【実施例1】
【0033】
本実施例では、本発明の位置調節機構の一例、それを用いた本発明の樹脂封止装置の一例、及び、それを用いた本発明の樹脂封止方法の一例について説明する。なお、本実施例で説明する樹脂封止装置は、後述するように、トランスファ成形用の樹脂封止装置である。また、本実施例の樹脂封止方法は、トランスファ成形により樹脂封止を行なう。
【0034】
まず、
図1に、本発明の位置調節機構における前記一対の楔形部材の例を示す。
図1(a)は正面図であり、
図1(b)は側面図である。図示のとおり、この一対の楔形部材11は、第1楔形部材11aと、第2楔形部材11bとを含む。なお、以下において、楔形部材11を「コッター」という場合があり、第1楔形部材11aを「第1コッター」と、第2楔形部材11bを「第2コッター」と、それぞれいう場合がある。
図1(b)に示すように、第1コッター11aと第2コッター11bとは、それぞれ、厚み方向(紙面上下方向)における一方の面が、テーパ面である。より具体的には、図示のとおり、第1コッター11aの上面及び第2コッター11bの下面が、それぞれテーパ面である。第1コッター11aと第2コッター11bとは、互いのテーパ面が対向するように、配置されている。
【0035】
また、コッター11は、
図1(b)に示すとおり、コッター動力伝達部材16を介して駆動機構12に連結している。そして、駆動機構12により、コッター11のテーパ面のテーパ方向(紙面左右方向)にスライドさせることで、コッター11の厚み方向の長さを変化可能である。例えば、
図1(b)に示すとおり、第1コッター11aをその先端方向(紙面左側)に向けてスライドさせる。これにより、第2コッター11bは、第1コッター11aに対し相対的に右側にスライドすることになる。スライドさせた状態を、
図2に示す。
図2(a)は正面図であり、
図2(b)は側面図である。
図2に示すとおり、コッター11の厚み方向(紙面上下方向)の長さは、
図1と比較して大きくなっている。また、例えば、第1コッター11aを、
図1(b)とは逆方向にスライドさせることで、コッター11の厚み方向(紙面上下方向)の長さを小さくすることが可能である。
【0036】
なお、
図1及び2の例では、駆動機構12により、コッター11の下側の第1楔形部材(第1コッター)11aを水平(紙面左右)方向に摺動(スライド)させることができる。しかし、これに限定されず、例えば、駆動機構12により、コッター11の上側の第2楔形部材(第2コッター)11bをスライド可能であっても良いし、第1コッター11a及び第2コッター11bの両方をスライド可能であっても良い。また、駆動機構12としては、特に限定されないが、例えば、サーボモータ、エアーシリンダー等を用いることができる。
【0037】
また、
図1及び2並びに以下に説明する
図13〜17では、第1楔形部材(第1コッター)11a及び第2楔形部材(第2コッター)11bのそれぞれ一方の面の全体がテーパ面である。しかし、本発明はこれに限定されず、少なくとも一方の楔形部材を、前記テーパ面に沿ってスライドさせることが可能であれば良い。例えば、第1楔形部材(第1コッター)及び第2楔形部材(第2コッター)の一方又は両方において、その一方の面の一部のみがテーパ面であっても良い。より具体的には、例えば、図示の(第1コッター)11a及び第2楔形部材(第2コッター)11bの少なくとも一方において、一方の面の先端側(細い側)のみがテーパ面であり、根本側(太い側)は水平面であっても良い。
【0038】
つぎに、
図3に、本発明の位置調節機構の一例を示す。
図3(a)は、コッター11の正面が見えるようにした正面断面図である。
図3(b)は、側面図である。図示のとおり、この位置調節機構10は、モールドベース13内にコッター11が格納されている。モールドベース13は、プラテン14の上面(平面)上に載置されている。すなわち、コッター11は、モールドベース13を介してプラテン14に取付けられている。駆動機構12は、固定部材15を介してモールドベース13と連結している。また、駆動機構12は、コッター動力伝達部材16を介してコッター11に連結しており、コッター11を駆動することができる。なお、コッター11、駆動機構12及びコッター動力伝達部材16は、
図1及び2と同じである。このように、駆動機構12はプラテン14に対して固定されるように取り付けられており、コッター11はプラテンに対して可動に取り付けられている。これにより、駆動機構12を用いて、プラテン14に対するコッター11の位置を調節することができる。
【0039】
なお、本実施例では、モールドベースを用いて、プラテンに対して楔形部材が間接的に取り付けられている。これに限定されず、他の取付け用部材を用いてプラテンに対して楔形部材を間接的に取り付けることもできる。また、プラテンに対して楔形部材を直接的に取り付けることもできる。
【0040】
つぎに、
図4に、
図3の位置調節機構を含むトランスファ成形用樹脂封止装置の一例を示す。
図4(a)は、コッター11の正面が見えるようにした正面断面図である。
図4(b)は、コッター11、駆動機構12及びコッター動力伝達部材16のみを示す側面図である。
【0041】
図示のとおり、この樹脂封止装置1000は、
図3と同様の位置調節機構10と、樹脂封止用成形型(成形型)を設置する設置部1100と、位置調節補助機構1200とを含む。
図4における位置調節機構10は、図示のとおり、プラテン14の上面(平面)上に、それ以外の部材(コッター11、駆動機構12、モールドベース13、固定部材15及びコッター動力伝達部材16)が、それぞれ2つずつ並列に配置されている。それ以外は、
図4における位置調節機構10は、
図3の位置調節機構10と同様である。
図4における2つのコッター11は、後述するように、それぞれ、別々の基板に対し、基板の厚み方向の位置を調節することが可能である。したがって、
図4の樹脂封止装置1000は、位置調節機構を2つ有しており、2つの位置調節機構が1つのプラテン14を共有しているとも言える。また、図示のとおり、位置調節補助機構1200は、設置部1100の下端に接して配置されている。位置調節機構10は、位置調節補助機構1200の下端に接して配置されている。また、この樹脂封止装置1000では、プラテン14が、加圧プレス機に接続され、プラテン14に取付けられた一対のコッター11及びモールドベース13とともに、垂直方向に昇降可能である。すなわち、プラテン14は、垂直方向に昇降可能な「可動プラテン」である。
【0042】
設置部1100は、下型外周ホルダー52及び上型チェイスホルダー62を含む。下型外周ホルダー52は、その中に、後述する下型(下成形型)51aを設置することができる。上型チェイスホルダー62は、その中に、後述する上型(上成形型)61aを設置することができる。また、上型チェイスホルダー62は、その上端が、固定プラテン71に固定されている。下型外周ホルダー52は、その下端が、後述するヒータープレート22に固定されている。
【0043】
ホルダー(下型チェイスホルダー)21は、下型51aを保持するように下型51aの下方に配置されている。ホルダー21は、ヒータープレート22、断熱プレート24、及びクランププレート25の3枚のプレートが、上から前記順序で積層されて構成されている。ヒータープレート22は、ヒーター23を有しており、ヒータープレート22上に載置された成形型を加熱することができる。またホルダー21に構成された貫通穴には、プランジャ41が配置されている。プランジャ41は、封止用樹脂を成形型のキャビティ内に注入するための押し出し機構であり、プランジャ専用の動力源(図示せず)により昇降可能である。
【0044】
位置調節補助機構1200は、フローティングスプリング(弾性部材)31と、ピラー(剛体部材)32とを有する。フローティングスプリング(弾性部材)31と、ピラー(剛体部材)とは、ヒータープレート22及び断熱プレート24の中心部に有する空洞の中に、格納する(貫通させる)ことができる。フローティングスプリング31は、らせん状の弾性部材であり、らせんの中心部が空洞になっている。フローティングスプリング31は、下型(後述)とホルダー21底面(クランププレート25)との間に挟まれた状態で伸縮可能である。例えば、後述するように、型締め時にフローティングスプリング31が撓むことによって下型が下方向にスライドすることができる。また、
図4(c)の斜視図に示すように、ピラー32は、フローティングスプリング31における前記らせんの中心部の空洞部分に配置されている。ピラー32は、下型の下端に接続可能であり、クランププレート25に開けられた穴から出し入れ可能である。ピラー32の下端は、後述するように、型締め時に第2コッター11bの上面に当接可能である。
【0045】
さらに、位置合わせ調節機構10におけるプラテン14の下面(下端)は、プレス動力伝達部材83を介して駆動機構82に連結されている。また、駆動機構82は、基盤81上に設置されている。後述するように、駆動機構82により、プラテン14を含む位置合わせ調節機構10を上下させることで、その上に位置合わせ補助機構1200を介して設置された下型を上下させることが可能である。駆動機構82は、特に限定されないが、例えば、サーボモータ等が挙げられる。
【0046】
さらに、基盤81、プラテン(可動プラテン)14及び固定プラテン71の四隅には、それぞれ、タイバー(柱状部材)91が配置されている。具体的には、四本のタイバー91の上端は、固定プラテン71の四隅に固定され、下端は、基盤81の四隅に固定されている。そして、プラテン14の四隅には、穴が開けられ、それぞれタイバー91が貫通している。そして、プラテン14は、タイバー91に沿って上下に移動することが可能である。なお、タイバー(柱状部材)91に代えて、例えば、ホールドフレーム(登録商標)等の壁状部材を、プラテン(可動プラテン)14及び固定プラテン71の互いに対向する面間に設けても良い。
【0047】
図5に、
図4の樹脂封止装置1000に成形型を配置した状態を示す。
図5(a)は、下型外周ホルダー52内に下型(下成形型)51aを配置し、かつ、上型チェイスホルダー62内に上型(上成形型)61aを配置したこと以外は、
図4(a)と同じである。
図5(b)は、
図4(b)と同一の図である。図示のとおり、この樹脂封止装置1000では、下型51aのうち少なくとも下型キャビティ部材51は、下型外周ホルダー52の中に、2つを並列に設置することができる。図示のとおり、2つの下型キャビティ部材51は、ホルダー(下型チェイスホルダー)21上方に載置されるとともに、下型外周ホルダー52によって囲まれている。より詳細には、下型キャビティ部材51は、下型ベース51x上に載置されている。下型キャビティ部材51の上面には、後述するように、基板を載置可能である。下型ベース51xの下端は、ピラー32の上端に接続されている。ポットブロック42は、2つの下型51aの、互いに対向する側(内側)に設けられており、1つのポットブロック42を、2つの下型キャビティ部材51が共有している。ポットブロック42は、その内部の空間であるポット44に封止用樹脂を格納することができる。また、上型62aは、カルブロック43、上型キャビティ部材61、及び上型ベース64により構成されている。上型キャビティ部材61は、上型ベース64の下端(下面)に固定されている。上型キャビティ部材61は、その下部に、樹脂封止形状に沿って形成されたキャビティ63を有する。カルブロック43は、封止用樹脂を横方向に流動させて成形型のキャビティ内に供給するための空間を有するブロックである。カルブロック43は、2つの上型キャビティ部材61の、互いに対向する側(内側)に設けられており、1つのカルブロック43を、2つの上型キャビティ部材61が共有している。そして、下型(下成形型)51a及び上型(上成形型)61aにより、トランスファ成形用(樹脂封止用)成形型を構成する。
【0048】
つぎに、
図6〜12の工程図を用いて、
図5の樹脂封止装置1000を用いた樹脂封止方法について説明する。なお、
図6(a)は、
図4(a)及び
図5(a)と同じく、コッター11の正面が見えるようにした正面断面図である。
図6(b)は、
図4(b)及び
図5(b)と同じく、コッター11、駆動機構12及びコッター動力伝達部材16のみを示す側面図である。
図7〜12においても同様である。
【0049】
まず、
図6に示すように、下型キャビティ部材51上面に、基板(インターポーザ)201を配置するとともに、ポットブロック42内部(ポット44)に、流動性樹脂101aを供給する。図示のとおり、基板201aは、その上面(下型キャビティブロック52上面に対する接触面と反対側の面)に、チップ202及びワイヤ203が固定されている。図示のとおり、チップ202は、ワイヤ203により基板201に固定されている(ワイヤボンディング)。流動性樹脂101aは、熱硬化性樹脂である。流動性樹脂101aの供給は、例えば、以下のようにしても良い。まず、流動性樹脂101aの供給に先立ち、例えば、ポットブロック42、下型ベース51x及び下型キャビティ部材51を、あらかじめヒーター23の熱により昇温(加熱)しておく。その後、ポットブロック42内部に、粉、顆粒、タブレット状等の形態の樹脂(図示せず)を供給する。すると、ポットブロック42、下型ベース51x及び下型キャビティ部材51の熱により前記樹脂が加熱されて溶融し、図示のとおり溶融樹脂(流動性樹脂)101aとなる。
【0050】
つぎに、
図7に示すとおり、駆動機構82によって、下型51aを、下型外周ホルダー52と、位置調節機構10と、位置調節補助機構1200とともに、矢印X1の方向に上昇させる。そして、図示のとおり、基板201の一端を、下型キャビティ部材51及び上型キャビティ部材61で挟持して固定する。このとき、図示のように、フローティングスプリング31が下型ベース51xとホルダー21(クランププレート25)との間に挟まれて収縮し、フローティングスプリング31が伸びようとする伸長力で基板201が固定される。このときは、仮締めとして、フローティングスプリング31の伸長力のみの緩い力で基板201を固定する。このとき、図示のとおり、コッター11は、下型ベース51xに接続されたピラー32には当接せず、離れている。
【0051】
つぎに、
図7の状態から、
図8(b)に示すように、第1コッター11aを、矢印Y1のように、先端方向(紙面左側)に向かってスライド(摺動)させる。これにより、矢印Z1のように、第2コッター11bが上昇し、一対のコッター11の厚みが増大する。そして、
図8(a)のように、コッター11(第2コッター11b)上面がピラー31下端に当接したところでスライドを停止させる。このときのコッター11の位置(仮締め位置)を検出し、記録しておく。
【0052】
つぎに、
図9に示すように、駆動機構82によって、下型51aを、下型外周ホルダー52と、位置調節機構10と、位置調節補助機構1200とともに、矢印X2の方向に下降させて、いったん型開きし、上型61a及び下型51aによる基板201の挟持を解除する。これは、第2コッター11bが上昇して第2コッター11bの上面がピラー32に当接すると、第1コッター11aと第2コッター11bとの間に生じる摩擦が大きくなり、第2コッター11b上面がピラー32に当接したままでは第1コッター11aをスライドさせることが難しいので、いったんコッター11とピラー32を離すためである。コッター11(第2コッター11b)がピラー32に当接したままでもスライドさせることができるのであれば、
図9の型開き工程を省略しても良い。ただし、コッター11(第2コッター11b)がピラー32に当接したままであると、第1コッター11aと第2コッター11bとの摩擦のために、コッター11をスライドさせるために大きな力が必要である。このため、コッター11をスライドさせるための駆動機構12の力が大きくなければならない。これに対し、
図9のような型開き工程により、いったんコッター11とピラー32を離せば、駆動機構12として、力がさほど強くないものを用いても良いので、低コスト化につながる。
【0053】
つぎに、
図10(b)に示すように、
図8のコッター11の位置(仮締め位置)から、矢印Y2のように、さらに先端方向(紙面左側)に向かってスライド(摺動)させる。これにより、矢印Z2のように、第2コッター11bが上昇し、一対のコッター11の厚みを増大させる。
図8から
図10までのコッター11の厚み増大分の寸法(締め代)だけ、後述の
図11の型締め(本締め)時に、下型キャビティ部材51が
図8の状態(仮締め)の時よりも上昇し、基板201が強い力で挟持(固定)されることになる。以上のようにして、コッター11における基板201の厚み方向の位置を調節する、位置調節工程を行なうことができる。
【0054】
そして、
図10の状態から、
図11に示すとおり、上型と下型とを型締め(本締め)する。具体的には、図示のとおり、駆動機構82によって、下型51aを、下型外周ホルダー52と、位置調節機構10と、位置調節補助機構1200とともに、矢印X3の方向に上昇させる。そして、図示のとおり、基板201の一端を、下型キャビティ部材51及び上型キャビティ部材61で挟持して固定する。このとき、コッター11の上面はピラー32の下端に当接しているので、下型キャビティ部材51には、コッター11からピラー32を介して上向きの力がかかる。この上向きの力で、基板201が固定される。また、このとき、前述のとおり、
図8から
図10までのコッター11の厚み増大分の寸法(締め代)の分だけ、基板201は、
図8の状態(仮締め)の時よりも強い力で挟持(固定)される。なお、本実施例においては、
図7(a)のX1(下型51aを上昇させる方向)、
図9(a)のX2(下型51aを下降させる方向)、
図11(a)のX3(型51aを上昇させる方向)が、樹脂封止成形型を開閉させる方向となる。
【0055】
そして、
図11の状態(型締め状態)から、
図12に示すとおり、プランジャ41を押し上げ、流動性樹脂101aを、カルブロック43に形成された空間(通路)を介してキャビティ63内に注入する。その後、上型及び下型の熱により流動性樹脂101aを硬化させる。これにより、基板201上に配置されたチップ201及びワイヤ203が樹脂封止された電子部品(樹脂封止電子部品)を製造することができる。その後、駆動機構82によって、下型51aを、下型外周ホルダー52と、位置調節機構10と、位置調節補助機構1200とともに降下させて型開きし、前記電子部品を取り出す。以上のようにして、基板201を樹脂封止する樹脂封止工程を行なうことができる。
【0056】
本実施例のようにすれば、
図7及び8を用いて説明したように、仮締めで基板201の厚みを検出し、それに合わせてコッター11の厚みを調整する。さらにその後、
図10及び11を用いて説明したように、コッター11の厚みを、締め代の分だけ増大させてから型締め(本締め)する。これにより、基板201の厚みにバラツキがあっても、一定の圧力で基板を挟持(固定)することができるので、基板のクラック(割れ)、変形等を防止又は抑制することができる。
【0057】
また、本実施例のように仮締め時と本締め時との二段階で位置調節を行ない、締め代の分の微調整をすることで、基板にフリップチップボンディングされたチップ等を樹脂封止する場合における問題を防止又は抑制することができる。以下、
図18を用いて説明する。
図18は、フリップチップボンディングされたチップを樹脂封止した樹脂封止製品の構造の一例を模式的に示す断面図である。図示のとおり、基板201上に、複数のバンプ204が実装され、さらにその上に1つのチップ202が載置され、バンプ204及びチップ202が、封止樹脂101により封止されている。このとき、図示のとおり、基板201と、チップ202とに囲まれた空間が狭いために、この空間に対する樹脂の未充填、及びそれによるボイド(気泡)等の問題が起こるおそれがある。これを防止するためには、前記狭い空間にも入り込みやすいように、流動性が高い(粘度が低い)樹脂を用いて樹脂封止することが好ましい。なお、このとき、例えば、微細フィラー等を混合した樹脂を用いても良い。しかし、流動性が高い(粘度が低い)樹脂を用いると、型締め時に、上型と下型との間のわずかな隙間から樹脂が漏出するおそれがある。そこで、本実施例のように仮締め時と本締め時との二段階で位置調節を行ない、締め代の分の微調整をすれば、上型と下型との間に樹脂が漏出する隙間を生じさせず、かつ、基板のクラック(割れ)、変形等が起こらないちょうど良い圧力で基板を挟持(固定)することができる。これにより、前記樹脂の未充填、ボイド、成形型からの樹脂の漏出等の問題を防止又は抑制することができる。
【0058】
また、本実施例の装置によれば、
図4〜12に示したように、成形型(下型51a及び上型61a)が、位置調節機構10及び位置調節補助機構1200とは別々に構成されている。このため、例えば、樹脂封止する対象物を変更する場合等にも、例えば、成形型(下型51a及び上型61a)のみを、又は下型51aのみを交換することで対応可能である。すなわち、前記樹脂封止する対象物の変更等に対して、樹脂封止装置全体を取り換える必要がなく、成形型のみの交換で対応出来るので、きわめて低コストに対応可能である。
【実施例2】
【0059】
つぎに、本発明の別の実施例について説明する。本実施例では、圧縮成形用の樹脂封止装置、及び、それを用いた圧縮成形による樹脂封止方法について説明する。
【0060】
図13に、本実施例の樹脂封止装置を示す。
図13(a)は、コッター11の正面が見えるようにした正面断面図である。
図13(b)は、コッター11、駆動機構12及びコッター動力伝達部材16のみを示す側面図である。なお、後述する
図14〜17においても同様である。
【0061】
図13に示すとおり、この樹脂封止装置2000は、位置調節機構10bと、樹脂封止用成形型(成形型)を設置する設置部2100と、下型51bを保持するホルダー(下型チェイスホルダー)21bと、位置調節補助機構2200とを含む。位置調節機構10bについては、プラテン(可動プラテン)14に代えてプラテン(可動プラテン)14bを有し、モールドベース13に代えてモールドベース13bを有し、モールドベース13b内にコッター11が2つ並列に格納されていること以外は、実施例1(
図3〜12)の位置調節機構10と同じである。ホルダー(下型チェイスホルダー)21bについては、ヒータープレート22、ヒーター23、断熱プレート24及びクランププレート25に代えて、ヒータープレート22b、ヒーター23b、断熱プレート24b及びクランププレート25bをそれぞれ有する。ヒータープレート22b、ヒーター23b、断熱プレート24b及びクランププレート25bの構造及び配置は、それぞれ、実施例1(
図4〜12)のヒータープレート22、ヒーター23、断熱プレート24及びクランププレート25と同様である。これ以外は、実施例1(
図4〜12)のホルダー(下型チェイスホルダー)21と同じである。位置調節補助機構2200は、実施例1(
図4〜12)の位置調節補助機構1200と同様である。すなわち、フローティングスプリング31bは、実施例1(
図4〜12)のフローティングスプリング31と同様であり、ピラー32bは、実施例1(
図4〜12)のピラー32と同様である。
【0062】
設置部2100には、下型51bと、上型61bとが設置されている。下型51bと、上型61bとにより、圧縮成形用(樹脂封止用)成形型を構成する。下型51bは、ホルダー(下型チェイスホルダー)21b上に載置されている。また、下型51bは、下型キャビティ下面部材53と、下型キャビティ部材54と、フローティングスプリング(弾性部材)55と、下型ベース51yと、により形成されている。下型キャビティ部材54は、下型底面部材53の周囲及びその上方の空間を取り囲むように配置されている。下型キャビティ下面部材53と下型キャビティ部材54とで囲まれた下型底面部材53の上方の空間には、キャビティ56が形成されている。下型ベース51yは、ホルダー(下型チェイスホルダー)21b上において、下型底面部材53の周囲を取り囲むように配置されている。フローティングスプリング55は、下型キャビティ部材54の下端と下型ベース51yの上端との間に挟まれており、伸縮可能である。上型61bは、後述するように、その下面に基板を固定することができる。
【0063】
さらに、
図13の樹脂封止装置2000は、図示のとおり、固定プラテン71b、基盤81b、駆動機構82b、プレス動力伝達部材82、及びタイバー91bを有する。
図13におけるプラテン(可動プラテン)14b、固定プラテン71b、基盤81b、駆動機構82b、プレス動力伝達部材82、及びタイバー91bの構造および配置は、それぞれ、実施例1(
図4〜12)のプラテン(可動プラテン)14、固定プラテン71、基盤81、駆動機構82、プレス動力伝達部材82、及びタイバー91と同様である。固定プラテン71bの下面には、図示のとおり、上型チェイスホルダー62bが固定されている。さらに、上型チェイスホルダー62bの下面に、上型61bが固定されている。
【0064】
つぎに、
図14〜17の工程図を用いて、
図13の樹脂封止装置2000を用いた樹脂封止方法について説明する。まず、下型51bを、あらかじめ、ヒーター23bの熱により、樹脂が溶融する温度まで加熱(昇温)しておく。つぎに、
図14に示すとおり、基板(インターポーザ)201を上型61b下面に固定するとともに、顆粒樹脂301aを下型のキャビティ56内に供給する。基板201は、例えば、クランプ(図示せず)等により、上型61b下面に固定することができる。基板201の下面(上型61bに対する接触面と反対側の面)には、実施例1と同様に、チップ202及びワイヤ203が固定されている。また、図示のとおり、この状態では、コッター11は、下型キャビティ下面部材51bに接続されたピラー32bには当接せず、離れている。その後、顆粒樹脂301aは、下型51bの熱により溶融されて、溶融樹脂(流動性樹脂)となる。
【0065】
つぎに、
図15に示すとおり、駆動機構82bによって、下型51bを、位置調節機構10bと、位置調節補助機構2200とともに、矢印X4の方向に上昇させ、下型キャビティ部材54を上型61bに当接させて型締めする。これにより、図示のとおり、顆粒樹脂301aが溶融した溶融樹脂(流動性樹脂)301bに、チップ202及びワイヤ203が浸漬する。このとき、図示のとおり、下型キャビティ部材54の下端とホルダー21bの上端との間に挟まれたフローティングスプリング55が収縮する。また、この状態では、コッター11は、下型キャビティ下面部材51bに接続されたピラー32bに当接していない。したがって、下型キャビティ下面部材53は、下型キャビティ下面部材53とホルダー21bとの間に挟まれたフローティングスプリング31bが伸びようとする伸長力によってのみ固定されている。
【0066】
つぎに、
図16に示すとおり、第1コッター11aを、矢印Y3のように、先端方向(紙面左側)に向かってスライド(摺動)させる。これにより、矢印Z3のように、第2コッター11bが上昇し、一対のコッター11の厚みが増大する。このとき、一対のコッター11によってピラー32bを押し上げ、ピラー32b及びそれに接続された下型キャビティ下面部材53を介して、流動性樹脂301bを加圧する。このとき、第1コッター11aのスライド距離を適切に調整することで、一対のコッター11の厚みと、それに伴う流動性樹脂301bに対する加圧とを適切に調整する。このようにして、コッター11における基板201の厚み方向の位置を調節する、位置調節工程を行なうことができる。
【0067】
そして、
図17に示すとおり、流動性樹脂301bを硬化させて封止樹脂301とする。これにより、基板201上に配置されたチップ201及びワイヤ203が封止樹脂301により樹脂封止された電子部品(樹脂封止電子部品)を製造することができる。その後、図示のとおり、駆動機構82bによって、下型51bを、位置調節機構10bと、位置調節補助機構2200とともに、矢印X5の方向に下降させて型開きし、封止樹脂301及び電子部品を離型する。このようにして、基板201を樹脂封止する樹脂封止工程を行なうことができる。なお、本実施例においては、
図15(a)のX4(下型51bを上昇させる方向)、
図17(a)のX5(下型51bを下降させる方向)が、樹脂封止用成形型を開閉させる方向になる。
【0068】
圧縮成形により樹脂封止する場合、トランスファ成形と比較すると、樹脂厚みがばらつきやすい。その結果、樹脂封止の際に、基板及び樹脂にかかる圧力も、ばらつきやすい。しかし、本実施例によれば、
図16で説明したように、第1コッター11aのスライド距離を適切に調整することで、一対のコッター11の厚みと、それに伴う流動性樹脂301bに対する加圧とを適切に調整することができる。これにより、例えば、基板201に係る圧力も一定となるように調整することができるので、基板のクラック(割れ)、変形等を防止又は抑制することができる。また、一対のコッター11の厚みを適切に調整することで、基板201の厚みバラツキに対しても同様に対応可能である。
【0069】
また、圧縮成形により樹脂封止する場合、前記樹脂厚みがばらつきやすいという問題を解決するために、例えば、下型の下端に弾性部材を接続する方法がある。この方法によれば、前記弾性部材の弾性により、前記樹脂厚みのバラツキの影響を吸収(緩和)することができる。しかし、前記弾性部材が下型を押し上げる力が弱いことにより、樹脂封止時に、樹脂にかかる圧力が弱くなり、樹脂未充填、ボイド(気泡)等の問題が起こるおそれがある。これに対し、本発明の位置調節機構によれば、剛体部材である楔形部材(コッター)により、成形型に圧力をかけることができる。このため、弾性部材を用いる場合と比較して、樹脂封止時に、樹脂に強い圧力をかけることができる。このため、樹脂の充填性が高くなり、樹脂未充填、ボイド(気泡)等の問題を防止又は抑制することができる。
【0070】
また、本実施例(実施例2、
図13〜17)の装置によれば、実施例1の装置(
図4〜12)と同様、成形型(下型51b及び上型61b)が、位置調節機構10b及び位置調節補助機構2200とは別部材である。このため、例えば、樹脂封止する対象物を変更する場合等にも、実施例1と同様に、例えば、成形型(下型51b及び上型61b)のみを、又は下型51bのみを交換することで対応可能である。すなわち、前記樹脂封止する対象物の変更等に対して、樹脂封止装置全体を取り換える必要がなく、成形型のみの交換で対応出来るので、きわめて低コストに対応可能である。
【0071】
本発明によれば、例えば実施例1及び2で説明したとおり、位置調節機構が成形型と別部材である。これにより、前述のとおり、成形型の部品点数を少なくすることが可能で、前記成形型の組み立て及び解体の工程数が少なく、かつ、前記成形型のコストを低くすることが可能である。これにより、例えば、成形型及び樹脂封止装置を、迅速に製造し、安価に提供することが可能である。
【0072】
また、本発明によれば、例えば、位置調節機構自体の部品点数も、少なくすることが可能である。具体的には、例えば、特許文献1では、基板クランプ機構(厚みバラツキ吸収機構)が、テーパ部材内に圧縮ばね(弾性部材)を内蔵させて安定可動させていた。これに対し、本発明によれば、例えば実施例1及び2で説明したように、位置調節機構とは別部材である位置調節補助機構内に弾性部材を配置することで、楔形部材(コッター)と弾性部材とを分離することができる。これにより、例えば、楔形部材(コッター)の摺動(スライド)安定性の確保、基板に対するクランプ力の増大、樹脂の回り込みによる楔形部材(コッター)の摺動(スライド)不良防止等の効果を得ることができる。
【0073】
また、本発明によれば、例えば、前記位置調節機構が成形型と別々に構成されていることにより、成形型の軽量化が可能である。
【0074】
また、本発明によれば、例えば、前記位置調節機構が成形型と別々に構成されていることにより、成形型を加熱しても、前記位置調節機構が加熱されにくい。これにより、例えば、前記位置調節機構の駆動機構(例えばサーボモータ等)を冷却せずに使用することができる。また、例えば、前記位置調節機構の形成材料が耐熱性でなくても良くなることで、さらなる低コスト化も可能である。特に、実施例1及び2のように、前記位置調節機構と成形型との間に前記位置調節補助機構があると、前記位置調節機構と成形型との距離がいっそう遠くなるため、さらに前記位置調節機構が加熱されにくくなる。
【0075】
また、本発明によれば、例えば、前記位置調節機構が成形型と別々に構成されていることにより、前記位置調節機構を、種々の樹脂封止装置に流用することも可能である。具体的には、例えば、実施例1及び2で示したようなトランスファ成形用、圧縮成形用等の種々の樹脂封止装置に、前記位置調節機構を流用することもできる。これにより、例えば、樹脂封止装置を変更した際にも前記位置調節機構を流用可能であり、さらなる低コスト化が可能である。また、例えば、実施例1及び2で説明したように、樹脂封止する対象物の変更等に対して、樹脂封止装置全体を取り換えずに成形型のみの交換で対応することも出来るので、きわめて低コストに対応可能である。
【0076】
また、実施例1及び2の樹脂封止装置及び樹脂封止方法は、前述の説明に限定されず、種々の変更が可能である。例えば、実施例1及び2の樹脂封止装置は、前記各構成要素以外に、型締め手段、樹脂供給手段、樹脂搬送手段、外気遮断部材等の構成要素を、適宜有していても良い。また、実施例1及び2では、位置調節補助機構1200又は2200を用いる例を示したが、本発明では、位置調節補助機構は任意であり、なくても良い。また、実施例1及び2では、樹脂封止用成形型を設置する設置部の下方に位置調節補助機構が配置され、さらにその下方に位置調節機構が配置されている例について説明した。しかし、本発明において、前記位置調節機構及び前記位置調節補助機構の配置位置は、これに限定されず、それぞれ、樹脂封止用成形型を設置する設置部の上方でも下方でも良い。例えば、前記位置調節機構が、樹脂封止用成形型を設置する設置部の上方に配置されていても良い。また、例えば、樹脂封止用成形型を設置する設置部に対し、前記位置調節機構が上方に、前記位置調節補助機構が下方に、それぞれ配置されていても良い。また、例えば、逆に、樹脂封止用成形型を設置する設置部に対し、前記位置調節機構が下方に、前記位置調節補助機構が上方に、それぞれ配置されていても良い。また、例えば、前記位置調節機構及び前記位置調節補助機構の両方が、樹脂封止用成形型を設置する設置部の上方に配置されていても良い。なお、前記位置調節補助機構を設ける場合に、例えば樹脂封止用成形型を設置する設置部の上方か下方かの一方を安定化させたい場合においては、前記設置部に対して、前記位置合わせ機構及び前記位置合わせ補助機構を同じ側に配置しても良い。
【0077】
さらに、本発明は、上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、必要に応じて、任意にかつ適宜に組み合わせ、変更し、又は選択して採用できるものである。