特許第6236473号(P6236473)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6236473硬化性アクリレートまたはメタクリレート組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6236473
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】硬化性アクリレートまたはメタクリレート組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/10 20060101AFI20171113BHJP
   C08F 216/12 20060101ALI20171113BHJP
   C08F 4/52 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C08F220/10
   C08F216/12
   C08F4/52
【請求項の数】22
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-562137(P2015-562137)
(86)(22)【出願日】2014年3月12日
(65)【公表番号】特表2016-513744(P2016-513744A)
(43)【公表日】2016年5月16日
(86)【国際出願番号】EP2014054896
(87)【国際公開番号】WO2014140138
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2017年3月7日
(31)【優先権主張番号】1304624.8
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514056229
【氏名又は名称】ヘンケル アイピー アンド ホールディング ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(74)【代理人】
【識別番号】100129610
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 暁子
(72)【発明者】
【氏名】ホウリハン、 ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ニーフセイ、 ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】スウィーニー、 ナイジェル
【審査官】 柳本 航佑
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−510788(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0135601(US,A1)
【文献】 特表2002−540228(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0040116(US,A1)
【文献】 特表2008−502742(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0004332(US,A1)
【文献】 特開昭60−243108(JP,A)
【文献】 米国特許第04525232(US,A)
【文献】 特開平07−196947(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00−246/00
C08F 301/00
C08C 19/00− 19/44
C08F 4/00− 4/58
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性アクリレートまたはメタクリレート成分と、
オルガノボラン開始剤成分と、
ビニルエーテル成分と、
オルガノボラン成分用活性化剤と
を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記ビニルエーテル成分が、少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテル分子を含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記ビニルエーテル成分が、ジビニルエーテルを含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ビニルエーテル成分が、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、およびトリエチレングリコールジビニルエーテルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記硬化性組成物が2液組成物の形態であって、
第1液が、前記オルガノボラン開始剤成分および前記ビニルエーテル成分を含み、
第2液が、前記オルガノボラン成分用活性化剤を含む
請求項1から4のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
前記硬化性アクリレートまたはメタクリレート成分が、前記2液組成物において、前記オルガノボラン成分用活性化剤と同じ液中にある、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記オルガノボラン開始剤成分が、トリアルキルボランを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記オルガノボラン開始剤成分が、ボラン:アミン錯体を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記オルガノボラン開始剤成分が、トリアルキルボラン:アミン錯体を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記オルガノボラン開始剤成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、0.1〜10重量%の量で存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記オルガノボラン開始剤成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、0.25〜5重量%の量で存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記オルガノボラン化合物用活性化剤が、ルイス酸、カルボン酸、リン酸、カルボン酸の無水物およびイソシアネートならびにこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記活性化剤が、前記組成物の合計重量に基づいて、1〜40重量%の量で存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記活性化剤が、前記組成物の合計重量に基づいて、2〜20重量%の量で存在する、請求項1から13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記アクリレートまたはメタクリレート成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、10〜95重量%の量で存在する、請求項1から14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
前記アクリレートまたはメタクリレート成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、20〜85重量%の量で存在する、請求項1から15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
前記第2液が、硬化性マレエート、フマレートまたはマレイミド硬化成分を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
前記マレエート、フマレートまたはマレイミド硬化成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、1〜20重量%の量で存在する、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記マレエート、フマレートまたはマレイミド硬化成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、1.5〜10重量%の量で存在する、請求項17または請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
強靭化剤成分を更に含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
前記強靭化剤成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、5〜50重量%の量で存在する、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
前記強靭化剤成分が、前記組成物の合計重量に基づいて、10〜30重量%の量で存在する、請求項20または請求項21に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性アクリレートまたはメタクリレート組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
オルガノボランは、自発的に自動酸化しないように、しばしばアミン錯体として安定化される。これらの錯体は、必要なときにオルガノボランが自動酸化できるように、酸により活性化できる。しかし、メタクリレートおよびポリマー強靭化剤(polymeric toughener)の少なくとも一方の存在下で、オルガノボラン:アミンは、しばしば樹脂系組成物である組成物をゲル化させることがあり、これにより、経時安定性を著しく損なう。このような組成物は、多くの場合、十分に長い保存期間は有さない。
【0003】
また、表面エネルギーの低い基板上での接着性の改善に対する要求もある。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレンを含むポリオレフィンおよびこれらのコポリマーなどの表面エネルギーの低い表面は、接着剤の接着技術を使用して、互いに、および他の表面に接着することが難しいことはよく知られている。これは、これらが自由表面で利用できる活性接着部位をほとんど有していないという事実のためであると考えられる。低い表面エネルギーは、典型的には、表面エネルギー値が45mJ/m未満であり、より典型的には、40mJ/m未満であり、例えば35mJ/m未満である。
【0004】
火炎処理、プラズマ処理、酸化、スパッタエッチング、コロナ放電、またはプライマー処理などの表面の前処理により、エネルギーの低い表面を、表面エネルギーの高い材料と接着することは、よく知られている。このような処理は、エネルギーの低い材料の表面の結合を崩壊させ、反応性であって、かつ接着材料との接着反応に関与できる部位を提供する。しかし、このような表面の前処理は通常望ましくない。なぜなら、これはプロセスのコストを増大させ、その結果について特に再現可能でなく、かつ前処理の効果は経時的に低下するので、妥当な時間内に接着しない場合には、前処理された表面を再度前処理しなければならないためである。
【0005】
安定で、混合が容易な、2成分の接着用配合物の提供も望ましい。構造的接着用途での使用に適する組成物の提供は有利である。
【0006】
米国特許出願第10587872号は、ボラン:アミン/メタクリレート組成物の安定性を増加させる方法として、トリアルキルボランアミンを有機金属アルミニウム化合物と共に使用することに関する。しかし、有機金属アルミニウム化合物は、水および酸素に非常に敏感であり、接着性能に悪影響を与える副生成物を生成することがある。
【0007】
米国特許第7,247,596号は、オルガノボラン/メタクリレート組成物用の安定剤として、ヒドロキシルアミンまたはニトリルオキシドを開示している。このような安定剤の使用により保存安定性は上昇すると言われているが、これは時には、接着強度性能の減少という結果と共に達成される。
【0008】
米国特許第4,999,216号は、ビニルエーテル/メタクリレート組成物に関する。組成物は、マレエートまたはフマレートモノマーの存在下で、光開始剤によりラジカル共重合する。このような組成物では、効果的に接着するために、表面エネルギーの低い基板の表面処理を必要とする。
【0009】
US20070135601(Huntsman)は、オルガノボランと、アミノ官能基を有するオルガノシリコン化合物との新規な錯体を提供することに関し、これはラジカル重合系のための効果的な重合開始剤である。Huntsmanは、アクリルまたはメタクリルモノマーおよびラジカル重合性ビニルエーテルを含む、多くの重合系のための適切な重合開始剤として、オルガノボラン錯体の使用を記載している。
【0010】
US20040242817(Kendall)も新規なオルガノボランに関するものであり、不飽和アミン、アミジンまたはグアニジン、およびジアルキルヒドロボランから、ヒドロホウ素化条件下で形成される異なるサイズの環としての、内部配位された(internally coordinated)オルガノボランを開示している。また、ラジカル重合性材料および内部配位されたオルガノボランを含む2液(two−part)接着剤コーティングキットも開示している。Kendallは、任意選択によりポリビニルアルキルエーテルを含む接着剤またはコーティングの実施形態を記載している。
【0011】
同様に、WO2005000911(同じくKendall)は、環状オルガノボランおよびそれを含む組成物に関する。
【0012】
Loctite(登録商標)3035(Henkel Corporation、Rocky Hill、CT、USAから入手可能)として販売される製品は、ボラン:アミン開始剤を使用する2液アクリル接着剤である。第1液は、開始剤およびメタクリル酸エステルを有する。他方の液は、メタクリレートエステルおよび共重合性の酸を有する。
【0013】
利用可能な解決策ではあるが、代替組成物の提供が望ましい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様において、
硬化性アクリレートまたはメタクリレート成分と、
オルガノボラン開始剤成分と、
ビニルエーテル成分と、
オルガノボラン成分用活性化剤と
を含む2液重合性組成物が提供される。
【0015】
本発明の組成物は、アクリレートまたはメタクリレート、オルガノボランおよび活性化剤を含む他の組成物と比較して、良好な保管安定性を示すことが見出された。望ましい物理的特性を付与するために、添加剤が組成物に含まれてもよく、例えば、ポリマー強靭化剤、シリカおよび/もしくは他のレオロジー改質剤、例えば、ゼオライト、ハロイサイト、マイカ、タルクなどの天然由来の鉱物材料、ならびに木粉を含む木材微粒子材料などの他の微粒子材料、ならびに炭酸塩、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、および/もしくは炭酸マグネシウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0016】
ビニルエーテル成分は、少なくとも2つのビニルエーテル基を有するビニルエーテル分子、例えばジビニルエーテルを含んでもよい。
【0017】
ビニルエーテル成分は、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、およびトリエチレングリコールジビニルエーテルのうちの少なくとも1つを含んでもよい。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態は、
硬化性アクリレートまたはメタクリレート成分と、
オルガノボラン開始剤成分およびビニルエーテル成分を含む第1液と、
オルガノボラン成分用活性化剤を含む第2液と
を含む2液組成物を含んでもよい。
【0019】
硬化性アクリレートまたはメタクリレート成分は、2液組成物において、オルガノボラン成分用活性化剤と同じ液中にあってもよい。
【0020】
オルガノボラン開始剤成分は、トリアルキルボランを含んでもよい。
【0021】
オルガノボラン開始剤成分は、ボラン:アミン錯体、例えば、トリアルキルボラン:アミン錯体を含んでもよい。
【0022】
オルガノボラン開始剤成分は、組成物の合計重量に基づいて、約0.1〜約10重量%の量で存在してもよく、好適には、組成物の合計重量に基づいて、約0.25〜約5重量%の量で存在してもよい。
【0023】
オルガノボラン化合物用活性化剤は、ルイス酸、カルボン酸、リン酸、無水物およびイソシアネートならびにこれらの組合せからなる群から選択してもよい。
【0024】
活性化剤は、組成物の合計重量に基づいて、約1〜約40重量%の量で存在してもよく、好適には、組成物の合計重量に基づいて、約2〜約20重量%の量で存在してもよい。
【0025】
適切なアクリレートまたはメタクリレート成分としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、アクリルアミド、n−メチルアクリルアミド、ラウリルメタクリレートおよびステアリルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレートが挙げられる。
【0026】
他の適切なアクリレートまたはメタクリレートは、以下に示される多量体のアクリレートおよびメタクリレートである。
【0027】
【化1】
式中、RはHまたはC〜C20アルキルであってもよく、好適にはCHであってもよく、Rは複数のモノマーのアクリレートおよび/またはメタクリレートを結合し得る。式中、Rは、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20シクロアルキル、任意選択により環内に少なくとも1つのC−C不飽和結合を有するC〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20ヘテロアリール、ウレタン、尿素、グリコール、エーテル、ポリエーテルまたはグリシジル成分、およびこれらの組合せからなる群から選択してもよく、これらは、ヒドロキシ、アミノ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C〜Cアルコキシ、および/またはC〜Cチオアルコキシのうちの少なくとも1つで1回以上、任意に置換されている。
nは、2〜4(2および4を含む)のアクリレート単位に及び得る。例としては、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートならびにエトキシル化ビスフェノールジアクリレートおよびジメタクリレートが挙げられる。
【0028】
好適なアクリレートまたはメタクリレートモノマー単位としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
【0029】
アクリレートまたはメタクリレート成分は、組成物の合計重量に基づいて、約10〜約95重量%の量で存在することができ、望ましくは、組成物の合計重量に基づいて、約20〜約85重量%の量で存在することができる。
【0030】
組成物の第2液は、硬化性成分を含んでもよく、好適には、マレエート、フマレート、もしくはマレイミド成分またはこれらの組合せを含んでもよい。例としては、モノ−2−(アクリロイルオキシ)エチルマレエート、モノ−2−(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、マレイン酸無水物、マレイン酸、トキシル酸、フマル酸、フマルアミド、フマリルニトリル、フマリルクロリド、亜鉛、カルシウムおよびマグネシウムのフマレートモノエチルエステル塩、2,5−ピロールジオンならびに1,1’−(メチレンジ−4,1−フェニレン)ビスマレイミド、またはこれらの組合せが挙げられる(ただし、これらに限定されない)。
【0031】
組成物の第2液は、ビニルエーテルモノマーをカチオン硬化できるプロトン酸化合物も含んでもよく、例としては、アクリル酸、メタクリル酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、トリフリン酸またはこれらの組合せなどのプロトン酸が挙げられる(ただし、これらに限定されない)。
【0032】
組成物の第2液は、ビニルエーテル分子をカチオン硬化できるルイス酸性化合物も含んでもよく、例としては、三塩化ホウ素、三フッ化ホウ素もしくは四フッ化ホウ酸リチウムまたはこれらの組合せが挙げられる(ただし、これらに限定されない)。
【0033】
マレエート、フマレートまたはマレイミド硬化成分は、組成物の合計重量に基づいて、約1〜約20重量%の量で存在し、好適には、組成物の合計重量に基づいて、約1.5〜約10重量%の量で存在する。本発明のいくつかの実施形態は、強靭化剤成分を含んでもよい。強靭化剤成分の例としては、アクリロニトリル/ブタジエンゴム(NBRゴム)、ポリウレタン、スチレン/ブタジエンゴム、スチレン/ブタジエン/メタクリレートゴム、クロロプレンゴムもしくはブタジエンゴムなどの合成ゴム、天然ゴム、スチレン/ポリブタジエン/スチレン合成ゴムなどのスチレン熱可塑性エラストマー、ポリアクリレートもしくはポリメタクリレートエラストマー、メタクリレート/アクリレートブロックコポリマーまたはポリスチレン/EPDM(エチレン/プロピレン/共役ジエンコポリマー)合成ゴムなどのオレフィン熱可塑性エラストマーが挙げられる。塩素化およびクロロスルホン化ポリエチレンエラストマーも使用できる。強靭化剤成分は、これらの種類の材料の混合物または分散体であってもよい。
【0034】
強靭化剤成分は、組成物の合計重量に基づいて、約5〜約50重量%の量で存在することができ、望ましくは、組成物の合計重量に基づいて、約10〜約30重量%の量で存在することができる。
【0035】
本発明者が硬化性アクリレートまたはメタクリレート成分について言及するとき、これは、アクリレートまたはメタクリレート官能性による硬化に基づく、任意の硬化性組成物を含み、アクリレートおよび/もしくはメタクリレートの組合せ、または実際には、1よりも多い硬化性官能基を有する成分を特に排除しないことに注意すべきである。
【0036】
オルガノボラン開始剤成分の組合せを用いてもよいことも、認識されるであろう。ビニルエーテル成分の組合せを用いてもよい。また、実際には、オルガノボラン成分用活性化剤の組合せを使用してもよい。
【0037】
本発明の組成物は、良好な保管安定性を示し、それでもなお、強く、耐久性のある接着を提供するために活性化できる。
【0038】
更に、本発明の組成物は、表面エネルギーの低い基板の接着時の使用に適する。上述のように、エネルギーの低い表面は、典型的には、表面エネルギー値が45mJ/m未満であり、より典型的には、40mJ/m未満であり、例えば35mJ/m未満である。
【0039】
本発明の組成物は、表面エネルギーの低い基板を、別の表面エネルギーの低い基板、または別の基板のいずれかに接着する際の使用に適する。例えば、本発明の組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、およびこれらのコポリマーを含むポリオレフィンの接着に利用できる。
【0040】
組成物に、例えば組成物の液Bに含まれるビニルエーテル成分は、任意のビニルエーテルであってもよいが、望ましいものとしては、ビス[4−(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレート(商品名VECTOMER(商標)として、例えばVECTOMER(商標)4010として、商業的に入手可能であり、この化学構造を以下に示す)が挙げられる。
【0041】
VECTOMER(商標)4010
【0042】
【化2】
【0043】
同様に、VECTOMER(商標)5015およびVECTOMER(商標)4020を使用してもよい。これらの化学構造を以下に示す。
【0044】
VECTOMER(商標)5015
【0045】
【化3】
【0046】
VECTOMER(商標)4020
【0047】
【化4】
本明細書で使用することができ、かつBASF Corporationから商業的に入手可能な追加のビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソ−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテルおよびヒドロキシブチルビニルエーテルおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0048】
ビニルエーテル成分は、組成物の液A(Part A)に、組成物の合計重量に基づいて、約0.1〜約20重量%の範囲内の量で、例えば約0.25〜約5重量%の範囲内の量で含まれるべきである。
【0049】
上で議論したように、様々な性能特性に影響を与えるために、組成物の液Aまたは液B(Part B)のいずれかまたは両方に、添加剤が含まれてもよい。
【発明の効果】
【0050】
本発明のビニルエーテル/メタクリレート組成物は、ビニルエーテルを含まないオルガノボラン組成物と比較して、ポリオレフィン、プラスチックおよび金属基板上での接着性能を改善する。
【0051】
ビニルエーテルは、酸化防止剤、フリーラジカル安定剤、または有機金属アルミニウム化合物を必要とすることなく、オルガノボラン/アクリレートおよびオルガノボラン/メタクリレート組成物を安定化する。これは、本明細書で明らかに示される。
【0052】
上の特性は組み合わされ、これは従来技術に対する格別な効果となる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
本発明は硬化性組成物、および望ましくは、2液重合性組成物の形態のものに関する。2液組成物は、しばしば「液A」および「液B」を有すると言われる。液Aは、オルガノボラン開始剤、好ましくはトリアルキルボラン:アミン錯体、およびビニルエーテルモノマー(一官能および/または二官能)を含んでもよい。メタクリレートまたはアクリレートエステル(いずれも一官能および/または多官能)、ポリマー強靭化剤、シリカおよび他のレオロジー改質剤が、任意選択により含まれる。
【0054】
液Bは、メタクリレートまたはアクリレートエステル(いずれも一官能および/または多官能)、ならびに好ましくはマレエートおよび/またはフマレート官能性を含む化合物を含む。オルガノボラン化合物用活性化剤も存在しなければならず、これは、ルイス酸、カルボン酸、リン酸、無水物およびイソシアネートから選択できる(ただし、これらに限定されない)。ポリマー強靭化剤、シリカおよび他のレオロジー改質剤は、任意選択により含まれる。
【0055】
液AおよびBを、スタティックミキサを使用して成分を混合することにより、500gの量で調製し、オーバーヘッドスターラ(overhead stirrer)で混合した。
【0056】
その後、2液カートリッジ内で、成分を別々に保管した。この2液カートリッジは液を放出でき、基板への塗布前に、例えば、スタティックミキサにより混合できる。成分は、1:1〜10:1の比率で混合できる。
【0057】
以下の例において、液AおよびBを混合し、スタティックミキサに取り付けたカートリッジを通して放出して、最大0.5平方インチ(12.7mm)の面積を覆うように1つのラップシア(lap shear)に塗布した後、別のラップシアに接合して、室温で24時間クランプした。以下のテスト方法を使用して、引張接着強度(tensile bond strength)を決定した。テスト方法は、ASTM D 1002−05に基づくものとした。測定された寸法1インチ×4インチ(25.4mm×101.6mm)のラップシアと接合されたラップシアとを0.5インチ(12.7mm)のマークで重ね、Hargrave No.1クランプでクランプした。Instron(商標)5567A材料テストシステム(Materials testing System)を使用して、接着されたラップシアをテストした。クロスヘッドスピードは6mm/分とした。
【0058】
液を2液カートリッジ内に詰め、オーブン内で35℃で加熱することにより、熱エージングを行った。(上記のテスト方法を使用した)経時的なラップシア引張強度の保持の比較により、または、組成物のゲル化もしくは硬化により、サンプルをカートリッジから放出できなかったときを書き留めることにより、熱エージングの効果を比較した。
【0059】
例1
トリエチレングリコールジビニルエーテルを含む1:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
例2
ビニルエーテルを含まない1:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
例2は、トリエチレングリコールジビニルエーテルを除くことにより、液Aの安定性が低下することを示す。
【0066】
例3
シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルを含む1:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0067】
【表5】
【0068】
【表6】
【0069】
例3は、例1と同様に、例2と比較して、ジビニルエーテルであるシクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルが安定性を改善し、良好な性能を付与することを示す。
【0070】
例4
n−ブチルビニルエーテルを含む1:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
例4は、n−ブチルビニルエーテルが例2よりも良好な安定性および性能を付与するが、例1および3のジビニルエーテルほど良好ではないことを示す。
【0074】
例5
ヒドロキシブチルビニルエーテルを含む1:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0075】
【表9】
【0076】
【表10】
【0077】
例5は、ビニルエーテルであるn−ヒドロキシブチルビニルエーテルが、例1および3のジビニルエーテルほど安定性および性能を付与しないことを示す。
【0078】
例6
トリエチレングリコールジビニルエーテルを含む10:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0079】
【表11】
【0080】
【表12】
【0081】
例7
ブタンジオールジビニルエーテルを含む10:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0082】
【表13】
【0083】
【表14】
【0084】
例8
ビニルエーテルの代わりにメタクリレートモノマーを含む10:1混合比の配合物および熱エージングデータ
【0085】
【表15】
【0086】
【表16】
【0087】
ジビニルエーテルおよびボラン:アミンを同じ液に含む例6および7は、メタクリレートエステルモノマーTHFMAおよびボラン:アミンを同じ液に含む場合と比較して改善された安定性を示す。
【0088】
本発明に関して本明細書で使用される際、単語「含む(comprises/comprising)」および単語「有する/含む(having/including)」は、記述された特徴、整数、工程または成分の存在を規定するために使用されるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、工程、成分または群の存在または追加を排除しない。
【0089】
明確にするために別々の実施形態の文脈に記載される本発明のある特徴は、単一の実施形態において、組み合わせて提供してもよいことが認識される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈に記載される本発明の様々な特徴は、別々に、または任意の適切な部分的組合せ(sub−combination)で、提供してもよい。