特許第6236501号(P6236501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6236501
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】液体肥料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C05G 5/00 20060101AFI20171113BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C05G5/00 A
   C05F11/00
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-138478(P2016-138478)
(22)【出願日】2016年7月13日
【審査請求日】2016年8月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】516211411
【氏名又は名称】菊地 貞利
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】菊地 貞利
【審査官】 齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭51−069064(JP,A)
【文献】 特開2008−054510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05G1/00−5/00
C05F1/00−17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
栽培されたシイタケが収穫された後の菌床を溶媒である水に浸漬させる浸漬工程と、
前記菌床が前記溶媒に浸漬された状態を所定時間だけ維持することで、前記菌床に含まれる肥料成分を前記溶媒に抽出させる抽出工程と、
前記抽出工程を経た前記菌床により、前記シイタケの新たな栽培を行う栽培工程と、を有するサイクルが、複数回にわたり繰り返され、
前記浸漬工程において、
水平方向に隣接する前記菌床の間にすき間を設けて複数の前記菌床を積み重ねて水に浸漬させる、
ことを特徴とする液体肥料の製造方法。
【請求項2】
前記抽出工程は、前記溶媒の中に前記菌床を静置して行われる、
請求項1に記載の液体肥料の製造方法。
【請求項3】
前記浸漬工程において、前記菌床に加え、前記シイタケの栽培の過程で生じる有機的廃棄物を前記溶媒に浸漬し、
前記抽出工程において、前記菌床に含まれる肥料成分に加え、前記有機的廃棄物に含まれる前記肥料成分を前記溶媒に抽出させる、
請求項1又は請求項2に記載の液体肥料の製造方法。
【請求項4】
前記浸漬工程において、
先行して抽出された前記肥料成分を含む前記溶媒を、前記菌床を浸漬させる前記水として用いる、
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の液体肥料の製造方法。
【請求項5】
前記有機的廃棄物は、前記シイタケ又は前記シイタケの石づきである、
請求項3又は請求項4に記載の液体肥料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体肥料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シイタケ等の食用キノコの栽培は原木によるものが主体であったが、菌床に菌種を接種して培養する菌床栽培が増加している。これに伴って、多くの使用済みの菌床が廃棄されている。
【0003】
そこで、使用済みの菌床を有効利用する方法が提案されている。例えば、特許文献1には、キノコの菌床栽培に用いられた後であって、腐敗する前のキノコ培養基に水を加えて攪拌して、水溶性の肥料成分を水に溶かして抽出する液体肥料の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−106613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、菌床栽培は、菌床に菌種を接種する接種工程と、菌種を接種した菌床を培養室に置いてキノコを栽培する栽培工程と、栽培したキノコを収穫する収穫工程があり、各工程において、様々な廃棄物が生じる。
菌床栽培がさらに普及するためには、菌床も含めこれらの廃棄物も有効利用されることが必要である。
【0006】
以上より、本発明は、シイタケの菌床栽培を通じて、菌床に加えて、菌床以外に廃棄物となっていたものの有効利用を図る手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の液体肥料の製造方法は、栽培されたシイタケが収穫された後の菌床を溶媒である水に浸漬させる浸漬工程と、菌床が溶媒に浸漬された状態を所定時間だけ維持することで、菌床に含まれる肥料成分を溶媒に抽出させる抽出工程と、抽出工程を経た菌床により、シイタケの新たな栽培を行う栽培工程と、を有するサイクルが、複数回にわたり繰り返される。本発明の浸漬工程において、水平方向に隣接する菌床の間にすき間を設けて複数の菌床を積み重ねて水に浸漬させることを特徴とする。
【0008】
本発明における抽出工程は、溶媒の中に菌床を静置して行われることが好ましい。
また、浸漬工程において、菌床に加え、シイタケの栽培の過程で生じる有機的廃棄物を溶媒に浸漬し、抽出工程において、菌床に含まれる肥料成分に加え、有機的廃棄物に含まれる肥料成分を溶媒に抽出させることが好ましい。
【0009】
本発明の浸漬工程において、先行して抽出された肥料成分を含む溶媒を、菌床を浸漬させる水として用いる、ことができる。
本発明における有機的廃棄物は、シイタケ又はシイタケの石づきであることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、菌床栽培において使用済みの菌床及び菌床以外に生じる廃棄物を、有効利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に用いる菌床及びシイタケを示す図である。
図2】(a)は本実施形態に係るシイタケ10の栽培手順を示し、(b)は第一実施形態に係る液体肥料の製造手順を示す図である。
図3】本発明の他の工程例を示す図である。
図4】本発明の更に他の工程例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は液体肥料の製造方法であり、本実施形態は、シイタケ10の菌床栽培に用いた菌床20から肥料成分を抽出する第一実施形態と、シイタケ10の菌床栽培の過程で生じる有機的廃棄物から肥料成分を抽出する第二実施形態及び第三実施形態と、を含んでいる。
まず本実施形態に用いるシイタケ10及び菌床20について説明し、次いで第一実施形態、第二実施形態及び第三実施形態の順に説明する。
【0013】
[シイタケ10]
シイタケ(学名:Lentinula edodes)10は、キノコの一種である。
シイタケ10は、図1に示すように、頭部に傘13と、シイタケ10が収穫されるまで菌床20に接触している石づき15と、を有している。傘13と石づき15は、円柱状の柄17により繋がっている。
シイタケ10の栽培は、図2(a)に示すように、通常、菌床20に図示を省略する菌種を接種する接種工程と、菌種を接種した菌床20を培養室内で台60等に置いてシイタケ10を栽培する栽培工程と、栽培したシイタケ10を収穫する収穫工程と、を有する。本実施形態においては、菌床20への菌種の接種方法及びシイタケ10の栽培方法は当業者に公知の方法を用いることができる。
【0014】
第一実施形態は、収穫工程を経てシイタケ10が取り除かれた菌床20を用いて液体肥料を製造する。また、第二実施形態及び第三実施形態は、収穫した中から異形などの商品として扱うことのできない規格外のシイタケ10、及び、シイタケ10の石づき15からなる有機的廃棄物を用いて液体肥料を製造する。
なお、収穫工程において、シイタケ10だけでなく石づき15を取り除くことができるが、そのまま残しておくこともできる。同様に、規格外のシイタケ10は、石づき15とともに菌床20に残しておくことができる。この石づき15及びシイタケ10は、第1実施形態において、菌床20とともに肥料成分の抽出源となる。
【0015】
[菌床20]
菌床20はシイタケ10を栽培するために用いられるものであり、後述するように接種工程、栽培工程及び収穫工程を経た菌床20は繰り返して栽培に使用されるものである。この栽培は、自然の環境下で行われる自然栽培、及び、温度、湿度などの栽培環境が人為的に調節される施設内で行なわれる施設培型の両者を含む。
菌床20は、培地基材と、栄養剤と、薬剤と、を有する人工の培地である。
培地基材には、大鋸屑などの木質基材が用いられている。大鋸屑の樹種や粒の大きさは、栽培するシイタケ10の栽培条件を考慮して、公知のものから適宜選択することができる。
【0016】
栄養剤は、シイタケ10の菌糸の生長を促進させることや、シイタケ10に養分を蓄積させることを目的とするものである。栄養剤の種類や配合量は、栽培するシイタケ10の品種や栽培条件を考慮して、当業者に公知のものから適宜選択することができる。後述する薬剤も同様である。
薬剤は、シイタケ10の菌糸の生長の促進を目的とするものや、後述する栽培工程における害虫防除を目的とするものである。
なお、菌床20を製造する方法は任意であり、当業者に公知の方法を適宜適用できる。
【0017】
〔第一実施形態〕
以下、添付図面を参照しながら、本発明の第一実施形態について説明する。
本実施形態は、シイタケ10の菌床栽培に用いた菌床20を溶媒30に浸漬させて液体肥料1Aを溶媒30に抽出する製造方法であり、図2(a)で説明した収穫工程の後に実行される。
本実施形態の液体肥料1Aの製造方法は、図2(b)の色抜き矢印に示す順に、収容工程と、浸漬・抽出工程と、肥料回収工程と、を備えている。
以下に、一群の菌床20を用いて菌床栽培した場合を想定して説明するが、一つの菌床20だけで菌床栽培した場合においても、本発明の製造方法を実施することができる。
【0018】
[収容工程]
シイタケ10を収穫した後の複数の菌床20を、図2(b)に示すように、容器70の中に積み重ねて収容する。なお、シイタケ10が収穫されてからの経過時間が長くなると、菌床20が発酵してしまう。そうすると、菌床20に含まれる肥料成分が細菌等の微生物に消費されてしまうので、本実施形態においては、好ましくは発酵に至らない菌床20を用いることはできない。
収容される菌床20は、前述したように商品として扱うことのできないシイタケ10や石づき15が残されていてもよい。なお、菌床20に残されているシイタケ10や石づき15は、本実施形態における有機的廃棄物に該当する。
なお、容器70に収容されるのは、収穫の直後の菌床20でも、また、予定の期間だけ経た後の菌床20でもよい。
【0019】
シイタケ10の収穫は、石づき15ごとシイタケ10をもぎ取って行うことを基本とするが、シイタケ10をもぎ取るのが困難な場合は、はさみ等で柄17と石づき15の間を切断してから、シイタケ10を収穫することがある。また、菌床20に栽培されたシイタケ10の全てが商品として規格を満たさない場合もある。このような、シイタケ10及び石づき15が残されている菌床20をそのまま用いれば、不要な収穫作業負担を軽減することができる。
【0020】
容器70に積み上げられた一群の菌床20が水平方向に隣接する菌床20との間にすき間を設けておくと、肥料成分が抽出され易い。
【0021】
[浸漬工程]
菌床20を容器70に収容したならば、図2(b)に示すように、容器70の中に溶媒30を供給して、菌床20を溶媒30に浸漬させる。溶媒30は、最も上に位置する菌床20の表面が水面で覆われる程度に供給される。菌床20が溶媒30で浸漬された容器70の上部開口に蓋80で塞いでもよい。
ここで用いられる溶媒30としては、液体肥料に適した水であれば制約はなく、上水、天然水などを広く適用できる。また、例えば、本実施形態により先行して抽出された液体肥料1Aを溶媒30として用いることもできる。先行する液体肥料1Aの肥料成分の濃度が低い場合に有効である。
また、溶媒30の温度は常温でよいが、加熱されたものを用いてもよい。
【0022】
[抽出工程]
次に、菌床20が溶媒30に浸漬された状態を所定の時間だけ維持することで、菌床20から溶媒30に肥料成分を抽出させる。
菌床20の溶媒30への浸漬時間は、菌床20の大きさ、容器70への菌床20の収容状態、菌床20に対する水の量などの諸条件により変えることが好ましい。本発明者らの検討によれば、一つの目安として浸漬時間を5時間以上とすれば、必要な肥料成分を含む液体肥料1Aを得ることができる。一方で、浸漬時間が24時間を超えると、浸漬時間に見合うだけの肥料成分の抽出ができなくなる。よって、浸漬時間は5〜24時間の間から選択するのが好ましい。
また、浸漬時間は、菌床20が繰り返して使用された回数により変えてもよい。具体的には、繰り返して使用された回数が増えるに伴い、浸漬させる時間を長くすることができる。繰り返して使用された回数の多い菌床20は、含んでいる肥料成分が少ないからである。
【0023】
第一実施形態は、液体肥料1Aが抽出された菌床20に菌種を接種してからシイタケ10を収穫するという一連の工程を経たのちに、また容器70に収容して液体肥料1Aの抽出に供することを前提とする。このように、第一実施形態における菌床20は、繰り返し使用されるため、菌床20の形状を保持する必要がある。そのため、菌床20を溶媒30に浸漬して肥料成分を抽出する間は、形状が崩れるように菌床20に圧力を加えたり拡販したりすることを避ける必要があり、菌床20を静置させる。つまり、第一実施形態における液体肥料1Aの抽出は静置抽出による。ただし、菌床20の形状を崩さない程度に溶媒30を撹拌してもよい。
【0024】
[肥料回収工程]
菌床20を溶媒30に浸漬してから所定の時間が経過したならば、菌床20を容器70から取り出す。そして、容器70に残った溶媒30が液体肥料1Aとなるので、他の容器に移して回収する。
なお、取り出された菌床20は、上述したように、栽培工程及び収穫工程を新たに経た後に、液体肥料1Aの抽出に供されるという一連のサイクルを複数回繰り返すことができる。本発明者は、このサイクルを5〜6回繰り返しても、実用に供する肥料成分を含む液体肥料1Aを製造できることを確認している。
【0025】
[液体肥料1A]
以上のようにして得られる液体肥料1Aには、菌床20から溶媒30に抽出された抽出物には肥料成分が含まれている。この肥料成分には、少なくとも窒素、リン酸及び仮里が主成分として含まれている。肥料分析法(1992年版)による分析結果として、本実施形態に基づいて製造した液体肥料1Aには以下の肥料成分が含まれることを確認している。この液体肥料1Aは、5回目のサイクルで抽出されたものである。なお、この分析結果はあくまで一例であり、一連のサイクルの回数や、菌床20を溶媒30に浸漬する時間等により、肥料成分の濃度は異なる。また、窒素、リン酸及び加里以外の肥料成分を含んでいてもよい。
窒素:0.0011質量%
リン酸:0.0014質量%
加里:0.0064質量%
【0026】
液体肥料1Aは、農作物や観賞用植物等の種々の植物の生育に用いることができる。上述した分析結果例の液体肥料1Aであれば、希釈などすることなくそのままで投与することができる。
液体肥料1Aの投与方法は、これまでの液体肥料と同様に、植物の種類や植物が生育する環境により適宜行えばよい。
【0027】
[効果]
以下、第一実施形態による効果を説明する。
本実施形態によれば、菌床20が繰り返して液体肥料1Aの製造に供される。したがって、一つの菌床20から複数回にわたり液体肥料1Aを製造することができるので、一つの菌床20当たりの液体肥料1Aの収量を増大することができる。
しかも、浸漬工程が行われた回数が5回だとすれば、最初の1,2回に限らず、浸漬工程が行われた5回の全てについて、液体肥料1Aを製造することができるので、浸漬工程で用いた溶媒30を廃棄することなく、液体肥料1Aとして最大限に有効活用することができる。
また、特許文献1のように攪拌するといった作業を伴うことなく、菌床20を溶媒30に静置させておくだけで液体肥料1Aを抽出できるので、少ない作業負担で効率よく液体肥料1Aを製造できる。
さらに、植物に投与する段階においては、菌床20を粉砕して肥料とするのに比べて、生育している植物、特に植物の地下茎や根の部分に熱的な悪影響を与えない。つまり、菌床20を粉砕して得られる肥料は、発酵して熱を発生さるので、植物の地下茎や根の部分に悪影響を与えるが、液体肥料1Aは発酵することがない。
さらにまた、本発明者の検討によると、シイタケ10以外のキノコについて、第一実施形態と同様にして液体肥料1Aの製造を試みた。しかし、浸漬を所定時間経過した溶媒30を植物に与えたものの、本実施形態により製造された液体肥料1Aに比べると、植物の生長の程度は明らかに劣る。
【0028】
〔第二実施形態〕
次に、本発明の第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態において第一実施形態と同様の構成要素には、第一実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0029】
本実施形態は、第一実施形態と異なり、菌床栽培の過程で生じた有機的廃棄物から、溶媒30に抽出させた肥料成分を有する液体肥料1Bの製造方法である。具体的には、図3(a)に示すように、有機的廃棄物として、収穫工程で収穫した中の規格外のシイタケ10を使用するものである。
本実施形態では、回収工程において、図3(b)に示すように、規格外の一群のシイタケ10が容器70の中に収容される。なお、この規格外のシイタケ10は、一度の収穫作業で得られたものを対象としてもよいし、ある程度の量を蓄えておいたものを対象としてもよい。また、この規格外のシイタケ10とは、傘13の部分だけ、また、柄17の部分だけ、を含む概念を有している。
【0030】
次に浸漬工程において、容器70の中で規格外のシイタケ10を溶媒30に浸漬させて、第一実施形態と同様に抽出工程において肥料成分を静置抽出させる。
抽出工程は、一つの指針として、容器70の中で規格外のシイタケ10が発酵して原形を留めなくなるまで続けることが好ましい。具体的には、シイタケ10が浸漬されている環境の温度によって異なるが、浸漬を10〜15日位継続すると、シイタケ10は原形を留めなくなるので、それまで抽出工程を続けるのが好ましい。
抽出工程の終盤には、溶媒30を掻き回すことで溶媒30から不溶物を濾過により除去しつつ、液体肥料1Bを得るのが好ましい。
【0031】
本実施形態により製造された液体肥料1Bは、シイタケ10の傘13が黒に近い茶色であるため、第一実施形態の液体肥料1Aよりも少々黒っぽい色をしている。液体肥料1Bについても成分分析を行ったところ、液体肥料1Aと同様の窒素、リン酸及び加里の含有量が確認された。
【0032】
本実施形態によれば、従来は廃棄の対象となっていた規格外のシイタケ10を用いて液体肥料1Bを製造することができるので、規格外のシイタケ10を有効活用できる。
また、ここでは静置抽出を例にして説明したが、溶媒30及びシイタケ10を攪拌して肥料成分を抽出することもできる。規格外のシイタケ10は、菌床20と異なり、再利用することがないからである。第三実施形態の石づき15についても同様である。
【0033】
〔第三実施形態〕
次に、本発明の第三実施形態について説明する。なお、第三実施形態において第一実施形態と同様の構成要素には、第一実施形態と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0034】
本実施形態は、第二実施形態と同様に、菌床栽培の過程で生じた有機的廃棄物から、溶媒30に抽出させた肥料成分を有する液体肥料1Cの製造方法である。具体的には、図4(a)に示すように、有機的廃棄物として、収穫工程で収穫したシイタケ10から切断された石づき15を使用するものである。
本実施形態では、回収工程において、図4(b)に示すように、一群の石づき15が容器70の中に収容される。なお、この石づき15は、一度の収穫作業で得られたものを対象としてもよいし、ある程度の量を蓄えておいたものを対象としてもよい。
【0035】
次に浸漬工程において、容器70の中で石づき15を溶媒30に浸漬させて、第一実施形態と同様に抽出工程において肥料成分を静置抽出させる。
抽出工程は、容器70の中で石づき15が発酵して原形を留めなくなるまで続けることが好ましい。具体的には、石づき15が浸漬されている環境の温度によって異なるが、浸漬を10〜15日位継続すると、石づき15は原形を留めなくなるので、それまで抽出工程を続けるのが好ましい。
抽出工程の終盤には、溶媒30を掻き回すことで溶媒30から不溶物を濾過により除去しつつ、液体肥料1Cを得るのが好ましい。
【0036】
本実施形態により製造された液体肥料1Cは、上述した第一実施形態及び第二実施形態により製造した液体肥料1Cよりも濃い茶色になる。液体肥料1Cについても成分分析を行ったところ、液体肥料1Aと同様の窒素、リン酸及び加里の含有量が確認された。
【0037】
本実施形態によれば、従来は廃棄の対象となっていた石づき15を用いて液体肥料1Cを製造することができるので、石づき15を有効活用できる。
【0038】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0039】
例えば、第一実施形態〜第三実施形態を組み合わせることができる。例えば、菌床20と規格外のシイタケ10を容器70に収容して、液体肥料を製造することができる。
また、第一実施形態〜第三実施形態の製造方法で製造した液体肥料1A〜1Cを混合することで、肥料成分の各成分の含有量を調整することができる。
【符号の説明】
【0040】
1A,1B,1C 抽出液体肥料
10 シイタケ
13 傘
15 石づき
17 柄
20 菌床
30 溶媒
60 台
70 容器
80 蓋
【要約】
【課題】菌床を有効利用して液体肥料を効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】本発明の液体肥料の製造は、栽培されたシイタケ10が収穫された後の菌床20を溶媒30である水に浸漬させる浸漬工程と、菌床20が溶媒30に浸漬された状態を所定時間だけ維持することで、菌床20に含まれる肥料成分を溶媒に抽出させる抽出工程と、抽出工程を経た菌床20にシイタケ10の新たな栽培を行う栽培工程と、を有するサイクルが、複数回にわたり繰り返されることを特徴とする。本発明によれば、菌床20を繰り返して液体肥料1Aの製造に供するので、一つの菌床20当たりの液体肥料1Aの収量を増大することができる。しかも、浸漬工程が行われた回数が5回だとすれば、最初の1,2回に限らず、5回の全てについて、液体肥料1Aを製造することができるので、浸漬工程で用いた溶媒30を廃棄せずに、液体肥料1Aとして最大限に有効活用することができる。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4