特許第6236433号(P6236433)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236433
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】血管内回転式血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/10 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   A61M1/10 111
【請求項の数】17
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-507552(P2015-507552)
(86)(22)【出願日】2013年4月26日
(65)【公表番号】特表2015-514531(P2015-514531A)
(43)【公表日】2015年5月21日
(86)【国際出願番号】EP2013058715
(87)【国際公開番号】WO2013160443
(87)【国際公開日】20131031
【審査請求日】2016年3月31日
(31)【優先権主張番号】102012207053.2
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
【審査官】 伊藤 孝佑
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/039091(WO,A1)
【文献】 特表2002−538506(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0074367(US,A1)
【文献】 国際公開第02/047751(WO,A2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0241008(US,A1)
【文献】 米国特許第06733459(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(10)と、カテーテルの遠位側に設置された拍出装置(50)であって、その遠位端に曲げ撓み性の送血カニューレ(53)を有し、その中で血液ポンプの動作中に拍出装置(50)によって血液が吸引または排出されるような拍出装置(50)と、送血カニューレ(53)に沿って設置された少なくとも1本の光ファイバ(28A)を有する少なくとも1つの圧力センサ(27,28A,30)と、を含む血管内回転式血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)が送血カニューレ(53)の中立に沿って設置されることを特徴とする血管内回転式血液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプにおいて、
中立が送血カニューレ(53)の事前屈曲によって事前設定され、したがって、事前屈曲によって決定される内側の曲率半径と外側の曲率半径の間にあることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)が中立に結合されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項4】
請求項1または2に記載の血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)が中立に沿ってスライドチューブ(27)内に自由に移動可能に設置されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項5】
請求項4に記載の血液ポンプにおいて、
スライドチューブ(27)が送血カニューレ(53)に沿って外面に延びることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項6】
請求項4または5に記載の血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)の外面とスライドチューブ(27)の内面が、金属−金属、金属−プラスチックまたはプラスチック−プラスチックのスライド材料の組み合わせを形成する、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項7】
請求項6に記載の血液ポンプであって、
前記プラスチックがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である、ことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項8】
請求項4〜7のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
スライドチューブ(27)が、形状記憶合金を含む材料から形成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項9】
請求項4〜8のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
スライドチューブ(27)の内面がプラスチックで被覆されていることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項10】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)が外側金属コーティング(28coat)を有することを特徴とする血液ポンプ。
【請求項11】
請求項4〜9のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)がポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の外側プラスチックコーティング(28coat)を有することを特徴とする血液ポンプ。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
スライドチューブ(27)に液体が満たされることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)がグラスファイバ(28core,28clad,28coat)を含むことを特徴とする血液ポンプ。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
光ファイバ(28A)の直径が130μmまたはそれ以下であることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
送血カニューレ(53)の外面に、圧力センサの遠位端(30)が少なくとも部分的に設置される凹部(36)が構成されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
曲げ撓み性送血カニューレ(53)が柔らかい撓み性の先端(55)を有し、圧力センサの遠位端(30)が少なくとも部分的に柔らかい撓み性の先端(55)の中に配置されることを特徴とする血液ポンプ。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1項に記載の血液ポンプにおいて、
圧力センサの遠位端(30)が送血カニューレ(53)の周囲面より外へと半径方向に突出し、遠位方向に圧力センサの遠位端(30)の前の送血カニューレ(53)に、同様に送血カニューレ(53)の周囲面より外へと突出する出っ張り(35)が設けられていることを特徴とする血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプの動作および/または患者の心臓の健全状態の評価にとって重要な患者の血管系内の圧力を測定するための1つまたは複数の圧力センサを有する血管内回転式血液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、心機能補助システムに関連して、カテーテルホースと、カテーテルホースの遠位側の圧力を測定するための圧力センサと、を有する圧力測定カテーテルを開示している。具体的には、この圧力測定カテーテルは、光学式圧力センサと、金属または高強度プラスチック、例えばPEEK製の長いチューブを有し、その中には緩みをもって配置された光学式圧力センサの光ファイバが延びる。圧力測定カテーテルの前方(遠位)端には、ファブリ−ペローの原理で機能するセンサヘッドが配置されている。センサヘッドは空洞を有し、これは一方で、薄い感圧性のガラス膜で閉じられ、他方で、その中に光ファイバの端が突出する。感圧性ガラス膜は、センサヘッドに作用する圧力の大きさに応じて変形する。ガラス膜上の反射を通じて、光ファイバから射出する光は可変的に反射され、再び光ファイバ内に供給される。光ファイバの近位端には、内蔵CCDカメラを有する評価ユニットが配置され、これは得られた光を干渉パターンの形態で評価する。それに応じて、圧力依存の電気信号が生成される。全体として、これはそれゆえ、光電式圧力センサである。
【0003】
圧力測定カテーテルは、血管内心機能補助システム、例えば動脈内バルーンポンプ(IABP)または血管内回転式血液ポンプに関連して、まず関係する心機能補助システムを患者の血管系内の所望の場所、例えば大動脈または心室内へとカテーテルホースにより進めることによって使用される。光ファイバを取り囲むチューブを含む圧力測定カテーテルは、このカテーテルホースに関してその長さ方向に変位可能であり、その後、カテーテルホースのルーメンの中に導入され、カテーテルホースの中で進められて、その端から出る。センサヘッドが所期の測定位置に到達すると、圧力測定カテーテルのチューブが引き抜かれるが、その場に残すこともできる。回転式血液ポンプに関連して、圧力測定カテーテルをカテーテルホースの遠位端より先まで押し進め、回転式血液ポンプの拍出装置を越えて、それが大動脈弁を通過し、そのセンサヘッドが左心室内へと突出し、これによって心室の圧力が測定されるようにすることが提案される。
【0004】
原則として、光学圧力センサのセンサヘッドが回転血液ポンプの留置とともにすでに適正な位置に位置付けられていることが望ましく、これは例えば、圧力が静水圧伝送ホースを介して体外の圧力測定装置に伝送される圧力センサに関連して知られている。それゆえ、例えば特許文献2から知られている回転式血液ポンプでは、その拍出装置は遠位端に送血カニューレを有し、その中に静水圧伝送ホースが埋め込まれ、これは送血カニューレの遠位端まで延び、その場所の血圧を受ける。
【0005】
しかしながら、光ファイバを含む光学式圧力センサは、容易に送血カニューレに沿って設置できない。なぜなら、送血カニューレは、心臓に留置されるまでの間に大きく曲がり、または撓み、これが送血カニューレに沿って設置された光ファイバに無視できない引張および圧縮応力を加えるからである。光ファイバが別の圧力測定ルーメン内に自由に設置されていたとしても、光ファイバと圧力測定ルーメンとの間の相対移動によって発生する摩擦力が非常に大きく、光ファイバが破損または断裂する可能性がある。これは特に、ガラス製の光ファイバに当てはまる。このような光ファイバは通常、薄いプラスチックコーティング、例えばポリイミド(カプトン)で被覆され、これが破損に対するある程度の保護を提供する。それでもなお、破損の危険が排除されるわけではなく、光ファイバが実際に折れた場合に、患者に留置された血液ポンプ全体を交換しなければならないことは大きな問題であろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際特許出願第2011/039091 A1号
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0187322 A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的はしたがって、その光学式圧力センサのセンサヘッドが送血カニューレに固定される回転式血液ポンプを、光学式圧力センサの光ファイバの破損の危険ができるだけ小さくなるように構成することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、特許請求項1の特徴を有する血管内回転式血液ポンプによって達成される。その従属項には、本発明の有利な発展形と実施形態が記されている。
【0009】
したがって、血管内回転式血液ポンプは、本発明の好ましい実施形態によれば、カテーテルと、カテーテルの遠位側に配置された拍出装置であって、その遠位端に、血液ポンプの動作中に拍出装置によって血液がそこを通って吸引または排出される曲げ撓み性送血カニューレを有する拍出装置と、少なくとも1本の光ファイバを有する少なくとも1つの圧力センサと、を含む。本発明によれば、光ファイバは送血カニューレの中立軸(以下「中立ファイバ」という)に沿って設置される。
【0010】
送血カニューレの「中立ファイバ」は、送血カニューレの長さ方向に延び、それが曲げ撓み製を持たないか、または少なくとも送血カニューレの残りの部分より低く、好ましくは大幅に低く、それによって送血カニューレが、血液ポンプが患者の血管系を通じて送血カニューレに先導されて案内される際に、中立ファイバに沿った部分では曲がらない、または少なくとも容易に曲がらないことを特徴とする。本質的に、中立ファイバは、カニューレが曲がった時にちょうど圧縮領域と引張領域との間にあり、理想的には長さが変化しない。
【0011】
光ファイバは送血カニューレの中立ファイバに沿って延び、すなわち中立ファイバと一致するか、中立ファイバと同じ「曲げ中立面」内にあるため、回転式血液ポンプが患者の血管系を通じて送血カニューレに先導されて案内される際に、光ファイバは圧縮も引張もされず、血管の様々な曲率半径に順応する。
【0012】
最も単純な場合では、光ファイバはこの目的のために、送血カニューレの内側または外側に送血カニューレの中立ファイバに沿って弾性結合剤で結合することができる。しかしながら、安全のために、中立ファイバに沿って設置されたスライドチューブの中に光ファイバを自由に移動可能に設置し、それによって光ファイバを引張または圧縮による破損の危険からさらに保護することが好ましい。
【0013】
送血カニューレの中立ファイバは様々な方法で実現できる。それゆえ、例えば中立ファイバは、例えば曲げに対して剛性または引張と圧縮に対して剛性な帯条片を送血カニューレに沿って組み込む、または適用することによって、いわば送血カニューレを局所的に強化することにより設置することが可能である。これは特に、通常の状態でまっすぐに延びる送血カニューレを有する回転式血液ポンプにおいて好都合である。このような局所的強化は、例えば光ファイバがその中に設置される、十分に剛性のルーメンまたはスライドチューブによって実現できる。
【0014】
しかしながら、送血カニューレは事前設定されたプレカーバチャ(precurvature)を有することが多い。回転式血液ポンプが患者の血管系内で誘導される際、送血カニューレは、この事前設定された曲率が曲げ方向に応じて増減するように曲がる。したがって、プレカーバチャによって決定される送血カニューレの内側曲率半径と外側曲率半径の間に中立ファイバがあり、すなわち合わせて2本の中立ファイバが、すなわち送血カニューレの両側にある。プレカーバチャ自体は、中立ファイバ(複数の場合もある)に沿った、曲げに対して硬い帯状片によって事前設定し、または安定化させることができる。
【0015】
光ファイバを送血カニューレの中立ファイバに沿って設置したにもかかわらず、光ファイバの引張または圧縮の危険が存在する場合、前述のように、光ファイバを別のスライドチューブの中に自由に移動可能に設置することが好ましい。しかしながら、この場合も、これもすでに述べたように、例えばファイバがスライドチューブ内で高い摩擦によって過剰な引張または圧縮を受けるため、ファイバはやはり破損する可能性がある。したがって、光ファイバの外面とスライドチューブの内面のために低い摩擦係数を有するスライド材料の組み合わせを選択することが好ましい。これは金属−金属のスライド材料の組み合わせ、金属−プラスチックのスライド材料の組み合わせ、またはプラスチック−プラスチックの材料の組み合わせであってもよく、プラスチックは好ましくは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であるか、少なくともこれを含む。
【0016】
この目的のために、光ファイバはしたがって、外面がポリテトラフルオロエチレンで被覆される。これに対して、従来の光ファイバは通常、ポリイミド(カプトン)で被覆されている。しかしながら、光ファイバに、例えば蒸着可能な外側金属コーティングを設けることによって、スライドチューブの内面との金属−金属のスライド材料の組み合わせ、または金属−プラスチックのスライド材料の組み合わせを形成することもできる。なぜなら、通常、金属の摩擦係数は従来のプラスチックより低いからである。
【0017】
その中に光ファイバが自由に移動可能に設置されるスライドチューブは単純なホース、詳しくは伸縮性ホースとすることができ、これは、それが送血カニューレの中立ファイバに沿って設置されるという事実により可能となる。しかしながら、スライドチューブにとっては金属材料が好ましく、その内側はプラスチック、好ましくは再びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で被覆されていてもよい。金属スライドチューブは圧縮と引張に対して安定であり、したがって送血カニューレの中立ファイバを設置するのに適している。その送血カニューレがすでに事前設定された中立ファイバ全体のプレカーバチャを有するこのような回転式血液ポンプでは、この中立ファイバが金属スライドチューブによってさらに安定化される。
【0018】
スライドチューブが形状記憶合金を含む材料から形成されることが特に好ましい。このような形状記憶合金の最もよく知られている例が「ニチノール」である。これに関連する形状記憶合金の特別な利点は、形状記憶合金が超弾性挙動を示すことである。送血カニューレはそれによって、さらに極端な曲率にも追従でき、スライドチューブが可塑的に変形したり、または円形の断面が変形したりして、光導波路を損傷することがない。それとは違い、スライドチューブは曲がってもとの形状に戻る。この特別な材料の特性により、ルーメンをごく小さく設計し、光導体のための間隙をわずかのみとすることができる。その結果、カニューレもまた、それゆえ薄い壁のままとすることができる。
【0019】
形状記憶金属製のスライドチューブの他の利点は、何度も屈曲負荷または曲折負荷を受けた時の破損しやすさを大幅に低減させることにある。「通常の」金属チューブはこの場合、より破損しやすく、それゆえ、局所的な弱点となり、したがってその後のファイバの破損の可能性が高くなるが、形状記憶金属製のチューブは、曲げ弾性をより長期間保持し、それゆえ、引き続き確実にファイバの破損を防止する。
【0020】
その中に光ファイバが自由に移動可能に設置されるスライドチューブを流体で満たすことがさらに好ましい。これによって、光ファイバの表面とスライドチューブの表面との間の摩擦力をさらに減少させることができる。
【0021】
使用される光ファイバは好ましくはガラスファイバであり、これは扱いやすく、安価であるからである。詳しくは、その小さな直径によって非常に狭い曲げ半径でも破損しない、特に細いガラスファイバがある。これは、光ファイバが送血カニューレに取り付けられることに関連して特に重要であり、それは、送血カニューレが血管内を進む中で障害物、例えば大動脈洞弁等に当たり、一時的に180°折れ曲がることがありうるからである。
【0022】
さらに、光ファイバの小さい直径はまた、血液ポンプの断面寸法をできるだけ小さく保つために有利でもある。これは特に、光ファイバまたは光ファイバの入ったスライドチューブが送血カニューレの外側に沿って延びる時に当てはまる。なぜなら、光ファイバの直径またはスライドチューブの直径が大きいほど、血液ポンプの断面寸法が大きくなり、これは、患者の血管系内での血液ポンプの留置および/または血液ポンプの動作に不利となりうる。したがって、直径130μmまたはそれより小さい光ファイバ、特にグラスファイバを含む光ファイバを提供することが好ましい。
【0023】
圧力センサのセンサヘッドまたは一般には、圧力センサの遠位端が送血カニューレの外側、例えば送血カニューレの遠位端にある流入ケージに固定される場合、センサヘッドは少なくとも部分的に、送血カニューレの外面に設置された凹部に受けられる。これは、血液ポンプを患者の血管系に導入している際に、壊れやすいセンサヘッドを仕切弁または止血弁との衝突から防止する。
【0024】
しかしながら、送血カニューレの壁厚が十分でなく、センサヘッドを完全に受けられる深さの凹部を生成できない場合があり、その結果、圧力センサの遠位端が送血カニューレの周囲面より外へと半径方向に突出する。詳しくは、このような場合、遠位方向にセンサヘッドの前に、同様に送血カニューレの周囲面より外へと突出する出っ張りを設けることによって、血液ポンプを患者の血管系に挿入している時に、止血弁または仕切弁が圧力センサの遠位端に引っ掛かるのを防止することが有利である。この出っ張りはあるいは、それが遠位方向にセンサの前だけでなく、横方向または近位方向にも存在するように構成できる。有利な形態では、このU字形またはO字形の出っ張りは、センサヘッドの形状が完全に保護形状に適合するように、すなわち、保護形状(出っ張り)を超えて突出する縁辺がないように構成される。この出っ張りは、例えば結合剤のビードとすることができ、これはまた、センサヘッドが凹部に固定された後でのみ形成してもよい。出っ張りはあるいは、送血カニューレに溶接または半田付けすることもできる。
【0025】
以下に、添付の図面を参照しながら本発明の例を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】大動脈内に設置され、大動脈弁から左心室へと延び、一体化された圧力センサを有する血液ポンプを示す図である。
図2】光ファイバを有する光圧力センサを示す図である。
図3図1の血液ポンプの拍出装置をより詳しく示す図である。
図4A図3の詳細部Aの側面図と平面図である。
図4B図3の詳細部Aの側面図と平面図である。
図5A図3の詳細部Bの側面図と平面図である。
図5B図3の詳細部Bの側面図と平面図である。
図6】スライドチューブ内に案内された光ファイバを有する圧力センサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は血管内血液ポンプを示し、そのカテーテル10が下行大動脈11の中に血流に逆行して導入されている。下行大動脈は、まず心臓から上昇し、その後下降し、大動脈弓14を有する大動脈12の一部である。大動脈12の始端には、左心室16を大動脈12に接続する大動脈弁15があり、これを通って血管内血液ポンプが延びる。血管内血液ポンプは、カテーテル10に加えて、回転式拍出装置50を含み、これはカテーテルホース20の遠位端に固定され、モータ部51とそこから軸方向にある距離だけ離れた位置に設けられたポンプ部52のほか、ポンプ部52の流入端から遠位方向に突出し、その端に配置された吸引入口54を有する送血カニューレ53を含む。吸引入口54の遠位側に、柔らかい撓み性の先端55が設けられ、これは例えば「ピッグテール」またはJ字形に構成できる。カテーテルホース20の中に、拍出装置50を動作させるために重要な各種のラインや装置が延びる。そのうち、図1では2本の光ファイバ28A,28Bのみが示されており、これらはそれぞれの近位端が評価装置100に取り付けられている。これらの光ファイバ28A,28Bはそれぞれ、光学式圧力センサの一部であり、そのセンサヘッド30と60は、一方でポンプ部52の筐体の外側に配置され、他方で吸引入口54の付近の外側に配置される。センサヘッド30と60によって伝えられる圧力は、評価装置100の中で電気信号に変換され、例えばディスプレイ画面101上に表示される。
【0028】
センサヘッド60による大動脈圧とセンサヘッド30による心室圧の両方の測定が、実際の圧力信号、例えばそれによって心臓の回復が測定される収縮性のほか、拍出装置50の流量を計算するために使用される圧力差の決定に加えて可能となる。
【0029】
電気光学的圧力測定の原理を以下に、図2を参照しながらより詳しく説明する。図2は、その中で光ファイバ28A(これは、複数の光ファイバまたは光ファイバ28Bであってもよい)が自由に移動可能なルーメンまたはスライドチューブ27を有する圧力測定カテーテル26を示している。スライドチューブ27はポリマ、特にポリウレタン、または好ましくはニチノールまたはその他の形状記憶合金からなり、出口地点57(図1参照)でカテーテルホース20から出て、撓み性の拍出カニューレ53に沿って、例えば外側に設置することができる。カテーテルホース20の中では、それとは別のスライドチューブ27を省略できる。光ファイバ28Aの遠位端34において、圧力測定カテーテルはセンサヘッド30を有し、そのヘッド筐体31は薄いガラス膜32を含み、これは空洞33を閉じる。ガラス膜32は感圧性であり、センサヘッド30に作用する圧力の大きさに応じて変形する。膜での反射を通じて、光ファイバ28Aから射出する光は可変的に反射され、光ファイバへと再結合される。ファイバへの結合は、フォーム28Aに直接か、または空洞33を真空状態に閉じる底部37を介して間接的に実行できる。有利な形態では、底部37はヘッド筐体31と一体の部分である。それゆえ、空洞33の中の圧力の仕様は、光ファイバ28Aの取付とは関係なく実現できる。光ファイバ28Aの近位端、すなわち評価装置100には、デジタルカメラ、例えばCCDカメラまたはCMOSが配置され、これは入射光を干渉パターンとして評価する。これに応じて、圧力依存の電気信号が生成される。カメラにより供給される光画像または光パターンの評価と圧力の計算は、評価ユニット100を通じて行われる。これは、既に線形化された圧力値を制御手段に送信し、これはまた、圧力信号の評価結果に応じて、モータ型拍出装置50への電源供給も制御する。
【0030】
図2に関して説明したファブリ−ペローの原理で機能する光学式圧力センサの代わりに、1本または複数の光ファイバを有するその他の光学式圧力センサも利用できる。
【0031】
図1の拍出装置50が、図3により詳しく示されている。図からわかるように、駆動軸57がモータ部51からポンプ部52へと突出し、これがインペラ58を駆動し、それによって、血液ポンプの動作中、血液が撓み性の送血カニューレ53の遠位端の血液通過口54を通じて吸引され、インペラ58の近位側の血流通過口56を通じて排出される。拍出装置50はまた、そのように適応されていれば逆方向に拍出することもできる。カテーテル10のカテーテルホース20から拍出装置50には、一方で上記の光ファイバ28A,28Bと、モータ部51のための電源ライン59Aとパージ液ライン59Bが導かれる。
【0032】
第一の圧力センサのセンサヘッド60は、ポンプ部52のポンプ筐体の外側に固定される。付属的な光ファイバ28Bは、細いプラスチックホース21の中で、カテーテルホース20内の例えば5cmの短い距離にわたって案内され、それによって光ファイバ28Bはカテーテルホース20のこの領域でカテーテル10が強曲率となっても確実に破損しないようになっている。光ファイバ28Bは、拍出装置50の外側に自由に設置され、結合剤によって拍出装置50の外壁のみに結合される。これによって、拍出装置50の外側の断面寸法が小さくなる。光ファイバ28Bの結合が可能であるのは、拍出装置50がこの領域で剛性であり、したがって光ファイバ28Bが拍出装置50に関して移動できなくてもよいからである。
【0033】
これに対して、第二の圧力センサのセンサヘッド30へとつながる光ファイバ28Aは、ホースまたはチューブレット(tubelet)、好ましくはニチノールチューブレットの中で、拍出装置50の周囲面全体に沿って自由に設置され、それによってこれはこのホースまたはチューブレットの中で、送血カニューレ53の曲げが変化すると拍出装置50に関して移動できる。ホースまたはチューブレットはそれゆえ、光ファイバ28Aのためのスライドチューブ27を形成し、送血カニューレの中立ファイバに沿って、送血カニューレ53の外面に延びる。同様に、特に送血カニューレ53の内部の圧力を測定する場合に、スライドチューブ27を送血カニューレ53の中に設置するか、これを送血カニューレ53の壁に組み込むことが可能である。
【0034】
送血カニューレ53の中立ファイバは、図3に示される例示的実施形態では、送血カニューレが患者の血管系に血液ポンプを設置しやすくするプレカーバチャを有することによって得られる。このプレカーバチャにより、送血カニューレ53は内側曲率半径と外側曲率半径を有し、これらの間の実質的に中央に、曲げ中立面が延びる。送血カニューレ53は、この曲げ中心面が送血カニューレと交差する位置に中立ファイバを有する。プレカーバチャによって事前設定される送血カニューレ53の中立ファイバまたは中立面は、そこに設置されたスライドチューブ27によって強化される。しかしながら、本発明が企図する送血カニューレの中立ファイバはまた、中立面内に延びる他のすべてのラインを含むと理解され、これは、この平面内に延びるラインまたは「ファイバ」はいずれも、送血カニューレ53のプレカーバチャが患者の血管系の中を進む間に増減した時に圧力負荷または引張負荷を受けないからである。スライドチューブ27によって中立ファイバを強化することは、それによって図の平面に対して垂直なカニューレの曲げが防止され、または少なくとも減少されるため、さらに特に有利となりうる。この異方性によって、使用者がカニューレを湾曲した血管系の中に進めやすくなる。
【0035】
冒頭で説明したように、光ファイバ28Aはまた、追加のスライドチューブ27を設けずに直接、送血カニューレ53の中立ファイバに沿って設置し、固定することもできる。スライドチューブ27内の光ファイバ28Aを中立ファイバに沿って自由に設置することは、光フファイバ28Aをさらに破損に耐えられるようにする役割だけを果たす。
【0036】
その中に光ファイバ28A,28Bが設置されるスライドチューブ27のホースおよび/またはチューブレットは、カテーテルホース20の中に短い距離にわたり延ばすことができるが、カテーテルホース20全体にわたって延ばし、終端が、関連する圧力センサを評価装置100の接続部に挿入するためにラインの端のこれに対応するプラグの中に入るようにすることができる。
【0037】
遠位方向にセンサヘッド30と60の前および/または横および/または背後に、それぞれ出っ張り35,65があり、これらは血液ポンプが止血弁または仕切り弁を通って導入される時にセンサヘッド30と60を破損から保護する。さらに、センサヘッド30と60はそれぞれ、拍出装置50の凹部36、66の中に設置される。これは図3には示されておらず、図4A、4Bと5A、5Bを参照しながら以下に説明する。
【0038】
図4Aは、図3の詳細部Aをより詳しく、一部を断面で示す。図4Bは基本的に、同じ詳細部Aを示しているが、上から見た平面図である。したがって、センサヘッド60はポンプ部52の外面上に設けられた凹部66の中に皿穴式に受けられ、凹部66は馬蹄形またはU字形の出っ張り65により取り囲まれている。出っ張りはまた、O字型を形成するように閉じることもできる。これは、ポンプ部52に結合または溶接されるが、その一体部分を形成することもできる。光ファイバ28Bは表面上に結合され、2つの血流通過口56間のバーに沿って延びる。
【0039】
同様に(図5A、5B)、第二の圧力センサのセンサヘッド30もまた、送血カニューレ53の遠位端の外面上の凹部36の中に皿穴式に受けられる。ここでも、その中に光ファイバ28Aが設置されるニチノールチューブレット27が、2つの血流通過口54間のバーの上に延びる。遠位方向に凹部36の直前の点形状の出っ張り35は、血液ポンプの導入時にセンサヘッド30を衝突による損傷から保護する。出っ張り35もまた、あるいはU字形またはO字形に構成することもでき、詳しくは、送血カニューレ53に結合し、溶接し、またはその一体部分とすることができる。
【0040】
センサヘッド30はあるいは、スライドチューブ27と共に、柔らかい撓み性の先端55の上の任意の場所まで延ばして、そこで、例えば柔らかい撓み性の先端55の壁によって機械的に保護することができる。曲げによって誘発される圧力アーチファクトは小さく、これは、センサ膜が壁に対して直角に配置されるからである。光導波路34とセンサヘッドの間の結合による接続部のみを、曲げから保護しなければならない。これは、チューブレット27または、結合領域内をさらに硬くすることを通じて行うことができる。
【0041】
光ファイバ28Bおよび光ファイバ28Aは好ましくはグラスファイバであり、これらは通常、ポリマで被覆される。プラスチック製の光ファイバも同様に使用可能である。しかしながら、ガラス製の光ファイバは特に細く製造でき、これは、特に追加のスライドチューブ27と組み合わせた時に、拍出装置50の断面全体を小さくすることにとって好ましい。それゆえ、全体の直径が130μmを超えないガラスコアを有する光ファイバを利用することが有利である。このような細い光ファイバは、引張または圧縮力を受けた時に特に破損の危険があることも真実である。しかしながら、この危険は、光ファイバを送血カニューレ53の中立ファイバに沿って配置することによって大幅に低減する。すると、スライドチューブ27の内径をわずか150μmとすることができる。外径はすると、それより若干大きく、拍出装置50の全体的断面がそれほど大きくならないように、例えば220μmとなる。なぜなら、少なくともポンプ部52の領域において、スライドチューブ27を常に拍出装置50の外側に設置しなければならないことが考慮されるからである。形状記憶合金、ニチノールで作製されたチューブレットは、上記の内径と外径で市市販されている。しかしながら、より大きな直径、例えば内径230μm、外径330μmのスライドチューブ、特にニチノールチューブレットを使用することも可能である。すると光フファイバ28Aは、それに応じて、より大きな直径を有することができる。
【0042】
図6は、その中に光ファイバ28が設置されたスライドチューブ27の断面図を示し、これは同様にガラスで作製されたグラスファイバコア28coreと、いわゆるクラッド28cladと、外側のポリマコーティング28coatと、を含む。光ファイバコア28coreと光ファイバクラッド28cladの屈折率が異なることにより、光ファイバコアに結合された光は、光ファイバ28に沿って、事実上損失なく伝送される。外側コーティング28coatは、光ファイバ28を破損から保護する役割を果たす。コーティング28coatは通常、ポリイミドコーティングであるが、本発明の範囲内で、できるだけ摩擦の小さい、詳しくはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製のコーティング28coatを提供することが有利である。外側コーティング28coatはまた、金属コーティングとすることもできる。グラスファイバコア28coreの直径は、例えば62.5μmとすることができる。すると、反射層を80μmまで大きくすることができる。コーティング28coatの厚さは10μmとすることができる。光ファイバ28の直径は好ましくは、全体として約100μmまたはそれ以下である。
【0043】
通常の光ファイバとグレーデッドインデックス型ファイバには違いがある。グレーデッドインデックス型ファイバではグラスファイバクラッド28cladが異なる屈折率の複数の上方のガラス層により形成される。本発明に関しては、グレーデッドインデックス型ファイバの利用が好ましく、これは、これらが単純なグラスファイバより曲がりやすく、より損失が少ないからである。
【0044】
スライドチューブ27は、外側ケーシング27aの一部として、内面コーティング27iを有する。外側ケーシング27aは実質的に、スライドチューブ27の曲げおよび引張特性を決定し、その一方で内面コーティング27iは、スライドチューブ27と光ファイバ28の間に作用する摩擦力を低減させるために重要である。内面コーティング27iはしたがって、好ましくは金属コーティングまたは再び、低摩擦ポリマコーティング、特にポリテトラフルオロエチレンである
【0045】
スライドチューブ27はこれに加えて、液体を満たすことによって、発生する摩擦力を最小化できる。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6