(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
抗体の軽鎖をコードする第1のベクターと重鎖をコードする第2のベクターとを含む安定的に形質転換された宿主細胞であって、前記重鎖が配列番号28の重鎖可変領域を含み、前記軽鎖が配列番号35の軽鎖可変領域を含み、前記抗体がヒトIgG1またはIgG3定常ドメインを含む、宿主細胞。
抗体の軽鎖をコードする第1のベクターと重鎖をコードする第2のベクターとを含む安定的に形質転換された宿主細胞であって、前記抗体が、SAP(血清アミロイドP成分)に特異的に結合し、かつ配列番号62の重鎖および配列番号64の軽鎖を含む、宿主細胞。
第1のベクターが配列番号59の核酸分子を含み、第2のベクターが配列番号54の核酸分子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安定的に形質転換された宿主細胞。
第1のベクターが配列番号63の核酸分子を含み、第2のベクターが配列番号61の核酸分子を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の安定的に形質転換された宿主細胞。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、特異的抗原として、血清アミロイドP成分(SAP)、例えば、ヒトSAPに結合する抗原結合タンパク質(すなわち、SAP結合タンパク質)を提供する。その抗原結合タンパク質は、本発明の治療的適用において、組織からの異常な残屑をクリアランスするための身体の強力な機構を活性化する。その抗原結合タンパク質は、抗体、例えば、モノクローナル抗体であり得る。本発明の抗原結合タンパク質は、マウス抗体ではない。ある実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、マウス抗原結合タンパク質ではない。特に、本発明の抗原結合タンパク質は、キメラ、ヒト化またはヒト抗原結合タンパク質である。
【0026】
「血清アミロイドP成分」または「SAP」とは、ペントラキシンファミリーのホモ五量体の血漿糖タンパク質のことを指す。各分子は、5つの同一のプロトマーから構成され、その各々は、環状五量体の対称性を有する円盤様の環として非共有結合的に会合された扁平なβ−ゼリーロールフォールドおよび単一のアルファヘリックスを有する(Hutchinson et al.,(2000)Mol.Med.,6:482−493)、Pepys et al.,(2002)Nature,417:254−259)。用語「SAP」は、本明細書中で使用されるとき、ヒト遺伝子APCS(染色体:1、位置:1q21−q23)または他の生物における相同遺伝子によってコードされる個別のサブユニット、例えば、配列番号43に示されるような配列を有するヒトSAPポリペプチドサブユニット、ならびにSAPの天然の五量体型、ならびに
インビボにおいてアミロイド原線維に結合する生物学的活性を保持するSAPの任意のフラグメントおよび変異体も含んでなる。
【0027】
本発明のSAP結合タンパク質は、上に記載された種々の形態のSAPのいずれか1つまたは任意の組み合わせに結合することができる。特定の実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、ヒトSAPに結合する。本発明のSAP結合タンパク質は、SAPが、任意のタイプかつ体内の任意の細胞外の位置のアミロイド原線維に結合されているとき、そのSAPに結合することができる。本発明の抗原結合タンパク質は、結合されていない天然のSAPにも結合し得る。
【0028】
治療方法において本発明のSAP結合タンパク質を利用する本質的な局面は、循環中のSAPの濃度が、SAP結合タンパク質の投与前の通常値よりも少なくとも90%減少しなければならない局面である。具体的には、これは、循環SAPの量を減少させる化合物、および特に、本明細書中で「SAP枯渇化合物」として定義される、循環SAPの枯渇をもたらす化合物によって達成することができる。そのような化合物は、SAPに結合されるリガンドであり、アミロイド原線維へのSAPの結合の競合的インヒビター(例えば、D−プロリン誘導体およびグリセロール環状ピルビン酸塩誘導体)である。D−プロリン誘導体は、EP0915088(その全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されており、用語「D−プロリン誘導体」は、国際公開第03/051836号(これもその全体が本明細書中で参考として援用される)に開示されているプロドラッグなどのプロドラッグを含む。以下の式のD−プロリン:
【化1】
【0031】
であり、基
R
1は、水素またはハロゲンであり、
Xは、−(CH
2)
n−、−CH(R
2)(CH
2)
n−、−CH
2O(CH
2)
n−、−CH
2NH−、−C(R
2)=CH−、−CH
2CH(OH)−、またはチアゾール−2,5−ジイル、−O−であり、
Yは、−S−S−、−(CH
2)n−、−O−、−NH−、−N(R
2)−、−CH=CH−、−NHC(O)NH−、−N(R
2)C(O)N(R
2)−、−N[CH
2C
6H
3(OCH
3)
2]−、−N(CH
2C
6H
5)−、−N(CH
2C
6H
5)C(O)N(CH
2C
6H
5)−、−N(アルコキシアルキル)−、N(シクロアルキル−メチル)−、2,6−ピリジル、2,5−フラニル、2,5−チエニル、1,2−シクロヘキシル、1,3−シクロヘキシル、1,4−シクロヘキシル、1,2−ナフチル、1,4−ナフチル、1,5−ナフチル、1,6−ナフチル、または1,2−フェニレン、1,3−フェニレンおよび1,4−フェニレンであり、ここで、そのフェニレン基は、ハロゲン、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、−COO−低級アルキル、ニトリロ、5−テトラゾール、(2−カルボン酸ピロリジン−1−イル)−2−オキソ−エトキシ、N−ヒドロキシカルバミミオジル、5−オキソ[1,2,4オキサジアゾリル、2−オキソ[1,2,3,5]オキサチアジアゾリル、5−チオキソ[1,2,4]オキサジアゾリルおよび5−tert−ブチルスルファニル−[1,2,4]オキサジアゾリルから選択される1〜4個の置換基で必要に応じて置換されてもよく、
X’は、−(CH
2)
n−、−(CH
2)nCH(R
2)−、−(CH
2)
nOCH
2−、−NHCH
2−、−CH=C(R
2)−、CH(OH)CH
2、またはチアゾール−2,5−ジイル、−O−であり、
R
2は、低級アルキル、低級アルコキシまたはベンジルであり、
nは、0〜3であり、ここで、
アルキルまたは低級アルキルは、C
1−6アルキルであり、アルコキシまたは低級アルコキシは、C
1−6アルコキシであり、シクロアルキルは、C
3−6シクロアルキル(cyclocalkyl)であり、ハロゲンは、F、ClまたはBrであり、式中の点線で表されている位置は、単結合または二重結合である)、
あるいはその薬学上許容される塩またはモノエステルもしくはジエステルが企図される。
【0032】
上記の式I−AのD−プロリンは、リガンド−リンカー−リガンドと記載することができ、ここで、式(formal)I−AのX−Y−X’部分が、リンカーを形成する。リンカー(X−Y−X’)は、4〜15個の線状の炭素原子、5〜10個の線状の炭素原子および6〜8個の線状の炭素原子の長さを含む、4〜20個の線状の炭素原子の長さであり得る。そのリンカーは、直鎖状もしくは分枝状であり得るか、または1つ以上の環構造を必要に応じて形成し得るが、ただし、少なくとも4つの線状または直鎖の炭素原子が、そのリンカーに存在する。その線状または直鎖のC原子の少なくとも1つは、N、OまたはS、好都合にはOまたはS、好都合にはOから選択される少なくとも1つのヘテロ原子で必要に応じて置換されてもよい。
【0033】
したがって、「必要に応じて置換されてもよいリンカー」は、分枝をもたらす1つ以上の置換および/またはリンカーの線状もしくは直鎖の炭素原子の1つ以上の置換を有し得る(例えば、リンカーは、エーテルまたは置換エーテルであり得る)。
【0034】
(R)−1−[6−[(R)−2−カルボキシ−ピロリジン−1−イル]−6−オキソ−ヘキサノイル]ピロリジン−2−カルボン酸(CPHPC)は、本発明によって企図される特定のD−プロリンである。特定の実施形態において、CPHPCは、ヒト患者に投与される。
【0035】
グリセロール環状ピルビン酸塩(Gylcerol cyclic pyruvate)誘導体は、国際公開第2004/099173号(その全体が本明細書中で参考として援用される)に開示される。
【0036】
本明細書中で使用される用語「抗原結合タンパク質」は、SAPに結合することができる抗体、抗体フラグメントおよび他のタンパク質構築物(例えば、ドメイン)のことを指す。
【0037】
用語「抗体」は、免疫グロブリン様ドメインを有する分子のことを指すために最も広い意味において本明細書中で使用され、それには、モノクローナル抗体、組換え抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、二重特異性抗体およびヘテロ結合体抗体、単一可変ドメイン、ドメイン抗体、抗原結合フラグメント、免疫学的に有効なフラグメント、一本鎖Fv、ダイアボディ、Tandabs
TMなどが含まれる(別の「抗体」の形式の概要については、Holliger and Hudson,Nature Biotechnology,2005,Vol 23,No.9,1126−1136を参照のこと)。
【0038】
句「単一可変ドメイン」とは、異なる可変領域または可変ドメインとは無関係に、抗原またはエピトープに特異的に結合する抗原結合タンパク質可変ドメイン(例えば、VH、VHH、VL)のことを指す。
【0039】
「ドメイン抗体」または「dAb」は、抗原に結合することができる「単一可変ドメイン」と同じであると考えてよい。単一可変ドメインは、ヒト抗体可変ドメインであり得るが、げっ歯類などの他の種由来の単一の抗体の可変ドメイン(例えば、国際公開第00/29004号に開示されているようなもの)、コモリザメおよびラクダ科のVHH dAbも含む。ラクダ科のVHHは、本来軽鎖を有しない重鎖抗体を生成する、ラクダ、ラマ、アルパカ、ヒトコブラクダおよびグアナコを含む種に由来する免疫グロブリン単一可変ドメインポリペプチドである。そのようなVHHドメインは、当該分野において利用可能な標準的な手法に従ってヒト化されることがあり、そのようなドメインは、「ドメイン抗体」であると考えられる。本明細書中で使用されるとき、VHには、ラクダ科のVHHドメインが含まれる。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、用語「ドメイン」とは、そのタンパク質の残りの部分とは独立した三次構造を有する折り畳まれたタンパク質構造のことを指す。一般に、ドメインは、タンパク質の別々の機能的特性に関与し、多くの場合、そのタンパク質および/またはドメインの残部の機能喪失を起こさずに、付加され得るか、除去され得るか、または他のタンパク質に移され得る。「単一可変ドメイン」は、抗体可変ドメインに特徴的な配列を含む折り畳まれたポリペプチドドメインである。ゆえに、単一可変ドメインには、例えば、1つ以上のループが、抗体可変ドメインに特徴的でない配列もしくは短縮された抗体可変ドメインで置き換えられているか、またはNもしくはC末端の伸長、ならびに完全長ドメインの結合活性および特異性を少なくとも保持する可変ドメインの折り畳まれたフラグメントを含む、完全な抗体可変ドメインおよび改変された可変ドメインが含まれる。ドメインは、異なる可変領域または可変ドメインとは無関係に抗原またはエピトープに結合することができる。
【0041】
抗原結合フラグメントは、ドメインなどの非抗体タンパク質足場に1つ以上のCDRを配置することによって提供され得る。そのドメインは、ドメイン抗体であってもよいし、CTLA−4、リポカリン、SpA、Affibody、アビマー(avimer)、GroEl、トランスフェリン、GroESおよびフィブロネクチン/アドネクチン(adnectin)からなる群から選択される足場の誘導体であるドメイン(天然リガンド以外のSAPなどの抗原への結合性を獲得するためにタンパク質工学に供されたドメイン)であってもよい。
【0042】
抗原結合フラグメントまたは免疫学的に有効なフラグメントは、部分的な重鎖可変配列または軽鎖可変配列を含み得る。フラグメントは、少なくとも5、6、7、8、9または10アミノ酸長である。あるいは、そのフラグメントは、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも75または少なくとも100アミノ酸長である。
【0043】
抗原結合タンパク質に関して本明細書全体を通じて使用される用語「特異的に結合する」は、その抗原結合タンパク質が、他の任意のタンパク質(ヒトにおいて残基アミノ酸配列相同性について55%の厳密な残基を共有し、かつ本質的に同じタンパク質の折り畳みを有する、C反応性タンパク質(CRP)などの密接な関係がある分子を含む)に結合せずに、または他の任意のタンパク質にほんのわずかに結合しつつ、SAPに結合することを意味する。
【0044】
抗原結合タンパク質とSAPとの相互作用の平衡解離定数(KD)は、1mM以下、100nM以下、10nM以下、2nM以下または1nM以下であり得る。あるいは、そのKDは、5〜10nM、または1〜2nMであり得る。そのKDは、1pM〜500pM、または500pM〜1nMであり得る。
【0045】
結合親和性は、BIAcore
TM、例えば、第一級アミンカップリングおよびこの表面上への抗体の捕捉によってカルボキシメチルデキストラン(carboxymethydextran)チップ上に結合されたSAPを用いた抗原捕捉によって測定され得る。あるいは、結合親和性は、CM5チップ上に固定化されたO−ホスホエタノールアミンによって捕捉される、ヒトSAPへの抗SAP抗体の結合によってBIAcore
TMで測定され得る。実施例8に記載されるBIAcore
TM法は、結合親和性を測定するために使用され得る。
【0046】
解離速度定数(kd)は、1×10
−3s
−1以下、1×10
−4s
−1以下または1×10
−5s
−1以下であり得る。kdは、1×10
−5s
−1〜1×10
−4s
−1、または1×10
−4s
−1〜1×10
−3s
−1であり得る。低kdは、抗原結合タンパク質−リガンド複合体の遅い解離およびアミロイドに結合したSAPの複合体の改善されたクリアランスをもたらし得る。
【0047】
用語「由来」は、それがその材料に対する物理的起源であるという意味における供給源を定義するだけでなく、その材料と構造的に同一であるが言及している供給源が起源でない材料も定義すると意図されることは、当業者に明らかであろう。したがって、「ドナー抗体に見られる残基」は、必ずしもドナー抗体から洗練されている必要はない。
【0048】
「単離」は、抗原結合タンパク質などの分子が、それが天然に見られ得る環境から取り出されていることを意図している。例えば、その分子は、それが天然において通常存在し得る物質から精製されているかもしれない。例えば、サンプル中のその分子の質量は、総質量の95%であり得る。
【0049】
「キメラ抗体」とは、ドナー抗体に由来する天然に存在する可変領域(軽鎖および重鎖)を、アクセプター抗体に由来する軽鎖および重鎖定常領域と併せて含む、操作された抗体の1タイプのことを指す。
【0050】
「ヒト化抗体」とは、非ヒトドナー免疫グロブリンに由来するCDRを有する操作された抗体の1タイプのことを指し、その分子の残りの免疫グロブリンに由来する部分は、1つ以上のヒト免疫グロブリンに由来する。さらに、フレームワーク支持残基は、結合親和性を保存するように変更され得る(例えば、Queen et al.Proc.Natl Acad Sci USA,86:10029−10032(1989)、Hodgson et al.Bio/Technology,9:421(1991)を参照のこと)。好適なヒトアクセプター抗体は、ドナー抗体のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列との相同性によって、従来のデータベース、例えば、KABAT(登録商標)データベース、Los AlamosデータベースおよびSwiss Proteinデータベースから選択されるものであり得る。ドナー抗体のフレームワーク領域との相同性(アミノ酸基準)を特徴とするヒト抗体は、ドナーCDRを挿入するための重鎖定常領域および/または重鎖可変フレームワーク領域を提供するのに適し得る。軽鎖定常領域または軽鎖可変フレームワーク領域を供与することができる好適なアクセプター抗体は、同様の様式で選択され得る。アクセプター抗体の重鎖と軽鎖とは、同じアクセプター抗体が起源である必要はないことに注意すべきである。従来技術には、そのようなヒト化抗体を作製するいくつかの方法が記載されている(例えば、EP−A−0239400およびEP−A−054951を参照のこと)。
【0051】
用語「ドナー抗体」とは、その可変領域、CDRまたはそれらの他の機能的フラグメントもしくはアナログのアミノ酸配列を第1の免疫グロブリンパートナーに提供する抗体のことを指す。ゆえに、そのドナーは、変更された免疫グロブリンコード領域、ならびにドナー抗体に特徴的な抗原特異性および中和活性を有する、結果として発現される変更された抗体を提供する。
【0052】
用語「アクセプター抗体」とは、その重鎖フレームワーク領域および/もしくは軽鎖フレームワーク領域ならびに/またはその重鎖定常領域および/もしくは軽鎖定常領域をコードするアミノ酸配列のすべて(または任意の一部)を第1の免疫グロブリンパートナーに提供する、ドナー抗体とは異種の抗体のことを指す。ヒト抗体は、アクセプター抗体であり得る。
【0053】
用語「ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリン遺伝子配列に由来する抗体のことを指す。これらの完全なヒト抗体は、免疫原性の低い治療用抗体の起源として、再操作されたまたは脱免疫された(de−immunized)げっ歯類モノクローナル抗体(例えば、ヒト化抗体)に対する代替物を提供し、それらは通常、ファージディスプレイまたはトランスジェニックマウスプラットフォームのいずれかを用いて作製される。ある実施形態において、本発明の抗体は、ヒト抗体である。
【0054】
用語「VH」および「VL」は、それぞれ抗原結合タンパク質の重鎖可変領域および軽鎖可変領域のことを指すために本明細書中で使用される。
【0055】
「CDR」は、抗原結合タンパク質の相補性決定領域のアミノ酸配列と定義される。これらは、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変部分には、3つの重鎖CDRおよび3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。したがって、本明細書中で使用される「CDR」は、3つすべての重鎖CDR、3つすべての軽鎖CDR、重鎖CDRおよび軽鎖CDRのすべて、または少なくとも2つのCDRのことを指す。
【0056】
本明細書全体を通じて、可変ドメインの配列および完全長抗体の配列におけるアミノ酸残基は、Kabatナンバリングの慣習に従ってナンバリングされる。同様に、実施例において使用される用語「CDR」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」は、Kabatナンバリングの慣習に従っている。さらなる情報については、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987)を参照のこと。
【0057】
しかしながら、本発明者らは、本明細書全体を通じて、可変ドメインの配列および完全長抗体の配列におけるアミノ酸残基についてKabatナンバリングの慣習を使用するが、可変ドメインの配列および完全長抗体の配列におけるアミノ酸残基について代替のナンバリングの慣習が存在することは当業者には明らかであろう。CDR配列に対する代替のナンバリングの慣習も存在する(例えば、Chothia et al.(1989)Nature 342:877−883に示されるもの)。抗体の構造およびタンパク質フォールディングは、他の残基もCDR配列の一部であると考えられることを意味し得、当業者によってそのように理解され得る。
【0058】
CDR配列に対する当業者に利用可能な他のナンバリングの慣習には、「AbM」法(University of Bath)および「contact」法(University College London)が含まれる。Kabat法、Chothia法、AbM法およびcontact法のうちの少なくとも2つを用いたときの最小重複領域が、「最小結合単位」をもたらすと判断することができる。最小結合単位は、CDRの一部であり得る。
【0059】
下記の表1は、CDRまたは結合単位の各々に対して各ナンバリング慣習を用いたときの1つの定義を表している。表1では、可変ドメインのアミノ酸配列をナンバリングするためにKabatナンバリングスキームが使用されている。CDRの定義のいくつかは、使用される個別の出版物に応じて変動することがあることに注意すべきである。
【表1】
【0060】
本明細書中で使用されるとき、用語「抗原結合部位」とは、抗原に特異的に結合することができる抗原結合タンパク質上の部位のことを指す。これは、単一ドメイン(例えば、エピトープ結合ドメイン)または一本鎖Fv(ScFv)ドメインであってもよいし、標準的な抗体に見ることができるような対になったVH/VLドメインであってもよい。
【0061】
本明細書中で使用される用語「エピトープ」は、抗原結合タンパク質の特定の結合ドメインと接触する抗原の一部のことを指す。エピトープは、抗原由来の線状(本質的に線状を含む)のアミノ酸配列であり得る。あるいは、エピトープは、立体構造をとっていてもよいし、不連続であってもよい。例えば、立体構造エピトープは、構造的に拘束するエレメントを必要とするアミノ酸残基を含む。立体構造エピトープの場合、上記残基は、ペプチド鎖の種々の領域に由来し得るが、それらは、抗原の3次元構造において近接し得る。SAPなどの多量体の抗原の場合、立体構造エピトープは、その抗原の3次元構造において近接し得る異なるペプチド鎖由来の残基を含み得る。そのような構造的に隣接する残基は、コンピュータモデリングプログラム、またはX線結晶構造解析などの当該分野で公知の方法によって得られた3次元構造によって決定することができる。
【0062】
不連続なエピトープは、他の配列によって分断された、すなわち、抗原の1次配列では連続した配列ではないアミノ酸残基を含む。抗原の3次および4次構造の文脈において、不連続なエピトープの残基は、抗原結合タンパク質によって結合されるのに互いに十分近い。
【0063】
ある実施形態において、本発明の抗原結合タンパク質は、ヒトSAPの残基140〜158内のエピトープに結合する。
【0064】
ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列について、用語「同一」または「配列同一性」とは、最適にアラインメントされ、適切な挿入または欠失を用いて比較されたときの、2つの核酸配列間または2つのアミノ酸配列間の一致の程度のことを指摘する。
【0065】
2つの配列間の同一性パーセントは、その2つの配列を最適にアラインメントするために導入する必要があるギャップの数および各ギャップの長さを考慮に入れたときの、それらの配列が共有する同一の位置の数の関数である(すなわち、%同一性=同一の位置の数/位置の総数に100を乗じた値)。配列の比較および2つの配列間の同一性パーセントの算出は、下に記載されるような数学的アルゴリズムを用いて行うことができる。
【0066】
2つのヌクレオチド配列間の同一性パーセントは、NWSgapdna.CMP行列、ならびに40、50、60、70または80のギャップウェイトおよび1、2、3、4、5または6のレングスウェイトを使用した、GCGソフトウェアパッケージにおけるGAPプログラムを用いて算出することができる。2つのヌクレオチド配列間または2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントもまた、PAM120重み付き残基表(weight residue table)、12というギャップ長ペナルティ(gap length penalty)および4というギャップペナルティ(gap penalty)を使用した、ALIGNプログラム(バージョン2.0)に組み込まれたE.MeyersおよびW.Millerのアルゴリズム(Comput.Appl.Biosci.,4:11−17(1988))を用いて算出することができる。さらに、2つのアミノ酸配列間の同一性パーセントは、Blossum62行列またはPAM250行列、ならびに16、14、12、10、8、6または4というギャップウェイトおよび1、2、3、4、5または6というレングスウェイトを使用した、GCGソフトウェアパッケージ内のGAPプログラムに組み込まれたNeedlemanおよびWunsch(J.Mol.Biol.48:444−453(1970))のアルゴリズムを用いて算出することができる。
【0067】
例として、あるポリヌクレオチド配列は、本明細書中に記載されるような参照ポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号8、10、18、20、45〜48、51〜61、63、65〜73を参照のこと)と同一、すなわち、100%同一であり得るか、または参照配列と比べてある特定の整数までのヌクレオチドの変更を含み得る(例えば、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98または99%同一)。そのような変更は、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、置換(変化およびトランスバージョンを含む)または挿入から選択され、ここで、前記変更は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端の位置、またはそれらの末端の位置の間の任意の位置(その任意の位置は、参照配列内のヌクレオチドの間に個別に散在しているか、または参照配列内の1つ以上の連続した群内に散在している)において生じ得る。ヌクレオチドの変更の数は、本明細書中に記載されるような参照ポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号8、10、18、20、45〜48、51〜61、63、65〜73を参照のこと)内のヌクレオチドの総数にそれぞれの同一性パーセントの数値的なパーセント(100で除した値)を乗じて、その積を本明細書中に記載されるような参照ポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号8、10、18、20、45〜48、51〜61、63、65〜73を参照のこと)内のヌクレオチドの前記総数から減算することによって、すなわち:
n
n≦x
n−(x
n・y)
によって算出される(式中、n
nは、ヌクレオチドの変更の数であり、x
nは、本明細書中に記載されるような参照ポリヌクレオチド配列(例えば、配列番号8、10、18、20、45〜48、51〜61、63、65〜73を参照のこと)内のヌクレオチドの総数であり、yは、50%の場合0.50、60%の場合0.60、70%の場合0.70、75%の場合0.75、80%の場合0.80、85%の場合0.85、90%の場合0.90、95%の場合0.95、98%の場合0.98、99%の場合0.99または100%の場合1.00であり、・は、乗算演算子のシンボルであり、ここで、x
nおよびyの任意の非整数の積は、それをx
nから減算する前に、最も近い整数に端数が切り捨てられる)。
【0068】
同様に、あるポリペプチド配列は、本明細書中に記載されるようなポリペプチド参照配列(例えば、配列番号1〜7、9、11〜17、19、21〜24、27〜31、34〜42、62、64、74を参照のこと)と同一、すなわち、100%同一であり得るか、または%同一性が100%未満(例えば、少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98または99%同一)であるように、参照配列と比べてある特定の整数までのアミノ酸の変更を含み得る。そのような変更は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、置換(保存的置換および非保存的置換を含む)または挿入からなる群から選択され、ここで、前記変更は、参照ポリペプチド配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置、またはそれらの末端の位置の間の任意の位置(その任意の位置は、参照配列内のアミノ酸の間に個別に散在しているか、または参照配列内の1つ以上の連続した群内に散在している)において生じ得る。所与の%同一性に対するアミノ酸の変更の数は、本明細書中に記載されるようなポリペプチド参照配列によってコードされるポリペプチド配列(例えば、配列番号1〜7、9、11〜17、19、21〜24、27〜31、34〜42、62、64、74を参照のこと)内のアミノ酸の総数にそれぞれの同一性パーセントの数値的なパーセント(100で除した値)を乗じて、次いで、その積を本明細書中に記載されるようなポリペプチド参照配列(例えば、配列番号1〜7、9、11〜17、19、21〜24、27〜31、34〜42、62、64、74を参照のこと)内のアミノ酸の前記総数から減算することによって、すなわち:
n
a≦x
a−(x
a・y)
によって算出される(式中、n
aは、アミノ酸の変更の数であり、x
aは、本明細書中に記載されるような参照ポリペプチド配列(例えば、配列番号1〜7、9、11〜17、19、21〜24、27〜31、34〜42、62、64、74を参照のこと)内のアミノ酸の総数であり、yは、50%の場合0.50、60%の場合0.60、70%の場合0.70、75%の場合0.75、80%の場合0.80、85%の場合0.85、90%の場合0.90、95%の場合0.95、98%の場合0.98、99%の場合0.99または100%の場合1.00であり、・は、乗算演算子のシンボルであり、ここで、x
aおよびyの任意の非整数の積は、それをx
aから減算する前に、最も近い整数に端数が切り捨てられる)。
【0069】
%同一性は、配列の長さ全体にわたって算出され得る。
【0070】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」の各々は、2つ以上のアミノ酸残基を含む分子のことを指す。ペプチドは、単量体または重合体であり得る。
【0071】
ある特定のアミノ酸置換が「保存的」であると見なされることは、当該分野において十分に認識されている。アミノ酸は、共通の側鎖特性に基づいて群に分けられ、抗原結合タンパク質の結合親和性のすべてまたは実質的にすべてを維持する群内での置換は、保存的置換と見なされる。下記の表2を参照のこと:
【表2】
【0072】
本抗原結合タンパク質は、配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号9の軽鎖可変領域配列を含んでなる参照抗体とSAPへの結合について競合し得る。あるいは、本抗原結合タンパク質は、配列番号17の重鎖可変領域配列および配列番号19の軽鎖可変領域配列を含んでなる参照抗体とSAPへの結合について競合し得る。
【0073】
本抗原結合タンパク質と参照抗体との競合は、競合ELISA、FMATまたはBIAcoreによって測定され得る。競合する抗原結合タンパク質は、同じエピトープ、重複するエピトープまたは参照抗体が結合するエピトープに近位のエピトープに結合し得る。
【0074】
本発明はまた、SAPに特異的に結合し、かつ配列番号3のCDRH3またはその変異体CDRを含んでなる、抗原結合タンパク質も提供する。その抗原結合タンパク質は、CDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号2)、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)およびCDRL3(配列番号6)、またはそれらの変異体から選択される1つ以上のCDRまたはすべてのCDRを任意の組み合わせでさらに含み得る。
【0075】
例えば、上記抗原結合タンパク質は、CDRH3(配列番号3)およびCDRH1(配列番号1)またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、CDRH3(配列番号3)およびCDRH2(配列番号2)またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、CDRH1(配列番号1)およびCDRH2(配列番号2)およびCDRH3(配列番号3)またはそれらの変異体を含み得る。
【0076】
上記抗原結合タンパク質は、CDRL1(配列番号4)およびCDRL2(配列番号5)またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、CDRL2(配列番号5)およびCDRL3(配列番号6)またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)およびCDRL3(配列番号6)またはそれらの変異体を含み得る。
【0077】
上記抗原結合タンパク質は、CDRH3(配列番号3)およびCDRL3(配列番号6)またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、CDRH3(配列番号3)、CDRH2(配列番号2)およびCDRL3(配列番号6)またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、CDRH3(配列番号3)、CDRH2(配列番号2)、CDRL2(配列番号5)およびCDRL3(配列番号6)またはそれらの変異体を含み得る。
【0078】
上記抗原結合タンパク質は、CDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号2)、CDRH3(配列番号3)、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)およびCDRL3(配列番号6)またはそれらの変異体を含み得る。
【0079】
本発明はまた、SAPに特異的に結合し、かつ配列番号13のCDRH3またはその変異体CDRを含んでなる、抗原結合タンパク質を提供する。その抗原結合タンパク質は、CDRH1(配列番号11)、CDRH2(配列番号12)、CDRL1(配列番号14)、CDRL2(配列番号15)およびCDRL3(配列番号16)、またはそれらの変異体から選択される1つ以上のCDRまたはすべてのCDRを任意の組み合わせでさらに含み得る。
【0080】
本発明はまた、SAPに特異的に結合する抗原結合タンパク質を提供し、ここで、その抗原結合タンパク質は、配列番号7の可変ドメイン配列の対応するCDRH3または変異体CDRH3を含んでなるキメラ抗体またはヒト化抗体である。
【0081】
そのキメラ抗原結合タンパクまたはヒト化抗原結合タンパク質は、配列番号7もしくは配列番号9の可変ドメイン配列から選択される対応するCDRまたはその変異体CDRの1つ以上またはすべてをさらに含み得る。
【0082】
例えば、上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRH3および対応するCDRH1またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRH3および対応するCDRH2またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRH1、対応するCDRH2および対応するCDRH3、またはそれらの変異体を含み得る。
【0083】
上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRL1および対応するCDRL2またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRL2および対応するCDRL3またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRL1、対応するCDRL2および対応するCDRL3またはそれらの変異体を含み得る。
【0084】
上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRH3および対応するCDRL3またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRH3、対応するCDRH2および対応するCDRL3またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRH3、対応するCDRH2、対応するCDRL2および対応するCDRL3またはそれらの変異体を含み得る。
【0085】
上記抗原結合タンパク質は、対応するCDRH1、対応するCDRH2、対応するCDRH3、対応するCDRL1、対応するCDRL2および対応するCDRL3またはそれらの変異体を含み得る。
【0086】
上記の対応するCDRは、Kabat法(1987)、Chothia法(1989)、AbM法もしくはcontact法、またはこれらの方法の組み合わせを参照することにより定義することができる。それらの各方法の1つの定義は、表1に見ることができ、対応するCDRを判定するために、参照重鎖可変ドメイン配列番号7および参照軽鎖可変ドメイン配列番号9に適用することができる。
【0087】
本発明はまた、SAPに特異的に結合する抗原結合タンパク質を提供し、ここで、その抗原結合タンパク質は、配列番号17の可変ドメイン配列の対応するCDRH3または変異体CDRH3を含んでなるキメラ抗体またはヒト化抗体である。
【0088】
そのキメラ抗原結合タンパク質またはヒト化抗原結合タンパク質は、配列番号17もしくは配列番号19の可変ドメイン配列から選択される対応するCDRまたはそれらの変異体CDRの1つ以上またはすべてをさらに含み得る。
【0089】
本発明はまた、SAPに特異的に結合し、かつ配列番号7のKabat残基95〜101を含んでなる結合単位H3または変異体H3を含んでなる、抗原結合タンパク質を提供する。その抗原結合タンパク質は、配列番号7のKabat残基31〜32を含んでなるH1、配列番号7のKabat残基52〜56を含んでなるH2、配列番号9のKabat残基30〜34を含んでなるL1、配列番号9のKabat残基50〜55を含んでなるL2および配列番号9のKabat残基89〜96を含んでなるL3、または変異体結合単位から選択される1つ以上またはすべての結合単位をさらに含み得る。
【0090】
例えば、上記抗原結合タンパク質は、結合単位H3および結合単位H1またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、結合単位H3および結合単位H2またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、結合単位H1、結合単位H2および結合単位H3、またはそれらの変異体を含み得る。
【0091】
上記抗原結合タンパク質は、結合単位L1および結合単位L2またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、結合単位L2および結合単位L3またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、結合単位L1、結合単位L2および結合単位L3、またはそれらの変異体を含み得る。
【0092】
上記抗原結合タンパク質は、結合単位H3および結合単位L3またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、結合単位H3、結合単位H2および結合単位L3、またはそれらの変異体を含み得る。上記抗原結合タンパク質は、結合単位H3、結合単位H2、結合単位L2および結合単位L3、またはそれらの変異体を含み得る。
【0093】
上記抗原結合タンパク質は、結合単位H1、結合単位H2、結合単位H3、結合単位L1、結合単位L2および結合単位L3、またはそれらの変異体を含み得る。
【0094】
本発明はまた、SAPに特異的に結合し、かつ配列番号17のKabat残基95〜101を含んでなる結合単位H3または変異体H3を含んでなる、抗原結合タンパク質を提供する。その抗原結合タンパク質は、配列番号17のKabat残基31〜32を含んでなるH1、配列番号17のKabat残基52〜56を含んでなるH2、配列番号19のKabat残基30〜34を含んでなるL1、配列番号19のKabat残基50〜55を含んでなるL2および配列番号19のKabat残基89〜96を含んでなるL3、または変異体結合単位から選択される1つ以上またはすべての結合単位をさらに含み得る。
【0095】
CDR変異体または変異体結合単位は、少なくとも1つのアミノ酸によって改変されたアミノ酸配列を含み、ここで、前記改変は、化学的であり得るか、またはアミノ酸配列の部分的な変更(例えば、10アミノ酸以下の変更)であり得、その改変によって、変異体が未改変配列の生物学的特徴を保持することが可能になる。例えば、その変異体は、SAPに特異的に結合し、かつ組織由来のアミロイドに結合したSAPの複合体のクリアランスを活性化する、機能的変異体である。CDRのアミノ酸配列の部分的な変更は、1個から数個のアミノ酸の欠失もしくは置換、または1個から数個のアミノ酸の付加もしくは挿入、あるいはそれらの組み合わせ(例えば、10アミノ酸以下)であり得る。そのCDR変異体または結合単位変異体は、アミノ酸配列において、1、2、3、4、5または6アミノ酸の置換、付加または欠失を任意の組み合わせで含み得る。CDR変異体または結合単位変異体は、アミノ酸配列において、1、2または3アミノ酸の置換、挿入または欠失を任意の組み合わせで含み得る。アミノ酸残基の置換は、保存的置換、例えば、1つの疎水性アミノ酸を代替の疎水性アミノ酸の代わりに用いることであり得る。例えば、ロイシンは、バリンまたはイソロイシンで置換され得る。
【0096】
本明細書中に記載されるCDR、対応するCDR、変異体CDRまたは結合単位の1つ以上は、ヒトフレームワークの文脈において、例えば、ヒト化可変ドメインまたはキメラ可変ドメインとして存在することがある。本明細書中に記載されるCDR、対応するCDR、変異体CDRまたは結合単位の1つ以上を含んでなる完全ヒト抗体も企図され、それは、本発明の範囲内である。
【0097】
CDRのL1、L2、L3、H1およびH2は、有限数の主鎖コンフォメーションのうちの1つを構造的に示す傾向がある。CDRの特定の基準の構造クラスは、CDRとフレームワーク領域の両方において重要な位置に位置する残基(構造上決定的な残基またはSDR)によって決定されるループパッキングとCDRの長さとの両方によって定義される。MartinおよびThornton(1996;J Mol Biol 263:800−815)は、「重要な残基」の基準テンプレートを規定する自動的な方法を生み出した。クラスター解析を用いることにより、CDRのセットに対する基準のクラスが定義され、次いで、埋もれている疎水性残基(hydrophobics)、水素結合している残基、ならびに保存されたグリシンおよびプロリンを解析することによって、基準テンプレートが特定される。抗体配列のCDRは、それらの配列を重要な残基テンプレートと比較し、同一性または類似性の行列を用いて各テンプレートをスコアリングすることによって、基準のクラスに割り当てることができる。
【0098】
本発明の範囲内のCDRの基準の例を下記に示す。使用されるアミノ酸のナンバリングは、Kabatである。
【0099】
配列番号1に示されるようなCDRH1、その変異体、配列番号7のCDRH1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Tyr32は、Ile、His、Phe、Thr、Asn、Cys、GluまたはAspに対して置換されており、Asn33は、Tyr、Ala、Trp、Gly、Thr、LeuまたはValに対して置換されており、Met34は、Ile、ValまたはTrpに対して置換されており、および/またはHis35は、Glu、Asn、Gln、Ser、TyrまたはThrに対して置換されている。
【0100】
配列番号2に示されるようなCDRH2、その変異体、配列番号7のCDRH2または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Tyr50は、Arg、Glu、Trp、Gly、Gln、Val、Leu、Asn、LysまたはAlaに対して置換されており、Ile51は、Leu、Val、Thr、SerまたはAsnに対して置換されており、Tyr52は、Asp、Leu、AsnまたはSerに対して置換されており、Gly53は、Ala、Tyr、Ser、Lys、ThrまたはAsnに対して置換されており、Asp54は、Asn、Ser、Thr、LysまたはGlyに対して置換されており、Asn56は、Tyr、Arg、Glu、Asp、Gly、Val、SerまたはAlaに対して置換されており、および/またはAsn58は、Lys、Thr、Ser、Asp、Arg、Gly、PheまたはTyrに対して置換されている。
【0101】
配列番号3に示されるようなCDRH3、その変異体、配列番号7のCDRH3または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Ser102は、Tyr、His、Val、Ile、AspまたはGlyに対して置換されている。
【0102】
配列番号4に示されるようなCDRL1、その変異体、配列番号9のCDRL1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Asn28は、Ser、Asp、ThrまたはGluに対して置換されており、Ile29は、Valに対して置換されており、Tyr30は、Asp、Leu、Val、Ile、Ser、Asn、Phe、His、GlyまたはThrに対して置換されており、Ser31は、Asn、Thr、LysまたはGlyに対して置換されており、Tyr32は、Phe、Asn、Ala、His、SerまたはArgに対して置換されており、Leu33は、Met、Val、IleまたはPheに対して置換されており、および/またはAla34は、Gly、Asn、Ser、His、ValまたはPheに対して置換されている。
【0103】
配列番号5に示されるようなCDRL2、その変異体、配列番号9のCDRL1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Ala51は、Thr、GlyまたはValに対して置換されている。
【0104】
配列番号6に示されるようなCDRL3、その変異体、配列番号9のCDRL1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Gln89は、Ser、Gly、PheまたはLeuに対して置換されており、His90は、GlnまたはAsnに対して置換されており、His91は、Asn、Phe、Gly、Ser、Arg、Asp、Thr、TyrまたはValに対して置換されており、Tyr92は、Asn、Trp、Thr、Ser、Arg、Gln、His、AlaまたはAspに対して置換されており、Gly93は、Glu、Asn、His、Thr、Ser、ArgまたはAlaに対して置換されており、Ala94は、Asp、Tyr、Thr、Val、Leu、His、Asn、Ile、Trp、ProまたはSerに対して置換されており、および/またはLeu96は、Pro、Tyr、Arg、Ile、TrpまたはPheに対して置換されている。
【0105】
配列番号11に示されるようなCDRH1、その変異体、配列番号17のCDRH1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Tyr32は、Ile、His、Phe、Thr、Asn、Cys、GluまたはAspに対して置換されており、Trp33は、Tyr、Ala、Gly、Thr、LeuまたはValに対して置換されており、Met34は、Ile、ValまたはTrpに対して置換されており、および/またはHis35は、Glu、Asn、Gln、Ser、TyrまたはThrに対して置換されている。
【0106】
配列番号12に示されるようなCDRH2、その変異体、配列番号17のCDRH1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Met50は、Arg、Glu、Trp、Tyr、Gly、Gln、Val、Leu、Asn、LysまたはAlaに対して置換されており、Ile51は、Leu、Val、Thr、SerまたはAsnに対して置換されており、His52は、Asp、Leu、Asn、SerまたはTyrに対して置換されており、Asn53は、Ala、Gly、Tyr、Ser、LysまたはThrに対して置換されており、Ser54は、Asn、Thr、Lys、AspまたはGlyに対して置換されており、Asn56は、Tyr、Arg、Glu、Asp、Gly、Val、SerまたはAlaに対して置換されており、および/またはAsn58は、Lys、Thr、Ser、Asp、Arg、Gly、PheまたはTyrに対して置換されている。
【0107】
配列番号13に示されるようなCDRH3、その変異体、配列番号17のCDRH1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Val102は、Tyr、His、Ile、Ser、AspまたはGlyに対して置換されている。
【0108】
配列番号14に示されるようなCDRL1、その変異体、配列番号19のCDRL1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Asn28は、Ser、Asp、ThrまたはGluに対して置換されており、Val29は、Ileに対して置換されており、Asn30は、Asp、Leu、Tyr、Val、Ile、Ser、Phe、His、GlyまたはThrに対して置換されており、Ser31は、Asn、Thr、LysまたはGlyに対して置換されており、Asn32は、Phe、Tyr、Ala、His、SerまたはArgに対して置換されており、Val33は、Met、Leu、IleまたはPheに対して置換されており、Ala34は、Gly、Asn、Ser、His、ValまたはPheに対して置換されている。
【0109】
配列番号15に示されるようなCDRL2、その変異体、配列番号19のCDRL1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Ala51は、Thr、GlyまたはValに対して置換されている。
【0110】
配列番号16に示されるようなCDRL3、その変異体、配列番号19のCDRL1または対応するCDRに対する基準の例は、以下である:Gln89は、Ser、Gly、PheまたはLeuに対して置換されており、Gln90は、AsnまたはHisに対して置換されており、Cys91は、Asn、Phe、Gly、Ser、Arg、Asp、His、Thr、TyrまたはValに対して置換されており、Asn92は、Tyr、Trp、Thr、Ser、Arg、Gln、His、AlaまたはAspに対して置換されており、Asn93は、Glu、Gly、His、Thr、Ser、ArgまたはAlaに対して置換されており、Tyr94は、Asp、Thr、Val、Leu、His、Asn、Ile、Trp、ProまたはSerに対して置換されており、および/またはPhe96は、Pro、Leu、Tyr、Arg、IleまたはTrpに対して置換されている。
【0111】
CDR1つにつき、対応するCDR1つにつき、結合単位1つにつき、重鎖可変領域または軽鎖可変領域1つにつき、重鎖または軽鎖1つにつき、および抗原結合タンパク質1つにつき複数の変異体CDRの基準の位置が存在し得るので、本発明の抗原結合タンパク質がSAPに特異的に結合することができるようにCDRの基準構造が維持されるならば、任意の組み合わせの置換が、その抗原結合タンパク質に存在してもよい。
【0112】
上で論じられたように、CDRの特定の基準の構造クラスは、CDRとフレームワーク領域の両方における重要な位置に位置する残基によって決定されるループパッキングとCDRの長さとの両方によって定義される。
【0113】
したがって、配列番号1〜6もしくは11〜16に列挙されるCDR、配列番号7、9、17もしくは19のCDR、対応するCDR、結合単位またはそれらの変異体に加えて、本発明の抗原結合タンパク質の基準のフレームワーク残基は、(Kabatナンバリングを使用して):
重鎖:2位にVal、IleまたはGly、4位にLeuもしくはVal、20位にLeu、Ile、MetもしくはVal、22位にCys、24位にThr、Ala、Val、GlyもしくはSer、26位にGly、29位にIle、Phe、LeuもしくはSer、36位にTrp、47位にTrpもしくはTyr、48位にIle、Met、ValもしくはLeu、69位にIle、Leu、Phe、MetもしくはVal、71位にVal、AlaもしくはLeu、78位にAla、Leu、Val、TyrもしくはPhe、80位にLeuもしくはMet、90位にTyrもしくはPhe、92位にCys、および/または94位にArg、Lys、Gly、Ser、HisもしくはAsn
軽鎖:2位にIle、LeuもしくはVal、3位にVal、Gln、LeuもしくはGlu、4位にMetもしくはLeu、23位にCys、35位にTrp、36位にTyr、LeuもしくはPhe、46位にLeu、ArgもしくはVal、49位にTyr、His、PheもしくはLys、71位にTyrもしくはPhe、88位にCys、および/または98位にPhe
を含み得る。
【0114】
特定の実施形態において、重鎖フレームワークは、以下の残基:2位にVal、4位にLeu、20位にVal、22位にCys、24位にAla、26位にGly、29位にPhe、36位にTrp、47位にTrp、48位にMet、69位にIle、71位にAla、78位にAla、80位にMet、90位にTyr、92位にCysおよび94位にArgを含み、軽鎖フレームワークは、以下の残基:2位にIle、3位にGln、4位にMet、23位にCys、35位にTrp、36位にTyr、46位にLeu、49位にHis、71位にPhe、88位にCysおよび98位にPheを含んでなる。
【0115】
上に記載されたフレームワーク位置のいずれか1つ、任意の組み合わせまたはすべてが、本発明の抗原結合タンパク質に存在し得る。重鎖可変領域または軽鎖可変領域1つにつき、重鎖または軽鎖1つにつき、および抗原結合タンパク質1つにつき複数の変異体フレームワークの基準の位置が存在し得るので、フレームワークの基準構造が維持されるならば、任意の組み合わせが、本発明の抗原結合タンパク質に存在してもよい。
【0116】
ヒト化重鎖可変ドメインは、フレームワーク領域内において、配列番号25のヒトアクセプター可変ドメイン配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有するアクセプター抗体フレームワーク内に配列番号1〜3に列挙されるCDR、変異体CDR、配列番号7内の対応するCDR、結合単位、またはその変異体を含み得る。ヒト化軽鎖可変ドメインは、フレームワーク領域内において、配列番号32のヒトアクセプター可変ドメイン配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有するアクセプター抗体フレームワーク内に配列番号4〜6に列挙されるCDR、変異体CDR、配列番号9内の対応するCDR、結合単位、またはその変異体を含み得る。
【0117】
ヒト化重鎖可変ドメインは、フレームワーク領域において、配列番号25のヒトアクセプター可変ドメイン配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有するアクセプター抗体フレームワーク内に配列番号11〜13に列挙されるCDR、変異体CDR、配列番号17の対応するCDR、結合単位、またはそれらの変異体を含み得る。ヒト化軽鎖可変ドメインは、フレームワーク領域内において、配列番号32のヒトアクセプター可変ドメイン配列と75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有するアクセプター抗体フレームワーク内に配列番号14〜16に列挙されたCDR、変異体CDR、配列番号19の対応するCDR、結合単位、またはそれらの変異体を含み得る。
【0118】
本発明はまた、SAPに特異的に結合し、かつ配列番号27〜31のうちのいずれか1つから選択される重鎖可変領域を含んでなる、抗原結合タンパク質を提供する。その抗原結合タンパク質は、配列番号34〜36のうちのいずれか1つから選択される軽鎖可変領域を含み得る。その重鎖可変領域のいずれかとその軽鎖可変領域のいずれかとが組み合され得る。
【0119】
上記抗原結合タンパク質は、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組み合わせのいずれか1つを含み得る:H0L0(配列番号27および配列番号34)、H0L1(配列番号27および配列番号35)、H0L2(配列番号27および配列番号36)、H1L0(配列番号28および配列番号34)、H1L1(配列番号28および配列番号35)、H1L2(配列番号28および配列番号36)、H2L0(配列番号29および配列番号34)、H2L1(配列番号29および配列番号35)、H2L2(配列番号29および配列番号36)、H3L0(配列番号30および配列番号34)、H3L1(配列番号30および配列番号35)、H3L2(配列番号30および配列番号36)、H4L0(配列番号31および配列番号34)、H4L1(配列番号31および配列番号35)またはH4L2(配列番号31および配列番号36)。
【0120】
本発明はまた、SAPに特異的に結合し、かつ配列番号37〜40のうちのいずれか1つから選択される重鎖可変領域を含んでなる、抗原結合タンパク質を提供する。その抗原結合タンパク質は、配列番号41、配列番号42または配列番号74の軽鎖可変領域を含み得る。その重鎖可変領域のいずれかとその軽鎖可変領域のいずれかとが組み合され得る。
【0121】
上記抗原結合タンパク質は、以下の重鎖可変領域と軽鎖可変領域との組み合わせのいずれか1つを含み得る:H0L0(配列番号37および配列番号41)、H0L1(配列番号37および配列番号42)、H1L0(配列番号38および配列番号41)、H1L1(配列番号38および配列番号42)、H2L0(配列番号39および配列番号41)、H2L1(配列番号39および配列番号42)、H3L0(配列番号40および配列番号41)またはH3L1(配列番号40および配列番号42)。
【0122】
L0(配列番号41)は、L0 91A(配列番号74)で置換され得る。
【0123】
上記の抗体重鎖可変領域は、配列番号28に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有し得る。上記の抗体軽鎖可変領域は、配列番号35に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有し得る。
【0124】
上記の抗体重鎖可変領域は、配列番号40に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有し得る。上記の抗体軽鎖可変領域は、配列番号41に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有し得る。上記の抗体軽鎖可変領域は、配列番号74に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有し得る。
【0125】
上記の抗体重鎖可変領域は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換、挿入または欠失を含んでなる、配列番号27〜31のうちのいずれか1つの変異体であり得る。上記の抗体軽鎖可変領域は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換、挿入または欠失を含んでなる、配列番号34〜36のうちのいずれか1つの変異体であり得る。
【0126】
上記の抗体重鎖可変領域は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換、挿入または欠失を含んでなる、配列番号37〜40のうちのいずれか1つの変異体であり得る。上記の抗体軽鎖可変領域は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換、挿入または欠失を含んでなる、配列番号41、42または74の変異体であり得る。
【0127】
例えば、上に記載された基準CDRおよび基準フレームワーク残基の置換は、少なくとも75%同一であるかまたは30アミノ酸までの置換を含んでなる変異体配列として、変異体重鎖可変領域または変異体軽鎖可変領域にも存在し得る。
【0128】
上記重鎖可変領域のいずれかが、好適なヒト定常領域と組み合わされ得る。上記軽鎖可変領域のいずれかが、好適な定常領域と組み合わされ得る。
【0129】
本発明の抗原結合タンパク質は、配列番号62の重鎖および/または配列番号64の軽鎖可変領域を含み得る。
【0130】
上記の抗体重鎖は、配列番号62に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有し得る。上記の抗体軽鎖は、配列番号64に対して75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上または100%の同一性を有し得る。
【0131】
上記の抗体重鎖は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換、挿入または欠失を含んでなる、配列番号62のいずれか1つの変異体であり得る。上記の抗体軽鎖は、30、25、20、15、10、9、8、7、6、5、4、3、2または1アミノ酸の置換、挿入または欠失を含んでなる、配列番号64のいずれか1つの変異体であり得る。
【0132】
円盤様のSAP分子は、2つの面を有する。5つの各プロトマー上に存在する単一のアルファヘリックスは、A面上に位置する。各プロトマーのカルシウム依存性リガンド結合ポケットは、B面上に位置し、ゆえに、この面は、SAPがアミロイド原線維に結合していると塞がれる。治療的有用性を有する本発明の抗原結合タンパク質の場合、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質によって認識されるエピトープは、望ましくは、SAPがアミロイド沈着物に結合しているときにSAPに接近しやすいものであるので、SAP分子のA面または縁に位置する。そして、本抗原結合タンパク質は、アミロイドと結合したSAPを認識することができ、アミロイドと結合したSAPに結合することができ、その結果、身体の効率的なマクロファージ依存性クリアランス機構の引き金を引く補体の活性化をもたらす。したがって、本発明の実施形態では、本抗原結合タンパク質は、
インビボにおいてアミロイド原線維に結合したヒトSAPに結合する。本発明の別の実施形態では、本抗原結合タンパク質は、ヒトSAPのA面に結合する。
【0133】
本抗原結合タンパク質は、ラット、マウス、ウサギ、ラクダ(または関連するラクダ科の種)または霊長類(例えば、カニクイザル、旧世界ザル、大型類人猿またはヒト)に由来し得る。特定の実施形態において、本抗原結合タンパク質は、マウスに由来する。別の実施形態において、本抗原結合タンパク質は、ヒトに由来する。本抗原結合タンパク質は、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。本抗原結合タンパク質は、ヒト抗体であり得る。本抗原結合タンパク質は、マウス抗体ではない。
【0134】
本抗原結合タンパク質は、任意のアイソタイプまたはサブクラスであり得る定常領域を含み得る。その定常領域は、IgGアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらの変異体であり得る。本抗原結合タンパク質の定常領域は、IgG1であり得る。
【0135】
本発明の特定の実施形態において、本抗原結合タンパク質は、補体の活性化において機能的な定常領域、例えば、ヒトIgG1、IgG2またはIgG3の定常領域を含む。
【0136】
本発明の別の実施形態において、本抗原結合タンパク質は、マクロファージへの結合において機能的な定常領域、例えば、ヒトIgG1またはIgG3の定常領域を含む。
【0137】
本発明のさらなる実施形態において、抗原結合タンパク質は、補体の活性化とマクロファージへの結合の両方において機能的な定常領域、例えば、ヒトIgG1またはIgG3の定常領域を含む。
【0138】
本抗原結合タンパク質は、その抗体が、変更されたエフェクター機能/ADCCおよび/または補体の活性化を有するように変異された定常ドメインから選択される1つ以上の改変を含み得る。好適な改変の例は、Shields et al.J.Biol.Chem(2001)276:6591−6604、Lazar et al.PNAS(2006)103:4005−4010およびUS6737056、国際公開第2004063351号および国際公開第2004029207号に記載されている。
【0139】
本抗原結合タンパク質は、その抗原結合タンパク質が、変更されたエフェクター機能/ADCCおよび/または補体の活性化を有するように変更されたグリコシル化プロファイルを有する定常ドメインを含み得る。変更されたグリコシル化プロファイルを有する抗原結合タンパク質を生成するのに適した方法の例は、国際公開第2003/011878号、国際公開第2006/014679号およびEP1229125に記載されている。
【0140】
本発明の実施形態では、抗原結合に関与する領域(例えば、CDR)内にアミド分解を受けやすい残基を有しない抗原結合タンパク質が選択される。本発明のさらなる実施形態では、補体の活性化に関与する領域内にアミド分解を受けやすい残基を有しない抗原結合タンパク質が選択される。
【0141】
本発明はまた、本明細書中に記載されるような抗原結合タンパク質をコードする核酸分子を提供する。その核酸分子は、重鎖可変配列または重鎖完全長配列と、軽鎖可変配列または軽鎖完全長配列の両方をコードする配列を含み得る。あるいは、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質をコードする核酸分子は、重鎖可変配列もしくは重鎖完全長配列、または軽鎖可変配列もしくは軽鎖完全長配列をコードする配列を含み得る。
【0142】
重鎖可変領域をコードする核酸分子は、配列番号51または53〜57のうちのいずれか1つを含み得る。軽鎖可変領域をコードする核酸分子は、配列番号52または58〜60のうちのいずれか1つを含み得る。
【0143】
上記重鎖をコードする核酸分子は、配列番号61を含み得る。上記軽鎖をコードする核酸分子は、配列番号63を含み得る。
【0144】
上記重鎖可変領域をコードする核酸分子は、配列番号65または67〜70のうちのいずれか1つを含み得る。上記軽鎖可変領域をコードする核酸分子は、配列番号66または71〜73のうちのいずれか1つを含み得る。
【0145】
上記核酸分子はまた、コードされる重鎖および/または軽鎖のアミノ酸配列を変更しない1つ以上のヌクレオチド置換を含み得る。
【0146】
本発明はまた、本明細書中に記載されるような核酸分子を含む発現ベクターを提供する。本明細書中に記載されるような発現ベクターを含む組換え宿主細胞もまた提供される。
【0147】
本明細書中に記載される抗原結合タンパク質は、好適な宿主細胞において産生され得る。本明細書中に記載されるような抗原結合タンパク質を生成するための方法は、本明細書中に記載されるような宿主細胞を培養する工程および抗原結合タンパク質を回収する工程を包含し得る。形質転換された、トランスフェクトされたまたは形質導入された組換え宿主細胞は、少なくとも1つの発現カセットを含み得、ここで、前記発現カセットは、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、さらに、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む。あるいは、形質転換された、トランスフェクトされたまたは形質導入された組換え宿主細胞は、少なくとも1つの発現カセットを含み得、ここで、第1の発現カセットが、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含み、さらに、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質の軽鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第2のカセットを含む。安定的に形質転換された宿主細胞は、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質の重鎖および/または軽鎖をコードする1つ以上発現カセットを含むベクターを含み得る。例えば、そのような宿主細胞は、軽鎖をコードする第1のベクターおよび重鎖をコードする第2のベクターを含み得る。
【0148】
宿主細胞は、真核生物、例えば、哺乳動物の細胞であり得る。そのような細胞株の例としては、CHOまたはNS0が挙げられる。宿主細胞は、培養液、例えば、無血清培養液中で培養され得る。本抗原結合タンパク質は、宿主細胞によって培養液中に分泌され得る。本抗原結合タンパク質は、本抗原結合タンパク質を含む前記培養液に対して少なくとも95%以上(例えば、98%以上)に精製することができる。
【0149】
本抗原結合タンパク質および薬学上許容される担体を含んでなる医薬組成物が提供され得る。使用するための指示書とともに医薬組成物を備えるキットオブパーツ(kit−of−parts)が提供され得る。便宜のために、そのキットは、使用するための指示書とともに、所定量の試薬を備え得る。
【0150】
抗体の構造
インタクトな抗体
ほとんどの脊椎動物種由来の抗体の軽鎖は、定常領域のアミノ酸配列に基づいて、カッパーおよびラムダと呼ばれる2つのタイプのうちの1つに割り当てることができる。ヒト抗体は、重鎖の定常領域のアミノ酸配列に応じて、5つの異なるクラスIgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMに割り当てることができる。IgGおよびIgAは、さらに、サブクラスIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4、ならびにIgA1およびIgA2に細分することができる。少なくともIgG2a、IgG2bを有するマウスおよびラットにおいて種変異体が存在する。
【0151】
可変領域のより保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。インタクトな重鎖および軽鎖の可変ドメインの各々は、3つのCDRに接続された4つのFRを含む。各鎖におけるCDRは、FR領域によって共に近位に保持され、他の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。
【0152】
定常領域は、抗体と抗原との結合に直接関わらないが、走化性作用、オプソニン作用、および潜在的には、生細胞の抗原標的の場合、補体の細胞溶解作用をもたらす様々なエフェクター機能(例えば、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)への関与、Fcγ受容体への結合によるファゴサイトーシス、胎児型Fc受容体(FcRn)を介した半減期/クリアランス速度、およびC1q成分を介した補体の活性化)を示す。IgG1クラスのヒト抗体は、補体系の活性化において最も強力であり、ゆえに、本発明の抗体を治療に適用するために望ましいアイソタイプである。
【0153】
ヒトIgG2定常領域は、古典経路によって補体を活性化する能力または抗体依存性細胞傷害を媒介する能力を本質的に欠くと報告されている。IgG4定常領域は、古典経路によって補体を活性化する能力を欠くと報告されており、抗体依存性細胞傷害をほんの弱く媒介する。これらのエフェクター機能を本質的に欠く抗体は、「非溶解性」抗体と呼ばれることがある。
【0154】
ヒト抗体
ヒト抗体は、当業者に公知のいくつかの方法によって生成され得る。ヒト抗体は、ヒトミエローマ細胞株またはマウス−ヒトヘテロミエローマ細胞株を用いたハイブリドーマ法によって生成することができる(Kozbor(1984)J.Immunol 133,3001およびBrodeur,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,51−63(Marcel Dekker Inc,1987)を参照のこと)。代替方法としては、ファージライブラリーまたはトランスジェニックマウス(その両方ともがヒト可変領域レパートリーを使用する)の使用が挙げられる(Winter(1994)Annu.Rev.Immunol 12:433−455;Green(1999)J.Immunol.Methods 231:11−23を参照のこと)。
【0155】
マウス免疫グロブリン遺伝子座がヒト免疫グロブリン遺伝子セグメントで置き換えられたいくつかの系統のトランスジェニックマウスが、現在入手可能である(Tomizuka(2000)PNAS 97:722−727;Fishwild(1996)Nature Biotechnol.14:845−851;Mendez(1997)Nature Genetics,15:146−156を参照のこと)。抗原チャレンジの際、そのようなマウスは、ヒト抗体のレパートリーを産生することができ、そのレパートリーから目的の抗体を選択することができる。
【0156】
ヒト抗原結合タンパク質(およびそのフラグメント)を生成するために、ファージディスプレイ技術を用いることができる(McCafferty(1990)Nature 348:552−553およびGriffiths et al.(1994)EMBO 13:3245−3260を参照のこと)。
【0157】
親和性成熟の手法(Marks Bio/technol(1992)10:779−783)を用いることにより、結合親和性が改善されることがあり、ここで、重(H)鎖可変領域および軽(L)鎖可変領域を天然に存在する変異体で順次置き換え、改善された結合親和性に基づいて選択することによって、最初のヒト抗体の親和性が改善される。この手法の変法(例えば、「エピトープインプリンティング」)もまた、現在利用可能である(例えば、国際公開第93/06213号;Waterhouse(1993)Nucl.Acids Res.21:2265−2266を参照のこと)。
【0158】
キメラ抗体およびヒト化抗体
キメラ抗体は、通常、組換えDNA法を用いて作製される。その抗体をコードするDNA(例えば、cDNA)を、従来の手順を用いて(例えば、抗体のH鎖およびL鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)単離し、配列決定する。ハイブリドーマ細胞は、そのようなDNAの典型的な起源として役立つ。そのDNAは、いったん単離されると、発現ベクターに配置され、次いでその発現ベクターを、別途、免疫グロブリンタンパク質を産生しない宿主細胞(例えば、E.coli、COS細胞、CHO細胞またはミエローマ細胞)にトランスフェクトすることにより、抗体の合成がもたらされる。そのDNAは、ヒトのL鎖およびH鎖に対するコード配列で、対応する非ヒト(例えば、マウス)H定常領域およびL定常領域を置換することによって、改変され得る(例えば、Morrison(1984)PNAS 81:6851を参照のこと)。
【0159】
免疫原性の大幅な低下は、非ヒト(例えば、マウス)抗体(「ドナー」抗体)のCDRだけをヒトフレームワーク(「アクセプターフレームワーク」)およびヒト定常領域に移植してヒト化抗体を作製することによって達成することができる(Jones et al.(1986)Nature 321:522−525;およびVerhoeyen et al.(1988)Science 239:1534−1536を参照のこと)。しかしながら、CDR移植自体では、抗原結合特性が完全に保持されない可能性があり、かなりの抗原結合親和性を回復するべきである場合、ドナー抗体のいくつかのフレームワーク残基(時折、「復帰突然変異」と呼ばれる)をヒト化分子において保存する必要があることが頻繁にみられる(Queen et al.(1989)PNAS 86:10,029−10,033:Co et al.(1991)Nature 351:501−502を参照のこと)。この場合、ヒトフレームワーク(FR)をもたらすために、非ヒトドナー抗体と最も高い配列相同性を示すヒト可変領域をデータベースから選択する。ヒトFRの選択は、ヒトコンセンサス抗体または個別のヒト抗体のいずれかから行うことができる。必要ならば、ドナー抗体の重要な残基をヒトアクセプターフレームワークに置換することによって、CDRのコンフォメーションを保存することができる。そのような構造的に重要な残基の特定を助けるために、抗体のコンピュータモデリングを用いてもよい(国際公開第99/48523号を参照のこと)。
【0160】
あるいは、ヒト化は、「ベニアリング(veneering)」のプロセスによって行ってもよい。独特のヒトおよびマウスの免疫グロブリン重鎖可変領域および免疫グロブリン軽鎖可変領域の統計解析から、露出される残基の正確なパターンが、ヒト抗体およびマウス抗体において異なり、ほとんどの個別の表面の位置が、少数の種々の残基に対して強い優先性を有することが明らかになった(Padlan et al.(1991)Mol.Immunol.28:489−498;およびPedersen et al.(1994)J.Mol.Biol.235:959−973を参照のこと)。ゆえに、そのフレームワーク領域内の、ヒト抗体に通常見られる残基とは異なる露出残基を置き換えることによって、非ヒトFvの免疫原性を低下させることが可能である。タンパク質の抗原性は、表面への接近可能性と相関し得るので、表面残基の置換は、マウス可変領域をヒト免疫系に対して「見えなく」するのに十分であり得る(Mark et al.(1994)in Handbook of Experimental Pharmacology Vol.113:The pharmacology of Monoclonal Antibodies,Springer−Verlag,105−134もまた参照のこと)。このヒト化の手順は、抗体の表面だけを変更して、支持残基はそのまま保つので、「ベニアリング」と呼ばれる。さらなる代替アプローチとしては、国際公開第04/006955号に示されているアプローチ、および細菌発現系を使用し、配列においてヒト生殖系列に近い抗体を生成するHumaneering
TM(Kalobios)の手順(Alfenito−M Advancing Protein Therapeutics January 2007,San Diego,California)が挙げられる。
【0161】
二重特異性抗原結合タンパク質
二重特異性抗原結合タンパク質は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する抗原結合タンパク質である。そのような抗原結合タンパク質を作製する方法は、当該分野で公知である。従来、二重特異性抗原結合タンパク質の組換え作製は、2つの免疫グロブリンH鎖−L鎖対の同時発現に基づき、ここで、その2つのH鎖は、異なる結合特異性を有する(Millstein et al.(1983)Nature 305:537−539;国際公開第93/08829号;およびTraunecker et al.(1991)EMBO 10:3655−3659を参照のこと)。H鎖とL鎖とのランダムな組み合わせを理由に、潜在的に10個の異なる抗体構造の混合物(そのうちの1つだけが、所望の結合特異性を有する)が生成される。代替アプローチは、所望の結合特異性を有する可変ドメインを、ヒンジ領域、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む重鎖定常領域と融合することを含む。軽鎖結合に必要な部位を含むCH1領域は、その融合物の少なくとも1つに存在し得る。これらの融合物および所望であればL鎖をコードするDNAが、別個の発現ベクターに挿入され、次いで、好適な宿主生物に同時トランスフェクトされる。にもかかわらず、2つまたは3つすべての鎖に対するコード配列を1つの発現ベクターに挿入することも可能である。1つのアプローチにおいて、二重特異性抗体は、一方の腕における第1の結合特異性を有するH鎖、および他方の腕における第2の結合特異性を提供するH−L鎖対から構成される(国際公開第94/04690号を参照のこと)。Suresh et al.(1986)Methods in Enzymology 121:210もまた参照のこと。
【0162】
抗原結合フラグメント
定常領域を欠くフラグメントは、古典経路によって補体を活性化する能力または抗体依存性細胞傷害を媒介する能力を欠く。従来、そのようなフラグメントは、例えば、パパイン消化による、インタクトな抗体のタンパク分解性の消化によって生成されるが(例えば、国際公開第94/29348号を参照のこと)、組換え的に形質転換された宿主細胞から直接産生されてもよい。ScFvの生成については、Bird et al.(1988)Science 242:423−426を参照のこと。さらに、抗原結合フラグメントは、下に記載されるような種々の操作手法を用いて生成されてもよい。
【0163】
Fvフラグメントは、Fabフラグメントよりも低いその2本の鎖の相互作用エネルギーを有するとみられる。VHドメインとVLドメインとの会合を安定化するために、それらは、ペプチド(Bird et al.(1988)Science 242:423−426;Huston et al.(1988)PNAS 85(16):5879−5883)、ジスルフィド架橋(Glockshuber et al.(1990)Biochemistry 29:1362−1367)および「ノブ・イン・ホール(knob in hole)」変異(Zhu et al.(1997)Protein Sci.,6:781−788)を用いて連結された。ScFvフラグメントは、当業者に周知の方法によって作製することができる(Whitlow et al.(1991)Methods Companion Methods Enzymol,2:97−105およびHuston et al.(1993)Int.Rev.Immunol 10:195−217を参照のこと)。ScFvは、E.coliなどの細菌細胞または真核細胞において産生されることがある。ScFvの欠点の1つは、その生成物が一価であること(そのせいで、多価の結合によるアビディティーの増強が妨げられる)および半減期が短いことである。これらの問題を克服する試みとしては、化学的結合(Adams et al.(1993)Can.Res 53:4026−4034;およびMcCartney et al.(1995)Protein Eng.8:301−314)によるか、または対になっていないC末端のシステイン残基を含むScFvの自発的な部位特異的二量体化(Kipriyanov et al.(1995)Cell.Biophys 26:187−204を参照のこと)による、追加のC末端システインを含むScFvから作製される二価(ScFv’)2が挙げられる。あるいは、ペプチドリンカーを3〜12残基に短縮することによってScFvが多量体を形成せざるを得なくすることにより、「ダイアボディ」を形成することができる(Holliger et al.(1993)PNAS 90:6444−6448を参照のこと)。そのリンカーの短縮は、なおもさらにScFv三量体(「トリアボディ(triabodies)」、Kortt et al.(1997)Protein Eng 10:423−433を参照のこと)および四量体(「テトラボディ(tetrabodies)」、Le Gall et al.(1999)FEBS Lett,453:164−168を参照のこと)をもたらすことができる。二価のScFv分子の構築は、タンパク質二量体化モチーフとの遺伝的融合によって「ミニ抗体」(Pack et al.(1992)Biochemistry 31:1579−1584を参照のこと)および「ミニボディ(minibodies)」(Hu et al.(1996)Cancer Res.56:3055−3061を参照のこと)を形成することによっても行うことができる。ScFv−Sc−Fvタンデム((ScFV)2)は、2つのScFv単位を第3のペプチドリンカーによって連結することによっても生成され得る(Kurucz et al.(1995)J.Immol.154:4576−4582を参照のこと)。1つの抗体由来のVHドメインが別の抗体のVLドメインに短いリンカーによって接続されたものからなる2つの一本鎖融合産物を非共有結合的に会合することによって、二重特異性ダイアボディを作製することができる(Kipriyanov et al.(1998)Int.J.Can 77:763−772を参照のこと)。そのような二重特異性ダイアボディの安定性は、前に記載されたようなジスルフィド架橋もしくは「ノブ・イン・ホール」変異を導入することによって、または一本鎖ダイアボディ(ScDb)を形成することによって増強することができ、ここで、2つのハイブリッドScFvフラグメントは、ペプチドリンカーを介して接続される(Kontermann et al.(1999)J.Immunol.Methods 226:179−188を参照のこと)。四価の二重特異性分子は、例えば、ScFvフラグメントを、ヒンジ領域を介してIgG分子のCH3ドメインまたはFabフラグメントに融合することによって、入手可能である(Coloma et al.(1997)Nature Biotechnol.15:159−163を参照のこと)。あるいは、四価の二重特異性分子は、二重特異性の一本鎖ダイアボディの融合によって作り出された(Alt et al.(1999)FEBS Lett 454:90−94を参照のこと)。ヘリックス−ループ−ヘリックスモチーフを含むリンカーを用いたScFv−ScFvタンデムの二量体化(DiBiミニ抗体、Muller et al.(1998)FEBS Lett 432:45−49を参照のこと)または分子内の対形成を防止する配向で4つの抗体可変ドメイン(VHおよびVL)を含む一本鎖分子の二量体化(タンデムダイアボディ、Kipriyanov et al.(1999)J.Mol.Biol.293:41−56を参照のこと)によって、より小さい四価の二重特異性分子を形成することもできる。Fab’フラグメントの化学的結合によるか、またはロイシンジッパーを介したヘテロ二量体化によって、二重特異性F(ab’)2フラグメントを作り出すことができる(Shalaby et al.(1992)J.Exp.Med.175:217−225;およびKostelny et al.(1992),J.Immunol.148:1547−1553を参照のこと)。単離されたVHおよびVLドメイン(Domantis plc)もまた利用可能である(US6,248,516;US6,291,158;およびUS6,172,197を参照のこと)。
【0164】
ヘテロ結合体抗体
ヘテロ結合体抗体は、任意の好都合な架橋方法を用いて形成される、2つの共有結合的に結合された抗体から構成される。例えば、US4,676,980を参照のこと。
【0165】
他の改変
本発明の抗原結合タンパク質は、そのエフェクター機能を増強または変更する他の改変を含み得る。抗体のFc領域と様々なFc受容体(FcγR)との相互作用は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、補体の固定、ファゴサイトーシスおよび抗体の半減期/クリアランスを含む、抗体のエフェクター機能を媒介すると考えられている。抗体のFc領域に対する様々な改変は、所望の特性に応じて行われ得る。例えば、別途溶解性の抗体を非溶解性にするFc領域における特定の変異は、EP0629240およびEP0307434に詳述されているものであるか、またはサルベージ受容体に結合するエピトープを抗体に組み込むことにより、血清半減期を延長し得る(US5,739,277を参照のこと)。ヒトFcγ受容体としては、FcγR(I)、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよび胎児型FcRnが挙げられる。Shields et al.(2001)J.Biol.Chem 276:6591−6604では、IgG1残基の共通のセットが、すべてのFcγRへの結合に関わるが、FcγRIIおよびFcγRIIIは、この共通セットの外側の異なる部位を利用することが立証された。1つの群のIgG1残基は、アラニンに変更されたとき、すべてのFcγRへの結合性を低下させた:Pro−238、Asp−265、Asp−270、Asn−297およびPro−239。そのすべてが、IgG CH2ドメインに存在し、CH1およびCH2を結合するヒンジ付近に密集している。FcγRIは、結合のためにIgG1残基の共通セットだけを利用するが、FcγRIIおよびFcγRIIIは、その共通セットに加えて異なる残基と相互作用する。いくつかの残基の変更によって、FcγRII(例えば、Arg−292)またはFcγRIII(例えば、Glu−293)に対する結合だけが低下した。いくつかの変異体は、FcγRIIまたはFcγRIIIに対して改善された結合性を示したが、他方の受容体への結合性に影響しなかった(例えば、Ser−267Alaは、FcγRIIへの結合性を改善したが、FcγRIIIへの結合性は影響されなかった)。他の変異体は、FcγRIIまたはFcγRIIIに対する改善された結合性を示し、他方の受容体への結合性を低下させた(例えば、Ser−298Alaは、FcγRIIIへの結合性を改善し、FcγRIIへの結合性を低下させた)。FcγRIIIaについては、最もよく結合するIgG1変異体は、Ser−298、Glu−333およびLys−334においてアラニン置換を組み合わせていた。胎児型FcRn受容体は、抗体のクリアランスと組織を越えたトランスサイトーシスの両方にかかわると考えられている(Junghans(1997)Immunol.Res 16:29−57;およびGhetie et al.(2000)Annu.Rev.Immunol.18:739−766を参照のこと)。ヒトFcRnと直接相互作用すると判定されたヒトIgG1残基としては、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434およびHis435が挙げられる。この項に記載される位置のいずれにおける置換も、血清半減期の延長および/または抗体のエフェクター特性の変更を可能にし得る。
【0166】
他の改変としては、抗体のグリコシル化変異体が挙げられる。定常領域内の保存された位置における抗体のグリコシル化は、抗体の機能、特に、上に記載された機能などのエフェクター機能に対して著明な影響を有すると知られている(例えば、Boyd et al.(1996)Mol.Immunol.32:1311−1318を参照のこと)。1つ以上の炭水化物部分が付加、置換、削除または改変された、抗体またはその抗原結合フラグメントのグリコシル化変異体が企図される。アスパラギン−X−セリンまたはアスパラギン−X−トレオニンモチーフを導入することにより、炭水化物部分を酵素的に結合するための潜在的な部位が作り出されるので、それを用いて、抗体のグリコシル化を操作してもよい。Raju et al.(2001)Biochemistry 40:8868−8876では、ベータ−1,4−ガラクトシルトランスフェラーゼ(galactosyltransferace)および/またはアルファ,2,3シアリルトランスフェラーゼを用いた再ガラクトシル化(regalactosylation)および/または再シアル化(resialylation)のプロセスによって、TNFR−IgGイムノアドヘシンの末端のシアル化(sialyation)が増加した。末端のシアル化の増加は、免疫グロブリンの半減期を延長させると考えられる。抗体は、ほとんどの糖タンパク質と同様に、通常、グリコフォームの混合物として生成される。この混合物は、抗体が真核生物、特に、哺乳動物の細胞において産生されるとき、特に明らかである。規定のグリコフォームを製造する種々の方法が開発されている(Zhang et al.(2004)Science 303:371:Sears et al.(2001)Science 291:2344;Wacker et al.(2002)Science 298:1790;Davis et al.(2002)Chem.Rev.102:579;Hang et al.(2001)Acc.Chem.Res 34:727を参照のこと)。本明細書中に記載されるような抗体(例えば、IgGアイソタイプ、例えば、IgG1の抗体)は、規定数(例えば、7つ以下、例えば、5つ以下、例えば、2つまたは1つ)のグリコフォームを含み得る。
【0167】
抗体は、非タンパク質性(non−proteinaeous)ポリマー(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコールまたはポリオキシアルキレン)に結合されてもよい。タンパク質とPEGとの結合体化は、タンパク質の半減期を延長するため、ならびにタンパク質の抗原性および免疫原性を低下させるための、確立された手法である。種々の分子量およびスタイル(線状または分枝状)を有するPEG化の使用が、インタクトな抗体ならびにFab’フラグメントを用いて調べられている(Koumenis et al.(2000)Int.J.Pharmaceut.198:83−95を参照のこと)。
【0168】
生成方法
抗原結合タンパク質は、トランスジェニック生物(例えば、ヤギ(Pollock et al.(1999)J.Immunol.Methods 231:147−157を参照のこと)、ニワトリ(Morrow(2000)Genet.Eng.News 20:1−55を参照のこと、マウス(Pollock et al.を参照のこと)または植物(Doran(2000)Curr.Opinion Biotechnol.11:199−204;Ma(1998)Nat.Med.4:601−606;Baez et al.(2000)BioPharm 13:50−54;Stoger et al.(2000)Plant Mol.Biol.42:583−590を参照のこと))において産生され得る。
【0169】
抗原結合タンパク質は、化学合成によっても生成され得る。しかしながら、抗原結合タンパク質は、通常、当業者に周知の組換え細胞培養技術を用いて生成される。抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが、単離され、複製可能なベクター(例えば、さらなるクローニング(増幅)または発現のためのプラスミド)に挿入される。特に、宿主細胞がCHOまたはNS0である場合、1つの発現系は、グルタメート合成酵素系(例えば、Lonza Biologicsが販売するもの)である。抗原結合タンパク質をコードするポリヌクレオチドは、従来の手順(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)を用いて、容易に単離され、配列決定される。使用され得るベクターとしては、プラスミド、ウイルス、ファージ、トランスポゾン、ミニ染色体が挙げられ、その中でもプラスミドが通常使用される。一般に、そのようなベクターは、発現を促進するために、抗原結合タンパク質ポリヌクレオチドに作動可能に連結された、シグナル配列、複製起点、1つ以上のマーカー遺伝子、エンハンサーエレメント、プロモーターおよび転写終結配列をさらに含む。軽鎖および重鎖をコードするポリヌクレオチドは、別個のベクターに挿入され、同じ宿主細胞に同時にもしくは連続的に導入されてもよいし(例えば、形質転換、トランスフェクション、エレクトロポレーションまたは形質導入によって)、所望であれば、重鎖と軽鎖の両方を、前記導入の前に同じベクターに挿入してもよい。
【0170】
コドン最適化は、その配列でトランスフェクトされたときのレベルと比較して、コドン最適化された遺伝子でトランスフェクトされたときに宿主細胞によって産生されるタンパク質の総レベルをより高くする目的で使用されることがある。いくつかの方法が公開されている(Nakamura et al.(1996)Nucleic Acids Research 24:214−215;W098/34640;W097/11086)。遺伝暗号の重複性に起因して、本明細書中に開示されるポリヌクレオチドに対する代替のポリヌクレオチド(特に、所与の宿主細胞における発現のためにコドン最適化されたもの)もまた、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質をコードし得る。ゆえに、本発明の抗原結合タンパク質のコドン使用頻度は、転写物および/または生成物の収量を増大するように、宿主細胞のコドンバイアスに適応するように改変することができる(例えば、Hoekema et al Mol Cell Biol 1987 7(8):2914−24)。コドンの選択は、発現のために使用される宿主細胞との好適な適合性に基づき得る。
【0171】
シグナル配列
抗原結合タンパク質は、成熟タンパク質のN末端に特異的な切断部位を有する異種のシグナル配列との融合タンパク質として生成されてもよい。そのシグナル配列は、宿主細胞によって認識され、プロセシングされるべきである。原核生物の宿主細胞の場合、シグナル配列は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼまたは熱安定性エンテロトキシンIIリーダーであり得る。酵母による分泌の場合、シグナル配列は、例えば、酵母インベルターゼリーダー、α因子リーダーまたは酸ホスファターゼリーダーであり得る(例えば、国際公開第90/13646号を参照のこと)。哺乳動物細胞系では、単純ヘルペスgDシグナルなどのウイルスの分泌リーダー、および天然の免疫グロブリンシグナル配列が好適であり得る。通常、シグナル配列は、抗原結合タンパク質をコードするDNAに読み枠でライゲートされる。配列番号79に示されるシグナル配列などのマウスシグナル配列が使用され得る。
【0172】
複製起点
複製起点は、当該分野で周知である(ほとんどのグラム陰性菌に適するpBR322、ほとんどの酵母に適する2μプラスミド、およびほとんどの哺乳動物細胞に適する様々なウイルス起点(例えば、SV40、ポリオーマ、アデノウイルス、VSVまたはBPV))。一般に、複製起点の構成要素は、哺乳動物の発現ベクターにとって必要とされないが、SV40は、初期プロモーターを含むので、使用されることがある。
【0173】
選択マーカー
典型的な選択遺伝子は、(a)抗生物質または他のトキシン、例えば、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサートもしくはテトラサイクリンに対する耐性を付与するタンパク質、または(b)栄養要求性の(auxiotrophic)欠損を補完するか、もしくは複合培地において利用可能でない栄養分を供給するタンパク質、あるいは(c)それらの両方の組み合わせをコードする。選択スキームは、宿主細胞の成長の停止を含み得る。抗原結合タンパク質をコードする遺伝子で首尾よく形質転換された細胞は、例えば、同時に送達された選択マーカーによって付与された薬物耐性に起因して、生存する。一例は、DHFR選択マーカーであり、ここで、形質転換体は、メトトレキサートの存在下において培養される。目的の外来性遺伝子のコピー数を増幅させるために、メトトレキサートの存在下において、そのメトトレキサートの量を増加させながら細胞を培養することができる。CHO細胞は、DHFR選択にとって特に有用な細胞株である。さらなる例は、グルタメート合成酵素発現系(Lonza Biologics)である。酵母において使用するための選択遺伝子の例は、trp1遺伝子である(Stinchcomb et al.(1979)Nature 282:38を参照のこと)。
【0174】
プロモーター
抗原結合タンパク質の発現に適したプロモーターは、その抗原結合タンパク質をコードするDNA/ポリヌクレオチドに作動可能に連結される。原核生物宿主用のプロモーターとしては、phoAプロモーター、ベータ−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系、アルカリホスファターゼ、トリプトファン、ならびにTacなどのハイブリッドプロモーターが挙げられる。酵母細胞における発現に適したプロモーターとしては、3−ホスホグリセリン酸キナーゼまたは他の糖分解酵素、例えば、エノラーゼ、グリセルアルデヒド(glyceralderhyde)3リン酸脱水素酵素、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース6リン酸イソメラーゼ、3−ホスホグリセリン酸ムターゼおよびグルコキナーゼが挙げられる。誘導性酵母プロモーターとしては、アルコールデヒドロゲナーゼ2、イソシトクロムC、酸ホスファターゼ、メタロチオネイン、および窒素代謝またはマルトース/ガラクトース利用に関与する酵素が挙げられる。
【0175】
哺乳動物細胞系における発現用のプロモーターとしては、ウイルスプロモーター(例えば、ポリオーマ、鶏痘およびアデノウイルス(例えば、アデノウイルス2)、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス(特に、前初期遺伝子プロモーター)、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、アクチン、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターおよび初期または後期サルウイルス40)が挙げられる。当然のことながら、プロモーターの選択は、発現に使用される宿主細胞との好適な適合性に基づく。第1のプラスミドは、RSVおよび/またはSV40および/またはCMVプロモーター、軽鎖可変領域(VL)をコードするDNA、ネオマイシンおよびアンピシリン耐性選択マーカーとともにκC領域を含み得、第2のプラスミドは、RSVまたはSV40プロモーター、重鎖可変領域(VH)をコードするDNA、γ1定常領域をコードするDNA、DHFRおよびアンピシリン耐性マーカーを含み得る。
【0176】
エンハンサーエレメント
必要に応じて、例えば、高等真核生物における発現のために、ベクター内のプロモーターエレメントに作動可能に連結されたエンハンサーエレメントを使用してもよい。哺乳動物のエンハンサー配列としては、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテインおよびインスリン由来のエンハンサーエレメントが挙げられる。あるいは、真核(eukaroytic)細胞ウイルス由来のエンハンサーエレメント(例えば、SV40エンハンサー(bp100〜270におけるもの)、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマ(polyma)エンハンサー、バキュロウイルスエンハンサー)またはマウスIgG2a遺伝子座(国際公開第04/009823号を参照のこと)を使用してもよい。エンハンサーは、ベクター上のプロモーターに対して上流の部位に配置され得る。あるいは、エンハンサーは、他の位置、例えば、非翻訳領域内またはポリアデニル化シグナルの下流に配置され得る。エンハンサーの選択および位置決めは、発現に使用される宿主細胞との好適な適合性に基づき得る。
【0177】
ポリアデニル化/終結
真核生物系において、ポリアデニル化シグナルは、本抗原結合タンパク質をコードするDNA/ポリヌクレオチドに作動可能に連結される。そのようなシグナルは、通常、オープンリーディングフレームの3’に配置される。哺乳動物系において、非限定的な例としては、成長ホルモン、伸長因子−1アルファおよびウイルス(例えば、SV40)遺伝子に由来するシグナル、またはレトロウイルスの末端反復配列が挙げられる。酵母系において、ポリアデニル化(polydenylation)/終結シグナルの非限定的な例としては、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)およびアルコールデヒドロゲナーゼ1(ADH)遺伝子に由来するものが挙げられる。原核生物系において、ポリアデニル化シグナルは、通常必要とされず、その代わりにより短くかつより明確なターミネーター配列を使用することが通例である。ポリアデニル化/終結配列の選択は、発現に使用される宿主細胞との好適な適合性に基づき得る。
【0178】
高収量のための他の方法/エレメント
上記に加えて、収量を増加させるために使用することができる他の特徴としては、クロマチンリモデリングエレメント、イントロンおよび宿主細胞特異的なコドンの改変が挙げられる。
【0179】
宿主細胞
抗原結合タンパク質をコードするクローニングベクターまたは発現ベクターに適した宿主細胞は、原核(prokaroytic)細胞、酵母細胞または高等真核細胞である。好適な原核細胞としては、真正細菌、例えば、腸内細菌科(例えば、Escherichia(例えば、E.coli(例えば、ATCC31,446;31,537;27,325))、Enterobacter、Erwinia、Klebsiella Proteus、Salmonella(例えば、Salmonella typhimurium)、Serratia、例えば、Serratia marcescansおよびShigella、ならびにBacilli(例えば、B.subtilisおよびB.licheniformis(DD266710を参照のこと))、Pseudomonas(例えば、P.aeruginosa)およびStreptomycesが挙げられる。酵母宿主細胞のうち、Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Kluyveromyces(例えば、ATCC16,045;12,424;24178;56,500)、yarrowia(EP402、226)、Pichia pastoris(EP183070、Peng et al.(2004)J.Biotechnol.108:185−192もまた参照のこと)、Candida、Trichoderma reesia(EP244234)、Penicillin、TolypocladiumおよびAspergillus宿主(例えば、A.nidulansおよびA.niger)もまた企図される。
【0180】
高等真核生物宿主細胞としては、哺乳動物細胞(例えば、COS−1(ATCC No.CRL1650)、COS−7(ATCC CRL1651)、ヒト胎児腎株293、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)(ATCC CRL.1632)、BHK570(ATCC NO:CRL10314)、293(ATCC NO.CRL1573)、チャイニーズハムスター卵巣細胞CHO(例えば、CHO−K1、ATCC NO:CCL61、DHFR−CHO細胞株(例えば、DG44)(Urlaub et al.(1986)Somatic Cell Mol.Genet.12:555−556を参照のこと)、特に、懸濁培養に適合されたCHO細胞株、マウスセルトリ細胞、サル腎臓細胞、アフリカミドリザル腎臓細胞(ATCC CRL−1587)、HELA細胞、イヌ腎臓細胞(ATCC CCL34)、ヒト肺細胞(ATCC CCL75)、HepG2およびミエローマまたはリンパ腫細胞、例えば、NS0(US5,807,715を参照のこと)、Sp2/0、Y0)が挙げられる。
【0181】
そのような宿主細胞は、抗原結合タンパク質の質、機能および/または収量を改変するようにさらに操作され得るか、または適合され得る。非限定的な例としては、特定の修飾(例えば、グリコシル化)酵素およびタンパク質フォールディングシャペロンの発現が挙げられる。
【0182】
細胞培養方法
抗原結合タンパク質をコードするベクターで形質転換された宿主細胞は、当業者に公知の任意の方法によって培養され得る。宿主細胞は、スピナーフラスコ、ローラーボトルまたは中空糸システムにおいて培養され得るが、大規模生成の場合、特に懸濁培養のために撹拌槽反応器が使用される。その撹拌タンカー(stirred tankers)は、例えば、スパージャー、バッフルまたは低剪断インペラーを用いた通気に適合され得る。バッフルカラムおよびエアリフト反応器の場合、空気または酸素バブルによる直接的な通気が使用され得る。宿主細胞が、無血清培養液中で培養される場合、その培地には、通気プロセスの結果としての細胞損傷の防止を助ける細胞保護剤(例えば、プルロニックF−68)が補充される。宿主細胞の特徴に応じて、足場依存性細胞株に対する増殖基質としてマイクロ担体を使用してもよいし、細胞を懸濁培養(これが典型的である)に適合してもよい。宿主細胞の培養、特に、無脊椎動物宿主細胞の培養では、種々の操作上の様式(例えば、流加培養法、反復バッチ処理(repeated batch processing)(Drapeau et al.(1994)Cytotechnology 15:103−109を参照のこと)、拡張バッチ(extended batch)プロセスまたは灌流培養)を利用してよい。組換え的に形質転換された哺乳動物宿主細胞は、ウシ胎仔血清(FCS)などの血清含有培地中で培養され得るが、そのような宿主細胞は、必要に応じてエネルギー源(例えば、グルコース、および組換えインスリンなどの合成成長因子)が補充された、合成無血清培地(例えば、Keen et al.(1995)Cytotechnology 17:153−163に開示されているもの)または商業的に入手可能な培地(例えば、ProCHO−CDMまたはUltraCHO
TM(Cambrex NJ,USA))中で培養され得る。宿主細胞の無血清培養は、それらの細胞が無血清条件において生育するように適合されていることが求められる場合がある。1つの適合アプローチは、そのような宿主細胞を血清含有培地中で培養し、その宿主細胞が無血清条件に適合できるようになるように、その培養液の80%を無血清培地と繰り返し交換することである(例えば、Scharfenberg et al.(1995)Animal Cell Technology:Developments towards the 21st century(Beuvery et al.eds,619−623,Kluwer Academic publishersを参照のこと)。
【0183】
培地中に分泌される抗原結合タンパク質は、意図された用途に適した精製の程度をもたらす種々の手法を用いて回収および精製され得る。例えば、ヒト患者を治療するための抗原結合タンパク質の使用では、通常、少なくとも95%の純度、より通常では、98%または99%以上の純度(粗培養液と比べて)が要求される。その培養液由来の細胞残屑は、通常、遠心分離に続く、例えば、精密濾過、限外濾過および/または深層濾過を用いた、上清の清澄化工程によって除去される。種々の他の手法(例えば、透析およびゲル電気泳動、ならびにクロマトグラフィー法(例えば、ヒドロキシアパタイト(HA)、アフィニティークロマトグラフィー(必要に応じて、ポリヒスチジンなどの親和性タグ化システムを含む)および/または疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC、US5,429,746を参照のこと))も利用可能である。様々な清澄化工程の後の抗体は、プロテインAまたはGアフィニティークロマトグラフィーを用いて捕捉することができる。さらなるクロマトグラフィー工程(例えば、イオン交換および/またはHAクロマトグラフィー、陰イオンまたは陽イオン交換、サイズ排除クロマトグラフィーおよび硫酸アンモニウム沈殿)を続けることができる。様々なウイルス除去工程(例えば、DV−20フィルターを用いた、例えば、ナノ濾過)も用いてもよい。これらの様々な工程の後、少なくとも75mg/ml以上、または100mg/ml以上の抗原結合タンパク質を含む精製された(例えば、モノクローナル)調製物が提供される。そのような調製物は、凝集型の抗原結合タンパク質を実質的に含まない。
【0184】
抗原結合フラグメントの発現のために、細菌系が使用され得る。そのようなフラグメントは、細胞内、周辺質内に局在化され得るか、または細胞外に分泌され得る。不溶性タンパク質が、抽出され、再度折り畳まれることにより、当業者に公知の方法に従って活性なタンパク質を形成することができる(Sanchez et al.(1999)J.Biotechnol.72:13−20;およびCupit et al.(1999)Lett Appl Microbiol 29:273−277を参照のこと)。
【0185】
アミド分解は、アミド官能基が除去される化学反応である。生化学では、その反応は、アミノ酸のアスパラギンおよびグルタミンのアミド含有側鎖を損傷するので、タンパク質の分解において重要である。アスパラギンは、イソアスパルテートとアスパルテートとの混合物に変換される。グルタミン残基のアミド分解は、かなり低比率でしか生じない。アミド分解反応は、タンパク質の有用な寿命を制限し得る要因の1つであると考えられており、治療用タンパク質の製造中に生じる最も一般的な翻訳後修飾の1つでもある。例えば、インビトロまたはインビボにおける生物学的活性の低下または喪失は、組換えヒトDNAseおよび組換え可溶性CD4について報告されているのに対し、他の組換えタンパク質は、影響されないとみられる。
【0186】
医薬組成物
本明細書中に記載されるような抗原結合タンパク質の精製された調製物は、本明細書中に記載されるヒトの疾患、障害および状態の治療において使用するために医薬組成物に組み込まれ得る。疾患、障害および状態という用語は、交換可能に使用される。上記医薬組成物は、アミロイド沈着物が組織に存在し、臨床上の疾病に至る構造的および機能的な損傷に関与する、任意の疾患の治療において使用することができる。SAPは、
インビボにおいてアミロイド沈着物のすべてに常に存在し、治療有効量の本明細書中に記載される抗原結合タンパク質を含む医薬組成物は、その組織からのアミロイド沈着物のクリアランスに応答する疾患の治療において使用することができる。
【0187】
上記医薬調製物は、薬学上許容される担体とともに抗原結合タンパク質を含み得る。その抗原結合タンパク質は、単独で投与されてもよいし、医薬組成物の一部として投与されてもよい。
【0188】
通常、そのような組成物は、公知であるような、かつ基準に合った薬務によって求められているような、薬学上許容される担体を含む(例えば、Remingtons Pharmaceutical Sciences,16th edition(1980)Mack Publishing Co.を参照のこと)。そのような担体の例としては、必要に応じて好適な緩衝剤で5〜8の範囲内のpHに緩衝される、滅菌された担体(例えば、食塩水、Ringer溶液またはデキストロース溶液)が挙げられる。
【0189】
医薬組成物は、注射または持続注入(例えば、静脈内、腹腔内、皮内、皮下、筋肉内または門脈内)によって投与され得る。そのような組成物は、好適には、目に見える粒子状物質を含まない。医薬組成物、具体的にはCPHPCを含む医薬組成物は、経口的にも投与され得る。
【0190】
医薬組成物は、1mg〜10gの抗原結合タンパク質、例えば、5mg〜1gの抗原結合タンパク質を含み得る。あるいは、その組成物は、5mg〜500mg、例えば、5mg〜50mgを含み得る。
【0191】
そのような医薬組成物を調製するための方法は、当業者に周知である。医薬組成物は、必要に応じて、使用するための指示書とともに、単位剤形として1mg〜10gの抗原結合タンパク質を含み得る。医薬組成物は、当業者に周知または明らかな方法に従った、投与前の再構成用に凍結乾燥(フリーズドライ)され得る。抗体が、IgG1アイソタイプを有する場合、銅のキレート剤(例えば、クエン酸塩(例えば、クエン酸ナトリウム)またはEDTAまたはヒスチジン)を医薬組成物に加えることにより、このアイソタイプの抗体の銅によって媒介される分解の程度を低下させてもよい(EP0612251を参照のこと)。医薬組成物は、アルギニン塩基などの可溶化剤、ポリソルベート80などの界面活性剤/抗凝集剤、および不活性ガス(例えば、バイアルのヘッドスペースの酸素を置き換える窒素)も含むことがある。
【0192】
本抗原結合タンパク質を投与するための有効量および治療レジメンは、通常、経験的に決定され、患者の年齢、体重および健康状態、ならびに治療される疾患または障害などの因子に依存し得る。そのような因子は、主治医の範囲内である。適切な用量を選択する際の指針は、例えば、Smith et al(1977)Antibodies in human diagnosis and therapy,Raven Press,New Yorkに見られることがある。
【0193】
被験体に投与される抗原結合タンパク質の投与量は、通常、1μg/kg〜150mg/kg、0.1mg/kg〜100mg/kg、0.5mg/kg〜50mg/kg、1〜25mg/kgまたは1〜10mg/kg被験体体重である。例えば、用量は、10mg/kg、30mg/kgまたは60mg/kgであり得る。本抗原結合タンパク質は、非経口的に、例えば、皮下に、静脈内にまたは筋肉内に投与され得る。
【0194】
SAP枯渇化合物は、その活性に応じて0.1mg/kg〜2mg/kgの用量で投与され得る。SAP枯渇化合物は、被験体の体重あたりの用量の比とは無関係に、固定された用量で投与され得る。SAP枯渇化合物は、1回以上の別々の、同時のまたは連続的な非経口の、100mg以下、50mg以下、25mg以下または10mg以下の用量で、投与され得る。
【0195】
所望であれば、有効な1日量の治療用組成物は、その日のうちに、必要に応じて単位剤形で、適切な間隔で別々に投与される2、3、4、5、6つまたはそれ以上の分割用量(sub−doses)で投与され得る。
【0196】
本抗原結合タンパク質は、単一の大用量で投与されてもよいし、より低用量で繰り返し投与されてもよい。
【0197】
1用量の投与は、2〜24時間(例えば、2〜12時間または2〜6時間)の時間にわたるゆっくりとした持続注入によるものであり得る。これにより、毒性の副作用が減少することがある。
【0198】
1用量の投与は、必要であれば1回以上繰り返され得る(例えば、1日に3回、1日に1回、2日に1回、1週間に1回、2週間に1回、1ヶ月に1回、3ヶ月おきに1回、6ヶ月おきに1回または12ヶ月おきに1回)。本抗原結合タンパク質は、維持療法によって、例えば、6ヶ月以上にわたって1週間に1回、投与され得る。本抗原結合タンパク質は、例えば3〜6ヶ月にわたる間欠療法、次いで、3〜6ヶ月間は投与せず、その後、再度、3〜6ヶ月にわたる抗原結合タンパク質の投与など、周期的に投与され得る。
【0199】
例えば、14または28日おきに1回、各投与日において複数の分割用量の形態で皮下に投与され得る。
【0200】
本抗原結合タンパク質は、治療を特定部位に対して標的にするような方法で被験体に投与され得る。例えば、抗原結合タンパク質は、組織内の限局性の局所アミロイド塊に局所的に注射されてもよいし、アミロイドが存在する器官への輸血用血液中に注入されてもよい。
【0201】
本抗原結合タンパク質は、本明細書中に記載される疾患を治療するための1つ以上の他の治療的に活性な薬剤、具体的にはSAP枯渇化合物と併用して使用されなければならない。SAP結合タンパク質の投与が完全かつ効果的に行われるために、循環からのSAPの効果的な枯渇は、SAP結合タンパク質の投与前に達成されなければならない。
【0202】
最初にSAP枯渇化合物が投与されて、ほぼすべての循環SAPが除去される。これにより、組織においてアミロイド沈着物と会合した相当量のSAPが残されるので、続いて抗SAP抗原結合タンパク質を投与することによって、アミロイド沈着物への局在化および特異的な結合がその迅速かつ広範な退縮を促進することが可能になる。好適には、その抗SAP抗原結合タンパク質は、SAP枯渇化合物による治療を開始してから1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20または25日以上後に投与され得る。
【0203】
上記の連続的な投与は、SAP枯渇化合物による2回以上の連続的治療の後の抗SAP抗原結合タンパク質による2回以上の連続的治療を含むことがある。
【0204】
上記の連続的な投与は、SAP枯渇化合物による1回の治療の後の抗SAP抗原結合タンパク質による1回の連続的治療、次いでそれを1回以上繰り返す治療を含み得る。
【0205】
上記の連続的/その後の用量は、最初の/その前の用量より多い量であってもよいし、最初の/その前の用量より少ない量であってもよい。
【0206】
最初の用量のSAP枯渇化合物タンパク質の投与の後に、1回以上の連続的な(例えば、その後の)用量のSAP枯渇化合物および/または抗SAP抗原結合タンパク質が投与され得、ここで、前記1回以上の連続的な用量は、最初の用量とほぼ同じであるかまたはそれより少ない量であり得る。
【0207】
循環SAPの最初の枯渇の後、さらなる用量のSAP枯渇化合物および第1の用量の抗SAP抗原結合タンパク質の投与に続いて、1回以上の連続的な(例えば、その後の)用量が投与され得、ここで、その後の用量の少なくとも1つは、最初の用量よりも多い量である。
【0208】
したがって、投与は、所定または通例の投与スケジュールを使用してもよく、それにより、用量投与の間に所定の指定期間がもたらされる。そのスケジュールは、予め定められている限り、同じまたは異なる長さの期間を包含してもよい。適切なスケジュールが、ある特定の日の投与を含むと前もって定められている限り、任意の特定の組み合わせが、そのスケジュールによって網羅されるだろう。
【0209】
医薬組成物は、他の医薬とともに(必要に応じて、使用するための指示書とともに)、抗原結合タンパク質のキットオブパーツを構成し得る。便宜のため、そのキットは、使用するための指示書とともに、所定量の試薬を備え得る。
【0210】
用語「個体」、「被験体」および「患者」は、本明細書中で交換可能に使用される。被験体は、霊長類(例えば、マーモセットまたはサル)であり得る。被験体は、通常、ヒトである。
【0211】
治療は、治療的、予防的または防止的であり得る。被験体は、治療の必要のある者であり得る。治療の必要のある者には、将来、特定の医学的疾患を発症し得る者に加えて、すでにその疾患に罹患している個体が含まれる場合がある。
【0212】
したがって、SAP枯渇化合物に続く本明細書中に記載されるSAP抗原結合タンパク質は、予防的または防止的な治療のために使用することができる。この場合、本明細書中に記載される連続的治療は、疾患の1つ以上の態様または症状の発生を予防するためまたは遅延させるために個体に施される。アミロイド沈着物は、臨床症状をもたらすのに十分な損傷を引き起こす前にある期間にわたって組織に存在し、蓄積すると知られているので、被験体は、無症候性でいることができるか、またはその疾患に対する遺伝的素因を有している可能性がある。そのような無症候性のアミロイド沈着は、組織生検材料の組織学的検査または非侵襲性のイメージング手技(放射標識されたSAPのシンチグラフィー、心エコー検査および心臓磁気共鳴画像法を含む)によって検出することができる。まず循環SAPを除去した後、予防的に有効な量の抗原結合タンパク質をそのような個体に投与する。予防的に有効な量は、本明細書中に記載される疾患の1つ以上の態様または症状の発生を予防するかまたは遅延させる量である。
【0213】
本明細書中に記載される抗原結合タンパク質は、治療方法においても使用され得る。用語「治療」は、ある疾患の少なくとも1つの態様または症状の軽減、減少または防止を包含する。例えば、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質を用いることにより、本明細書中に記載される疾患の1つ以上の態様または症状が回復または減少し得る。
【0214】
本明細書中に記載される抗原結合タンパク質は、治療的、予防的または防止的な治療のために有効な量で使用される。本明細書中に記載される抗原結合タンパク質の治療有効量は、疾患の1つ以上の態様または症状を回復または減少させるのに有効な量である。また、本明細書中に記載される抗原結合タンパク質を用いることによって、本明細書中に記載される疾患が治療、予防または治癒され得る。
【0215】
本明細書中に記載される抗原結合タンパク質は、被験体の健康状態に対して一般に有益な効果を有することができ、例えば、それは、被験体の予想寿命を延ばすことができる。
【0216】
本明細書中に記載される抗原結合タンパク質は、完治に作用する必要はないか、またはその疾患のすべての症状もしくは徴候を皆無にして、実現可能な治療的治療の構成要素となる必要はない。関連分野において認識されているように、治療薬として使用される薬物は、所与の疾患状態の重症度を低下させることがあるが、有用な治療薬と見なされるためにその疾患のすべての徴候を無くす必要はない。同様に、予防的に施される治療は、実現可能な予防薬の構成要素となるために、疾患の発生の防止において完全に有効である必要はない。単に疾患の影響を減少させること(例えば、その症状の数もしくは重症度を減少させることによって、または別の治療の有効性を高めることによって、または別の有益な効果をもたらすことによって)、またはその疾患が被験体において生じる可能性(例えば、その疾患の発生を遅延させることによって)もしくは悪化する可能性を低下させることで十分である。
【0217】
本明細書中に記載される抗原結合タンパク質は、アミロイド沈着を伴う疾患、すなわち、アミロイドーシスの治療または予防において使用されることがある。
【0218】
「アミロイドーシス」は、身体の様々な器官および組織におけるアミロイドの細胞外の蓄積を特徴とする任意の疾患である。
【0219】
用語「アミロイド」とは、特徴的な超微細構造的形態であるクロス−βシートコア構造、およびアルカリ性アルコール溶液からのコンゴーレッド色素に結合して、強い交差偏光において顕微鏡で観察するときに赤緑二色性を与えるという特徴的な組織化学的着色特性を有する原線維から構成される不溶性タンパク質繊維の組織における細胞外の沈着物のことを指す。約25の種々の無関係なタンパク質が、ヒト組織に沈着するアミロイド原線維を形成すると知られており、それらは、これらの典型的な特性のすべてを共有する。脳実質(brain substance)におけるアミロイド沈着物である大脳アミロイドは、それが常に限局的であり、微視的なサイズであり、通常はアミロイド斑と呼ばれるという点において、体内の他の箇所のアミロイド沈着物とはいくらか異なる。
【0220】
組織におけるアミロイドの沈着によって直接引き起こされる疾患であるアミロイドーシスは、局所性アミロイドーシス(沈着物が1つの解剖学的領域および/または1つの組織もしくは器官系に限局されるアミロイドーシス)と全身性アミロイドーシス(沈着物が、血管および結合組織を含む体内の任意の器官または組織に生じ得るアミロイドーシス)の両方を含む。アミロイドーシスの原因は、後天性または遺伝性であり得る。後天性アミロイドーシスは、先行する病状(それ自体が後天性または遺伝性であり得る)の合併症として生じる。したがって、アミロイドAタンパク質(AA)タイプとして知られる反応性全身性アミロイドーシスは、慢性活動性炎症性疾患(例えば、関節リウマチ、若年性関節リウマチ、クローン病、慢性感染症および慢性敗血症)および遺伝性周期性発熱症候群(例えば、家族性地中海熱、マックル・ウェルズ症候群およびCINCA症候群)の合併症である。透析関連アミロイドーシスは、末期腎不全の結果としてのβ2−ミクログロブリンの蓄積によって引き起こされる。モノクローナル免疫グロブリン軽鎖(AL)アミロイドーシスは、多発性骨髄腫またはそれでなければ良性M蛋白血症(benign monoclonal gammopathy)(意味未確定の単クローン性高ガンマグロブリン血症(monoclonal gammopathy of uncertain significance),MGUS)の合併症である。トランスサイレチンタイプの後天性アミロイドーシスは、いかなる先行する疾病もなしに発生することができ、単に老齢の合併症である。遺伝性アミロイドーシスは、アミロイド原線維を形成する性質の強い変異体タンパク質の発現をコードする様々なタンパク質に対する遺伝子の変異によって引き起こされ、それには、トランスサイレチン、アポリポタンパク質AI、ゲルゾリン、リゾチーム、シスタチンCおよびアミロイドβ−タンパク質によって引き起こされる疾患が含まれる。種々の形態のすべてのアミロイドーシスおよび関わるタンパク質の包括的な説明は、教科書および科学文献において入手可能である(Pepys,M.B.(2006)Annu.Rev.Med.,57:223−241;Pepys and Hawkins(2003)Amyloidosis.Oxford Textbook of Medicine,4
th Ed.,Vol.2,Oxford University Press,Oxford,pp.162−173;Pepys and Hawkins(2001)Amyloidosis.Samter’s Immunologic Diseases,Sixth Ed.,Vol.1,Lippincott Williams & Williams,Philadelphia,pp.401−412)。
【0221】
1つの器官または組織に限局された局所的なアミロイド沈着は、臨床的に無症状であることもできるし、重篤な組織損傷および疾患を引き起こすこともできる。例えば、血管のアミロイド沈着物がAβタンパク質から構成される脳アミロイドアンギオパチーは、他の任意の病態が存在しない場合では理解されない理由によって生じる通常は孤発性後天性の状態であり、かつ脳出血および脳卒中の主因である。いくつかの非常に重要かつ罹患頻度の高い疾患、特に、アルツハイマー病(AD)および2型糖尿病が存在し、それらにおいては、アミロイド沈着物が常に存在するが、これらのそれぞれの疾患を引き起こす正確な機序は未だ不明である。それにもかかわらず、アルツハイマー病における脳内および脳血管内、ならびに糖尿病における膵島内のアミロイドの局所的な沈着は、病態および疾患を悪化させる可能性が非常に高い。したがって、本発明は、本明細書中に開示されるような抗原結合タンパク質を用いた、アルツハイマー病と2型糖尿病の両方、実際には、組織内のアミロイド沈着物の存在を伴う任意の状態の治療を含む。
【0222】
伝達性海綿状脳症(プリオン病)の多くの形態は、脳内のアミロイド沈着物を伴っているので、本発明は、これらの状態のすべて(ヒトにおける変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、クロイツフェルト・ヤコブ病自体、クールーおよび他の様々な形態のヒトプリオン病、ならびにウシ海綿状脳症、ミュールジカおよびエルクの慢性消耗病、ならびにミンクの伝達性脳症も含む)に関する。
【0223】
有用な診断方法
本明細書中に記載される抗原結合タンパク質は、診断目的で、生物学的サンプル中のSAPをインビトロまたはインビボにおいて検出するために使用され得る。例えば、抗SAP抗原結合タンパク質は、血清中のSAP、またはアミロイド(例えば、アミロイド斑)と会合したSAPを検出するために使用することができる。そのアミロイドは、まず、ヒトまたは動物の身体から取り出され得る(例えば、生検)。ELISA、ウエスタンブロット、免疫組織化学または免疫沈降を含む従来のイムノアッセイが使用され得る。
【0224】
本抗原結合タンパク質は、1つ以上の抗原結合タンパク質、検出可能な標識、およびキットを使用するための指示書を備える診断キットとして提供されることがある。便宜上、そのキットは、使用するための指示書とともに、所定量の試薬を備えることがある。
本発明は以下の態様を含む。
[項目1]
SAPに特異的に結合し、かつ配列番号7の重鎖可変領域配列および配列番号9の軽鎖可変領域配列を含んでなる参照抗体とSAPへの結合について競合する、非マウス抗原結合タンパク質。
[項目2]
SAPに結合し、かつ配列番号3に示されるCDRH3またはCDRH3の機能的変異体を含んでなる、非マウス抗原結合タンパク質。
[項目3]
CDRH1(配列番号1)、CDRH2(配列番号12、CDRL1(配列番号4)、CDRL2(配列番号5)およびCDRL3(配列番号6)、またはCDRH1、CDRH2、CDRL1、CDRL2もしくはCDRL3の機能的変異体から選択される1つ以上またはすべてのCDRをさらに含んでなる、項目2に記載の抗原結合タンパク質。
[項目4]
前記CDRH3機能的変異体が、配列番号3の変異体であり、ここで、Ser102は、Tyr、His、Val、Ile、AspまたはGlyに対して置換されている、項目2または3に記載の抗原結合タンパク質。
[項目5]
(a)前記CDRH1機能的変異体が、配列番号1の変異体であり、ここで、Tyr32は、Ile、His、Phe、Thr、Asn、Cys、GluまたはAspに対して置換されており、Asn33は、Tyr、Ala、Trp、Gly、Thr、LeuまたはValに対して置換されており、Met34は、Ile、ValまたはTrpに対して置換されており、および/またはHis35は、Glu、Asn、Gln、Ser、TyrまたはThrに対して置換されており、
(b)前記CDRH2機能的変異体が、配列番号2の変異体であり、ここで、Tyr50は、Arg、Glu、Trp、Gly、Gln、Val、Leu、Asn、LysまたはAlaに対して置換されており、Ile51は、Leu、Val、Thr、SerまたはAsnに対して置換されており、Tyr52は、Asp、Leu、AsnまたはSerに対して置換されており、Gly53は、Ala、Tyr、Ser、Lys、ThrまたはAsnに対して置換されており、Asp54は、Asn、Ser、Thr、LysまたはGlyに対して置換されており、Asn56は、Tyr、Arg、Glu、Asp、Gly、Val、SerまたはAlaに対して置換されており、および/またはAsn58は、Lys、Thr、Ser、Asp、Arg、Gly、PheまたはTyrに対して置換されており、
(c)前記CDRL1機能的変異体は、配列番号4の変異体であり、ここで、Asn28は、Ser、Asp、ThrまたはGluに対して置換されており、Ile29は、Valに対して置換されており、Tyr30は、Asp、Leu、Val、Ile、Ser、Asn、Phe、His、GlyまたはThrに対して置換されており、Ser31は、Asn、Thr、LysまたはGlyに対して置換されており、Tyr32は、Phe、Asn、Ala、His、SerまたはArgに対して置換されており、Leu33は、Met、Val、IleまたはPheに対して置換されており、および/またはAla34は、Gly、Asn、Ser、His、ValまたはPheに対して置換されており、
(d)前記CDRL2機能的変異体は、配列番号5の変異体であり、ここで、Ala51は、Thr、GlyまたはValに対して置換されており、および/または
(e)前記CDRL3機能的変異体は、配列番号6の変異体であり、ここで、Gln89は、Ser、Gly、PheまたはLeuに対して置換されており、His90は、GlnまたはAsnに対して置換されており、His91は、Asn、Phe、Gly、Ser、Arg、Asp、Thr、TyrまたはValに対して置換されており、Tyr92は、Asn、Trp、Thr、Ser、Arg、Gln、His、AlaまたはAspに対して置換されており、Gly93は、Glu、Asn、His、Thr、Ser、ArgまたはAlaに対して置換されており、Ala94は、Asp、Tyr、Thr、Val、Leu、His、Asn、Ile、Trp、ProまたはSerに対して置換されており、および/またはLeu96は、Pro、Tyr、Arg、Ile、TrpまたはPheに対して置換されている、
項目3または4に記載の抗原結合タンパク質。
[項目6]
SAPに特異的に結合する抗原結合タンパク質であって、ここで、該抗原結合タンパク質は、配列番号7の可変ドメイン配列の対応するCDRH3またはCDRH3の機能的変異体を含んでなる、キメラ抗体またはヒト化抗体である、抗原結合タンパク質。
[項目7]
配列番号7の可変ドメイン配列のCDRH1もしくはCDRH2、または配列番号9の可変ドメイン配列のCDRL1、CDRL2、CDRL3、またはCDRH1、CDRH2、CDRL1、CDRL2もしくはCDRL3の機能的変異体から選択される対応するCDRの1つ以上またはすべてをさらに含んでなる、項目6に記載の抗原結合タンパク質。
[項目8]
SAPに特異的に結合し、かつ配列番号7のKabat残基95〜101を含んでなる結合単位H3または結合単位H3の機能的変異体を含んでなる、抗原結合タンパク質。
[項目9]
配列番号7のKabat残基31〜32を含んでなるH1、配列番号7のKabat残基52〜56を含んでなるH2、配列番号9のKabat残基30〜34を含んでなるL1、配列番号9のKabat残基50〜55を含んでなるL2、および配列番号9のKabat残基89〜96を含んでなるL3、または結合単位H1、H2、L1、L2もしくはL3の機能的変異体から選択される1つ以上またはすべての結合単位をさらに含んでなる、項目8に記載の抗原結合タンパク質。
[項目10]
前記抗原結合タンパク質が、重鎖および/または軽鎖を含んでなり、ここで:
(a)重鎖フレームワークが、以下の残基:2位にVal、IleもしくはGly、4位にLeuもしくはVal、20位にLeu、Ile、MetもしくはVal、22位にCys、24位にThr、Ala、Val、GlyもしくはSer、26位にGly、29位にIle、Phe、LeuもしくはSer、36位にTrp、47位にTrpもしくはTyr、48位にIle、Met、ValもしくはLeu、69位にIle、Leu、Phe、MetもしくはVal、71位にVal、AlaもしくはLeu、78位にAla、Leu、Val、TyrもしくはPhe、80位にLeuもしくはMet、90位にTyrもしくはPhe、92位にCys、および/または94位にArg、Lys、Gly、Ser、HisもしくはAsnを含んでなり、ならびに/あるいは
(b)軽鎖フレームワークが、以下の残基:2位にIle、LeuもしくはVal、3位にVal、Gln、LeuもしくはGlu、4位にMetもしくはLeu、23位にCys、35位にTrp、36位にTyr、LeuもしくはPhe、46位にLeu、ArgもしくはVal、49位にTyr、His、PheもしくはLys、71位にTyrもしくはPhe、88位にCys、および/または98位にPheを含んでなる、
項目1〜9のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目11]
前記重鎖フレームワークが、以下の残基:2位にVal、4位にLeu、20位にVal、22位にCys、24位にAla、26位にGly、29位にPhe、36位にTrp、47位にTrp、48位にMet、69位にIle、71位にAla、78位にAla、80位にMet、90位にTyr、92位にCysおよび94位にArgを含んでなり、および/または前記軽鎖フレームワークが、以下の残基:2位にIle、3位にGln、4位にMet、23位にCys、35位にTrp、36位にTyr、46位にLeu、49位にHis、71位にPhe、88位にCysおよび98位にPheを含んでなる、項目1〜10のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目12]
配列番号25に示されるようなフレームワーク領域に対して75%以上の配列同一性を有する重鎖可変ドメイン抗体フレームワーク、および/または配列番号32に示されるようなフレームワーク領域に対して75%以上の配列同一性を有する軽鎖可変ドメイン抗体フレームワークをさらに含んでなる、項目1〜11のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目13]
SAPに特異的に結合し、かつ配列番号27〜31から選択される重鎖可変領域、および/もしくは配列番号34〜36から選択される軽鎖可変領域、または75%以上の配列同一性を有する変異体重鎖可変領域もしくは軽鎖可変領域を含んでなる、抗原結合タンパク質。
[項目14]
SAPに特異的に結合し、かつ配列番号62の重鎖、および/もしくは配列番号64の軽鎖、または75%以上の配列同一性を有する変異体重鎖もしくは軽鎖を含んでなる、抗原結合タンパク質。
[項目15]
前記SAPが、インビボにおいてアミロイド原線維に結合されているヒトSAPである、項目1〜14のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目16]
前記抗原結合タンパク質が、ヒトSAPのA面に結合する、項目1〜15のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目17]
前記抗原結合タンパク質が、ヒト補体系を活性化する、項目1〜16のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目18]
キメラ、ヒト化またはヒトにおけるものである、項目1〜5、8、9または15〜17のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目19]
前記抗原結合タンパク質が、ヒトIgG1またはIgG3ヒト定常ドメインを含んでなる、項目1〜18のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質。
[項目20]
項目1〜19のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質をコードする核酸分子。
[項目21]
前記核酸配列が、配列番号54および/または配列番号59を含んでなる、項目20に記載の核酸分子。
[項目22]
前記核酸配列が、配列番号61および/または配列番号63を含んでなる、項目21に記載の核酸分子。
[項目23]
項目20〜22のいずれか一つに記載の核酸分子を含んでなる、発現ベクター。
[項目24]
項目23に記載の発現ベクターを含んでなる、組換え宿主細胞。
[項目25]
項目1〜19のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質を生成するための方法であって、項目24に記載の宿主細胞を培養する工程および前記抗原結合タンパク質を回収する工程を含んでなる、方法。
[項目26]
項目1〜19のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質と、薬学上許容される担体とを含んでなる、医薬組成物。
[項目27]
アミロイド沈着を伴う疾患に罹患している被験体を治療する方法であって、治療有効量の項目1〜19のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質または項目26に記載の組成物を前記被験体に投与する工程を含んでなる、方法。
[項目28]
被験体におけるアミロイド沈着を伴う疾患を予防する方法であって、予防的に有効な量の項目1〜19のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質または項目26に記載の組成物を前記被験体に投与する工程を含んでなる、方法。
[項目29]
前記抗原結合タンパク質が、SAP枯渇化合物とともに投与される、項目27または28に記載の方法。
[項目30]
アミロイド沈着を伴う疾患を治療または予防する際に使用するための、項目1〜19のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質であって、ここで、前記抗原結合タンパク質は、SAP枯渇化合物とともに投与される、抗原結合タンパク質。
[項目31]
アミロイド沈着を伴う疾患を治療または予防する際に使用するためのSAP枯渇化合物であって、ここで、前記SAP枯渇化合物は、項目1〜19のいずれか一つに記載の抗原結合タンパク質とともに投与される、SAP枯渇化合物。
[項目32]
前記抗原結合タンパク質およびSAP枯渇化合物の投与が連続的である、項目27、28もしくは29に記載の方法、項目29に記載の抗原結合タンパク質、または項目31に記載のSAP枯渇化合物。
[項目33]
前記SAP枯渇化合物が最初に投与される、項目32に記載の方法、抗原結合タンパク質またはSAP枯渇化合物。
[項目34]
前記抗原結合タンパク質が、被験体内を循環しているSAPの実質的にすべてが除去されたときに投与される、項目33に記載の方法、抗原結合タンパク質またはSAP枯渇化合物。
[項目35]
前記疾患が、全身性アミロイドーシス、局所性アミロイドーシス、アルツハイマー病、2型糖尿病、透析関連アミロイドーシス、モノクローナル免疫グロブリン鎖(AL)アミロイドーシスおよび脳アミロイドアンギオパチーからなる群から選択される、項目27、28、29、31、33もしくは34に記載の方法、項目30、32、33もしくは34に記載の抗原結合タンパク質、または項目31、32、33もしくは34に記載のSAPアンタゴニスト化合物。
[項目36]
前記SAP枯渇化合物が、D−プロリン誘導体またはグリセロール環状ピルビン酸塩誘導体である、項目27、28、29、32、33、34もしくは35に記載の方法、項目30、32、33、34もしくは35に記載の抗原結合タンパク質、または項目31、32、33、34もしくは35に記載のSAP枯渇化合物。
[項目37]
前記D−プロリン誘導体が、CPHPCである、請求項36に記載の方法、抗原結合タンパク質またはSAP枯渇化合物。
【実施例】
【0225】
実施例1−ハイブリドーマ可変ドメインの配列決定:SAP−EおよびSAP−K
SAP−EおよびSAP−Kは、抗SAPモノクローナルの2つの群に由来し、その各群が、
インビトロにおいてヒトSAPへの結合について別個に試験された。SAP−EおよびSAP−Kは、それらの群のうちSAPへの最も強い結合性を示し、種々のアッセイにおいて互いに比較された。
【0226】
第1の群の抗体には、精製ヒトSAP(下記に示される配列番号43)(ヒトSAPを精製するための方法の詳細は、Hawkins
et al.(1991)Clin.Exp.Immunol.84,308−316に示されている)での1回の従来の免疫および融合プロトコルにおいて作製された7種のハイブリドーマに由来する抗体が含まれ、それらをSAP−AからSAP−Gと命名する。これらの抗体のうちの2つであるSAP−EおよびSAP−Bは、IgG2aアイソタイプであり、その他のものはすべてIgG1アイソタイプである(実施例13、表11を参照のこと)。
【0227】
第2の群の抗体には、精製ヒトSAP(下記に示される配列番号43)(Hawkins
et al.(1991)Clin.Exp.Immunol.84,308−316)での免疫および通例の方法によってクローン化されるハイブリドーマを作製する従来の融合から標準的な手法によって得られた6種の異なるIgG2aモノクローナル(SAP−HからSAP−M)が含まれた。
【0228】
homo sapiens SAP成熟アミノ酸配列(配列番号43)
HTDLSGKVFVFPRESVTDHVNLITPLEKPLQNFTLCFRAYSDLSRAYSLFSYNTQGRDNELLVYKERVGEYSLYIGRHKVTSKVIEKFPAPVHICVSWESSSGIAEFWINGTPLVKKGLRQGYFVEAQPKIVLGQEQDSYGGKFDRSQSFVGEIGDLYMWDSVLPPENILSAYQGTPLPANILDWQALNYEIRGYVIIKPLVWV
比較する目的で、ヒトSAPと69.4%の同一性を有するマウスSAP配列を下記に示す。
【0229】
mus musculus SAP成熟タンパク質(配列番号44)
QTDLKRKVFVFPRESETDHVKLIPHLEKPLQNFTLCFRTYSDLSRSQSLFSYSVKGRDNELLIYKEKVGEYSLYIGQSKVTVRGMEEYLSPVHLCTTWESSSGIVEFWVNGKPWVKKSLQREYTVKAPPSIVLGQEQDNYGGGFQRSQSFVGEFSDLYMWDYVLTPQDILFVYRDSPVNPNILNWQALNYEINGYVVIRPRVW
全RNAを、Qiagen製のRNeasyキット(#74106)を用いておよそ10
6個の細胞のハイブリドーマ細胞ペレットから抽出した。AccessQuick RT−PCR System(A1702)を使用し、マウス免疫グロブリン遺伝子リーダー配列およびマウスIgG2a/
K定常領域に特異的な縮重プライマーを用いて可変重鎖領域および可変軽鎖領域のcDNAを生成した。精製されたRT−PCRフラグメントを、Invitrogen製のTAクローニングキット(K2000−01)を用いてクローニングした。配列アラインメント、およびKABAT(Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th Ed.,U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987))に列挙されている公知の免疫グロブリン可変配列とのアラインメントによって各ハイブリドーマに対するコンセンサス配列を得た。SAP−EおよびSAP−Kに対するコンセンサス配列を下記に示す。
【0230】
SAP−E配列
SAP−E CDRH1(配列番号1)
TYNMH
SAP−E CDRH2(配列番号2)
YIYPGDGNANYNQQFKG
SAP−E CDRH3(配列番号3)
GDFDYDGGYYFDS
SAP−E CDRL1(配列番号4)
RASENIYSYLA
SAP−E CDRL2(配列番号5)
NAKTLAE
SAP−E CDRL3(配列番号6)
QHHYGAPLT
CDRに下線を引いたSAP−E VHアミノ酸配列(配列番号7)
QASLQQSGTELVRSGASVKMSCKASGFTFA
TYNMHWIKQTPGQGLEWIG
YIYPGDGNANYNQQFKGKATLTADTSSNTAYMQISSLTSEDSAVYFCAR
GDFDYDGGYYFDSWGQGTTLTVSS
SAP−E VHDNA配列(配列番号8)
CAGGCTTCTCTACAGCAGTCTGGGACTGAGCTGGTGAGGTCTGGGGCCTCAGTGAAGATGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTTCACATTTGCCACTTACAATATGCACTGGATTAAGCAGACACCCGGACAGGGCCTGGAATGGATTGGGTATATTTATCCTGGAGATGGTAATGCTAACTACAATCAGCAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTGACTGCAGACACATCCTCCAACACAGCCTACATGCAGATCAGCAGCCTGACATCTGAAGACTCTGCGGTCTATTTCTGTGCAAGAGGGGACTTTGATTACGACGGAGGGTACTACTTTGACTCCTGGGGCCAGGGCACCACTCTCACAGTCTCCTCA
CDRに下線を引いたSAP−E VLアミノ酸配列(配列番号9)
DIQMTQSPASLSASVGETVTITC
RASENIYSYLAWYQQKQGRSPQLLVH
NAKTLAEGVPSRVSGSGSGTHFSLKINGLQPEDFGNYYC
QHHYGAPLTFGAGTKLELK
SAP−E VLDNA配列(配列番号10)
GACATCCAGATGACTCAGTCTCCAGCCTCCCTATCTGCATCTGTGGGAGAAACTGTCACCATCACATGTCGAGCAAGTGAGAATATTTACAGTTATTTAGCATGGTATCAGCAGAAACAGGGAAGATCCCCTCAGCTCCTGGTCCATAATGCAAAAACCTTAGCAGAAGGTGTGCCATCAAGGGTCAGTGGCAGTGGATCAGGCACACACTTTTCTCTGAAGATCAACGGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGGGAATTATTACTGTCAACATCATTATGGTGCTCCGCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAACTGAAA
SAP−K配列
SAP−K CDRH1(配列番号11)
SYWMH
SAP−K CDRH2(配列番号12)
MIHPNSVNTNYNEKFKS
SAP−K CDRH3(配列番号13)
RNDYYWYFDV
SAP−K CDRL1(配列番号14)
KASQNVNSNVA
SAP−K CDRL2(配列番号15)
SASYRYS
SAP−K CDRL3(配列番号16)
QQCNNYPFT
CDRに下線を引いたSAP−K VHアミノ酸配列(配列番号17)
QVQLQQPGAELIKPGASVKLSCKASGYTFT
SYWMHWVKQRPGQGLEWIG
MIHPNSVNTNYNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYYCAR
RNDYYWYFDVWGTGTTVTVSS
SAP−K VH DNA配列(配列番号18)
CAGGTCCAACTGCAGCAGCCTGGGGCTGAGCTGATAAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGTTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACTTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAAGCAGAGGCCTGGACAAGGCCTTGAGTGGATTGGAATGATTCATCCTAATAGTGTTAATACTAACTACAATGAGAAGTTCAAGAGTAAGGCCACACTGACTGTAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAACTCAACAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTACTGTGCAAGACGGAATGATTACTACTGGTACTTCGATGTCTGGGGCACAGGGACCACGGTCACCGTCTCCTCA
CDRに下線を引いたSAP−K VLアミノ酸配列(配列番号19)
DIVMTQSQKFMSTSVGDRVSVTC
KASQNVNSNVAWYQQKPGQSPKALIY
SASYRYSGVPDRFTGSGSGTDFTLTITNVQSEDLAEYFC
QQCNNYPFTFGSGTKLEIK
SAP−K VLDNA配列(配列番号20)
GACATTGTGATGACCCAGTCTCAAAAATTCATGTCCACATCAGTAGGAGACAGGGTCAGCGTCACCTGCAAGGCCAGTCAGAATGTGAATTCTAATGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGGCAATCTCCTAAAGCACTGATTTACTCGGCTTCCTACCGGTACAGTGGAGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCACCAATGTGCAGTCTGAAGACTTGGCAGAGTATTTCTGTCAGCAATGTAACAACTATCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAAA。
【0231】
実施例2:キメラ抗体の構築
SAP−EおよびSAP−Kについて、ヒトIgG1/κ野生型定常領域に移植された親マウス可変ドメインを含むキメラ抗体をPCRクローニングによって構築した。コンセンサス配列に基づいて、哺乳動物発現ベクターへのクローニングを容易にするために必要な制限酵素認識部位を組み込んで、マウス可変ドメインを増幅するプライマーを設計した。FR4(フレームワーク領域4(CDR3の後ろかつ第1定常ドメインの前のV−領域配列))に制限酵素認識部位を導入することによって、SAP−EにおけるV
Hアミノ酸配列を、配列番号7に示されるようなTTLTVSSからTLVTVSSに変更し、SAP−KにおけるV
Hアミノ酸配列を、配列番号17に示されるようなTTVTVSSからTLVTVSSに変更した。SAP−K可変軽鎖では、CDRL1に内部のEcoRI部位が存在するので、1塩基対を変更することによって(これによりアミノ酸配列は変化しなかった)、この望まれない内部のEcoRI部位を除去する突然変異誘発プライマーを設計した。
【0232】
SAP−Eキメラ抗体(cSAP−E)の完全長重鎖タンパク質配列および完全長軽鎖タンパク質配列を、それぞれ配列番号21および配列番号22に示す。SAP−Kキメラ抗体(cSAP−K)の完全長重鎖タンパク質配列および完全長軽鎖タンパク質配列を、それぞれ配列番号23および配列番号24に示す。
【0233】
SAP−E VHキメラヌクレオチド配列(配列番号45)
CAGGCTTCTCTACAGCAGTCTGGGACTGAGCTGGTGAGGTCTGGGGCCTCAGTGAAGATGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTTCACATTTGCCACTTACAATATGCACTGGATTAAGCAGACACCCGGACAGGGCCTGGAATGGATTGGGTATATTTATCCTGGAGATGGTAATGCTAACTACAATCAGCAGTTCAAGGGCAAGGCCACATTGACTGCAGACACATCCTCCAACACAGCCTACATGCAGATCAGCAGCCTGACATCTGAAGACTCTGCGGTCTATTTCTGTGCAAGAGGGGACTTTGATTACGACGGAGGGTACTACTTTGACTCCTGGGGCCAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGCGCCAGCACCAAGGGCCCCAGCGTGTTCCCCCTGGCCCCCAGCAGCAAGAGCACCAGCGGCGGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTGAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACCGTGTCCTGGAACAGCGGAGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCCGCCGTGCTGCAGAGCAGCGGCCTGTACAGCCTGAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTGAACCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGAGCTGTGACAAGACCCACACCTGCCCCCCCTGCCCTGCCCCCGAGCTGCTGGGAGGCCCCAGCGTGTTCCTGTTCCCCCCCAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCAGCAGAACCCCCGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGATGTGAGCCACGAGGACCCTGAGGTGAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCCAGGGAGGAGCAGTACAACAGCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCTGCCCCTATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCCAGAGAGCCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCTAGCAGAGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTGAAGGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCTGTGCTGGACAGCGATGGCAGCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAGAGCAGATGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCACTACACCCAGAAGAGCCTGAGCCTGTCCCCTGGCAAG
SAP−E VHキメラアミノ酸配列(配列番号21)
QASLQQSGTELVRSGASVKMSCKASGFTFATYNMHWIKQTPGQGLEWIGYIYPGDGNANYNQQFKGKATLTADTSSNTAYMQISSLTSEDSAVYFCARGDFDYDGGYYFDSWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SAP−E VLキメラヌクレオチド配列(配列番号46)
GACATCCAGATGACTCAGTCTCCAGCCTCCCTATCTGCATCTGTGGGAGAAACTGTCACCATCACATGTCGAGCAAGTGAGAATATTTACAGTTATTTAGCATGGTATCAGCAGAAACAGGGAAGATCCCCTCAGCTCCTGGTCCATAATGCAAAAACCTTAGCAGAAGGTGTGCCATCAAGGGTCAGTGGCAGTGGATCAGGCACACACTTTTCTCTGAAGATCAACGGCCTGCAGCCTGAAGATTTTGGGAATTATTACTGTCAACATCATTATGGTGCTCCGCTCACGTTCGGTGCTGGGACCAAGCTGGAACTGAAACGTACGGTGGCCGCCCCCAGCGTGTTCATCTTCCCCCCCAGCGATGAGCAGCTGAAGAGCGGCACCGCCAGCGTGGTGTGTCTGCTGAACAACTTCTACCCCCGGGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGAGCGGCAACAGCCAGGAGAGCGTGACCGAGCAGGACAGCAAGGACTCCACCTACAGCCTGAGCAGCACCCTGACCCTGAGCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGTGAGGTGACCCACCAGGGCCTGTCCAGCCCCGTGACCAAGAGCTTCAACCGGGGCGAGTGC
SAP−E VLキメラアミノ酸配列(配列番号22)
DIQMTQSPASLSASVGETVTITCRASENIYSYLAWYQQKQGRSPQLLVHNAKTLAEGVPSRVSGSGSGTHFSLKINGLQPEDFGNYYCQHHYGAPLTFGAGTKLELKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
SAP−K VHキメラヌクレオチド配列(配列番号47)
CAGGTCCAACTGCAGCAGCCTGGGGCTGAGCTGATAAAGCCTGGGGCTTCAGTGAAGTTGTCCTGCAAGGCTTCTGGCTACACTTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAAGCAGAGGCCTGGACAAGGCCTTGAGTGGATTGGAATGATTCATCCTAATAGTGTTAATACTAACTACAATGAGAAGTTCAAGAGTAAGGCCACACTGACTGTAGACAAATCCTCCAGCACAGCCTACATGCAACTCAACAGCCTGACATCTGAGGACTCTGCGGTCTATTACTGTGCAAGACGGAATGATTACTACTGGTACTTCGATGTCTGGGGCACAGGGACACTAGTGACCGTGTCCAGCGCCAGCACCAAGGGCCCCAGCGTGTTCCCCCTGGCCCCCAGCAGCAAGAGCACCAGCGGCGGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTGAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACCGTGTCCTGGAACAGCGGAGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCCGCCGTGCTGCAGAGCAGCGGCCTGTACAGCCTGAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTGAACCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGAGCTGTGACAAGACCCACACCTGCCCCCCCTGCCCTGCCCCCGAGCTGCTGGGAGGCCCCAGCGTGTTCCTGTTCCCCCCCAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCAGCAGAACCCCCGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGATGTGAGCCACGAGGACCCTGAGGTGAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCCAGGGAGGAGCAGTACAACAGCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCTGCCCCTATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCCAGAGAGCCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCTAGCAGAGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTGAAGGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCTGTGCTGGACAGCGATGGCAGCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAGAGCAGATGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCACTACACCCAGAAGAGCCTGAGCCTGTCCCCTGGCAAG
SAP−K VHキメラアミノ酸配列(配列番号23)
QVQLQQPGAELIKPGASVKLSCKASGYTFTSYWMHWVKQRPGQGLEWIGMIHPNSVNTNYNEKFKSKATLTVDKSSSTAYMQLNSLTSEDSAVYYCARRNDYYWYFDVWGTGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SAP−K VLキメラヌクレオチド配列(配列番号48)
GACATTGTGATGACCCAGTCTCAAAAATTCATGTCCACATCAGTAGGAGACAGGGTCAGCGTCACCTGCAAGGCCAGTCAGAATGTGAACTCTAATGTAGCCTGGTATCAACAGAAACCAGGGCAATCTCCTAAAGCACTGATTTACTCGGCTTCCTACCGGTACAGTGGAGTCCCTGATCGCTTCACAGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCACCAATGTGCAGTCTGAAGACTTGGCAGAGTATTTCTGTCAGCAATGTAACAACTATCCATTCACGTTCGGCTCGGGGACAAAGTTGGAAATAAAACGTACGGTGGCCGCCCCCAGCGTGTTCATCTTCCCCCCCAGCGATGAGCAGCTGAAGAGCGGCACCGCCAGCGTGGTGTGTCTGCTGAACAACTTCTACCCCCGGGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGAGCGGCAACAGCCAGGAGAGCGTGACCGAGCAGGACAGCAAGGACTCCACCTACAGCCTGAGCAGCACCCTGACCCTGAGCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGTGAGGTGACCCACCAGGGCCTGTCCAGCCCCGTGACCAAGAGCTTCAACCGGGGCGAGTGC
SAP−K VLキメラアミノ酸配列(配列番号24)
DIVMTQSQKFMSTSVGDRVSVTCKASQNVNSNVAWYQQKPGQSPKALIYSASYRYSGVPDRFTGSGSGTDFTLTITNVQSEDLAEYFCQQCNNYPFTFGSGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC。
【0234】
実施例3:ヒト化ストラテジー
マウス抗体由来のCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2およびCDRL3を好適なヒトフレームワーク配列に移植するプロセスによって、ヒト化抗体を作製した。
【0235】
SAP−Eのヒト化ストラテジー
SAP−E重鎖のヒト化
SAP−Eマウス可変重鎖配列に対しては、JH1ミニ遺伝子(Kabat:AEYFQHWGQGTLVTVSS(配列番号26))とともに、マウスSAP−E可変重鎖配列(配列番号7)と60%の同一性(CDRを含む)を有するヒト生殖系列アクセプターフレームワークを選択した(IGHV1−69,配列番号25)。JH1ミニ遺伝子残基の最初の6残基は、CDR3領域の範囲に含まれ、ドナー抗体由来の新しく入ったCDRで置き換えられた。
【0236】
配列比較および抗体機能に対して考えられる影響に基づいて、5つのヒト化変異体を作製した。構築物H0は、上で選択されたヒトアクセプターフレームワークにマウスCDR(Kabat定義を使用するときのもの)をそのまま移植したもの(straight graft)だった。構築物H1は、残基27および30に追加の復帰突然変異を有する。構築物H2およびH3は、H1に基づき、かつ残基2(H2)ならびに48および67(H3)に追加の復帰突然変異を有する。構築物H4は、H3に基づき、かつ残基69、73および91に追加の復帰突然変異を有する。表3を参照のこと。
【0237】
H0、H1、H2、H3およびH4のヒト化可変重鎖ドメインの配列を下記に示す(それぞれ配列番号27、配列番号28、配列番号29、配列番号30および配列番号31)。
【表3】
【0238】
SAP−E軽鎖のヒト化
SAP−Eマウス可変軽鎖配列に対しては、配列類似性に基づいて、J−領域カッパー2ミニ遺伝子(Kabat:YTFGQGTKLEIK,配列番号33))とともに、マウスSAP−E可変軽鎖配列(配列番号9)と68%の同一性(CDRを含む)を有するヒト生殖系列アクセプターフレームワークを選択した(IGKV1−39,配列番号32)。JK−2ミニ遺伝子残基の最初の2残基は、CDR3領域の範囲に含まれ、ドナー抗体由来の新しく入ったCDRで置き換えられた。
【0239】
配列比較および抗体機能に対して考えられる影響に基づいて、3つのヒト化変異体を作製した。構築物L0は、上で選択されたヒトアクセプターフレームワークにマウスCDR(Kabat定義を使用するときのもの)をそのまま移植したものだった。構築物L1は、残基49に復帰突然変異を有し、構築物L2は、48および49位に復帰突然変異を有する。表4を参照のこと。
【0240】
L0、L1およびL2のヒト化可変軽鎖ドメインの配列を下記に示す(それぞれ配列番号34、配列番号35および配列番号36)。
【表4】
【0241】
SAP−Kのヒト化ストラテジー
SAP−K重鎖のヒト化
SAP−Kマウス可変重鎖配列に対しては、JH1ミニ遺伝子(Kabat:AEYFQHWGQGTLVTVSS(配列番号26))とともに、マウスSAP−K可変重鎖配列(配列番号17)と65%の同一性(CDRを含む)を有するヒト生殖系列アクセプターフレームワークを選択した(IGHV1−69,配列番号25)。JH1ミニ遺伝子残基の最初の6残基は、CDR3領域の範囲に含まれ、ドナー抗体由来の新しく入ったCDRで置き換えられた。
【0242】
配列比較および抗体機能に対して考えられる影響に基づいて、4つのヒト化変異体を作製した。構築物H0は、上で選択されたヒトアクセプターフレームワークにマウスCDR(Kabat定義を使用するときのもの)をそのまま移植したものだった。構築物H1は、残基27および30に追加の復帰突然変異を有する。構築物H2は、H1に基づき、かつ残基48および67に追加の復帰突然変異を有する。構築物H3は、H2に基づき、かつ残基69および71に追加の復帰突然変異を有する。表5を参照のこと。
【0243】
H0、H1、H2およびH3のヒト化可変重鎖ドメインの配列を下記に示す(それぞれ配列番号37、配列番号38、配列番号39および配列番号40)。
【表5】
【0244】
SAP−K軽鎖のヒト化
SAP−Kマウス可変軽鎖配列に対しては、配列類似性に基づいて、J−領域カッパー2ミニ遺伝子(Kabat:YTFGQGTKLEIK,配列番号33)とともに、マウスSAP−K可変軽鎖配列(配列番号19)と63%の同一性(CDRを含む)を有するヒト生殖系列アクセプターフレームワークを選択した(IGKV1−39,配列番号32)。JK−2ミニ遺伝子残基の最初の2残基は、CDR3領域の範囲内に含まれ、ドナー抗体由来の新しく入ったCDRで置き換えられた。
【0245】
配列比較および抗体機能に対して考えられる影響に基づいて、2つのヒト化変異体を作製した。構築物L0は、上で選択されたヒトアクセプターフレームワークにマウスCDR(Kabat定義を使用するときのもの)をそのまま移植したものだった。構築物L1は、残基46に復帰突然変異を有する。
【0246】
L0およびL1のヒト化可変軽鎖ドメインの配列を下記に示す(それぞれ配列番号41および配列番号42)。
【表6】
【0247】
ヒト化抗体ベクターの構築
ヒト化可変領域DNA配列の配列最適化を行った。ヒト化された可変重鎖領域および可変軽鎖領域をコードするDNAフラグメントを、PCRベースのストラテジーおよび重複するオリゴヌクレオチドを用いて新規に構築した。そのPCR産物を、それぞれヒトガンマ1定常領域およびヒトカッパー定常領域を含む哺乳動物発現ベクターにクローニングした。これは、野生型Fc領域である。
【0248】
IGHV1−69ヒト可変重鎖生殖系列アクセプターヌクレオチド配列(配列番号49)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCAGCTATGCTATCAGCTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAGGGATCATCCCTATCTTTGGTACAGCAAACTACGCACAGAAGTTCCAGGGCAGAGTCACGATTACCGCGGACAAATCCACGAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGA
(IGHV1−69ヒト可変重鎖生殖系列アクセプターアミノ酸配列(配列番号25))
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYAISWVRQAPGQGLEWMGGIIPIFGTANYAQKFQGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCAR
IGKV1−39ヒト可変重鎖生殖系列アクセプターヌクレオチド配列(配列番号50)
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGGGCAAGTCAGAGCATTAGCAGCTATTTAAATTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATGCTGCATCCAGTTTGCAAAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACAGAGTTACAGTACCCCT
IGKV1−39ヒト可変重鎖生殖系列アクセプターアミノ酸配列(配列番号32)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASQSISSYLNWYQQKPGKAPKLLIYAASSLQSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQSYSTP
JH1ミニ遺伝子(配列番号26)
AEYFQHWGQGTLVTVSS
Jκ2ミニ遺伝子(配列番号33)
YTFGQGTKLEIK
コドン最適化されていないSAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H0ヌクレオチド配列(配列番号51)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCACTTACAATATGCACTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGATATATTTATCCTGGAGATGGTAATGCTAACTACAATCAGCAGTTCAAGGGCAGAGTCACGATTACCGCGGACAAATCCACGAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGAGGGGACTTTGATTACGACGGAGGGTACTACTTTGACTCCTGGGGCCAGGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
コドン最適化されていないSAP−Eヒト化軽鎖V領域変異体L0ヌクレオチド配列(配列番号52)
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCCGAGCAAGTGAGAATATTTACAGTTATTTAGCATGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATAATGCAAAAACCTTAGCAGAAGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAACATCATTATGGTGCTCCGCTCACGTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAA
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H0ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号53)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAGAAACCCGGCAGCAGCGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCTAGCGGGGGCACCTTCTCCACCTACAACATGCACTGGGTCAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATGGGCTATATCTACCCCGGCGACGGCAACGCCAACTACAACCAGCAGTTCAAGGGCAGGGTGACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGGCGACTTCGACTACGACGGCGGCTACTACTTCGACAGCTGGGGACAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H0アミノ酸配列(配列番号27)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSTYNMHWVRQAPGQGLEWMGYIYPGDGNANYNQQFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGDFDYDGGYYFDSWGQGTLVTVSS
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H1ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号54)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAGAAACCCGGCAGCAGCGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCTAGCGGGTTCACCTTCGCCACCTACAACATGCACTGGGTCAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATGGGCTATATCTACCCCGGCGACGGCAACGCCAACTACAACCAGCAGTTCAAGGGCAGGGTGACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGGCGACTTCGACTACGACGGCGGCTACTACTTCGACAGCTGGGGACAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H1アミノ酸配列(配列番号28)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFTFATYNMHWVRQAPGQGLEWMGYIYPGDGNANYNQQFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGDFDYDGGYYFDSWGQGTLVTVSS
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H2ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号55)
CAGGCGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAGAAACCCGGCAGCAGCGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCTAGCGGGTTCACCTTCGCCACCTACAACATGCACTGGGTCAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATGGGCTATATCTACCCCGGCGACGGCAACGCCAACTACAACCAGCAGTTCAAGGGCAGGGTGACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGGCGACTTCGACTACGACGGCGGCTACTACTTCGACAGCTGGGGACAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H2アミノ酸配列 配列番号29
QAQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFTFATYNMHWVRQAPGQGLEWMGYIYPGDGNANYNQQFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGDFDYDGGYYFDSWGQGTLVTVSS
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H3ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号56)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAGAAACCCGGCAGCAGCGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCTAGCGGGTTCACCTTCGCCACCTACAACATGCACTGGGTCAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATCGGCTATATCTACCCCGGCGACGGCAACGCCAACTACAACCAGCAGTTCAAGGGCAGGGCCACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGGCGACTTCGACTACGACGGCGGCTACTACTTCGACAGCTGGGGACAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H3アミノ酸配列(配列番号30)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFTFATYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPGDGNANYNQQFKGRATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGDFDYDGGYYFDSWGQGTLVTVSS
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H4ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号57)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAGAAACCCGGCAGCAGCGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCTAGCGGGTTCACCTTCGCCACCTACAACATGCACTGGGTCAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATCGGCTATATCTACCCCGGCGACGGCAACGCCAACTACAACCAGCAGTTCAAGGGCAGGGCCACCCTGACCGCCGACACCAGCACCAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTTCTGCGCCAGGGGCGACTTCGACTACGACGGCGGCTACTACTTCGACAGCTGGGGACAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Eヒト化重鎖V領域変異体H4アミノ酸配列(配列番号31)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFTFATYNMHWVRQAPGQGLEWIGYIYPGDGNANYNQQFKGRATLTADTSTSTAYMELSSLRSEDTAVYFCARGDFDYDGGYYFDSWGQGTLVTVSS
SAP−Eヒト化軽鎖V領域変異体L0ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号58)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCAGCTCACTGAGCGCCAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATTACCTGCAGGGCCTCCGAGAACATCTACAGCTACCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCTACAACGCCAAGACCCTCGCCGAGGGCGTCCCTAGCAGGTTCTCTGGAAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTATTACTGCCAGCACCACTACGGCGCCCCCCTGACCTTTGGCCAGGGCACCAAACTGGAGATCAAG
SAP−Eヒト化軽鎖V領域変異体L0アミノ酸配列 配列番号34
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSYLAWYQQKPGKAPKLLIYNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHHYGAPLTFGQGTKLEIK
SAP−Eヒト化軽鎖V領域変異体L1ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号59)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCAGCTCACTGAGCGCCAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATTACCTGCAGGGCCTCCGAGAACATCTACAGCTACCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCCACAACGCCAAGACCCTCGCCGAGGGCGTCCCTAGCAGGTTCTCTGGAAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTATTACTGCCAGCACCACTACGGCGCCCCCCTGACCTTTGGCCAGGGCACCAAACTGGAGATCAAG
SAP−Eヒト化軽鎖V領域変異体L1アミノ酸配列(配列番号35)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSYLAWYQQKPGKAPKLLIHNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHHYGAPLTFGQGTKLEIK
SAP−Eヒト化軽鎖V領域変異体L2ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号60)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCAGCTCACTGAGCGCCAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATTACCTGCAGGGCCTCCGAGAACATCTACAGCTACCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGGTGCACAACGCCAAGACCCTCGCCGAGGGCGTCCCTAGCAGGTTCTCTGGAAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTATTACTGCCAGCACCACTACGGCGCCCCCCTGACCTTTGGCCAGGGCACCAAACTGGAGATCAAG
SAP−Eヒト化軽鎖V領域変異体L2アミノ酸配列(配列番号36)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSYLAWYQQKPGKAPKLLVHNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHHYGAPLTFGQGTKLEIK
SAP−Eヒト化重鎖H1の完全な成熟ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号61)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAGGTGAAGAAACCCGGCAGCAGCGTGAAGGTGAGCTGCAAGGCTAGCGGGTTCACCTTCGCCACCTACAACATGCACTGGGTCAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATGGGCTATATCTACCCCGGCGACGGCAACGCCAACTACAACCAGCAGTTCAAGGGCAGGGTGACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTACATGGAACTGAGCAGCCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGGGCGACTTCGACTACGACGGCGGCTACTACTTCGACAGCTGGGGACAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGCGCCAGCACCAAGGGCCCCAGCGTGTTCCCCCTGGCCCCCAGCAGCAAGAGCACCAGCGGCGGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTGAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACCGTGTCCTGGAACAGCGGAGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCCGCCGTGCTGCAGAGCAGCGGCCTGTACAGCCTGAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTGAACCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGAGCTGTGACAAGACCCACACCTGCCCCCCCTGCCCTGCCCCCGAGCTGCTGGGAGGCCCCAGCGTGTTCCTGTTCCCCCCCAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCAGCAGAACCCCCGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGATGTGAGCCACGAGGACCCTGAGGTGAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCCAGGGAGGAGCAGTACAACAGCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCTGCCCCTATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCCAGAGAGCCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCTAGCAGAGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTGAAGGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCTGTGCTGGACAGCGATGGCAGCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAGAGCAGATGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCACTACACCCAGAAGAGCCTGAGCCTGTCCCCTGGCAAG
SAP−Eヒト化重鎖H1の完全な成熟アミノ酸配列(配列番号62)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGFTFATYNMHWVRQAPGQGLEWMGYIYPGDGNANYNQQFKGRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARGDFDYDGGYYFDSWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SAP−Eヒト化軽鎖L1の完全な成熟ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号63)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCAGCTCACTGAGCGCCAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATTACCTGCAGGGCCTCCGAGAACATCTACAGCTACCTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAGGCCCCCAAGCTGCTGATCCACAACGCCAAGACCCTCGCCGAGGGCGTCCCTAGCAGGTTCTCTGGAAGCGGCAGCGGCACCGACTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACCTATTACTGCCAGCACCACTACGGCGCCCCCCTGACCTTTGGCCAGGGCACCAAACTGGAGATCAAGCGTACGGTGGCCGCCCCCAGCGTGTTCATCTTCCCCCCCAGCGATGAGCAGCTGAAGAGCGGCACCGCCAGCGTGGTGTGTCTGCTGAACAACTTCTACCCCCGGGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGAGCGGCAACAGCCAGGAGAGCGTGACCGAGCAGGACAGCAAGGACTCCACCTACAGCCTGAGCAGCACCCTGACCCTGAGCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGTGAGGTGACCCACCAGGGCCTGTCCAGCCCCGTGACCAAGAGCTTCAACCGGGGCGAGTGC
SAP−Eヒト化軽鎖L1の完全な成熟アミノ酸配列(配列番号64)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCRASENIYSYLAWYQQKPGKAPKLLIHNAKTLAEGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQHHYGAPLTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
コドン最適化されていないSAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H0ヌクレオチド配列(配列番号65)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGTCTGGGGCTGAGGTGAAGAAGCCTGGGTCCTCGGTGAAGGTCTCCTGCAAGGCTTCTGGAGGCACCTTCAGCAGCTACTGGATGCACTGGGTGCGACAGGCCCCTGGACAAGGGCTTGAGTGGATGGGAATGATTCATCCTAATAGTGTTAATACTAACTACAATGAGAAGTTCAAGAGTAGAGTCACGATTACCGCGGACAAATCCACGAGCACAGCCTACATGGAGCTGAGCAGCCTGAGATCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGAGACGGAATGATTACTACTGGTACTTCGATGTCTGGGGCCAGGGCACCCTGGTCACCGTCTCCTCA
コドン最適化されていないSAP−Kヒト化軽鎖V領域変異体L0ヌクレオチド配列(配列番号66)
GACATCCAGATGACCCAGTCTCCATCCTCCCTGTCTGCATCTGTAGGAGACAGAGTCACCATCACTTGCAAGGCCAGTCAGAATGTGAACTCTAATGTAGCCTGGTATCAGCAGAAACCAGGGAAAGCCCCTAAGCTCCTGATCTATTCGGCTTCCTACCGGTACAGTGGGGTCCCATCAAGGTTCAGTGGCAGTGGATCTGGGACAGATTTCACTCTCACCATCAGCAGTCTGCAACCTGAAGATTTTGCAACTTACTACTGTCAGCAATGTAACAACTATCCATTCACGTTTGGCCAGGGGACCAAGCTGGAGATCAAA
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H0ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号67)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAAGTGAAGAAGCCCGGCAGCAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCGGAACCTTCAGCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATGGGCATGATCCACCCCAACAGCGTGAACACCAACTACAACGAGAAGTTCAAGAGCAGAGTGACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTATATGGAGCTGAGCTCTCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGAGGAACGACTACTACTGGTACTTCGACGTCTGGGGCCAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H0アミノ酸配列(配列番号37)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGGTFSSYWMHWVRQAPGQGLEWMGMIHPNSVNTNYNEKFKSRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRNDYYWYFDVWGQGTLVTVSS
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H1ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号68)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAAGTGAAGAAGCCCGGCAGCAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATGGGCATGATCCACCCCAACAGCGTGAACACCAACTACAACGAGAAGTTCAAGAGCAGAGTGACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTATATGGAGCTGAGCTCTCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGAGGAACGACTACTACTGGTACTTCGACGTCTGGGGCCAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H1アミノ酸配列(配列番号38)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWMGMIHPNSVNTNYNEKFKSRVTITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRNDYYWYFDVWGQGTLVTVSS
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H2ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号69)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAAGTGAAGAAGCCCGGCAGCAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATCGGCATGATCCACCCCAACAGCGTGAACACCAACTACAACGAGAAGTTCAAGAGCAGAGCCACCATCACCGCCGACAAGAGCACCAGCACCGCCTATATGGAGCTGAGCTCTCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGAGGAACGACTACTACTGGTACTTCGACGTCTGGGGCCAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H2アミノ酸配列(配列番号39)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWIGMIHPNSVNTNYNEKFKSRATITADKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRNDYYWYFDVWGQGTLVTVSS
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H3ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号70)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAAGTGAAGAAGCCCGGCAGCAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATCGGCATGATCCACCCCAACAGCGTGAACACCAACTACAACGAGAAGTTCAAGAGCAGAGCCACCCTGACCGTGGACAAGAGCACCAGCACCGCCTATATGGAGCTGAGCTCTCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGAGGAACGACTACTACTGGTACTTCGACGTCTGGGGCCAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGC
SAP−Kヒト化重鎖V領域変異体H3アミノ酸配列(配列番号40)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWIGMIHPNSVNTNYNEKFKSRATLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRNDYYWYFDVWGQGTLVTVSS
SAP−Kヒト化軽鎖V領域変異体L0ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)配列番号71)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCTCTTCACTGAGCGCTAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACCTGCAAGGCCAGCCAGAACGTGAACAGCAACGTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAAGCCCCCAAGCTCCTGATCTACAGCGCCAGCTACAGATATAGCGGCGTGCCTAGCAGGTTTAGCGGCAGCGGAAGCGGGACCGATTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACTTACTACTGCCAGCAGTGCAACAACTACCCCTTCACCTTCGGCCAGGGCACCAAGCTGGAGATCAAG
SAP−Kヒト化軽鎖V領域変異体L0アミノ酸配列(配列番号41)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVNSNVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQCNNYPFTFGQGTKLEIK
SAP−Kヒト化軽鎖V領域変異体L1ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号72)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCTCTTCACTGAGCGCTAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACCTGCAAGGCCAGCCAGAACGTGAACAGCAACGTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAAGCCCCCAAGGCCCTGATCTACAGCGCCAGCTACAGATATAGCGGCGTGCCTAGCAGGTTTAGCGGCAGCGGAAGCGGGACCGATTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACTTACTACTGCCAGCAGTGCAACAACTACCCCTTCACCTTCGGCCAGGGCACCAAGCTGGAGATCAAG
SAP−Kヒト化軽鎖V領域変異体L1アミノ酸配列(配列番号42)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVNSNVAWYQQKPGKAPKALIYSASYRYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQCNNYPFTFGQGTKLEIK
SAP−Kヒト化H3重鎖ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号75)
CAGGTGCAGCTGGTGCAGAGCGGCGCCGAAGTGAAGAAGCCCGGCAGCAGCGTGAAAGTGAGCTGCAAGGCCAGCGGCTACACCTTCACCAGCTACTGGATGCACTGGGTGAGGCAGGCACCCGGCCAGGGCCTGGAGTGGATCGGCATGATCCACCCCAACAGCGTGAACACCAACTACAACGAGAAGTTCAAGAGCAGAGCCACCCTGACCGTGGACAAGAGCACCAGCACCGCCTATATGGAGCTGAGCTCTCTGAGGAGCGAGGATACCGCCGTGTACTACTGCGCCAGGAGGAACGACTACTACTGGTACTTCGACGTCTGGGGCCAGGGCACACTAGTGACCGTGTCCAGCGCCAGCACCAAGGGCCCCAGCGTGTTCCCCCTGGCCCCCAGCAGCAAGAGCACCAGCGGCGGCACAGCCGCCCTGGGCTGCCTGGTGAAGGACTACTTCCCCGAACCGGTGACCGTGTCCTGGAACAGCGGAGCCCTGACCAGCGGCGTGCACACCTTCCCCGCCGTGCTGCAGAGCAGCGGCCTGTACAGCCTGAGCAGCGTGGTGACCGTGCCCAGCAGCAGCCTGGGCACCCAGACCTACATCTGTAACGTGAACCACAAGCCCAGCAACACCAAGGTGGACAAGAAGGTGGAGCCCAAGAGCTGTGACAAGACCCACACCTGCCCCCCCTGCCCTGCCCCCGAGCTGCTGGGAGGCCCCAGCGTGTTCCTGTTCCCCCCCAAGCCTAAGGACACCCTGATGATCAGCAGAACCCCCGAGGTGACCTGTGTGGTGGTGGATGTGAGCCACGAGGACCCTGAGGTGAAGTTCAACTGGTACGTGGACGGCGTGGAGGTGCACAATGCCAAGACCAAGCCCAGGGAGGAGCAGTACAACAGCACCTACCGGGTGGTGTCCGTGCTGACCGTGCTGCACCAGGATTGGCTGAACGGCAAGGAGTACAAGTGTAAGGTGTCCAACAAGGCCCTGCCTGCCCCTATCGAGAAAACCATCAGCAAGGCCAAGGGCCAGCCCAGAGAGCCCCAGGTGTACACCCTGCCCCCTAGCAGAGATGAGCTGACCAAGAACCAGGTGTCCCTGACCTGCCTGGTGAAGGGCTTCTACCCCAGCGACATCGCCGTGGAGTGGGAGAGCAACGGCCAGCCCGAGAACAACTACAAGACCACCCCCCCTGTGCTGGACAGCGATGGCAGCTTCTTCCTGTACAGCAAGCTGACCGTGGACAAGAGCAGATGGCAGCAGGGCAACGTGTTCAGCTGCTCCGTGATGCACGAGGCCCTGCACAATCACTACACCCAGAAGAGCCTGAGCCTGTCCCCTGGCAAG
SAP−Kヒト化H3重鎖アミノ酸配列(配列番号76)
QVQLVQSGAEVKKPGSSVKVSCKASGYTFTSYWMHWVRQAPGQGLEWIGMIHPNSVNTNYNEKFKSRATLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCARRNDYYWYFDVWGQGTLVTVSSASTKGPSVFPLAPSSKSTSGGTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSSLGTQTYICNVNHKPSNTKVDKKVEPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
SAP−Kヒト化L0軽鎖ヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号77)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCTCTTCACTGAGCGCTAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACCTGCAAGGCCAGCCAGAACGTGAACAGCAACGTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAAGCCCCCAAGCTCCTGATCTACAGCGCCAGCTACAGATATAGCGGCGTGCCTAGCAGGTTTAGCGGCAGCGGAAGCGGGACCGATTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACTTACTACTGCCAGCAGTGCAACAACTACCCCTTCACCTTCGGCCAGGGCACCAAGCTGGAGATCAAGCGTACGGTGGCCGCCCCCAGCGTGTTCATCTTCCCCCCCAGCGATGAGCAGCTGAAGAGCGGCACCGCCAGCGTGGTGTGTCTGCTGAACAACTTCTACCCCCGGGAGGCCAAGGTGCAGTGGAAGGTGGACAATGCCCTGCAGAGCGGCAACAGCCAGGAGAGCGTGACCGAGCAGGACAGCAAGGACTCCACCTACAGCCTGAGCAGCACCCTGACCCTGAGCAAGGCCGACTACGAGAAGCACAAGGTGTACGCCTGTGAGGTGACCCACCAGGGCCTGTCCAGCCCCGTGACCAAGAGCTTCAACCGGGGCGAGTGC
SAP−Kヒト化L0軽鎖アミノ酸配列(配列番号78)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVNSNVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQCNNYPFTFGQGTKLEIKRTVAAPSVFIFPPSDEQLKSGTASVVCLLNNFYPREAKVQWKVDNALQSGNSQESVTEQDSKDSTYSLSSTLTLSKADYEKHKVYACEVTHQGLSSPVTKSFNRGEC
免疫グロブリン鎖に対するリーダー配列(配列番号79)
MGWSCIILFLVATATGVHS。
【0249】
実施例4:−抗体の発現
組換え抗体の発現
キメラ抗体またはヒト化抗体の重鎖および軽鎖をそれぞれコードする発現プラスミドを、Fectin293を使用した脂質トランスフェクションによってHEK2936E細胞に一過性に同時トランスフェクトした。細胞を、10%プルロニックF68および50mg/mlジェネテシンを含むFreestyle発現培地293中で37度C、5%CO2で72〜120時間生育し、上清を遠心分離によって回収した。いくつかの場合では、上清材料を結合アッセイにおける被験物質として使用した。他の場合では、上清材料を無菌濾過し、Protein A MAbSelect SuREカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーに続くPBSへの透析によって抗体を回収した。
【0250】
ハイブリドーマの抗体発現
ハイブリドーマ細胞を、4mM glutamaxおよび10%低IgG FCSが補充されたEx620培地の入った振盪フラスコ内で生育した。その細胞を継代し、無血清培地中で十分生育するまで血清を除去した。次いで、その細胞を10Lのwavebag用の種として使用した。その細胞を、生存率が30%に低下するまで、そのwavebag内で22回の振盪/分、37度C、5%CO2@0.1L/分で生育した。培養上清を無菌濾過によって回収した。組換えProtein Aを使用したアフィニティークロマトグラフィーに続くPBSへの透析によって、抗体を回収した。
【0251】
実施例5〜7:ハイブリドーマおよび/またはキメラmAbおよび/またはヒト化Mabの間の比較データ
実施例5:ヒトSAP結合ELISAにおけるSAP−KハイブリドーマとSAP−Eハイブリドーマとの比較
1μg/mLまたは5μg/mLのヒトSAPを、ELISAプレート上に直接固定化し、1%BSA/TBS+0.05%TWEEN20でブロッキングした。精製された材料からの抗SAP抗体を、そのプレートの端から端へ漸増させた。ウマ−ラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合体化ウサギ抗マウスIgG抗体(Dako,P0260)で処理することによって、結合した抗体を検出した。O−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)ペルオキシダーゼ基質(Sigma,P9187)を用いて、ELISAを発色させた。
【0252】
図1は、1μg/mLのコーティング濃度のヒトSAPにおけるマウス抗体SAP−EおよびSAP−Kに対する結合曲線を示している。
【0253】
図2は、5μg/mLのコーティング濃度のヒトSAPにおけるマウス抗体SAP−EおよびSAP−Kに対する結合曲線を示している。
【0254】
5μg/mLのコーティング濃度では、SAP−KおよびSAP−Eは、固定化されたヒトSAPに対して類似の結合性を示したのに対し、1μg/mLのより低い密度のコーティングでは、SAP−Kが、SAP−Eよりも高い結合性を示した。この形式を用いたその後のヒトSAP結合ELISAのすべてにおいて、それら2つの抗体の結合特性を区別するために、低密度の1μg/mLのコーティング濃度を使用した。
【0255】
実施例6:ヒトSAP結合ELISAにおけるSAP−Kキメラ/ヒト化mAbとSAP−Eキメラ/ヒト化mAbとの比較
1μg/mLのヒトSAPを、ELISAプレート上に直接固定化し、1%BSA/TBS+0.05%TWEEN20でブロッキングした。試験上清または精製された材料からの抗SAP抗体を、そのプレートの端から端へ漸増させた。ヤギ抗ヒトカッパー軽鎖ペルオキシダーゼ結合体(Sigma,A7164)で処理することによって、結合した抗体を検出した。O−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)ペルオキシダーゼ基質(Sigma,P9187)を用いて、ELISAを発色させた。
【0256】
図3は、キメラ抗体cSAP−EおよびcSAP−Kに対する結合曲線を示している。それらのキメラ抗体に対する曲線のプロファイルは、相当するハイブリドーマのプロファイルと同じである。
【0257】
図4は、SAP−Kキメラと比較されたSAP−K H0L0、SAP−K H1L0、SAP−K H2L0およびSAP−K H3L0、ならびにSAP−Eキメラと比較されたSAP−E H1L1に対する結合曲線を示している。無関係なヒトIgG1カッパー抗体もまた、ネガティブコントロールとして試験した。このデータは、SAP−K抗体をヒト化することによって、ヒトSAPへの結合活性が親SAP−Kキメラと比べておよそ2倍失われたのに対し、ヒト化SAP−E抗体は、親SAP−Eキメラに匹敵する結合活性を保持したことを示している。
【0258】
実施例7−競合ELISA
ELISAプレートを、1μg/mL(SAP−Kキメラとの競合の場合)または5μg/mL(SAP−Eキメラとの競合の場合)のヒトSAPでコーティングし、1%BSA/PBSでブロッキングした。一定濃度のキメラ抗SAPmAbを、段階希釈された(1:1)量のマウス抗SAPmAbと混合した。プレートを洗浄し、固定化されたヒトSAPに結合したキメラ抗体の量を、ヤギ抗ヒトカッパー軽鎖ペルオキシダーゼ結合体(Sigma,A7164)を用いて検出した。O−フェニレンジアミン二塩酸塩(OPD)ペルオキシダーゼ基質(Sigma,P9187)を用いて、ELISAを発色させた。
【0259】
図5は、SAP−Eキメラとの競合ELISAにおける、精製SAP−Kマウスモノクローナル抗体および精製SAP−Eマウスモノクローナル抗体を示している。
【0260】
図6は、SAP−Kキメラとの競合ELISAにおける精製SAP−Kマウスモノクローナル抗体および精製SAP−Eマウスモノクローナル抗体を示している。
【0261】
図5と
図6の両方において、SAP−E抗体とSAP−K抗体との間に競合は観察されないことから、それらの2つの抗体が、ヒトSAP分子上の異なるエピトープに結合することが示される。
【0262】
実施例8:結合動態の測定
ヒト化抗SAP抗体変異体と精製ヒトSAPおよび精製カニクイザル(cynomologus monkey)SAPとの結合のBiacore解析
製造者の指示書に従って、ヒトおよびカニクイザルのSAPを第一級アミンカップリングによってBiacore C1チップ上に固定化した。培養上清中に含まれるヒト化抗SAP抗体および512nMの精製キメラ抗体を、ヒトSAP表面とカニクイザルSAP表面の両方の上を通過させ、結合センサーグラム(binding sensograms)を得た。すべてのランを、ヒト表面上およびカニクイザルSAP表面上への、精製サンプルに対しては緩衝液の注入、または上清サンプルに対しては培地で2回較正(double referenced)した。HBS−EP緩衝液を用いて25℃で解析を行った。3M MgCl2の存在下で表面の再生を行ったが、その再生は、抗体がその後のサイクルにおいてヒトSAPに再結合する能力に影響しなかった。BiacoreT100評価ソフトウェア内の1対1解離モデルを用いて、データを解析した。
【0263】
表6aおよび6bに生成されたデータは、それぞれヒト化SAP−E抗体上清およびヒト化SAP−K抗体上清の解離速度(off−rates)(kd)を示している。これらの値は、単一の曲線に基づき、ヒトSAPへの結合について種々の構築物をランク付けする目的で使用された。ヒト化SAP−E抗体は、ヒトSAPへの結合について、ヒト化SAP−K抗体よりも優れた解離速度を示した。いくつかのSAP−Kヒト化抗体変異体は、カニクイザルSAPへの結合を示した(注意:SAP−KキメラはカニクイザルSAPに結合した)のに対し、ヒト化SAP−E抗体変異体は、カニクイザルSAPに結合しなかった(注意:同様にSAP−Eキメラはカニクイザル(cynomologous monkey)SAPに結合しなかった)。そのまま移植されたヒト化重鎖(H0)もしくはそのまま移植されたヒト化軽鎖(L0)またはその両方の組み合わせを含むヒト化SAP−E変異体は、最も成績の悪い解離速度を示した。SAP−Eヒト化L1軽鎖は、最も良い軽鎖変異体であり、そのL1とH1重鎖変異体との組み合わせによって、復帰突然変異の数を最小限に維持しつつ、許容可能な解離速度を有するヒト化抗体がもたらされた。ヒト化SAP−K変異体の解離速度のランク付けにより、そのまま移植されたL0が最も優れたヒト化軽鎖変異体であり、そのまま移植されたH0が最も成績の悪いヒト化重鎖変異体であることが示された。
【表7】
【表8】
【0264】
固相支持体上に直接固定化された精製ヒトSAPへの抗SAP抗体の結合のBiacore解析
製造者の指示書に従って、ヒトSAPを第一級アミンカップリングによってBiacoreCM3チップ上に固定化した。抗SAP抗体を、512、128、32、8、2、0.5nMでこの表面の上に通過させ、結合センサーグラムを得た。すべてのランを、ヒトSAP表面上への、緩衝液の注入によって2回較正した。HBS−EP緩衝液を用いて25℃で解析を行った。数分間にわたってその表面上に緩衝液を流すことによって表面の再生を行ったが、その再生は、ヒトSAPがその後のサイクルにおいて抗体に再結合する能力に影響しなかった。BiacoreT100評価ソフトウェアに固有の二価のアナライトモデルを用い、128〜0.5nMのランのデータを解析した。
【0265】
生成され、表7に編集されたデータは、構築物間の比較用であり、このアッセイではSAP−K抗体がより優れた会合速度を有し、SAP−E抗体がより優れた解離速度を示すことを示している。さらに、ヒト化によってSAP−E抗体の結合動態が変化しなかったのに対し、SAP−Kについては、ヒト化の後に会合速度および解離速度の低下が観察された。
【表9】
【0266】
固定化されたO−ホスホエタノールアミン上に捕捉された精製ヒトSAPへの抗SAP抗体の結合のBiacore解析
製造者の指示書に従って、O−ホスホエタノールアミンを第一級アミンカップリングによってBiacore CM5チップ上に固定化した。次いで、
インビボにおいてアミロイド原線維に結合したSAP分子の正確な配向を
インビトロのBiacore系において再現するために、ヒトSAPを塩化カルシウムの存在下でその表面上に捕捉した。次いで、抗SAP抗体を256、64、16、4、1nMでこの表面の上に通過させ、結合センサーグラムを得た。ランニング緩衝液として4%BSA、10mM Tris、140mM NaCl、2mM CaCl
2、0.05%界面活性物質P20、0.02%NaN
3,pH8.0を用いて25℃で解析を行った。結合したヒトSAPを除去するが、その後の固定化されたホスホエタノールアミンへのSAPの結合に有意に影響しない、Tris−EDTA(10mM Tris、140mM NaCl、10mM EDTA,pH8.0)の2回のパルスを用いて、再生を行った。生成されたデータを、ヒトSAP表面上への緩衝液の注入によって2回較正し、BiacoreT100評価ソフトウェアにおける二価のアナライトモデルを用いて解析した。
【0267】
表8に示されるような生成されたデータは、単に構築物間の比較用と意図されたものである。それらは、そのアッセイ形式における固有のアビディティー作用によって結合が改変された可能性に起因して、正確な動態学的値を構成していない。アビディティーは、抗体の解離速度に影響した可能性が高く、それにより、KD値がより低く算出された。さらに、すべてのSAP−E抗体に対して、得られた解離速度(kd)が、Biacore測定範囲の限度外である。それにもかかわらず、それらの結果は、本発明の治療標的である
インビボにおけるアミロイド沈着物におけるような、固相リガンドとSAPとの相互作用によって固定化されたヒトSAPへの抗SAP抗体の強い結合を示唆する。
【表10】
【0268】
実施例9:SAP−K L0ヒト化軽鎖の91位のアミノ酸スキャン
部位特異的飽和突然変異誘発を用い、91位においてNNKをコードする突然変異誘発プライマーを使用することによって(ここで、Nは、アデノシンまたはシチジンまたはグアノシンまたはチミジンをコードし、Kは、グアノシン(guanisine)またはチミジンをコードする)、単一の反応において91位のシステイン残基(Kabatナンバリング)が潜在的に他の19種のアミノ酸のすべてで置換された変異体のパネルを作製した。作製された変異体の抗体上清に対して行われたBiacore解離速度のランク付けから、HEK2936E細胞におけるスケールアップおよび精製のために4つを選択した。実施例7に詳述されたようなO−ホスホエタノールアミン法を用いたBiacore動態解析は、91位にアラニンを有する変異体(配列番号43)が、野生型と比べて改善された親和性を有することを示した;それぞれ0.436nMおよび36.8nMというKD値が測定された。注意:すべての変異体が、表7に示される結果をもたらすために使用された同じ実験において試験された。
【0269】
他の変異体、例えば、グリシン、セリンおよびバリンも、H3L0と比べて結合性を改善したが、アラニンほどではなかった。さらに、軽鎖がH1と対にされたとき、これらの4つの変異体がL0よりも良好な結合特性を有したという事実もまた、結合ELISAおよびBiacore解離速度ランク付け実験において観察された。
【0270】
SAP−Kヒト化軽鎖V領域変異体L0 91Aヌクレオチド配列(コドン最適化された配列)(配列番号73)
GACATCCAGATGACCCAGAGCCCCTCTTCACTGAGCGCTAGCGTGGGCGACAGGGTGACCATCACCTGCAAGGCCAGCCAGAACGTGAACAGCAACGTGGCCTGGTACCAGCAGAAGCCCGGCAAAGCCCCCAAGCTCCTGATCTACAGCGCCAGCTACAGATATAGCGGCGTGCCTAGCAGGTTTAGCGGCAGCGGAAGCGGGACCGATTTCACCCTGACCATCAGCAGCCTGCAGCCCGAGGACTTCGCCACTTACTACTGCCAGCAGGCGAACAACTACCCCTTCACCTTCGGCCAGGGCACCAAGCTGGAGATCAAG
SAP−Kヒト化軽鎖V領域変異体L0 91Aアミノ酸配列(配列番号74)
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASQNVNSNVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRYSGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCQQANNYPFTFGQGTKLEIK
実施例10:抗SAP抗体によるアミロイドクリアランスの補体依存性
補体欠損のマウスと補体が十分な正常動物とにおける治療の効率を比較することによって、抗SAP抗体によるアミロイドクリアランスにおける補体の役割を調べた。C1qに対する遺伝子の標的化欠失は、C1qと抗体抗原複合体との結合によって惹起される補体古典経路の活性化を阻止するが、走化性およびオプソニン化に関与する中心的な機能工程であり、補体の主要な生物学的機能であるC3の活性化はなおも、副経路およびレクチン経路を介して、ならびに非補体セリンプロテイナーゼによる直接的なC3の切断によって、進むことができる。C3に対する遺伝子の標的化欠失は、これらの機能を完全に無くす。
【0271】
AAアミロイドーシスの誘導
補体欠損マウスの2つの群:C3ノックアウト(n=14)およびC1qノックアウト(n=12)ならびに15匹の野生型マウスにおいて、AAアミロイドーシスを誘導し、確認した。すべてのマウスが、純系のC57BL/6だった。アミロイド原線維を含むアミロイド性組織の抽出物である単一用量のアミロイド増強因子(Baltz et al,(1986)Plenum Press,New York,pp.115−121)を静脈内注射によって各マウスに投与し、その4日後に、0.1M NaHCO
3中の溶液としての10%w/vカゼインを12日間にわたる連日の10回の皮下注射によって投与した(Botto et al,(1997)
Nature Med.,3:855−859)。カゼインは、持続的な急性炎症、および血清アミロイドAタンパク質(SAA)産生の持続性の増加を誘発し、それにより、すべての動物においてAAアミロイド沈着をもたらす。最後のカゼイン注射の7日後に、すべてのマウスの飲料水にKIを導入し、3日後に、標準的な用量の
125I標識ヒトSAP(Hawkins et al,(1990)
J.Clin.Invest.,86:1862−1 869およびHawkins et al,(1988)
J.Exp.Med.,167:903−913)を各マウスに静脈内注射した。すべてのマウスにおいて、トレーサー注射の24時間後および48時間後に全身放射能計測を行うことにより、全身のアミロイド負荷の正確な指標である放射能の保有を測定した。
125I−SAPトレーサー注射の10日後に、マウス1匹あたり10mgの単離された純粋なヒトSAPの単回の腹腔内注射によって、すべてのマウスにヒトSAPを「負荷」した。アミロイドを有するマウスに注射されたヒトSAPは、アミロイド沈着物に局在し、その位置において約3〜4日の半減期で存続するのに対し、アミロイドに結合していない任意のヒトSAPは、約3〜4時間の半減期で循環から除去される(Hawkins et al,(1988)
J.Exp.Med,,167:903−913およびPepys et al,(2002)
Nature,41 7:254−259)。
【0272】
単離された純粋なヒトSAPを注射した後のアミロイドを有するマウスの脾臓における抗ヒトSAP抗体での免疫組織化学的染色は、典型的な辺縁帯分布ですべてのアミロイド沈着物が強く陽性染色されることを示す。この結合したヒトSAPは、本発明に係る治療用の抗SAP抗体の標的である。
【0273】
抗SAP治療
ヒトSAPがもはや循環中で検出可能でなくなるヒトSAP注射の3日後に、各補体ノックアウト群における2匹を除くすべてのマウスに、リン酸緩衝食塩水(PBS)中の溶液として50mg/mlの単一特異的なヒツジ抗ヒトSAP抗血清の1mlの全IgG画分(batch no.2866)(7mg/mlの実際の抗SAP抗体を含む)の単回の腹腔内注射を行った。その抗血清は、The Binding Site Ltd,Birmingham,UKによって、ヒトSAP(厳密には、University College London Centre for Amyloidosis and Acute Phase Proteinsにおいて100%まで精製されたもの)および専売の免疫化手順を用いて製造されたものだった。次いで、アルカリ性かつアルコール性のコンゴーレッド染色(Puchtler,H.,Sweat,F.and Levine,M.(1962)On the binding of Congo red by amyloid.
J.Histochem.Cytochem.,10:355−364)によるアミロイド負荷の組織学的評価のために、すべての動物を抗SAP投与の15日後に殺傷した。すべての動物の脾臓および肝臓のコンゴーレッド切片が、各マウスが受けた治療について知らされていない1人以上の専門の観察者によって独立して検査され、以前に報告されたように(Botto et al,(1997)
Nature Med.,3:855−859)、存在するアミロイドの量についてスコア付けされた。1〜5のスコアは、1(特定の器官のいくつかの切片における1または2個の小さいアミロイドの斑に対応する)から、5(グレード1(Botto et al,(1997)
Nature Med.,3:855−859)よりも約10,000倍多いアミロイドを含む大量の広範な沈着物に対応する)までの、底が10の対数のおよそのランキングスケールである。数人の観察者は、整数の中間の.5のスコアも使用したが、異なる観察者のスコアは、常に高度に一致していた。各動物の各器官に対するすべての観察者のスコアの算術平均を統計解析に使用した。
【0274】
結果
補体が十分な野生型マウスにおけるアミロイド沈着物の効果的なクリアランスと大いに異なって、補体欠損動物の両群には、なおも大量のアミロイドが存在したが、各タイプの2匹のコントロール補体欠損マウスよりも断片化された外観を呈する傾向があった。脾臓アミロイドスコアの中央値、範囲は、以下だった:野生型、1.17、0.0〜1.5、n=15;C3ノックアウト、1.92、1.17〜4.33、n=12;C1qノックアウト、1.25、1.17〜3.5、n=10(クラスカル・ワリスノンパラメトリックANOVA,P<0.001)。野生型コントロールと両方の補体欠損群との差は、有意だった(C3ノックアウトについてはP<0.001およびC1qノックアウトについてはP=0.036(多重比較のためのボンフェローニの補正後))が、C3ノックアウトとC1qノックアウトとの差は、有意でなかった(P=0.314(Mann−Whitney U検定))。
【0275】
考察
C1qまたはC3を欠くマウスでは、抗SAP治療は、補体が十分な野生型マウスにおけるものと同程度には効率的にアミロイド沈着物を除去しなかった。したがって、抗SAPの治療効果は、極めて実質的に補体依存的であり、理論的にはFc(γ)受容体を介して食細胞が関わり得るIgG抗体結合だけによって媒介されるものではない。それにもかかわらず、補体欠損マウスにおいて持続性のアミロイド沈着物がより断片化された外観を呈したことは、抗体単独の少なくともいくらかの影響を示唆した。また、C3欠損動物よりもC1q欠損におけるクリアランスのほうが大きいという傾向は、C3活性化が重要であること、およびいくらかの補体の活性化がC1qの非存在下において生じている可能性があることを示唆した。
【0276】
実施例11:インタクトなIgG抗SAP抗体の必要性
IgG抗体による補体の活性化には、Fc領域を含むそのインタクトな分子全体が必要であり、その活性化は、C1qの結合によって惹起される古典経路を介して進む。しかしながら、いくつかの抗体抗原系では、F(ab)
2フラグメントによって、副経路を介した補体の活性化が媒介され得る。抗SAP抗体によるアミロイド除去の補体依存性を確認するため、およびその抗体のFc領域に対する潜在的な必要性を調べるために、F(ab)
2抗SAP抗体(ヒツジポリクローナル抗ヒトSAP抗血清(batch2866)のIgG画分のpH4.0におけるペプシン切断によって生成され、標準的な方法によって精製されたもの)の作用を試験した。
【0277】
AAアミロイドーシスの誘導および治療
上記の実施例10に詳述されたように野生型C57BL/6マウスにおいてAAアミロイドーシスを誘導し、確認した。実施例10に詳述されたようにアミロイド沈着物にヒトSAPを負荷した後、マウスの群を、ヒツジポリクローナル抗ヒトSAP抗血清の全IgG画分、緩衝液ビヒクル単独またはIgG画分のF(ab)
2フラグメントで治療した。注射された抗SAP抗体活性の用量は、F(ab)
2を投与されたマウス1匹あたり7.28mg、および全IgGを投与されたマウス1匹あたり7mg(通常50mgの全IgG)だった。コンゴーレッド染色によるアミロイド負荷の評価のために、14日後にすべてのマウスを殺傷した。
【0278】
結果
アミロイド沈着物のクリアランスは、ビヒクル単独を投与されたコントロールマウスにおける大量のアミロイド沈着物と比べて、IgG抗SAP抗体を投与されたマウスではほぼ完全だった。F(ab)
2を投与されたマウスは、無処置コントロールよりも少ないアミロイドを有したが、全IgG抗SAP抗体で処置されたマウスよりもなおも実質的に多かった(表9)。
【表11】
【0279】
クラスカル・ワリス検定:脾臓,P<0.001;肝臓P<0.001
マン・ホイットニー検定
**:1対2、脾臓と肝臓の両方,P<0.001;1対3、脾臓と肝臓の両方,P=0.001;2対3,脾臓,P=0.284;肝臓,P=0.019
*群2における単一の域外値は、IgG抗SAP処置にもかかわらず脾臓アミロイドが多かった。この動物を除くと、IgG処置の有効性とF(ab)
2抗SAP抗体処置の有効性との間に高度な有意差がもたらされる。
**多重比較に起因して、0.01以下のP値が有意性のために必要とされる。
【0280】
考察
本研究において使用されたF(ab)
2抗SAP抗体のモル用量は、全IgGよりもF(ab)
2フラグメントの分子量が小さいことに起因して、IgG抗体のモル用量よりも約3分の1多かった。アミロイドクリアランスに対する最適な作用のために、Fcが必要とされる。補体が十分なマウスにおけるF(ab)
2よりも補体欠損マウスにおける全IgGが有効でなかったので、これは、Fc(γ)受容体による細胞認識の直接的な関与が理由ではない。投与された高用量のF(ab)
2が、副経路を介していくらかの補体を活性化することができた可能性がある。
【0281】
実施例12:マクロファージの必要性
US2009/0191196に記載されている組織学的研究および組織化学的研究は、抗SAP抗体で処置されたマウスにおいてアミロイド沈着物を浸潤し、包囲し、貪食する細胞がマクロファージであることを示している。実際にマクロファージがアミロイドのクリアランスに関与していることを確認するために、ヒツジポリクローナル抗ヒトSAP抗血清(batch2866)の全IgG画分による処置の効果を、リポソームのクロドロネートの投与によってすべてのマクロファージ活性が阻害されたマウスにおいて試験した。試薬、実験プロトコル、およびリポソームのクロドロネートのマクロファージ機能に対する作用は、十分に確立されており、広く実証されている(Van Rooijen et al,(2002)
J.Liposome Research.Vol.12.Pp,81−94)。
【0282】
AAアミロイドーシスの誘導および処置
上記の実施例10に詳述されたプロトコルを用いて野生型マウスにおいてAAアミロイドーシスを誘導し、確認した後、すべての動物に、10mgという単一の腹腔内用量の単離された純粋なヒトSAPを投与することにより、その沈着物にヒトSAPを負荷した。次いで、直ちにならびにその2、7および14日後に、0.3mlのリポソームのクロドロネートを試験群の腹腔内に投与した。ヒトSAP注射の3日後に、1つのコントロール群および試験群に、50mgという単一の腹腔内用量のヒツジ抗ヒトSAP抗血清のIgG画分を投与した。第2のコントロール群には、抗SAP処置および他の追加の処置を行わなかった。試験群および抗体コントロール群に抗SAPを投与した14日後に、コンゴーレッド染色によるアミロイド負荷の評価のために、すべてのマウスを殺傷した。
【0283】
結果
抗SAPによる処置は、抗体を投与されなかった群と比べて、アミロイド沈着物のほぼ完全なクリアランスをもたらした。対照的に、マクロファージ機能を完全に無くすと知られるレジメンでリポソームのクロドロネートを投与されたマウスでは、アミロイド沈着物のクリアランスが見られなかった(表10)。
【表12】
【0284】
クラスカル・ワリス検定:脾臓,P<0.001;肝臓P<0.001
ボンフェローニの補正を伴うマン・ホイットニー検定:1対2:脾臓と肝臓の両方,P<0.003;1対3:脾臓,P=0.078;肝臓,P=0.411;2対3,脾臓と肝臓の両方,P<0.003.
考察
この特定の実験における結果から、マクロファージの機能が、抗ヒトSAP抗体によるアミロイド沈着物のクリアランスに必要であることが確認された。
【0285】
実施例13:マウスの全身性AAアミロイド沈着物の除去におけるマウスモノクローナル抗ヒトSAP抗体SAP−Eの有効性
様々なモノクローナル抗体がヒトSAPを含むマウスのAAアミロイド沈着物のクリアランスを媒介する能力を、ポジティブコントロールとしての標準的なヒツジポリクローナル抗ヒトSAP抗体との比較において詳しく調べた。
【0286】
AAアミロイドーシスの誘導および処置
マウスSAP遺伝子が欠失した純系のC57BL/6動物(Botto et al,(1997)
Nature Med.,3:855−859)を、ヒトSAPトランスジーンを有するC57BL/6マウス(Yamamura et al,(1993)
Mol.Reprod.Dev.,36:248−250およびGillmore et al,(2004)
Immunology,112:255−264)と交雑することによって、ヒトSAPをトランスジェニックしたSAPノックアウトC57BL/6マウスを作出した。したがって、これらのマウスは、マウスSAPを欠くが、ヒトで見られる濃度よりも有意に高い濃度でヒトSAPを発現する。ヒトSAPトランスジェニックマウスSAPノックアウトマウスにおいて、実施例10に記載されたように全身性AAアミロイドーシスを誘導し、それらのマウスへの最後のカゼイン注射の9日後に、トレーサー用量の
125I−標識ヒトSAPの注射後のアミロイドの全身放射能計測によって通常通り、アミロイド沈着の存在および程度を確認した。すべてのマウスが実質的かつ比較可能な量のアミロイドを有し、種々の処置を行うために、それらのマウスを密接にマッチした群に割り当てた。トレーサー注射の1週間後に、5mgという単一用量のCPHPCを腹腔内注射によって各マウスに投与することにより、循環ヒトSAPを枯渇させ、続いて、5時間後に同じ経路を介して、標準的なヒツジポリクローナル抗ヒトSAP IgG画分(batch2866,7mg/mlの抗ヒトSAP抗体を含む50mg/mlの総タンパク質における1ml)または5mgの9つの異なる単離された純粋なモノクローナル抗ヒトSAP抗体のうちの1つを投与した(表11)。抗体注射の21日後にすべてのマウスを殺傷し、その脾臓のコンゴーレッド組織学的検査によってアミロイド負荷を測定した。
【表13】
【0287】
試験されたモノクローナル抗体のうち、SAP−Eだけが、アミロイド沈着物のクリアランスをもたらしたが、その効果は、ヒツジポリクローナル抗体の高度に再現性のある劇的な作用と同じだった。重要なことには、SAP−Eは、マウス補体を活性化すると知られるマウスIgG2aアイソタイプであるが、SAP−Bを除く他のモノクローナルのすべてが、補体を活性化しないマウスIgG1アイソタイプだった。SAP−Bは、マウスIgG2aアイソタイプであるが、その
インビトロにおけるSAPへの結合は、SAP−Eの結合よりも著しく低く、明らかに
インビボにおいて有効であるには十分でなかった。
【0288】
考察
これらの結果から、十分に強く補体を活性化するIgG2aマウスモノクローナル抗ヒトSAP抗体が、
インビボにおいてヒツジポリクローナル抗ヒトSAP抗体と同程度に効率的にアミロイドクリアランスを媒介することが実証される。
【0289】
実施例14:モノクローナルマウス抗ヒトSAP抗体であるSAP−KおよびSAP−Eのインビトロにおける比較による特徴付け
SAP−Kは、精製ヒトSAPでの免疫、および通例の方法によってクローン化されるハイブリドーマを生成する従来の融合から標準的な手法によって得られた、異なる6つの最も強く結合するマウスIgG2aモノクローナルから選択された。これらのIgG2a抗体のうち、SAP−Kは、固定化されたヒトSAPに対して最も強い結合を示した。これは、ヒトSAPが、プラスチック表面上に、非特異的付着もしくは共有結合によって直接固定化されるか、または固定化されたリガンド(それがアミロイド原線維であるか小分子リガンドのホスホエタノールアミンであるかを問わない)へのSAPの特異的なカルシウム依存性結合によって直接固定化されるかに関係ない例である。また、SAP−Kは、カルシウムの存在下または非存在下において、およびSAPがCPHPCと予め複合体化されて十量体のSAP−CPHPC複合体において共有結合的に「固定」されている場合に、直接固定化されたSAPに十分結合した(Pepys,M.B.
et al(2002)Targeted pharmacological depletion of serum amyloid P component for treatment of human amyloidosis.
Nature,417:254−259;Kolstoe,S.E.
et al(2009)Molecular dissection of Alzheimer’s disease neuropathology by depletion of serum amyloid P component.
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,106:7619−7623)。SAP−Eもまた、これらの異なる配置のすべてにおいてヒトSAPに十分に結合した。しかしながら、これら2つの抗体は、ヒトSAPが低密度にしか利用可能でないとき、例えば、コーティングのためにプレートがほんの1μg/mlのヒトSAPにしか曝露されていないとき、SAP−Eよりもかなり多くのSAP−Kが結合するようになるのに対し、より大量の固定化されたSAPが存在するとき、例えば、コーティング溶液が100μg/mlのSAPを含むとき、SAP−KよりもSAP−Eが多く結合したという点において大きく異なる。この差異は、2以上のSAP分子が別のSAP分子と接近して会合した状態であるとき、SAP−Eが最適に結合する一方で、SAP−Kは、孤立した単一のSAP分子に強く結合することを示唆する。この機構は、ポリクローナルヒツジ抗ヒトSAP(batch2866)でコーティングされたプレート上への捕捉によってヒトSAPが固定化されて、それによって、各ヒツジIgG抗体分子の2本の腕において共に接近して保持されるSAP分子の対がもたらされたとき、SAP−Eが、ヒトSAP投入の全レベルにおいてSAP−Kよりも良好に結合したという知見によって裏づけられる(
図7)。
【0290】
図7は、固定化されたヒツジポリクローナル抗ヒトSAP抗体によって捕捉される、ヒトSAPに対するモノクローナルマウス抗体の結合についてのイムノラジオメトリックアッセイを示している。提供されたヒトSAPのすべての濃度において、SAP−Kよりも実質的に多いSAP−Eが結合した。各点は、3回の反復の平均値である。
【0291】
非常に重要なことには、SAP−EとSAP−Kの両方が、天然ヒトSAPに明らかに等しく十分に結合した(これは、単離された純粋なヒトSAPとヒト全血清との両方に対するアガロースゲルでの二重免疫拡散法において両方の抗体が類似の免疫沈降を示したことによって示された)。これらの2つのマウスモノクローナル抗体の類似の結合性は、チップ上に共有結合的に固定化されたヒトSAPを用いてBiacore装置(BIAcoreX,Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden)において測定された類似のパラメータとして反映された(表12)。
【表14】
【0292】
示された値は、3回の反復測定の平均値およびSDである。
【0293】
対照的に、両方の抗体が、生理学的緩衝液におけるアガロースゲル電気泳動後のウエスタンブロッティングにおいて未変性ヒトSAPに結合したが、還元SDS−PAGEからのウエスタンブロッティングではSAP−EだけがヒトSAPに結合した。したがって、SAP−Eは、変性したヒトSAPを認識するが、SAP−Kは、未変性ヒトSAPだけを認識し、立体構造エピトープに結合していると考えられる。
【0294】
ヒトSAPのCNBr消化によって、159Mと160Wとの間で切断が生じる(これにより、159位がメチオニンからホモセリンラクトンに変換された新しいペプチド(150−158−ホモセリンラクトンと呼ばれる)がもたらされる)。SDS−PAGEからのウエスタンブロッティングにおいて、SAP−Eは、残基Met159におけるSAPのCNBr切断によって放出された
N末端の1−158−ホモセリンラクトンポリペプチドに結合したが、カルシウムの非存在下におけるキモトリプシン消化によって放出された1−140フラグメントとはほとんど反応しなかった(
図8)。ゆえに、SAP−Eの結合が、溶液中のペプチド136〜147、138〜149、140〜151および112〜119によって強く阻害されないので、SAP−Eによって認識されるエピトープは、いくらか変性に抵抗性の二次構造を明らかに含む領域140〜158に存在すると考えられる。これは、SAPの変性に対する動態安定性および抵抗性と一致する(Manning,M.and Colon,W.(2004)
Biochemistry,43:11248−11254)。
【0295】
図8は、モノクローナル抗ヒトSAP抗体SAP−Eについてのエピトープマッピングを示している。A,70%TFA中のCNBrによって切断される点(残基159M)およびカルシウムの非存在下における重炭酸アンモニウム中での還元/カルバミドメチル化(carbamidomethylation)なしのキモトリプシンによって切断される点(残基140Yおよび144F)を示しているヒトSAPの完全なアミノ酸配列。B,CNBrで切断されたSAPのSDS−PAGE解析。左パネル:クマシーブルー染色;レーン1,未処理コントロールSAP;レーン2,ほんのわずかな未切断のインタクトな残留プロトマー、ならびにそれぞれおよそ20kD(残基1−158−ホモセリン−ラクトン)および5kD(160−204)の予想フラグメントを示している、CNBr切断後のSAP。これらは、質量分析によって正確に確認された。右パネル:レーン1(100ng充填)および2(10ng)には、インタクトな未処理SAPの強い染色、ならびにレーン3(600ng)、4(130ng)および5(64ng)には、CNBrで切断されたSAPにおけるインタクトな残留SAPおよびより大きい残基1−158−ホモセリン−ラクトンフラグメントを示している、SAP−5でのウエスタンブロット。レーン6には、SAP−5が全く反応しない単離された純粋なヒトCRPが含まれていた。C,キモトリプシンで消化されたSAPのSDS−PAGE解析。左パネル:クマシーブルー染色;レーン1,未処理コントロールSAP;レーン2,残基1〜140および145〜204に対応する主要な予想フラグメントを示している、キモトリプシン消化後のSAP。これらは、質量分析によって正確に確認された。右パネル:レーン1(500ng充填)および2(100ng)には、インタクトな未処理SAPの強い染色、ならびにレーン3および4には、キモトリプシンで消化された異なる充填量のSAPを含むインタクトな残留SAPを示している、SAP−Eによるウエスタンブロット。残基1〜140フラグメントへのSAP−Eの非常に弱い結合が、最も多く充填されたレーン3にだけ見られる。レーン5(500ng)および6(100ng)には、SAP−Eが全く反応しない単離された純粋なヒトCRPが含まれていた。D,ヒトSAP(h)とマウスSAP(m)との残基136〜147に対する配列比較。上パネル,マウス配列中に黒で示される残基によって差異を上に示した。下パネル,ヒトSAPの3Dサブユニット構造において白色で示された頂部に140Yを有するこの伸長されたループの位置。マウス配列において異なる残基が黒色で示されている。灰色の球形は、リガンド結合ポケットに結合したカルシウム原子を表している。
【0296】
SAP−Kによって認識される立体構造エピトープは、CLIPS(登録商標)技術のエピトープマッピング(Pepscan Presto BV)によって、円盤様の五量体の天然SAP分子の周縁における外側の露出されるループである残基121〜131と特定された。
【0297】
図9は、SAP−Kによって認識されるヒトSAP上のエピトープ(A,黒色で強調されている、CLIPS(登録商標)技術によって決定された部分)およびSAP−Eによって認識されるヒトSAP上のエピトープ(B,白色で示されている、SAPのCNBr切断産物およびカルシウムの非存在下におけるキモトリプシン消化によって放出されたフラグメントとの結合の結果によって決定された140〜158)の位置を示している。
【0298】
実施例15:マウスAAアミロイドーシスモデルにおけるインビボのアミロイド沈着物の除去におけるSAP−Kマウスモノクローナル抗ヒトSAP抗体の有効性
SAP−Kの効力を、マウスにおける確立された全身性AAアミロイド沈着物の除去における標準的なヒツジポリクローナル抗体の作用と比較した。
【0299】
AAアミロイドーシスの誘導および処置
上記の実施例10に詳述されたように野生型C57BL/6マウスにおいてAAアミロイドーシスを誘導し、確認した。実施例10に詳述されたようにアミロイド沈着物にヒトSAPを負荷した後、ヒツジポリクローナル抗ヒトSAP抗血清の全IgG画分(batch2866)としてマウス1匹あたり50mgの全IgG(7mgという用量の実際の抗SAP抗体をもたらす)、マウス1匹あたり5mgという用量の単離精製SAP−K、マウス1匹あたり1mgという用量の単離精製SAP−K、およびネガティブコントロールとして、無関係なヒト抗原に特異的かつヒトSAPまたは任意のマウス抗原に非反応性の単離、精製されたモノクローナルマウスIgG2a抗体でマウスの群を処置した。コンゴーレッド染色によるアミロイド負荷の評価のために、17日後にすべてのマウスを殺傷した。
【0300】
結果
5mgのSAP−Kで処置されたマウスは、7mgの用量のヒツジポリクローナル抗体を用いたときに見られるものと同じ顕著な脾臓および肝臓のアミロイド沈着物のクリアランスを示した。無関係なコントロールマウスIgG2a抗体を投与されたすべての動物における広範な脾臓および肝臓のアミロイド沈着物とははっきり異なって、処置されたマウスの脾臓には微量のアミロイドの斑だけしか残らず、肝臓の多くでは何も検出されなかった(表13)。マウス1匹あたり1mg、0.5mgおよび0.1mg(0.5mgおよび0.1mgについてはデータ示さず)という低用量のSAP−Kでは、有意な効果がなかった。
【表15】
【0301】
クラスカル・ワリス検定:脾臓,P<0.001;肝臓P,0.001
マン・ホイットニー検定
*:1対2,脾臓,P=0.002;肝臓,P=0.002;1対3,脾臓,P=0.173;肝臓,P=0.083;1対4,脾臓,P<0.001;肝臓,P<0.001;2対3,脾臓,P=0.0.001;肝臓,P=0.019;2対4,脾臓,P=0.513;肝臓,P=0.768;3対4,脾臓,P<0.001;肝臓,P=0.004。
*多重比較に起因して、0.01以下のP値が有意性のために必要とされる。
【0302】
考察
これらの結果から、立体構造エピトープを特異的に認識する、補体を活性化するマウスIgG2aアイソタイプのモノクローナル抗ヒトSAP抗体の
インビボでのアミロイド沈着物の除去における有効性が立証される。したがって、本発明に係る使用のためのモノクローナル抗ヒトSAP抗体は、主に配列エピトープ(例えば、抗体SAP−E)、または全体的に立体構造エピトープ(例えば、SAP−K)に対して抗体産生され得る。
【0303】
実施例16:マウスの全身性AAアミロイド沈着物の除去におけるSAP−EおよびSAP−Kの有効性の比較、ならびに血漿中の抗SAP抗体濃度の推定
AAアミロイドーシスの誘導および処置
上記の実施例10に詳述されたように野生型C57BL/6マウスにおいてAAアミロイドーシスを誘導し、確認した。実施例10に詳述されたようにアミロイド沈着物にヒトSAPを負荷した後、マウス1匹あたり3mgおよび1mgの2つの異なる抗体で、マウスの群を処置した。アミロイドを誘導されたコントロール群には、抗体の代わりに単なるPBSを投与し、さらなる2つの群には、5mg/マウスという公知の有効量の各抗体を投与した。抗体を投与した1、5および15日後に、循環抗SAP抗体のアッセイのためにすべてのマウスから採血し、コンゴーレッド染色によるアミロイド負荷の評価のために、21日目にすべてを殺傷した。既知濃度で正常マウス血清に加えられたそれぞれ精製SAP−Eおよび精製SAP−Kで標準化された頑強なイムノラジオメトリックアッセイを用いて、すべての血清を抗SAP活性についてアッセイした。
【0304】
結果
調べられた各組織の情報について全員が知らされていない4人の独立した専門の観察者によって、アミロイド負荷がスコア付けされた。すべての観察者のスコアは、通常のとおり高度に一致しており、統計解析のために、各マウスの脾臓と肝臓の両方に対するすべての観察者の総スコアを合計した。両方の抗体が、先に証明されたように有効であり、明らかな用量依存性の作用が存在したが、より低用量ではSAP−Eが、SAP−Kよりも明らかに強力だった。
【表16】
【0305】
クラスカル・ワリス検定:P<0.001
マン・ホイットニー検定
*:K5対E5,P=0.095;K3対E3,P=0.684;K1対E1,P=0.001;K5対K3,P=0.594;K5対K1,P=0.001;K3対K1,P<0.001;E5対E3,P=0.008;E5対E1,P=0.001;E3対E1,P=0.004;K5対C,P=0.001;E5対C,P=0.001;K3対C,P<0.001;E3対C,P<0.001;K1対C,P=0.043;E1対C,P<0.001。
*多重比較に起因して、0.01以下のP値が有意性のために必要とされる。
【0306】
すべての動物に単一用量が投与された後、より低用量の各群における1匹の外れた個体は別として、循環抗SAP抗体活性の濃度は一貫して強く用量依存性だった。マウス1匹あたり1mgが投与された1日後でさえ、ほとんどのマウスにおいてバックグラウンドを超えるものは概して検出可能でなかった。対照的に、5mgが投与された15日後でも大量の抗体が存在し、3mgが投与された5日後には、ほとんどのマウスが循環抗体を有したが、15日後はより少なくなった(表15)。SAP−Eに対するパターンとSAP−Kに対するパターンとの間に有意差はなかった。
【表17】
【0307】
*17μg/ml未満という見かけの抗SAP抗体の濃度が、このアッセイに対するバックグラウンドであり、真の活性に相当するわけではない。
【0308】
考察
一対一での直接的な比較において、SAP−Eが、わずかであるがSAP−Kよりも有意に強力であるという一貫した証拠が存在する。マウス1匹あたり1mgを投与した後、循環抗SAP抗体の活性は、1日後には検出可能でなかったことから、明らかにすべてが、アミロイド沈着物内のヒトSAPに局在化した。3mgを投与した後、大量の抗SAPが、1日後には循環中に存在し、5日後にも存在した。マウス1匹あたり5mgを投与した後は、15日後であっても血液中にかなり濃度の抗SAPが存在した。これらの観察結果から、アミロイドクリアランスを誘発するのに、低用量の抗SAP抗体の反復投与で十分であり得ることが示唆される。
【0309】
実施例17:マウスにおいて全身性AAアミロイド沈着物を除去する際の低用量のSAP−EおよびSAP−Kの有効性の比較
AAアミロイドーシスの誘導および処置
上記の実施例10に詳述されたように野生型C57BL/6マウスにおいてAAアミロイドーシスを誘導し、確認した。実施例10に詳述されたようにアミロイド沈着物にヒトSAPを負荷した後、マウス1匹あたり0.5mgおよび1mgという単一用量の2つの異なる抗体、または3もしくは4日間隔で投与される0.15mgという6回の反復用量で、マウスの群(各々n=10)を処置した。アミロイドを誘導されたコントロール群(n=9)には、抗体の代わりに単なるPBSを投与し、さらなる2つの群(各々n=3)には、5mg/マウスという公知の有効量の各抗体を投与した。コンゴーレッド染色によるアミロイド負荷の評価のために、29日目にすべてを殺傷した。
【0310】
結果
低用量(非常に低い反復用量を含む)は、特に肝臓におけるアミロイド負荷の減少において有意な有効性を示した。また、SAP−Eは、SAP−Kよりも明らかに強力だった。
【表18】
【0311】
クラスカル・ワリス検定:脾臓,P<0.001;肝臓,P=0.001
マン・ホイットニー検定
*:E1対C:脾臓,P<0.001;肝臓P<0.001;E0.5対C:脾臓,P=0.604;肝臓P=0.004;Erep対C:脾臓、P0.002;肝臓,P<0.001;K1対C:脾臓,P=0.065;肝臓,P=0.001;K0.5対C:脾臓,P=0.022;肝臓,P=0.001;Krep対C:脾臓,P=0.079;肝臓,P<0.001;E1対E0.5:脾臓,P=0.005;肝臓P=0.143;E1対Erep:脾臓,P=0.043;肝臓,P=0.280;E0.5対Erep:脾臓,P=0.019;肝臓,P=0.043;K1対K0.5:有意差なし;K1対Krep:有意差なし;K0.5対Krep:有意差なし;E1対K1:脾臓,P=0.015;肝臓,P=0.353;E0.5対K0.5:有意差なし;Erep対Krep:有意差なし。
*多重比較に起因して、0.01以下のP値が有意性のために必要とされる。
【0312】
考察
SAP−Kよりも有意に高いSAP−Eの効力は、再現性があるとみられる。繰り返し投与されるときの非常に低い用量の効果、および脾臓よりも肝臓アミロイド沈着物に対するより大きな作用に関する示唆は、興味深く、潜在的に臨床的に有意である。
【0313】
実施例18:インビトロにおけるヒト化モノクローナル抗ヒトSAP抗体による補体の活性化
補体の活性化は、本発明に係る抗ヒトSAP抗体によるアミロイド除去の有効性にとって不可欠である。30mg/lのSAP濃度を含むヒト全血清、または単離された純粋なヒトSAPをこの同じ濃度まで加えたマウス全血清に種々の量の単離された純粋な抗体を加えることによって、ヒト化モノクローナル抗体であるSAP−E H1L1およびSAP−K H3L0がヒト血清中およびマウス血清中でC3を活性化する能力を
インビトロにおいて比較した。両方の場合において、血清は、新鮮でありかつ補体が十分に存在し、実験条件は、希釈剤として補体結合試験緩衝液(CFT)を用いた補体の活性化について最適だった。
【表19】
【0314】
すべてのチューブを37℃で2時間インキュベートすることにより、補体の活性化を進めた。血清中では、ゆっくりとした自発的な活性化が常に起こっているので、M9およびH9の複製物でありM10およびH10と命名された2つの追加のコントロールを提供した(これらは、インキュベートされなかったが、混合後に直ちに−80℃で凍結し、次いで、C3切断についてアッセイする直前に解凍した)。M/H9とM/H10とを比較することにより、自発的なC3切断と、抗SAP抗体によってもたらされた任意の追加の活性化、ならびにマウス血清にヒトSAPだけを加えたときの任意の作用とを区別することが可能である。
【0315】
ヒトC3に対する単一特異的な抗体を用いた二次元免疫電気泳動によって、ヒト血清中のC3切断をアッセイした。マウスC3の種々の電気泳動移動度が、ヒトC3を用いた場合よりも信頼性をもって区別しにくいので、この方法は、マウスC3切断に対しては低感度である。ゆえに、アガロースゲル電気泳動後の単一特異的な抗マウスC3抗体を用いた免疫ブロッティングによって、マウスC3の切断をアッセイした。
【0316】
結果
両方のヒト化抗体がヒト補体を効率的に活性化し(C3の主な用量依存性の切断によって証明される)、それによって、未変性C3の免疫沈降ピークのより遅い移動度のサイズが減少し、より速い切断されたC3cピークのサイズが増加した(
図10)。
【0317】
図10は、ヒト全血清中のヒト化モノクローナル抗ヒトSAP抗体によるC3活性化を示している。
【0318】
サンプルH10におけるベースラインC3切断に対するコントロールを含むアッセイにおいて、両方の抗SAP抗体の最も低い用量でさえ、抗体なしの自発的な切断コントロールに見られるものよりも多いC3切断をもたらすことが明らかである(
図11)。
【0319】
図11は、ヒト全血清中の低用量ヒト化モノクローナル抗ヒトSAP抗体によるC3活性化を示している。
【0320】
ヒトSAPが補充されたマウス全血清中のマウスC3の切断について非常に類似した結果が得られた。両方の抗体が、遅い移動度の未変性C3バンドの強度の低下およびより速い移動度の活性化型の強度の増加をもたらす、未変性マウスC3の用量依存性の切断を示した。また、各抗体の最も低い用量でさえ、抗体なしの自発的な活性化コントロールに見られるものよりも多いC3切断をもたらした(
図12)。
【0321】
図12は、純粋なヒトSAPが補充されたマウス全血清中のヒト化モノクローナル抗ヒトSAP抗体によるC3活性化を示している。
【0322】
考察
両方のヒト化モノクローナル抗ヒトSAP抗体が、ヒトSAPの存在下において補体を効率的に活性化するので、それらは、本発明に係る、全身性アミロイドーシスおよび組織における細胞外のアミロイド沈着物によって引き起こされる他の任意の疾患の治療における使用に適した候補である。
【表20-1】
【表20-2】
【表20-3】