(54)【発明の名称】酸化グラフェン、グラフェン−高分子複合体、グラフェン−高分子複合体含有コーティング液、グラフェン−高分子複合体がコーティングされた鋼板、及びこれらの製造方法
【文献】
K.Liu et al,Preparation of polyester/reduced graphene oxide composites via in situ melt polycondensation and simultaneous thermo-reduction of graphene oxide,Journal of Materials Chemistry,The Royal Society of Chemistry ,2011年 6月28日,vol.21,No.24,pp8612-8617
【文献】
S.Stankovich et al,Synthesis and exfoliation of isocyanate-treated graphene oxide nanoplatelets,Carbon,2006年 8月 4日,44,pp3342-3347
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記グラフェン−高分子複合体の塗膜は、塗膜の全体重量に対して0〜5重量%(0重量%を除く)のグラフェンを含み、前記グラフェン−高分子複合体の塗膜に含有されたグラフェンの90重量%以上が塗膜の厚さ方向に上部50%以内に位置する、請求項2に記載のグラフェン−高分子複合体がコーティングされた鋼板。
前記高分子は、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群より選択される一つ以上である、請求項6に記載のグラフェン−高分子複合体を製造する方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の酸化グラフェン、グラフェン−高分子複合体、グラフェン−高分子複合体含有コーティング液、グラフェン−高分子複合体がコーティングされた鋼板、及びその製造方法について具体的に説明する。
【0020】
本発明の発明者らは、バインダーの選定に制約されず、且つグラフェンが有する固有の特性をより効果的に利用するために、グラフェンを鋼板表面にコーティングする際、グラフェンとバインダーを単に混合するのではなく、グラフェンを外郭(即ち、鋼板の上部)に位置させることにより、グラフェンを高分子とともに複合体化させることが好ましいということを発見し、本発明を完成させた。
【0021】
即ち、本発明の一側面は、素地鋼板と、上記素地鋼板上に形成されたグラフェン−高分子複合体の塗膜と、を含み、上記グラフェンは、直径(lateral size)が1〜40μm、厚さが30nm以下(0nmを除く)、表面積が40〜1500m
2/gである、グラフェン−高分子複合体がコーティングされた鋼板を提供する。
【0022】
本発明のコーティング鋼板は、グラフェン−高分子複合体が鋼板上に塗膜を形成したもので、グラフェンが塗膜の上部に位置することにより、グラフェンの特性である放熱性、電気伝導度を確保することができ、高分子によって素地鋼板との密着性、架橋及び硬化効率を増大し、加工性をともに確保することができるようにする。
【0023】
酸化グラフェンの作用基を用いて高分子をグラフティングさせてグラフェン−高分子複合体を生成する。
【0024】
本発明において、グラフェン−高分子複合体とは、以下でより詳細に説明するように、グラフェンに作用基を付与した後、作用基と高分子を結合して得たもので、上記高分子は鋼板に付着するのに有利なバインダーの役割をする。このような形態の複合体を用いる場合、結合力を有する高分子が優先的に鋼板の側に配列されて結合するため、グラフェンは自然と鋼板の上部(外郭)に配置される可能性が高まる。このとき、グラフェンに付着している作用基に高分子を直接結合させることができ、または、単量体をグラフェンのエッジに付着している作用基と結合させつつ、高分子に成長させることもできる。
【0025】
使用可能な素地鋼板としては、冷延鋼板、亜鉛めっき鋼板、亜鉛系電気めっき鋼板、溶融亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、めっき層にコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、アルミニウム、マンガン、鉄マグネシウム、すず、銅、これらの混合物である不純物、または異種金属を含有するめっき鋼板、シリコン、銅マグネシウム、鉄、マンガン、チタン、亜鉛、またはこれらの混合物を添加したアルミニウム合金板、リン酸塩が塗布された亜鉛めっき鋼板、または熱延鋼板などを用いることができるが、これに特に制限されない。
【0026】
上記塗膜の厚さは1〜20μmであることが素材との密着力及び加工性の確保の側面において好ましい。
【0027】
図1を参照し、本発明のグラフェン−高分子複合体がコーティングされた鋼板を製造する方法について説明する。
【0028】
先に、グラフェン−高分子複合体含有コーティング液を調製する。グラフェン−高分子複合体及びこれを含有するコーティング液は以下の過程を通じて準備することができる。
【0029】
まず、作用基が付着した酸化グラフェンを調製する。
【0030】
従来の酸化グラフェンの製造方法は、酸処理方法を適用して底面(basal plane)とエッジ(edge)の全体に作用基を生成する方法を主に用いている。具体的には、グラフェンにH
2SO
4、K
2S
2O
8、PO
5、NaNO
3、KMnO
4のような酸を複合的に処理してグラフェンを酸化させてきた。
【0031】
しかし、このような方法を用いると、エッジに付着する作用基の数を制御することができず、後の工程で作用基を通じてグラフティングされる高分子鎖の数が過剰になってグラフェンを含むコーティング鋼板に構造的欠陥が発生するおそれがある。
【0032】
よって、本発明では、黒鉛からグラフェンを剥離する工程において作用基を導入する方法を採用する。黒鉛のエッジ面を選択的に官能化させることで、剥離性が向上し、分散性が改善され、構造的欠陥を抑制して優れたグラフェンの物性を発現させようとするものである。
【0033】
本発明の酸化グラフェンの製造方法を具体的に説明する。
【0034】
黒鉛と剥離補助剤を混合して剥離された黒鉛を製造する。このとき、上記剥離補助剤は、アルカリ金属類、酸(acid)類、及び極性溶媒類の1種または2種以上の混合物を用いることができる。上記アルカリ金属類とは、Li、Na、K、Rb、Cs、Frなどのイオンまたはこれらを含む化合物を意味することができる。上記酸(acid)類としては、硫酸、塩酸、硝酸、過マンガン酸カリウムなどを用いることができる。上記極性溶媒類には、水、アルコール、カルボン酸、アセトン、THF(tetrahydrofuran)、DMF(dimethyl formamide)、DMSO(dimethyl sylfoxide)、HMPA(hexamethyl phosphoramide)、NMP(n−Methyl Pyrrolidone)、アセトニトリルなどが含まれ得る。
【0035】
上記剥離された黒鉛を熱処理した後、上記剥離された黒鉛に作用基を導入する。次に、マイクロウェーブまたは超音波で処理して再び剥離する過程を経る。この場合、グラフェンまたは剥離された黒鉛の端に位置する炭素原子に、共有結合を通じてカルボキシ基(−COOH)、カルボニル基(−CO−)のような作用基を付与することができる。作用基を導入した後、マイクロウェーブを照射したり、超音波処理したりして2次剥離過程を経るが、2段階の剥離を通じてより薄いグラフェンを製造することができ、特にエッジの部分に作用基が付着した酸化グラフェンを得ることができる。
【0036】
上記酸化グラフェンには、ヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)、カルボニル基(−CO−)、アミノ基(−NH
2)、ヒドロペルオキシ基(−OOH)、ペルオキシ基(−OO−)、チオール基(−SH)、イソシアネート基(−NCO)などの作用基を付着させることができる。
【0037】
高分子鎖をグラフティングするのに適した酸化グラフェンは、直径(lateral size)が1〜40μm、厚さが30nm以下(0nmを除く)、表面積が40〜1500m
2/gであるグラフェンの端にグラフェンの重量に対して0〜5%(0%を除く)の作用基が置換されていることが好ましい。上記条件を満たす酸化グラフェンは、比表面積の増加に伴い剥離度が増加してグラフェンのエッジに付着する作用基の数を最小に制御することができるためである。
【0038】
また、グラフェンのエッジに付着する作用基の含量はグラフェンの重量に対して5%以下であることが好ましい。5%を超過すると、グラフティングされる高分子鎖の数が過剰になり、高分子がグラフティングされていない部分で構造的欠陥が発生する可能性があるためである。
【0039】
続いて、上記酸化グラフェンに高分子をグラフティングさせてグラフェン−高分子複合体を形成する。
【0040】
酸化グラフェンに付着した作用基を用いて高分子をグラフティングするために、酸化グラフェン、モノマー、溶媒を混合し、250〜300℃で反応させてグラフティングする。さらに、反応を促進すべく、触媒を用いることもできる。このとき、モノマーは、酸化グラフェンに対して0.1〜1重量%を用いることができ、モノマー及び溶媒はグラフティングしようとする高分子の種類によって異なってもよい。使用可能な溶媒としては、具体的に、アセトン、メタノール、エタノール、1−プロパノール、エチレングリコール、DMSO、DMF、NMP、THFなどがある。
【0041】
上記グラフェン−高分子複合体は、直径(lateral size)が1〜40μm、厚さが30nm以下(0nmを除く)、表面積が40〜1500m
2/gであるグラフェンの端に高分子がグラフティングされている形態で、上記グラフェンは、上記高分子の重量に対して0.1〜1%であることが好ましい。0.1%未満であると、高分子鎖の含量が多すぎてコーティング層の上部にグラフェンを浮かせることが困難で、高分子鎖の全体にグラフェンが分布し、バインダーと混合したものと類似した状態になる。1%を超過すると、高分子鎖の含量が少なすぎてグラフェンが鋼板との接着力を有することができない。
【0042】
このとき、触媒、開始剤などを添加して窒素雰囲気下において熱処理して反応を行うことができる。
【0043】
上記高分子は、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ系樹脂、及びアクリル系樹脂からなる群より選択される一つ以上であってよいが、これに制限されない。
【0044】
上記高分子は、上記酸化グラフェンに付着した作用基と結合することによりグラフティングされる。
図2には、高分子がグラフティングされた酸化グラフェンの一例が示されている。ここで、ポリエステル系高分子がグラフティングされていると見られ、ポリエステル鎖と末端に−OH作用基を有することが確認できる。
【0045】
このような高分子鎖は、バインダーの役割をするため、素地鋼板と結合して密着力を確保することができる。素地鋼板との密着力を有することができるのは、末端に−COOHまたは−OH作用基を有するためである。このような高分子の例としては、ポリエステル、水分散性ウレタン、エポキシ、エポキシ−ホスフェート、アクリル系またはビニル系単量体で変性されたエポキシ−ホスフェート、ビニル系及びアクリル系またはビニル系単量体で変性されたアクリルウレタンなどがある。したがって、別途のバインダーは必要ではないが、硬化方法によっては他のバインダーを添加することもできる。
【0046】
バインディングの機能の他にも、高分子鎖の導入によって特定の物性を確保することができる。ポリウレタン及びポリエステルの場合は加工性を、エポキシの場合は硬度を、ポリビニリデンフロライドの場合は機械的/電気的特性及び伝導性を向上させる機能を有し得る。
【0047】
コーティング鋼板の物性に影響を及ぼす因子として、高分子の種類だけでなく、分子量、ガラス転移温度、高分子鎖の重合度、高分子鎖の構造、高分子鎖の含量などを挙げることができる。
【0048】
例えば、優れた延伸性及び加工性を示すように、高分子量のポリエステル樹脂を用いることができる。ポリエステル樹脂は、脂肪族からなる分子構造を有するため低粘度及び高延伸性を示す。上記ポリエステル樹脂としては、数平均分子量が5,000〜20,000、好ましくは5,500〜15,000、より好ましくは6,000〜12,000であってよい。数平均分子量が5,000未満であると、加工性が低下するという問題があり、数平均分子量が20,000を超過すると、耐薬品性及び光沢低下の問題がある。
【0049】
また、エポキシ樹脂としては、数平均分子量が900〜7,000であることが好ましい。数平均分子量が900未満であると、鋼板へのコーティング時に、硬化速度が遅く、耐水性が不良になるという問題があり、7,000を超過すると、変性反応による水溶化が困難であって耐食性が劣るという問題がある。
【0050】
但し、一般に、樹脂は数平均分子量が大きいほど、分子の柔軟性が増加して深加工時に樹脂延伸が容易であるため、耐塗膜クラック性の側面において有利である。
【0051】
ガラス転移温度の場合、5℃以上でなければグラフェンがコーティングされたとき、優れた硬度を確保することができない。また、30℃以下でなければ加工性の低下を防止することができない。そのため、5〜30℃であることが適当である。
【0052】
高分子鎖の重合度の場合、低すぎると、未反応モノマーが残留して高分子鎖が十分にグラフティングされることができず、高分子鎖の長さが短すぎてグラフェンを十分にコーティング層の上部に浮かせることができないため、鋼板との密着力が低下する。また、高すぎると、高分子鎖の長さが長すぎて鋼板とグラフェン層の間の間隔が広くなって伝導性及び放熱性などの電気的/熱的特性が劣り、高分子鎖がグラフェン層上に一部存在してコーティング層の上部にグラフェンだけで存在することができず、グラフェンの特性を効率的に発揮することができない。
【0053】
したがって、ポリエステル樹脂の水酸価は5〜20mgKOH/g、ポリウレタンのNCO/OH当量比は1〜3、エポキシの当量は450〜3,500に制御することが好ましい。
【0054】
高分子鎖の構造は、線型(linear)構造が枝分かれ型(branch)構造より加工性に優れる。
【0055】
したがって、グラフェン酸化物に付着している多様な作用基を用いて所望する物性の高分子鎖を結合させることにより、構造的に安定したグラフェン−高分子複合体を形成することができる。高分子鎖は、素地鋼板とのバインディング性質があるため下側に位置するようになり、素地鋼板との密着性だけでなく、高分子の特性である柔軟性を最大限に発揮するようになり、グラフェンは逆にコーティング層の上部に誘導されて鋼板の表面でグラフェンの特性を最大限に発揮するようになる。
【0056】
このような高分子鎖は、有機溶剤に容易に分散されるため、分散安定性にも優れる。また、高分子鎖の末端の作用基は、架橋反応及び硬化反応に参加して密着力を確保したり、硬化効率を増大させたりする。
【0057】
このように調製したグラフェン−高分子複合体に高分子樹脂、硬化剤、触媒、溶媒を混合してコーティング液を製造する。
【0058】
硬化剤としては、従来のメラミン系硬化剤を用いても構わないが、代わりにウレタン系硬化剤を用いることにより密着力を向上させることができる。上記ウレタン系硬化剤としては、MEKO−HDI(methylethyl ketoxime blocked hexamethylene diisocyanate)トリマー(trimer)、MEKO−IPDI(methylethyl keoxime blocked isophorone diisocyanate)トリマー、DMP−HDI(3,5−Dimethyl Pyrazole blocked hexamethylene diisocyanate)トリマー、DMP−IPDI(3,5−Dimethyl Pyrazole blocked isophorone diisocyanate)トリマーからなる群より選択された一つ以上が好ましいが、これに限定されず、具体的には、バイエル(Bayer)社のDesmodur BL3175、Desmodur BL4265、Desmodur PL350及びバクセンデン(Baxenden)社のTrixene BI7984、Trixene BI7982、Trixene BI7951などを用いることができる。
【0059】
上記グラフェン−高分子複合体含有コーティング液を素地鋼板に塗布して乾燥すると、グラフェン−高分子複合体の塗膜が形成された鋼板を得ることができる。
【0060】
乾燥方式としては、熱風加熱方式、誘導加熱方式などを用いることができる。熱風加熱方式の場合、80〜340℃で3〜50秒間乾燥し、誘導加熱方式の場合、周波数範囲5〜50MHz、電力3〜15KWで2〜30秒間乾燥する。このとき、好ましい乾燥温度はPMT(Peak metal temperature)100〜300℃である。
【0061】
上記グラフェン−高分子複合体の塗膜は、塗膜全体の重量に対して0〜5重量%(0重量%除外)のグラフェンを含み、上記グラフェン−高分子複合体の塗膜に含有されたグラフェンの90重量%以上が塗膜の厚さ方向に上部50%以内に位置することが好ましい。これにより、鋼板の表面層においてグラフェンの特性を発揮することができる。
【0062】
以下、実施例を通じて本発明についてより詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明の理解を助けるためのもので、本発明をこれに限定するものではない。
【実施例】
【0063】
1.酸化グラフェンの準備
黒鉛と硫酸を混合した後、攪拌した。得られた剥離された黒鉛を熱処理してから作用基を導入させた。マイクロウェーブを照射してグラフェンのエッジに作用基が付着した酸化グラフェンを得た。
図7から確認できるように、グラフェンのエッジの部分に作用基が付着していることを示すIRスペクトルを得た。
【0064】
上記酸化グラフェンの直径(lateral size)、厚さ、表面積を測定した結果、直径(lateral size)が10μm、厚さが7nm、表面積は600m
2/gと測定された。
【0065】
2.グラフェン−高分子複合体の製造
ネオペンチルグリコール(NPG):エチレングリコール(EG):無水フタル酸(PhAn):アジピン酸(AA)=1.5:1.5:1:1のモル比で配合してモノマーを調製した。酸化グラフェンをモノマーに対して0.5重量%、エステル化触媒としてブチルクロロチンジヒドロキシドをモノマーに対して0.05重量%、溶媒としてブチルアセテートを混合し、280℃でグラフティングを通じてグラフェン−ポリエステルの複合体を製造した。
【0066】
3.グラフェン−高分子複合体含有コーティング液の製造
合成されたグラフェン−ポリエステル複合体、硬化剤としてブロック化されたイソシアネート(Blocked isocyanate、Trixene BI 7982、Baxenden Chemicals Ltd)、触媒(DBTDL;Dibutyl Tin Dulaurate)、溶媒としてプロピレングリコールエーテルアセテート(propylene glycol ether acetate)をそれぞれ表1の組成で混合してグラフェン−ポリエステル複合体含有コーティング液(G005、G010、G015)を製造した。このとき、グラフェン−ポリエステル複合体内に含まれるグラフェンの含量はそれぞれ5重量%、10重量%、15重量%であった。また、合成されたグラフェン−ポリエステル複合体の添加量はG005、G010、G015のそれぞれに対して30gずつ入れた。
【0067】
比較するために、グラフェン−ポリエステル複合体が含有されない「G000」溶液も調製した。「G000」溶液では、商業用ポリエステル樹脂(CRF00167、KCC)25g、グラフェン5g、硬化剤としてブロック化されたイソシアネート(Blocked isocyanate、Trixene BI 7982、Baxenden Chemicals Ltd)、触媒(DBTDL;Dibutyl Tin Dulaurate)、溶媒としてプロピレングリコールエーテルアセテート(propylene glycol ether acetate)をそれぞれ表1の組成で混合してグラフェン−ポリエステル分散溶液(G000)を製造した。
【0068】
【表1】
【0069】
4.コーティング鋼板の製造
上記製造されたグラフェン−ポリエステル複合体含有コーティング液及びグラフェン−高分子分散溶液を亜鉛めっき(G.I)鋼板の表面に#3バーコーター(Bar coater)でそれぞれコーティングした後、PMT250℃で40秒間乾燥して10μmの塗膜を形成した。
【0070】
5.コーティング鋼板の物性の分析
それぞれのコーティング鋼板に対し、耐食性、密着性、分散安定性、硬化効率、放熱性、電気伝導度を測定した。また、ラマンスペクトルを通じて本発明によるコーティング鋼板の塗膜の上部に構造的な欠陥もなくグラフェンの成分が容易にコーティングされていることが確認できる。
【0071】
(1)耐食性
コーティングされた試片を35℃、95%の湿度で5%の食塩水を連続噴霧して72時間後の発錆の程度を評価した。
【0072】
グラフェン−高分子分散溶液(G000)でコーティングした鋼板(
図3(b))の場合は赤錆の発生が激しいが、本発明のグラフェン−ポリエステル複合体含有コーティング液(G010)でコーティングした鋼板(
図3(a))は表面が綺麗であることが分かる。
【0073】
(2)密着性
コーティングされた試片を横及び縦の長さが1mmになるようにカッターでカッティングして100個を製作し、3Mテープを貼った後、剥がして塗膜の付着程度を評価した。
【0074】
本発明のグラフェン−ポリエステル複合体含有コーティング液(G010)でコーティングした鋼板(
図4(a))の密着性がグラフェン−高分子分散溶液(G000)でコーティングした鋼板(
図4(b))に比べて良好であることが分かる。
【0075】
(3)分散安定性
本発明の濃度別グラフェン−高分子複合体含有コーティング液(G010)とグラフェン−高分子分散溶液(G000)を製造した後、ガラス容器に1ヶ月放置した後の状態を比較した結果を
図5に示した。グラフェンと高分子を単純ブレンディングした場合(
図5(b))、グラフェンが有機溶剤と分離したことが確認できた。また、本発明のコーティング液の場合(
図5(a))、水で希釈倍率を変えながら分散性を測定したが、全ての場合に溶剤と分離せずに分散性に優れることが確認できた。
【0076】
(4)硬化効率
硬化効率は、グラフェン−高分子複合体含有コーティング液(G010)とグラフェン−高分子分散溶液(G000)を、それぞれ最高鋼板温度(Peak Metal Temperature:PMT)をそれぞれ変えてコーティングした後、コーティング層と素材との密着性をテストして硬化効率を評価した。
【0077】
密着性は、加工部及び平板の二つに対して全て評価した。表面処理された鋼板の表面にクロスカットガイド(Cross cut guide)を用いて、鋭い小刀で横及び縦の格子形態で100個のマスを1mmの間隔で引いて、格子のように引かれた部分をエリクセンテスター(Erichsen tester)を用いて6mmの高さで押し上げ、押し上げられた部分に粘着テープ(Ichiban社のNB−1)を貼った後、剥がして落ちた面の状態を観察して評価した。
【0078】
また、平板は横及び縦の格子形態で100個のマスを1mmの間隔で引き、直ちに粘着テープ(Ichiban社のNB−1)を貼った後、剥がして落ちた面の状態を観察して評価した。
【0079】
加工部及び平板の二つに対する評価結果は、「付着している個数/100」で示した。即ち、表面から落ちた部分がない場合、「100/100」で、10個の剥離が発生した場合、「90/100」で、20個の剥離が発生した場合、「80/100」で示した。
【0080】
ベンディング(bending)は、コーティングされた試片の表面を180°曲げた後、バイスに入れて平面になるまで締めた(0、1、2、3T−Bendingの実施)。曲げられた部分から塗膜の剥離及びクラックの発生状態を評価した。
【0081】
【表2】
【0082】
グラフェン−高分子複合体含有コーティング液でコーティングした試片は、PMTを変化させたところ密着性(平板及び加工部)及びベンディングが全て良好であった。密着力の場合、タッピング(tapping)後にもコーティング層が剥離しなかった。また、ベンディングの部分ではコーティング層が剥がれたり、クラックが発生したりしなかった。PMTの変化によって硬化が十分に行われていることが分かる。
【0083】
これに対し、単純ブレンディングによって製造されたグラフェン−高分子分散溶液でコーティングされた試片は、PMTの変化によってコーティング層が剥離するという現象が発生した。PMTが230℃以下ではコーティング層が剥離するという現象が現れ、PMTが270℃以上ではクラックが発生し、密着性(平板及び加工部)も240〜250℃の範囲でだけ良好であった。換言すれば、低いPMTではコーティング溶液が十分に硬化されないため剥離し、逆に高いPMTでは硬化しすぎてコーティング層にクラックが発生する。これにより、グラフェン−高分子複合体でコーティングする場合、より広い範囲のPMTで硬化効率がよく、同一のPMTでも硬化効率が非常によいことが確認できた。
【0084】
(5)放熱性及び電気伝導度
EG(電気めっき鋼板)の両面に耐指紋樹脂、放熱樹脂、グラフェン酸化物(GO;Graphene Oxide)分散樹脂、グラフェン−高分子複合体含有コーティング液(本発明)をコーティングして試験片を製造した。
【0085】
上記耐指紋樹脂は、水分散ウレタン樹脂、3〜6重量部のリン酸、3〜6重量部のジルコニウムフッ化チタニウム、20〜50重量部の無機バインダー樹脂、及び0.5〜1.50重量部のシラン化合物を含有するコーティング液で、上記放熱樹脂は、水分散有機樹脂及び熱伝導性分散体を含み、上記熱伝導性分散体の固形分100重量部に対して35〜65重量部のケイ素含有化合物及び35〜65重量部のアルミニウム含有化合物を含むコーティング液で、上記グラフェン酸化物分散樹脂は上記表1のコーティング溶液のうちG000である。上記グラフェン−高分子複合体含有コーティング液は上記表1のコーティング溶液のうちG010である。
【0086】
放熱性を評価するために、
図6に示された放熱温度評価装置を用いてLEDモジュールと製造した試験片の温度を測定して、それぞれの試験片に対し、LEDモジュールの温度に対する(−)への温度差を計算した。
【0087】
また、Mitsubishi Chemical社のLoresta GP(ESP Probe)を用いて電気伝導性を測定し、表面抵抗を測定した。通電率はコーティングされていない試片に対して電流の流れを比較して百分率で示したものである。
【0088】
【表3】
【0089】
上記表3の結果を参照すると、放熱効果の場合、本発明のコーティング溶液を用いて製造したコーティング試片がLEDモジュールに対する温度差が最も大きいことが分かる。これにより、放熱効果が最も大きいことが確認できた。
【0090】
電気伝導度は、それぞれの抵抗を測定した結果で、電気伝導度値が小さいほど電気抵抗が小さい。したがって、本発明のコーティング溶液を用いて製造したコーティング試片の電気抵抗が最も小さいことが分かる。これにより、鋼板にコーティングしても、グラフェンによって通電率が100%であることが確認できた。一般に、高分子樹脂が鋼板にコーティングされると、電気が流れないため通電率が落ちるが、本発明では、グラフェン−高分子複合体が鋼板に均一にコーティングされることにより通電率が低下しないことが分かる。