(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のスピーカユニットのうちの少なくとも1つはバス・レフレックス型であり、前記バス・レフレックス型の第2のスピーカユニットの背後から出力される音声が、前記第1のスピーカユニットから出力される音声と同じ方向に出力されることを特徴とする、請求項1に記載の音響装置。
所定の周波数以下の音声を出力する場合、該所定の周波数を超える音声を出力する場合よりも多くの第2のスピーカユニットを用いて、音声を出力することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の音響装置。
【背景技術】
【0002】
従来、映像コンテンツの技術分野等において、映像に伴って出力される音声の臨場感を向上させるために、マルチチャンネル音響方式が利用されている。例えば、放送や光ディスク等の記録メディア、ネットワーク等を経由して、5.1chや7.1chの音声を配信するサービスがある。マルチチャンネル音響方式は、受聴者の周囲に位置付けられた複数の音響チャンネルを含んでおり、複数の音響チャンネルに、受聴者の背後に位置する音像や、受聴者の周囲を移動する音像を含ませることができる。5.1chや7.1chのマルチチャンネル音響方式が有名であるが、近年では、受聴者の周囲に位置する音響チャンネルに加えて、受聴者の上方や下方に位置する音響チャンネルをさらに含んだ、三次元マルチチャンネル音響方式が提案されている。例えば、22.2chの三次元マルチチャンネル音響方式は、ARIB STD-B59に規定されているように、受聴者を三次元的に取り囲むように位置づけられた22(全帯域)+2(低音域)個の音響チャンネルを含む。
【0003】
図8の(a)〜(d)は、22.2chの三次元マルチチャンネル音響方式の一構成例を示す。
図8(a)に示すように、三次元空間が、受聴者の位置を基準として、3層に分割される。受聴者の上方の層をトップ層、受聴者の周囲の層をミドル層、受聴者の下方の層をボトム層と呼ぶ。
図8の(b)〜(d)に示すように、22.2chの三次元マルチチャンネル音響方式には、トップ層に9点、ミドル層に10点、およびボトム層に3点の音響チャンネルが、それぞれ含まれる。
【0004】
三次元マルチチャンネル音響方式に対応する音響装置は、複数個のスピーカユニットを備えており、1または複数個のスピーカユニットから、
図8の(b)〜(d)に示す複数の音響チャンネルの音声信号を再生する。音響装置を構成するスピーカユニットの一部は、表示装置に組み込まれる場合がある。例えば、22.2chの三次元マルチチャンネル音響方式に対応する音響装置では、受聴者の前方に位置する11チャンネルに対応する複数個のスピーカユニットが、表示装置に組み込まれる場合が多い。
【0005】
図9は、表示装置上における11チャンネルの位置を示す図である。
図9に示すように、11チャンネルのうちの3つの音響チャンネル(
図9のFLc・FC・FRc)は、表示装置の表示画面内に位置する。これらの音響チャンネルに対応するスピーカユニットを、表示画面内に配置することはできない。そこで、
図9に示すように、FLc、FC、FRcの各音響チャンネルを、表示画面の上側および下側に位置する2つの音響チャンネル(
図9のUpper LcとLower Lc、Upper CとLower C、Upper RcとLower Rc)にそれぞれ分割する構成が考えられる。上記の構成では、表示画面内には音響チャンネルが存在しなくなるので、各音響チャンネルの位置に、スピーカユニットをそれぞれ配置することができる。
【0006】
図10は、従来の音響装置914を備えた表示装置9の正面図である。
図10に示すように、音響装置914を構成するスピーカユニット(の一部)は、表示装置9の表示画面913の周囲に取り付けられている。表示画面913の周囲には、
図9に示す複数の音響チャンネルに対応する、合計12個のスピーカユニット901〜912が配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成は、特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。なお、下記の説明において、「音声」とは、音響製品で取り扱われる音声全般であり、人の声および背景音、楽音を含む。
【0015】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態について、
図1〜
図3を用いて詳細に説明する。
【0016】
(表示装置の外観)
図1は、本実施形態に係る表示装置1の正面図である。
図1に示すように、表示装置1の表示画面113の周囲には、音響装置14を構成する複数のスピーカユニット101〜112、201〜212が取り付けられている。音響装置14は、三次元マルチチャンネル音響方式に対応しており、複数のスピーカユニット101〜112、201〜212によって、例えば、受聴者の前方に位置する音像(つまり、定位された音源が生成する音場)や、表示装置1の周囲を移動する音像を再生することができる。なお、音響装置14は、表示装置1に取り付けられていない他のスピーカユニットをさらに備えていてもよい。
【0017】
音響装置14の第1のスピーカユニット101〜112は、振動板が表示画面113の前方向を向くように、つまり音声を前方向に出力するように配置されている。また、音響装置14の第2のスピーカユニット201〜212は、振動板が表示画面113の面方向を向くように、つまり音声を横方向に出力するように配置されている。なお、第2のスピーカユニット201〜212のうちの少なくとも1つは、バス・レフレックス型であってよい。この構成では、バス・レフレックス型の第2のスピーカユニット201〜212は、第1のスピーカユニット101〜112と同じ方向、つまり前方向にも、音声を出力する。
【0018】
第1のスピーカユニット101〜112は、全帯域(低音域から高音域まで)の音声信号を再生する。一方、第2のスピーカユニット201〜212は、低音域の音声信号を特に好適に再生するように設計されている。より詳細には、第2のスピーカユニット201〜212は、第1のスピーカユニット101〜112と比較して、最小共振周波数が低くなるように設計されている。例えば、第2のスピーカユニット201〜212は、第1のスピーカユニット101〜112と比較して、口径が大きく設計されていたり、振動板の重量が大きく設計されていたりしてよい。後で詳細に説明するように、スピーカユニット201〜212は、スピーカユニット101〜112が出力する音声の低音成分を出力する。また、スピーカユニット201〜212は、受聴者の横や後ろに定位する音源が生成する音場を、サラウンド音声としてさらに再生する。以下では、スピーカユニット101〜112を全帯域スピーカユニット101〜112または単にスピーカユニット101〜112と呼び、スピーカユニット201〜212を低音域スピーカユニット201〜212と呼ぶ。
【0019】
図1に示すように、表示装置1を正面から見たとき、低音域スピーカユニット201〜212は、隣り合う2つの全帯域スピーカユニット101〜112の間に、それぞれ配置されている。表示装置1の前にいる受聴者から、低音域スピーカユニット201〜212はほとんど見えない。そのため、受聴者から見ると、表示装置1は、表示画面113の周囲に取り付けられたスピーカユニットの数が少ないように見えるので、受聴者は表示装置1をスマートに感じる。また、低音域スピーカユニット201〜212が目立たない状態を維持したままで、低音域スピーカユニット201〜212の振動板を大きくしてもよい。これにより、低音域スピーカユニット201〜212が低音を再生する能力を簡単に向上させることができる。
【0020】
(表示装置の構成)
図2および
図3を用いて、本実施形態に係る表示装置1の構成を説明する。
図2は、本実施形態に係る表示装置1の構成を示すブロック図である。また、
図3は、表示装置1の音響装置14が備えた信号処理部12の構成を示すブロック図である。
図2に示すように、表示装置1は、音響装置14、リモートコントローラ16、および再生部17を備えている。
【0021】
音響装置14は、22.2chの三次元マルチチャンネル音響方式に対応しており、
図8の(b)〜(d)に示す複数の音響チャンネルの音声信号を再生することができる。音響装置14は、入力部11、信号処理部12、増幅部13、全帯域スピーカ部14A、低音域スピーカ部14B、および制御部15を備えている。音響装置14は、表示装置1のリモートコントローラ16から送信される制御信号によって制御される。
【0022】
制御部15は、入力部11、信号処理部12、および増幅部13を制御する。制御部15は、受聴者の操作を受け付ける。また、音響装置14内の各部に対し、操作に基づく制御信号を伝送し、音響装置14の全体を制御する。音響装置14の各部に伝送される制御信号は、入力切替信号や音量調整信号のほか、電源の入切や、音質切り替え、サラウンド処理の入切などであってよい。
【0023】
再生部17は、表示装置1が再生するコンテンツの情報から音声信号を抽出して、抽出した音声信号を、入力信号として、音響装置14の入力部11に送信する。入力信号は、複数の音響チャンネル(例えば、22.2ch)の音声信号を含む。
【0024】
受聴者がリモートコントローラ16を操作し、表示装置1の電源を入れたとき、制御部15は音響装置14を起動する。制御部15は、音響装置14の各部に通電し、動作可能状態となったところで、増幅部13のミュートを解除する。これにより、音響装置14が音声を出力可能な状態となる。
【0025】
音響装置14の各部が起動すると、入力部11は、再生部17から入力信号を受け付ける。入力部11が受け付ける入力信号のフォーマットは、さまざまであるが、ここでは、入力信号のフォーマットは、HDMI(登録商標)2.0を用いた22.2チャンネルの音声信号とする。
【0026】
入力部11は、有線または無線の任意の手段(例えば、HDMIケーブル、またはアナログピンコネクタ)を用いて、表示装置1の再生部17から、複数の音響チャンネルの音声信号を含んだ入力信号を受信する。HDMIケーブルを用いる場合は、映像信号と音声信号が重畳される。入力部11は、音声信号を抽出する。映像信号は表示デバイス(図示せず)に出力される。入力部11は、表示デバイスからHDMIケーブルを経由して音声信号のみ受信してもよい。
【0027】
入力部11は、入力信号を適切なディジタル信号に変換して、該ディジタル信号を信号処理部12に出力する。例えば、信号処理に用いる標本化周波数が48kHzに設定されている場合、入力部11は、入力信号の標本化周波数を48kHzに変換する。また、入力部11は、アナログ信号の入力信号を受け付けた場合、A/D変換により、アナログ信号を、ディジタル信号に変換する。入力部11は、入力信号がない場合、標本化周波数48kHzの音声信号を、無音信号(音声データのない音声信号)として、信号処理部12に出力してもよい。
【0028】
入力部11は、入力信号を信号処理部12に出力する。信号処理部12は、入力部11から入力された入力信号に対し、後述する処理を行い、処理の結果として得られる全帯域スピーカ信号および低音域スピーカ信号を、増幅部13に出力する。
【0029】
増幅部13は、信号処理部12で処理された全帯域スピーカ信号および低音域スピーカ信号を、増幅して、全帯域スピーカ部14Aおよび低音域スピーカ部14Bに出力する。信号処理部12から増幅部13へ伝送される音声信号は、ディジタル信号であるが、増幅部13から全帯域スピーカ部14Aおよび低音域スピーカ部14Bへ出力される出力信号は、アナログ信号である。増幅部13は、まず、D/Aコンバータを用いて、ディジタル信号をアナログ信号に変換し、その後、入力信号を増幅する。増幅部13は、増幅した音声信号を、出力信号として、全帯域スピーカ部14Aおよび低音域スピーカ部14Bに出力する。あるいは、増幅部13は、ディジタル信号を増幅した後で、スイッチング動作により、該ディジタル信号をアナログ信号に変換してもよい。
【0030】
全帯域スピーカ部14Aは、主に中高音域を再生するための12個の全帯域スピーカユニット101〜112(
図1参照)で構成される。低音域スピーカ部14Bは、主に低音域を再生するための12個の低音域スピーカユニット201〜212(
図1参照)で構成される。ここで、全帯域スピーカユニット101〜112は、非特許文献2に提示された配置をとる。低音域スピーカユニット201〜212は、全帯域スピーカユニット101〜112の各々の近傍に配置される。各低音域スピーカユニットは、全帯域スピーカユニットのなるべく近くに配置されていることが好ましい。この構成では、1つの全帯域スピーカユニットと1つの低音域スピーカユニットとを含む組に対し、広い周波数帯域にわたって、全帯域スピーカユニットの近傍に、音像を提示することができる。人間には、音声の周波数が低く、つまり音声の波長が長くなると、音像の定位を感じにくくなるという特性がある。そこで、音響装置14は、所定の周波数(たとえば80Hz)以下の周波数の音声を出力する場合、所定の周波数を超える周波数の音声を出力する場合よりも多くの低音域スピーカユニットを用いて、音声を出力してもよい。あるいは、音響装置14にさらに設けた低音域用スピーカユニット(サブウーファ)で再生してもよい。これらにより、音響装置14の低音の再生能力をさらに高めることができる。
【0031】
全帯域スピーカユニット101〜112は、増幅部13から入力された全帯域スピーカ信号を再生する。また、低音域スピーカユニット201〜212は、増幅部13から入力された低音域スピーカ信号を再生する。全帯域スピーカユニット101〜112から出力された音声は、受聴者の耳に直接入る。一方、低音域スピーカユニット201〜212から出力された音声は、表示装置1が置かれた部屋の壁等によって拡散された後、拡散音声として、受聴者の耳に入る。そのため、受聴者には、拡散音声が部屋内で広がっているように感じる。拡散音声の聞こえ方は、部屋の特性によって異なる(実施形態2参照)。
【0032】
なお、全帯域スピーカユニット101〜112と、低音域スピーカユニット201〜212とに対し、互いに異なる増幅部13を対応させてもよい。一般的に、低音域スピーカユニット201〜212は、音圧等に対する耐性が高く、かつ駆動電力も大きい。そのため、低音域スピーカユニット201〜212に対しては、強力な増幅部13を設け、全帯域スピーカユニット101〜112に対しては、標準の増幅部13を設けてもよい。全帯域スピーカユニット101〜112に対しては、強力な増幅部13を設けないことにより、増幅部13のコストを抑制することができる。
【0033】
(信号処理部)
図3に示すように、音響装置14の信号処理部12は、音量調整部121、フィルタ部122、サラウンド処理部123、およびミックス部124を含む。
【0034】
音量調整部121は、入力信号のレベル(音量)を調整する。音量調整部121は、入力信号と、制御部15で設定された設定音量に対応する係数とをかけ合わせることで、受聴者の設定音量を、入力信号に反映させる。レベル調整された入力信号は、受聴者の前方に位置する11個の音源の音声信号と、それ以外の11個の音源の音声信号に分離される。
【0035】
音量調整部121は、入力部11から信号処理部12に入力された入力信号のレベルを調整する。また、音量調整部121は、入力信号に含まれる複数の音響チャンネルの音声信号のうち、表示画面113上に位置付けられる11チャンネル(
図8の(b)〜(d)に示す、TpFL,TpFC,TpFR,FL,FLc,FC,FRc,FR,BtFL,BtFC,BtFR)の音声信号を、フィルタ部122に出力する。また、音量調整部121は、他の11チャンネル(
図8の(b)〜(d)に示す、BL,BR,BC,SiL,SiR,TpC,TpBL,TpBR,TpSiL,TpSiR,TpBC)の音声信号を、サラウンド処理部123に出力する。
【0036】
フィルタ部122は、表示画面113上に位置付けられる11チャンネル(
図8の(b)〜(d)に示す、TpFL,TpFC,TpFR,FL,FLc,FC,FRc,FR,BtFL,BtFC,BtFR)の音声信号に対して、帯域制限のフィルタ処理を行う。つまり、フィルタ部122は、所定の周波数帯域の音声信号のみを通過させる。また、フィルタ部122は、低音に特化した2チャンネルの音声信号に対しても、上記11チャンネルと同じフィルタ処理を行ってもよい。あるいは、フィルタ部122は、低音に特化した2チャンネルの音声信号には、フィルタ処理を行わなくてもよい。この構成では、上記2チャンネルの音声信号は、フィルタ処理を行われずに、上記11チャンネルの音声信号に加算される。
【0037】
具体的には、フィルタ部122は、音量調整部121から入力される音声信号を、低音域の音声信号と、それ以外の帯域の音声信号とに分割する。例えば、低音域スピーカユニットが受け持つ帯域が200Hz以下である場合、フィルタ部122は、全帯域スピーカユニットに出力する音声信号に対し、200Hzをカットオフ周波数とするハイパスフィルタ(HPF)をかける。また、フィルタ部122は、低音域スピーカユニットに出力する音声信号に対し、200Hzをカットオフ周波数とするローパスフィルタ(LPF)をかける。さらに、フィルタ部122は、低音域スピーカ用信号から、低音域スピーカユニットが再生できない極低音域の音声信号をカットしてもよい。例えば、フィルタ部122は、50Hzをカットオフ周波数とするHPFを、LPFから出力される低音域スピーカ用信号にかけてもよい。さらに、フィルタ部122は、スピーカユニット101〜112の再生周波数特性を補正してもよい。フィルタ部122は、HPFからの出力を、全帯域スピーカ信号として、増幅部13に出力するとともに、LPFからの出力を、低音域スピーカ用信号として、ミックス部124に出力する。
【0038】
全帯域スピーカユニットが再生する全帯域スピーカ信号は、帯域制限されているので、全帯域スピーカユニットに過大な入力が入ることを避けることができる。また、全帯域スピーカユニットの振動板のストローク量が減少するため、全帯域スピーカユニットの歪を抑制することができ、また全帯域スピーカユニットの消費電力を削減することもできる。したがって、全帯域スピーカユニットは、より安定して音声を再生することができる。
【0039】
サラウンド処理部123は、表示画面113上に位置付けられない11チャンネル(
図8の(b)〜(d)に示す、BL,BR,BC,SiL,SiR,TpC,TpBL,TpBR,TpSiL,TpSiR,TpBC)の音声信号に対して、擬似的なバーチャルサラウンド処理を行うことにより、サラウンド音声信号を生成する。バーチャルサラウンド処理とは、スピーカユニットが存在しない位置に定位された音源から音声が発せられたかのように受聴者に知覚させるための処理のことである。
【0040】
具体的には、バーチャルサラウンド処理では、サラウンド処理部は、音量調整部から入力される音声信号に対し、頭部伝達関数(HRTF)を模した関数を用いて、フィルタ処理を行う。HRTFは、仮想的な音源の位置から、受聴者の耳道に到るまでの音声の経路の特性(例えば、人間の頭部、肩、および耳介などの形状)が、受聴者に聞こえる音声に与える影響を、音声信号に反映させるために使用される。HRTFは、受聴者の装着したヘッドホンによってサラウンド音声信号が再生されることを想定して作成されている(バイノーラル方式)。サラウンド処理部は、サラウンド音声信号がスピーカユニットで再生された場合に、受聴者がヘッドホンを装着して音声を聞く場合と同じ音声を聞くことができるように、音声信号をフィルタ処理する(トランスオーラル方式)。例えば、サラウンド処理は、音声信号に対し、受聴者の右側のスピーカユニットから受聴者の左耳に届く音、および、受聴者の左側のスピーカから受聴者の右耳に届く音を予め除去する逆フィルタ処理を行うことによって実現する。この逆フィルタ処理は、一般的にクロストークキャンセルと称される。
【0041】
一般的に、上記のようなバーチャルサラウンド処理は、演算量が多いため、音響装置14のハードウェアコストが高くなる。また、逆フィルタが有効であり、かつ、受聴者がバーチャルサラウンド効果を感じることができる場所の範囲は狭く、かつ逆フィルタ処理を施した音声は、再生環境の変化に影響を受けやすいという特徴がある。そこで、サラウンド処理部123は、擬似的なバーチャルサラウンド処理として、HRTFを畳み込んだ音声信号を再生してもよいし、HRTFを解析し、特定の方向の定位に必要な音声信号の特徴のみを用いて、音声信号に対し、簡易な周波数フィルタ処理を行ってもよい。
【0042】
加えて、サラウンド処理部123は、生成したサラウンド音声信号に対し、信号レベルの調整、遅延の設定、周波数特性の補正などを行ってもよい。サラウンド音声信号は、受聴者から等距離にある複数のスピーカユニットから再生されることを前提に生成される。サラウンド音声信号を再生する複数のスピーカユニットが受聴者から等距離にない場合、サラウンド処理部123は、サラウンド音声信号に対し、距離差に応じた遅延処理や、距離減衰に応じたレベル補正処理等を行う。
【0043】
ミックス部124は、フィルタ部122から、表示画面113上に位置付けられる11チャンネルの音声信号と、低音に特化した2チャンネルの音声信号とを取得する。ミックス部124は、音響装置14における全帯域スピーカユニットおよび低音域スピーカユニットの配列に応じて、取得した11+2チャンネルの音声信号をミックスする。また、ミックス部124は、ミックスされた音声信号に、サラウンド処理部123から入力された音声信号を加算することにより、低音域スピーカユニット201〜212が再生する低音域スピーカ信号を生成する。ミックス部124は、生成した低音域スピーカ信号を、増幅部13に出力する。
【0044】
(スピーカユニットの構成)
全帯域スピーカユニットは、可聴帯域の音声を再生可能であるように設計されているが、現実的には、スピーカユニットの高音域の再生能力と低音域の再生能力とは、トレードオフの関係にある。一般的に、スピーカユニットは、高音域の再生能力を充実すると、低音域の再生能力が劣り、低音域の再生能力を充実すると、高音域の再生能力が劣る傾向にある。また、スピーカユニットは、口径を大きくすると、低音の再生に有利になるが、高音の再生には不利になり、口径を小さくするとその逆になる傾向がある。スピーカユニットは、口径が大きいほど、大量の空気を動かすことができるので、高い音圧を発生させる傾向もある。
【0045】
一方、表示装置としてのテレビやその周辺機器に、全帯域スピーカユニットを設ける場合、デザインや重量の制約から、全帯域スピーカユニットとして、小口径のスピーカユニットを選択せざるを得ないのが一般的である。しかしながら、小口径の全帯域スピーカユニットは、低音域の再生能力の面で不利になる。また、小口径の全帯域スピーカユニットに高い音圧の低音を出力させた場合、振動板が大きく変位するので、全帯域スピーカユニットに大きな歪を発生したり、全帯域スピーカユニットを破損したりする可能性が高くなる。
【0046】
そこで、前述したように、信号処理部12は、全帯域スピーカユニットに出力する音声信号(出力信号)から、一定の周波数以下の音声信号を減衰させる。低音域スピーカユニットが、全帯域スピーカユニットの代わりに低音を再生する。一般的に、低音は波長が長いため、回折しやすい特徴を持つ。そのため、受聴者は、低音域スピーカユニットから出力される低音が、全帯域スピーカユニットから出力されているように感じる。そのため、音響装置14は、広い帯域で、全帯域スピーカユニット上またはその近傍に定位させた音源が生成する音場を再生することができる。また、全帯域スピーカユニットは、主に中高音域の音声を、高い音圧で、無理なく出力することができる。
【0047】
低音域スピーカユニットは、低音域の音声だけでなく、サラウンド音声も再生する。一般的に、音波の周波数が高くなるにつれて、音波の直進性は高くなる。それゆえ、サラウンド音声は、横方向に直進しながら、部屋の壁や、部屋に置かれた物体によって拡散する。拡散したサラウンド音声は定位しない(つまり、受聴者が音源の位置を判別できない)ので、受聴者はサラウンド音声に包み込まれているように感じる。サラウンド音声は、広範囲に拡散されるため、受聴者は、部屋の広い範囲内で、サラウンド音声に包み込まれる感覚を享受することができる。なお、受聴者の後ろや横の特定位置に定位すべき音像が、特定位置に定位しない場合がある。この場合、受聴者は、音に包み込まれているような感覚を得る。一般的に、受聴者の後ろや横に配置されたスピーカユニットが再生する音声信号は、音に包み込まれている感覚を受聴者にもたらす成分と、特定位置に定位する成分との2種類に分類できる。多くのコンテンツでは、前者が支配的である。受聴者の前方に位置するチャンネルの音声信号に基づく音像は、音響装置の近傍に定位するのに対し、特定位置に定位すべき音像は、定位せずに、音響装置14から離れた位置にあるように、受聴者に知覚される。これにより、受聴者は、ある程度、音声に包まれている感覚を得ることができる。オブジェクトオーディオと呼ばれる記録音源などでは、包み込まれる感覚をもたらす成分と、特定位置に定位する成分とが、予め分離されている。音響装置14は、オブジェクトオーディオを再生する場合、音に包み込まれる感覚を受聴者にもたらす成分を低音域スピーカユニットから再生する一方、特定位置に定位する成分を別のスピーカユニットから再生してもよい。この構成では、音響装置14は、記録音源の制作者の意図により近い音響表現をすることが可能となる。
【0048】
低音域スピーカユニットが出力するサラウンド音声信号は、必ずしも、音響チャンネルと1対1で対応する必要はない。サラウンド音声信号は、1つの音響チャンネルに対応し、複数のスピーカユニットに再生されてもよい。これにより、音響装置14は、サラウンド音声を、より広い領域に拡散することができる。
【0049】
低音域スピーカユニットは、低音再生能力に優れたものであることが好ましい。一般的に、低音の再生能力に優れたスピーカユニットは、高音の再生能力に乏しい。しかしながら、サラウンド音声信号には、必ずしも高音成分が多く含まれているわけではない。また、受聴者は、サラウンド音声信号が主に低音成分のみである場合も、サラウンド音声に包み込まれているかのような感覚を得ることができる。それゆえ、低音スピーカユニットは、高音の再生能力の範囲内で、サラウンド音声信号を再生すればよい。必要であれば、音響装置14は、サラウンド音声信号の高音成分を再生するためのスピーカユニットをさらに備え、該スピーカユニットが、サラウンド音声信号の高音成分を再生してもよい。あるいは、サラウンド処理部123が、サラウンド音声信号の高音成分を強調するイコライザ処理等を行ってもよい。
【0050】
(変形例)
一変形例では、低音域スピーカユニットは、いわゆるバス・レフレックス型であり、低音域スピーカユニットのバスレフポートが、全帯域スピーカが音声を出力する方向と同じ方向に開口していてもよい。この構成では、低音域スピーカユニットから出力される音声は、バスレフポートから受聴者へ向かって放出されるので、音源を全帯域スピーカユニットにより近い位置に定位させることができる。低音域スピーカユニットのスピーカボックス内には、吸音材を配置してもよい。この構成では、吸音材によって、低音以外を低減することができるので、バスレフポートから放出されるサラウンド音声の拡散が、他の音声を阻害しないようにすることができる。
【0051】
全帯域スピーカユニットおよび低音域スピーカユニットの減衰周波数は、必ずしも一致する必要はない。例えば、全帯域スピーカユニットへの出力信号には、150HzのHPFをかける一方、低音域スピーカユニットへの出力信号には、全帯域スピーカユニットへの出力信号に、200HzのLPFをかけたものを加えてもよい。この構成では、低音域スピーカユニットが低音域の音声を再生する性能を改善することができる。また、フィルタの次数は高い必要はなく、6dB/oct程度であってよい。
【0052】
他の変形例では、再生部17は、音響装置14に入力する22.2chの音響チャンネルのうち、低音に特化した2チャンネルの音声信号を、低音域スピーカユニットに供給してもよい。上記2チャンネルの音声信号は、低音域スピーカユニットへの出力信号に加算される。この構成では、低音域スピーカユニットは、受聴者の前方に位置する11チャンネルの音声信号の低音成分と、サラウンド音声信号とともに、低音に特化した2チャンネルの音声信号も再生することができる。また、音響装置14のスピーカユニットの配列に応じて、上記2チャンネルの音声信号に含まれる音像を定義してもよい。この構成では、低音域スピーカユニットは、比較的周波数が高く、しかも定位に影響がある帯域の音声信号を、良好に再生することができる。これにより、表示装置1は、表示画面113に表示する映像と、音響装置14が出力する音声とをより一致させることができるため、より没入感の高い映像および音声を受聴者に提供することができる。
【0053】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、
図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0054】
本実施形態では、表示装置が置かれた部屋の特性に応じて、スピーカユニットから出力される音声を調整する構成を説明する。部屋の特性には、部屋の広さおよび形状、部屋の壁の材料および反射性能、および、部屋に置かれた物体の位置等が含まれる。
【0055】
(表示装置の構成)
図4を用いて、本実施形態に係る表示装置2の構成を説明する。
図4は、本実施形態に係る表示装置2の構成を示すブロック図である。
図4に示すように、表示装置2は、前記実施形態1で説明した表示装置1の構成(
図2参照)に加えて、測定用マイク18をさらに備えている。また、本実施形態に係る表示装置2の音響装置214は、前記実施形態1で説明した音響装置14の構成に加えて、測定信号入力部21および解析部22をさらに備えている。
【0056】
測定用マイク18は、拡散音声、つまり低音域スピーカユニット201〜212から出力されて、部屋の壁等によって反射された音声を受信する。測定用マイク18は、受信した拡散音声から生成した音声信号を、入力信号として、測定信号入力部21に送信する。測定信号入力部21は、低音域スピーカユニット201〜212から出力される出力音声の音声信号を取得するとともに、測定用マイク18が受信した拡散音声の音声信号を取得する。測定信号入力部21は、取得した2つの音声信号を、解析部22に出力する。解析部22は、測定信号入力部21から入力された2つの音声信号を解析し、解析結果を制御部15に出力する。
【0057】
(キャリブレーション)
受聴者は、音響装置214の設置後、初回起動時にスピーカユニットの調整を行う。具体的には、受聴者は、受聴位置に測定用マイク18を設置し、リモートコントローラ16を操作することにより、音響装置214をスピーカ調整モードにする。スピーカ調整モードでは、制御部15は、入力部11に対し、測定信号を出力する。測定信号は、スピーカユニットや部屋の周波数特性、遅延時間などが測定できる信号であればよい。測定信号は、例えば、タイムストレッチトパルス、M系列信号など、インパルス応答が得られる信号であることが好ましい。測定信号は、入力部11、信号処理部12、増幅部13を経由して、低音域スピーカ部14Bから出力される。出力された測定信号は、設置された環境の影響を受け、拡散されたのち、測定用マイク18で集音され、測定信号入力部21に入力される。
【0058】
測定信号入力部21では、測定用マイク18で集音された測定信号を、適切なレベルに増幅するとともに、A/D変換する。また、制御部15からの測定トリガに基づいて、適切な時間範囲の測定信号を切り出して、切り出した測定信号を解析部22に出力する。
【0059】
解析部22では、測定信号入力部21で切り出した測定信号を解析する。具体的には、解析部22は、タイムストレッチトパルスやM系列信号から、演算によりインパルス応答を得る。また、解析部22は、測定信号の遅延や周波数特性など、複数の情報を得る。測定信号の遅延から、適切な遅延時間設定が得られ、測定信号の周波数特性から、適切な特性補正パラメータが得られる。例えば、音声が、低音域スピーカユニットから、低音域スピーカユニットに最寄りの物体を経由して、受聴者に伝わる場合、音声の経路に応じて、遅延時間が変化する。また、低音域スピーカユニットの周辺に設置された物体の吸音率や形状に応じて、測定信号の周波数特性および音圧特性が変化する。信号処理部12は、解析部22による測定信号の解析結果に基づいて、入力信号を補正する。また、信号処理部12は、測定結果に応じて、低音域スピーカ信号の周波数特性を補正してもよい。これにより、音響装置214は、入力信号をより良好に再生することができる。
【0060】
なお、表示装置2の環境によっては、解析部22は、著しく伝達時間が長い測定信号や、著しく音圧の低い測定信号を得る可能性がある。例えば、表示装置2が、極端に高い天井がある部屋や、極端に広い部屋に置かれている場合、著しく伝達時間が長い測定信号が得られる。また、部屋の壁の吸音率が高い場合や、部屋が外部に対して開いている場合、著しく音圧の低い測定信号が得られる。このような場合、制御部15は、サラウンド音声信号の出力先を、低音域スピーカユニットから全帯域スピーカユニットへ切り替えてもよい。また、ある低音域スピーカユニットの応答が極端に異なる場合、サラウンド音声信号の出力先を、隣接する低音域スピーカユニットへ切り替えてもよい。
【0061】
本実施形態の構成によれば、部屋の特性に応じて、低音域スピーカユニット201〜212から出力される低音域の音声信号を適切に調整することができる。また、再生環境の残響音をより自然に得られるため、受聴者の没入感をより高めることができる。
【0062】
〔実施形態3〕
本発明の他の実施形態について、
図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0063】
前記実施形態1では、表示装置1を前から見たときに、低音域スピーカユニット201〜212が、全帯域スピーカユニット101〜112の間にある構成(
図2参照)を説明した。しかしながら、全帯域スピーカユニット101〜112と、低音域スピーカユニット201〜212との位置関係は、特に限定されない。
【0064】
(表示装置の外観)
図5は、本実施形態に係る表示装置3の正面図である。
図5に示すように、表示装置3は、前記実施形態1で説明した表示装置1の構成(
図1参照)と比較して、音響装置314が備えた低音域スピーカユニット201〜212の位置が異なっている。より詳細には、前記実施形態1に係る表示装置1では、表示装置1を前から見たときに、低音域スピーカユニット201〜212は、全帯域スピーカユニット101〜112の間に配置されていた。一方、本実施形態に係る表示装置3では、表示装置3を前から見たときに、低音域スピーカユニット201〜212は、全帯域スピーカユニット101〜112と同じ位置に配置されている。
【0065】
本実施形態の構成によれば、受聴者から見て、つまり表示装置3の表示画面113を前から見たとき、低音域スピーカユニット201〜212は、全帯域スピーカユニット101〜112と同じ位置にあるため、低音域スピーカユニット201〜212がより目立たなくなる。また、全帯域スピーカユニット101〜112と、低音域スピーカユニット201〜212とが近接しているため、音響装置314は、広い周波数帯域にわたって、全帯域スピーカユニットの近傍に音像を定位させることができる。
【0066】
〔実施形態4〕
本発明の他の実施形態について、
図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0067】
前記実施形態1では、表示装置1の表示画面113の周囲全体に、全帯域スピーカユニット101〜112および低音域スピーカユニット201〜212が配置された構成(
図2参照)を説明した。また、前記実施形態3でも、同様の構成(
図5参照)を説明した。しかしながら、他の実施形態に係る表示装置では、表示画面の周囲の一部に、スピーカユニットが配置されていてよい。また、表示装置に取り付けられるスピーカユニットの数も特に限定されない。
【0068】
(表示装置の構成)
図6は、本実施形態に係る表示装置4の正面図である。
図6に示すように、表示装置4では、表示画面113の上側および下側にのみ、音響装置414のスピーカユニット101〜110、201〜208が取り付けられている。また、表示装置4には、合計で18(10+8)個のスピーカユニットが取り付けられている。なお、音響装置414は、前記実施形態3に係る表示装置3の表示画面113の横側に配置されたスピーカユニットの代わりに、表示装置4とは別体のスピーカユニット(図示せず)をさらに備えていてもよい。
【0069】
表示装置4では、
図9に示す11個の音響チャンネルのうちの6個の音響チャンネル、すなわちTpFL,TpFC,TpFR,BtFL,BtFC,BtFRの音声信号は、それぞれ対応する位置にある全帯域スピーカユニットによって再生される。他の5個の音響チャンネル、すなわちFL,FLc,FC,FRc,FRの音声信号は、それぞれ上下方向に並んだ2つのスピーカユニットによって再生される。受聴者が、上下方向に並んだ全帯域スピーカユニットから等距離の位置で音声を聞くと、上下のスピーカユニットの中間から、音声が出力されているように感じる。
【0070】
また、表示装置4では、
図8の(b)〜(d)に示す、受聴者の周囲に位置付けられる11個の音響チャンネルの音声信号は、各音響チャンネルの最寄りの低音域スピーカユニットによって再生される。具体的には、
図8の(b)に示す音響チャンネルSiL、BLの音声信号は、低音域スピーカユニット201および205によって再生される。
図8の(b)に示す音響チャンネルSiR、BRの音声信号は、低音域スピーカユニット205および212によって再生される。また、
図8の(b)に示す音響チャンネルBCの音声信号は、低音域スピーカユニット203および210によって再生される。
図8の(c)に示す音響チャンネルTpSiL、TpBLの音声信号は、低音域スピーカユニット201によって再生される。
図8の(c)に示す音響チャンネルTpSiR、TpBRの音声信号は、低音域スピーカユニット201および205によって再生される。
図8の(c)に示す音響チャンネルTpBCの音声信号は、低音域スピーカユニット201および203によって再生される。なお、サラウンド音声信号は、必ずしも最寄りの低音域スピーカユニットによって再生される必要はない。例えば、音響チャンネルTpBLの音声信号は、低音域スピーカユニット202によって再生され、音響チャンネルTpBRの音声信号は、低音域スピーカユニット204によって再生されてもよい。上記の構成では、受聴者がサラウンド音声信号により包み込まれるかのように、受聴者に感じさせることができる。
【0071】
本実施形態の構成によれば、前記実施形態1または3の構成と比較して、表示装置4に取り付けられたスピーカユニット101〜110、201〜208の数が少ないので、表示装置4の見た目がスマートになる。
【0072】
〔実施形態5〕
本発明の他の実施形態について、
図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、説明の便宜上、前記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を省略する。
【0073】
本実施形態では、表示画面の裏側にスピーカユニットを備えた表示装置の構成を説明する。
【0074】
(表示装置の構成)
図7は、本実施形態に係る表示装置5の正面図である。
図7に示すように、表示装置5では、前記実施形態4に係る表示装置4の構成(
図6参照)に加えて、表示画面113の裏側に、音響装置514の低音再生用スピーカユニット301がさらに配置されている。低音再生用スピーカユニット301は、後ろ方向に音声を出力する。低音再生用スピーカユニット301から出力された音声は、部屋の壁や物体によって反射された後、拡散音声として、受聴者の耳に入る。
【0075】
表示装置5は、前記実施形態4に係る表示装置4と比較して、表示画面113の上側および下側に配置された低音用スピーカユニットの数が少ない。換言すれば、表示装置5では、音響装置514の一部の低音域スピーカユニットが、表示画面113の上側および下側の代わりに、表示画面113の裏側に取り付けられている。
【0076】
本実施形態の構成によれば、表示装置5の表示画面113の周囲に設けられたスピーカユニットの数が少ないので、表示装置5の見た目をスマートにすることができる。
【0077】
(付記事項)
上述の実施形態において説明した表示装置とチューナとを備えたテレビジョン受像機も、本明細書に記載の発明に含まれる。
【0078】
〔ソフトウェアによる実現例〕
音響装置14、214、314、414、514の制御ブロック(特に入力部11、信号処理部12、増幅部13、制御部15、測定信号入力部21、および解析部22)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0079】
後者の場合、音響装置14、214、314、414、514は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムおよび各種データがコンピュータ(またはCPU)で読み取り可能に記録されたROM(Read Only Memory)または記憶装置(これらを「記録媒体」と称する)、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などを備えている。そして、コンピュータ(またはCPU)が上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0080】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る音響装置(14、214、314、414、514)は、表示装置(1、2、3、4、5)の表示画面(113)の外側に配置される第1のスピーカユニット(全帯域スピーカユニット101〜112)および第2のスピーカユニット(低音域スピーカユニット201〜212)を備え、複数チャンネルの音声を出力する音響装置であって、前記第2のスピーカユニットは、前記第1のスピーカユニットが出力する音声の低音成分を出力し、前記第1のスピーカユニットおよび前記第2のスピーカユニットは、互いに異なる方向を向くように設けられている。
【0081】
上記の構成によれば、第1のスピーカユニットと第2のスピーカユニットとが互いに異なる方向を向いているので、第1のスピーカユニットと対向する受聴者には、第2のスピーカユニットがあまり見えない。したがって、受聴者に、音響装置を細く見せることができる。
【0082】
本発明の態様2に係る音響装置は、上記態様1において、前記第2のスピーカユニットは、当該音響装置から離れた場所にある仮想的な音源が生成する音場に対応する第2の音声をさらに出力してもよい。
【0083】
上記の構成によれば、第2のスピーカユニットから出力される第2の音声は、音響装置が置かれた部屋の壁等で反射および拡散された後、様々な方向から受聴者の耳に入るので、音源が形成する音場に包まれているような臨場感を受聴者に与えることができる。
【0084】
本発明の態様3に係る音響装置は、上記態様1または2において、前記第2のスピーカユニットのうちの少なくとも1つはバス・レフレックス型であり、前記バス・レフレックス型の第2のスピーカユニットの背後から出力される音声が、前記第1のスピーカユニットから出力される音声と同じ方向に出力されてもよい。
【0085】
上記の構成によれば、少なくとも1つの第2のスピーカユニットの背後から出力される音声を、第1のスピーカユニットから出力される音声と同じ方向に出力することができる。
【0086】
本発明の態様4に係る音響装置は、上記態様1から3のいずれかにおいて、前記複数チャンネルは、三次元マルチチャンネル音響方式に則っていてもよい。上記の構成によれば、三次元マルチチャンネル音響方式に対応する音声を出力することができる。
【0087】
本発明の態様5に係る音響装置は、上記態様1から4のいずれかにおいて、前記第1のスピーカユニットは、前記表示画面の前方向に音声を出力し、前記第2のスピーカユニットは、前記表示画面の上下左右の方向のうち少なくともいずれか1つの方向に、前記音声の低音成分を出力してもよい。
【0088】
上記の構成によれば、表示装置の表示画面の前にいる受聴者は、第1のスピーカユニットから出力される音声を直接的に聞くことができるとともに、第2のスピーカユニットから出力される音声が部屋の壁等で拡散または反射された音声を聞くことができる。そのため、画面に表示される映像と一体となった音場に包まれているような臨場感を受聴者に与えることができる。
【0089】
本発明の態様6に係る音響装置は、上記態様1から5のいずれかにおいて、所定の周波数以下の音声を出力する場合、該所定の周波数を超える音声を出力する場合よりも多くの第2のスピーカユニットを用いて、音声を出力してもよい。
【0090】
上記の構成によれば、所定の周波数以下の音声を多数の第2のスピーカユニットから出力することで、受聴者は、低音の定位をより感じ取りやすくなる。
【0091】
本発明の態様7に係る表示装置(1、2、3、4、5)は、上記態様1〜6のいずれかの音響装置と、前記表示画面とを備えていてもよい。また、本発明の態様8に係るテレビジョン受像機は、上記態様6に係る表示装置を備えていてもよい。上記の構成によれば、上述したいずれかの音響装置と同様の効果を奏することができる。
【0092】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【解決手段】音響装置(14)は、表示画面(113)の前方向に音声を出力する全帯域スピーカユニット(101)と、音声の低音成分を出力する低音域スピーカユニット(201)とを備え、低音域スピーカユニット(201)は、全帯域スピーカユニット(101)と異なる方向を向いている。