特許第6236468号(P6236468)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236468
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】粘着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20171113BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20171113BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171113BHJP
   G02B 5/30 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   C09J133/06
   C09J175/04
   C09J11/06
   !G02B5/30
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-551597(P2015-551597)
(86)(22)【出願日】2013年12月18日
(65)【公表番号】特表2016-509094(P2016-509094A)
(43)【公表日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】KR2013011778
(87)【国際公開番号】WO2014109490
(87)【国際公開日】20140717
【審査請求日】2016年8月5日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0002029
(32)【優先日】2013年1月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515137406
【氏名又は名称】ドンウ ファインケム カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チョウィ,ハンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジヒ
【審査官】 菅野 芳男
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−126929(JP,A)
【文献】 特開2009−173722(JP,A)
【文献】 特開2012−246444(JP,A)
【文献】 特開平08−199148(JP,A)
【文献】 特開2011−057794(JP,A)
【文献】 特開2008−045041(JP,A)
【文献】 特開平07−082545(JP,A)
【文献】 特開2011−246711(JP,A)
【文献】 特開2013−001745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 133/06
C09J 11/06
C09J 175/04
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合体総含有量100重量部に対して、炭素数1−12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体68〜95.9重量部と、(メタ)アクリル酸5〜20重量部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート0.5〜2重量部を含むアクリル系共重合体100重量部と、
イソシアネート系架橋剤0.1〜3重量部;及びイオン性帯電防止剤0.1〜5重量部とを含み、
23℃、65%RHで経時変化のない時点である養生期間が24時間以下であり、常温で24時間放置した前後の粘度変化率が50%未満のものであることを特徴とする、粘着剤組成物。
【請求項2】
前記イオン性帯電防止剤は、ピリジニウム、イミダゾリウム及びテトラアルキルアンモニウムからなる群から選択された陽イオン塩と、
PF、BF及びIからなる群から選択された陰イオンであり、イオン性塩類であるものである、請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
前記イオン性帯電防止剤は、常温(25℃)で固相のイオン性固体である、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【請求項4】
前記常温(25℃)で固相のイオン性固体は、4−メチル−1−オクチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートまたはトリ−n−ブチルメチルアンモニウムビス−(トリフルオロメタンスルホニル)イミドである、請求項3に記載の粘着剤組成物。
【請求項5】
前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含む、請求項2に記載の粘着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止性及び耐久性に優れ、養生期間が短縮される粘着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示装置(Liquid Crystal Display Device、LCD)は、液晶を含んでいる液晶セルと偏光板が具備され、これを接合するための適切な粘着剤層が使用される。粘着剤は、粘着性及び透明性に優れるアクリル系共重合体をベースとするアクリル系粘着剤が多く使用される。
【0003】
偏光板を液晶セルに附着する工程で粘着剤層から離型フィルムが剥離されると、静電気が発生し、発生した静電気は、液晶の配向に影響を与えて不良を誘発したり静電気的引力によって液晶セルと粘着剤との間に流入した異物によって汚染を誘発する。
【0004】
これを改善するために、粘着剤組成物にイオン性帯電防止剤を混用するが、前記イオン性帯電防止剤の表面移行により析出されるブリードアウト(Bleed out)現象によって、浮き、気泡及び剥離などが発生し得る。特に、このような問題は高温または高温多湿な環境に露出された場合、さらに悪化することがある。
【0005】
これに、アルキレンオキサイド基を含む単量体を用いて、共重合されたアクリル系の共重合体を含む粘着剤組成物が提示されている[韓国特許公開第2012−0073093号及び第2009−0055576号]。しかし、前記アクリル系共重合体は、経時変化による粘度上昇の恐れがあり量産後に保管しにくいという問題がある。
【0006】
また、粘着剤組成物は、帯電防止性及び耐久性以外にも生産性、具体的には倉庫容量、在庫管理及び緊急出荷対応などに影響を及ぼす養生期間も重要な要因として作用する。
【0007】
これに、養生期間を短縮するために架橋反応を増加させることができる多様な架橋反応用触媒が提示されている[韓国特許公開第 2012−0091549号及び第2010−0039274号]。しかし、前記架橋反応用触媒は、使用量の制御が重要であり、特に、過量添加される場合、設備の詰りなどのような危険の可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、経時変化による粘度上昇の恐れがなく、帯電防止性と耐久性を同時に向上させることができ、架橋用触媒を使用せずに養生期間を短縮することができる粘着剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するために、本発明は共重合体の総含有量100重量部に対して、(メタ)アクリル酸4〜30重量部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1〜2重量部を含むアクリル系共重合体と、イソシアネート系架橋剤及びイオン性帯電防止剤を含む粘着剤組成物とを提供する。
【0010】
前記アクリル系共重合体は、共重合体総含有量100重量部に対し、炭素数1−12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体68〜95.9重量部と、アクリル酸4〜30重量部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1〜2重量部とを含むことができる。
【0011】
前記イオン性帯電防止剤は、ピリジニウム、イミダゾリウム及びテトラアルキルアンモニウムからなる群から選択された陽イオンと、PF、BF及びIからなる群から選択された陰イオンであって、イオン性塩類であることができる。
【0012】
前記イオン性帯電防止剤は、常温(25℃)で固体相のイオン性固体であることができる。
【0013】
前記常温(25℃)で固体相のイオン性帯電防止剤は、4−メチル−1−オクチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートまたはFC4400(3M社)であることがある。
【0014】
前記アクリル系共重合体100重量部に対して、架橋剤は0.1〜3重量部及びイオン性帯電防止剤は0.1〜5重量部を含むことができる。
【0015】
前記粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の粘着剤組成物は、帯電防止性と同時に耐久性を向上することができ、経時変化(高温または高温多湿な環境変化)による物性低下の恐れがない利点がある。
【0017】
また、本発明の粘着剤組成物は、従来に比べ、養生期間が6〜24時間の範囲に大幅に短縮され、通常の養生期間を短縮させるために使用される過量の添加剤使用が抑制されるので、これによる設備の詰りなどのような問題を改善できる利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、帯電防止性及び耐久性に優れる粘着剤組成物に関する。
【0019】
以下、本発明を詳しく説明すると次のとおりである。
【0020】
本発明の粘着剤組成物は、共重合体総含有量100重量部に対して、(メタ)アクリル酸4〜30重量部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1〜2重量部を含むアクリル系共重合体と、イソシアネート系架橋剤及びイオン性帯電防止剤を含む。
【0021】
前記(メタ)アクリル酸は、イオン性帯電防止剤成分が表面に移動して析出されるブリードアウト(Bleed out)現象を抑制して耐久性を向上させる役割をするだけでなく、4−ヒドロキシブチルアクリレートが架橋剤と架橋反応進行の際、酸触媒としての役割をし、前記4−ヒドロキシブチルアクリレートは、共重合体内で流動性が大きく架橋反応速度を増加させることによって粘着剤組成物の養生を短縮させる役割をする。
【0022】
すなわち、本発明は、帯電防止性、耐久性及び養生期間などを同時に改善するために、(メタ)アクリル酸と4−ヒドロキシブチルアクリレートが混合して使用されたアクリル系共重合体を選択的に使用し、前記成分の混合比を最適化したことを特徴とする。
【0023】
本発明のアクリル系共重合体は、共重合体総含有量100重量部に対して、炭素数1−12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体68〜95.9重量部、(メタ)アクリル酸4〜30重量部及び4−ヒドロキシブチルアクリレート0.1〜2重量部を含むことが好ましい。
【0024】
前記炭素数1−12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体としては、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの中でn−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートまたはこれらの混合物が好ましい。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0025】
このような炭素数1−12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート単量体は、共重合体総含有量100重量部に対して、68〜95.9重量部、好ましくは75〜90重量部を含んだ方が良い。前記68重量部未満であると、粘着力が十分ではないことがあり、95.9重量部を超過する場合には凝集力が低下することがある。
【0026】
前記(メタ)アクリル酸は、共重合体総含有量100重量部に対して4〜30重量部、好ましくは5〜20重量部を含んだ方が良い。前記含有量が4重量部未満であると、イオン性帯電防止剤のブリードアウト(Bleed out)現象の抑制效果が微弱であるため耐久性が低下することがあり、30重量部を超過する場合には、過度な架橋反応により粘着剤組成物の組液安定性が低下することがある。
【0027】
前記4−ヒドロキシブチルアクリレートは、共重合体の総含有量100重量部に対して0.1〜2重量部、好ましくは0.5〜1.5重量部含んだ方が良い。前記含有量が0.1重量部未満であると、養生期間の短縮效果が微弱であることがあり、2重量部を超過する場合には、過度な架橋反応により組液安定性が低下することがある。
【0028】
本発明のアクリル系共重合体は、前記(メタ)アクリル酸と、4−ヒドロキシブチルアクリレート以外に、架橋可能な官能基を有する重合性単量体をさらに含むことができる。
【0029】
架橋可能な官能基を有する重合性単量体は、下記架橋制との化学結合によって凝集力または粘着強度を付与する作用をするものとして、ヒドロキシ基を有する単量体、カルボキシ基を有する単量体、アミド基を有する単量体及び3次アミン基を有する単量体などを挙げることができる。これらは、単独または2種以上混合して使用することができる。
【0030】
ヒドロキシ基を有する単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、アルキレン基の炭素数が2−4のヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、8−ヒドロキシヘプチルビニルエーテル、8−ヒドロキシオクチルビニルエーテル、9−ヒドロキシノニルビニルエーテル及び10−ヒドロキシデシルビニルエーテルなどを挙げることができ、これらの中で4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。
【0031】
カルボキシ基を有する単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、カルボキシエチルアクリル酸などの1価酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの2価酸及びこれらのモノアルキルエステル;3−(メタ)アクリルロイルプロピオン酸;アルキル基の炭素数が2−3の2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキレン基の炭素数が2−4のヒドロキシアルキレングリコール(メタ)アクリレートの無水コハク酸開環付加体、アルキル基の炭素数が2−3の2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのカプロラクトン付加体に無水コハク酸を開環付加させた化合物などを挙げることができ、これらの中でカルボキシエチルアクリル酸が好ましい。
【0032】
アミド基を有する単量体としては、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−3次ブチルアクリルアミド、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリルアミド、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリルアミド、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリルアミドなどを挙げることができ、これらの中で(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0033】
3次アミン基を有する単量体としては、N、N−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N、N−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、N、N−(ジメチルアミノ)プロピル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0034】
架橋性単量体は、アクリル系共重合体総含有量100重量部に対して0.05〜10重量部で含まれるのが好ましく、より好ましくは0.1〜8重量部であった方が良い。含有量が0.05重量部未満の場合、粘着剤の凝集力が劣って耐久性が低下することがあり、10重量部を超過する場合、高いゲル分率によって粘着力が劣り耐久性に問題を引き起こすことがある。
【0035】
また、前記単量体以外に、他の重合性単量体を粘着力を低下させない範囲、例えば、アクリル系共重合体の製造に使用される総単量体100重量部に対して10重量部以下でさらに含むことができる。
【0036】
共重合体の製造方法は、特に限定されず、当分野おいて通常的に使用されるバルク重合、溶液重合、乳化重合または懸濁重合などの方法を用いて製造することができ、溶液重合が好ましい。また、重合する際、通常使用される溶媒、重合開始剤、分子量制御のための連鎖移動剤などを使用することができる。
【0037】
共重合体は、ゲル透過クロマトグラフィー(Gel permeation chromatography、GPC)によって測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算、Mw)が5万〜200万、好ましくは、40万〜200万であるものが良い。前記重量平均分子量が5万未満の場合、共重合体の間の凝集力が不足し粘着耐久性に問題を引き起こすことがあり、200万超過の場合、塗工時、工程性を確保するために多量の希釈溶媒を必要とすることがある。
【0038】
架橋剤は、密着性及び耐久性を向上させることができ、高温での信頼性及び粘着剤の形状を維持させることができる。特に、本発明は、(メタ)アクリル酸と4−ヒドロキシブチルアクリレートとの反応性、粘着力、耐久性及び光漏れ防止性能などを考慮するとイソシアネート系が好ましい。
【0039】
前記イソシアネート系は、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、2、4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4、4−ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物;トリメチロールプロパンなどの多価アルコール系化合物1モルにジイソシアネート化合物3モルを反応させた付加体、ジイソシアネート化合物3モルを自己縮合させたイソシアヌレート体、ジイソシアネート化合物3モル中の2モルから得られるジイソシアネートウレアに残り1モルのジイソシアネートが縮合されたビュレット体、トリフェニルメタントリイソシアネート、メチレンビストリイソシアネートなどの3個の官能基を含む多官能イソシアネート化合物などを挙げることができる。
【0040】
このような架橋剤は、前記アクリル系共重合体100重量部に対して0.1〜3重量部、好ましくは0.3〜2重量部が含有され得る。含有量が0.1重量部未満であると、架橋度の不足によって凝集力が劣り粘着耐久性及び切断性の物性を害する恐れがあり、3重量部を超過する場合には、過多架橋反応による残留応力緩和に問題が発生することがある。
【0041】
イオン性帯電防止剤は、陰イオンと陽イオンで構成されたイオン性塩類で、粘着剤にイオン伝導性を付与することができるものであれば特にその種類を限定しない。
【0042】
具体的にアルカリ金属塩、アンモニウム塩、スルホニウム塩及びホスホニウム塩からなる群から選択された陽イオンと;フッ素含有無機塩、フッ素含有有機塩及びヨードイオンからなる群から選択された陰イオンからなるイオン性塩類であることができる。
【0043】
このようなイオン性帯電防止剤はアルカルリ金属塩、イオン性液体またはイオン性固体であることができる。ただ、アルカルリ金属塩は粘着剤との相溶性が低くて耐久性が不足する恐れがあり、イオン性液体は粘着剤組成物内で流動性が高く経時変化による帯電防止性能が低下することがある。すなわち、耐久性及び帯電防止性の経時変化安全性を考慮すれば常温(25℃)で固体相であるイオン性固体が好ましい。
【0044】
前記イオン性固体は、ピリジニウム、イミダゾリウム及びテトラアルキルアンモニウムからなる群から選択された陽イオン塩と、PF、BF及びIからなる群から選択された陰イオンであってイオン性塩類から選択された1種以上であることができる。
【0045】
このようなイオン性固体としては、4−メチル−1−オクチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートまたは市販される3M社のFC4400製品を使用することができる。
【0046】
このようなイオン性帯電防止剤は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.5〜3重量部を含むことができる。含有量が0.1重量部未満の場合、帯電防止性が不十分なことがあり、10重量部を超過する場合には耐久性の確保が困難であることがある。
【0047】
また、本発明の粘着剤組成物は、シランカップリング剤をさらに含むことができる。
【0048】
シランカップリング剤の種類は、特に限定されない。例えば、ビニルクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3、4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2−(アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1、3−ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを挙げることができる。これらは単独または2種以上混合して使用することができる。
【0049】
前記のような成分以外に、粘着剤組成物は、用途によって要求される粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調節するために、粘着性付与樹脂、酸化防止剤、レベリング剤、表面潤滑剤、染料、顔料、消泡剤、充填剤、光安定剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0050】
このような添加剤は、本発明の效果を阻害しない範囲内で適切に含有量を調節することができる。
【0051】
本発明の粘着剤組成物は、特に液晶セルとの接合のための偏光板用粘着剤、表面保護フィルム用粘着剤として使用することができる。また、保護フィルム、反射シート、構造用粘着シート、写真用粘着シート、車線表示用粘着シート、光学用粘着製品、電子部品用粘着剤だけではなく、一般商業用粘着シート製品としても使用可能である。
【0052】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は、本発明を例示するだけのものであり、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者において明白である。また、このような変形及び修正が添付された特許請求範囲に属することも当然なものである。なお、実施例1、2、8,9、10、11及び15は、それぞれ、比較例C1、C2、C8、C9、C10、C11及びC15に読替えるものとする。
【0053】
製造例:アクリル系共重合体製造
製造例1−10及び比較製造例1−5
窒素ガスが還流されて温度調節が容易となるように冷却装置を設置した1Lの反応基に下記表1の組成からなる単量体混合物を投入した後、溶剤としてエチルアセテート100重量部を投入した。次に、酸素を除去するために窒素ガスを1時間パージングした後、78℃に維持した。前記混合物を均一にした後、反応開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を投入して、8時間反応させて重量平均分子量が約73万であるアクリル系共重合体を製造した。
【0054】
【表1】

【0055】
実施例1−18及び比較例1−5
下記表2のように、アクリル系共重合体、イオン性帯電防止剤、架橋剤及びシランカップリング剤を混合した後、エチルアセテートで希釈して固形分濃度15%の粘着剤組成物を製造した。
【0056】
【表2】
【0057】
前記にて製造された粘着剤組成物をシリコーン離型剤がコーティングされた離型異形フィルム上に厚さが25μmとなるように塗布して100℃で1分間乾燥させて粘着層を形成した。その上に、さらに一層の離型異形フィルムをラミネーションして粘着シートを製造した。製造された粘着シートの離型異形フィルムを剥離させた後、厚さ185μmのヨード系偏光板に前記製造された粘着層を粘着加工で積層して粘着剤付着偏光板を製造した。製造された偏光板を23℃、60%RHの条件で20日間保管した。
【0058】
試験例
前記実施例及び比較例にて製造された粘着剤組成物、粘着シート、粘着剤付着偏光板の物性を下記の方法で測定して、その結果を下記表3に表した。
【0059】
1.貯蔵安定性(粘度変化、%)
製造された粘着剤組成物の初期粘度と常温で24時間放置した後の粘度を粘度測定計(Brookfield LVDV−II+B型(spindle no.3、30rpm))を用いて測定し、粘度の変化率(△η)を計算した。
【0060】
<評価基準>
○:△η<50%
△:50%≦△η<100%
×:100%≦△η
【0061】
2.養生期間
製造された粘着シートを23℃、65%RHで1〜10日間養生しながら1日単位で下記方法によりゲル分率を測定し、ゲル分率がそれ以上増加しない日、すなわち養生期間を測定した。精秤した250メッシュの鉄網(100mm×100mm)に粘着シートの粘着剤層を約0.25g貼付して、ゲルが漏れないように囲む。精密天秤で重量を正確に測定した後、鉄網をエチルアセテート溶液に3日間浸漬する。浸漬された鉄網を取り出して少量のエチルアセテート溶液で洗浄し、120℃で24時間乾燥した後重量を測定する。測定された重量を用いて下記数学式1でゲル分率を計算した。計算されたゲル分率の値が70〜80%範囲に含まれ経時的な変化がない時点を基準に養生期間を決めた。
【0062】
[式1]
ゲル分率(%)=(C−A)/(B−A)×100
[式のAは鉄網の重量(g)、Bは粘着剤層を貼付した鉄網の重量(B−A:粘着剤重量、g)、Cは浸漬後乾燥した鉄網の重量(C−A:ゲル化した樹脂の重量、g)である]
【0063】
3.耐久性(耐熱、耐湿熱)
製造された粘着剤付着偏光板を90mm×170mmの大きさに切断して離型異形フィルムを剥離させた後、ガラス基板(110mm×190mm×0.7mm)の両面に光学吸収軸が直交するように附着して試験片を製作した。この時、加えられた圧力は5kg/cmであり、気泡や異物が発生しないようにクリーンルーム作業を行った。耐熱特性は80℃の温度で1000時間放置した後に気泡や剥離の発生可否を観察して、耐湿熱特性は60℃の温度及び90%RHの条件で1000時間放置した後に気泡や剥離の発生可否を観察した。この時、試験片の状態を評価する直前に常温で24時間放置した後観察した。
【0064】
<評価基準>
◎:気泡や剥離なし。
○:気泡や剥離<5個
△:5個≦気泡や剥離<10個
×:10個≦気泡や剥離
【0065】
4.帯電防止性(表面比抵抗、Ω/□)
粘着剤シートの 離型異形フィルムを剥離した後、表面3地点の表面比抵抗をそれぞれ10回ずつ測定して、その平均値で表した。この時、表面比抵抗は表面抵抗測定器(MCP−HT450/MITSUBISHI CHEMIAL)、Probe(URS、UR100)、Probe Checker(URS用、UR100用)を利用した。
【0066】
【表3】
【0067】
前記表3のように、本発明により、(メタ)アクリル酸及び4−ヒドロキシブチルアクリレートを一定量含むアクリル系共重合体、イソシアネート系架橋剤及びイオン性帯電防止剤を含む実施例1〜18は、比較例1〜5に比べて帯電防止性、耐久性(耐熱及び耐湿熱)、及び貯蔵安定性がともに優秀であり、養生期間が8〜36時間に大幅に短縮されたことが確認できた。