストを作成して、表示部122に表示させる。
【0069】
図4(a)は、タイミング順表示の例であり、キャリアアグリゲーションに対応した無線信号が07番目からリスト表示されている。
【0070】
ここで、マーカ105をキャリアアグリゲーションに対応した無線信号のフレームタイミング値付近に移動し、タイミングΔ順表示に切り替えると、
図4(b)に示すように、キャリアアグリゲーションに対応した無線信号が01番から表示されるようになる。
【0071】
無線信号のフレームタイミング値は測定地点を移動しても大きく変わることはないため、キャリアアグリゲーションに対応した無線信号が常に01番から表示される。
【0072】
このように、上述の実施形態では、基準タイミングとフレームタイミングとの差の絶対値の小さい順に無線信号の情報をリスト表示させる制御部13を備える。
【0073】
これにより、基準タイミングとの差が近いフレームタイミングの無線信号が固まって表示され、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
【0074】
また、制御部13は、入力部121への操作入力により基準タイミングを変更して、無線信号の情報をリスト表示させる。
【0075】
これにより、基準タイミングの変更により目的の無線信号をリスト表示の上位に表示させることができ、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
【0076】
また、制御部13は、無線信号のフレームタイミングと基準タイミングとの差を示すグラフを表示部122に表示させる。
【0077】
これにより、視覚的に容易に基準タイミングとの差を確認でき、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
【0078】
また、制御部13は、入力部121への操作入力によりグラフ上の基準タイミングを移動させ、当該移動に合わせて基準タイミングを変更する。
【0079】
これにより、視覚的に容易に目的の受信タイミングに基準タイミングを変更でき、受信タイミングのずれを容易に確認することができる。
【0080】
本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。