特許第6236449号(P6236449)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236449電気化学分析法及び電気化学析出法のための基準システムの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236449
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】電気化学分析法及び電気化学析出法のための基準システムの使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/416 20060101AFI20171113BHJP
   G01N 27/36 20060101ALI20171113BHJP
   G01N 27/30 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G01N27/416 366C
   G01N27/36 Z
   G01N27/30 311Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-523476(P2015-523476)
(86)(22)【出願日】2013年7月10日
(65)【公表番号】特表2015-526717(P2015-526717A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】EP2013064568
(87)【国際公開番号】WO2014016121
(87)【国際公開日】20140130
【審査請求日】2016年3月23日
(31)【優先権主張番号】102012106831.3
(32)【優先日】2012年7月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】509205238
【氏名又は名称】アンコーシーズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】シュタール,ユルク
【審査官】 櫃本 研太郎
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭48−042588(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0213807(US,A1)
【文献】 特開平04−346066(JP,A)
【文献】 特公昭49−047873(JP,B1)
【文献】 実開昭57−114962(JP,U)
【文献】 実開昭50−056187(JP,U)
【文献】 特公昭49−000918(JP,B1)
【文献】 米国特許第4133732(US,A)
【文献】 米国特許第7177127(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00−27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの作用電極(21)、1つの対電極(23)及び基準電極(22)を使用するポテンショスタティックまたはガルバノスタティック電気化学分析法及び析出法のための基準システムの使用であって、
前記基準電極(22)は、不透過性膜(12)を備えるpH電極(10)であり、
記pH電極(10)のための高い入力インピーダンスを有する入力増幅器V1(16)が設けられ、前記入力増幅器V1(16)の遮断周波数は、1MHz超であり
i)前記pH電極(10)の信号は、ケーブルを介して前記入力増幅器V1(16)に送られ、なる増幅器V2(17)が設けられ、前記更なる増幅器V2(17)は、少なくとも1MHz超の遮断周波数を有し、10pF超の容量性負荷を駆動でき、前記更なる増幅器V2(17)は、前記ケーブル及び/若しくは測定装置の配置により形成される寄生容量の有害な効果を補償するために、ガード増幅器として使用される、又は
ii)記増幅器V1(16)は、インピーダンス変換器として前記pH電極(10)に組み込まれ、更なる増幅器V2(17)が設けられ、前記更なる増幅器V2(17)は、少なくとも1MHz超の遮断周波数を有し、10pF超の容量性負荷を駆動でき、前記更なる増幅器V2(17)は、前記pH電極が中に組み込まれるpH電極のシールドの寄生容量の有害な効果を補償するために、ガード増幅器として使用され、又は
iii)記増幅器V1(16)は、インピーダンス変換器として前記pH電極のジャックに組み込まれ、なる増幅器V2(17)が設けられ、前記更なる増幅器V2(17)は、少なくとも1MHz超の遮断周波数を有し、10pF超の容量性負荷を駆動でき、前記更なる増幅器V2(17)は、前記pH電極の前記ジャックに組み込まれる前記pH電極のシールドの寄生容量の有害な効果を補償するために、ガード増幅器として使用され
ことを特徴とする、基準システムの使用。
【請求項2】
前記pH電極は、ガラス電極(10)又はエナメル電極であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記ガラス電極(10)は、測定すべき溶液より高いpHを有する内部緩衝液(11)を備えることを特徴とする、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記入力増幅器V1(16)の前記入力インピーダンスは、1011Ω超、好ましくは1012Ω超であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
前記入力増幅器V1(16)の入力電流は、10pA未満、好ましくは1pA未満、特に好ましくは200fA未満であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
前記入力増幅器V1(16)の遮断周波数は、1MHz超、好ましくは3.5MHz超、特に好ましくは25MHz超であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
前記更なる増幅器V2(17)は、少なくとも1MHz、好ましくは3.5MHz、特に好ましくは少なくとも15MHzの遮断周波数を有することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
前記更なる増幅器V2(17)は、10pF超、好ましくは100pF超、特に好ましくは1nF超の容量性負荷を駆動できることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
1つの増幅器が、前記入力増幅器V1及び前記更なる増幅器V2の機能を備えることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
動的法、インピーダンス分光法、ポテンショスタティック法、又はガルバノスタティック法における、請求項1〜9のいずれか1項に記載の基準システムの使用。
【請求項11】
半導体産業及びプリント回路基板製造における、請求項1〜10のいずれか1項に記載の基準システムの使用。
【請求項12】
200msより短い、好ましくは100msより短い変化を有するコーティング法における、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学分析法及び電気化学析出法のための基準システムの使用に関し、上記方法において、少なくとも1つの作用電極、1つの対電極、及び基準電極が使用される。
【背景技術】
【0002】
電気化学分析において、基準システムを使用する方法が頻繁に用いられる。
【0003】
このような分析方法は、例えば、電流密度/電位測定、ポテンショスタティック測定、ガルバノスタティック測定等の定常法、リニアスイープボルタンメトリー(liner sweep voltammetry:LSV)、サイクリックボルタンメトリー(サイクロボルタンメトリー)(cyclic voltammetry:CV)、三角電圧法(サイクリックボルタンメトリーストリッピング法(cyclovoltammetry stripping:CVS))及びポーラログラフィ等の電位掃引法、クロノアンペロメトリー(chronoamperometry:CA)、クロノポテンショメトリー(chronopotentiometry:CP)、クロノクーロメトリー(chronocoulometry:CC)等のトランジェント法、分光電気化学(spectroelectrochemistry:SEC)又は電気化学水晶振動マイクロバランス(electrochemical quartz crystal microbalance:EQCM)等の組み合わせ法、走査型基準電極法(SRET)及び走査型電気化学顕微鏡(scanning electrochemical microscope:SECM)等の位置分解法、電気化学インピーダンス分光法等(electrochemical impedance spectroscopy :EIS)等のAC法、又は開路電位(open circuit potential:OCP)及び電気化学ノイズ(electrochemical noise:ECN)等の外部励起を用いない方法である。
【0004】
特定の分析作業のために、2つ以上の方法を組み合わせて1つの方法を形成できる。
【0005】
更に、基準電極は、従来のコーティング技術並びに半導体産業及びプリント回路基板技術等の電気化学的製造方法においても使用される。
【0006】
半導体産業及びプリント回路基板製作において、急速な変化(200ms未満、又は100ms未満)を伴うコーティング法も使用される。例えば、パルスめっき法は<100msのパルスによって動作する。また、コーティングすべき製品が制御されて導入されるいわゆるホットエントリ法においても、プロセスは100ms以下で行われる。層の品質のために不可欠である核生成は、50ms以下で行われる。
【0007】
最も普及している基準電極は、第2種電極を含み、この電極の電位は電極の周囲の電解質溶液の濃度にのみ、間接的に依存する。重要な第2種電極は、銀/塩化銀電極及びカロメル電極である。この場合、電極の平衡電位は基体(例えば難溶性塩又は酸化物)の溶解度積によって決定される。このような電極は例えば電位差測定において使用される。
【0008】
基準システムは、液体中で安定した基準電位を提供するために使用される。
【0009】
このようなシステムの1つの要件は、電極電位が、小さな電流遷移が発生した場合に、不変でなければならないということである。
【0010】
更に、基準電極のインピーダンスは可能な限り低くなければならない。
【0011】
当然、研究対象となる液体はまた、基準システムによって汚染又は影響されてはならない。これというのは、これが不正確な測定結果につながるためである。
【0012】
公知の基準システムは、内部の電解液(正確に濃縮した、難溶性塩と同じアニオンを有するアルカリ金属塩溶液)を用いて、隔膜を介した外部の流体との接触を確立する。
【0013】
内部電解液は、測定すべき液体及び基準電極の難溶性塩の両方に適合するものでなければならず、更に測定に悪影響を及ぼしてはならないため、公知の基準システムに適合する内部電解液を選択するのは難しい。
【0014】
内部電解液の準最適な選択は、基準電極と内部電解液との間の接触を断ってしまう可能性がある。公知の基準システムの別の欠点は、内部又はブリッジ電解液を定期的に補充しなければならないため、電極の徹底したメンテナンスが必要となることである。しばしばメンテナンス中に、電解液が混ざるか又は汚染された溶液が使用され、これらは基準電位の変移、従って誤った測定につながる、誤差の更なる原因となる。
【0015】
内部電解液の隔膜も、例えば研究対象となる液体が隔膜上/隔膜中で析出物を形成した場合に、使用できなくなる可能性がある。
【0016】
隔膜に関連する困難を回避するために、特許文献1は電極用のブリッジ要素を提案しており、この場合電極を演算増幅器の高インピーダンス入力に接続している。この電位差測定回路において測定電極を使用し、ブリッジ要素を有する電極は対電極を形成する。
【0017】
水銀及び水銀塩で構成された基準電極の使用は、環境保護を理由にますます制限されるようになっている。
【0018】
実験室の現場では、このような困難全てを依然として克服できる。しかしながら、オンライン分析及び製造方法における応用においては、ユーザ又は検査技師が間におらず、基準電極の電位が変化したかどうか、そしてその結果を全体的な測定結果が損なわれたかどうかを外部からの操作なしには立証できないため、基準システムの長期間安定性は極めて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】ドイツ特許第19748052A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、電気化学分析法及び析出法のための基準システムを提供することである。上記方法では、作用電極及び対電極に加えて基準電極が使用され、ここで基準電極は所望の長期安定性を有し、高速測定のためのオンライン分析において使用可能であり、更にメンテナンスが容易であるものとする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この目的は、不透過性膜を有するpH電極を基準電極として使用し、高入力インピーダンスを有するpH電極のための入力増幅器V1を備える基準システムによって達成され、またこの基準システムにおいて、
(i)第1の代替例では、電極信号がケーブルを介して入力増幅器V1に送達され、ケーブル及び/若しくは測定装置の有害なシールド効果を補償するために使用される更なる増幅器V2が設けられ、又は
(ii)第2の代替例では、増幅器V1はインピーダンス変換器としてpH電極に組み込まれ、この場合、pH電極が組み込まれるpH電極の有害なシールド効果を補償するために使用される更なる増幅器V2を設けており、又は
(iii)第3の代替例では、増幅器V1はインピーダンス変換器としてpH電極のジャックに組み込まれ、この場合、pH電極の有害なシールド効果を補償するために使用される更なる増幅器V2を設けている。
【0022】
測定溶液に対して不透過性である膜によって内部電解液が測定溶液から分離されているpH電極の使用により、測定溶液と内部電解液との間のイオンのいずれの交換を防ぎ、これにより、内部電解液の汚染又は濃度変化が原因の基準電位の望ましくない変化を回避できる。
【0023】
不透過性膜上では電位が増大するのみであり、粒子は通過しないため、第2種電極に関して公知である測定溶液の汚染、及び同じく望ましくない電位の変化を引き起こし、隔膜上/隔膜中で観察される析出物が生じない。
【0024】
膜は好ましくはガラス膜である。
【0025】
pH電極は好ましくはガラス又はエナメル電極である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、ガラス電極を示す。
図2図2は、リードオフシステムの温度で変動する特性曲線a、ガラス膜の温度で変動する特性極性b、測定電圧曲線cを示す。
図3図3は、本発明の参照システムを単純化した方法で示した図である。
図4図4は、ガード回路を使用しない時のレスポンスを示す図である。
図5図5は、ガード回路を最適に使用しない図4と同じ装置によるレスポンスを示す図である。
図6図6は、測定にポテンショスタティック法を採用した場合の測定回路図である。
図7図7は、ガルバノスタティック法を実行する際の回路図である。
図8図8は、電流応答および電圧変調から算出されるACインピーダンスZ(jw)を示す図である。
図9図9は、電圧応答と電流変調から計算したACインピーダンスZ(jw)を示す図である。
図10図10は、最も単純化した電圧装置の回路図である。
図11図11は、制御ループの安定度を示す図である。
図12図12は、カバーレイヤー状のダイアグラムである。
図13図13は、図3に示す装置の変数を示す図である。
図14図14は、それ自身ガード使用のあるpH電極を示す図である。
図15図15は、pH電極に直接に一体化されている増幅器V1を示す図である。
図16図16は、pH電極の接続ジャック28と一体化されている増幅器V1を示す図である。
【0027】
本発明の実施例におけるガラス電極10は、リードオフシステム14、電気端子13、内部緩衝剤/電解液11、ガラス膜12(図1を参照)からなる(単一)ガラス電極であり、複合電極、即ち基準電極を有するモノブロック測定ユニットではない。このガラス電極において、内部緩衝剤/電解液は測定溶液と導電接続し、ここで電位が形成される。ガラス膜に含有されるナトリウム又はリチウムイオンは比較的自由に移動するが、膜は水素イオンに対して不透過性である。
【0028】
試験は更に、pH電極がいずれのメンテナンスを要することなく、長期にわたり安定であることを示している。偏差は5mV未満であり、これは従来の第2種電極(Ag/AgCl)では達成されなかった。
【0029】
不透過性膜を有するpH電極の別の利点は、大きな電圧差及び電流フローが原因のシステムの摂動が生じた場合に、膜における平衡が乱れ、誤った測定値が明確に表示されることである。従ってユーザは、pH電極の作動不能状態を制御する手段を有する。しかしながら公知の基準電極、特に第2種電極においては、大きな電圧差及び電流フローが生じた場合、緩慢に変動する電位変化が起こるだけであり、ユーザがこれに気付かないことが多く、従って欠陥のある電極で測定が継続されてしまう。
【0030】
pH電極の別の利点は、大きな電圧差又は電流フローが生じた後でさえも、一定期間後、及び適切な保管後に回復し、従って永久的に破損しないことである。
【0031】
例として、エナメル電極を同様にpH電極として使用してよく、これはエナメル電極が同様にイオンの遷移を発生させない不浸透性膜を有するためである。
【0032】
pH電極のpH依存性のため、測定若しくは制御すべき液体のpHを知っておく必要があり、又は相対的測定の場合、pHが一定であるか若しくは公知の様式で変動するシステムにおいて作業する必要がある。
【0033】
ガラスpH電極の場合、(水素0に対して)測定した電位は、内部電界液と測定すべき製品との間のpHの差が原因でガラス膜において形成された電位と、リードオフシステムによって形成された電位との合計である。市販のガラスpH電極は、pH7の内部緩衝剤及びAg/AgClリードオフシステムを有する。
【0034】
本発明による基準システムの別の利点は、特定のpHに関して、基準システムを内部緩衝剤の適切な選択により調整でき、これによりネルンストの式における温度依存が補償されることである。これにより、温度変化による測定誤差を追加の温度制御なしに排除できる。
【0035】
pH感受性膜に適用したネルンストの式は、以下の通りであり、:
pH=(R*T)/F*ln(Cx/C0) (1)
ここでR=8.31447Jmol-1-1、気体定数、T=温度[K]、F=ファラデー定数96485.3JV-1mol-1である。
【0036】
この等式を整理すると、以下が得られ:
pH=0.198*T*(pH0−pHx)[mV] (2)
ここでpH0=内部緩衝剤のpH値、pHx=測定溶液のpH値である。
【0037】
上記等式から、ガラス膜は、1℃あたり、及び測定すべき製品のH+濃度と内部緩衝剤との間のpHの差1あたり、0.198mVの温度エクスカーションを有する。ガラス膜に関する温度エクスカーションを、図2の曲線bに示す。
【0038】
一方、Ag/AgClリードオフシステムに関して、ネルンストの式は以下の通りであり:
A=U0+(R*T)/F*ln(Cx/C0) (3)
ここでU0=標準電子電位である。
【0039】
リードオフシステムの温度依存の正確な算出は、厳密には不可能である。実際のリードオフシステムの測定は、−0.7mV/℃の温度エクスカーションをもたらしている(図2の曲線aを参照)。
【0040】
pH膜の温度エクスカーションはプラスであり、Ag/AgClリードオフシステムの温度エクスカーションはマイナスであるため、基準電極の温度依存は内部緩衝剤の適切な選択により排除できる。
【0041】
測定電位は、ガラス膜において形成された電位と、リードオフシステムの電圧との合計である(図2を参照)。
【0042】
測定すべき製品の値を超える3.5pH単位において内部緩衝剤を選択すると、pH膜の温度依存は以下のようになる:
pH=0.198*T*(pH0−pHx)=T*0.198*3.5=T*0.693[mV] (4)。
【0043】
pHの変動が±1pHであったとしても、最大±0.2mV/℃の温度依存が存在する。従って殆どの用途において、基準電極補償のための温度測定を不要とすることができる。
【0044】
pH電極のインピーダンスは典型的には5*106Ω〜1*109Ωの間であり、従ってこれは、1*103Ω〜0.1*106である第2種電極のインピーダンスより数桁大きい。安定な測定装置のためには、外部からの干渉を防ぎ、信頼できる測定を補償するために、測定システムのシールドは必須である。シールドの構造によって、寄生コンデンサが形成され、これは数百ピコファラッドに達し得る。これら寄生コンデンサは、pH電極のインピーダンスと共にローパス・フィルタを形成し、これは測定信号を有意に遅らせる。
【0045】
これによる効果は、pH電極を時間のかかる又は統計に関するプロセスの観察又は制御のみに使用できることであり、これは数秒の範囲で行われる。
【0046】
電位の所望の長期安定性を保証するために、及び基準システムを高速オンライン測定、特に本発明による掃引又はパルスを用いる動的測定に使用できるようにするために、高入力インピーダンスを有する基準電極のための入力増幅器V1を提供すること、並びにシールド及び測定装置の影響を補償する更なる増幅器V2を提供することが更に必要である。
【0047】
本発明の文脈において、増幅器V1は、基準電極のための高入力インピーダンスを有するいずれの構成要素又は構成要素の群であり、更なる増幅器V2は、ケーブル及び/若しくは測定装置のシールドの影響を補償する若しくは実質的に補償するいずれの構成要素又は構成要素の群である。増幅器V1、V2はまた、1つの増幅器によって実現できる。
【0048】
典型的には、電圧測定の無効につながる電圧源への負荷を回避するために、少なくとも1011Ω、好ましくは1012Ω超の入力増幅器V1の入力インピーダンスが必要である。
【0049】
適切な入力増幅器V1は、10pA未満、好ましくは1pA未満、特に好ましくは200fA未満である入力電流を必要とする。これにより、インピーダンスが1*109ΩのpH電極を有する電位の正確な測定が可能となる。
【0050】
シールドは、基準電極の信号の電気信号の入力又は放出を妨害するいずれの手段をも意味する。これは、特にケーブル、基準電極のリードオフシステム、接続用ジャック、プリント回路基板の導体トラック、及びハウジングを含む。
【0051】
基準電極の設計及び関連する測定装置の設計によるいずれの容量性負荷は、高速プロセスの測定において有害な効果を有する。不透過性膜を有する基準電極の高インピーダンスはいずれの寄生容量と共に、測定信号を遅らせるローパス・フィルタを形成する。不透過性膜を有する基準電極のインピーダンスの値は典型的には、数106オーム〜1*109オームである。寄生容量が合わせて100pFに達した場合、及び基準電極のインピーダンスが100*106オームである場合、遅延時間は50msである。典型的には、リード線は測定増幅器V1に対して遮断される。シールドは、干渉信号が測定信号に連結されないことを保証するために必要である。現場で典型的に使用される同軸ケーブルは、50pF/m〜100pF/mの容量性負荷を有する。リードケーブルによるこの容量性負荷は一般に、測定信号の寄生負荷全体の50%超である。基準電極がリードオフシステムのシールドを備える場合、これは典型的には最大30pHの寄生容量も有する。使用するジャック及びプリント回路基板並びに増幅器V1はまた、一般に<10pFである寄生容量を有する。
【0052】
<200msの信号プロファイルを有する測定を信頼できるものにするためには、測定装置が含む全ての寄生容量を可能な限り補償すべきである。これは、特に測定ケーブル及び基準電極内のリードオフシステムのシールドを含む。V1、V2からなる使用する回路は寄生容量の悪影響を排除できるが、それにもかかわらず効果的なシールドを補償できる。通常、シールド(ケーブル、リードオフシステム、プリント回路基板)は測定システムの接地又は筐体に接続される。即ち、全ての寄生容量は、基準電極の電圧電位に印加されるはずである。容量を印加するために必要な電流は、基準電極の内部抵抗にわたって電圧降下を引き起こす。測定される電圧は、シールドの寄生容量を印加するのに必要な電流が流れている限り、常に基準電極が生成する電圧未満である。この印加プロセスは、シールドが増幅器V2の出力に接続される場合は、なくすことができる。このようにして、測定信号とシールドとの間の電圧差を殆ど0Vに維持する。従って、電流は流れず、基準電極の内部抵抗にわたる電圧降下は発生しない。寄生容量のこのタイプの補償のための必要条件は、シールドにおける電圧及び測定信号の電圧が少なくとも可能な時間遅延を有することである。
【0053】
好ましくは、入力増幅器V1の遮断周波数は、1MHz超、好ましくは3.5MHz超、特に好ましくは25MHz超であるべきである。
【0054】
更なる増幅器V2は、信号を低下させることなく、シールドの容量性負荷を駆動できなければならない。
【0055】
電位は、電極のリード線及び測定増幅器内部への容量性電荷再分配によって損なわれてはならない。これを、低いインピーダンスを有するシールドの電位をpH電極の高インピーダンス信号と全く同じ電位に保つことにより防ぐ。
【0056】
更なる増幅器V2は、少なくとも1MHz、好ましくは少なくとも3.5MHz、特に好ましくは少なくとも25MHzの遮断周波数を有し、少なくとも10pF、好ましくは少なくとも100pF、特に好ましくは1nF超の容量性負荷を駆動できなければならない。
【0057】
別の変形例では、増幅器V1はpH電極に直接組み込まれる。ここでpH電極がシールドを有さない場合、増幅器V2をなくすことができる。
【0058】
同様に、増幅器V1がpH電極のジャックに組み込まれ、かつpH電極がシールドをもたない場合、増幅器V2をなくすことができる。
【0059】
特に良好な結果は、一体化された増幅器及びリードオフシステムのシールドを有するガラスpH電極を用いて達成されている。
【0060】
イオン感受性電界効果トランジスタ(ISFET電極又はREFET電極)も同様に適している。
【0061】
上述の応用の殆どにおいて、測定すべき液体のpHは測定の間ほぼ一定であり、本明細書に記載した電極の電位はまた、測定の間無視できる程度の影響しか受けない。
【0062】
オンライン測定及び製造方法において、pH値は極めて安定であり、これはプロセスウィンドウが通常±<0.1pHの帯域幅を有するためである。これは、従来の基準システムにおいてでさえも予期される、±5.9mVの基準電位変動に相当する。より大きな変動が予期される場合、pHを知り、所定の値に適宜修正する必要がある。非常に多くの場合、プロセス監視の進行中にpHを決定する物質の濃度が測定され、再調整される。
【0063】
図3は、本発明による基準システムを簡略的に示し、これは基準電極22、pH電極、入力増幅器16(V1)(利得:1×)、更なる増幅器17(V2)、シールド18を備える。入力増幅器16(V1)(インピーダンス変換器)は、1pA未満、好ましくは200fA未満の入力電流を有する。これにより、1*109Ωのインピーダンスを有するpH電極を用いた正確な電位測定が可能となる。増幅器16(V1)はまた、依然として3.5MHz超、好ましくは25MHz超の遮断周波数を有するべきである。
【0064】
更なる増幅器17(V2)は、シールドの寄生効果を補償するガード増幅器である。シールドを簡略化して示す。シールドは以下の部品を備える:ケーブル;ジャック;プリント回路基板;増幅器ハウジング;電極のシャフト。これにより、急速な電位の変化でさえも測定できる。
【0065】
更なる増幅器17(V2)は、シールドの容量性負荷を駆動できなければならない。増幅器17(V2)は、3.5MHz超、好ましくは25MHz超の遮断周波数を有さなければならず、100pF超、好ましくは1nF超の容量性負荷を駆動できなければならない。
【0066】
増幅器16(V1)、17(V2)はまた、1つの増幅器によって実現できる。測定装置が原因の、ガード回路、即ち増幅器16(V1)、増幅器17(V2)及びシールドによって補償できない寄生容量は、容量の1%未満となるべきである。
【0067】
図4は、ガード回路なしのステップ応答を示す。インピーダンス変換信号が実際の信号を追従できるまでに80msを要する。図5は、図4と同じ実験設備を示すが、これは最適に構成されたガード回路(シールド及び測定装置並びに最適化されたガード増幅器V2)を有する。この設備において、インピーダンス変換信号は実際の信号を追従するのに50μsを要する。
【0068】
測定において、約100pFの総ガード容量を有する約100MΩのpH電極を使用した。この設備により、0.5msより大幅に小さい信号を極めて確実かつ正確に測定できる。電極のインピーダンス及びガード容量を低減できる場合、更に高速な信号でさえ測定できる。
【0069】
pH電極15、入力増幅器(インピーダンス変換器)16、及び更なる増幅器(ガード増幅器)17からなる図3に記載した測定設備はまた、ポテンショスタティック法、ガルバノスタティック法、動的法又はインピーダンス分光法を用いて、3つ以上の電極を有する設備において使用できる。
【0070】
測定、析出又は溶解のためにポテンショスタティック法を実行するための設備を図6に示す。この設備は、少なくとも1つのポテンショスタット20、少なくとも1つの作用電極21、少なくとも1つの基準電極22、及び少なくとも1つの対電極23を備えている。基準変数USを設定し、操作変数UZをもとにして被制御変数UBを導く。この場合、作用電極21において電流Iが観察される。
【0071】
ガルバノスタティック法を実行するための設備を図7に示す。この設備は、少なくとも1つのガルバノスタット30、少なくとも1つの作用電極21、少なくとも1つの基準電極22、及び少なくとも1つの対電極23を備えている。基準変数USを設定し、操作変数UZをもとにして被制御変数Iを導く。この場合、基準電極22において電位が観察される。
【0072】
本発明の範囲では、ポテンショスタティック法において基準変数USが少なくとも1つの点において5mV/sより大きく変化する場合、又はガルバノスタティック法において観測変数が少なくとも1つの点において5mV/sより大きく変化する場合、方法は動的法である。ポテンショスタティック法において少なくとも1つの作用点において電圧が10-3Hz〜105Hzの周波数及び最大約50mVの振幅によって変調する場合、方法はインピーダンス分光法である。他の変調も使用してよいが、典型的には正弦波信号形状を選択する。ACインピーダンスZ(jw)は、電流応答及び電圧変調から算出できる(図8)。
【0073】
ガルバノスタティック法において、少なくとも1つの作用点において電流が10-3Hz〜105Hzの周波数及び作用点における電流の最大約10%の振幅によって変調する場合、方法はインピーダンス分光法である。他の変調も使用してよいが、典型的には正弦波信号形状を選択する。ACインピーダンスZ(jw)は、電圧応答及び電流変調から算出できる(図9)。
【0074】
【数1】
【0075】
特にポテンショスタティック法を適用する場合において、測定回路の遅延時間/位相回転は、振動の影響を受けない測定の実行を可能とするために重要である。従って、正確な測定を行うことができるよう、基準電極によって引き起こされる遅延時間/位相回転を可能な限り小さく維持する必要がある。極めて小さな位相変移でさえ実数及び虚数インピーダンスの算出に大きな影響を有し得るため、これはガルバノスタティック法においてより一層重要である。
【0076】
図10は、インピーダンス変換器16(V1)、ガード増幅器17(V2)、シールド18、ポテンショスタット20、及び関数発生器25を有する、基準電極22としてのpH電極を有するポテンショスタティック設備を簡略的に示す。
【0077】
設備全体が制御ループの安定基準を満たすことを保証する必要がある。図11に例として示すように、ポテンショスタット20の周波数補償は、依然として十分な位相余裕(少なくとも66°、好ましくは90°)が存在するように、調整されるべきである。
【0078】
以下において、実際の応用例、特にCVS(サイクリックボルタンメトリーストリッピング法)を用いためっき槽における有機添加物の決定の例を用いて、本発明を説明する。複数の方法があり、これらは全て、特定の量の塩基性電解液に添加される研究対象となる実質的に少量の試料に基づく。従って試料のpHは、塩基性電解液のpHの良い近似値に相当する。この方法により、試料中の有機添加物を決定できる。
【0079】
カバー層のダイアグラムを用いて、作用電極の品質及び測定セルの状態を評価する。このために、典型的には1N硫酸を使用する。
【0080】
図12は、1V/sの、そしてめっき2mmの作用電極を有する1nH2SO4におけるカバー層のダイアグラムを示し、これは従来のAg/AgCl基準電極を用いて一度記録され、またインピーダンス変換器V1及びガード回路V2を有する基準電極としてのガラスpH電極を用いて一度記録されたものである。両方の測定における進行率は1V/Sであった。
【0081】
この例は、pH電極を使用する場合に、ダイアグラムがAg/AgCl基準システムに対して負の方向に385mV変移することを示す。それに応じて、開始及び最終電位CV掃引が適合される。
【0082】
これにより、1V/s以上の進行率を容易に達成できる。
【0083】
増幅器16(V1)、17(V2)を組み合わせて1つの増幅器とすることができるが、これは上記1つの増幅器がV1、V2の必要な特性を有する場合に限る。これは図3の設備の変形例であり、図13に例として示す。
【0084】
図14に簡略的に示すように、pH電極は自身のシールド26も有してよい。シールドは、pH電極の外側ケース27から隔離されており、測定すべき液体といずれの接触を有してはならない。典型的には、更なるガラス管28がシールド26にわたって取り付けられる。シールド26は、固体又は液体であってよい導電性材料からなる。
【0085】
増幅器V1がpH電極に直接組み込まれる場合、pH電極がシールドをもたない限り、増幅器V2をなくしてもよい。図15に示すこの設備に関して、供給電圧を増幅器V1に送達する必要があるため、多重より線ケーブルが必要である。更に、測定信号のために線が必要である。
【0086】
増幅器V1をpH電極の接続ジャック28に組み込むこともできる。ジャック28及びpH電極がシールドを有さない場合、増幅器V2をなくしてもよい。この設備を図16に簡略的に示す。ここでも、供給電圧をケーブルを介して増幅器16(V1)に送達する必要がある。
【符号の説明】
【0087】
10 pH電極
12 不透過性膜
16 入力増幅器V1
17 増幅器V2
21 作用電池
22 基準電極
23 対電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16