【実施例】
【0045】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0046】
<試験及び評価方法>
引張強さ、伸び率、ゼロスパンテンション伸び量、及び付着強さについての試験方法及び評価方法を以下に示す。これらの試験方法及び評価方法は、ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)(2006年11月)に基づき行った。
【0047】
<引張強さ・伸び率>
〔試験体作製〕
離型処理した下地板(ガラス板など)を水平に保ち、所定の配合で調製したポリマーセメント組成物からなる試料を、下地板に塗り付けた後、その表面をヘラ、コテ、はけなどを用いて塗り付け時の塗膜厚さが2mmになるよう平滑に仕上げた試験体を作製する。
この試験体を標準条件(温度23±2℃,相対湿度50±10%、以下、同じ。)で7日間養生した後、脱型し塗膜を裏返してさらに7日間養生(温度23±2℃、相対湿度50±10%)を行う。養生終了後、塗膜をJIS K 6251に規定される
図1に示すダンベル状2号形にカットし、試験片1とする。試験片1は3個作製する。なお、
図1において、Aa=100mm、Ab=25mm、Ac=15mm、Ad=25mm、Ae=20mm、Af=40mm、Ag=10mm、r1=25mm、r2=21mmである。
【0048】
〔測定方法〕
試験片1の中央部分に幅20mmの標線を正確かつ鮮明に引き、ダイヤルゲージなどで標線間3ヶ所の厚みを測定し、中央値を試験片の厚さtmmとする。なお、中央値は測定値を大きさの順に並べた時の中央の値をいう。試験片を引張試験機に取り付け、試験片が破断するまで引張り、最大引張荷重PBと標線間距離Lを測定する。ただし、引張速度200mm/minとする。
次に示す式(1)より塗膜の引張強さを算出する。算出した引張強さの3点について平均し、小数点以下1けた、N/mm
2単位で表示する。
TB=PB/A・・・式(1)
ここで、TBは塗膜の引張強さ(N/mm
2)を、PBは最大引張荷重(N)を、Aは断面積(mm
2)(A=t×10)をいう。
次に示す式(2)により破断時の伸び率を算出する。算出した伸び率の3点について平均し、整数、%単位で表示する。
E=(L−20)/20×100・・・式(2)
ここで、Eは破断時の伸び率(%)を、Lは破断時の標線間距離(mm)をいう。
【0049】
<ゼロスパンテンション伸び量>
〔試験体作製〕
下地板2は、JIS A 5430に規定する厚さ8mmのフレキシブル板を、
図2(a)に示すように長さBb=約200mm、幅約Ba=80mmに切断し、その裏面中央部幅方向に深さBd=6mmの切込み4を入れたものとする。下地板2にプライマーなどを塗る前に、
図2(a)に示すバツ印Pの6ヶ所において、ダイヤルゲージなどで下地板2の厚さBcを測定しておく。下地板2の表面に
図2(a)(b)に示すように、内のり寸法が長さBf=約120mm、幅Be=約60mmで、硬化後の厚さBj=1.5mmとなるよう調整したせき枠3を置く。その後、プライマーを0.1kg/m
2塗布し、標準条件にて3時間静置する。3時間静置した後、所定の配合で調製したポリマーセメント組成物からなる試料を、せき枠3の中に塗り付けた後、その表面をヘラ、コテ、はけなどを用いて平滑に仕上げる。さらに標準条件で養生した後、せき枠3をはずして試験体6を作製した。
図2(a)に示すバツ印Pの6ヶ所において厚さを測定し、あらかじめ測定しておいた下地板2の厚さBcを差し引いて膜厚を算出する。試験体数は3個作製する。
【0050】
〔測定方法〕
前記試験体6の塗膜7表面に
図2(a)に示すよう、50mmの間隔をあけて長手方向に沿って鋭利な刃物で下地板2に達するまで切り込み8を入れる。次いで、平板上に
図2(b)に示すように、塗膜面を上にして長手方向の両端を板厚約4mmのスペーサー5で支持して置き、塗膜7を傷つけないよう下地板2中央両端部を指で軽く加圧して、下地板2にひび割れを発生させる。試験体6を引張試験機に取り付け、引張速度5mm/minで引張、塗膜7に貫通穴が生じた時点の試験体保持チャック間の距離を測定し、伸び量とする。なお、貫通穴の目視確認を明確に行うために、塗膜面の裏面から光を当てながら観察することが望ましい。試験体3個の伸び量の平均値を小数点以下1けたで表したものをゼロスパンテンション伸び量(mm)とする。
【0051】
<付着強さ>
〔試験体作製〕
試験用基板9は、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に規定する方法によって調製したモルタルを、内のり寸法70×70×20mmの金属製型枠を用いて成形し、温度20±2℃、相対湿度80%以上の状態で24時間静置した後、脱型し、その後20±2℃の水中で6日間養生し、さらに標準条件で7日間以上静置した後、JIS R 6252(研磨紙)に規定する150番研磨紙または同等の研磨紙を用いて成形時の下面を十分に研磨したものとする。その後、研磨したモルタル面にプライマーを0.1kg/m
2塗布し、標準条件にて3時間静置する。3時間静置した後、
図3(a)(b)に示すように、所定の配合で調製したポリマーセメント組成物からなる試料を、塗り付け時の塗膜厚さが2mmになるよう全面に塗り付け、さらに、その表面をヘラ、コテ、はけなどを用いて平滑に仕上げる。さらに標準条件で養生したものを試験体11とする。試験体数はそれぞれ3個作製する。
【0052】
なお、プライマーは本発明を実施する際にも、コンクリートなどの下地面に予め塗布してからその上に本発明のポリマーセメント組成物を塗布して防水材を形成することが望ましい。本発明の実施に際し、プライマーの塗布量は0.1kg/m
2を標準として塗布することが好ましいが、下地面の状態によって塗布量を加減することができる。プライマーは、粘度が低いことから、下地面がプライマーをよく吸収する場合は、塗布量を増やし、下地面がプライマーをあまり吸収しない場合には塗布量を減らして調整を行う。
【0053】
〔付着強さの測定方法〕
作製した試験体11を水平に静置し、塗膜10の試料塗り付け面に接着剤Qを塗り、
図3(c)に示すように上部引張用鋼製治具12を静かに載せ、軽くすりつける様に接着し、その上に図示しない質量1kgのおもりを載せ、周辺にはみ出した接着剤をふき取り、24時間静置した後おもりを取り除く。接着剤Qは、試験体に浸透しにくい2液型エポキシ樹脂接着剤を用いる。なお、上部引張用鋼製治具12の上端には、ロッド16を挿し入れて固定するためのM9サイズの挿し込み穴Hが鉛直方向に設けられてなる。
図3(c)に示すように塗膜10に接着した上部引張用鋼製治具12の周りにおいて基板9に達するまで切り込み13を入れた後、
図4(a)(b)に示す下部引張り用鋼製治具14および鋼製当て板15を用いて、試験体11を引張試験機に取り付け、ロッド16,17により鉛直方向Vに引張力を加えて、最大引張荷重Tを測定する。なお、
図3,4中において、Ca=約68mm、Cb=2mm、Cc=40mm、Cd=φ20mm、Ce=10mm、Cf=10mm、Cg=92mm、Ch=58mm、Ci=43mm、Cj=75mm、Ck=45mm、Cl=5mm、Cm=10mm、Cn=17mm、Co=10mm、Cp=18mm、Cq=約3mmである。
式(3)により付着強さを算出する。算出した付着強さの3点について平均し、小数点以下1けた、N/mm
2単位で表示する。
A=T/1600・・・式(3)
ここで、Aは付着強さ(N/mm
2)を、Tは最大引張荷重(N)をいう。なお、破断するまでの荷重速度は2mm/minとする。
【0054】
<試験結果>
以下に示す実施例及び比較例で得られたポリマーセメント組成物について、前記試験及び評価方法に従って行った結果を示し、当該結果に基づき特性評価を行った。
【0055】
<引張強さについて>
〔従来技術に基づく比較例の引張強さ特性〕
まず、エポキシ樹脂を含まないアクリル樹脂ポリマーセメント組成物からなる防水材(比較例1〜4)の引張強さについて、得られた値を
図5に示して評価した。さらに、アクリル樹脂を配合せず樹脂成分としてエポキシ樹脂と水溶性アミンのみを含むポリマーセメント組成物からなる試料(比較例5、6)の引張強さの測定を行った。比較例1〜6の配合割合を表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
表中の組成物配合割合に関する数値はセメント重量を100重量部とした場合のセメント重量に対する重量比を示している。また、アクリル樹脂(モビニール6486)中の樹脂成分はアクリル樹脂(モビニール6486)100重量%に対して55重量%であり、エポキシ樹脂(ベッコポックスEP128)中の樹脂成分はエポキシ樹脂(ベッコポックスEP128)100重量%に対して100重量%であり、自己乳化型変性脂肪族ポリアミン中の樹脂成分は自己乳化型変性脂肪族ポリアミン100重量%に対して80重量%である(以下、同じ)。
【0058】
図5は、エポキシ樹脂を含まないアクリル樹脂ポリマーセメント組成物からなる防水材について、シランカップリング剤を配合しない試料及びシランカップリング剤を配合する試料を、それぞれについてP/Cを80重量部、140重量部とした試料(比較試料1〜4)を用意し、各試料の引張強さの値をグラフに示したものである。
【0059】
図5によれば、P/Cを80重量部から140重量部に増加させると、シランカップリング剤の有無にかかわらず、引張強さの値は低下した。特に、混練り作業ができる下限であるP/C=80重量部でも引張強さが1.0以上の値を示したのは比較例1のみであり、P/C=140重量部とすると、比較例3,4のいずれにおいても引張強さは1.0を下回った。
【0060】
ここで、ポリマーセメント系塗膜防水材Bタイプの適合品質を表2に示す。ここで、ポリマーセメント系塗膜防水材Bタイプとは、比較的動きの少ない下地に適用される材料であり、貯水槽や廃水等の輸送管等の防水用に用いられる材料をいう(ポリマーセメント系塗膜防水工事施工指針(案)・同解説、日本建築学会、2006年)。
【0061】
【表2】
【0062】
図5及び表2から、従来のエポキシ樹脂を含まないアクリル樹脂ポリマーセメント組成物からなる防水材においては、ポリマーセメント系塗膜防水材Bタイプの品質に適合させるために、P/Cが100重量部前後で使用されていた。
【0063】
また、アクリル樹脂を配合せず、樹脂成分としてエポキシ樹脂と水溶性アミンのみを含むポリマーセメント組成物からなる試料についてP/Cを変化させて(比較例5、6)伸び率、及び引張強さ測定すると、いずれの試料も試験時に負荷をかけた直後に破断したため、測定不能(伸び率:約0%、引張強さ:測定不能)であった。この結果からもわかるように、エポキシ樹脂からなるポリマーセメントは固く、柔軟性が極めて低いという性質を有する。
【0064】
〔エポキシ樹脂配合による本発明の引張強さ特性〕
次に、アクリル樹脂を含む主材と、エポキシ樹脂を含む粉材と、水溶性アミン樹脂硬化剤の3材の組み合わせからなる本発明に係る防水材用ポリマーセメント組成物による防水材について、エポキシ樹脂を配合することにより得られる引張強さ特性について説明する。
【0065】
P/Cの値を140重量部に固定して作製した実施例1,3,4,9,11,12、及び前記比較例3,4の組成を表3にまとめて示した。さらに、これらの試料から得られた引張強さの特性値をグラフに示したものを
図6に示した。
【0066】
【表3】
【0067】
図6の結果から、前記のとおり、エポキシ樹脂を含まない比較例3及び4(
図6中の白抜き丸及び三角)においては引張強さが1.0N/mm
2より低かったのに対して、表3に示した全ての実施例において、エポキシ樹脂を含めることで
図6中の矢印に示すように引張強さの値が1.0N/mm
2以上に向上した。さらに、
図6中の実施例においてエポキシ樹脂及びアミン樹脂の全樹脂成分に対する割合であるE/Pを上げるほど引張強さが上昇し、E/Pが20%以上で、全ての実施例において1.0N/mm
2以上の引張強さを得ることができた。さらにまた、この引張強さの傾向はシランカップリング剤を含まない実施例1,3,4とシランカップリング剤を含む実施例9,11,12のいずれにおいても見られた。
【0068】
〔エポキシ樹脂配合による本発明のゼロスパンテンション伸び量特性〕
一方、P/Cの値を140重量部に固定して作製した実施例1,3,4,9,11,12の試料から得られたゼロスパンテンション伸び量の値をグラフに示したものを
図7に示した。
【0069】
図7の結果から、E/Pを上げるとゼロスパンテンション伸び量が低下する。このゼロスパンテンション伸び量の傾向はシランカップリング剤を含まない実施例1,3,4とシランカップリング剤を含む実施例9,11,12のいずれにおいても見られた。E/Pを40重量部より高くすると、防水材のひび割れ追従性に問題が生じるおそれがあるため、E/Pは40重量部以下であることが好ましい。
【0070】
<ポリマーセメント比に対するゼロスパンテンション伸び量及び付着強さについて>
〔従来技術に基づく比較例のゼロスパンテンション伸び量及び付着強さ特性〕
図8は、前記比較試料1〜4について、それぞれのゼロスパンテンション伸び量及び付着強さをグラフに示したものである。
【0071】
図8によれば、P/Cを80重量部から140重量部に増加させると、シランカップリング剤の有無にかかわらず、ゼロスパンテンション伸び量(左軸)は増加し、付着強さ(右軸)は低下した。すなわち、エポキシ樹脂を含まない従来のアクリル樹脂ポリマーセメントからなる防水材は、P/Cを変化させてもゼロスパンテンション伸び量若しくは付着強さのいずれか一方を改善できるにとどまり、両特性はトレードオフの関係にあった。
【0072】
〔エポキシ樹脂配合による本発明のゼロスパンテンション伸び量及び付着強さ特性〕
次に、アクリル樹脂を含む主材と、エポキシ樹脂を含む粉材と、水溶性アミン樹脂硬化剤の3材の組み合わせからなる本発明に係るポリマーセメント組成物による防水材の特性について、E/Pを27重量部又は30重量部に固定し、P/Cを変化させて得られた結果について説明する。各実施例の配合割合及び特性値について表4及び
図9,10に示した。
【0073】
【表4】
【0074】
表4からゼロスパンテンション伸び量及び付着強さの試験結果を、シランカップリング剤を含まない場合(実施例2,3、5〜8)とシランカップリング剤を含む場合(実施例10,11、13〜16)のそれぞれにおいて抽出し、
図9(a),(b)及び
図10(a),(b)に示す。
【0075】
図9(a),(b)及び
図10(a),(b)に示す結果から、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が混合されてなるポリマーセメント組成物から得られる防水材は、P/Cを80重量部から増加させるに従ってゼロスパンテンション伸び量及び付着強さの両方の特性が向上することが分かった。本検討において、ゼロスパンテンション伸び量及び付着強さの両特性は、P/Cが300重量部まで単調に向上する傾向を示し、P/Cが400重量部で若干の低下傾向が現れた。
【0076】
また、このゼロスパンテンション伸び量及び付着強さが向上する傾向は、シランカップリング剤を含まない場合(
図9(a),(b))とシランカップリング剤を含む場合(
図10(a),(b))のいずれにおいても同様に見られた。
【0077】
<ポリマーセメント比に対する引張強さ及び伸び率について>
〔エポキシ樹脂配合による本発明の引張強さ特性〕
一方、表4から引張強さの試験結果について、シランカップリング剤を含まない場合(実施例2,3、5〜8)とシランカップリング剤を含む場合(実施例10,11、13〜16)のそれぞれにおいて抽出し、
図9(c),10(c)に示す。
【0078】
図9(c),10(c)に示す結果から、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が混合されてなるポリマーセメント組成物から得られる防水材は、P/Cを80重量部から増加させるに従って引張強さについても特性が向上することが分かった。本検討において、引張強さは、シランカップリング剤を含む場合(
図10(c))においては、ゼロスパンテンション伸び量及び付着強さの場合と同様にP/Cが300重量部まで単調に向上する傾向を示した。しかし、シランカップリング剤を含まない場合(
図9(c))においては、P/Cが300重量部から減少傾向が現れた。また、P/Cを400重量部とした場合、引張強さはシランカップリング剤の有無にかかわらずP/Cが80重量部の場合を下回った。
〔エポキシ樹脂配合による本発明の伸び率特性〕
また、表4から伸び率の試験結果について、シランカップリング剤を含まない場合(実施例2,3、5〜8)とシランカップリング剤を含む場合(実施例10,11、13〜16)のそれぞれにおいて抽出し、
図9(d),10(d)に示す。
【0079】
図9(d),10(d)に示す結果から、アクリル樹脂及びエポキシ樹脂が混合されてなるポリマーセメント組成物から得られる防水材は、P/Cを80重量部から増加させるに従って伸び率についても特性が向上することが分かった。本検討において、伸び率は、シランカップリング剤を含まない場合(
図9(d))とシランカップリング剤を含む場合(
図10(d))のいずれにおいても、ゼロスパンテンション伸び量及び付着強さの場合と同様にP/Cが300重量部までほぼ単調に向上する傾向を示し、P/Cが400重量部で低下傾向が現れた。
【0080】
以上より、エポキシ樹脂を配合した本発明に係る防水材によれば、P/Cを80重量部以上とすることでポリマーセメント系塗膜防水材Bタイプの適合品質を十分に満たす引張強さが得られるだけでなく、他の特性の全てにおいて当該適合品質を満たす防水材を得ることができた。
【0081】
さらに、本発明に係る防水材によれば、P/Cを増加させることで従来トレードオフにあったゼロスパンテンション伸び量及び付着強さの両特性を向上させるという優れた特性が得られることが分かった。
【0082】
P/Cの範囲は、400重量部より増加させると引張強さが急激に低下することが見込まれることから、80〜400重量部であることが好ましい。また、より好ましくは、ゼロスパンテンション伸び量及び付着強さが単調に増加し、樹脂成分の増加に伴う原料コストの増加に対しても特性の向上によって補うことが可能であることから、P/Cが80重量部〜300重量部までの範囲が好ましい。
【0083】
<シランカップリング剤の効果について>
次に、主材にシランカップリング剤として、エポキシ系メトキシシランカップリング剤を混合した場合(実施例17)と、主材にシランカップリング剤を混合していない場合(実施例18)との特性を比較した。それぞれについての配合割合及び特性値について表5に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
表5から、シランカップリング剤を配合した実施例18によれば、シランカップリング剤を配合しない実施例17に対して、引張強さ、伸び率、ゼロスパンテンション伸び量、及び付着強さのいずれについても向上させることができた。
【0086】
さらに、実施例17、18の吸水率を調べると、23℃の水の場合、及び50℃の水の場合のいずれにおいても実施例17に比べて実施例18の吸水率が低く、耐水性が高いことが分かった。吸水率が低いほど長期間の使用によっても膨れが発生し難いため、付着強さとの相乗効果を発揮して防水材として長寿命化が可能となる。
【0087】
吸水率の測定は、厚さ1mmの膜状に形成した試料を4cm角に切断し、23℃、及び50℃に保持した水に所定期間浸漬し、期間経過後に引き上げたときに測定した試料の重量と、浸漬前に予め測定した試料の重量との差を算出し、浸漬前の試料の重量に対する増加重量の比率(%)を求めることによって行う。なお、表5においては、前記所定期間を1ヶ月とした。
【0088】
さらに、浸漬した水の温度が23℃の場合と50℃の場合における吸水率を比較すると、シランカップリング剤を混合しなかった実施例17の場合には吸水率は20%から42%へと大きく上昇したが、シランカップリング剤を混合した実施例18の場合には吸水率は10%から15%の上昇に留まった。これにより、本発明に係る防水材用ポリマーセメント組成物にシランカップリング剤を混合することによって、水温上昇に対する耐水性の劣化も低減させることができた。
【0089】
本発明によれば、P/C及びE/Pの値を、樹脂成分に基づく製品コストと現場で求められる防水性能に対する要求によって、従来よりも自由に選択することができる。このため、施工される防水材として高い防水性能をバランス良く保持しながら、防水材用ポリマーセメント組成物の自由設計を行うことができる。